花が少ない季節である冬でも、庭を彩ってくれる植物にクリスマスローズがあります。宿根草としても人気のクリスマスローズにはいくつかの種類があり、大きく分けて有茎種と無茎種があります。この記事では、有茎種と無茎種の特徴や見分け方からクリスマスローズの基本的な育て方まで詳しくご紹介します。

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クリスマスローズってどんな花? まずは基本情報をご紹介

クリスマスローズ
Natalia Greeske/Shutterstock.com

クリスマスローズはキンポウゲ科ヘレボルス属の多年草で、ヨーロッパから西アジアが原産です。

開花時期は12月から4月で、一般的にクリスマスローズとよばれる花の中でも12月末頃に咲くのは、単に「ニゲル」とも呼ばれるヘレボルス・ニゲルという品種です。

花びらのように見える部分はじつは萼(がく)で、萼は花の周りにある葉が変化した部位ですが、クリスマスローズでは本来の花びらは退化し、蜜腺(ネクタリー)として雄しべの付け根を囲むようにして付いています。

クリスマスローズの草丈は30~60cmほどです。さまざまな種類があり、大きく有茎種と無茎種に分けられます。

クリスマスローズのタイプは大きく分けて有茎種と無茎種がある!

ヘレボルス・フェチダス
有茎種のヘレボルス・フェチダス。lcrms/Shutterstock.com

クリスマスローズは「有茎種(ゆうけいしゅ)」と「無茎種(むけいしゅ)」に大別されます。ただし「中間種」も存在します。

有茎種は、根元から太い茎が伸びて葉がつき、葉の付け根に花が咲くのが特徴です。通常は常緑性です。

クリスマスローズ
一般的な無茎種のクリスマスローズ。Andrii Salomatin/Shutterstock.com

無茎種は、葉が出る茎と花が咲く茎は別で、根元から別々に伸びるのが特徴です。常緑性と落葉性があります。一般的に流通するクリスマスローズの多くは、この無茎種。根が太くて丈夫なのも特徴です。

中間種は両方の特徴を持っているため、どちらか判断がつきにくいです。先述の品種の「ニゲル」は有茎種に分類される場合や中間種に分類される場合があります。

クリスマスローズの品種は? 原種と交雑種について解説

クリスマスローズ
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クリスマスローズは種子で増やすことが多いため交雑種が多く、また花の色や模様が安定せず、同じ品種であっても同じ花が咲かないこともあります。

ここからはクリスマスローズの原種と交配種について詳しくご紹介します。

クリスマスローズの原種は有茎種・無茎種を含めて約20種類!

ヘレボルス・ニゲル
クリスマス頃に純白の花を咲かせるヘレボルス・ニゲルも原種の一つ。Alena Charykova/Shutterstock.com

クリスマスローズの原種にはおよそ20の種類があり、有茎種・無茎種ともに原種が存在します。原種は品種改良された園芸品種に比べると色が地味で華やかさはありませんが、自然で素朴な美しさがあります。

原種の多くは地中海や黒海沿岸部に多く自生しており、アジアでは中国に「チベタヌス」という種が1種分布しています。

同じ花が咲かない? バリエーションが多い交雑種(ハイブリッド)

クリスマスローズ
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園芸品種では異なる種類をかけ合わせて増やし、新しい品種を作っていきます。同じ花粉親と種子親からできた種子であっても、同じ見た目の花が咲くとは限りません。特徴があるものは品種名がついていることがありますが、同じ名前でも形や色に違いがあることもあります。

クリスマスローズの苗を選ぶポイント

クリスマスローズ
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芽が太くしっかりしているもので、葉や花に黒いシミや縮れが無いものを選びましょう。また、種子を播いて作られた実生苗(みしょうなえ)は、同じ交配であってもどのような花が咲くか分かりません。実生苗のなかから好みの花色を選びたい場合は、花が咲いている苗から選ぶと確実です。

成長点を取り出して培養したメリクロン苗は、元の個体と同じ形で同じ色の花が咲きます。

5~6号ポットで売られている3年生株は、植えた年に開花する確率が高いですが、2~3号ポットで売られている2年生株は、開花に1年以上かかる点も注意が必要です。

クリスマスローズを元気に育てるポイント

ガーデニング
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ここまでクリスマスローズの特徴や種類についてご紹介してきました。

ここからは、クリスマスローズを育てるにはどのようにすればよいのかを解説します。

クリスマスローズに適した栽培環境や日当たり

クリスマスローズ
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クリスマスローズは、半日陰や明るめの日陰を好む植物です。庭植えの場合は落葉樹の下などが適しています。真夏に直射日光が長時間当たるような場所は避けましょう。鉢植えの場合は、秋から春にかけては日当たりのよい場所に置き、夏は明るい日陰や午前中だけ日が当たる場所などに置きます。

クリスマスローズは高温多湿が苦手なので、庭植えの場合も、鉢植えの場合も、風通しのよい場所で管理しましょう。

クリスマスローズを育てるための土作りと植え付け

クリスマスローズ
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クリスマスローズを植える土は水はけのよいものを。市販のクリスマスローズ用の土を使うと簡単です。自分で土を作る場合も水はけのよい土になるのを目指して、例えば赤玉土小粒、軽石小粒、腐葉土の割合を4:3:3などにします。

植え付けの適期は10~12月で、遅くとも花期が終わる3月までには植え付けます。植え付けの際は、ポットから取り出したら根から古い土を落とし、傷んだ根があれば取り除きます。芽が出ている場合は、土に埋まらないよう、やや浅植えにしましょう。

クリスマスローズの水やりと肥料

水やり
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クリスマスローズの水やりは、庭植えの場合は自然の降雨のみで十分です。鉢植えの場合は生育期の10~5月の間は土の表面が乾いたらたっぷりと水を与え、6~9月はやや水やりの間隔をあけて乾かし気味に管理します。

肥料は生育が始まる10~11月に緩効性化成肥料を与えます。鉢植えの場合はおよそ2カ月に一度、追加で液体肥料などを与えます。

有茎種は支柱を立てよう! 茎を切る時期にも注意

支柱
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クリスマスローズの有茎種は1本の茎に葉と花がつきます。茎は太めで、無茎種と比べて草丈が高くなります。茎が折れてしまうと花が楽しめなくなってしまうので、風や雪対策のために支柱を立てるとよいでしょう。

花が終わったら、種子を取らない分は花がらを摘みます。ただし、花が終わってもすぐに茎を根元から切ってはいけません。葉が黄色くなり新芽が出てくる4月頃までは、茎を残しておきます。

無茎種は古葉取りを!

クリスマスローズの葉
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葉と花が別々の茎から出てくる無茎種のクリスマスローズは、新しい葉が出てくる11月頃に古い葉を付け根から刈り取ります。古葉を取り除いて株の根元に日を当てることで、新芽が出やすくなるというメリットもあります。葉を切るときは病気の感染を防ぐために、ハサミを消毒してから使いましょう。

クリスマスローズを育てる上で気をつけたい病気や害虫

病害虫
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クリスマスローズを育てる際に注意が必要な病気は、茎や葉、咲き終わった花などに菌が付着することで発症する「灰色かび病」や、葉がべとついて変色してしまう「べと病」、葉にモザイクのような模様ができる「モザイク病」など。病気になった葉はすぐに取り除き、薬剤が有効な病気には薬剤の散布も検討しましょう。

害虫では、ハダニやアブラムシ、ヨトウムシなどに特に注意が必要です。これらの害虫は見つけ次第すぐに駆除しましょう。

クリスマスローズの増やし方

クリスマスローズ
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クリスマスローズの増やし方には株分けと種まきの2つがあります。

ここではそれぞれの増やし方について、最適な時期や方法などを解説します。

大きく育ったクリスマスローズは株分けで増やそう

クリスマスローズ
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クリスマスローズを長年育てて大きくなったときには、株分けをして増やせます。株分けができるようになるまでは、およそ7~8年ほどかかります。

株分けの適期は10~12月です。株分けをする際は細かく分けすぎると生育が悪くなってしまうので、1株あたり3芽ほどつけるようにして株分けします。ただし、有茎種は根が少ないので株分けには不向きです。

種まきで増やす! 慣れたら交配にもチャレンジしてみよう

クリスマスローズの種
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クリスマスローズは種子を採取して増やすことも出来ます。採取してすぐに播くこともできますが、乾燥させすぎないように保存して10月頃に播くとよいでしょう。

種子から育てるのに慣れたら、交配にもぜひチャレンジしてみましょう。

交配する際は、花がしっかり開いて花粉が出ている花を花粉親にします。種子親は花が開き切らないうちに雄しべと、可能であれば蜜腺をピンセットで取り除きます。花粉親からピンセットで花粉をとり、種子親のめしべにこすりつけて交配させます。

有茎種・無茎種それぞれに魅力あるクリスマスローズを育てよう

クリスマスローズ
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クリスマスローズには有茎種と無茎種があり、それぞれ特徴や育て方が異なります。さまざまな色や品種もありますが、交配種は花の色や形にバリエーションがあり、自分で交配することもできます。さらに、花の少ない冬季にもカラフルな花を楽しめる数少ない植物です。

ぜひこの記事を参考にクリスマスローズの品種や特性を把握して、育成や交配を楽しんではいかがでしょうか。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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