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街路樹のオレンジで発電⁉︎ 南スペインの古都セビーリャで出会った「美しき庭園と街づくり」

街路樹のオレンジで発電⁉︎ 南スペインの古都セビーリャで出会った「美しき庭園と街づくり」

グラナダのアルハンブラ宮殿が有名な、南スペインのアンダルシア地方にあるセビーリャの街。フラメンコ発祥の地として、また闘牛のメッカとして知られていますが、じつは歴史的な素晴らしい庭園が点在するガーデンシティでもあります。太陽の光がいっぱいのセビーリャの街に点在するグラマラスなガーデンを庭園文化研究家、遠藤浩子さんがご案内。前編では、街の植物にも目を向けながら、セビリア大聖堂とマリア=ルイサ公園をご紹介します。

スペインの古都、街路樹はオレンジの木


街路樹のオレンジ

スペイン南部、アンダルシア地方はヨーロッパの中でも太陽でいっぱいの温暖な気候に恵まれた土地。セビーリャの街を訪れた5月初旬はすでに初夏の陽気でした。17世紀、ルイ14世は、当時は貴重品だった庭園のオレンジの木を、フランスの冬の寒さから守るためにオランジュリーを作らせました。年間を通して温暖なセビーリャでは、そのオレンジなどの柑橘類が街路樹として植えられていて、南欧らしい雰囲気が素敵です。

セビリヤ大聖堂

街の中心に位置するセビリア大聖堂のコートヤードを埋めるのも、やはりオレンジの木。オレンジの木は日差しや乾燥に強い常緑樹で、春咲く花には芳醇な芳香があります。夏には緑陰を作り、オレンジ色の実もアクセントになります。またスペインやイタリアでは、オレンジの木は豊穣や幸福の象徴ともされていて、庭園や街の中のそこかしこで見ることができます。

セビーリャの街とセビリア大聖堂

セビリア大聖堂

セビリア大聖堂は、ローマ、バチカンの聖ピエトロ大聖堂を除き、ヨーロッパで一番大きなカテドラルで、中には新大陸の発見者コロンブスの墓などもあります。カテドラル建築にしてはちょっと不思議な形をしているのですが、じつはモスクだった建物がカテドラルに改修されたもの。セビーリャを一望するヒラルダの塔もモスクのミナレット(尖塔)だった部分だそう。

すべて破壊して作り直すのではなく、すでに造られていた優れた建造物を利用する、それが独特のデザインを創る面白さがあります。イスラム文化圏であったのちに、13世紀のレコンキスタでカスティーリャ王国となり、16世紀から17世紀にかけては、スペインで一番人口の多い都市であったこともあるセビーリャ。イスラム文化とヨーロッパ文化の交わる古都であったゆえに、建築的にも庭園的にも見所がたくさんあるのです。

大聖堂から、セビーリャの街の眺め
大聖堂から、セビーリャの街の眺め。

ちなみにの街路樹のオレンジは苦すぎて食用には適さないため、冬には大量に実った果実の処理が問題になるほどだそうです。一部はグランマルニエ、コアントローやマーマレードに加工されたり、また近年では、市営の下水処理場のテクノロジーを活用し、街のサスティナビリティ、循環型経済の一環として、不要なオレンジの果実からメタンガスを抽出、グリーン電力を作り出すプロジェクトが行われているのだとか。

スペインの古都のジャカランダの花々

ジャカランダ

さて、5月から6月の時期に見事なのが、青紫色のジャカランダの花々。セビリア大聖堂のヒラルダの塔から眺めた街の所々にある青紫色は、ジャカランダの花。年間を通じての温暖な気候が必要なため、日本では静岡・宮崎・長崎などで近年、街路樹に採用されはじめた花木ですが、5~6月の開花シーズンに満開の青紫色の花で覆われた姿はじつに見事。ぜひ一度は見てほしい花風景です。

スペイン広場とマリア=ルイサ公園

スペイン広場

セビーリャの街の中心的なランドマークの一つであるスペイン広場は、1929年のイベロアメリカ博覧会の際につくられた場所です。長い運河の水景を前に、イスラム様式の影響がヨーロッパ・ルネサンス様式に融合して生まれたムハデル様式に特徴的な、レンガ造りやアーチのデザインにタイル装飾、木工細工などが多用された半円形の曲線の美しい建物。

スペイン広場

隣のマリア=ルイサ公園(34ha)は、元はスペイン王室所有だった地所が、1914年に都市公園となり、イベロアメリカ博覧会の機会に会場の一部ともなるべく、大幅に改修・拡張されたものです。設計は、パリのバガテル公園のバラ園なども作ったフランスの造園家ジャン=クロード・ニコラ・フォレスティエ。

マリア=ルイサ公園
マリア=ルイサ公園

彼は、豊かな自然を生かしつつ、庭園デザインにムハデル様式を取り入れ、フランスやイタリアの庭園様式の要素も融合させた独特の風景を創り上げ、その後、20世紀前半の数十年間に渡って、ヨーロッパの都市公園設計に大きな影響を与えることになりました。

マリア=ルイサ公園
マリア=ルイサ公園

園内を散策していくと、自然風だけれども人工の岩場と池や、彫像と円形の植栽など、どこか19世紀から20世紀初頭のフランスの都市公園に通じる要素があり、また、イスラムの庭園を思わせるような、タイル装飾が多用された直線幾何学的で対称的な配置の池と噴水、パーゴラやアーチなどのムハデル様式的な要素が、明るく静謐な雰囲気の溢れる緑の空間を作り出しています。

マリア=ルイサ公園
マリア=ルイサ公園

イスラム庭園と同様、水の要素は重要で、水路や池や噴水などの水景は景観の中心となり、水音が涼しく穏やかに響きます。

マリア=ルイサ公園の花々

また、印象的なのは圧倒的に豊かな緑を織りなす植物たち。ブーゲンビリアなどのつる植物が繁茂し、立ち並んだヤシの木がエキゾチックな雰囲気を運び、地中海沿岸原産の植物だけあって元気に群生するアカンサスは、ほとんどグラウンドカバーのよう。ナチュラルというよりも、よく整備された庭園ながら、緑に抱かれるような心地よさがあります。 

さて次回、後編では、やはりムハデル様式の代表例でもあるゴージャスなアルカサル王宮の庭園と、歴史的な個人邸カサ・デ・ピラトにご案内いたします。

セビーリャの街
タパスを楽しめるビストロが並ぶ、夕方のセビーリャの街。

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