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ローメンテとコスパのよさから注目が集まっているガーデンプランツ、宿根草(しゅっこんそう)。植えっぱなしで手入れが楽で、毎年新しい品種も登場して目が離せない宿根草の中から、2024年度に人気が高かった品種をご紹介します。選者は、4千種を超す植物を扱う「おぎはら植物園」店長の荻原範雄さん。進化したニューフェイスやプロに選ばれている注目品種が登場する2024年度版、人気の宿根草5種から、あなたの庭に新風を吹き込むお気に入りを見つけましょう!

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植えっぱなしで丈夫に育つ
選ばれている人気の宿根草

宿根草ガーデン

宿根草と山野草の販売で多くのファンがいる専門店「おぎはら植物園」。長野県上田市にある同園では、越年して毎年花を咲かせる「長生きする植物」の宿根草を中心に、幅広くガーデン植物を取り扱っています。全国のガーデニングを趣味にする人たちをはじめ、観光ガーデンや公共の庭などからも珍しい植物やお目当ての植物を求めて注文が入る「おぎはら植物園」で、2024年度に人気が急上昇した宿根草を5種ピックアップ。店長の荻原範雄さんに特徴や魅力、育て方のコツを教えていただきます。

セレクト1
エキナセア ‘ミニ ベル’

エキナセア ‘ミニ ベル’
小さめの鮮やかな花が多数開花。

エキナセアの魅力は、何といっても華やかで美しい花。特に、多くの宿根草が花を休む真夏であっても、暑さに強いエキナセアはたっぷりの日差しを浴びて一層美しさが際立ち、存在感を発揮します。夏らしい元気な花色、お洒落なフォルムも相まって、近年、国内でも人気が上がっています。

エキナセア ‘ミニ ベル’

このエキナセアは最新品種ではありませんが、優秀な性質から2024年から販売を開始しました。数多くの八重咲きエキナセアが世に出ていますが、本種は丈夫さ、長生きという点で特に優れており、場所への順応性が高いので、ほとんど放任でも無理なく育てられる品種です。


エキナセア ‘ミニ ベル’
他の植物と組み合わせやすい小型種。ナチュラルな雰囲気にも調和します。

花は少し小ぶりですが花上りが素晴らしく、1株から無数の花茎が立ち上がります。
近年のコンパクトな品種とは異なり、草丈が伸びますが50~70cm前後とほどよい高さ。他の草花と混植したり、ボーダーガーデンやメドウガーデンなどに加えるなど、幅広く活躍します。

エキナセア ‘ミニ ベル’

エキナセアは丈夫で寒さにも暑さにも強い性質です。適した場所であれば、植えっぱなしで何年も生き続け、ほとんど手間がかかりません。基本的に日向を好むので、日陰は避けて十分日が当たる場所に植えましょう。梅雨時や夏の多湿を嫌うので、風通しがよい場所を選ぶことも大切です。また、強すぎる乾燥、極端な痩せ地では長生きしません。少し肥沃なほうが生育や花つきがよいので、市販の培養土を混ぜてから植えるのをおすすめします。

【Data】
■ キク科 宿根草(耐寒性多年草)冬季落葉種
■ 学 名:Echinacea purpurea ‘Mini Belle’
■ 別 名:エキナセア(エキナケア) パープレア(プルプレア)、馬簾菊(バレンギク)など
■ 花 期:初夏~盛夏
■ 草 丈:50~70cm前後(生育後・花丈も含む)
■ 株張り:40~60cm前後(生育後・環境差がある)
■ 耐寒性:強い(-15℃~-25℃ ※環境差がある)
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向~やや半日陰
■ 原産地:北アメリカ(原種の主な自生地)

セレクト2
ユリネア・レデボウリイ

ユリネア・レデボウリイ

アザミに似た玉のような赤紫の花を咲かせ、花後は白い球状の種子がなるキク科の野草です。当店で2022年に海外より種子を取り寄せて栽培をスタートしましたが、まだ国内では苗の流通が少なく、昨年人気となりました。

ユリネア・レデボウリイ

葉はシルバーを帯びて白っぽく、草丈20~45cm前後とコンパクトです。株が密生するため、高温多湿を嫌いますが、乾いた場所や、やせ地に強いのでロックガーデンやドライガーデンに向きます。一見、繊細で珍しい花姿ですが、性質は丈夫で、水はけと日照をよくすれば、あとは放任でも育ちます。成長は早くありませんが着実に育ち、大株になると数えきれないほどの花が咲きます。

ユリネア・レデボウリイ

自生地は、ブルガリア、ルーマニア、南西ロシアなどの限られた地域で、現地では森林伐採や観光開発により絶滅が危惧されている野草です。見た目は小さなアザミのようですが、デージーに近い仲間で、すらっと長く伸びる花茎が可憐な印象です。

ユリネア・レデボウリイ

春の後半になると、低い株から花茎を次々と伸ばして、うなだれるように花が咲きます。すらっと高く伸びて咲くので、切り花にも向きます。面白い形のつぼみや花も魅力ですが、花後に現れる白い球状の種子もユーモラス(感触は固い)で、ドライフラワーなどにも利用できるなど、咲き始めから花後まで長く楽しめます。

【Data】
■ キク科 宿根草(耐寒性多年草)冬季半常緑~落葉種
■ 学 名:Jurinea ledebourii
■ 別 名:ジュリネア、ジュリア・レデブーリイなど
■ 花 期 : 晩春~初夏
■ 草 丈:20~45cm前後(生育後・花丈も含む)
■ 株張り:15~25cm前後(生育後・環境差がある)
■ 耐寒性:強い(-15℃~-25℃ ※環境差がある)
■ 耐暑性:普通(暖地では夏に風通し、水はけよく)
■ 日 照:日向
■ 原産地:ブルガリア(原種の主な自生地)

セレクト3
コレオプシス ‘アイス ワイン’

コレオプシス ‘アイス ワイン’

コレオプシスは、国内では糸葉ハルシャギクなどが一般的で、黄色の花のイメージがありますが、海外ではピンクや赤、白など多くの品種が発表されています。なかでも、本種‘アイス ワイン’は海外で作出された「サテン&レース・シリーズ」の品種です。美しいバイカラーの花色が特徴で、白とワインレッドのコントラストが美しく、「アイス ワイン」という名前がよく似合う気品のある花も魅力です。

コレオプシス ‘アイス ワイン’

細やかな糸葉が茂り、針金のように細い花茎が無数に立ち上がって、白い花弁にベリーパープルの目が入る整った花を咲かせます。可憐な草姿なので、ナチュラルガーデンの演出にもぴったりです。

コレオプシス ‘アイス ワイン’

性質が丈夫なので、植える場所を選びませんが、日陰や肥沃すぎる場所では徒長して倒伏することがあります(その場合は春のうちに切り戻し、低い状態で花期を迎えます)。十分な日当たりがあって、少しだけ痩せ気味の場所のほうが、本来のコンパクトな株姿でたくさんの花を咲かせることができます。

コレオプシス ‘アイス ワイン’

また、こまめな花がら摘みをすることで、花つきがよくなり、夏から秋遅くまで長期間咲かせることができます。

【Data】
■ キク科  宿根草(耐寒性多年草)冬季落葉種
■ 学 名:Coreopsis ‘Ice Wine’
■ 別 名:ハルシャギク、ジャノメソウなど
■ 花 期 : 初夏~晩秋
■ 草 丈:30~50cm前後(生育後・花丈も含む)
■ 株張り:30~50cm前後(生育後・環境差がある)
■ 耐寒性:強い(-15℃~-25℃ ※環境差がある)
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向
■ 原産地:北アメリカ(原種の主な自生地)

セレクト4
スピゲリア ‘リトル レッドヘッド’

スピゲリア ‘リトル レッドヘッド’

真っ赤なつぼみと整った星形の花が可愛らしく、耐寒性・耐暑性も備えた多年草で、花後に切り戻すと何度も咲く四季咲き性も魅力です。 

あまり聞きなれない名前と見たことのないフォルムの花でしたが、数年かけて試験栽培をしたところ、じつに優秀なことから2024年より販売を開始しました。現時点、国内で苗はほとんど流通していません。

スピゲリア ‘リトル レッドヘッド’

自生地は、アメリカ南東部~中西部(主にニュージャージー州南部からフロリダ州、テキサス州)の内陸部で、森の中や渓谷、小川の付近。半日陰や暗い場所に生えていることから、現地ではあまり目立たない存在でした。しかし、90年代にヨーロッパに持ち込まれ、あっという間に大ヒットになった植物で、ヨーロッパ、特にイギリスでは人気です。

スピゲリア ‘リトル レッドヘッド’

現地では日陰に生えているため花つきが少ないようですが、日向に植えると花つきは抜群。しかも花後に切り戻すと何度も開花します。長野県での栽培では、晩春に最初の花が咲き、半分ほどの高さで切り戻すと初夏に再び開花。この作業を繰り返すことで真夏、秋と年に4回も咲き、繰り返し咲く生命力の強さと花期の長さにとても驚きました。

スピゲリア ‘リトル レッドヘッド’
小花ながらも、目を引く鮮烈な花色。

姿もコンパクトであまり伸びず、株の広がりもゆっくりで、数年かけても草丈は30cmほど。場所もとらず、狭い場所でも植えられ、鉢植えにも向いています。赤く尖ったつぼみが開き、黄と赤の鮮烈な星形の花は小輪なので、宿根草やカラーリーフと一緒に植えても主張しすぎず、ポイント的に使うのもおすすめです。

スピゲリア ‘リトル レッドヘッド’

花色からトロピカルな雰囲気を感じますが、暑さにも強いうえ、寒さにも強い性質です。マイナス15℃程度になる長野でも難なく越冬しました(冬に地上部がなくなり翌春に芽吹き、順調に大きくなりました)。

※この植物は全草にアルカロイド、スピギリンを含み、特に根には麻薬作用や駆虫成分があるといわれます。園芸植物には毒性のある植物が多々ありますが、本種も多量に摂取すると非常に危険といわれております。食用は絶対せず、ペットやお子様には十分にご注意ください。

【Data】
■ マチン科 宿根草(耐寒性多年草)冬季半常緑~落葉種
■ 学 名:Spigelia marilandica ‘Little Redhead’
■ 別 名:スピゲリア マリランディカ(学名) 、ウッドランドピンクルート、インディアンピンク など
■ 花 期 : 春~秋
■ 草 丈:30~60cm前後(生育後・花丈も含む)
■ 株張り:20~45cm前後(生育後・環境差がある)
■ 耐寒性:強い(-12℃~-15℃ ※環境差がある)
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向~明るい半日陰
■ 原産地:アメリカ(主な自生地)

セレクト5
メリニス ‘サバンナ’

メリニス ‘サバンナ’

ブルーグリーンの葉とルビーレッドの穂の組み合わせが美しく、草丈も程よい高さで人気のグラス類です。切り花では「ルビーグラス」の名前で古くから流通していますが、意外に苗の販売は少なく、問い合わせが多くありました。穂が美しいグラスは大型のものが多い中、本種は穂が出ている時期でも草丈が50cm以内に収まるので、扱いやすいグラスです。株の生育もゆっくりで、草花と一緒に植えて楽しめます。

メリニス ‘サバンナ’

春からブルーがかった明るい緑色の葉が芽吹き始め、6月中下旬になると赤みの強い穂が上がります。穂は満開を過ぎると弾けてピンク色のふわっとしたワタ状の種子に変わります。穂は次々に上がるので、咲き始めの赤い穂とワタ状のピンクの種子が同時に楽しめます。庭に一株植えておけば、次々と上がる穂を切り花にしたり、ドライフラワーにしてインテリアに飾るなど、暮らしの中でも楽しめます。

メリニス ‘サバンナ’
大株になると無数の穂があがり、風に揺れて風情があります。

暑さに強い性質で、真夏から秋まで長期間、穂を上げます。気温が下がる晩秋頃には、葉がピンク味を帯びて紅葉するのも魅力です。暖地ではそのまま葉が枯れて越冬します。寒冷地では戸外で越冬できない場合もあります(寒冷地では霜よけ程度のハウスで越冬。ある程度の耐寒性も備えています)が、一年草扱いでも、長期間十分に楽しめ、種子を採り播きすれば毎年育てることもできます。

メリニス ‘サバンナ’

日向で風通しがよく、乾きやすい場所が適地です。水はけのよい場所に植えてください。多湿は嫌いますが、乾燥には強いです。場所さえ選べば放任で気軽に育てることができます。

【Data】
■ イネ科  宿根草(耐寒性多年草)冬季半常緑~落葉種
■ 学 名:Melinis nerviglumis ‘Savannah’
■ 別 名:ピンク・クリスタル、ルビーグラス など
■ 花 期:初夏~晩秋 
■ 草 丈:30~50cm前後(生育後・花丈も含む)
■ 株張り:30~60cm前後(生育後・環境差がある)
■ 耐寒性:普通(-5℃~-8℃ ※環境差がある) 
■ 耐暑性:強い 
■ 日 照:日向
■ 原産地:南アフリカ(原種の主な自生地)

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