月の美しい季節は、キクが美しい季節です | 花のある週末、はじめませんか Vol.12
こんにちは!「ウィークエンドフラワー」プロデューサーの小川典子です。こちらでは、旬の季節に楽しみたい花の、“長もちさせるハウツー”や“簡単おしゃれなコーディネイトのコツ”をお伝えしていきます。花瓶がなくても大丈夫。少しの花材と身近な雑貨を組み合わせて、家のなかに自分のお気に入りの花コーナーを作ってみませんか?
目次
9月のおすすめは「キク」
9月のウィークエンドフラワー.キク(和名:菊、 英名:Chrysanthemum)
●原産国: 中国、北半球各地
●主な生産地: 愛知県、沖縄県 ほか
2024年の「中秋の名月」は、9月17日。
そして、今日紹介するウィークエンドフラワーは、秋が深まるこれからがまさに旬の「キク」! キクはいま、マムとも呼ばれています。マムは、英名の「Chrysanthemum(クリサンセマム)」の略で、”黄金の花”という意味があります。黄金の国ジパングをイメージしたのでしょうか?
いにしえの昔から、キクは福を呼ぶ縁起のよい花、高貴な花と称されてきました。日本の国花ともいわれます。高貴な花ゆえに“最高の敬意を払う”という意味で、仏事に供えられることが多く、人々の先祖を敬う心とともに受け継がれてきました。
平安時代、中国から伝わった9月9日「重陽の節句」に、不老長寿の花としてキクを愛でる宴が宮中で催されるようになりました。やがて庶民にもキクの美しさを競う楽しみが広がり、秋になると各地で菊花展が盛んに。そして、江戸時代後期に欧米に渡り、革新的な品種改良により華やかな花姿に生まれ変わり、万国共通の「MUM(マム)」という愛称を得て、日本に再上陸したのです。今や世界中で人気の花の一つです。
日本は、世界一の生産量と消費量を誇るキク(マム)大国! なかでも、愛知県の渥美地方が最大の産地です。キクの年間出荷量は15億本を超え、2位のバラが2億本であることと比較しても、その量の多さにびっくり! 国内の切り花生産のおよそ4割を、キクが占めている計算になります。
今から20数年前、創刊当時の『花時間』パリ特集。白いまんまるのポンポン咲きのキクが、バラなどの洋花にまざって、パリスタイルの素敵なブーケになっているのを見た時の衝撃は、今でも忘れられません! 従来のキクのイメージが、おしゃれな花・マムへと180度変わった瞬間でした。ちょうどその頃から、日本でもさまざまな色、咲き方、花姿のスプレーギクの生産が始まり、昨今はダリアと見まごう大輪系のモダンなキクが増えてきています。
野趣溢れる草花とキクで、月を愛でるための静かなあしらい
お彼岸の週末でもありますので、花店にはちょうど白や黄色のポンポン咲きのキクが豊富に並びます。お月さまのようでもあり、月見団子のようでもあり。私には美味しそうにも見えます(笑)。夜空の月を愛でながら月見酒、そんな風雅なウィークエンドも素敵ですね。窓辺に秋色のキクとススキをあしらえば、ほら、お月見の花あしらいに。
■材料(花材費合計=1500~2000円)
●花材(画像下・左から)
ワレモコウ/1/4本
ツルウメモドキ(オレンジの実の蔓)/短めの蔓1本のうちの1/2本程度
スプレーギク‘マイクロポンポンオレンジ’/1本
ポンポン咲きのキク‘ボンボンオレンジ’/1本
フジバカマ/1~2本
鷹の羽ススキ/1本
紅葉ユキヤナギ/1本
●器について
花器にしたのは、台湾で見つけた蓋付きの筒で、竹の皮を編んだ器。筒の中に、同じくらいの高さのグラスを入れています。小さな青磁の高台にお月見団子をのせ、同じく青磁の茶器を添えました。野の花々に合わせて栗の毬を転がし、野趣のある雰囲気に。
●コーディネイトについて
和風のしつらえには、お盆や敷き布など、“器の下に敷物を敷くこと”がポイント! 「しつらえ感」が出ていっそう素敵になります。そして、まっすぐなものはまっすぐに、すっきり整然と並べたほうが、キクやお団子の「丸」が引き立ちます。
■3ステップでアレンジ
①下準備です。キク、スプレーギク、フジバカマ、ワレモコウは、水に浸かる部分の下葉を取り除きます。紅葉ユキヤナギは、先端の紅葉している部分と、枝のまん中辺りの緑色の葉の部分を切り分け、それぞれ水に浸かる部分の葉を取り除きます。鷹の羽ススキは、器の高さとバランスのよい長さに穂をカットします。カットすると、美しい縞模様の葉が穂から離れてしまいますので、葉のついた茎を別途使用します。ツルウメモドキは短めの蔓を選んで、器にあわせ適当な長さでカットします。
②2分割した紅葉ユキヤナギの枝と、ツルウメモドキをいけます。器の口元がスカスカにならないように、葉を配します。次に、主役となるポンポン咲きのキクを中央に低めにいけ、スプレーギク、フジバカマの順にいけます。
③ススキの穂、ススキの葉(必ず茎がついた状態で)、小分けにしたワレモコウをあしらえば、できあがり!
■キクを長く楽しむコツ
この時期のキクは、1か月前後、日もちします。管理次第ではそれ以上に楽しめます!
*花びらが散っていない、葉が生き生きしたもの選びましょう。
*水だけでも日もちしますが、切り花鮮度保持剤を使うと花が大きく、色が鮮やかに咲きます。
*葉が水に浸かっていると、水がすぐに汚れて茎が腐りやすくなります。小さな葉を含め、水に浸かる部分の葉は、丁寧に取り除きましょう。水替えのたびに、茶色くなった茎の部分は切り戻すとよいでしょう。
お月見のお供え物について
お月見のお供え物の定番は、月見団子、里芋、ススキ。
秋の収穫を祝う行事でもあるため、お芋や栗などをお供えします。ススキを飾るのはススキが稲穂に似ているためで、一緒にリンドウやワレモコウ、秋の七草など季節の草花を飾る風習です。
秋の七草は、万葉集で山上憶良が詠んだ歌。萩(ハギ)、桔梗(キキョウ)、葛(クズ)、藤袴(フジバカマ)、女郎花(オミナエシ)、尾花(オバナ=ススキ)、撫子(ナデシコ)。
今回のアレンジでは、ピンクがかった紫色の小さな花が集まったフジバカマや、銀色に輝くススキの穂をポンポン咲きのキクに合わせました。秋の和花は、月明かりに光をもらったような静かな輝きをたたえていますね…。心の柔らかいところにそっと届くような、やさしくて素朴な美しさです。
キクの小さなお月見アレンジ例
さまざまな花姿のキクが存在しますが、今回はお月見にちなんで、ポンポン咲きのキクの小さなアレンジをいくつか紹介しましょう。
ベージュピンクが愛らしい‘オペラ’という品種は、和洋どんな花とも相性がよく、とても人気のある品種。花の中央がうっすらと白み、まるで月明かりを抱いて咲いているようです。明るいグリーンのケイトウやフジバカマ、ワレモコウ、そして可憐なキバナコスモスを合わせました。美しい月夜、部屋のなかは、キャンドルの灯りだけで過ごすのもロマンティックですね。壁に映る草花のシルエットも素敵です。
純白のキクには鮮やかなブルーのリンドウと、秋の七草フジバカマ、そして赤紫色の斑点が美しいホトトギスを。イメージは、夜空に浮かぶ凛とした月。白磁のボウルを器にしています。
お月見のミニアレンジの王道な感じですが、ポンポン咲きの黄色のキクに、白いリンドウと、飴細工のような美しさの秋の七草オミナエシ、ワレモコウと紅葉ヒペリカムを合わせました。お椀大の和風なバスケットを器にしています。栗蒸し羊羹もいいですねぇ(笑)
かの小説家・夏目漱石が英語教師をしていた頃、「I love you」を生徒が「我君を愛す」と訳したところ、「日本人はそんな風には言わない、月が綺麗ですね、とでもしておきなさい」と言ったという、有名な逸話があります。ロマンティックな月夜に、「月が綺麗ですね」と言われたら、それはもしかして愛の告白かも……! 心の準備をしておきましょう(笑)。
ではでは皆さま、花と素敵な週末を。
Credit
小川典子
(一社)花の国日本協議会プロモーション推進室長/
「WEEKEND FLOWER」 http://www.floweringjapan.com/weekendflower/
インスタグラム、@weekendflower_official
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