冬から早春の花の少ない時期に、清楚な印象の花でガーデンを彩るクリスマスローズ。バラ、クレマチスと並んで三大ガーデンプランツの一つとされる、人気の高い宿根草です。花弁に入る模様や花色が幅広く、バラエティー豊かなその姿に夢中になるガーデナーも多いクリスマスローズですが、性質は丈夫で育てやすく、ガーデニング初心者にもぜひ栽培してほしい魅力ある花です。

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控えめで美しい花姿を持つ魅力的な宿根草

花壇に咲くクリスマスローズ

クリスマスローズはキンポウゲ科の多年草。花期は冬から早春で、花の少ない時期に、ガーデンに色を足してくれる頼りになるガーデンプランツです。鉢植えにも庭植えにも向き、冬のガーデンにぴったり。ヨーロッパを原産とする植物ですが、控えめで清楚な花姿は和風の庭にもよく馴染みます。クリスマスローズ属には20種ほどの仲間がありますが、園芸的に最もよく見かけるのが、交配種であるヘレボルス・ヒブリダスです。

クリスマスローズという名前から、クリスマスの時期に満開になる植物だと思われがちですが、実はクリスマスの時期に花を咲かせるのは、原種の一つで基本的に純白の花を咲かせるヘレボルス・ニゲルのみ。他の品種は主に2~3月頃の早春に開花します。クリスマスローズという名は、クリスマスの頃にバラに似た花を咲かせるヘレボルス・ニゲルにちなんで名づけられたもので、この花にはクリスマスにかかわる次のような伝説もあります。

クリスマスローズの伝説と名の由来

純白の花を咲かせるヘレボルス・ニゲル
純白の花を咲かせるヘレボルス・ニゲル。Photo/andrekoehn/Shutterstock.com

イエス・キリストが生まれた時、その誕生のお祝いに人々が訪れ、ある貧しい少女もお祝いをしたいと思いました。しかし、貧しい少女は何もお祝いのための品を用意することができません。雪の中では花さえも見つけられないと泣いていると、天使が現れて雪をすくい上げました。そこに咲いていたのが純白のクリスマスローズ。少女は喜んでこの清純な花をイエスに捧げ、それからクリスマスローズはキリスト降誕のシンボルとなったということです。また、クリスマスローズの仲間である、ヘレボルス・オリエンタリスは英名ではレンテンローズとも呼ばれます。これは、イースターの前に行うキリストの苦難をしのぶ「四旬節(レント)」の頃に咲くことから。キリスト教圏の人々の中で、クリスマスローズが大切にされてきた花だということがよく分かります。

ところで、クリスマスの頃に花を咲かせるヘレボルス・ニゲルのニゲルとは、黒という意味。白い花を咲かせるのに黒とは少し不思議な気もしますが、この名は根が黒いことにちなんで名づけられました。ちなみにヘレボルスという学名は、クリスマスローズの持つ毒性にちなんだもの。全草が有毒なので、口にしないように注意しましょう。

花のバリエーションが多いクリスマスローズ

花瓶に活けたクリスマスローズ

クリスマスローズの魅力は、なんといってもそのバリエーションの豊かさ。一株ごとに花色や模様などの咲き姿が微妙に異なり、自分だけの花選びが楽しめます。クリスマスローズの栽培にはまってしまい、いろいろな咲き姿の株を集めるガーデナーも多いんですよ。その一方で、栽培にはあまり手がかからず植えっぱなしでも丈夫に育つので、ガーデニングの経験がない人にもオススメ。初心者からベテランガーデナーまで、幅広い人に愛される植物です。宿根草なので年々大株に育ち、見事な咲き姿になるのも嬉しいですね。

花のように見えている美しい部分は実はガク。一見変化がないようにも見えますが、花が咲き進むとしべが落ちて花色がやや退色し、受粉していれば子房が膨らんできます。花が咲き進んでも美しい姿を保つので、観賞期間が長いのも魅力です。花を切って花瓶に活けたり、水に浮かべたりしても長く楽しめます。

主に有茎種と無茎種に分かれます

クリスマスローズには大きく分けて有茎種と無茎種があります。よく流通しているのは、通常私たちがクリスマスローズと呼ぶヘレボルス・ヒブリダスなどの無茎種。株元から直接花柄と葉柄を立ち上げて花を咲かせるのが特徴です。一般にクリスマスローズといえば、この花姿をイメージする人が多いと思います。一方の有茎種には、ヘレボルス・フェチダスやヘレボルス・アーグチフォリウスなどがあり、地表から花柄を伸ばす無茎種とは異なり、有茎種は花茎を伸ばして葉や花をつけます。有茎種は無茎種ほどメジャーではありませんが、どちらも丈夫で育てやすいので、庭植えや鉢植えとしてぜひ取り入れたいガーデンプランツです。

有茎種のヘレボルス・フェチダス
有茎種のヘレボルス・フェチダス。Photo/lcrms/Shutterstock.com

クリスマスローズの花姿の変化を解説

クリスマスローズ
Photo/simamusume/Shutterstock.com

前述のように、クリスマスローズの交配種は幅広い咲き姿が魅力。花色には、白や緑、赤、紫、ピンク、アプリコット、黄、オーレア(黄金色)などさまざまなものがあります。品種としてはヘレボルス・ヒブリダスという一種ですが、さまざまな花を咲かせるクリスマスローズは、品種名ではなく花形や模様、花色を組み合わせた名前で呼ばれることが多いもの。ここでは代表的な花形や模様を紹介します。

シングル(一重咲き)

クリスマスローズ シングル
Photo/Snappyart/Shutterstock.com

原種を思わせるすっきりとした一重咲き。花弁は5枚が基本です。シンプルで控えめな一重花は、清楚な印象。花弁の模様がはっきりと楽しめるのも魅力です。

セミダブル(半八重咲き)

クリスマスローズ セミダブル
クリスマスローズの育種家、樋口氏が手がけたシリーズ「ウィンターシンフォニー」の半八重咲き種。(*)

しべの周囲にあるネクタリー(蜜腺)と呼ばれる部位が、小花弁などに変化したものがセミダブルのクリスマスローズ。小花弁には、筒状やハート形などさまざまな形があります。ダブル咲きと区別しにくいですが、小花弁は周囲のガク部分とは異なり、咲き進むと散ってしまうのが特徴です。

ダブル(八重咲き)

クリスマスローズ ダブル
クリスマスローズ「ウインターシンフォニー」の豪華な八重咲き(*)。ウィンターシンフォニーシリーズII(セカンド)多弁咲き。

ゴージャスな花を咲かせるダブル。ネクタリーが完全に花弁に変化したもので、花後も花弁が散らずに残ります。中には数十枚の花弁を持つものもあり、華やかな雰囲気が楽しめる、ボリュームのある花が多くあります。

代表的な模様は以下の9種類。

無地

花弁に模様が入らないもの。プレーンとも呼ばれます。

ピコティー

クリスマスローズ ピコティー
クリスマスローズ「ウィンターシンフォニー」のホワイト・ピコティーのダブル(*)。

花弁の縁に沿って、異なる色が糸状または帯状に入るもの。多くは濃い色が入り、中には中心に向かってグラデーションになるものも。

スポット

花弁に小さな斑点が入るもの。斑点の入り方はさまざまです。

ベイン

花弁に脈状の模様が入るもの。

ネット

スポットとベインが重なるように入り、網目状の模様が広がるもの。

ブロッチ

大きめのスポットが重なり合い、大きな斑点のように見えるもの。

フラッシュ

クリスマスローズ フラッシュ
フラッシュが現れたクリスマスローズ「ウィンターシンフォニー」(*)。

花弁のつけ根から先に向けてスポットが密に広がるもの。花全体では星形のように見えます。

アイ

花弁のつけ根にスポットが固まるもの。フラッシュとは異なり、花弁全体に広がりません。

バイカラー

クリスマスローズ バイカラー 小輪
バイカラーの小輪で近年注目のクリスマスローズ「ウィンターシンフォニー」。小さな花が愛らしい小輪系スイングシリーズ(*)。

花弁の表と裏で色が異なるもの。また、花弁の内側が2色に分かれているものもバイカラーと呼ばれます。

これらの模様や花姿のバリエーションの他、花の咲き方を示すカップ咲きや星咲きなど、さまざまな花姿を持つクリスマスローズがあります。

ホワイト・ピコティー
クリスマスローズ「ウィンターシンフォニー」ホワイト・ピコティーのダブル(*)。
ピコティー
クリスマスローズでは珍しい黄色系の花に、糸のように細いピコティーが入る「ウィンターシンフォニー」シリーズの一つ(*)。
バイカラー
グリーンの花弁に紫色のピコティーが入った「ウィンターシンフォニー」シリーズのクリスマスローズ。裏が濃紺のバイカラー(*)。
ダブル
「ウィンターシンフォニー」シリーズの中でも黒紫色のダブルは、シックでありながら豪奢な印象。ウィンターシンフォニーⅡ(セカンド)多弁咲き(*)。

クリスマスローズの育て方

花壇に咲くクリスマスローズ

クリスマスローズの植え付けの適期は10月、または2~3月頃。購入した年から花を楽しみたいのなら、開花株や開花見込み株を購入しましょう。一年生の実生苗などは、購入した年には花が咲かず、株が充実してから花が見られるようになります。

また、苗の選び方にも注意が必要。クリスマスローズは、ラベルを見て苗を購入しても、ラベルと同じ花が咲くとは限りません。特に株が充実していない若い株の場合、ダブル咲きのはずがシングルになることなどがあります。また、発芽一年未満の小さな実生苗の場合はどんな形質の花が咲くのか、花が咲くまで分からないこともあります。欲しい花が決まっている場合は、少々割高でも開花株で花を確認して購入するとよいでしょう。ただし、細胞を培養して育てたメリクロン苗の場合は、親の形質をそのまま引き継ぐため、ラベルで花を確認して購入することができます。

ヨーロッパが原産のクリスマスローズは、寒さには強いですが、暑さはやや苦手。夏越しの際には、直射日光や西日が当たらない涼しい場所で管理するとよいでしょう。庭に植え付ける場合は、夏には日陰になる落葉樹の下などがオススメです。過湿を避け、水はけのよい土で栽培します。秋に植え付ける際は、根詰まりしないよう根を軽くほぐしましょう。一方、春に植え付ける場合は、根を傷めると生育が悪くなることがあるので注意を。鉢植えの際は、秋から初夏の生育期にはたっぷりめに水を与え、夏場は乾かし気味に管理しましょう。

ウィンターシンフォニー
栃木県にあるナーセリー「コピスガーデン」の冬に咲く「ウィンターシンフォニー」のクリスマスローズ(*)。

前シーズンに展開した葉がある場合、11~12月頃に古い葉を切る古葉切りの作業を行います。開花期が近づき、花芽が膨らんでくると、古葉が葉柄から倒れるので、葉柄の基部から3cmほどを残して切り取ります。傷んだ葉を取り除くことで、株元に光がよく当たるようになります。軸を残して切り取るのは、乾かして腐らないようにするため。残った基部は完全に枯れて簡単に抜けるようになったら引き抜きましょう。

開花期には、タネをつくって株の体力が奪われないよう、膨らみ始めた子房を摘み取る子房取りと、花柄切りの作業をすると、より長く花を楽しめます。花柄を切る際は、花柄についているすべての花が咲き終わってから基部を3cmほど残して切り取ります。タネを採りたい場合は、これらの作業は必要ありません。開花やタネ採りが終わった花柄は順に切っておき、完全に枯れたら取り除きましょう。

夏場は水切れに注意が必要。夏場に葉が枯れてしまった場合にも、根が生きていれば秋以降にまた芽を出してくれるので、諦めずに管理を続けましょう。夏場は休眠するので、肥料は必要ありません。

クリスマスローズは生育が旺盛なので、根詰まりしないよう、1~2年に一度は植え替えが必要です。根が回っている場合は根をほぐし、一回り大きな鉢に植え替えます。株が込んできたら株分けをすると、株の更新を促し、株を増やすことができます。株分けをする場合にはなるべく3芽以上つけて分けるようにしましょう。

ウィンターシンフォニーII
ウィンターシンフォニーⅡ(セカンド)絞り咲き(*)。

協力:大森プランツ http://www.omoriplants.com/

*の写真はすべてクリスマスローズ「ウィンターシンフォニー」及び「ウィンターシンフォニーII(セカンド)」シリーズ(写真提供/大森プランツ)。「ウィンターシンフォニーII(セカンド)」シリーズは、ベーシックなラインナップに加えて、さらに各色のバリエーションを追求した2018年登場の魅力的な新シリーズ。オンラインショップにて購入可能です。

「コピスガーデン ネットショップ」http://www.coppicegarden.com/

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Credit

取材&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関ば連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考:『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビ2 クリスマスローズ』(野々口稔著 NHK出版刊)

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