イメージどおりのエクステリアデザインを実現したい! 押えるべきポイントは?

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すてきな家の外観を、よりいっそう引き立てるには、エクステリアの充実がポイント。オーストリア・ウイーンを代表する建築家、ハンス・ホライン(1934~2014年)は、「建物そのものでなく、主体を取り囲み影響を与える環境こそが建築である」と言っています。
エクステリアを充実させて、住宅をよりオシャレに演出してみませんか?
エクステリアのデザインを決める際のポイントや、実際の事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
デザインを依頼する前に押えたいポイント

エクステリアとは、「外観」という意味の英語で、インテリアの対義語。昔は門扉や塀などの外構(がいこう)を指す言葉でしたが、今では、外構のみでなく、外壁、庭や物置、ガゼボ(西洋風あずまや)などの屋外工作物を含めた建物の外観全体を指す言葉として使われるようになりました。
よく、「敷地が狭いので、エクステリアで演出する余裕がない」とか、「特別好みがないので、どんなデザインにしてよいのか悩んでいる」というお話を聞くことがあります。
敷地が狭い場合でも駐車スペースをアプローチと共有してデザインしたり、舗装のデザインしだいでステキに見せることができます。また、住宅に使われている仕上げ材や色の一部をエクステリアにも使うことで統一感が生まれ、まとまりやすくなります。
エクステリアのデザインを分かりやすくするために、代表的な3つのデザインスタイルをご紹介します。
オープンスタイル

門扉、塀などで囲いを作らない開放感のあるスタイルです。外構工事の費用などがかからない分、費用は抑えられますが、公道から敷地内が見通せるため、植栽や目隠しフェンスなどで室内が見えにくくする工夫が必要です。光センサーなどで防犯対策も考慮しましょう。
セミクローズスタイル

ほどよい開放感と落ち着きを兼ね備えたオープンとクローズの中間的スタイルです。塀の代わりに生け垣や角材を等間隔に並べるなど、敷地内が見え隠れするデザインです。門扉がない場合は、リフォームなどで門扉を後付けしやすいように、門柱だけは設置しておくと便利です。
クローズスタイル

塀や門扉などで敷地をしっかり囲ったスタイルです。外部から敷地内の視線をカットするため安心感があります。しかし、塀を乗り越えてしまえば外部から見られることがなくなるため、意外に犯罪者にとっては好都合なことも。ホームセキュリティーなどの防犯対策も行いましょう。塀で囲うため、圧迫感が出たり単調なデザインにならないよう、景観上の配慮も必要です。門回りをシンボリックにするなどの工夫をしたいものです。
イラストのように、それぞれのスタイルは、オープン→セミクローズ→クローズの順に、外部から敷地内が見通せなくなっていくデザインです。一般に、外壁と塀、サッシと屋根付きテラスや角材、門扉、フェンスなどの素材や色調を合わせることで一体感が生まれ、まとまりのあるイメージになります。予算やお好みに合わせて検討しましょう。
デザインイメージの考え方
ところで、我が家のエクステリアのデザインは、どんなイメージにしてみるとよいのでしょうか? 思い浮かばない場合に、よい方法があります。それは、イメージキーワードをあげて、素材や色調を決める方法。
例えば…、
●「ナチュラル」/木、石、植栽などの自然なイメージ
→木目調の角材フェンスや門扉。
●「カジュアル」/カラフルで楽しいイメージ
→白ベースの中に赤、黄、青などをワンポイントで使ったポストなど。
●「エレガント」/シックで落ち着いた洋風のイメージ
→ベージュをベースに色ムラがある不揃いのレンガを積み上げた塀やアイアンフェンス。
●「シンプルモダン」/モノトーン、無機質で直線的なイメージ
→グレーや白をベースに、ステンカラーの門扉、表札、カーポート。
このように、さまざまなイメージキーワードをもとに想像してみると、楽しくデザインを検討できます。
メインガーデンもイメージキーワードから統一感を持たせて
デザインイメージのキーワードはメインガーデン(主庭)にも生かせる手法です。
事例写真をご紹介しますので、デザインの参考にしてみましょう。
◯リゾートホテル感ただようアウトドアリビング

庭の舗装のベージュに合わせて、木のデッキ、レンガや石の小端積みの立ち上がりでナチュラルにまとめつつ、白のポーチテラスやシェード、グレーのガーデンファニチャーを設置してモダンさをプラスしています。豊かな植栽も効果を発揮し、爽やかで清潔感のある贅沢なリゾートホテルのようなくつろぎ空間を演出しています。
◯オールグラスポーチのくつろぎスペース

屋根付きで全方向をガラス扉で仕切ったオールグラスポーチです。モノトーンの色調がモダンなイメージです。夏は屋根で日差しを遮りつつ、ガラス扉を開けて風通しをよくします。冬場はガラス扉を閉じればリビングとテラスが一体化して、庭の緑となじんだ開放感を味わえます。
◯大人の隠れ家バーのあるオールグラスポーチ
エクステリアデザインの注意点
エクステリアは、素材や色調を上手にコーディネートしてデザインすることは大切ですが、機能面も重要です。注意すべき点を以下にあげます。
通路やテラスなどの床のバリアフリー対策
被介護者などのいるご家庭では、アプローチから玄関までの段差をなくしてスロープにすることや、リビングからテラスに出るときの床をフラットにすることで、健常者も生活しやすくなります。現段階では被介護者がいなくても将来を見すえ、計画することも大切です。
作業効率のよい動線の確保
サービスヤード(家事などをするスペース)での洗濯機と物干し場の配置や、メインガーデン(主庭)でのガーデニングは、作業のしやすい動線を考えましょう。
防犯性
外から見えにくい場所があると、敷地内や室内への侵入が容易になります。エクステリアスタイルに合わせて、目隠しフェンスの設置や光センサー、ホームセキュリティーなど、防犯対策も考慮しましょう。
不在時の宅配
不在時の宅配便は、機能門柱や門袖などに設置されている宅配ボックスが重宝します。仕事など外出時のみでなく、お化粧前で人に会いたくないときやお風呂に入っているとき、また病気などの事情で宅配便を直接受け取れないときにも、宅配ボックスがあると便利です。
最後に、以下はデザインと機能がフィットしたカーポートの事例です。
カーポートの利便性

公道から玄関までのアプローチに、全面的に大きなカーポートを設置。その両サイドにはライティングを伴ったソテツをシンメトリーに配し、格調高い豪華な門構えと駐車機能を両立させています。完全なオープンスタイルのため、侵入者が隠れる余地はなく、防犯性も高いファサードです。
このように、塀やフェンスで目隠しをしなくても、アイデアしだいで機能性とビジュアルを両立したデザインができ、利便性や防犯性も保つことができます。
イメージどおりのエクステリアをデザインするには、建物の外壁の色やサッシなど、一部の色や素材をエクステリアに取り入れると統一感が生まれます。オープン、セミクローズ、クローズの3つのエクステリアのスタイルを軸に、デザインを検討しましょう。また、イメージキーワードから要素を導き出すことで、面白く楽しい計画を立てることができます。
ビジュアルだけでなく機能面も含めて検討し、満足のいく快適なエクステリアを実現してくださいね。
Credit

文・イラスト/松下高弘(まつしたたかひろ)
長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、手描きパース・イラスト・CG・模型等のプレゼンテーションや大手ハウスメーカー社員研修、エクステリア業の研修講師およびセミナープロデュースを行う。
著書には、『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』、『住宅エクステリアのパース・スケッチ・プレゼンが上達する本(彰国社)』など。新刊『気持ちをつかむ住宅インテリアパース(彰国社)』、大手書店に続々登場!!