みやうち・やすゆき/1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。
宮内泰之
みやうち・やすゆき/1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。
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育て方

キンモクセイの正しい剪定方法。時期やコツ、初心者が注意したいポイントとは?
キンモクセイの基本情報と育てる前に知っておきたいこと キンモクセイは初心者にも育てやすい庭木ですが、栽培を始める前に、上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 キンモクセイの基本データ学名:Osmanthus fragrans var.aurantiacus科名:モクセイ科属名:モクセイ属原産地:中国(詳細は不明)和名:キンモクセイ(金木犀)英名:fragrant orange-colored olive開花期:9〜10月花色:オレンジ植え付け時期:3〜4月耐寒気温:−10℃ キンモクセイは樹高5〜8mになる常緑小高木です。9月下旬から10月中旬に、オレンジ色で強い芳香のある5mm程度の小花を枝に密につけて咲かせます。近年では開花が年々早まっている傾向があります。その香りは、低温、多湿になると特に強く香ります。日本では芳香剤としてよく知られる香りですが、中国では花(日本と同一かは不明)を使い、桂花陳酒や桂花茶などで香りが楽しまれています。葉は、オレンジ色の花が映える濃い緑で、光沢があります。庭木や生垣によく利用されています。日本では雄株しか知られておらず、そのため実をつけることはありません。 キンモクセイは、花が白色のギンモクセイ(O.fragrans)の変種とされています。属名のOsmanthusは、ギリシャ語でにおいを意味する「osme」と、花を意味する「anthos」に由来しています。 キンモクセイに剪定は必要なの? キンモクセイは枝葉が対になって出てくる常緑樹です。このため、枝葉が茂りやすく、放っておくと全体に広がりすぎてしまいます。キンモクセイも多くの樹木と同じように、毎年剪定をして庭木として利用できる大きさに仕立てます。また、多くは刈り込みなどで仕立てられます。 キンモクセイを剪定する目的・メリットは? 剪定とは、木の枝を切り、樹形を整えることをいいます。その目的やメリットは主に6つあります。 ①木が大きくなりすぎないように枝の広がりを抑え、コンパクトに育てる。②枯れた枝や病害虫の被害を受けた枝を取り除く。③木のなかの日あたりと風通しをよくし、病気や害虫の発生を予防して木を健全に育てる。④樹形を美しく整える。⑤花や実のつきをよくする。⑥古い枝を新しい枝に更新する。 樹木を健康に美しく保つ剪定は、欠かせないお手入れのひとつなのです。 剪定業者に頼むこともできる? キンモクセイの剪定は、庭師や造園業者などの専門家に頼むこともできます。キンモクセイの剪定を自力で行うことが難しいと感じたら、剪定を得意とするプロへの依頼がおすすめです。 業者に剪定を頼むメリットは、専門知識をもとに剪定してもらえることです。キンモクセイの剪定に適した時期や、樹形や枝葉の状態に合わせた剪定がかなうでしょう。 ただし、庭木の剪定を依頼すると、自分で行うよりもコストがかかる点がデメリットです。 費用を抑えたいなら、十分に下調べをした上で、自力で剪定を行うのがおすすめです。植物を自らの手で世話することは、園芸における大きな楽しみの一つだといえるでしょう。 キンモクセイは小さく仕立てられる? 人が見上げるほどの樹高になるキンモクセイですが、小さく仕立てる方法もあります。 【地植え】 樹高をおさえたい場合は、維持したい高さで主幹を切ります。この際、最低でも樹高2~3mは残しましょう。また、横枝のすぐ上で切ることで、横枝がよく育ち花もたくさん咲きます。直径5cm以上の太い幹は切り方が難しく、木が弱る恐れがあるので、プロに相談するのがおすすめです。なお、木の負担が大きくなりがちな夏時期は避けて剪定しましょう。 【鉢植え】 鉢植えに苗を植えると、50~150cmほどの小さな仕立てが可能です。鉢の大きさは8号を目安にしましょう。地植えのキンモクセイから枝をとる場合は、幹を傷つけて初根させてから切り取る高取り法を行います。 キンモクセイの剪定に適した時期はいつ? 樹木の種類による剪定の適期 剪定には、樹木の種類によって適期があります。常緑針葉樹ならば厳冬期を除いた冬から早春に、常緑広葉樹ならば春から梅雨期の前半、そして秋に、落葉広葉樹ならば冬から早春に、花木は花後のなるべく早い時期が適期です(樹木によっては例外もあります)。 花後から翌春の4月がキンモクセイの剪定の適期 常緑広葉樹であるキンモクセイは3月から4月上旬が剪定の最適期です。ただし、夏に花芽を形成して秋に開花する花木のため、花後すぐから冬の間も軽い剪定や刈り込みであれば可能です。キンモクセイは花後すぐの時期はまだ光合成を活発にしており、翌年の成長や開花のための栄養分の貯蔵量を増しています。また、冬の時期に剪定すると、寒さにやや弱いため樹勢が弱ってしまうので、大幅に刈り込むのは避けるようにしましょう。 年に1度行う刈り込みと間引き剪定 キンモクセイはとても生育旺盛です。放っておくとかなり大きくなってしまいます。年に1回、秋の花が終わった直後から翌年の4月上旬までに一回り小さく刈り込みます。このとき、あまり強く切りつめないようにしてください。強剪定(枝を深く切ること)は枝枯れを生じやすく、元の状態に戻るのに数年かかってしまいます。ただし、数年に1度、木を活性化させるためであれば強剪定してもよいでしょう。その翌年は、花は期待できないので、花を楽しみたいのであれば避けてください。 また、不要な枝は間引き剪定します。間引き剪定とは、生育期に混み合ってきた枝や枯れ込んできた枝を根元から取り除く剪定のことです。これも、花の咲き終わりから4月上旬までの間に行うようにしましょう。 キンモクセイの剪定方法が知りたい キンモクセイを剪定するための具体的な方法を紹介します。 剪定の方法 ①高さを抑える幹が高く伸びていたら樹形を維持するために、枝先から50cm程度まで切り戻します。切り戻すときは、枝の付け根(枝分かれした部分)まで切ります。 ②不要な枝を間引く枝葉が茂り株の内側が混み合ってくると、日あたりや風通しが悪くなり、木が弱ったり、病害虫の発生が増えたりします。そこで、太く長い枝や混み合った枝、交差する枝などをつけ根から切り取って間引き、枝数を減らして株内の日当たりや風通しを図るようにします。 ③枝先を2〜3節残して切り詰める株をコンパクトに維持し、また枝を充実させるために、花の咲いた枝を先端から2〜3節残した位置まで切り詰めます。4月以降に新梢が伸び、これに花芽がつくられます。 刈り込みの方法 ①不要な枝を切るはじめに樹形を乱すような長く飛び出た枝は、樹冠の内側からハサミで付け根から切り取ります。 ②刈り込む側面と天面を刈り込んでいきます。前年に刈り込んだ部分を目安に、刈りバサミで剪定します。このとき刈り込みバサミは片側の刃のみ動かします。 ③仕上げるある程度刈り込んだら少し離れて見て、形が悪い部分を整えていきます。形が決まれば、枝についた、引っかかった枝葉を払ってきれいにします。 キンモクセイの剪定に必要なものは? キンモクセイの剪定に必要なものには、主に以下のようなものがあります。 剪定用手袋 木のトゲや樹液から手を守ります。手のひらに滑り止め加工がされていると使いやすいでしょう。 剪定バサミ 直径1~2cmの枝の剪定に適しています。切れ味がよく、たくさんの枝を剪定したいときにもっとも活躍する道具の一つです。 庭木バサミ 直径約1cmまでの、細い枝の剪定に適しています。剪定の仕上げに使うことが多いハサミです。 刈り込みバサミ 主に葉の刈り込みに使うハサミです。刃渡りが長く刃が厚いものが使いやすいでしょう。樹高が高いキンモクセイなら柄が長めのものがおすすめです。片手を固定し、反対側の手をリズミカルに動かすと効率よく切れます。 剪定ノコギリ 直径2cm以上の太い枝を切る際に使います。さまざまなサイズがあるので、枝の太さに合わせて使いましょう。片手で枝を押さえ、反対側の手でノコギリを引くように切ると切り口ががたつきにくいです。 脚立 樹高の高いキンモクセイの剪定で活躍します。一番上の段に立たない、乗っている間は上を見上げて作業をしないなど、安全上の注意点を守りましょう。 癒合材 枝の切断面に塗布し、樹液の流出や細菌の侵入を防ぎます。 キンモクセイの剪定する枝を知りたい 剪定で大切なのは、切るべき枝を知ることです。ここでは、切ってもよい枝の特徴を解説します。 邪魔な枝 高く伸びた枝、横に広がる枝、混み合っている枝は、伸びて葉が茂ると株の内側の日あたりや風通しを悪くします。枝の付け根から切り取ります。 不要な枝(不要枝、忌み枝) 枯れた枝、折れた枝、病害虫の被害を受けた枝などの不要な枝を紹介します。 からみ枝、交差枝:ほかの枝と交差して伸びる枝ふところ枝(内向枝):内向きに伸びる枝立枝:真っすぐ立ち上がって伸びる枝平行枝:隣接して同じ方向に伸びる枝下り枝:下向きに伸びる枝車枝:一カ所から放射状にたくさん出る枝。 その他、胴吹き、ひこばえ、細く貧弱な枝など。 これら不要枝は樹形を乱し、葉が混み合う原因となります。付け根から間引くように切り取ります。 先端のみ葉がついた細く弱い枝は剪定する 古くなった主枝 その木の骨格をつくる枝を主枝といいます。5年以上たって古くなった主枝はもとの部分から切り取って新しい主枝に更新しましょう。その際に、切り取った部分に将来的に主枝になりうる程度の太さの枝が残るようにします。 徒長枝 節間が間延びして樹冠からはみ出すほど勢いよく伸びる枝です。切ってよい場合がほとんどですが、必要ならば途中まで切り戻して一部残し、後に不要になったら元から切る場合もあります。キンモクセイでは、樹冠から出ている枝を付け根から間引くか、切り詰めるようにしてください。徒長枝を剪定することで樹冠を整えます。 下枝 樹木の下部に生えた枝です。下枝を残しておくと茂り過ぎてしまい、風通しが悪くなります。付け根から間引くようにします。ただし、下枝を残した樹形にしたい場合はそのままでも問題ありません。 キンモクセイを剪定するときのコツ・注意点は? 上枝は深めに、下枝は軽めに キンモクセイは上部ほどよく伸びます。よって剪定するときは、上枝は深めに、下枝は軽めに刈り込むようにするとバランスのよい樹形を保てます。また、日光の当たる外側の部分は成長が早いため、枝の数を減らし、短くするとよいでしょう。 強剪定は枝枯れを起こす キンモクセイは強く刈り込むと、枝枯れを起こしてしまいます。元の状態に戻るのに数年かかることがあるので、強剪定は避けましょう。また、一度に強く刈り込まず、毎年少しずつ剪定して、樹形を整えるようにします。 枝は切っても葉は残す キンモクセイは一つの枝に葉を残さずに切り戻すとその枝は枯れてしまいます。剪定するときには、枝は切っても葉は残すようにしましょう。葉がきちんとついていれば、枝分かれした付け根から花を咲かせることができます。 剪定する位置は対生する葉の上 キンモクセイは枝から葉が対生(左右対称に葉や枝がつく)してつきます。このため、対生している部分のすぐ枝先で切ると、切り口が目立たず、枝先が枯れ込むこともありません。 剪定というと難しく感じてしまいますが、何度か行ううちにコツやポイントがつかめてきます。適期に剪定を行い、樹形を保ち、きれいな花を咲かせましょう。 キンモクセイの剪定でよくある失敗例 キンモクセイの剪定でよくある失敗例をご紹介します。 必要な枝を切ってしまう 花芽や新芽のついた枝は、基本的には残しておくべき枝です。切ってしまうと葉や花がつかず、寂しい見た目になってしまうことも。葉が少なくなりすぎると光合成が十分に行われず、木が弱るので注意しましょう。 強剪定をして枯れてしまう キンモクセイは枝枯れを起こしやすいため、強剪定には向かないとする見方もあります。強剪定とは、樹高や全体のシルエットを調節するために、枝葉を大幅に切り込むことです。枝枯れが進むと木が枯れてしまう恐れもあるので、安易に強剪定は行わないようにしましょう。 間引きをせず枝葉が過密になってしまう 鉢植えや盆栽でキンモクセイを育てる場合に起きがちな失敗例です。キンモクセイは、その性質から枝葉が交差するように伸びます。枝葉が過密になるとキンモクセイの成長に悪影響を与える恐れがあるので、定期的に間引き剪定を行いましょう。 キンモクセイの育て方 キンモクセイの育て方には、いくつかのポイントがあります。 用土 キンモクセイの用土は、水はけがよく、栄養豊富なものが適しています。鉢植えで育てるなら、赤玉土7、腐葉土3の配合で土を作っておきましょう。 育てる場所 温度管理にもコツがあります。キンモクセイは寒さに少し弱いので、地植えの際は北風が当たる場所や霜が下りる場所を避けましょう。日陰でも育ちますが、日なたや半日陰のほうが花つきがよくなります。 病害虫 キンモクセイはカイガラムシやハダニなどの害虫や、褐斑病、先葉枯病などの病気にかかる可能性があります。 病害虫を予防するためには、日当たりや風通しのよい場所に植えることが大切です。剪定の際には、枝葉の風通しにも留意しましょう。 また、根の生育も病害虫の予防と関係します。根詰まりを防ぐために、鉢の大きさや植え付ける際に掘る穴の大きさは十分にとることが大切です。 構成と文・さいとうりょうこ
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樹木

知りたい! サザンカ(山茶花)の種類や品種、それぞれの特徴と見分け方
サザンカ(山茶花)を育てる前に知っておきたいこと サザンカは山口県以南に自生するツバキ科の常緑樹で、古くからさまざまな品種が作り出され、その数は現在300種ほどあります。ここでは、品種とその特徴を知る前に、サザンカについての基本情報を紹介しましょう。 サザンカの基本データ 学名:Camellia sasanqua 科名:ツバキ科 属名:ツバキ属 原産地:日本 和名:サザンカ 英名:Sasanqua camellia 開花期:10〜12月 花色:赤、ピンク、白 植えつけ時期:3月中旬〜4月中旬、9月中旬〜10月上旬 耐寒気温:−5℃ サザンカは日本の固有種、つまり日本にだけ野生する常緑樹で、本州の山口県、四国、九州、沖縄に分布しています。丘陵地の照葉樹林に多く見られます。原種の樹高は2〜6mほどですが、なかには10mを超える高さのものもあります。花は白のひと重咲きです。 サザンカは、花芽がその年に伸びた枝の先端付近に1〜数個つき、10〜12月に開花し、晩秋〜初冬の花として親しまれています。基本的な性質はツバキに似ています。ツバキよりやや寒さに弱く、ほとんどのツバキが花弁をまとめて落とすのに対し、サザンカは花弁が基部で癒合していないため花が終わると花弁が1枚ずつ散ります。自然樹形は卵形。水はけがよく、適湿で肥沃な場所を好みます。本来、日当たりを好みますが、日陰でもよく育ちます。 サザンカ(山茶花)とヤブツバキの見分け方 サザンカは、漢字では山茶花と書きます。中国で山茶花とはツバキ類の花のことで、同じツバキ属のチャノキに対して山に生える茶という意味になります。 サザンカは小ぶりなヤブツバキのような葉、樹形で、花も似ています。見分ける際のポイントは、葉。サザンカは葉の表裏の主脈と葉柄、および若い枝に短い毛が生えていますが、ヤブツバキにはありません。 また、ヤブツバキの花は、花弁の基部が多数の雄しべとともに合着しているため、花が終わると、花ごと枝からポトリと落ちるます。一方、サザンカは花弁と雄しべが基部の一部だけで合着しているため、花後には花弁も雄しべもバラバラに落ちます。 サザンカ(山茶花)には、多くの園芸品種があります サザンカは本州の山口県、四国、九州、沖縄などに自生しています。古くからその自生種をもとに、さまざまな園芸品種が作り出されてきた古典園芸植物です。野生のサザンカの花は、白でひと重咲き。園芸品種では白の花に加え、赤やピンク、ぼかしなどバリエーションに富み、咲き方はひと重はもちろん八重のほか、千重咲き、獅子咲きなどがあります。大きさでは、10㎝を超える大輪のものも。 現在、300ほどの園芸品種が知られ、花の咲く時期や咲き方などからサザンカ群、カンツバキ群、ハルサザンカ群に分けられていています。さらに、中国原産のユチャを系統とするとされるタゴトノツキ群というグループもあります。 サザンカ群 生態や特徴が、自生種のサザンカにもっとも近いグループ。花はひと重か八重で、10〜12月に花をつけます。 七福神 古くから関東地方で栽培されてきたサザンカです。花は半八重咲きで、花径は7.5㎝ほどです。 桜月夜 花は半八重でピンク、大輪の品種です。 丁字車 花はひと重咲き。雄しべが小さな花弁状に変化して花芯に丸く収まった唐子咲きです。関西地方で古くから栽培されてきました。 カンツバキ群 サザンカとツバキの交雑種といわれる、カンツバキを中心に作出されたグループです。花は八重咲きか獅子咲きで、花期は11〜3月。カンツバキ群の多くの品種のもととなった獅子頭(関東での寒椿)をはじめ、富士の峰、朝倉、乙女サザンカ、姫白菊など、多数が作り出されています。 獅子頭 別名、寒椿。花はピンクで八重咲き。カンツバキ系品種の生みの親のひとつです。 富士の峰 花は中輪で、白の八重〜千重咲き。明治初期に関西から全国に広まりました。 朝倉 花は中輪で八重〜獅子咲き。内弁は白で、外弁がごくわずかに淡ピンクを帯びます。 乙女サザンカ 花は柔らかなピンクで千重咲き。昭和35年頃関西から広まり、現在は生け垣用などとして全国に普及しています。 姫白菊 花は小輪、白の八重咲き。11〜12月に開花します。 ハルサザンカ群 花期が12〜4月ともっとも遅いグループです。花の咲き方はひと重や八重、千重などさまざま。サザンカとツバキ(主としてヤブツバキやその園芸品種)の自然交配で生まれたものが、もとになっているとされます。ヤブツバキに近い性質があり、花色に縦絞りというツバキにみられる特徴をもつ品種も。現在、50品種ほどがあります。 鎌倉絞 花はひと重の小輪、赤に白の斑が入ります。江戸中期の資料に、すでに掲載されているほどの歴史あるハルサザンカの品種です。 古金襴 花は小輪のひと重で盃状〜平開咲き。淡ピンクの地に赤の縦絞り、または吹き掛け絞りが入ります。 笑顔 花は八重咲きの大輪。濃ピンク、まれに白の斑が入ります。開花期は11〜3月。福岡県久留米地方で作出され、普及しました。 タゴトノツキ群 中国大陸に広く分布する、ユチャ(油茶)に由来する品種群とされます。古くから知られる品種として、田毎の月があります。サザンカやカンツバキ群の品種と交雑して、実生によって数多くの交雑種が誕生。園芸的に魅力のあるものはほとんどなく、葉がやや大きく、葉の表面に光沢がないのが特徴です。 田毎の月 花は白の中輪で、ひと重の抱え咲きです。葉が大きく厚いのが特徴です。 元気に育つための、サザンカ(山茶花)が好む環境 本来、サザンカは日当たりを好みますが、日陰でも栽培できます。 ただし、日なたの場合は西日の当たる場所を避け、日陰ではできるだけ明るい場所を選ぶようにしましょう。 ツバキよりは耐寒性が弱く、冬に−5℃より気温が下がるような場合には防寒が必要になります。冬の冷たい風に当たると花が咲きにくくなるので、冬期に北風が当たらない場所を選んで植えつけ、鉢植えの場合は置き場所を工夫してください。 立派に育てるための、植えつけ時期と方法 鉢植え、地植えともに、3月中旬〜4月中旬が植えつけの適期です。本格的な寒さが来る前の9月中旬〜10月上旬も、植えつけは可能です。 鉢植えの場合の手順 ①苗木の準備 苗木は根鉢を崩さないようにします。 ②用土の準備 赤玉土(中粒)、鹿沼土(中粒)、腐葉土をそれぞれ同量ずつ混ぜた土を用意します。植えつける鉢に鉢底ネットを敷いたうえで、鉢底石を3㎝ほどの厚さに入れます。 ③植えつけ 用意した用土を使って植え付けます。このとき、元肥も入れます。 ④用土を調整 最終的に、用土の表面が鉢の縁より3㎝ほど下がるように用土の量を調整し、苗木の株元が用土の表面と揃うように植えつけます。用土表面から鉢の縁までのスペースをウォータースペースといい、水やりの際、この部分に水がたまるようにします。 ⑤水やり 植えつけ後、必要に応じて支柱を立てて固定し、鉢底から水が流れ出るまで、たっぷりと水やりをします。 地植えの場合の手順 弱酸性の土を好み、土壌がアルカリ性になると肥料分を吸収しにくくなり、葉が黄色くなって生育が鈍ります。コンクリートブロックの塀の際など、土壌がアルカリ性になりやすい場所は避けるようにします。 ①穴を掘る 苗木を用意したら、植えつけ場所に、根鉢の大きさの倍の深さと直径の穴を掘ります。さらに穴の底を、スコップなどで耕しておくとよいでしょう。 ②元肥を施す あらかじめ腐葉土や完熟堆肥などを混合した元肥を用意し、掘り起こした庭土によく混ぜて、半分ほど穴に埋め戻します。 ③植えつけ 苗木の根鉢を軽くほぐし植え穴に入れて、残りの土を使って植えつけます。このとき、苗木の株元が地面の高さになるように調整をします。 ④水やり 植えつけ後は、たっぷりと水やりをします。苗木がぐらつくようなら、必要に応じて支柱を立てて苗木を支えます。 たくさんあるサザンカの品種のなかから好みのものを見つけて、冬を彩る美しい花を楽しんでください。 Credit 記事協力 監修/宮内泰之 1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。 構成と文・童夢
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樹木

知りたい! ヒイラギの品種や類似種、それぞれの特徴と見分け方
ヒイラギを育てる前に知っておきたいこと ヒイラギは、古くから庭木とされる代表的な樹木のひとつです。多くはありませんが、いくつかの園芸品種があります。また、葉姿が似たものもあります。その園芸品種や類似種を知る前に、ヒイラギについての基本情報を知っておきましょう。 ヒイラギの基本データ 学名:Osmanthus heterophyllus 科名:モクセイ科 属名:モクセイ属 原産地:日本、台湾 和名:ヒイラギ 英名:False holly、Holly olive 開花期:11~12月 花色:白 植え付け時期:4〜10月 耐寒気温:0℃ ヒイラギは、本州の関東地方より西、さらに四国、九州、沖縄の山地に自生する常緑の小高木で、庭木や公園樹として植栽されます。株には雄と雌があり、雌株では、秋、葉の付け根に芳香のある白い花が咲き、翌年の夏に黒紫色の小さな実をつけます。若木では葉の縁にある2〜5対の歯牙状のトゲが特徴的ですが、老木ではこのトゲがなくなり、先が尖った楕円形の葉となります。 ヒイラギにはどんな種類があるの? 選び方は? ヒイラギと、名がつく植物はいくつかありますが、なかには本来のヒイラギ(モクセイ科モクセイ属)と分類上の科が違うものがあります。また、いくつかの園芸品種もあります。それらを紹介しましょう。 マルバヒイラギ ヒイラギといえば、周囲にトゲのある葉が大きな特徴ですが、こちらは葉にトゲがなく、丸い形をしています。 キッコウヒイラギ トゲのない葉の形と、やや目立つ葉脈がカメの甲羅を思わせることから名付けられた品種です。 斑入りヒイラギ 葉に白い斑が入った園芸品種です。マルバヒイラギやキッコウヒイラギがどちらかというと和風なイメージに対し、この斑入りヒイラギは洋風な雰囲気をもっています。 覆輪リンヒイラギ 葉に白い縁取りがある園芸品種です。斑入りヒイラギと同様に、洋風の庭にもマッチします。黄色い縁取りがあるものを、黄覆輪ヒイラギといいます。 ヒイラギモクセイ ヒイラギとギンモクセイ(銀木犀)の雑種とされます。葉は厚くて硬い革質で、ヒイラギの葉よりも大きく艶がありません。また、葉縁にはより多く細かいトゲ状の鋸歯があります。花は小さく白色で、10〜11月に枝先の葉の付け根にたくさん咲き、芳香があります。雌雄異株ですが、雄株しか知られていません。ヒイラギよりも成長がやや早く、萌芽も旺盛で刈り込むことができるため、生け垣などに利用されることも。 セイヨウヒイラギと、ヒイラギの関係 本来のヒイラギはモクセイ科モクセイ属の樹木で、クリスマスの飾りとして用いられるセイヨウヒイラギ(西洋柊)はモチノキ科の樹木です。 セイヨウヒイラギ(西洋柊)は、ヒイラギと科は違いますが、葉がヒイラギと似ているため、この和名がつけられました。花は白色で4〜5月に咲き、晩秋〜初冬に実が赤く熟します。クリスマス・ホーリーとも呼ばれ、リースなどクリスマスの飾りによく使われます。 ヒイラギナンテンと、ヒイラギの関係 メギ科の常緑低木としてヒイラギナンテン(柊南天)があります。モクセイ科のヒイラギとは異なるグループの樹木ですが、葉の縁にはヒイラギのようなトゲ状の鋸歯があります。 ヒイラギナンテンは、高さ1~2mほどの株立ちとなり、3〜4月に枝の上部から房状に集まった小さな黄色い花をつけます。その年の6〜7月に果実が黒紫色に熟します。鬼門よけとして、玄関前などにヒイラギの代用として植えられる場合も。また、公園などでは寄せ植えにされることもあります。 ヒイラギの育て方にはポイントがあります とても丈夫な樹木です。大気汚染などにも強いのですが、乾燥、特に冬の乾いた風には弱いので注意が必要です。 耐陰性があるので、多少日当たりの悪い場所でもよく育ちます。本来は、日当たりを好むので、できるだけ日当たりのよい場所で育てるようにしましょう。ただし、日当たりがよすぎて土壌がとても乾燥するような場所では、生育が阻害されて枝が枯れることがあります。 植えつけは気温が十分上がった4月行以降に行います。放任でもある程度、樹形は整います。本来の樹形をいかして育てる場合は、3~4月頃、樹形を乱すように伸び出た枝を、付け根から切り取ります。 ヒイラギを育てるときに必要な準備は? ヒイラギは、庭木などとして地植えで育てるのが一般的ですが、鉢植えでも育てることができます。植えつけをはじめる前に、以下のものを用意するとよいでしょう。 準備するもの(鉢植え、地植え共通) ・ヒイラギの苗木 ・赤玉土、腐葉土 ・肥料 ・剪定バサミ ・スコップ ・支柱(必要であれば) *鉢植えの場合は、下記のものも用意 ・8号以上の大きな鉢 ・鉢底石 ・鉢底ネット ・移植ゴテ 鉢植えで育てる場合、苗木に見合った大きさよりも、ひと回りからふた回り大きな鉢を選ぶようにします。小さな鉢だと、すぐに植え替えが必要になってしまいます。 立派に育てるための、植えつけ時期と方法 苗は寒さにあまり強くないため、十分気温が上がる4〜5月になってからが、植えつけの適期となります。 鉢植えの場合の手順 ①苗木の準備 苗木は根鉢を崩さないようにします。 ②用土の準備 赤玉土(小粒〜中粒)7、腐葉土3の割合で配合した土を用意します。植えつける鉢に鉢底ネットを敷いたうえで、鉢底石を3㎝ほどの厚さに入れます。 ③植えつけ 用意した用土を使って植えつけます。このとき、元肥も入れます。 ④用土を調整 最終的に、用土の表面が鉢の縁より3㎝ほど下がるように用土の量を調整し、苗木の株元が用土の表面と揃うように植えつけます。用土表面から鉢の縁までのスペースをウォータースペースといい、水やりの際、この部分に水がたまるようにします。 ⑤水やり 植えつけ後、必要に応じて支柱を立てて固定し、鉢底から水が流れ出るまで、たっぷりと水やりをします。 地植えの場合の手順 ①穴を掘る 苗木を用意したら、植えつけ場所に、根鉢の大きさの倍の深さと直径の穴を掘ります。できれば可能な限り深い穴を掘り、さらに底をスコップなどで耕しておきましょう。 ②元肥を施す あらかじめ腐葉土や完熟堆肥などを混合した元肥を用意し、掘り起こした庭土によく混ぜて、半分ほど穴に埋め戻します。 ③植えつけ 苗木の根鉢を軽くほぐし植え穴に入れて、残りの土を使って植えつけます。このとき、苗木の株元が地面の高さになるように調整をします。 ④水やり 植えつけ後は、たっぷりと水やりをします。苗がぐらつくようなら、必要に応じて支柱を立ててください。 知りたい! ヒイラギの増やし方 ヒイラギは種まきや挿し木で増やすことができます。 種まき ヒイラギの種は、熟した果実から採ることができます。両性花をつける株に咲いた花は、翌年6〜7月に黒紫色に熟します。熟した果実から種を採り出した後すぐに、種まき用の用土を入れた容器にまきます。 種まき後は、2〜3年そのまま移植せずに育てて、苗木を成長させます。発芽後1年めの成長はゆっくりですが、2年め以降は勢いよく成長します。成長した苗木は、4〜5月に植えつけをします。 挿し木 挿し木で増やす場合は、6〜7月が適期となります。春に芽吹いて伸びた枝を、挿し穂(穂木)とします。 挿し木の時期と方法 挿し木は、6~7月の新梢が充実しきる前のものを採取し、挿し穂にします。 穂木の採取方法 ①時間帯 朝、夕、雨天時などに行います。 ②株の選び方 日当たりのよい場所で、健全に育った株を選びます。 ③枝の選び方 日当たりのよい場所にあり、病虫害がなく、節間が間延びしていないものを。葉が小さめで、形が揃った部分の少し硬くなった新梢を選び、ハサミで長さ10~15㎝に切ります。 ④水に浸す 穂木は、切り口を直ちに水に浸します。 挿し穂の調整と挿し木 ①葉を整理する 穂木は上葉を4~5枚残すようにして、下部の葉を取り除きます。残す葉が大きい場合は、葉を半分に切ります。 ②切り口を斜めに切り戻す 吸水しやすいように、切り口をナイフで斜めに切り、 1〜2時間水につけます。 ③挿し床の準備 赤玉土や挿し木用土を鉢などに入れて挿し床とし、たっぷりと水やりをします。 ④発根促進剤をつける 穂木を水から取り出し、発根促進剤を切り口に薄くつけ、余分な粉は軽くたたいて落とします。 ⑤挿し木する 用土に割りばしで挿し穴をあけてから、挿し穂の1/3~1/2を挿し、周りの土をピンセットで押さえて安定させます。 ⑥水やり たっぷりと水やりして、ビニール袋などで密封し、日陰に置きます。 挿し木後の管理 ①挿し木後から夏の間 直射日光を避けて、湿度が高く保てる場所に置きます。挿し床ごとビニール袋で覆ってもよいでしょう。 ②秋 ビニール袋で覆っていた場合は取り除き、朝夕の弱い光や外気に当てるようにします。 ③冬 玄関や軒先などのなるべく暖房のない暖かい場所に置き、乾かさないように管理します。 ④春 4〜5月になって十分気温が高くなったら、大きめの鉢に植えつけます。植えつけは、苗木の植えつけの手順を参考にしてください。 Credit 記事協力 監修/宮内泰之 1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。 構成と文・童夢
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アベリアとは | 庭におすすめの植物! 常緑低木花木アベリアの育て方や種類をご紹介
アベリアの基本情報 アベリアとは、半常緑低木花木のひとつ。暖地では常緑ですが、寒地では落葉します。まずはアベリアの基本情報を学んでおきましょう。 【アベリアの基本データ】 植物名:アベリア学名:Abelia×grandiflora英名:Glossyabelia和名:ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)、ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)科名:スイカズラ科属名:ツクバネウツギ属原産地:中国分類:半常緑低木 アベリアの花や葉の特徴 園芸分類:庭木・花木開花時期:5月中旬〜10月植え付け時期:4月または9〜10月樹高:1〜1.5m耐寒性:強い耐暑性:強い花色:白、淡ピンク アベリアの開花時期は、5月中旬〜10月。白や淡いピンク色で釣鐘状の小さな花を枝先に咲かせます。葉は濃い緑色のほか、白や黄色の斑入りもあります。公園や道路の植え込み、生垣、庭木としてよく使われています。 アベリアの名前の由来や花言葉 「アベリア」という名前は、イギリスの植物学者で医師のクラーク・エーブル氏の名前に由来しています。エーブル氏は19世紀初めに中国に派遣され、植物の研究を行っていました。 また、和名のツクバネウツギは、漢字にすると「衝羽根空木」。 衝羽根(ツクバネ)とは、羽子板遊びに使われる羽根のこと。 花後に果実の下に残る5枚のプロペラのような萼片が、衝羽根によく似ていること、そして、樹形が空木(ウツギ)に似ているところから、この名がついたといわれています。 アベリアの花言葉は、「謙虚」「強運」。その小さく控えめな花姿から「謙虚」、そして病害虫にも強くて長い期間咲く性質から「強運」とつけられました。 アベリアの原種ってどんな植物? 交雑によってできた園芸種 一般的にアベリアといえば本種A.×grandifloraを指します。19世紀中期にイタリアで、A.chinensis(タイワンツクバネウツギ)とA.unifloraとの交雑により作出されました。長期間開花することや、半常緑なのに寒さに強いなどの元となった親の長所を受け継いでいます。 日本に自生するアベリアの仲間 日本にもアベリアと近縁の野生種がいくつかあります。そのひとつがツクバネウツギです。樹高は2mほどになり、5月頃に白い花を咲かせます。 アベリアの種類、園芸品種の特徴は? アベリアには、美しいカラーリーフの園芸品種や白以外の花色のものがあります。 葉色に特徴のある園芸品種 葉に斑が入る品種には、‘ホプリーズ(ホープレイズ)’や‘コンフェティ(コンフェッティ)’などがあります。また明るい葉の色や、色が変化する品種には、‘フランシスメイソン‘や‘カレイドスコープ’、‘エドワードゴーチャ’などがあります。これらの品種は、庭にやわらかな色合いを与えてくれます。 花色を楽しむ園芸品種 基本的な園芸品種のグランディフローラは、花色が白から淡いピンク色をしています。‘エドワードゴーチャ’は、濃いピンクの花をつける品種です。アベリアの花は長さ2cmほどで小さいですが、長期間たくさん花を咲かせるので、庭を賑わせてくれます。 人気のあるアベリアの品種をご紹介 育てやすく、カラーリーフとしても人気のアベリア。以下におすすめの品種をいくつかピックアップしてご紹介します。 グランディフローラ アベリア・グランディフローラは基本的な園芸種で、大正時代に日本に入ってきました。葉は緑色で、花は白から淡ピンク色をしています。また、萼は赤い色をしており、白い花との対比もきれいです。開花期が長いので、花を長く楽しめます。丈夫で育てやすいのも魅力です。 ‘エドワードゴーチャ’ ‘エドワードゴーチャ’はグランディフローラよりも濃いピンクで、ややふっくらとした花をつける園芸品種です。全体的にコンパクトで、葉はグランディフローラよりも小さく、緑色をしており、寒くなるとオレンジから赤紫色に紅葉します。 ‘ホプリーズ(ホープレイズ)’ ‘ホプリーズ(ホープレイズ)’は、光沢のある葉の緑に、クリーム色から白の覆輪の入る園芸品種です。葉色が明るいので、カラーリーフとして楽しめます。洋風なお庭にもぴったりです。花色は、白からピンク色をしています。ほかの品種に比べて、比較的萌芽力があります。 ‘カレイドスコープ’ ‘カレイドスコープ’は、季節で葉色が変化する園芸品種で、昨今ではカラーリーフとしても人気です。春はブライトイエロー、夏はゴールデンイエロー、低温期にはブライトオレンジに変わります。別名「万華鏡」とも呼ばれています。‘ホプリーズ’同様、萌芽力があります。花は白色で、ほのかに香ります。他の品種に比べて、冬の落葉が少ないといわれています。 ‘フランシスメイソン’ ‘フランシスメイソン‘は、葉の縁に、黄色の斑が大きく入る園芸品種です。特に春と秋に、葉の色が鮮やかになります。花は白色で、斑が入る以外はグランディフローラと性質はほぼ同じです。葉の色が明るいため、庭を明るい印象にしてくれます。 ‘コンフェティ(コンフェッティ)’ ‘コンフェティ(コンフェッティ)’は、葉の縁にクリームホワイトの斑が入る園芸品種です。新葉は斑が濃桃色になります。また、冬の時期には斑の部分が紅葉し、濃桃色になります。冬以外でも、日当たりの具合や生育環境によっても色が変化します。斑入りの品種ですが、夏の葉焼けに強いのが特徴です。 ‘マジックデイドリーム’ Nahhana/Shutterstock.com ‘マジックデイドリーム’は、アベリアの新しい改良種で、2017年にイギリスのHTAナショナルプラントショーで銅賞を、また、オランダのプランタリウム展示会主催の王立ボスコープ園芸協会審査による「the best novelty award賞2017」において銀賞を受賞した品種です 。葉はピンクの斑入りで華やかさがあり、花は大きめで春夏は爽やかな白っぽい色に、秋冬は鮮やかなピンクにと、一年を通して楽しめます。 ‘ラッキーロット’ iPlantsman/Shutterstock.com ‘ラッキーロット’は、渋緑の葉に薄いクリーム色の斑が入る園芸品種です。夏から秋にかけ、白い小花がいくつも咲きます。寒さに強く、冬でもあまり落葉しないのが特徴。成長は遅く、アベリアの中では比較的わい性で、横に広がるので、グラウンドカバーにも適しています。 ‘サンシャインデイドリーム’ Peter Turner Photography/Shutterstock.com ‘サンシャインデイドリーム’は、葉にオレンジとライムグリーンの斑が入る園芸品種です。花付きがよく、薄いピンク色の小花を咲かせます。葉のサイズが小さくコンパクトにまとまり、成長は遅めです。冬の寒風により落葉するので、植える場所を選ぶとよいでしょう。 ‘ラディアンス’ Gurcharan Singh/shutterstock.com ‘ラディアンス’は、‘ホプリーズ’によく似た覆輪が入る園芸品種です。黄色の葉は、夏には緑、秋には赤褐色へと変化し、紅葉が楽しめます。枝はクリムゾン(紫がかった赤)で、花は大きめの薄いピンク。‘ホプリーズ’に比べて徒長枝が少なく、樹形は自然にドーム状に育ちます。耐寒性が強く、冬季に落葉しにくく、一年中緑を保ちます。 アベリアの育て方 アベリアは、耐寒性、耐暑性に強く、生育旺盛で、初心者にも育てやすい樹木です。日当たりがよく、水はけのよい場所を好みます。日陰でも育ちますが、枝が徒長しやすい性質があります。花をたくさん咲かせるためには、日向で栽培するほうがよいでしょう。 また、冬の乾燥した冷たい風に当たると葉が傷みやすいので、育てる場所に気をつけましょ 種類が違っても基本的な育て方は同じ 葉や花の色に違いはありますが、アベリアの基本的な育て方やお手入れ方法は、ほとんど同じと考えてよいでしょう。 鉢植えで育てる準備 鉢植えで育てる場合、植物の生育は植え付けたプランターの大きさで決まります。コンパクトに育てたいときは小さなプランターで、ある程度の大きさに育てたい場合は大きなプランターを選ぶようにします。基本的には苗木の根鉢の大きさより一回りほど大きなプランター、具体的には7〜10号程度(21〜30cm)のものを用意しましょう。あまり大きなものを使うと、移動や植え替えなどの作業時に負担が大きくなってしまうので注意してください。 プランターの材質にはさまざまなものがあります。安価で軽く扱いやすいのはプラスチック製ですが、通気性や水はけといった植物の生育を考えると素焼き鉢が向いています。なお、形や色のバリエーションに富んだグラスファイバー製のものもあります。 地植えで育てる準備 日光を好むので、日当たり、風通しのよいところに植えます。とくに生垣などとして列植するときには、成長後の大きさを予測して株間を十分にとりましょう。水はけが良ければ、土質は特に選びません。 根鉢の大きさの倍の深さ・直径の穴を掘り、掘り起こした庭土に堆肥をよく混ぜて半分ほど穴に埋め戻します。苗木の株元が地面の高さになるように調整し、残りの土を戻して植え付けます。 植え付けは真夏と真冬を避けて アベリアの苗木の植え付けは4月、または9月下旬〜10月が適期です。真夏(7月〜9月中旬)と真冬(12月〜2月)を除けば、いつでも植え付けできます。 植え替えも春または秋に 鉢増し・鉢替えといった植え替えは、4月、または9月下旬〜10月が適期です。 弱酸性の土に植え付けることが大切 植物の生育にはおおむね、弱酸性(pH5.5〜6.5)の土が適しています。酸性が強すぎると、根が生育障害を起こしやすくなります。また、アルカリ性が強いと、土の中に鉄やホウ素などの微量要素が含まれていたとしても、根から吸収されにくく、欠乏症を起こす可能性があるので気をつけましょう。 鉢植えの土作り プランターでは市販の庭木用培養土をそのまま利用します。しかし、製品によって排水性や保水性が異なります。各用土の排水性、温度や日当たり、風通しなどの環境によって、土の乾き具合が変わることを確認し、覚えておくとよいでしょう。鉢植えで使用した培養土の保水性が悪いと感じたときは、堆肥や腐葉土を混ぜてみてください。また、排水性が悪いと感じる場合には、赤玉土や鹿沼土を配合することで改善できます。 鉢植えの用土を自分でブレンドして作る場合は、赤玉土(細粒):鹿沼土(細粒):腐葉土を、5:2:3の割合で混ぜます。赤玉土は排水性を高め、根腐れを防ぎます。 地植えの土作り 地植えの用土は、庭土に堆肥や腐葉土、培養土をよくすき込んでおきましょう。 寒肥・追肥を施す 鉢植え、庭植えともに寒肥(寒い時期に与える肥料のこと)を与えます。時期は2〜3月です。また、開花中盤の9月中旬に、緩効性の肥料を土の上にまいて施すとよいでしょう。 水やり アベリアはどちらかというとあまり水を必要としませんが、水切れすると、生育や花つきが悪くなるので注意が必要です。地植えの場合は、植え付け直後から根づくまでは水やりをし、その後は、夏の高温期など乾燥が気になる時期に、朝または夕方に水やりをする程度でよいでしょう。 鉢植えの場合は、表面の土が乾いてきたら、たっぷりと水やりをするようにしましょう。 アベリアの水やりについては、こちらの記事もご参照ください。 剪定 アベリアは成長が早く、萌芽力も強く、強い刈り込みにも耐えます。剪定の最適期は2〜3月ですが、樹形が乱れてきたら、比較的いつでも剪定できます。不要な枝と樹冠から出た徒長枝を間引いて、株全体のバランスを見ながら風通しと日当たりを改善し、コンパクトにしましょう。多少強く刈り込んでも生育に問題ありませんが、開花中に強剪定すると、その年の花数は少なくなるので、気をつけましょう。 アベリアの詳しい剪定方法は、こちらの記事をご参照ください。 アベリアの増やし方 アベリアを増やす方法には、挿し木があります。葉が小さめで形がそろった部分の充実した(少し硬くなった)新梢を約10cmの長さで切り取って穂木にします。切り口を水に浸したら、土に挿して発根させます。 挿し木の適期は、6〜7月、または9月。その年に伸びた枝を採取し、挿し穂にすると、根付きやすいでしょう。 アベリアの挿し木の具体的な方法は、こちらの記事で解説しています。
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育て方

キンモクセイの育て方。コツとお手入れ方法を一挙紹介します
キンモクセイを育てる前に知っておきたいこと キンモクセイは初心者にも育てやすい庭木のひとつですが、栽培を始める前に、上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 キンモクセイの基本データ学名:Osmanthus fragrans var.aurantiacus科名:モクセイ科属名:モクセイ属原産地:中国(詳細は不明)和名:キンモクセイ(金木犀)英名:fragrant orange-colored olive開花期:9〜10月花色:オレンジ植え付け時期:3〜4月耐寒気温:−10℃ 花を乾燥させて作る桂花茶 キンモクセイは樹高5〜8mになる常緑小高木です。9月下旬から10月中旬に、オレンジ色で強い芳香のある5mm程度の小花を枝に密につけて咲かせます。近年では開花が年々早まっている傾向があります。その香りは、低温、多湿になると特に強く香ります。日本では芳香剤としてよく知られる香りですが、中国では花(日本と同一かは不明)を使い、桂花陳酒や桂花茶などで香りが楽しまれています。葉は、オレンジ色の花が映える濃い緑で、光沢があります。庭木や生垣によく利用されています。日本では雄株しか知られておらず、そのため実をつけることはありません。 ギンモクセイの花 キンモクセイは、花が白色のギンモクセイ(O.fragrans)の変種とされています。属名のOsmanthusは、ギリシャ語でにおいを意味する「osme」と、花を意味する「anthos」が由来です。 キンモクセイにはどんな種類があるの?選び方は? キンモクセイの園芸品種は少なく、同じモクセイ科の仲間にギンモクセイやヒイラギモクセイなどがあります。ギンモクセイは、ほのかに黄色がかった白い花をつけ、やや光沢のある縁がギザギザ(細鋸歯)の葉を持ちます。香りもありますが、キンモクセイほどではありません。ヒイラギモクセイは、ギンモクセイとヒイラギの(O.heterophyllus)の雑種と考えられている植物です。芳香のある白い花が咲きます。葉は楕円形で、縁にとげがあり、生け垣などにも利用されます。 キンモクセイを育てるために必要な準備と道具 キンモクセイは鉢植えでも地植えでも育てることができます。植えつけをはじめる前に、以下のものを用意するとよいでしょう。 準備するもの・キンモクセイの苗木・8号以上の大きな鉢 *鉢植えの場合・鉢底石 *鉢植えの場合・赤玉土・腐葉土・元肥:完熟たい肥など・支柱 *必要であれば・剪定バサミ・スコップ 鉢植えで育てる場合、小さな鉢だとすぐに植え替えが必要になってしまうので、苗木よりも一回りから二回り大きな鉢を選ぶようにしてください。また、キンモクセイは成木になってからの移植を嫌います。最初から、大きめの鉢を用意したほうがよいでしょう。 適した土作りがキンモクセイを育てる第一歩 キンモクセイは、水はけがよく肥沃な土壌が適しています。鉢植えの場合は、赤玉土7、腐葉土3の割合で配合した土を使います。庭植えにする場合は、やや湿り気があり、肥沃で水はけのよい土(砂質分に粘土質が3割ほど混じった土)がよいでしょう。 キンモクセイの育て方にはポイントがあります 暖地を好み、寒さにはやや弱く、霜が降りるような場所では、あまり育ちません。冬に寒風が当たらないところに植えましょう。日陰の場所でも育ちますが、花つきをよくしたいのであれば、日当たりのよい場所から半日陰の場所が適しています。また、大気の汚れた場所だと、花つきが悪くなってしまうので気をつけてください。 植え付け・植え替えの時期とその方法 植え付けは春、あるいは秋に行う キンモクセイの苗木の植え付けは3〜4月、または10〜12月が適しています。 鉢への植え付けの方法 ①苗木の準備苗木は鉢から抜いて根鉢をくずさないようにします。 ②用土の準備鉢に鉢底ネットを敷いた上で、鉢底石を3cmほどの厚さに入れ、赤玉土7、腐葉土3の割合で配合した土を用意します。 ③植え付け用意した用土を使って植え付けます。この時、元肥も入れます。 ④用土を調整最終的に用土の表面が鉢の縁より3cmほど下がるように用土を調整し、苗木の株元が用土の表面とそろうように植え付けます。用土の高さを鉢の縁より下げるのは、水やりの際、この部分に水がたまるようにするためで、ウォータースペースといいます。 ⑤水やり植え付け後、必要に応じて支柱を立てて固定し、たっぷりと水やりをします。 庭への植え付けの方法 ①穴を掘るキンモクセイの苗木を用意したら、植え付け場所に根鉢の大きさの倍の深さ・直径の穴を掘ります(できれば可能な限り深い穴を掘り、さらに底をスコップなどで耕しておきましょう)。 ②土の準備あらかじめ腐葉土や完熟堆肥などを混合した元肥を掘り起こした庭土によく混ぜて、半分ほど穴に埋め戻します。 ③植え付け苗木の根鉢を軽くほぐし植え穴に入れて、残りの土を使って植え付けます。このとき、苗木の株元が地面の高さになるように調整をします。 ④水やり植え付け後はたっぷりと水やりをします。棒などでつついて根と土をなじませるとよいでしょう。ぐらつく場合は支柱を立ててください。 植え替えは春に 地植えをしたキンモクセイは、基本的に植え替えはしません。植え替えすることにより、根が傷つきやすく、水や養分を吸い上げる力が衰えてしまうためです。鉢植えの場合は、根詰まりを起こしやすいので、2〜3年に1回、3〜4月に行います。 植え替えの方法(鉢植え) 鉢全体に根が回ったり、水はけが悪くなったりしたら植え替えをしましょう。一回り大きな鉢に植え替えます。 ①鉢から苗を取り出すキンモクセイの鉢から苗をそっと取り出します。 ②根鉢をかるく落とす根の周りについた土をもみほぐしながらかるく落とします。 ③黒い根を切り取る黒く変色した根があれば剪定バサミで切り取ります。 ④植え替え一回り大きな鉢に鉢底ネットを敷き、鉢底石を3cmほどの厚さに入れ、赤玉土7、腐葉土3の割合で配合した土を使って植え替えます。この時、元肥も入れます。 ⑤用土を調整最終的に用土の表面が鉢の縁より3cmほど下がるように用土を調整し、苗木の株元が用土の表面とそろうように植え付けます。 ⑥水やり植え付け後、必要に応じて支柱を立てて固定し、たっぷりと水やりをします。 キンモクセイに肥料は必要なの? 鉢植え、庭植えともに、2月下旬〜3月に寒肥として有機質肥料を中心に施します。寒肥とは、寒い時期に与える肥料のことです。寒い時期には植物は成長しませんが、肥料は土の中で植物が吸収されやすいかたちに変化し、春に効き目を表します。 キンモクセイの水やりの方法とタイミング 鉢植えの場合 鉢の場合、土の量が限られているため保持する水の量も限られてしまいます。表面の土が乾いてきた頃には鉢の中の土も乾き始めていることが考えられるので、土の表面が乾いてきたらたっぷりと水やりをします。 庭植えの場合 庭植えの場合、水やりはそれほど神経質になる必要はありません。植え付け直後や夏の高温で乾燥する時期には、土が乾かないように水やりをします。 キンモクセイの剪定時期や方法は? キンモクセイはとても生育旺盛です。大きくなってから一気に強剪定すると、小枝が枯れ込んでしまうことも。また、萌芽した枝が成熟できず、開花枝にならなくなってしまいます。ですので、秋の開花後から、翌春の4月までの厳冬期を避けて剪定を行いましょう。それ以降は徒長枝などを切る程度に。 剪定の方法 ①不要な枝を間引く枝葉が茂り株の内側が混み合ってくると、日あたりや風通しが悪くなり、木が弱ったり、病害虫の発生が増えたりします。そこで、太く長い枝や混み合った枝、交差する枝などをつけ根から切り取って間引き、枝数を減らして株内の日当たりや風通しを図るようにします。 ②枝先を2〜3節残して切り詰める株をコンパクトに維持し、また枝を充実させるために、花の咲いた枝を先端から2〜3節残した位置まで切り詰めます。4月以降に新梢が伸び、これに花芽がつくられます。 知りたい!キンモクセイの増やし方 キンモクセイは、挿し木と取り木で増やすことができます。 挿し木の時期と方法 挿し木は、5月下旬〜7月の新梢が充実しきる前のものを採取し、挿し穂にします。 穂木の採取方法 ①時間帯朝、夕、雨天時などに行います。 ②株の選び方日当たりの良い場所で健全に育てられ、若くて花着きの良い株を選びます。 ③枝の選び方日当たりが良く、病虫害がなく、節間が間延びしておらず、葉が小さめで形がそろった部分の充実した(少し硬くなった)長さ15~20cmの新梢をハサミで切ります。 ④水に浸す穂木は切り口を直ちに水に浸します。 挿し穂の調整と挿し木 ①葉を整理する上葉を4〜5枚残すようにして、下部の葉を取り除きます。残す葉が大きい場合は半分に切ります。 ②切り口を斜めに切り戻す吸水しやすいように切り口をナイフで斜めに切り、60分ほど水につけます。 ③発根促進剤をつける発根促進剤を切り口に薄くつけ、余分な粉は軽くたたいて落とします。 ④挿し床の準備赤玉土や挿し木用土を鉢などに入れて挿し床とし、たっぷりと水やりをします。 ⑤挿し木する割りばしで挿し穴をあけてから、挿し穂の1/3~1/2を挿し、まわりの土をピンセットで押さえて安定させます。 挿し木後の管理 ①挿し木後から夏の間直射日光を避けて、湿度が高く保てる場所に置きます。挿し床ごとビニール袋で覆ってもよいでしょう。 ②秋ごろビニール袋で覆っていた場合は取り除き、朝夕の弱い光や外気に当てるようにします。 ③冬ごろ玄関や軒先などのなるべく暖房のない暖かい場所に置き、乾かさないように管理します。 取り木の時期と方法 取り木は植物の樹皮をはぎ、発根させてから苗木にする方法です。取り木をする場合は、5〜6月が最適です。 ①樹皮を剥ぐキンモクセイの幹2~3年枝の途中をよく切れるナイフで2〜3cmの間隔で2カ所、枝を一周する切れ目を入れます。切れ目の間の樹皮を木質部が露出するまで一周剥ぎ取ります。 ②水苔を巻きつける樹皮を剥いだ部分に、水につけておいた水苔を巻きつけ、ビニールシートで覆います。ビニールは上下をヒモで結んで固定し、密閉してください。 ③遮光する取り木した部分は、日陰になるように遮光します。 ④水やり水苔が乾燥していると感じたら、上のヒモをほどいて水やりをします。水やりの後は再びヒモを結びます。 ⑤根の下で切り離す根が伸びたら、春または秋に根の下で切り離します。 ⑥植え付け切り離したらすぐに植え付けましょう。 キンモクセイを育てるときに気をつけたい病気と害虫 キンモクセイで注意したい病害虫 褐斑病葉の先や縁に淡褐色の斑点ができ、後に灰白色や灰褐色になってしまう病気です。被害を受けた場合は、周りに伝染しないようにすぐに取り除きます。 先葉枯病葉の先端が淡褐色になり、後に灰白色になります。被害を受けた場合は、葉を切り取ってください。落ち葉も掃除し、処分します。 カイガラムシ類ヒイラギハマキワタムシなどのアブラムシ類、ウメシロカイガラムシ、トビイロマルカイガラムシなどのカイガラムシ類が発生することがあります。風通しが悪いと発生するので、風通しをよくすることが重要です。 ハダニ葉裏に群生し、吸汁によって被害が発生します。葉は白い斑点がつき、かすれたような黄色になります。湿気が苦手なので、乾燥時に葉裏から水をかけると被害が減ります。 風通しが悪いと病気や害虫の被害に キンモクセイは風通しが悪い環境だと、病気や害虫が発生しやすくなってしまいます。まずは環境を整えて病気や害虫の発生を予防し、それでも病気や害虫の被害が見られたら早めに対処するようにしましょう。 薬剤に頼らない病害虫対策 適切な作業や管理によって株を丈夫に育てれば、病気や害虫の被害を減らすことができます。また雑草を刈るなど株元をきれいにしておくことも大切です。とくに適切な剪定によって樹冠内の日あたりや風通しをよくすることは、木が健全に育つための大切なポイントとなります。薬剤散布は病害虫を駆除するだけでなく、病害虫の天敵も一緒に駆除、遠ざけてしまい、逆効果の場合もあります。 病虫害の予防には根を健全にする 樹木は樹勢が衰えると病虫害に対する抵抗力が落ちてしまいます。樹勢を衰えさせる最も大きな原因は地下部、つまり根の生育障害にあります。 鉢植えで多い障害鉢植えで最も多い障害は、根が鉢の中に回った根詰まりです。鉢植えの生育が悪くなった場合、根詰まりとなっている可能性が高いので、適期を見計らって一回り大きな鉢に植え替えましょう。 地植えでの注意点(植え付け前)根をよく伸ばすために、植え付け前にも注意が必要です。植え付け時には、植穴をなるべく広く深く掘って根が伸びる範囲を確保し、さらに底をスコップなどで耕して排水性を改善しておきましょう。植え付けの際に植穴が小さいと小さな鉢に植えることと同じ状態になり、すぐに根詰まりになってしまいます。 地植えでの注意点(植え付け後)地植えでは、毎年冬に寒肥を兼ねて樹冠の外縁部の地面を環状に耕し、堆肥や腐葉土をすき込みましょう。根の先端と樹冠の外縁は同じくらい広がっているため、根の先端の土がよい土となります。 強剪定、不適期の剪定は根と葉のバランスを崩す強く切り戻す剪定や適期でない時期に剪定してしまうと、根の水分供給と葉からの蒸散(水分の放出)のバランスが崩れてしまいます。このような状態になると、根が生育障害をおこし、樹勢を衰えさせ、病虫害の発生につながります。 構成と文・さいとうりょうこ 併せて読みた
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キンモクセイの植え付け・植え替えに適した土の作り方
キンモクセイを育てる前に知っておきたいこと キンモクセイは、初心者にも育てやすい庭木のひとつですが、土作りにちょっとしたポイントがあります。土作りを始める前に、上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 キンモクセイの基本データ 学名:Osmanthus fragrans var.aurantiacus 科名:キンモクセイ科 属名:モクセイ属 原産地:中国(詳細は不明) 和名:キンモクセイ(金木犀) 英名:fragrant orange-colored olive 開花期:9〜10月 花色:オレンジ 植え付け時期:3〜4月 耐寒気温:−10℃ キンモクセイは樹高5〜8mになる常緑小高木です。9月下旬から10月中旬に、オレンジ色で強い芳香のある5mm程度の小花を枝に密につけて咲かせます。近年では開花が年々早まっている傾向があります。その香りは、低温、多湿になると特に強く香ります。日本では芳香剤としてよく知られる香りですが、中国では花(日本のものと同一かは不明)を使い、桂花陳酒や桂花茶などで香りが楽しまれています。葉は、オレンジ色の花が映える濃い緑で、光沢があります。庭木や生垣によく利用されています。日本では雄株しか知られておらず、そのため実をつけることはありません。 キンモクセイの香りを手軽に楽しめる桂花茶 キンモクセイは、花が白色のギンモクセイ(O.fragrans)の変種とされています。属名のOsmanthusは、ギリシャ語でにおいを意味する「osme」と、花を意味する「anthos」が由来です。 よい土は、水はけ、水もちに優れています 植物が育つためには、水はけ(排水性)と水もち(保水性)に優れた「よい土」が必要です。「よい土」とは、物理的には「団粒構造をもつ土」のことをいいます。団粒構造とは、土の粒子(単粒)が集まって団粒(小さな固まり)をつくり、この団粒がさらに集まった状態を指します。団粒のなかの隙間や、団粒どうしの隙間が、排水性・通気性・保水性・保肥性に役立つのです。 土の粒子や団粒が集まり、適度に結合するためには腐植に富んでいる必要があります。団粒構造を持つよい土を見分ける方法は、土に少し水を含ませて軽く握ります。よい土であれば一旦団子状になり、それを指で軽く押すとほろりと崩れます。一方で、団子状にならなかった土は保水性、保肥性などが悪く、触っても崩れなかったりした土は、通気性や排水性が悪い土といえます。 弱酸性の土に植え付けることが大切 多くの植物の生育には、弱酸性(pH5.5〜6.5)の土が適しています。酸性が強すぎると、根が生育障害を起こしやすくなり、アルカリ性が強いと、土の中に鉄やホウ素などの微量要素が含まれていたとしても、根から吸収されにくく、欠乏症を起こす可能性があります。 植え付けのときに市販の酸度測定器などを使い、植え付け場所の土壌酸度を調べておきますが、キンモクセイなどの庭木は野菜などとは違い、植え付け時によほど弱酸性から離れていた場合以外は、とくに土壌酸度(pH)を気にする必要はありません。 土の種類を知ることが、適した土作りへの近道 園芸で使う用土は、基本用土と改良用土に大きく分けられます。基本用土は、赤玉土や黒土などの園芸用土のベースとなる土のことです。改良用土は通気性、排水性、保水性、保肥性を改良する用土のことで、基本用土に混ぜて使います。ここでは、土の種類とその特徴を紹介します。土の種類について知ることは、植物を育てる「よい土」作りに役立ちます。 基本用土 赤玉土 関東ローム層(火山灰土)の赤土を乾燥させてふるい分けたものです。通気性、排水性、保水性に優れますが、腐植などの有機質はほとんど含まれていません。基本用土として最もよく使われています。小粒・中粒・大粒と選別されて袋詰めになっており、他の用土とブレンドして使うときは、中~小粒のものが適しています。 黒土 関東ローム層(火山灰土)の表層土。別名「黒ボク」「黒ボコ」ともいいます。腐植などの有機質を多く含み、保水性、保肥性に優れている軟らかい土です。通気性や排水性が悪いので、赤玉土などを混ぜて使います。 鹿沼土 栃木県鹿沼地方で採取される軽石質の火山砂礫が風化した土です。有機質をほとんど含まない酸性土で、排水性、保水性に優れています。酸性寄りの土なので、サツキやツツジ類などの低木や東洋ランなどの山野草に向いているほか、無菌に近いので挿し木の用土としても使われます。 砂 川砂が一般的ですが、「桐生砂」や「富士砂」、「白川砂」など、産地によってさまざまな種類があります。排水性や通気性をよくするために使います。主に山野草や多肉植物の栽培などに使われます。 改良用土 腐葉土 広葉樹の落ち葉を腐熟させたものです。有機質に富んでいて、排水性、保水性、通気性に優れています。鉢植え、地植え、どちらの場合でも重宝される改良用土です。 堆肥 藁、落葉、野菜くずなどを腐熟させたものです。腐葉土と同じような使われ方をしますが、庭土の改良に使うのが一般的です。土中の微生物を増やし、排水性や通気性をよくする働きがあります。未熟堆肥だと、生育に悪影響を与えるので、完熟したものを使います。 ピートモス ミズゴケ類、ヨシ、スゲ類など湿地の植物が堆積して泥炭化したものです。軽くて水もち保水性、通気性がよいのが特徴です。 酸性が強いので、一般的な草花には「酸度調整済み」のもの、酸性の土を好む植物には「酸度未調整」と表記されたもの、と使い分けるようにしましょう。 バーミキュライト 蛭石を高熱処理して膨張させそれを細かくした人工用土です。薄い層が積み重なった構造で、軽く、水はけ排水性、通気性、保肥性力に優れています。 パーライト 真珠岩を高熱高圧処理した人工用土です。白い粒状で軽く、排水性、通気性をよくするために使います。細かいものほど保水性がよくなります。 もみ殻くん炭 もみ殻を燻して炭化させたものです。保水性、通気性に優れ、保温、根腐れ防止、堆肥の消臭効果があります。アルカリ性なので、酸性土の中和にも使われます。 元気に育てるための、キンモクセイの土作り 鉢植えの用土 キンモクセイを鉢に植え替えるときに使用する用土は、一般的な市販の庭木用培養土で問題ありません。しかし、製品によって水はけや水もちが異なります。各用土の排水性、温度や日当たり、風通しなどの環境によって、土の乾き具合が変わることを覚えておきましょう。鉢植えでの使用した培養土の水もちが悪いと感じる場合には堆肥や腐葉土を、水はけが悪いと感じる場合には赤玉土や鹿沼土を足すことで改善できます。 鉢植えで用土をブレンドする キンモクセイは水はけのよい酸性の土を好みます。鉢植えの用土を自分でブレンドして作る場合は、赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜます。赤玉土は水はけをよくし、根腐れを防いでくれます。 地植えに使う改良用土 地植えの用土は、庭土に堆肥や腐葉土、培養土をよくすき込んでおくとよいでしょう。 キンモクセイは酸性の土が好きなので、苦土石灰などをまく必要はありません。また、アルカリ性の強いピートモスなどは使用しないようにしてください。 キンモクセイの植え付け・植替え時期 植え付けの適期 キンモクセイは比較的寒さに強い常緑樹ですが、植え付け適期は多くの常緑樹と同じ3〜4月です。また、耐寒気温の−10℃を下回らない時期に合わせることが必要です。あらかじめ栽培する地域の気象データをもとに例年の耐寒気温を調べておきましょう。気象データは気象庁のホームページから調べることができます。その年の気温が不安定なこともあるので、栽培を始める前に天気予報もチェックしておきましょう。 鉢植えの植え替え時期 地植えをしたキンモクセイは、基本的に植え替えはしません。植え替えすることにより、根が傷つきやすく、水や養分を吸い上げる力が衰えてしまうためです。鉢植えの場合は、根詰まりを起こしやすいので、2〜3年に1回、3〜4月に植え替えを行います。 鉢の植え替え時に準備したいもの 鉢の植え替え時には用土や鉢のほかに、剪定ばさみや支柱などが必要になります。古い根などは剪定ばさみで切り取ります。丈の高い株なら根付くまでは支柱を立てるとよいでしょう。 準備するもの ・8号以上の大きな鉢 *鉢植えの場合 ・鉢底石 *鉢植えの場合 ・赤玉土 ・腐葉土 ・元肥:完熟堆肥など ・支柱 *必要であれば ・剪定バサミ キンモクセイの植え替え方法が知りたい 鉢全体に根が回ったり、水はけが悪くなったりしたら植え替えをしましょう。一回り大きな鉢に植え替えます。 ①鉢から苗を取り出す キンモクセイの鉢から苗をそっと取り出します。 ②根鉢をかるく落とす 根の周りについた土をもみほぐしながらかるく落とします。 ③黒い根を切り取る 黒く変色した根があれば剪定バサミで切り取ります。 ④植え替え 一回り大きな鉢に鉢底ネットを敷き、鉢底石を3cmほどの厚さに入れ、赤玉土7、腐葉土3の割合で配合した土を使って植え替えます。この時、元肥も入れます。 ⑤用土を調整 最終的に用土の表面が鉢の縁より3cmほど下がるように用土を調整し、苗木の株元が用土の表面とそろうように植え付けます。 ⑥水やり 植え付け後、必要に応じて支柱を立てて固定し、たっぷりと水やりをします。 植え替えをするときの注意点は? 鉢植えで育てる場合、小さな鉢だとすぐに植え替えが必要になってしまうので、苗木よりも一回りから二回り大きな鉢を選ぶようにしてください。また、キンモクセイは成木になってからの移植を嫌います。最初から、大きめの鉢を用意したほうがよいでしょう。 併せて読みたい ・秋は美容ケアの替え時!シミ・シワ肌からエイジレス美肌へ導く次世代美容オイル ・10月下旬までがチャンス! 植え替えで花数2倍! 秋の庭を鮮やかに彩るガーデンマムとウィリアム・モリスの鉢 ・カボチャのおばけ、ジャック オー ランタンがいっぱい!横浜イングリッシュガーデンでハロウィンと秋のバラ園を楽しもう! Credit 記事協力 監修/宮内泰之 1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。 構成と文・さいとうりょうこ



















