ヨウシュヤマゴボウはユニークな実をつける大型多年草! 特徴や育て方、毒性などの注意点を詳しく解説

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ヨウシュヤマゴボウは、鮮やかな黒紫色の特徴的な実をつける多年草です。雑草として生えてきてしまうこともありますが、実の美しさから切り花として人気があります。しかし、毒性があるので、扱ううえでは注意も必要です。この記事では、ヨウシュヤマゴボウの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、毒性、育てる際のポイントについて詳しくご紹介します。
目次
ヨウシュヤマゴボウの基本情報

植物名:ヨウシュヤマゴボウ
学名:Phytolacca americana
英名:pokeweed、inkberry
和名:ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)
その他の名前:アメリカヤマゴボウ
科名:ヤマゴボウ科
属名:ヤマゴボウ属
原産地:北アメリカ
分類:宿根草(多年草)
ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草であるヨウシュヤマゴボウは、北アメリカ原産の帰化植物です。草丈は1~2mで、背丈を超すほどまで成長します。繁殖力が強く日本の山野や街中のさまざまな場所に生息しており、空き地などでブドウのような鮮やかな黒紫色の実を見たことがある人も多いのではないでしょうか。みずみずしく美味しそうな見た目で、野鳥がついばむ姿も見られますが、種子と全草に毒があって食べられないので注意が必要です。冬に地上部が枯れても、根が生きていればまた翌年新芽を出して成長します。果実が美しいことから、園芸用や切り花にも利用されます。
花や実の特徴

園芸分類:草花
開花時期:6〜9月
草丈:1〜2m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、淡いピンク
ヨウシュヤマゴボウの開花期は6~9月で、花茎に均等に3~5mmの小さな花をつけます。花は緑がかった白色または淡いピンク色で、花びらはなくあまり目立ちません。花序は開花が進むと徐々に垂れ下がります。実は液果で、黒紫色に熟し、扁球(へんきゅう)形をしています。実から出る赤紫色の汁が衣服などにつくとシミになることがあるため注意しましょう。また種子と全草には有毒成分が含まれ、果汁が肌についてもかぶれる恐れがあります。
赤紫を帯びた茎も特徴的で、春は緑色ですが、実がつく頃には赤みが増し、特に艶やかな黒紫の実と赤紫の果柄とのコントラストは鮮やかで観賞価値があります。大きな葉は長楕円形で互生し、秋には紅葉します。
ヨウシュヤマゴボウの名前の由来と花言葉

ヨウシュヤマゴボウのヨウシュは、漢字で洋種と書き、西洋産という意味です。つまり、ヨウシュヤマゴボウとは西洋の山牛蒡という意味になります。アメリカでは果汁を簡易的なインクの代用としたため、英名ではインクベリーとも呼ばれます。
ヨウシュヤマゴボウの花言葉は「野生」「元気」「内縁の妻」などです。
ヨウシュヤマゴボウは毒性に注意
ヨウシュヤマゴボウは鮮やかな黒紫色の実をつけ、ゴボウによく似た太く長い根を持ちますが、種子や全草に毒があるので注意が必要です。
全草に毒が含まれる

ヨウシュヤマゴボウは全草に有毒成分フィトラッカトキシンが含まれており、食用できません。特に果実に入っている種子や根は毒性が強いので、注意が必要です。根には硝酸カリウムが多く含まれており、薬として利用されていたこともありますが、毒性が強いので決して口に入れないようにしましょう。
誤食に注意

ヨウシュヤマゴボウは「ヤマゴボウ」という名を持ち、根の形状もゴボウによく似ていますが、異なる種なので注意が必要です。ちなみに、「山ごぼう」という名前で漬物などに加工して市販されている山菜は、キク科のモリアザミの根か、野菜のゴボウ。ヤマゴボウとは関係がありません。ヨウシュヤマゴボウは、花が咲く前の若い株は根の形状がモリアザミと似ているため、誤って食べてしまったという例があります。また、果実は美味しそうな見た目で、子どもが口にしてしまう恐れがあるため注意しましょう。
誤食したときの症状
ヨウシュヤマゴボウを食べると、腹痛、嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。さらに、延髄に作用するとけいれんを起こし、最悪の場合には死に至ることもあります。また、皮膚に対しても刺激があります。ヨウシュヤマゴボウを味噌漬け加工して食べ、約2時間後に嘔吐症状を引き起こしたという事例もあり、症状が出るまではおよそ2時間と考えられています。
ヨウシュヤマゴボウと同じヤマゴボウ科の植物

ヨウシュヤマゴボウはヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の植物です。ここからは同じヤマゴボウ科の植物と、赤い実をつけるジュズサンゴをご紹介します。
ヤマゴボウ

ヤマゴボウはヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の植物で、中国を原産とします。ヨウシュヤマゴボウと同じヤマゴボウ属の仲間のうち、日本に自生している種類は、このヤマゴボウとマルミノヤマゴボウです。ヨウシュヤマゴボウによく似ていますが、茎は緑色で、果実が垂れ下がらないのが特徴です。どちらもヤマゴボウという名前から山菜と誤解されがちですが、毒性があるため食用できません。
マルミノヤマゴボウ

マルミノヤマゴボウはヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の植物で、日本在来種。草丈は1~1.5m。花は花弁がなく、萼片のみで、淡紅色から次第に真っ赤になります。ヤマゴボウに似ていますが、黒い実は丸いのが特徴です。ヨウシュヤマゴボウと同様に毒があるため、誤って食べないように注意が必要です。
ジュズサンゴ

ジュズサンゴはジュズサンゴ科リビナ属の植物で、以前はヤマゴボウ科に分類されていました。「数珠珊瑚」と書き、ハトベリーという名前でも知られています。花びらがない白い萼片の花を咲かせた後、赤い実をつけます。また、ピンクや黄色の実をつける品種もあります。草丈は30~100cm。
海外ではラット実験で実を食べても影響がないと報告されていますが、人間に対しては有害との説もあり、食べないほうが無難でしょう。
ヨウシュヤマゴボウの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜9月
植え付け:3〜4月
植え替え:12~翌年4月
肥料:特になし
種まき:3~4月、10~11月
ヨウシュヤマゴボウの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日のよく当たる場所を好みますが、丈夫な性質なので日陰でも育ちます。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】土質を選ばず育ちます。1~2mになる大型多年草なので地植えに向きますが、大きく育ちすぎたり増えすぎて駆除に困ることもあるため、鉢植えでコンパクトに育てるのもおすすめです。
耐寒性・耐暑性
暑さにも寒さにも強く、一年を通して屋外で栽培できます。夏越しや冬越しの対策も特に必要ありません。冬に地上部が枯れても、翌春また新芽が出て成長するため、枯れたと勘違いして処分しないようにしましょう。
ヨウシュヤマゴボウの育て方のポイント
用土

道端でも育つほど丈夫で、土壌を選びません。鉢植えの場合は、市販の花木用培養土などを使用するとよいでしょう。
水やり

地植えの場合は基本的に降雨だけで十分なので、よほど乾燥が続く場合を除いて水やりは不要です。一方、鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら水やりをしましょう。
肥料

基本的に肥料は必要ありません。育ちが悪い場合は、緩効性肥料を少量与えるとよいでしょう。
注意する病害虫

ヨウシュヤマゴボウには注意すべき病害虫は特にありません。
ヨウシュヤマゴボウの詳しい育て方
植え付け・植え替え

ヨウシュヤマゴボウの苗は、通信販売などで入手することができます。植え付けの適期は3~4月。6~9月に急激に大きくなるため、この時期はあまり植え付けに向いていません。
鉢植えの場合は、鉢に根が回ったら植え替えましょう。地上部が枯れて根だけになる冬に掘り上げて植え替えるとよいでしょう。
日常のお手入れ

ヨウシュヤマゴボウは根茎で増えて広がります。剪定だけを行うと、土の中で根が成長して広がるため、注意が必要です。大きく育ちすぎた場合は、株を抜き、根をカットして植え替えるとよいでしょう。ただし、根が残っているとそこから伸びるので、きちんと取り除くことが重要です。
増やし方

ヨウシュヤマゴボウは種まきや株分けで増やすことができます。
【種まき】
種まきで増やす場合、秋に熟した実から種子を採取します。そのまま播くほか、冷蔵庫で保管し、翌春に播くこともできます。発芽するまでは乾かさないように、日陰で管理します。繁殖力が強く、こぼれ種や野鳥が運んできた種子からも芽を出します。
【株分け】
ヨウシュヤマゴボウは根茎で増える性質があり、根を切り分けて育てたいところに植えておくだけでも増やすことができます。繁殖力が強いため、増えすぎないようにコントロールが必要です。
ヨウシュヤマゴボウを除草したいときは

ヨウシュヤマゴボウは頑健で、野生化して日本でもさまざまな場所に生えています。地植えすると大きく育つため、除草したい場合は、地面を掘って根を残さず丁寧に取り除く必要があります。根を取り除くことが難しい場合は、除草剤を利用するとよいでしょう。
ヨウシュヤマゴボウは野生化と誤食に注意

ヨウシュヤマゴボウは可愛らしい実をつけますが、草全体に毒があります。野生化してしまうほど丈夫で、残った根やこぼれた実からも増えるため、敷地外に逸出してしまわないように管理しましょう。
子どもが誤って口にしないよう注意が必要ですが、庭や鉢植えで鮮やかな黒紫色の実の美しさを楽しんでみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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