坪庭は小さいスペースですが、部屋の窓から眺めると気分が和み、落ち着きのあるリラックス感が生まれます。そんなステキな坪庭を、自分でデザインして作ってみませんか? 伝統的な和風にこだわらなくても全然OK! ものづくりが好きな方なら、オリジナリティあふれるユニークなものが作れますよ。写真やイラストで、わかりやすく解説します。
なぜ「坪庭」と呼ぶのか?
坪庭とは平安時代の貴族の屋敷で、建物同士をつなぐ渡り廊下に面した通り道の空間を「壺(つぼ)」としたことから、「壺庭」と称しました。身分の高い女性の住居は、桐、藤、萩などの草木を優雅に植え、源氏物語に登場するように桐壺、藤壺、萩壺などと呼ばれたことが、壺庭の植栽に由来します。
現在では小さい庭で採光や通風を確保し、気持ちがうるおう観賞を目的とした空間を「坪庭」と呼んでいます。
どこにつくるのか…そのポイントは?
坪庭がある場所は、一般に和室やバスコート、余裕があれば玄関ホールの目の前にステキな坪庭がある例もあります。でも、そんなスペースがない! という方には、例えば玄関脇につくって、来訪者を歓迎してはいかがでしょうか。
それでは、坪庭をつくる場所によってどんなことに気をつければよいのか、和室前、バスコート、エントランス、中庭の4か所について解説します。
1. 和室前
和室は、一般に掃き出し窓になっているので、地面に近い下草や低木まで、見通しがよい空間です。足元がよく見えるので、平板や苔、芝などの地面の舗装や足元のグラウンドカバーを上手に生かすことで、ステキな眺めをつくり出すことができます。
2. 中庭
住宅の和室、玄関ホール、LDKなどが、コの字型または四方が囲われた中庭を、坪庭としてつくることもあります。それぞれの部屋から見える庭になるので、どこから眺めてもステキに見える庭になるよう工夫が必要です。
3. バスコート
バスコートとは、浴室に隣接してつくられた屋外の庭のことを言います。
写真はアジアンテイストのイメージのデザインです。
浴室は湯舟につかって眺めることを考慮すると、地面に近い部分は見えにくくなります。中・高木や高さのあるオブジェなどで演出すると見栄えがします。お隣の窓から見られないよう、目隠しフェンスの設置や、お隣や周辺の2階からの視線も遮る注意も必要です。窓に庇がついていない場合は、オーニングなどの設置や室内にロールスクリーンを設置するなどして、視線をカットしましょう。
4. エントランス
玄関前は家族が行き来する場所なので、ホッとする安心感のある場所にしたいものです。来訪者の方なら、ドアホンを鳴らしてからお出迎えが来るまでの間を、気持ちが和むような眺めのできる坪庭をつくってみましょう。
ステキな見栄えを検討しよう!
坪庭は、眺める視点によって、どう見えるかを検討する必要があります。窓ガラスが1か所で1方向から眺めるケースもあれば、2方向や3方向から眺めるケースも出てきます。2方向や3方向から眺める場合は、その視点ごとにイメージスケッチを描きながら、見る方向によって見栄えが悪くならないように、植栽や景石の位置や高さを検討する必要があります。
また、坪庭の背景が塀などの壁なのか、竹垣または、生垣なのかによって見栄えが変わってきます。背景が白やベージュ色の塀や白竹の竹垣は、緑がキレイに映えて植栽が引き立ちます。生垣が背景の場合は、イロハモミジやカツラなどの落葉樹を植えると、春や夏場は緑の濃淡で柔和なイメージですが、秋の紅葉や黄葉で、一変したステキな見栄えに変身します。
背景と葉の色を研究することで、変化のある一年間を楽しむこともできます。
背景の格子や竹垣はさまざまなデザインがあります。エクステリアのカタログで調べたり、ホームセンターへ出向き、研究してみましょう。
坪庭を作る前に…ここは気をつけよう!
坪庭をつくるにあたって気をつけなくてはいけない注意点をあげます。
日当たりや風通しがよいところ
植物が育つためには、できるだけ日当たりや風通しのよいところが大切です。通気が悪いと地面がジメジメして、見栄えのよくない銭苔(ぜにごけ)などが生えて来る場合があります。ただの苔だと思っていても、だんだんと生長するにつれて、葉を広げて増えていきます。地面に張り付いて増えてくると、雑草の様に取り除くことが大変になるので注意が必要です。
水はけをよくする
坪庭は住宅の外壁面に接している凹部に作ることが多いため、水がたまりやすくなりがちです。せっかく作った坪庭が水浸しになっては見栄えが悪くなります。地面に水がしみこむよう、砂利などを敷き、土の水はけをよくするか、場合によっては、敷地外に排水ができるような工夫が必要です。
日陰に強い植物を選ぶ
坪庭は住宅外壁に囲われた場所につくる場合もあります。北側の裏庭やバスコートなどは、日当たりがよくないこともあるでしょう。そんな日陰になりやすいところには、日陰に強い植物を選びましょう。日陰に強い植物には、アオキや白花のシャガ、グラウンドカバーのリュウノヒゲ、大きい葉のハラン、よく玄関脇で見かけるヒイラギナンテン、マンリョウやヤツデ、斑入りのヤブランなどがあります。
植栽の植え付け時期を調べておこう
せっかく植えた樹木も枯れてしまっては大変です。夏場の暑い時期に植えても簡単に枯れてしまいます。一般に、常緑樹は梅雨の時期、落葉樹は冬の早い時期、針葉樹は3~4月がよいとされています。メインになる見栄えのよい植栽を枯らさないよう適期を調べておきましょう。
創作坪庭のデザインを考えよう!
それでは、枠にとらわれない自由な創作坪庭のデザインを考えてみましょう。
ここでは、できるだけD.I.Y.でつくれそうな、和風、和モダン、洋風の3つのデザインを提案してみました。イラスト付きで解説します。
和風デザイン
日本古来の庭のつくりから、竹垣、鹿威し(ししおどし)、景石、苔、灯籠(とうろう)などのアイテムがあげられます。ネットや旅行雑誌から、和風の庭の写真を探し、自分の好みに合った坪庭を見つけてみましょう。
イラストは、苔やシダ系を植えた低い築山(つきやま)をつくり、少し高めと低い景石を置きます。バックは白竹の御簾垣を設置して、メインツリーのモミジが新緑や紅葉ともに、一年中映えるようにしました。
景石は重量があり、ホームセンターの運搬や通販の配送が高額になり、設置も大変なので、より安価で設置しやすい人工石で代用するのも方法です。また、飛び石も景石と同様の理由で設置に苦労するため、30cm角の平板での代用がおすすめ。D.I.Y.でも設置しやすくなります。
和モダンデザイン
白い玉砂利と黒の平板を並べてモノトーンのコントラストを効かせます。プランターの立ち上りは、黒ミカゲ石の二丁掛(10×20cm)のピンコロを立てて、地面に半分埋めるようにすれば、じょうずに並べてつくることができます。その周りにアクセントカラーとなるタマリュウやリュウノヒゲなどのグラウンドカバーを配置しました。
バックは黒の千本格子にして繊細さを出します。
低木のマホニアコンフーサは、和モダンイメージが強調されて、千本格子とよく似合います。また、斑入りヤブランを植える場合は、優しいイメージで品よく、まとまります。
イラストにはありませんが、トクサを使ってみるのも面白そうです。
洋風デザイン
赤茶色系のテラコッタタイルをベースにして、その周りは茶色系のレンガを並べました。高さの不ぞろいな枕木を3本立て、その上に四季折々の草花やハーブの花鉢を置きます。目隠しフェンスは、ルーバー状の木製トレリスを立てました。花鉢は高さがあるので、バスコートにも使えるデザインです。住宅壁際には、砂利敷き部分を設けて、雨で水が溜まらないよう、地面に浸透できるようにしました。
創作坪庭デザインは、平板やタイル、砂利などを地面に並べたり、敷くだけなので、意外と楽しんでつくることができ、満足感が得られ愛着もわきます。
平板やタイルなどの張り方や、レンガ花壇のつくり方の詳細は「初心者にオススメの庭DIYを解説! すぐできることや注意点は?」を参照してください。
さあ、坪庭づくりに興味のある皆さん! ぜひ、自分流創作坪庭に挑戦してみましょう。
Credit
文&イラスト / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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