40年以上の歴史を持つ老舗業界専門雑誌『グリーン情報』最新号から最新トピックスをご紹介! 2023年7月号の特集は、「LED新時代」。ほかにも、各種イベントレポート、話題の園芸店や人物紹介、園芸業界でおさえておきたいトピックスなど、注目のテーマが目白押し。業界誌だからこそ発信できる貴重な情報の一部をお見せします。
目次
特集:「LED新時代」
今号の特集のテーマは、「LED新時代」。植物用LEDはここ数年で飛躍的に進化してきました。生産の現場では生産効率を上げ、売り場では植物の見せ方の幅が広がり、消費者の手元では室内で育てられる植物が増えるなど、LEDの活躍の場は着実に広がっています。
本特集では、LEDが使われている2つの現場、生産者とホームセンターを訪れ、それぞれの視点からのLED活用による効果などを取材。さらに、植物LEDメーカー6社の商品、そして生産者7社に聞いた室内におすすめの植物をご紹介しています。
花の産地で使われるLED照明〜花匠〜

花匠(滋賀県東近江市)は、約1,000坪のハウスで年間10万株のコチョウランを生産しています。同社では、冬の日照不足を補うため、昨年から植物育成用のLED照明(以下LED)を導入しました。
花匠が取り入れたのは、花芽を出す効果のあるLED「NEXLIGHT TUBE(ネクスライトチューブ)」合計1,600本。メーカーの豊川温室では、生産者各々に合うLEDの使い方、レシピを作っており、花匠へのLED導入時にも光の測定器を使い、一棟一棟に合うLEDの使い方をサポート。
その結果、冬場もコチョウランの成長が遅れることなく、出荷ができたといいます。輪数の調整も可能になって、高品質な花を安定して生産できるようになりました。
施設環境維持を電気に頼っているため、停電が長引いた時などに太陽光発電や蓄電池など予備の電気を動かせるようにしなければならないという課題はあるものの、コチョウランの生産はLEDにより変わりつつあります。
この流れがさまざまな花の生産地に波及すれば、LEDによって新しい花の提案が生まれる時代が来るかもしれません。
観葉植物売り場に植物用LEDを設置〜コーナン吹田インター青葉丘店〜

コーナン吹田インター青葉丘店(大阪府吹田市)では、2019年6月のリニューアルを機に観葉植物売り場に植物用LEDを設置して4年。都市型店が多く、外売り場を広く取ることが難しい中で、店内にも植物売り場をつくる必要があったことからLEDを取り入れました。
当時は家庭向けの植物LEDはまだまだ普及していなかったため、導入したのは生産農家向けのLEDを応用した照明器具。観葉植物売り場約100坪に対し、LED付き棚型什器12台と、天井から下げるスポットライト型のLED16本を設置しました。
天井から下げているLEDは補光用で、ピンク色の光を照射します。店を閉めた夜中に点灯し、その短い時間だけで十分に植物の鮮度を保っています。特に奥まった場所にある、高さ3mにもなるウンベラータは、リニューアル時の4年前から順調に成長し、そろそろ植え替えが必要になるほど元気だといいます。
一方、LED付き棚型什器には、アジサイやマーガレット、ケイトウなど、外の売り場に並べられるような植物も陳列されています。底面給水で自動で水やりもでき、1段ごとに光と水やりの設定を変えられるため、1台でさまざまな植物に対応できるのもこの什器の長所です。
また、植物用LEDの太陽光に近い光は、植物を生き生きと見栄えよく演出するのにも効果的。こうした工夫の甲斐があってか、近年は若いファミリー層の来店も増えています。
植物の育成や補光はもちろん、観葉植物を魅力的に見せる展示にも使える植物用LED。売り場ごとの短所を補い、魅力に変える活用方法がまだまだ眠っているのではないでしょうか。

各メーカーの植物用LED
続いて、各メーカーイチオシの植物用LEDをご紹介します。
豊川温室『PLANTS NEXLIGHT』



施設園芸用ハウスの設計施工から始まった豊川温室が、農業用LED開発に着手したのは2006年。公共研究機関や地域の農家などと共同で研究・試験を繰り返し、確かな効果が証明できたこともあり、全国のJAや市場、コチョウラン、バラ、キク、カーネーションなどの有名生産地、さらには海外の花の生産現場でも取り入れられています。
生産の現場で使われている技術を家庭向けにカスタマイズして作られたのが、『PLANTS NEXLIGHT』。高島屋植物園と共同開発された商品です。スタンダードな電球型の「PAR30」と、テーブルに置けるミニサイズの「PAR16」、近接照射の蛍光灯タイプの「TUBE」などを展開しています。
BARREL『HADES PLANTSLIGHT』

「AMATERAS」でおなじみのBARRELは、8月に新商品「HADES PLANTSLIGHT(以下HADES)」の発売を予定しています。
「AMATERAS」や「TSUKUYOMI」といった既存の製品は、消費電力20Wと家庭で使いやすい反面、その分植物に近づける必要がありました。
そこでHADESは消費電力を最大45Wに。天井にセットして、スポットライトのように植物を照らしても光が十分に届くようになりました。
HADESが本領を発揮するのは、広い空間。例えば、大型施設の壁面緑化や、商業施設に設置した観葉植物、園芸店などですが、さらには一般家庭でも、建築デザイン時に植物ありきでHADESを設計に組み込んでもらう、というのもBARRELはビジョンとして描いています。
CONTEST『vegepod kitchengarden』

「ベジポッドキッチンガーデン(以下ベジポッド)」は、オーストラリアのvegepod社の製品。LEDライトと底面灌水システムにより、室内で手軽にキッチンガーデンを楽しむことができます。パソコンの周辺機器を連想させるデザインは、食卓用テーブルに置いても違和感がなく、室内インテリアとしてもしっくりきます。
植物に応じてLEDの高さ調節が可能で、備え付けの水位計により給水のタイミングが目視で確認できるなど、手軽に栽培ができる工夫がなされています。
BRID『PLANTS LIGHT』

食品や繊維の原材料、インテリア商品販売など幅広いビジネスを展開するメルクロス株式会社のオリジナルブランド、BRIDが企画した植物用LEDが「PLANTS LIGHT」。シンプルな電球タイプで、好みの照明器具との組み合わせが可能。インテリア性を高めた一方、植物の生育にも効果を発揮するよう、共同企画した照明メーカーとともに、植物の光合成に必要とされる有効な光の色の強弱に合わせた色構成を実現しました。
横浜植木『LEDプラントマグネット棚バー』

当初、暗くなりがちな園芸店の棚下の有効活用に対応する製品として開発された「LEDプラントマグネット棚バー」。昨今、多肉植物や観葉植物を楽しむ人が増えていることも背景にあり、ECサイトを中心に個人需要も順調に伸びています。開発でこだわったのは、太陽光と照明との色の差異を表す演色性。共同開発者のフューチャーライト株式会社と共に研究を重ね、屋内であっても自然光の下で見る植物本来の色と瑞々しさを再現し、同時に植物を育てる楽しさも体感できる現在のLEDチップの配色と配置を導き出しました。そのほか、マグネットによる取り付け方法や、最大60度の範囲で照射角度が調整できる機能、また、一つのコンセントで4本まで同時接続できる点など、使い勝手を十分に考慮した仕様になっています。
カクト・ロコ『多肉植物の小さな庭』

「多肉植物の小さな庭」を販売する株式会社カクト・ロコは、多肉植物やサボテンを扱う専門ナーサリー。多肉植物を知り尽くした同社のLEDライトは、曇天時の光量に設定されており、その波長は多肉植物以外の植物にも適しています。
製品はスタンドとLEDライトが取り付けられた天板の別売りで、設置環境に応じて選択ができます。天板に取り付けられたLEDライトは、バータイプのものを縦方向に10本配置。スタンドの高さは40cmの固定で、背丈が高い植物にも対応可能です。
LEDと合わせたい、室内におすすめの植物6選
特集最後には、生産者7社に聞いた植物用LEDを使いながら楽しみたい植物をご紹介しています。室内の半日陰でも育ちますが、LEDを使うとさらに元気に育ち、育てる楽しみをより実感できるでしょう。
フィカス・ウンベラータ

セントポーリア

フィカス・アルテシマ

モンステラ・デリシオサ

ベゴニア「流れ星」

アデニウム・アラビカム

業界の最新情報が盛りだくさんの『グリーン情報』
このほか、『グリーン情報』7月号では、園芸店紹介として愛知県名古屋市の「YOKONI PLANTS」、生産者紹介として千葉県東庄町の「飯田グリーン」をご紹介しています。また、エクステリアガーデンの現場で働く専門家によるハウツー・事例紹介、業界最新ニュース、学べるクイズコーナーなど、園芸・ガーデニング業界の幅広く深い情報が満載。ぜひお手にとってご覧ください。

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