30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了された遠藤昭さん。帰国後は、オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストでも数々の受賞歴があり、60㎡の庭づくりの経験は20年になるという遠藤さんに、庭で育てがいのあるオージープランツを解説していただきます。

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日本でオーストラリア原産の「初恋草=Lechenaultia(レケナウルティア)」が出回り始めたのは、恐らく20年くらい前だったと思う。毎年、春先には園芸店で見かけるが、当初は、初恋草といえばブルーの花だったのが、この10年で、さまざまな色の品種が紹介され、最近は、その豊富さに驚く。

そして、この鮮やかなブルーの初恋草がブームになり、ピークを迎えたのは、2004~2005年だったと記憶している。

初恋草の第1次ブームを振り返る

当時が、どれほどのブームであったかを知る記録が小生のブログに残っていた。

『Googleで検索すると、ヒット数は、パンジー76万2千に対し、初恋草38万9千である。ペチュニアでさえ15万7千であるから、その普及ぶりは凄い! 検索ヒット数で見る限り、あの国民的大衆花のパンジーの半分に迫っている』。

さらに当時、日本だけでなくweb全体(全世界)で調べると、Leschenaultia2万1,000と、Lechenaultiaが9,900の計3万900しかないのだ(Lechenaltiaのようにuぬけのスペルも一般化している)。それなのに、日本で初恋草38万9,000もの数がヒットするのは異常な数字である。かつてメルボルンに住んだことがある私も現地の園芸店で苗を見た事はなかった。

「失恋草」ではなく「初恋草」の人気

写真は2005年に我が家で育てていた鉢植え。日本では一年草扱いだが、本来は常緑の低木だ。

初恋草を育てた経験がある人のうち、きっと、99%以上の人が夏を越すこともなく枯らしていると推測する。毎年、枯らしてしまうのになぜ、日本人はコレほどまでに初恋草が好きなのだろう? 初恋のように儚く枯れて消えてしまうからだろうか。

それとも、やはりブルーの可愛らしい花に惹かれるのだろうか? しかし、ブルーの小さな花で、育てやすい花は他にもいくらでもある。

とすると、やっぱり、ズバリ! 「初恋草」というネーミングなのだろう。「初恋」という響きには、それぞれに甘酸っぱい思い出があり「初恋草298円」なんていう札を見ると、可憐なブルーの花に手を伸ばして連れ帰ってしまうのではないだろうか? もし、「失恋草」だったら、あれほどのブームにはならなかったと思う。どなたがレケナウルティアを「初恋草」とネーミングしたのかは存じ上げないが、平成の草花のネーミングの大ヒット作だと思う。

私のようなオジサンは恥ずかしくて「初恋草」を育てています、なんて実は言いづらい! では何を育てているかって? それは、オージープランツのLechenaultiaを育てているのです(写真は4月の我が家のLechenaultia。花が大きくなり、株も幅40~50㎝にまでなった)。

日本人は、どうもブランドやイメージに弱く、ブームやムードに流されやすい。草花の流行もしかりである。購入の動機がどうであれ、オージープランツが普及するのは嬉しいのだが、購入したからには枯らさずに、大切に大きく育てて本当の魅力を知ってほしいと常々思うのである。

西オーストラリアの原野に群れ咲く「初恋草」

ところで、草花を上手に育てるには、その草花の原産地の気候風土を知ることが重要である。

何年か前に、西オーストラリア ワイルドフラワーの旅に参加して、実際に西オーストラリアの厳しい強風と乾燥の気候の中に咲く野生の「初恋草」=Lechenaultiaを見たことがある。パースからバスで数時間、その原生地は森林というより、アフリカのサバンナに近い光景であった。

多くの園芸書では、レケナウルティアの育て方は、「日当たりのよい場所で、水はけのよい土に植え、表面が乾いたら水をたっぷりやる。月に一度程度液肥を施す」というのが一般的だが、これを実践しても多くの場合はうまく育てられず、夏には枯らしてしまう。

初恋草を日本で上手に育てるコツ

日本で枯らしてしまう原因について、西オーストラリアの自生する環境を見て、「なるほど!」と納得した。

【栽培のコツ1】
湿気:初恋草が自生する地域は、年間降水量が300㎜程度で、土壌も砂地でほとんど砂漠状態である。 日本の高い湿度や水のやり過ぎは、この植物にとって大敵だ。できるだけ雨にも当てないほうがよい。用土は、砂や軽石が多く水はけのよい、養分が少ないものが適する。

現地のナーセリーで販売されている苗。日本と、ほぼ同じ価格!

【栽培のコツ2】
リン酸肥料:一般的には、花つきをよくするには「リン酸を与えるべし」といわれているが、西オーストラリアの土壌は、もともとリン酸分が少ない。ワイルドフラワー専門のナーセリーでは、リン酸を与えてはいけない植物のリストを配布しているほどだ。

肥料は液肥ではなく、比較的リン酸が少ない油かすの置き肥がオススメだと、オーストラリアのガーデナーからアドバイスされたことがある。現地のナーセリーで配布していたチラシには、「外来種(つまり豪州以外の原生の植物)と自生種(豪州の植物)を花壇で混植する時の注意点として、 初恋草=レケナウルティア、ボロニア(Boronia)、 バンクシア(Banksia)等はリン酸に抵抗力がないので、化成肥料は与えずに、油かすや堆肥などの緩効性有機肥料を与えるように」と書かれていた。なお、ユーカリやブラキカムはリン酸に抵抗力がある。

*液肥の成分はチッソ-リン酸-カリの割合が5-10-5とリン酸が多い(H社の場合)。

【栽培のコツ3】
土壌:オーストラリアの土壌は弱酸性。したがって、培養土は鹿沼土やピートモスを配合した、弱酸性かつ水はけのよいものが好ましい。

原生地の風景。

パース郊外で見かけた野生のレケナウルティアは、初恋草というネームングが似合わない、逞しさを感じる野草だった。

原生地を見ると、大体、その植物の育て方が分かる。初恋草の育て方は、絶対に雨に当てないことである。初恋草は、大株に育てると素敵な植物なので、一年草だと諦めないで、ぜひ、原生地に近い環境で大株に育ててほしい。

Credit

写真&文/遠藤 昭

30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。現在は、川崎市緑化センター緑化相談員を担当しながら、コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施。園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)

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