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【植栽計画】春から秋まで楽しむチューリップと一年草のリレー栽培

【植栽計画】春から秋まで楽しむチューリップと一年草のリレー栽培

htmSana/Shutterstock.com

1年中花が咲き続ける庭をつくるためには、事前に植栽プランを立てておくのがポイントです。今回ご紹介するのは、来年の秋までずっと楽しめる、チューリップと一年草のリレー栽培。ローズアドバイザーの経歴を持ち、数々の文献に触れてきた田中敏夫さんが、チューリップの植え時である10月から翌年の秋までの植栽プランと楽しみ方を、おすすめの一年草セレクトとともに解説します。花が途切れることのない庭を目指して、来年の庭づくりの準備を始めましょう!

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チューリップとほかの植物の組み合わせ

チューリップ畑
JeniFoto/Shutterstock.com

赤や黄色の花が絨毯のように続く、オランダのチューリップ畑。春の到来を告げるおなじみの風景ですが、最近の庭づくりでは、ナチュラルな風合いを求めてでしょうか、チューリップなどの球根類を散らして、宿根草やグラス類などと混栽することも多くなっています。

チューリップの庭
Photo/John Menard from Phoenix, USA [CC BY-SA 2.0 via Wikimedia Commons]

早春から開花するクロッカスやハナニラなどは、いち早く春の到来を告げてくれます。そして、それらを追いかけるように花咲くチューリップは本当に美しく、うっとりするほどに魅力的です。しかしそれだけに、チューリップが終わると庭は色を失ったように寂しくなりがちです。

チューリップの後を追うように、冬越しした一年草や宿根草などが春の庭を盛り上げてくれると思いますが、ともすると花のない“時間と空間”が生じがちです。それを避ける1つの手法として、リレー栽培を計画・実施すると、1年を通して次々に開花を楽しむことができます。今回は、そんな植栽計画を解説しましょう。

チューリップと一年草のリレー栽培の概略

チューリップの開花は華やかですが、長くはありません。長く楽しむには、チューリップの開花期間を調べ、早咲き、中咲き、遅咲きを混植するという方法がありますが、それでも関東地方以西などでは5月まで開花させることは難しいでしょう。

そこで考えられるのが、チューリップの開花後は球根を掘り上げて保管し、空いた場所に一年草を植え込む。そしてそれらが枯れ込む晩秋に、保管していた球根あるいは新しい球根を植え込み、年間を通して花の開花を楽しむというリレー栽培です。

リレー栽培の流れ

リレー栽培
  • 冬咲き一年草:チューリップの植え込みから開花までの間をつなぐ
  • コンパニオン一年草:チューリップと同じ時期に咲く
  • 春秋一年草:チューリップの掘り上げ後に咲く

【作業手順】

10月:春秋一年草の枯れ込みを待って整地し、チューリップの球根を植え付ける
   チューリップの開花までのつなぎとして、冬咲き一年草を混植する
   耐寒性がある早咲きの一年草(宿根草でも可)をコンパニオン一年草として近くに植える
4月:チューリップが開花。冬咲き一年草も咲き残る
5月:枯れ込んだチューリップの球根を掘り上げ、混植した冬咲き一年草も抜き取る
   コンパニオン一年草は咲き残る
   チューリップを掘り上げて空いた場所を整地し、春秋一年草を植え、秋の終わりまで楽しむ
6月:枯れ込んだコンパニオン一年草を抜き取る
10月:春秋一年草の枯れ込むのを待って再び整地し、チューリップ、冬咲き一年草を植え付ける

5月のチューリップ開花終了後の掘り上げを簡単にするために、はじめからプラカゴやナーサリーポットなどにチューリップの球根を植え付け、埋めておくのも一案です。

それでは、リレー栽培の1年間の流れを、STEP1~5に分けて解説します。

リレー栽培STEP1
チューリップを選ぶ

チューリップ
andreev-studio.ru/Shutterstock.com

チューリップの原種は150ほど。自生地はトルコを中心に、西は地中海沿岸、東はトルキスタン地域などです。園芸種は1万近くになっているといわれ、原種などの系統、開花時期と花形によりグループ分けされていますが、さらに花色の変化、草丈の高低の要素が加わり、よく言えば選択の幅が広い、逆に言えば選ぶのに迷いが生じてしまうというのが現状です。

チューリップの分類は、オランダ王立球根協会による15種の園芸種分類表が広く受け入れられています。こちらは、開花時期(早生、中生、晩生)や花形(一重、八重、チューリップ系、フリンジ系、パロット系)などによって分類整理されています。

【オランダ王立球根協会による分類表】

分類略号開花期特徴代表的な品種
一重早咲き (Single Early)SE早生(4月上旬~)15~50cmの草丈。茎は強いアプリコットビューティー クリスマスドリーム
八重早咲き (Double Early)DE早生(4月上旬~)大輪、25~40cmの草丈ピーチブロッサム モンテカルロ
トライアンフ (Triumph)T中生(4月中旬~)花形がよく整う。35~60cmの草丈ロザリー アニー・シルダー
ダーウィンハイブリッド (Darwin Hybrid)DH早生(4月上旬~)大きな花。50~70cmの草丈ピンク・インプレッション オックスフォード
一重遅咲き (Single Late)SL晩生(4月下旬~)45~80cmの草丈ピンク・ダイアモンド クィーン・オブ・ナイト
ユリ咲き (Lily-flowered)L晩生(4月下旬~)50~65cmの草丈バレリーナ マリリン
フリンジ (Fringed)FR晩生(4月下旬~)一重遅咲きに似るが花弁トップに細かな切り込みが入る。草丈40~80cmファンシーフリル ランバーダ
ビリディフローラ (Viridiflora)V晩生(4月下旬~)花弁に緑の筋が入る。草丈25~60cmスプリング・グリーン グリーンランド
レンブラント (Rembrandt)R晩生(4月下旬~)花弁に白などの筋が入る。草丈45~65cmレムズ・フェイバリット
パロット (Parrot)P晩生(4月下旬~)花弁にねじれが生ずる大輪花。草丈50~65cmフレーミング・パロット ブルー・パロット
八重遅咲き (Double Late)DL晩生(4月下旬~)大輪。草丈40~60cmアンジェリケ マウント・タコマ
カウフマニアナ (Kaufmanniana)K超早生(3月下旬~)細めの小輪。草丈10~25cm。宿根しやすいフローレスタ ストレーサ
フォステリアナ (Fosteriana)F超早生(3月下旬~)細めの大輪。草丈20~40cm。宿根しやすいレッド・エンペラー
グレイギー (Greigii)G超早生(3月下旬~)葉に筋が生じる。草丈23~50cm。宿根しやすいレッド・ライディングフッド
原種系 (Miscellaneous)M超早生~中生(3月下旬~4月中旬)小輪。超早生が多い。草丈7.5~45cmレディ・ジェーン

開花の様子を想像しながら品種を選ぶのはじつに楽しく、園芸の醍醐味を味わえる至福の時間かもしれませんが、数多い品種を網羅したカタログなどを前にすると目移りしてしまいがちです。どの品種を選ぶか、事前にある程度プランを立てておくことをおすすめします。

例えば、

  • 原種系の早生種→トライアンフ系など中生種→ユリ形など晩生種とつないで開花を長く楽しむ
  • 淡いピンク/イエロー/モーブ(藤色)などニュアンスカラーで揃える
  • クリムゾン/パープル/イエローなど、ビビッドな色の組み合わせで春を演出する
  • 一重咲き/ユリ咲きなど花形を組み合わせる、あるいは統一する
  • 株の高さを合わせる、あるいは変化をつける

といったところでしょうか。

下の例は早生の原種系、花形が整った中生のトライアンフ系、晩生のフリンジ系を選んだ例です。

早生:レッド・エンペラー(F)、レディ・ジェーン(M)

チューリップ
‘レッド・エンペラー(Red Emperor)’(左)と‘レディ・ジェーン(Lady Jane)’ (右)。Photo/Andre Carrotflower [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]、peganum [CC BY-SA 2.0 via Wikimedia Commons]

中生:ロザリー(T)、オルレアン(T)、アニー・シルダー(T)、ハッピー・ジェネレーション(T)

チューリップ
左上から時計回りに、‘ロザリー(Rosalie)’、‘オルレアン(Orleans)’、 ‘ハッピー・ジェネレーション(Happy Generation)’、‘アニー・シルダー(Annie Schidler)’。Photo/Cillas、Agnieszka Kwiecień[CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

晩生:ファンシーフリル(FR)、ランバーダ(FR)

チューリップ
‘ファンシーフリル(Fancy Frills)’(左)と‘ランバーダ(Lambada)’ (右)。Photo/Kor!An [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]、Anrie [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

リレー栽培STEP2
冬咲き一年草を選ぶ

10月のチューリップの球根を植え込むとき、冬から早春まで開花する低い草丈の一年草を選んで、チューリップの芽出し時期にも差し障りがないよう重なりを避けて混植しておくと、チューリップの開花までの“空き”時間を埋めることができます。

【冬咲き一年草の例】

パンジー/ビオラ(Viola x wittrockiana:スミレ科スミレ属)
プリムラ・ジュリアン(Primula x juliana:サクラソウ科サクラソウ属)
ノースポール(Leucanthemum paludosum:キク科フランスギク属)

パンジー、プリムラ、ノースポール
(cap)左から、パンジー、プリムラ、ノースポール。Denis Achberger、Eugene_may、rinda badi novtari/Shutterstock.com

リレー栽培STEP3
コンパニオン一年草を選ぶ

チューリップとポピー
morozv/Shutterstock.com

耐寒性があり、チューリップと同じ時期(4~6月)に華やかに開花する一年草があります。これらの耐寒性一年草は、チューリップのコンパニオンとして庭を彩ってくれます。多くの種類があるので、その中から好みで選べばOK。具体例をいくつかご紹介しておきましょう。

【コンパニオン一年草の例】

アグロステンマ・ギタゴ/‘桜貝’(Agrostemma githago/A. githago ‘Sakuragai’:ナデシコ科ムギセンノウ属)
ポピー/ヒナゲシ(Papaver rhoeas:ケシ科ケシ属)
オルラヤ・グランディフローラ(Orlaya grandiflora:セリ科オルラヤ属)
ボリジ(Borago officinalis:ムラサキ科ルリジサ属)
ジャーマン・カモミール(Matricaria recutita:キク科シカギク属、カモミール種 )
ニゲラ(Nigella damascena:キンポウゲ科クロタネソウ属)
ヤグルマギク/セントーレア(Centaurea cyanus:キク科ヤグルマギク属)

アグロステンマ・ギタゴ/‘桜貝’(Agrostemma githago/A. githago ‘Sakuragai’ :ナデシコ科ムギセンノウ属)

アグロステンマ
ギタゴと‘桜貝’。Photo/田中敏夫

種子からの苗作りが比較的容易で、こぼれ種から発芽することも多く、とても経済的です。よく出回っているのは原種系のギタゴと淡いピンク花の園芸種‘桜貝’ですが、2品種を混植するほうが美しいと感じています。すらりとした優雅な草姿が魅力ですが、倒れやすいという欠点もあります。

ポピー(Papaveraceae:ケシ科ケシ属)

ケシ属(Papaver)には60種ほどの原種があるそうです。園芸用に利用されるポピーは、主に次の3つのグループのものです。

アイスランド・ポピー(P. nudicaule

アイスランドポピー
Photo/ David Monniaux [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]

18世紀にシベリアで発見されたので、当初はシベリア・ヒナゲシと呼ばれていましたが、語呂がよいのかアイスランド・ポピーという呼称が一般的となりました。アイスランドとの直接の関連はないそうです。

ヒナゲシ(P. rhoeas

ヒナゲシ
Photo/Agnieszka Kwiecień, Nova [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

フランス語ではコクリコ(Coquelico)。響きが素敵で、原野に群生している風景が美しい動画で紹介されたり、モネの絵画などでも題材とされていることから、最近はコクリコのほうが一般的になっているのかもしれません。また虞美人草という別名は、史記の項羽伝で言及された悲劇の愛妃である虞にちなんだものです。

オリエンタル・ポピー(P. orientale

オリエンタルポピー
Photo/ Dominicus Johannes Bergsma [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

原種はトルコ、イランなど。オニゲシとも呼ばれる大型種です。大輪花を楽しむことができますが、関東以西など暖地では夏越しが難しいのが残念です。

なお、ポピーの近縁種の中には、栽培に法的禁止・規制があるもの、避けるべきものとされる品種群があります。次に挙げる種類は栽培できないので、注意しましょう。

ケシ(P. somniferum)、アツミゲシ(P. setigerum)は「アヘン法」により、ハカマオニゲシ(P. bracteatum)は「麻薬及び向精神薬取締法」により、栽培は禁止されています。また、ナガミヒナゲシ(P. dubium)は「特定外来生物」や「生態系被害防止外来種(要注意外来生物)」には指定されていないものの、これらと同様に生態系に大きな影響を与える外来植物とされています。いずれの品種も決して栽培しないようにしてください。

栽培禁止ポピーの見分け方については、下記の東京都健康安全研究センターのサイトをご参照ください。
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_iyaku/plant/tokyo-keshi/

オルラヤ・グランディフローラ(Orlaya grandiflora:セリ科オルラヤ属)

オルラヤ
Photo/田中敏夫

種子からの育苗が容易で、とても育てやすい草花です。開花期間は千葉県西部では5月。チューリップのやや後、バラと同じ頃です。千葉県北西部では盛夏に耐えきることができませんが、5月の中旬には絢爛と花開き、華やかなので庭に欠かすことができません。

秋に露地播き、またはポット播きして冬越しさせるのがおすすめです。こぼれ種でもよく増えることから、数年経過すると繁茂しすぎることになるかもしれません。コントロールに注意しましょう。

ボリジ(Borago officinalis:ムラサキ科ルリジサ属)

ボリジ
Photo/田中敏夫

マドンナブルーと評される美しい青花は、エディブルフラワーとしてサラダの付け合わせに利用されることもあります。そのためキッチンハーブの1つとされることが多いですが、トゲトゲと剛毛に覆われて青みを帯びた姿がとても魅力的で、春から初夏咲きの庭植え一年草としてとても有用だと思います。

オルラヤ・グランディフローラほどではありませんが、大きな種子なので育苗も簡単で、こぼれ種で増えることも期待できます。

ジャーマン・カモミール(Matricaria recutita:キク科シカギク属)
ダイヤーズ・カモミール(Cota tinctoria:キク科コタ属)

カモミール
‘ジャーマン・カモミール(A. Matricaria recutita)’ (左)と‘ダイヤーズ・カモミール(A. Cota tinctoria)’(右)。Photo/Yuriy75、Kor!An [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]

ハーブティーによく用いられるのが、白花のジャーマン・カモミール。盛夏を越えることは難しいですが、キク科(Asteraceae)らしい可憐な小花、鳥の羽根のような裂状の葉がほかの草花とのコントラストが生じることなどから、春を彩る一年草としてよく利用されます。

近縁種のダイヤーズ・カモミールは黄花が美しく、両品種を混植するととても優雅です。ダイヤーズ・カモミールはジャーマン・カモミールよりも少し遅れて開花し、草丈も少し高性になることが多いように思います。

ニゲラ(Nigella damascena:キンポウゲ科クロタネソウ属)

ニゲラ
ニゲラの花と実。Photo/I, Wildfeuer、JLPC [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]

キンポウゲ科(Ranunculaceae)の一年草で、“Love in the Mist(靄のなかの恋)”というロマンチックな別名がふさわしい花。カモミールと同様に細く切れ込んだ小葉が魅力的です。白、ピンク、青、パープル、黄と花色も豊富ですし、小さな風船状になる実もエキゾチックで、春には必ず見たい花です。

ヤグルマギク/セントーレア(Centaurea cyanus:キク科ヤグルマギク属)

ヤグルマギク
Jaren Jai Wicklund/Shutterstock.com

青やピンクのほか、白、バーガンディなどの色があるヤグルマギク。ヤグルマギクとセントーレアはどちらも同属の仲間ですが、日本ではセントーレアはキク科ヤグルマギク属(セントーレア属)のうち多年草のものを指し、ヤグルマギクは一年草を指すのが一般的です。

STEP1~3で草花を選んだら、10月頃に植え付け、春の開花期まで楽しみましょう。

リレー栽培STEP4
チューリップ球根の掘り上げ

チューリップの球根
開花後のチューリップの球根。Photo/Beat Ruest [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

3月から芽を出したチューリップの開花は4月初旬から下旬、おおよそ3週間ほどです。5月に入ると地上部が枯れ込み、休眠に入ります。

休眠期に入ったチューリップは原種系など一部を除き、植え込んだまま越年して翌年も開花させることは簡単ではありません。開花後は、開花に力を使い果たした親球根は消滅し、子球ができているといった状態が一般的です。しかし、それらの子球は、たとえ夏越しできたにしても、翌年は葉を伸ばすだけで開花しないということが多いのです。

翌年の開花を実現するためには、花後は早めに花茎を折り取って球根の養生に努め、休眠に入ったら掘り上げて、充実したものだけを残して陰干しするなどの処置が必要です。

リレー栽培STEP5
春秋一年草を選ぶ

夏花壇
SusaZoom/Shutterstock.com

5月からチューリップの後を埋める一年草は、ぜひお好みのままいろいろと試してみてください。春秋一年草選びのポイントとして、次の2点を基準にするのがおすすめです。

  • 周りの草花とよく調和する
  • 開花期間が長い

初夏から晩秋まで、庭では多くの灌木や宿根草が繁茂していることを考えれば、草丈は60~80cm、株幅があまり張らないタイプが使いやすいでしょう。また、開花期間が長い草花、できれば10月まで咲き続けるものは、管理がとても楽です。

美しい一年草は数えきれないほどあります。お好みで選び、ガーデニングを楽しむことが一番だと思います。ご参考までに春秋一年草の例をいくつか挙げます。

【春秋一年草の例】

高性ジニア/ヒャクニチソウ(Zinnia:キク科ヒャクニチソウ属)
アフリカン・マリーゴールド(Tagetes:キク科コウオウソウ属)
一年性サルビア(Salvia splendens etc.:シソ科アキギリ属)
センニチコウ ‘ファイヤーワークス’(Gomphrena globosa ‘Fire Works’:ヒユ科センニチコウ属)

高性ジニア/ヒャクニチソウ(Zinnia:キク科ヒャクニチソウ属)

ジニア
Photo/田中敏夫

6月から9月末、時に10月まで、長く咲き続けて夏の花壇を彩るジニア。イエロー、ピンク、白、二色咲きなど花色豊富。シングル、ダブル咲きなど花形にも変化があり、花壇前景をカバーする草丈15cmほどの矮性種から、高さ60cmほどで切り花などに利用されるものまでバラエティ豊かです。

メキシコを中心に15種ほどの原種が知られていますが、主に、草丈が60cm前後となるヴィオラケア系(Z. violacea)と、細葉で高さ15~30cmに収まる矮性のアングスチフォリア系(Z. angustifolia)が流通しています。

夏花壇では、宿根草と調和する草丈40~60cmのものが利用しやすいと解説しましたが、その例がジニア・クィーン系。もともと切り花用の品種ですが、優雅な花形と花色で人気があり、庭植え向けに苗が出回るようになりました。また、種子も販売されています。炎天下でも落ち着いた雰囲気を醸し出してくれる‘クィーン・レッド・ライム’や‘ジャイアント・ライム’はとても魅力的です。

アフリカン・マリーゴールド(Tagetes:キク科コウオウソウ属)

アフリカン・マリーゴールド
Sayan Puangkham/Shutterstock.com

マリーゴールドの原種自生地は、中央・南アメリカ。市場には大輪・高性の“アフリカン”と小輪・矮性の“フレンチ”が出回っていますが、この名前は原産地を示すものではありません。“アフリカン”は植栽されていたスペインから、“フレンチ”はやはり植栽されていたフランスからヨーロッパ中に広がったことに由来する名称だそうです。

矮性のフレンチのほうが多く出回っていますが、チューリップからリレーされるとなると草丈が足らず、他の草花に埋もれてしまいがちです。イエロー、オレンジ、白などの大輪花を咲かせる“アフリカン”のほうが適しているでしょう。

一年性サルビア(Salvia splendens etc.:シソ科アキギリ属)

サルビア
左上から時計回りに、サルビア・スプレンデンス、サルビア・コキネア、サルビア・ファリナセア、サルビア・パテンス。Photo/ George E. Koronaios [CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons]、Forest & Kim Starr [CC BY 3.0 via Wikimedia Commons]、 Photo/ Kakidai, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons、Raffi Kojian, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons]

一年草、多年草、さまざまな種類があるサルビアですが、主にハーブとして出回っているセージも含めてアキギリ属(Salvia)に含まれています。900種に及ぶ原種があるとのことです。

自生地では多年草であることが多いサルビア/セージですが、非耐寒性で晩秋に枯れ込むため、一年草扱いのものもあります。

サルビア・スプレンデンス(S. splendens)といえば、公園などで赤い絨毯のように群生して夏を彩っている姿に思い当たる方は多いでしょう。品種改良が進み、赤花ばかりではなく、パープル、白、そして淡いアプリコットやソフト・ピンクなどニュアンスカラーの品種など花色も豊富になっています。

その他、一年草扱いのものとしては、萼弁が発色しないため、落ち着いた花色になるサルビア・コキネア(S. coccinea)、ブルーサルビアと呼ばれる青花のサルビア・ファリナセア(S. farinacea)、淡紅色や淡青色が多いサルビア・ヴィリディス/ホルミナム(S. viridis/ horminum)などがあります。

サルビア・スプレンデンス
ニュアンスカラーのサルビア・スプレンデンス。Photo/Forest & Kim Starr [CC BY 3.0 via Wikimedia Commons]

センニチコウ ‘ファイヤーワークス’(Gomphrena globosa ‘Fireworks’:ヒユ科センニチコウ属)

センニチコウ
Photo/Jim Robbins [CC BY-NC-ND 4.0 via NC State University]

「千日紅」という和名のとおり、長く開花が楽しめる花です。

赤、パープル、白など花色が豊富なグロボーサ(G. globosa)由来の矮性種は、草丈20~40cm。近縁種の赤やオレンジで高性のキバナセンニチコウ(G. haageana)由来の‘ストロベリーフィールズ’も人気がありますが、パープルの花弁の間からイエローのシベがわずかに覗く美しい花色の‘ファイヤーワークス’は草丈80~100cmとなり、風にそよぐ草姿がとりわけ美しく、一番人気かと思います。なお、関東以西なら露地で越年するという記述も見受けますが、簡単ではないことから、一年草扱いとしました。

最近、矮性で横広がりする‘ファイヤーワークス’の改良種‘ゴンフレナ・ラブラブラブ’も登場し、より多花性で開花期間も長く人気があります。

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