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自然に触れて癒される! 「雑木の庭」のつくり方

自然に触れて癒される! 「雑木の庭」のつくり方

今年は新年から寒波となり、大変寒くなりましたね。快晴の真っ青な空に、公園の樹木や歩道沿いの街路樹が幹から四方八方に枝を伸ばしている光景を見かけます。
自宅の庭に、こんな落葉樹を生かした「雑木風の庭」をつくってはいかがでしょうか? 

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「雑木の庭」って、どんな庭?

秋の雑木林 
秋の雑木林 VyacheslavOnishchenko//Shutterstock.com

雑木の林や森は、元をたどれば里山になります。里山とは簡単にいえば、人の手が入った森や林のことをいいます。例えば、薪や炭の材料を採ったり、肥料にする落ち葉を集めたりするなど、人が森の資源を生活に利用し、そのために手入れをしてきた森林です。

今でも住宅の木材など、森の資源は人間の暮らしに欠かせないものですが、昔は燃料の炭など、森は日々の生活にかかせないもので、人と自然との距離は今よりももっと密接でした。自然と濃密な関係で暮らしてきた昔の人は、五感が敏感に働き、感性も豊かであったに違いありませんし、森から安らぎも得ていたでしょう。

現代は自然との距離が離れてしまっていますが、自宅に「雑木の庭」をつくることで、かつて人が得ていた森からの恩恵を、身近に受けることができます。

では、雑木風の庭とはどんな庭でしょうか。

ポイントは、樹木の選び方にあります。落葉樹は春の新緑の黄緑色から夏の濃い緑、秋の紅葉・黄葉、落葉後の冬の枝ぶりまで、四季の変化が楽しめます。また、目に見える変化だけでなく、高木の落葉樹の梢が風にそよぎ、葉がさやさやとこすれ合う音も、自然の安らぎを与えてくれます。ただし、落葉樹だけの庭では冬の彩りが寂しくなりすぎるので、常緑樹や中低木も混ぜて配置するとよいでしょう。

雑木の庭の長所や短所は?

雑木風の庭は、落葉樹を用いることが多いため、枯れ葉を集めるなどの掃除は季節によって必須です。また、住宅街などではあまり大きくなりすぎないように、樹木の剪定を行う必要がありますが、和風庭園のように刈り込みを行って端正な樹形を保ったり、マメに雑草を取る必要はありません。雑木の庭は、あくまで自然風に維持することがポイントなので、季節によって適度なメンテナンスをする程度で、細かくつくり込んだり、日々の管理に必死にならずに済みます。

どんな樹木を植えたらよいか?

まず、樹木は高いものから順に、高木、中木、低木、地被の4種類があります。高木の樹形イメージは、大きく分けて4種類になります。それぞれの樹形の特徴を、樹種名をあげて説明します。

1.下枝が少なく上に伸びるタイプ     2.枝が四方に伸びるタイプ
(左から)1.下枝が少なく上に伸びるタイプ 2.枝が四方に伸びるタイプ
3.水平気味に伸びるタイプ   4.地面の際から枝が伸びるタイプ(株立ち)
(左から)3.枝が水平気味に伸びるタイプ 4.地面の際から枝が伸びるタイプ(株立ち)
  1. アオダモ、シロモジのように、下枝が少なく、上に伸びるタイプ
  2. ヤマボウシやカツラ、エゴノキのように、枝が四方に伸びて広がるタイプ
  3. イロハモミジやカエデのように、幹から斜めに伸びて水平気味に広がるタイプ
  4. トサミズキやハクサンボクのように、地面の際から枝が広がるタイプ(株立ち)

この4種類の高木に、中木、灌木(低木)、地被と、高さの違う樹種をバランスよく立体的に植えていくことがポイントです。

植栽時は、左右対称の整形式庭園風ではなく、非対称に配植することが自然風に見せるコツです。

造園業者に依頼すれば、見栄えのよい風情ある庭が短期間で出来上がりますが、もちろん自分でつくることもできます。その場合、いろいろな樹木を植えてみながら、5年~10年ぐらいじっくりと時間をかけるつもりで、毎日眺め、楽しみながら育てていきましょう。

カシ、ナラ、カシワなどのコナラ属樹木の実を総称「どんぐり」という。
カシ、ナラ、カシワなど、コナラ属の樹木の実を総称して「どんぐり」という。Ivaschenko Roman/Shutterstock.com

余談ですが、カシやコナラの落葉樹は、どんぐりという可愛い季節の贈り物をしてくれます。どんぐりに楊枝を刺して動物を作ったり、落ち葉を加工して本に挟む栞(しおり)を作るなど、庭の樹木は子どもの遊び道具にもなります。

庭の広さに合わせて植樹する

庭の広さに合わせて植樹する

雑木の庭は、公園のように広いスペースがなければできないと思っていませんか? そんなことはありません。スペースが限られている場合でも、株立ちの落葉樹と常緑樹の中低木を上手に配植すれば、雰囲気のよい雑木風の庭をつくることができます。

例えば高木(株立ち)の落葉樹を2本、中木の常緑樹、低木の落葉樹、地被の常緑樹の4種類だけでも、小さな雑木の庭をつくることができます。樹木の高さがバランスよくなるよう選んで植えることが大切になります。

歩きながら眺める庭

自然に触れて癒される「雑木の庭」

眺めて美しいのはもちろんですが、せっかくですから、株立ちの落葉樹や常緑樹の間を歩きながら眺める機能を持たせると、より自然を身近に楽しめます。

例えば、飛び石を並べて通路をつくるのもよい方法です。株立ちの高木の足元には、寂しくならないよう中低木を配置して退屈しない眺めをつくるのもよいでしょう。飛び石も同じ大きさのものを並べるだけでなく、見せ場となる場所では、大きな踏み石を置くことで、人が立ち止まり、ゆっくり眺めることができる場所になります。

まとめ

もみじ
Timofey Zadvornov/Shutterstock.com

四季の彩りや葉のこすれあう音、実をついばみに訪れる鳥のさえずりなど、自然がもたらす癒しや安らぎを感じられるのが「雑木の庭」です。

雑木の庭をつくるには、株立ちの落葉樹、冬枯れしない常緑樹、中低木をバランスよく植えましょう。

自然に興味のある読者の皆さん! 雑木の庭で自然を感じてみましょう。

次回は「雑木の庭Vol.2」で、常緑樹や落葉樹などの樹木の植え方のポイントと、雑木の庭のデザイン例を解説します。お楽しみに!

Credit

文:松下高弘

文&イラスト/松下高弘(まつしたたかひろ)

長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、手描きパース・イラスト・CG・模型等のプレゼンテーションや大手ハウスメーカー社員研修、エクステリア業の研修講師およびセミナープロデュースを行う。

著書には、『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』、『住宅エクステリアのパース・スケッチ・プレゼンが上達する本(彰国社)』など。新刊『気持ちをつかむ住宅インテリアパース(彰国社)』、好評につき絶賛発売中!!

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