【話題のスポット】森の中の北欧が香るヒーリングガーデン 『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』
「訪れる人が癒やされる」と話題の箱根・強羅の森の中に広がる『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ(Nicolai Bergmann Hakone Gardens)』。9年の歳月をかけて作られたこの場所は、一般公開がスタートして2年目を迎えました。箱根特有のユニークな生態系の保全を第一に、気鋭のフラワーアーティスト・ニコライ・バーグマンが、自然と融合できる場所を目指してつくった新しいスタイルのガーデンを訪ねました。
目次
フラワーアーティスト ニコライ・バーグマンが考える
誰もが心癒やされるガーデン
デンマーク出身のフラワーアーティスト ニコライ・バーグマンさん。ボックスに花を敷き詰めた‘フラワーボックス’を生み出し、国内外に多数のフラワーブティックを展開する、今をときめくフラワーアーティストです。
20年以上日本に暮らし、切り花の世界で培った感覚を“ガーデン”という形を用いて新たに表現。アーティストとしての次なるステージを、ここ箱根でスタートさせました。
9,000坪もある手つかずの森を極力そのまま生かし、自ら仲間と開墾してつくった『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。9年の月日を費やし、一昨年2022年4月にオープンしました。緩やかな傾斜が続く敷地内では、散策路に自生する植物に触れ、鳥のさえずりを聴き、新鮮な空気が味わえます。自然を求め、多くの人々が、訪れています。
バーグマンさんは、かねてより「日々得られるインスピレーションを形にして永続的に残したい」という思いを抱きながら、それにふさわしい場所を探していました。そんなとき、箱根の土地を大切に扱ってくれる人を長年探していた地主さんに出会ったことで、庭づくりの計画が進展。そして、9年の歳月を費やして完成したのが、『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。「身近な自然を新たな視点で味わってもらいながら、僕の大好きな箱根ももっと知ってもらいたいんです」とバーグマンさん。
デンマークの国土は平らで、最高地点でも海抜わずか173mほどしかないため、日本の連なる山々は新鮮で、海抜600mの箱根もとても魅力的でした。この起伏に富んだ地に、デンマークの豊かな自然や慣れ親しんだ近所の農園、家族の庭など、心の原風景を映し出し、日本とデンマークの自然を融合させています。
風景をデザインするだけでなく、サステナブルであることも大切にしています。例えば、伐採したクマザサは短くカットして、園路をマルチングするチップとして活用。雨後に水がはけやすいほか、ふかふかとして歩きやすいなど利点がいっぱいです。
倒木の幹は花台に、枝葉はガーデン内のオブジェの材料として活用しています。バーグマンさんの豊かな発想は、生命の循環を意識することからも生まれています。
「ここには、箱根特有の色や香りがあり、独自の自然が息づいているんです。ユニークな生態系の保全を第一に、自然と融合できる機会を提供しつつ、癒やしと新しい発見、インスピレーションを得られるような場所を目指しています」。
左/木のツルを繭のような形に編んで吊したオーナメント。不思議な雰囲気を醸している。
中/折れた木の枝を束ねて作ったオブジェ。
右/伐根したクマザサの根をボール状にまとめたオブジェ。
左/梅の剪定枝を園路脇の柵に活用。ところどころに芽吹いた葉が見られる。
中/枯れ枝や剪定枝を鉢植えのマルチに活用。サークルを描いて施すところが、やはりデザイナーならではの小技。
右/流れるように並べられた本小松石。アーティストらしい小技があちこちで見られる。
パビリオンが感じさせる
フラワーアーティストが紡ぐ洗練
自然に親しみながら木漏れ日の輝く園路をたどると、都会的な雰囲気を放つパビリオン(グラスハウス)が出現します。黒いフレームが北欧の雰囲気を漂わせるガラスの温室。バーグマンさんが気に入っているデンマークのメーカー『JULIANA社』のものです。ブラックは森の中で悪目立ちしない色。
最初に出会うショップパビリオンでは、バーグマンさんがセレクトした草花を販売しています。初夏は大好きなアジサイをメインに、白・ブルー・紫・ピンクの花が、『SKAGERAK』のファニチャーとともにディスプレイされていました。
パビリオン内には、見頃を迎えたあでやかな鉢植えが、効果的に配置されています。これらは盛りを過ぎても切り花のように捨てられることはなく、ほかの場所で養生し、また見頃になったらディスプレイに出されます。このスタイルをバーグマンさんは「モバイルガーデン」と称し、飾るだけでなく、植物の健やかな栽培・生育にも意識を向けています。
北欧の洗練が香る
心にくい演出をチェック!
パビリオンだけでなく、園内あちこちに散りばめられたデンマークらしいデザインも見逃せません。最も効果的なのが、フォーマルな印象が強いツゲやコニファーのトピアリー。一般的には野趣に富んだ空間ではほとんど用いられませんが、あえて異なるスタイルのものを導入することで、自然な風景を洗練されたシーンに昇華させることができるのです。これをさりげなくやってのけるのは、バーグマンさんだからこそ。クマザサが茂る原生林に見事に溶け込ませています。
北欧風インテリアのカフェで、
こだわりのメニューを味わって
散策のあとは、エントランス奥にある『ノム ハコネ(NOMU hakone)』で、オーガニックコーヒーとこだわりのスイーツを。心地よい陽光が差し込む空間には、デンマークの老舗家具ブランド『フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)』や、照明ブランド『ルイス・ポールセン(LOUIS POULSEN)』など、スカンジナヴィアスタイルを取り入れ、北欧の雰囲気の中でくつろぎの時間を楽しむことができます。
カフェでは、ガーデン内の倒木を切り出してバーグマンさん自らデザインした、無垢のテーブルを使っています。すべての人や物に感謝するバーグマンさんの精神が、あちこちで見られます。
「箱根の素材をふんだんに使用したデンマークらしい料理」をテーマに、箱根周辺で育った野菜や果物を取り入れたサラダやスイーツを提供。国産小麦にこだわったパンは自家製酵母で発酵させて、毎日キッチンで焼き上げています。ここだけの季節のメニューを、ぜひ味わってみて。
またすべてのメニューが、ガーデン内のベンチや広々としたカフェパビリオンでいただけます。バスケットに入れてもらえるので、森の中でピクニック気分を楽しんでも。
フラワーアーティスト ニコライ・バーグマンの感性と箱根の自然が共鳴した『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。ここにつながるすべてのものを大切にする思いと、自然を守ることを核とした姿勢で育まれています。雨の日も楽しめるガーデン。ぜひ、四季折々に彩られる美しい風景を見に訪れてみてください。
ニコライ・バーグマン(Nicolai Bergmann)
デンマーク出身のフラワーアーティスト。20年以上日本を拠点として活躍し、現在、国内外に多数のフラワーブティックを展開している。日本の伝統、文化、風土から得られる和のインスピレーションとデンマーク(洋)スタイルとを融合させたデザインに定評がある。
【Garden Data】
ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ
神奈川県 足柄下郡 箱根町 強羅 1323-119
TEL: 0460-83-9087
https://hakonegardens.jp/
開園時間:10:00~17:00
休園日:水曜日 (水曜日が祝日の場合は開園し翌木曜日を休園)
アクセス:
箱根登山電車・「強羅駅」下車→箱根登山バス・観光施設めぐりバス「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」バス停下車すぐ。「強羅駅」からタクシーの場合約5分。車の場合は、御殿場ICから国道138号→国道733号経由(22km)で約40分。箱根湯本から国道1号→強羅駅→国道733号経由(10km)で約25分
【Garden Data】
ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ
神奈川県 足柄下郡 箱根町 強羅 1323-119
TEL: 0460-83-9087
http://hakonegardens.jp/
開園時間:10:00~17:00
休園日:水曜日 (水曜日が祝日の場合は開園し翌木曜日を休園)
アクセス:
箱根登山電車・「強羅駅」下車→箱根登山バス・観光施設めぐりバス「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」バス停下車すぐ。「強羅駅」からタクシーの場合約5分。車の場合は、御殿場ICから国道138号→国道733号経由(22km)で約40分。箱根湯本から国道1号→強羅駅→国道733号経由(10km)で約25分
写真協力(*)/ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ
Credit
写真&文 / 井上園子 - ライター/エディター -
いのうえ・そのこ/ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。ガーデニング以外の他分野のPR等にも携わる。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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