海外では主に庭植えで楽しむクリスマスローズ。日本の場合、住宅事情や文化的な背景もあって、小さな庭や鉢植えといった、より近くで観賞し楽しめるクリスマスローズが求められ、独自の進化を遂げてきました。
今や専門家をして、日本が世界一と言わしめるほど多彩になったクリスマスローズの世界。いまどきの花事情の解説と、より豊かに楽しむ視点をご紹介します。

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広がる花のバリエーション

今年はどんな新しい花に会えるだろう?  そんな期待で幕を開けた今シーズン。専門店や池袋サンシャインシティで行われた『クリスマスローズの世界展』では、今まで見たことのないような花の数々に、ため息の連続でした。

一般の方には分かりにくいクリスマスローズの花事情を整理しながら、ここ数年の新花作出の流れを解説してみます。

1.鮮やかに輝くような花色のオーレア系

『ゴールド』と呼ばれる金色に近い透明感のある黄色い花を交配親に使うことによって、キラキラ輝くように鮮やかで退色しにくい花色のものが続々と生み出されています。

これらは“オーレア系”と呼ばれ、新花が次々作出されて注目を集めています。

ゴールドダブルと“ソレイユ”
オーレア系ダブル

2.完成度の高まった小輪多花系

花の小さな原種から庭向きの大きな花へと育成されてきた海外のクリスマスローズを、日本では逆に小さくして花付きのよいものへと改良が重ねられてきました。

はじめのうちは花の種類も少なく、庭に植えると大きくなってしまうものや、多花というほど花数がなく、従来のものをサイズダウンしただけのような印象でした。その後、花立ちのいいものや花のバリエーションも増え、明るく可愛らしいクリスマスローズのラインナップとして、定着してきています。

また、雪割草などと並ぶ、繊細な和のテイストの花の出現で、山野草愛好家の中に新たなファンが生まれています。

プチドール
スイングシリーズ“静”

3.八重咲きの進化

今や園芸店に並ぶ大半は八重咲き。そんな中で新しい花を生み出すエネルギーは、多弁化や弁の形の変化による、クリスマスローズとは思えないような花を出現させています。

多弁花
“ブラックマジック”

4.表情豊かなセミダブル

かつては、花の真ん中にある蜜腺部分(ネクタリー)が、しばらくすると落ちてしまい、観賞価値がなくなると敬遠されてきたセミダブル(アネモネ咲き)。花弁の模様やネクタリーの色・形との組み合わせで表情がいっそう豊かに。

花弁にスポット
多弁のネクタリー

5.個性的な色・模様

スポット・ピコティー・ベインなど定番の模様だけでなく、絞りやぼかし、パステルのような差し色、覆輪や先端の色抜けなど、いくつかの模様の組み合わせで、より多彩なニュアンスに。

絞り
ぼかし
パステル

6.さまざまな原種を用いた原種系ハイブリッド

小輪化を狙ったH.デュメトラム、ベインの模様の導入にH.トルカータス、香りをのせるためH.オドルス、H.リグリクス、透明感のある薄いピンクのH.チベタヌス……。

それぞれの原種が持つ特性とガーデンハイブリッドの持つ丈夫さや花のバリエーションを融合して新花を生み出す手法は、まだ使われてこなかった原種や原種の八重咲きにも。野草的な趣と整った可愛い花が生まれています。

7.開花前から楽しめるカラーリーフ

木立性の原種H.リビダスやH.フェチダス、H.アグチフォリウスの葉の色や形の変異に着目した選抜と、これに丈夫さを加えた育種で、クリスマスローズの全く新しい用途を切り拓いたカラーリーフ。ヒューケラなど他のカラーリーフにはないニュアンス、花のシーズン前から寄せ植えなどに使えば、開花までの変化も長く楽しめるのが魅力です。

シルバーステルニーを使った寄せ植え

生かす感性を磨いて素敵に楽しんで

お店に並ぶ豊富な種類のクリスマスローズ。珍しい花のコレクションも楽しいものですが、長く付き合える花なので、その花選びから、より深くセンスよく楽しむための着眼点やアイデアをご紹介します。ぜひ参考になさってください。

1.花の裏側の顔!?

うつむいて咲くクリスマスローズ。案外ずっと目にするのは花の裏側。正面から見た顔ばかりでなく、裏側から見た印象も大事にしたいですね。庭で大株になった時も想像しながら、花選びや植え付けを。

2.葉・花茎とのコントラスト

同じような花でも、花以外の部分の違いで印象も変わってきます。銅葉、烏葉と呼ばれる黒い葉、原種に見られる糸葉や幾何学的な形の葉は、プラスαの楽しみ。また花茎の茶色いものは和の雰囲気。そんなところにも着目してみると楽しいですよ。

銅葉
H.ムルチフィダス・ヘルツェゴヴィナスの糸葉

3.草姿

二番花、三番花と咲き進むうちに首が伸びて草姿が乱れてしまうのは、ちょっと残念。花の付き方、咲き方、花茎の伸び方など、株全体のバランス、立ち姿の美しさも楽しみたいですね。

さまざまな草姿

4.つぼみから始まる花の楽しみ

気温の低い時期の開花なので、長期間、ゆっくり楽しめるのもこの花のよさ。まだ凍てつく土から葉に大事に包まれてつぼみが顔を出し、寒さの中にも春を感じて立ち上がり、固いつぼみが次第にほどけていく。満開のクリスマスローズが春風に揺れる頃まで、年に一度、約3ヶ月のドラマです。

5.テイストを変えて“使える”クリスマスローズ

花の豊富なバリエーション。暮らしの中のいろんな場面に合わせて楽しんでみましょう。

・シックな色合いと原種系のシンプルな花は、アンティークなシーンにぴったり。

・ビビッドな色の花との寄せ植えにも応える存在感。

・花の乏しい和の庭もクリスマスローズちょい足しで華やかに。

・小物と飾って 寄せ鉢でスモールガーデン風。

6.シングル咲き再考 クリスマスローズに求めるもの

豪華な八重咲き、きらびやかなオーレア系……。華やかな新しい花に目を奪われる一方で、シングル咲きの清楚な美しさがかえって新鮮に感じられたりもします。庭に植栽する際、和風はもちろん、メリハリをつける意味でも、シンプルなシングル咲きを組み合わせると、落ち着いて爽やかな印象になります。一つひとつの花も、光の当たり方や咲き進みながらの表情の変化は、シンプルな花ほど豊かだなと感じます。

これからもたくさんの新しい花が生み出されていくクリスマスローズ。新しさや珍しさだけでなく、生かすセンスやテクニック、花と共に綴っていく季節の物語を楽しむ感性も進化させていきたいですね。

Credit

写真/文責 大森玲子
筑波大学農林学類卒業後、千葉県で農業改良普及員として勤務。
結婚後、夫と共に自然と共にある暮らし・環境に負荷の少ない農業を志し、『びいなすふぁあむ』を始める。当時はほとんど知られていなかったクリスマスローズの有機無農薬、露地栽培という独自方法での生産に取り組む。近年は“花の季節感、野にある姿の美しさを”伝えるべく、原点に返って、庭で楽しむクリスマスローズの普及に力を注いでいる。

◆びいなすふぁあむ
〒989-1501 宮城県柴田郡川崎町大字前川字裏丁34
TEL 0224-84-4911
http://venusfarm.blog.jp/

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