「ハナニラ」は野菜のニラとは違う⁉︎ 星形の愛らしい春の花を解説

Iva Vagnerova/Shutterstock.com
繊細な雰囲気の花が可愛らしいハナニラ(イフェイオン)。「ニラ」とはいいますが、食用のニラとは違う種類の植物です。花が小さめで背も低いので、寄せ植えや花壇の隙間を彩るときにも使いやすい人気の花です。この記事では、ハナニラの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、品種、育て方について詳しくご紹介します。
目次
ハナニラの基本情報

植物名:ハナニラ
学名:Ipheion uniflorum
英名:springstar、spring starflower
和名:ハナニラ(花韮)
その他の名前:イフェイオン、アイフェイオン、イエイオン、セイヨウアマナ(西洋甘菜)
科名:ヒガンバナ科
属名:ハナニラ属(イフェイオン属)
原産地:南アメリカ
形態:宿根草(多年草)
ハナニラはヒガンバナ科ハナニラ属の球根性多年草で、かつてはユリ科に分類されていましたが、現在はヒガンバナ科とされています。また、食用の花ニラと園芸用のハナニラは違う種類の植物です。
ハナニラの草丈は15~25cmほどで、葉や茎を傷つけるとニラのようなニオイがしますが、傷つけないようにすれば栽培中にニオイはそれほど気になりません。
現在はハナニラ属の植物ではない黄色ハナニラやパルビフローラもハナニラの仲間として販売されることがありますが、これらは以前ハナニラ属に分類されていたためです。ハナニラ Ipheion uniflorum(イフェイオン・ユニフロラム)の開花時期は3~4月、黄色ハナニラは2~4月、パルビフローラは11~12月です。

ハナニラの原産国は中央アメリカから南アメリカです。栽培が容易なため世界中で栽培されており、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランスなどで帰化植物として定着しています。耐寒性・耐暑性ともにあり、栽培難易度は低く、丈夫で自然分球やこぼれ種でもよく増えます。
ハナニラの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:3〜4月
草丈:15〜25cm
耐寒性:普通
耐暑性:強い
花色:青、紫、ピンク、白
ハナニラの花色は青や紫、ピンク、白などがあり、星形の美しい花を咲かせます。花は光に反応して、夜や曇りの日、雨の日には花を閉じる性質があります。葉は細長く明るい緑色で、食用のニラに似た形をしています。葉は地面に倒れて横に広がる傾向があるため、春先のグラウンドカバーとしても利用できます。夏には休眠期に入り、地上部がなくなって休眠します。
ハナニラの名前の由来や花言葉・誕生花

ハナニラという和名の由来は、花が美しく、葉にニラ臭があることから。ハナニラの花言葉は「悲しい別れ」「愛しい人」などです。これは、青みがかった白い花の色が憂いを秘めたもの悲しさを感じさせることが由来とされています。また、ハナニラは3月26日の誕生花でもあります。
ハナニラの代表的な品種と種類

ハナニラにはいくつかの品種があります。ここでは、ハナニラの人気の品種を一部ご紹介します。
ウィズレーブルー

‘ウィズレーブルー’はユニフロラムの中でも特に美しい藤青色の花を咲かせ、人気の高い品種です。花にはよい香りがあります。
ロルフフィードラー

‘ロルフフィードラー’は、一般的なユニフロラムに比べて葉が短く、花が肉厚で丸みがあります。鮮やかな青色の花が特徴的な品種です。
黄花ハナニラ

黄花ハナニラはハナニラによく似ていますが、現在はヒガンバナ科ハタケニラ属に分類され、ハナニラとは別の属です。多年草で、2~4月に黄色い花を咲かせます。「セロウィアナム」と呼ばれることもあります。
ハナニラと食用の花ニラとの違い

ハナニラと同じく「花ニラ」と呼ばれる植物に、野菜のニラの花があります。
ニラの花の開花期は8~9月。白い星形の小さな花が集まって花茎の先に咲き、丸い散形花序を作ります。このニラの花は食用でき、つぼみの状態で野菜として流通していることもあります。ただし、ニラは花が咲くと株が弱り、また茎葉も硬くなりやすいため、葉を収穫する場合はつぼみを摘んで咲かせないようにするとよいでしょう。
一方、ハナニラは3~4月に開花期を迎え、1本の茎の先に1つの花を咲かせます。ニラのような香りがありますが毒性があり、食用できません。葉だけの状態では見分けにくいので、ハナニラを栽培する際は、家庭菜園のスペースからは離して植えるなど注意しましょう。

ハナニラの栽培12カ月カレンダー

開花時期:3〜4月
植え付け・植え替え:9〜11月
肥料:特になし
分球:9~11月
種まき:5~6月
ハナニラの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日向から半日陰で育てるのが理想的です。日陰では花付きが悪くなることがあります。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけのよい場所を好みますが、土質はあまり選ばないため、鉢やプランターのほか、道路わきの隙間やロックガーデンなどでも栽培できます。草丈が低いため、春のグラウンドカバーとしても人気があり、寄せ植えにも利用しやすい植物です。
耐寒性・耐暑性
耐寒性、耐暑性ともにあり、特に冬越しや夏越しの対策は必要ありません。基本的に植えっぱなしで問題ありませんが、休眠期の夏に湿った状態が続くと球根が腐ってしまうことがあるため、水はけの悪い場所で育てている場合は掘り上げて貯蔵するか、鉢植えの場合は雨の当たらない場所に移動してもよいでしょう。
ハナニラの育て方のポイント
用土

ハナニラは水はけのよい弱アルカリ性の土を好みますが、基本的に土質は選びません。地植えする場合は、植え付けの2週間ほど前に苦土石灰を混ぜ込み、1週間前に腐葉土を混ぜ込んで土づくりをしておくとよいでしょう。鉢やプランターに植える場合は、市販の草花用培養土を使うのがおすすめです。
水やり

ハナニラは乾燥に強いため、地植えの場合は降雨だけで十分で、基本的には水やりをしなくても問題ありません。鉢植えでも、雨の当たる場所に置いている場合は、水やりなしで育つことがほとんどです。ただし、長期間雨が降らず、土が乾燥しているときにはたっぷりと水を与えます。
7~9月の休眠期には生育が止まるため、この期間の水やりは必要ありません。
肥料

鉢植え、地植えのどちらで育てる場合も、元肥として緩効性化成肥料を植え込んでおきます。追肥は特に必要ありません。
注意する病害虫

ハナニラには特に注意すべき病害虫はありませんが、まれにアブラムシがつくことがあります。アブラムシは日当たりや風通しの悪い環境で増えやすいです。アブラムシに気づいたら、根気強く取り除くか、薬剤を使って退治することが大切です。
ハナニラの詳しい育て方
植え付け・植え替え

ハナニラの球根は夏に出回り、ポット苗は春に流通します。球根の植え付けの適期は秋(9~11月)ですが、春にポット苗を入手した場合は早めに植え付けましょう。
地中で球根が増えるため、植え付けの際には株間を十分に取ることが重要です。鉢植えの場合は5号鉢に10球が目安となります。地植えでは球根同士の間を約6cm開け、植え付け深さを5cmほどにしましょう。
一度植え付けた後は数年間放置してもよく増えますが、むしろ増えすぎに注意が必要です。株が育ち密集してきたら、掘り上げて手で球根を分けて植え直します。鉢植えでは根がいっぱいになったら、一回り大きな鉢に植え替えます。
剪定・切り戻し

ハナニラはあまり手入れをしなくてもよく育ちますが、花が咲いている期間には、こまめに花がら摘みを行うようにします。終わった花をそのままにしておくと種子ができ、球根の栄養を奪ってしまうためです。
剪定は特に必要ありません。また、葉は球根に栄養を送るのに大切な役割を果たすため、花が咲き終わった後も自然に枯れてくるまでそのままにしておきます。
夏越し・冬越し

ハナニラは耐暑性が強いため、夏場も特別な対策はほとんど必要ありません。ただし、夏は休眠期に入るため、水やりは控えてください。また、ハナニラはある程度の耐寒性があるため、冬でも日が当たる場所であれば育ちます。
増やし方

ハナニラは、何もしなくても地中で球根が増えて広がりますが、分球と種まきでさらに増やすことも可能です。
分球の適期は9~11月です。球根を掘り上げ、親球の横にできた子球を分けて増やします。分球は植え替え時に行うとよいでしょう。花が咲き終わった後は、球根を太らせるために花を早めに摘み取り、種子を作らせずに球根に栄養を回すことが重要です。
種まきの適期は5~6月で、秋頃に発芽します。花後にできる種子を取り出して涼しい場所で保管し、適期に播きます。
花壇や鉢植えなどさまざまなスタイルでハナニラを楽しもう

ハナニラは草丈が低く、土質を選ばないため、庭の花壇や鉢、ちょっとした隙間など、場所を選ばずに元気に育つ植物です。春に咲く繊細で美しい星形の花はさまざまな色があり、庭や鉢植えの脇役としてもおすすめです。丈夫で育てやすく、一度植えれば何年も楽しめるので、ガーデニングビギナーにもぴったり。ぜひ、いろいろな場所でハナニラを楽しんでみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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