トップへ戻る

「クレマチス、アジサイにパンジー・ビオラ…今をときめく個人育種家〜春・夏編」など園芸・ガーデニング業界最新情報をお届け

「クレマチス、アジサイにパンジー・ビオラ…今をときめく個人育種家〜春・夏編」など園芸・ガーデニング業界最新情報をお届け

40年以上の歴史を持つ老舗業界専門雑誌『グリーン情報』最新号から最新トピックスをご紹介! 2023年5月号の特集は、「今をときめく個人育種家〜春・夏編」。ほかにも、水を賢く使った親しみある庭づくりの事例紹介、話題の園芸店や人物紹介、園芸業界でおさえておきたいトピックスなど、注目のテーマが目白押し。業界誌だからこそ発信できる貴重な情報の一部をお見せします。

Print Friendly, PDF & Email

特集:「今をときめく個人育種家〜春・夏編」

今号の第1特集のテーマは、「今をときめく個人育種家」。2022年9月号に掲載した育種家特集の第2弾です。今回は、特に春・夏の花の育種家6名をピックアップ。冒頭で、ビスタFF代表であり、全国新品種育成者の会の顧問も務める佐藤和規さんに、海外の育種と日本の育種の違いや、これからのトレンドについて伺った後、6名の育種家に、それぞれ育種にかける想いなどをインタビュー。ここではその一部をご紹介します。

村岡オーガニック〜ペチュニアほか各種花苗

村岡オーガニックがオリジナルのペチュニア「マドンナの宝石」を発売したのは2010年。その花姿は、ガーデニング愛好家に大きなインパクトを与えました。

ペチュニア「マドンナの宝石」の有望品種‘パープルスター’。
ペチュニア「マドンナの宝石」の有望品種‘パープルスター’。

以降、多品目で魅力的な新品種を発表していますが、会社の理念は「植物を通して人々を幸せにする」こと。そのためには、生産者として買ってくれた方に喜ばれる苗を作らなければならず、育種はそのためのひとつの手段といいます。

例えば、ジャパンフラワーセレクション2021(ガーデニング部門・春審査)で入賞した品種「ダイアンサス」は、可愛い花姿で人気を呼びそうですが、まだ苗の販売はしていません。新品種の目新しさだけで売ることはせず、出荷は生産体制を確立してからにしています。

また、会社の理念実現のために、生産・育種に加えて情報発信も大切にしており、YouTube「花農家ゆうきの園芸ガーデニングチャンネル」は7万人超が登録する人気チャンネルになっています。

これからも生産を柱にしつつ、「大切に育てて、長く楽しんでもらえる品種を提供する」ことを信念に、個性的な品種の開発を進めていきます。

2021年からブルー&ピンク系パステルカラーのパンジー「ジョリーアンジュ」(右)、ラビッド系のビオラ「ジョリージョリ」を出荷している。
2021年からブルー&ピンク系パステルカラーのパンジー「ジョリーアンジュ」(右)、ラビッド系のビオラ「ジョリージョリ」を出荷している。

ジョルディカワムラ〜カリブラコア

カリブラコアといえばジョルディカワムラといわれるほど有名なジョルディカワムラ。主力シリーズ3種類(「ルシアンシリーズ」「エレガンスシリーズ」「アンティークシリーズ」)、色数ベースでは40アイテムを超えるラインナップを揃えています。

主力シリーズのひとつ、「アンティークシリーズ」は、「ほかの植物と合わせても調和を損なわない落ち着いた色合いが欲しい」というリクエストに応え、これまでの鮮やかさとは違う色合いのカリブラコアを2016年に試売。大きな反響を得ました。

社長の川村一徳さんは、これからの育種に必要な要件を、多花性に富み、生産性が高く、耐暑性に優れたものと考え、そうした花が、お客さまにも簡単に楽しんでいただけるのではないかと言います。従業員に権限を委譲して、新しい発想を生み出す環境をつくるなど、後継者の育成にも力を入れています。

アンティークシリーズ:落ち着いた色合いで不動の人気を獲得。寄せ植えやギャザリングに使われる。
アンティークシリーズ:落ち着いた色合いで不動の人気を獲得。寄せ植えやギャザリングに使われる。
エレガンスシリーズ:華やかかつエレガントな花色が魅力。
エレガンスシリーズ:華やか、かつエレガントな花色が魅力。
ティペットシリーズ:初期のシングル。
ティペットシリーズ:初期のシングル。

はなせきぐち〜オステオスペルマム、クレマチス

クレマチスやオステオスペルマムなどを生産・育種しているはなせきぐちは、現在2代目の関口雄二さんが、生産やイベント出展の合間を縫って育種に取り組んでいます。

オステオスペルマムで人気の品種は「シンフォニーシリーズ」と呼ばれる、6月頃まで花を咲かせ続ける品種。黄色やオレンジを主体とした花色で、花弁の付け根が紫色になるのが特徴です。

定番商品「シンフォニーシリーズ」。ディモルフォセカとオステオスペルマムの交配種。
定番商品「シンフォニーシリーズ」。ディモルフォセカとオステオスペルマムの交配種。

今年発売した「トランスコンチェルト」は、名前のとおり花色が黄色からピンクに変化する楽しみがあり、売り出してすぐに大人気商品となりました。

「トランスコンチェルト」。立体感のある八重咲きで、黄色からピンクに変化する様子が楽しめる。
「トランスコンチェルト」。立体感のある八重咲きで、黄色からピンクに変化する様子が楽しめる。

クレマチスの人気品種、ベル咲きの「ティンクルピンク」は、花弁の端のカールも可愛らしく、うどんこ病に強いのが特徴です。

「ティンクルピンク」。つぼ咲きクレマチス。
「ティンクルピンク」。つぼ咲きクレマチス。

雄二さんの目標は、クレマチスを母の日に選ばれる花にすることで、生産性や育てやすさ、流通のしやすさを重視して生まれたのが「藤の彼方」。ゆっくり咲く八重咲きで、2週間ほど観賞できる点も優れています。

今年の新品種「藤の彼方」。花の期間が2週間ほどと長い。花の美しさだけでなく、園芸店で並べやすい点まで考慮されている。
今年の新品種「藤の彼方」。開花の期間が2週間ほどと長い。花の美しさだけでなく、園芸店で並べやすい点まで考慮されている。

はなせきぐちでは、今後も日本で求められる花づくりをすることで、日本の園芸ブームをつくり、園芸文化を盛り上げていくべく、育種に取り組んでいます。

及川フラグリーン〜クレマチス

クレマチス専門の苗生産を手がける及川フラグリーン。岩手県花巻市にある農場は、季節限定営業のショップとガーデン「イーサゴ」を併設するクレマチスの情報発信地となっており、毎年9月のオリジナル新品種発表には多くのファンや業界関係者が集まります。

2022年9月に発表された新品種は、「マリア・ラグーン」「トーチライト」「庭のよろこび」「ブルー・ブルー」の4品種。必ずしもこれらがシーズンのメイン商品となるわけではなく、お客さまが自分好みのクレマチスを選び出すための話のきっかけになればいいと考えています。

マリア・ラグーン:丸弁の小ぶりな花で、軽やかさと可愛らしさを持つ。
マリア・ラグーン:丸弁の小ぶりな花で、軽やかさと可愛らしさを持つ。
トーチライト:コンパクトで、次々にチューリップ形の花が咲いていく。
トーチライト:コンパクトで、次々にチューリップ形の花が咲き上がる。
庭のよろこび:生育試験中の庭植えの姿に感じた可能性を品種名に託した。
庭のよろこび:生育試験中の庭植えの姿に感じた可能性を品種名に託した。
ブルー・ブルー:パッと目を引く青色。バラとの組み合わせにも合いそう。
ブルー・ブルー:パッと目を引く青色。バラとの組み合わせにも合いそう。

「クレマチスは、園芸やガーデニングで遊んでもらう素材のひとつ。その素材に、多彩なパターンを用意することが目標」と2代目の及川洋磨さん。新品種の開発には10年かかるので、10年後に売れる花を想定するよりも、クレマチスを今、手に取ってもらうことを目指しています。

さかもと園芸〜アジサイ

50年ほど前に創業し、現在は2代目の坂本佳子さんと夫のティアムチャイさんがアジサイの生産・育種を手がけているさかもと園芸。そのアジサイは、フラワーオブザイヤーを受賞するなど、高い評価を受けています。

人気品種の一つは、先代の正次さんが作出した「ミセスクミコ」。1992年のフロリアードで金賞を獲得した定番品種です。

ミセスクミコ:ロングセラーの品種。サクラ色の大きな花弁が特徴。
ミセスクミコ:ロングセラーの品種。サクラ色の大きな花弁が特徴。

近年の品種で人気が高いのは「KEIKO」「YULIKA」「ドリップ」。「KEIKO」はティアムチャイさんが作り、初めて販売した品種で、2015年度のフラワーオブザイヤーを受賞しています。

KEIKO:桂子さんの名前がついている。淡い色にピンクの覆輪が上品。色はブルーとピンクの2色。
KEIKO:佳子さんの名前がついている。淡い色にピンクの覆輪が上品。色はブルーとピンクの2色。
YULIKA:鮮烈な色が特徴。ムラサキに近いブルーとピンクの2種。
YULIKA:鮮烈な色が特徴。ムラサキに近いブルーとピンクの2種。
ドリップ:丸い花弁に白の覆輪が柔らかい印象を受ける色合い。2022年度フラワーオブザイヤーで優秀賞を受賞。
ドリップ:丸い花弁に白の覆輪が柔らかい印象を受ける。2022年度フラワーオブザイヤーで優秀賞を受賞。

色違いを含めると、アジサイは80種類以上を展開。ハウスに眠っている未発表も含めると、色違いや親株も含めて700種以上にも上ります。

育種の方針は、バラエティをそろえること。形、色、変化の楽しさ、育てやすさ、管理のしやすさなど、さまざまなベクトルで「いいな」と思ったもの、見たことのない花を選抜しています。

「花を育てるのが楽しい、また育てたいと感動していただける花を届けたい」と佳子さん。毎年ひとつは新品種を発表予定です。

在津修さん-パンジー

在津修さんは、趣味のパンジー育種がインスタグラムで人気になりました。その花が、現在ネットや一部店舗で販売されている「Zaijin ビオラ」。育種の現場は、在津さんの自宅の庭です。一般住宅の庭にパンジーが所狭しと並ぶ様は圧巻です。

在津さんが育種したパンジーで人気の高い品種は、紙のような質感の「パピエ」、上弁が3枚ある「ティアラ」、フロステッドチョコレートの特徴的な赤褐色を受け継いだ「フロチョコゴールドココア(黄金可可)」など。

パピエ:花びらが紙のような質感を持つ。在津さんが手がけた中でも代表的なパンジー。色の幅も広い。
パピエ:花びらが紙のような質感を持つ。在津さんが手がけた中でも代表的なパンジー。色の幅も広い。
ティアラ:上弁が3枚ある珍しいビオラ。
ティアラ:上弁が3枚ある珍しいビオラ。
フロチョコゴールドココア:黄色地に茶色が乗ったビオラ。別名「黄金可可」。惜しまれつつ廃盤となったフロステッドチョコレートの遺伝子を継いでいる。
フロチョコゴールドココア:黄色地に茶色が乗ったビオラ。別名「黄金可可」。惜しまれつつ廃番となったフロステッドチョコレートの遺伝子を継いでいる。

在津さんが育種を始めたのは18年前。「自然にできたパンジーのタネを取って育てたところ、親株とは全く異なる花が咲いて驚きました」。パンジーの育種で有名な川越ROKAさんのブログのファンになり、育種を始めました。定年退職して時間ができてからはいっそう育種に時間を注ぐように。

在津さんのパンジーは、5年前にインスタグラムに投稿を始めたのをきっかけに全国にファンができました。4年前には熊本県にある木村園芸から、育種品種を一部提供してほしいと持ちかけられ、快諾。以来、在津さんのパンジーは「Zaijin ビオラ」というブランド名で、主にパピエが販売されています。

在津さんが現在挑戦しているのは、「ベイン」と「焼け」、「先っちょフリンジ」の3種類。「自分が良いと思った、自分らしい花を追求したい。それを見て喜んでくれる人がいたら嬉しいです」と語ります。

ベイン:力強さを感じる「男のベイン」を目指したビオラ。まだまだ試作段階で、さらなる育種が必要だそう。
ベイン:力強さを感じる「男のベイン」を目指したビオラ。まだまだ試作段階で、さらなる育種が必要だそう。
焼け:焼けが上弁に出るタイプと下弁全体に出るタイプがあり、このまま明確な銀色の光沢を出すのが目標。
焼け:焼けが上弁に出るタイプと下弁全体に出るタイプがあり、このまま明確な銀色の光沢を出すのが目標。
先っちょフリンジ:花弁の先だけフリンジになっていて、在津さん自身納得のいく花が完成。パーマヘアのような丸い形が可愛い。
先っちょフリンジ:花弁の先だけフリンジになっていて、在津さん自身納得のいく花が完成。パーマヘアのような丸い形が可愛い。

特集:水を賢く使って親しみある庭づくり

夏の庭で難しいのが、水の管理。自動潅水を活用している人は少なくありませんが、果たしてそれだけで十分なのでしょうか。

この特集では、夏の水やりのヒントを探るべく、ガーデンハウス アシェット代表・ガーデンデザイナーの荒谷美和さんが手がけた2つのカフェの庭と、東京都世田谷区の「ふくふくのいえ」を訪問し、お話を伺っています。

潅水機器の選び方や、雨水を活用した庭づくりの参考になる内容ですので、詳細はぜひお手に取ってご覧ください。

荒谷さんが手がけた愛知県名古屋市千種区にあるカフェ「papiton(パピトン)」の庭では、奥まで散水チューブを這わせている。右側のウッドデッキはテラス席に。
荒谷さんが手がけた愛知県名古屋市千種区にあるカフェ「papiton(パピトン)」の庭では、奥まで散水チューブを這わせている。右側のウッドデッキはテラス席に。
パピトンでは、ミストとドリップ両方で散水。ミストが葉水にもなる。
パピトンでは、ミストとドリップ両方で散水。ミストが葉水にもなる。
東京都世田谷区の「ふくふくのいえ」は、空き家を活用して、子育て支援サロン「おでかけひろばFUKU*fuku」の集いの場になっている。こちらは雨水を活用した宿根草ガーデン。奥の丸いかめが雨水タンクで、アーチにつながっているホースは雨どいにつながっている。
東京都世田谷区の「ふくふくのいえ」は、空き家を活用して、子育て支援サロン「おでかけひろばFUKU*fuku」の集いの場になっている。こちらは雨水を活用した宿根草ガーデン。奥の丸いかめが雨水タンクで、アーチにつながっているホースは、さらに雨どいにつながっている。
駐輪スペースは道路に向かってわずかに下っているので、ここに降った雨がすぐに道路に流れ出ないように蓄える目的で、水の通り道を作った(写真下、板部分)。
駐輪スペースは道路に向かってわずかに下っているので、ここに降った雨がすぐに道路に流れ出ないように貯水する目的で、水の通り道を作った(写真下、板部分)。

業界の最新情報が盛りだくさんの『グリーン情報』

このほか、『グリーン情報』5月号では、園芸店紹介として埼玉県鴻巣市の「Cultivate STORE」、生産者紹介として宮城県蔵王町の「ざおうハーブ」をご紹介しているほか、エクステリアガーデンの現場で働く専門家によるハウツー・事例紹介、業界最新ニュース、学べるクイズコーナーなど、園芸・ガーデニング業界の幅広く深い情報が満載。ぜひお手に取ってご覧ください。

『グリーン情報』はガーデンストーリーウェブショップからご購入いただけます↓↓
ショップページはこちら。
https://www.gardenstory.shop/shopbrand/ct8/

Print Friendly, PDF & Email

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO