ロマネスコは、ブロッコリーとカリフラワーの仲間で、カリッコリー、カリブロとも呼ばれる不思議な形が魅力の野菜です。ひとつの小さなまとまりを作っている花蕾(からい)が、またもうひとつの同じ形をしたまとまりを作り、大きな螺旋状を描くフラクタル形態を形成しています。美しい形を作るためには、栽培のうえでさまざまな手入れが必要で、なかでも土作りは重要な要素です。NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
ロマネスコを育てる前に知っておきたいこと
ロマネスコは、ブロッコリーやカリフラワーと同様、小さな花のつぼみが集合している部分を食します。甘みがあり、クセのない味が特徴で、サラダなどにして食べるのが人気です。年々、ロマネスコを栽培する人が増え、種子や苗はインターネットなどで簡単に手に入ります。しかし、美しいフラクタル構造を形成させるためには丁寧な手入れと、肥料が必要です。水やりも多少コツがあるので、中級者向けの植物といえるでしょう。
ロマネスコは低温になると、花芽ができやすい性質があるので、植えつけは晩夏がベストです。涼しくなりすぎる前に植えないと、株が小さい状態で気温が低くなってしまい、花芽が小さくなってしまうので気をつけましょう。
ロマネスコの基本データ
学名:Brassica oleracea var. botrytis
科名:アブラナ科
属名:アブラナ属
原産地:ヨーロッパ
和名:―
英名:Romanesco broccoli、Cauliflower romanesco
収穫期:11月下旬~12月
花色:白、緑
発芽適温:20~25℃
生育適温:15~20℃
よい土は、水はけ、水もちに優れています
ロマネスコが立派に育つためには、水はけと水もちのよい土が必要です。土は水はけがよすぎると根を乾燥させてしまいますし、水もちがよいと根を腐らせる原因になります。つまり、水はけと水もちのバランスが、植物の生育に大きな影響を及ぼすのです。
鉢で育てている場合は、鉢内に水が溜まりやすいため、特に水はけのよい土壌環境を作り、新鮮な空気と水が循環するようにしましょう。
水はけと水もちの両方がよい土は、「団粒構造」をもっています。団粒構造とは、小さな土壌の粒子が集まって、さらにもっと大きな塊になっている状態のこと。この塊同士の隙間には、空気や水が含まれています。この空気や水が、排水性と保水性、そして通気性に関係してくるのです。
団粒構造は、微生物が有機物を分解するときに分泌されるものや、ミミズの糞などが固まって形成されると考えられています。ミミズや微生物が活発に活動できる環境が整うと、土の団粒化は進みます。微生物が多いほど「肥えた土」と呼ばれるのは、団粒化が進んで肥料も水もよく保ち、また水はけがよいことが理由です。
種類を知ることが、適した土作りへの近道
ロマネスコを育てるために必要な土にはいくつか種類があります。
腐葉土
広葉樹の落ち葉を腐熟させたもの。有機質に富んでいるため土中の微生物の働きを高め、土を肥えさせてくれます。保湿性、保温性が高いのが特徴です。
赤玉土
保水性、排水性、保肥性に優れ、弱酸性の土です。関東ロームの中層の土で、粒の大きさで分類されて販売されています。
バーミキュライト
鉱石に熱処理を加えた土で、保温性、保肥性、保水性に優れています。赤玉土と同様、粒の大きさで分類されて販売されています。
堆肥
有機物を微生物が分解して作った肥料で、主に落ち葉や牛ふん、もみ殻、生ごみなどが利用されます。
苦土石灰
酸性に傾いた土壌をアルカリ性に戻す物質で、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムを主な主成分としています。”
元気に育てるための、ロマネスコの土作り
ロマネスコを立派に育てるにはコツがあり、そのひとつに土作りが挙げられます。土には水分だけではなく、栄養分を植物に与える働きがあり、微生物の住処にもなっています。肥えた土は、肥料がたくさん含まれているのはもちろん、微生物の種類と量が豊富にあり、新陳代謝が活発な土です。
ロマネスコは酸性の土壌が苦手で、肥沃な土地を好む植物なので、常に栄養たっぷりの状態に土を保つ必要があります。実際に、ロマネスコを育てるのに適した土作りにはどんなことが必要になるのか見てみましょう。
初心者が簡単に用意できる土は、市販されている培養土です。培養土にはさまざまな種類があり、植物用、野菜用、花用、樹木用、さらに肥料が入っているものなど多岐に渡ります。それぞれの違いは、配合している土や肥料の種類です。たとえば、野菜用は味を向上させるためにアミノ酸などが配合され、花用よりも肥料が多く含まれています。
ロマネスコはpH6~6.5の土壌を好み、肥料が入っている土壌に植えるのが理想です。市販の培養土を使う場合は、野菜用を選んでください。
自分でブレンドして土を作る場合は、赤玉土6:腐葉土3:バーミキュライト1の割合で混ぜたものを用意します。
地植えの場合は、まず、土壌の酸度を調整する必要があります。植えつけの2週間前に、1㎡に100g(土の表面が白くなる程度)を目安に苦土石灰をまき、さらに腐葉土や牛ふんなどの堆肥を1㎡につき3㎏、化学肥料を1㎡に100gを施します。
植えつけ時には元肥を与えます。元肥とは、若い苗の成長を助け、今後育っていく土台を作るために必要なものです。通常、遅効性肥料が用いられます。元肥は、土の中で分解されて初めて効力を発揮するものなので、必ず2週間ほど前に与えましょう。種まきの直前に施してもあまり効果がありません。
追肥は、植えつけ1か月後を目安に施します。
ロマネスコの、植えつけの時期
ロマネスコは、鉢植えでも地植えでも、植えつけたあとは、植え替えを特に必要としません。
植えつけ適期は、8月下旬~9月の晩夏です。事前にポリポットなどに種まきした場合は、本葉が5~6枚出てきたら、植えつけます。
ロマネスコは、低温になると花芽ができやすい性質を持っているため、植えつけは、寒くなる前の晩夏に必ず行いましょう。涼しくなりすぎる前に植えないと、株が小さい状態で低温に出会ってしまい、花芽が小さくなります。
土のほか、植えつけ時に準備したいもの
ロマネスコを植えつける時は、次のものを用意しましょう。
準備するもの(鉢植え、地植え共通)
・適した土(前述のとおり)
・ロマネスコの苗
・肥料
・土入れ、移植ゴテ
・ジョウロ
*鉢植えの場合は、下記のものも用意
・鉢
・鉢底ネット
・鉢底石
ロマネスコの植えつけ方法が知りたい
ロマネスコの植えつけ方法は、比較的簡単です。前述したとおり、酸度の少ない、栄養分が豊富な元肥が含まれた土を用意します。
大きい苗にしたい場合は、大きな鉢にひとつの苗を植えるか、もしくは地面に十分な株間を開けて植えてください。プランターに植える際は、少なくても株間30㎝は開けましょう。たとえば、60㎝のプランターであれば、ふた株が適しています。
鉢植えの場合の手順
①鉢に鉢底ネット、鉢底石を敷き、培養土を入れます。
②培養土の上に苗を置きます。
③苗がぐらつかないよう、土を入れ、植えつけ完了です。
地植えの場合の手順
①事前に植えつけ場所をよく耕して、土作りを済ませおきます。
②大きめの穴を掘ります。
③穴に置きます。植えつけ間隔は、30~40㎝が目安です。
④苗がぐらつかないよう、土を入れ、植えつけ完了です。
鉢植え、庭植えとも、植えつけ後は、たっぷりと水やりをしておきます。
植えつけたあとに水をたっぷり与えるのは、土と根をなじませ、養分と酸素を行き渡らせるためです。立派な株を育てるための大切な作業なので、しっかりと行ってください。土の表面を湿らせるだけでは、根に水が行き渡らないので注意しましょう。
定植してからは3週間にいちどの頻度で追肥を行い、1週間にいちど、水やりのタイミングで液体肥料を混ぜた水を与えると立派な株が育ちます。
植えつけをするときの注意点はこちらです
ロマネスコの植えつけ時の注意点は、他の植物と同じです。ロマネスコに適した土を使い、鉢は、苗の大きさにあったサイズのものを使用。また、時期は必ず、適期に行ってください。
Credit

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
文・サグーワークス
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