福岡県久留米市にバラと草花にあふれるクリニックがあります。院長の真島康雄さんが手がけるこの庭は、全て無農薬有機栽培。20年以上に渡って庭の植物や昆虫を丹念に観察し、科学的な視点で導かれたその栽培方法は、誰もが手軽に、気軽に、花いっぱいの庭をつくることができる方法です。Dr.真島こと真島康雄さんに、バラの無農薬有機栽培について伺いました。

Print Friendly, PDF & Email

無理をしない、簡単で効率的なバラ栽培

Dr,真島の無農薬バラ栽培

Dr.真島こと真島康雄さんは、福岡県久留米市で自宅と病院、2つの庭でバラを育てています。真島さんは現役の医師で、平日は朝から夜まで全国から訪れる患者さんの診察と執筆の仕事に追われ、庭仕事をする時間があまり持てません。「朝の30分と月の2回ほどの、週末に時間が取れるかどうかです。それに私は腰痛持ちなので、あまり無理もできません」。

そんなDr.真島の庭づくりのモットーは…、

  • 「無理をしないこと」
  • 「簡単であること」
  • 「効率的であること」

医師ならではの科学的な視点で、植物や生き物をじっくり観察し、検証を重ねてたどり着いたのが、現在行っている無農薬有機栽培です。そのポイントは大きく分けて以下の3つ。

Dr.真島の無農薬有機バラ栽培の3つのポイント

Dr.真島の無農薬有機バラ栽培

①病気に強い品種を選ぶこと

バラは品種によって耐病性に差があるので、まずは病気に強い品種を選びます。苦労がそのぶん少なくて済みます。

②益虫を呼ぶ下草を植えること

バラにはいろいろな虫が集まってきますが、その中にはバラの葉をかじったり、つぼみを枯らしたり、根っこをだめにする「害虫」がいます。その一方で、「害虫」を食べてくれる「益虫」もいます。Dr.真島は、バラの庭を訪れる虫たちの生態を何年にもわたって観察し、特定の下草を植えることで益虫を増やすことに成功しました。

③土中の善玉菌を増やすこと

健康な土には、わずか1gの中に1億以上もの土壌微生物が棲んでいるといわれ、土の中の多種多様な微生物と植物とは、互いに影響し合いながら生命活動を行っています。植物はある種の善玉菌と共生関係を築き、病原菌などの有害微生物(悪玉菌)から根を守ってもらい、健康を保っています。

このように、菌や昆虫など自然界の生き物の「共生関係」や「勢力争い」をうまく利用するのが、Dr.真島の無農薬有機バラ栽培のポイントです。

バラの免疫細胞を活性化する土中の善玉菌

「善玉菌の大きな役割の一つは、免疫細胞の活性化です。免疫細胞というのは私たち人間を含めた生物の身体に最初から備わっているもので、日夜身体中をパトロールし、病気の原因物質の除去、無毒化、損傷を受けた組織の修復など、命を守るために全力で働いてくれているのです。免疫細胞は身体中にいて、それぞれに役割がありますが、それら一つひとつの働きが5%上がっただけでも、ほとんどの病気は自己治癒できると私は考えています。ですから、私の無農薬有機バラ栽培の方法は、免疫細胞たちの活動の邪魔をしないこと。お手伝いし、元気付けることです。どうやって元気づけるのかといえば、免疫細胞を活性化させることが分かっている善玉菌を土中に増やすようにするのです」

「善玉菌」といわれるある種の菌たちは、免疫細胞の働きを活性化することが分かっています。Dr.真島は、そうした善玉菌たちを豊富に含むオーガニック肥料「夢油肥」を考案。バラ栽培はもとより、庭の草花や野菜の栽培にも使っています。

バラの生育が2倍になるDr.真島考案の有機肥料「夢油肥」

土作り

「『夢油肥』には、納豆菌、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌が入っています。これらの菌は、いわば善玉菌のベストメンバーです。菌たちは各々の生命活動の過程で、バラの健全な生育に必要なアミノ酸や酵素、鉄、マグネシウムなどの必須ミネラルを発生させます。私の実験では、何も肥料を与えないバラの鉢と比較して、『夢油肥』を与えたバラの鉢は、生育が2倍になるという結果が出ています。この栄養素は異なる菌たちの関わり合いの中で生まれるため、単独ではダメで、多様性が大事なのです」

善玉菌と免疫細胞の働きで病原菌を退治

バラの免疫細胞

バラ栽培が難しいといわれる一つの理由には、バラの病気があります。バラに病気を発生させるのも菌ですが、「夢油肥」に含まれる菌たちは、それらを駆逐する拮抗菌としても活躍します。例えば、バラを枯死させる病気に「うどんこ病」があります。うどんこ病原菌は空中に浮遊しており、いつでも罹患する可能性がありますが、「夢油肥」に含まれる納豆菌には、うどんこ病原菌を駆逐する働きがあることが分かっています。

「もちろん、その納豆菌の働きもありますし、他の土中の善玉菌たちも、バラの中の免疫細胞を活性化させる働きがあります。免疫細胞は、簡単にいうと病気の原因物質を見つけて食べてくれるのです。ですから、私の庭のバラはそもそもほとんど、うどんこ病にかかりませんし、少し発生しても、いつの間にか自然に治ってしまうので気にしていませんね。人間と同じで、免疫力が高ければ、病気や害虫被害にあったとしても、その損傷を自分で治すことができるのです」

益虫を増やす下草

キャットミント
weha/Shuttetstock.com

バラ栽培の悩みのもう一つとして、害虫があります。Dr.真島は、それも自然界のサイクルを利用して、無農薬で対処しています。「4〜10月、ちょうどバラの開花時期と重なって紫色の花を咲かせてくれる宿根草にキャットミントがあります。この花はバラによく似合いますし、益虫たちの棲処にもなっており、私の庭には欠かせません」

テントウムシ
cherryyblossom/Shutterstock.com

バラの害虫の中でも、最も数が増えやすいのがアブラムシ。アブラムシは単為生殖といい、メスだけでクローンのように子を増やす生殖サイクルを持っており、1匹のメスが毎日およそ10匹の子を生みます。生まれた子たちも、10日もすると子を産むようになるため、恐ろしい勢いで増えていきますが、Dr.真島は、この対処をキャットミントに棲む益虫たちに任せているといいます。

「アブラムシはとても数が増えやすいのですが、これを食べる天敵も多いんです。テントウムシやハナアブ、クサカゲロウがアブラムシを捕食してくれますが、彼らの棲処がキャットミントです。特にハナアブはこの花の蜜が好きで、よく集まってきます。また、冬はキャットミントを地際で刈り取っておきますが、刈り取った茎も善玉菌たちのエサとして役に立つんですよ」

冬にやっておきたいバラの土づくり

Dr.真島の無農薬有機バラ栽培

「善玉菌たちは、植物の繊維などの有機物をエサとしているんです。山や森では落ち葉が積もって自動的に善玉菌たちにたっぷりエサが供給されるシステムになっていますが、庭ではこれを人がやる必要があります。ですから、私は抜き取った雑草や刈り取ったキャットミントを細かく切って庭に置いておきます。そうすると1〜2カ月で、だいたいフカフカの土に変わっていますね。菌たちがエサとしてそれらを分解するのです。切り口からでないと菌たちが入っていけませんので、ポイントはなるべく細かく切っておくことです。『夢油肥』や有機液肥をかけておくと、さらに分解が早く元肥としても使えるため、私は冬の間の元肥と土づくりを、このようにして同時に行っています」

無農薬有機バラ栽培は生物多様性がポイント

Dr,真島の無農薬有機栽培のバラの庭

このように、Dr.真島の庭は、バラだけでなく、ほかの草花や、そこを棲処とする昆虫たち、土壌微生物たちなど、多様な生物で構成されています。それらの直接的、間接的な関わり合いをバラ栽培に利用し、最小限の手入れで花いっぱいの庭を実現するのが、Dr.真島の無農薬有機バラ栽培。いろいろな植物があり、いろいろな生物がいてこその方法ですが、豊かな生態系が庭に構築されていることは、人にとっても癒やしになると話します。

無農薬栽培のバラの庭

「庭のバラも昆虫も鳥たちも、私のクリニックの大事なスタッフです。長くガンの患者さんを診てきましたが、ときとしてガンは病巣だけでなく心まで蝕んでしまうことがあります。医師としてその心のありようを深く理解し、心の負担をできる限り軽くするための一つの手段が、この庭でもあります。人は困難なとき、あらゆる生き物と共にあるという体感が大きな力になることがあります。だからこそ、私はこの庭は無農薬有機栽培で、豊かな生態系を持つ庭にしておきたいのです」

Dr.真島が考案した100%オーガニック肥料「夢油肥」

夢油肥

Dr.真島は土壌の善玉菌たちの働きに着目し、バラの健康づくりに活用できる善玉菌を多く含む100%オーガニック肥料「夢油肥」を考案。実証研究を重ねた後、「平田ナーセリー」で商品化を実現しました。

「有機肥料というと効果がゆっくりのものが多いのですが、夢油肥は即効性があるのも特徴です。株が大株になり、四季咲きの連続開花率が高まって、秋のバラもたくさん咲いたのには驚きました。私が夢油肥などを使って無農薬有機栽培で庭づくりをしているのは、こんなふうにラクして花いっぱいが叶うからです。夢油肥を土の上にまいておけば、あとは菌たちにお任せ。使い方も簡単ですし、初心者にこそおすすめですね」

会員募集

Credit


文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

写真/真島康雄

illustration/Kotkoa、Komleva、Gaianami Design

Print Friendly, PDF & Email