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宿根草やドライガーデンに馴染む! 景色と食をダブルで味わう果樹10選
庭づくりをもっと欲張ってみませんか? 「観賞」と「食」の境界を取り払うと、果樹は一年を通して庭を彩る主役になります。可憐な花や鮮やかな紅葉を楽しみつつ、季節の実りも味わえて、さらには宿根草やドライガーデンにもぴったりな果樹を、ボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんが10種セレクト。その魅力とともにそれぞれの果樹を解説します。
目次
じつは高スペック! 一年中庭を彩る「果樹の観賞価値」
「果樹は果樹園で育てるもの」
「家庭菜園は野菜を育てるための場所」
「花壇は花を観賞する場所」
そんなふうに、「観賞用」と「食用」を別々のものとして考えることは日本ではごく自然なことかもしれません。
今回はそんな「観賞」と「食」の境い目を取り払って、植栽の中に織り込んでも見映えがよく、かつ収穫して食べる楽しみもある果樹をご紹介します。
海外のガーデンでは、意外と食用と観賞用の植物の境界は曖昧です。

例えばイギリスのコテージガーデンでは、宿根草のボーダーの中にクラブアップルやナシ、ベリー類が自然に植えられていますし、近年人気のナチュラリスティック・ガーデンでも、ブルーベリーやヘーゼルナッツ、イチジクなどが景観を構成する植物のひとつとして使われています。
果樹は単に収穫するためだけの植物ではありません。

美しい花を咲かせるもの、葉や樹姿がカッコいいもの、秋の紅葉・黄葉が美しいもの、美しい実を付けるもの、冬の枝ぶりが見どころになるもの…などなど、食用以外の観賞価値が高い果樹もたくさんあります。
「食用」というカテゴリーで括られやすい果樹の仲間。ですが、一年を通して庭の景観づくりに貢献できる植物でもあるということなんですよね。
私は宿根草主体の植栽を考えるときも、「花木」「果樹」「グラス」「宿根草」というカテゴリーをあまり意識しません。
それぞれが持つ葉の質感や枝ぶり、花や実、紅葉や冬姿まで含めて、その植物が庭にどんな雰囲気をもたらしてくれるのかを考えながら組み合わせています。
その視点で見ると、果樹は驚くほど多彩な観賞価値があって魅力的な植栽素材なんですよね。

例えばブルーベリーは、春にはドウダンツツジを思わせる可憐なベル形の花を咲かせ、夏にはダークネイビー色の果実を実らせ、秋には燃えるように紅葉します。

フェイジョアは銀葉とエキゾチックな花が美しく、乾燥した雰囲気の植栽にもよく似合います。
ヘーゼルナッツは葉色や枝ぶりそのものが庭のアクセントとなり、収穫まで楽しませてくれます。
収穫の楽しみが加わることで、庭は「ただ眺める場所」から、「季節を味わう場所」という趣もおびてきます。
今回は、宿根草ガーデンにも自然になじむものから、近年人気のドライガーデンやカラッとした雰囲気の地中海風の植栽にもよく似合うものまで、観賞価値と収穫の楽しみを兼ね備えた果樹を10種類ご紹介します。

花や葉を楽しみ、景色をつくり、そして実りを味わう。
そんな少し欲張りな庭づくりのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
宿根草ガーデンにおすすめの果樹5種
アシミナ・トリロバ(=ポポー)
別名「森のカスタード」とも呼ばれ、果皮に傷がつきやすいことからスーパーなどには出回らず「幻の果物」とも言われる珍果樹です。
ポポーは、近年徐々に人気が高まっている北米原産の果樹ですが、じつは観賞樹としても非常に魅力的な存在です。

春には芽吹きに先駆けてダークボルドー色の渋い花を咲かせ、初夏には南国植物を思わせる大きな葉を展開します。
晩夏〜初秋には実が完熟し、晩秋に美しい黄葉も楽しめます。
樹形もまとまりやすく、花も葉も実を楽しめ、とてもガーデンメリットの高い樹種です。
私も自庭でポポーを2品種植えで育てていますが、耐寒性・耐暑性も強く、目立った病虫害もなく、日本の環境下でも、とても育てやすいです。
1品種で植えると実付きがよくないため、2品種以上を植えると多くの実を楽しめます。

関東地方だと、おおむね8月下旬〜9月には実が熟して落果するので、それを収穫し、屋内で追熟させます。果肉は少しマンゴーに似た味わいで、カスタードのようなクリーミーな食感と合わせると「森のマンゴープリン」といったところでしょうか。

ナチュラルな雰囲気のある落葉樹なので宿根草植栽のシンボルツリーとしても違和感なく似合います。
例えば、落葉樹の木陰に植えるとよいと言われているクリスマスローズとは、渋い花色同士で似合いますし、大ぶりの葉姿は、ともすると細かい要素が多くなりがちな宿根草植栽にメリハリを与えてくれます。
花、葉、紅葉、果実と一年を通して見どころが多く、庭のシンボルツリーとしてもおすすめしたい果樹です。
【基本データ】
学名:Asimina triloba (さまざまな品種が作出されている)
科名:バンレイシ科
樹高:3~6m
主な原産地:北アメリカ東部
開花期:4~5月
収穫期:8~10月
バッキニウム(=ブルーベリー)‘チャンドラー’
家庭菜園でもおなじみのブルーベリー。
じつは実を収穫するためだけではなく、四季を通じて庭を彩る美しい低木なんですよね。
中でも‘チャンドラー’ は、500円玉大ほどにもなる大粒果で知られる人気品種です。

ブルーベリーは春にはドウダンツツジを思わせる可憐なベル形の花が咲き、初夏にはダークネイビー色の果実がたわわになり、秋には鮮やかな紅葉で庭を彩ってくれます。
樹高は比較的コンパクトで、宿根草との相性のよい小低木ともいえますね。
カラーリーフのシモツケやアジュガ、ホスタ、ヒューケラなどと合わせて、明るめの半日陰の植栽にプラスしてもよいでしょう。
また、チューリップやムスカリなど春咲きの球根植物とも似合います。
【基本データ】
学名:Vaccinium corymbosum ‘Chandler’
科名:ツツジ科
樹高:1~1.5m
主な原産地:北アメリカ(品種はアメリカ育成)
開花期:4~5月
収穫期:7~8月
アメランキエル(=サスカトゥーンベリー) ‘リージェント’
洋風ガーデンのシンボルツリーとしても人気のジューンベリーにもよく似た白花と、美しい自然樹形が魅力の北米原産果樹です。
春にはサクラを思わせる可憐な白花を咲かせ、初夏にはブルーベリーに似た甘い果実を実らせます。秋には紅葉も美しく、一年を通して観賞価値の高い樹木です。

ジューンベリーは高木に育ちますが、‘リージェント’ は比較的コンパクトに収まるため、小さな庭でも扱いやすく、宿根草ボーダーの背景にも取り入れやすい品種です。
例えばアムソニアやゲラニウムの仲間、背の低いオーナメンタルグラスなどと組み合わせると、北米の自然植生を思わせるやわらかな景観を楽しめます。
【基本データ】
学名:Amelanchier alnifolia ‘Regent’
科名:バラ科
樹高:1~1.5m
主な原産地:北アメリカ西部
開花期:4~5月
収穫期:6~7月
ルブス(=ラズベリー) ‘グルーヴィー’
一般的なラズベリーのイメージを覆す、美しい黄金葉を楽しめる新しい品種です。
ライムイエローの葉は春から秋までカラーリーフとして庭を明るく彩り、野バラのような白い花弁の花も可愛らしく、ライムイエローの葉と赤く熟す果実とのコントラストも印象的です。

ラズベリーも果肉が傷つきやすく、生の果実はスーパーなどではなかなか手に入らない、まさに自家栽培する楽しみのあるフルーツですよね。
とはいいつつ、ラズベリーの枝はしなやかで弓状にしなって暴れやすい上に、枝にはびっしりと細かいトゲがあって扱いにくく、他の植物とは組み合わせて植えにくいという難点がありました。
その点、本種 ‘グルーヴィー’ は樹高1m前後と比較的コンパクトにまとまり、トゲも少ないため植栽にも取り入れやすいのが魅力。
ヒューケラやホスタなど葉色を楽しむ宿根草とも相性がよく、明るいアクセントになります。
実を摘みながら庭を散策する楽しみは、一般的なカラーリーフにはない果樹ならではの魅力です。
【基本データ】
学名:Rubus idaeus ‘Groovy’
科名:バラ科
樹高:0.8~1.2m
主な原産地:ヨーロッパ原種由来の園芸品種
開花期:5~6月
収穫期:6~7月・9~10月
コリルス(=ヘーゼルナッツ)‘レッドマジェスティック’
「実が採れる樹木」でありながら、造園樹としても高い観賞価値を持つ品種です。
銅色の葉と雲龍状にねじれる枝は一年を通して印象的で、とくに冬は落葉後の枝姿が庭のオブジェのような存在感を放ちます。

宿根草が休眠する季節にも景観を支える数少ない果樹であり、夏は銅葉がグリーン主体の植栽を引き締めるアクセントになります。
秋には丸みのドングリといった雰囲気の実も収穫でき、景観と実用性を兼ね備えた個性的な1本です。
単一品種だけで植えると実付きがよくありません。複数の品種を植えることで実付きが改善されます。
【基本データ】
学名:Corylus avellana ‘Red Majestic’
科名:カバノキ科
樹高:3~5m
主な原産地:ヨーロッパ(オランダ育成の品種)
開花期:2~3月
収穫期:9~10月
ドライガーデン・地中海風植栽におすすめの果樹5種
アッカ(=フェイジョア) ‘アポロ’
銀白色を帯びた葉裏と厚みのある深緑色の葉が美しく、乾いた空気感を演出できる常緑果樹です。

初夏には白い花弁と赤い雄しべが印象的なエキゾチックな花を咲かせ、花弁はほんのり甘く、そのまま食べることもできます。
秋には芳香のある果実が熟し、市場ではなかなか流通しないフレッシュな風味を楽しめます。
オリーブやローズマリー、ラベンダー、オレガノなどと組み合わせれば、地中海沿岸のハーブガーデンを思わせる爽やかな景観に。常緑樹として一年を通して庭の骨格を支える点も魅力です。
【基本データ】
学名:Acca sellowiana ‘Apollo’
科名:フトモモ科
樹高:2~4m
主な原産地:南アメリカ(ウルグアイ・ブラジル南部など)
開花期:5~6月
収穫期:10~11月
フィカス(=イチジク) ‘ゼブラスイート’
美しい縞模様が入る果実を実らせる珍しいイチジクです。

イチジク特有の大きく切れ込む葉は存在感があり、宿根草やグラスの細かな葉とのコントラストを生み、植栽に建築的なアクセントを与えてくれます。
熟した果実は甘みが強く、生食はもちろんデザートにも最適。
イチジクはトルコ〜地中海沿岸部の乾燥した地域に起源を持つ植物です。
なので、アガベやユッカ、アカンサスや乾燥地系のグラス類など乾燥に強い植物と組み合わせても植生的に違和感なく似合い、食べるだけでなく南欧の庭を思わせる開放的な植栽を楽しめます。
【基本データ】
学名:Ficus carica ‘Zebra Sweet’
科名:クワ科
樹高:2~4m
主な原産地:西アジア~地中海沿岸(園芸品種)
開花期:5~6月(果実形成)
収穫期:8~10月
プニカ(=ザクロ)‘エイトボール’&‘モラール デ エルチェ’
ザクロは細かな葉と鮮やかな朱赤の花、秋に実る個性的な果実や秋の鮮やかな黄葉まで、観賞価値の高い果樹です。
またザクロの樹は古木化したときにゴツゴツとした凹凸ができたり、トルネード状にねじれたりする幹の姿もカッコよく、もともと乾燥した西アジア〜中東原産ということもあり、ドライガーデンの風情によく似合います。

‘エイトボール’ は黒く熟す珍しい果実が特徴で、シックな色彩の植栽によく映えます。
一方、‘モラール・デ・エルチェ’はスペイン原産の高級品種で、種が非常に小さく柔らかいため、取り出したりせずにそのままで食べやすく、甘みがとても強く美味しいことで知られています。
乾燥にも強く、オリーブやフェイジョア、ローズマリーなどと組み合わせると、地中海沿岸の雰囲気の植栽に自然になじみます。
秋には枝先に揺れる果実が庭のアクセントとなり、収穫の喜びも味わえます。
【基本データ】
学名:Punica granatum ‘Eight Ball’
科名:ミソハギ科
樹高:2~4m
主な原産地:西アジア~中東(品種は海外育成)
開花期:6~7月
収穫期:10~11月
シトルス(=レモン) ‘ピンクレモネード’
葉、花、果実のすべてが美しい、まさに観賞価値と収穫を兼ね備えたレモンです。

クリーム色の斑が入る葉は一年中明るい印象を与え、春にはネロリを思わせる爽やかな香りのクリームホワイト色の花を咲かせます。
果実は縞模様の果皮をまとい、熟した果肉は淡いピンク色を帯びます。
テラスや鉢植えでも楽しみやすく、ローズマリーやタイム、ラベンダーなどハーブ類との組み合わせもよく似合います。
香り、彩り、収穫という3つの楽しみを、一年を通して庭にもたらしてくれる果樹です。
【基本データ】
学名:Citrus × limon ‘Pink Lemonade’
科名:ミカン科
樹高:2~3m(地植えでは3~4m程度)
主な原産地:アメリカ(原種はインド北東部~ヒマラヤ山麓とされる)
開花期:4~6月(環境によっては四季咲き性)
収穫期:11月~翌年1月
エレアグヌス・アングスティフォリア(=ロシアンオリーブ)
シルバーリーフが美しく、庭木としても人気の高いロシアンオリーブ。
じつは果物のグミの一種でもあり、また、ドライガーデンやウィンターガーデンを彩るシンボルツリーとしても活躍できる樹種なんですよ。

春〜秋にはとても白みの強い銀葉を楽しめ、クリスマスシーズンの12月頃にはグミキャンディーのようなワインレッドの実が枝いっぱいに熟します。
果実は食べることもできますが、この木の真価は冬景色にあります。
宿根草がシードヘッドだけになった庭で、銀枝と赤い実が静かな彩りを添え、他の果樹にはない年の瀬の季節感を演出してくれます。
ドライガーデンでは、花や実だけではなく、葉色や枝姿も重要なデザイン要素になります。
宿根草がシードヘッドだけになった冬の庭にも美しい実が彩りを添え、収穫と景観の両方を楽しませてくれる、まさに「植栽に織り交ぜたい果樹」の代表格といえるでしょう。
【基本データ】
学名:Elaeagnus angustifolia
科名:グミ科
樹高:4~8m
主な原産地:西アジア~中央アジア
開花期:5~6月
収穫期:11~12月

「庭は自然の美しさと人の暮らしが出会う場所である。」
(ウィリアム・ロビンソン William Robinson 園芸家・作家 1838–1935)
Credit
写真&文 / 太田敦雄 - 「ACID NATURE 乙庭」代表 -

おおた・あつお/園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科
第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞(2020)
第3回東京パークガーデンアワード@砧公園 審査員特別賞(2025)
第24回 緑化技術コンクール緑化施設部門 環境大臣賞 (2025)
ほか、受賞多数。
NHK『趣味の園芸』講師。ガーデンセラピーコーディネーター1
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフ
「太田敦雄」公式ブログ https://note.com/acid_nature_0220
プロフィール写真/田中雅也
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