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ガジュマルの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します

ガジュマルの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します

独特の樹形が愛らしいガジュマルは、人気の高い観葉植物です。沖縄ではガジュマルに妖精「キジムナー」が宿るという伝承があり、「多幸の木」として愛されてきました。ここでは、そんなガジュマルの育て方のコツや、日々のお手入れ方法を解説します。丈夫で育てやすく、初心者にもおすすめなガジュマルを、インテリアグリーンとして取り入れてみませんか。 NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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ガジュマルを育てる前に知っておきたいこと

ガジュマルはインドやオーストラリアなど熱帯・亜熱帯地域に分布する樹木で、日本では沖縄や屋久島に自生しています。暖かい環境であれば比較的育てやすく、苗から育てるのが一般的なので、初心者にもおすすめの植物のひとつです。

ガジュマルの基本データ
学名:Ficus microcarpa
科名:クワ科
属名:フィカス属
原産地:東南アジア、台湾、日本、インド、オーストラリア
和名: ガジュマル
英名:Chinese Banyan、Malayan Banyan
開花期:4月中旬~5月下旬
発芽適温:20~30℃
生育適温:5℃以上

日本では、春から秋は屋外で育てることができます。冬で外気温が5℃を下回る場合は、日当たりのよい室内で温度管理をしましょう。

種類を知ると、選び方がわかります

ガジュマルにはいくつかの種類があり、よく見比べてみると、それぞれ特徴があります。ここでは、よく出回る4種類を紹介します。

ガジュマル
一般的なガジュマルとして知られていて、沖縄などに自生しているのがこのタイプです。生命力の強い木なので、日光に当ててあげれば、元気にぐんぐん成長します。自生しているガジュマルは、20mを超える大木も珍しくありません。

新芽が出やすいので、定期的な剪定も難しくなく、自分好みの姿をキープするのも比較的簡単です。

ニンジンガジュマル
先に紹介したガジュマルと同じ品種ですが、見た目に特徴的な違いがあるため、区別して「ニンジンガジュマル」と呼ばれています。

その名のとおり、ニンジンのようにぽっこり膨らんだ幹がユニークで、インテリアグリーンとして高い人気を博しています。園芸店でよく見かけるのも、このタイプです。

種子から育てたガジュマルは、幹が膨らんで丸みを帯びた形に成長します。数年かけて育てたものをいちど土から引き抜き、根が見える状態で植え替えたものがニンジンガジュマルです。性質は一般的なガジュマルと変わらず、日光に当ててあげれば元気に育ちます。

センカクガジュマル
尖閣諸島に自生する品種で、匍匐性(※1)で土に向かって多数の気根(※2)を出すのが特徴です。先に紹介したガジュマルより葉が小さく、耐寒性、耐陰性があります。育てやすく丈夫です。希少品種のため、園芸店で販売されているものは接ぎ木のものがほとんど。オリジナルのセンカクガジュマルが、手に入ることはほぼないといえるでしょう。

パンダガジュマル
センカクガジュマルの突然変異で生まれた品種で、高価な希少種として知られています。パンダの耳を思わせるような、丸く肉厚の葉っぱがかわいらしく、ガジュマル好きの間では「いちどは手に入れてみたい、憧れのガジュマル」として羨望の的となっています。

※1 匍匐性(ほふくせい):地を這うように伸びる、植物の性質を指します
※2 気根(きこん):空気中に出ている植物の根のこと

ガジュマルを育てるときに必要な準備は?

ガジュマルを育てるときは、以下のものを用意しましょう。

準備するもの
・ガジュマルの株
・鉢
・鉢底ネット
・鉢底石
・土*観葉植物用
・割り箸
・ハサミ

鉢は根腐れを起こしにくい、浅形のものがおすすめです。株よりひと回り大きめのものを選んでください。鉢底には鉢底石(軽石)を敷いて、水はけをよくしましょう。

ガジュマルは日当たりがよい場所を好みますので、鉢の置き場所についても先に考えておきましょう。

適した土作りが、育てるコツの第一歩

ガジュマルの栽培には、排水性、通気性のある土が最適です。

市販の「観葉植物の土」は水はけがよく、ガジュマルの栽培に最適なバランスで配合されているので、初心者におすすめです。ただし、安価なものには人工土が使用されていることが多く、保水性が高すぎて根腐れの原因になることがあります。多少値段が高くなっても、天然土を使用したものを購入することをおすすめします。

自分で単粒の土をブレンドして作る場合には、赤玉土(小粒)、腐葉土、パーライト(小粒)を6:3:1の割合で混ぜます。

ガジュマルの育て方にはポイントがあります

ガジュマルは市販の株を購入して育てるのが一般的です。植物栽培に慣れていない方でも、失敗が少ないでしょう。

ガジュマルの育て方~株から始める~

株の選び方

ガジュマルの株は、園芸店やホームセンターなど、さまざまな場所で販売されています。葉の色が鮮やかで、艶があるもの、幹の根元が固くグラグラしないものを選んでください。葉先が黄色くなって萎れているものや、幹にシワがある株は、根が弱っている可能性があるので避けましょう。また病害虫がついていないか、しっかりと確かめましょう。

ガジュマルは同じ品種でも、「世界にひとつとして同じ形がない」といわれるほど、個性豊かな樹形をしています。愛着をもって、長く育てられるような、気に入った形の株を選びましょう。

植えつけ時期と方法

ガジュマルの植えつけに最適な時期は5月上旬~7月上旬です。この時期は気候が暖かく、ガジュマルが成長期に入る時期。植えつけの際に、万が一、ガジュマルの根を傷つけてしまっても修復が早く、定着しやすいからです。夏や冬は休眠期で根が修復できないので、植えつけを行うのは避けてください。

植えつけ手順は下記の通りです。

①株をプラポットから抜きます。
②根から土を丁寧に取り除き、傷んだ根をハサミで切ります。
③鉢の底に鉢底ネットを敷きます。
④ガジュマルの幹が、1cm程度土に埋まるよう調整しながら土を入れます。
⑤鉢の上部から2cm程度あけて、割り箸などで細部までしっかりと土を詰めます。このとき、鉢の上部から土までは2㎝程度あけておきます。

ガジュマルと仲よくなる日々のお手入れ

ガジュマルの水やりのタイミング

ガジュマルの成長期である春~夏にかけては、毎日、水やりをしましょう。ただし、1日経っても土の表面が乾いていない場合や、室内で栽培している場合は、2日以上あけて、水やりをするようにしてください。

休眠期である秋~冬(10℃以下)の水やりは、土の乾き具合に応じて、月に1、2回程度に抑えます。この時期に水をあげすぎてしまうと、根腐れの原因となります。

水は、鉢底から流れ出るくらい、たっぷりあげるようにしましょう。土の中に溜まった不要物を取り除き、新鮮な空気を取り入れてくれます。

また、元気で丈夫なガジュマルに育てるためには、霧吹きで直接、葉に水を吹きかける「葉水」を毎日行うことがおすすめです。湿潤な気候を好むガジュマルにとって、理想の環境に近づけることができます。これは、葉や幹表面の乾燥を防ぐので、ダニやアブラムシなどの害虫の予防にもつながります。葉の表面と裏面、茎や幹にも忘れずに行いましょう。

ガジュマルの肥料の施し方

ガジュマルは肥料をあげなくても、元気に育ちます。特に室内で育てる場合には、肥料をあげることで、枝葉が大きくなりすぎてしまうことがあるので、注意しましょう。

大きく育てたい場合には、成長期の春から夏の間、月1~2回の頻度で肥料を与えます。肥料はN(チッ素):P(リン酸):K(カリ)の比率が、同一に近いものを選びましょう。時間をかけてゆっくり作用する、固形の緩効性化成肥料がおすすめです。

立派に育てるための、植え替え時期と方法

ガジュマルは鉢が手狭になると、根が詰まって根腐れを起こしてしまいます。2~3年にいちどくらいの割合で、成長期の5~7月にひと回り大きな鉢に植え替えを行ってください。鉢の底から根が飛び出すような場合は、できるだけ早めに植え替えるようにしましょう。

剪定を行うときは、時期に注意しましょう

ガジュマルは生命力の強い植物なので、枝がどんどんと伸び広がります。見た目よく楽しむには、剪定が欠かせません。

剪定は5~6月の成長期の前半に行うと、剪定によるダメージが最小限で済み、早期にしっかり修復します。

ガジュマルの剪定は「切り戻し」という方法で行います。言葉どおり、不要な部分を切って、元の状態に戻す剪定方法です。具体的な手順は下記のとおりです。

①枯れている枝は、根元から切り落とします。
②重なり合う枝は、どちらか一方を根元から切ってください。
③真上に伸びる枝の先端を切り、高さを整えます。
④左右に飛び出ている枝の先端を切り、全体のバランスを整えます。

また、ガジュマルが全体的にひょろひょろと冗長して、元気がない場合には、幹以外の枝をすべて切り落とす「丸坊主」が有効です。

どちらの方法でも、切り口からは白い樹液が出ます。そのままにしておくと、ほかの葉や枝に樹液が付いて固まってしまい、見た目が悪くなります。切り口の樹液は、ウェットティッシュなどでふき取ってきれいにしましょう。ふき取った後はそのままで問題ないですが、心配な場合には、ホームセンターなどで購入できる癒合剤と呼ばれる薬剤を塗布するのもひとつの手です。癒合剤は切り口がふさがる力を促進させる効果があり、切り口が塞がる前に病害虫が発生するリスクを軽減してくれます。

知りたい! ガジュマルの増やし方

ガジュマルの種の採取の時期と方法

ガジュマルは種から育てることもできますが、開花条件など曖昧な部分が多いために種自体があまり流通しておらず、手に入れるのが容易ではありません。後述するように、ガジュマルを増やしたいときは、挿し木を行うといいでしょう。

ガジュマルの挿し木の時期と方法

ガジュマルは、挿し木で増やすのが一般的です。剪定で切り落とした枝が使用できるので、剪定を行った後にはぜひ、挿し木にチャレンジしてみましょう。剪定を行う4~6月は新芽が出やすい季節なので、挿し木を行うのに最適なタイミングです。

手順は下記のとおりです。

①切り落としたガジュマルの枝を、先端から10cm程度の長さに切ります。
②先端の葉1枚を残して、残りの葉はすべて摘み取ります。
③枝の切り口から出る、白い樹液を水できれいに洗い流します。
④水をためたコップに、枝の切り口を数時間つけておきます。吸水と白い樹液を取り除きます。⑤赤玉土やバーミキュライトを鉢に入れ、中央に指で穴を開けて、枝を挿します。
⑥直射日光が当たらない明るい場所に置き、土が乾いたらたっぷりの水をあげながら、管理します。
⑦新芽が出て、根がしっかり生えたら、新しい鉢へ植え替えます。

毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです

育てるときに注意したい病気

ガジュマルには、特別に気をつけなければならない病気はありません。水の与えすぎによる根腐れに気をつけていれば、病気に悩まされることは少ないといえます。

育てるときに注意したい害虫

ガジュマルは、害虫にも比較的強い植物ですが、絶対に虫がつかないというわけではありません。毎日観察し、異変がないかチェックするようにしましょう。

ハダニ
白く小さな虫で、乾燥した葉や茎に発生します。見つけたら殺ダニ剤を散布して駆除しましょう。予防には、葉を乾燥させないことがいちばんなので、葉水が効果的です。葉水とは、葉にも水を与えること。水やりをするときに、土だけでなく、葉全体に水がかかるようにしたり、霧吹きを使って葉に水を吹きかけたりしてください。

カイガラムシ
表面が硬い殻で覆われた虫で、葉や茎につきます。殺虫剤が効きづらいので、カイガラムシがついてしまったときは、歯ブラシなどを使ってこすり落とします。風通しの悪い場所で発生しやすいので、屋外や通気性のよい窓際に、ガジュマルの鉢を置くようにしましょう。また、ハダニ同様、葉水も効果的なので、毎日行うのがおすすめです。

Credit

記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

文・ランサーズ

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