待ちかねた春がとうとうやってきました。卒業や転勤など、春は別れと出会いの季節。それぞれに新生活が始まる時期でもありますね。今回は、緊張が続くそんな新しい日々を、前向きな気持ちで過ごせる香りをご紹介しましょう。心と体を活性化し、やる気を高めてくれる、ローズマリーの香りに注目します。

地中海沿岸の「海のしずく」 ローズマリー

ローズマリー(Rosmarinus officinalis)は地中海沿岸を原産地とする常緑の低木で、30~150㎝ほどに成長します。海辺の崖に生え、小さな青い花を咲かせることから、「海の(マリヌス)しずく(ロス)」を意味する、ロスマリヌスというラテン名がつきました。

ローズマリーは紀元前から料理に使われていたといわれるハーブで、古代ギリシャでも、多くの効能がある薬草として知られていました。そして、14世紀には、ローズマリーのエキスをアルコールで抽出した「ハンガリー王妃の水」が誕生します。それは、手脚が痛むエリザベート王妃のために修道士によって調合されたもので、王妃はそのおかげで見事に回復を果たして若返り、70歳を過ぎていたにもかかわらず、隣国ポーランドの20代の若い王から求婚されたといいます。この話に正確な記録はないものの、有名な逸話として伝えられており、ローズマリー水はそれ以来「若返りの水」として知られるようになりました。

脳を刺激して、記憶力を高める香り

ローズマリーの細い葉を軽くこするとよい香りが立ちますが、その香りは古代から、記憶力を刺激すると信じられてきました。ローズマリーの花言葉には「思い出」や「記憶」、「貞節」などがあって、シェイクスピア劇の〈ハムレット〉でも、「ローズマリーは思い出のしるし、私のことを忘れないで」という台詞とともに、オフィーリアがローズマリーの小枝を渡すシーンがあります。

実際、ローズマリーの香りには脳を刺激して記憶力を高める働きがあると、近年研究されていて、勉強する時に役立つのはもちろんのこと、認知症予防の効果も期待されています。また、ローズマリーの香りは、神経が疲労気味の時や、行動する気がなかなか起きない時に、やる気や自信を引き出してくれ、安定した気持ちに導いてくれます。

ローズマリーの精油は、一般的にシネオール、カンファー、ベルベノンの3種類があり、それぞれ特性があります。今回は、ローズマリー・シネオール(Rosmarinus officinalis ct. cineole)を使いますが、これは他のローズマリーより1,8-シネオールという化学成分が多く含まれているタイプです。抗菌作用や去痰作用があって、風邪や気管支炎など、炎症を伴う呼吸器のケアに適しており、また、筋肉痛や坐骨神経痛など、痛みの緩和にも向いています。

芳香浴レシピ:ローズマリー・シネオール2滴+真正ラベンダー2滴+ユーカリ・ラジアータ1滴

6~8畳のディフューザー用のレシピです。

ペールグリーンのシャツをさらりと羽織るような、爽やかな香りです。朝、出掛ける前に焚けばやる気がアップしますし、もしくは、1日の終わりに焚いて、疲れをさっぱりと取り去るのもよいでしょう。前向きな気持ちを引き出してくれるし、いたわってもくれる。そんな癒し系爽やかイケメンのような香りを楽しんでください。

このブレンドは呼吸器にもとてもよいブレンドです。精神的に疲れがあると呼吸は浅くなりやすいものですが、気分が晴れない時には焚きながらゆっくりと深呼吸するとよいでしょう。心と身体のつながりを意識せずともケアできるブレンドなので、新生活の緊張が続く方は、身体の疲れや不調をこまめに取り去り、整えてみてください。また、花粉で荒れた喉や鼻の粘膜のケアにも役立ちます。

<注意>
ローズマリー、ユーカリの精油は、妊娠中、授乳中の方、乳幼児、高血圧症、てんかん患者の方の使用は避けてください。

*『おうちでアロマテラピー』シリーズ、その他のブレンドはこちらからどうぞ。

*精油はアロマテラピー専門店での購入が安心です。下記に取り扱い時の注意をまとめましたので、ぜひご一読ください。

〈精油を使用する際の注意〉
・ 原液を皮膚につけない。ついたらすぐ石鹸で洗い流す。
・飲用しない。目に入れない。
・火気に注意する。
・医師による治療や投薬を受けている場合は、必ず当該医療機関に相談する。
・3歳未満の乳幼児には芳香浴以外は行わない。また3歳以上であっても使用量を半分以下にし、十分注意を払う。
・高齢者、既往症のある方は半分以下の量を目安に。妊娠中は体調を考慮し、芳香浴以外のアロマテラピーを楽しむ場合は十分注意する。

〈精油の保管・保存について〉
・直射日光と湿気を避け、火気のない冷暗所に保管する・
・子どもやペットの手の届かないところへ保管し、誤飲に注意する。
・開封後1年以内を保存期間とし、柑橘系の精油は半年以下を目安にする。
・香りに異変を感じたら使わない。

〈精油の品質について〉
・次の内容を箱やラベル、使用説明書で確認できるものを選ぶ。ブランド名、品名、学名、抽出部分(位)、抽出方法、生産国(地)または原産国(地)、内容量、発売元または輸入元。

Credit

アドバイス/Miho Takahata
AEAJ(公益社団法人 日本アロマ環境協会)アロマテラピー・インストラクター。香りとクラシック音楽が大好き。

〈参考文献〉
和田文緒(2008)『アロマテラピーの教科書』新星出版社
木田順子(2014)『あたらしいアロマテラピー事典』高橋書店
アネルズあづさ(2016)『アネルズあづさの精油ブレンドバイブル』株式会社 河出書房新社
ジェニー・ハーディング(訳:服部 由美)(2012)『ハーブ図鑑』株式会社 ガイアブックス

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