昨今ではカラーリーフとしても親しまれ、初心者にも育てやすいアベリア。春から秋にかけて、上の写真のような白や淡ピンク色の小さな花を咲かせます。品種によっては葉に斑が入るものや紅葉するものもあります。ここでは、アベリアの育て方や品種を詳しく説明します。
目次
アベリアの基本情報
アベリアとは、半常緑低木花木のひとつ。暖地では常緑ですが、寒地では落葉します。
まずはアベリアの基本情報を学んでおきましょう。
【アベリアの基本データ】
植物名:アベリア
学名:Abelia×grandiflora
英名:Glossyabelia
和名:ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)、ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)
科名:スイカズラ科
属名:ツクバネウツギ属
原産地:中国
分類:半常緑低木
アベリアの花や葉の特徴
園芸分類:庭木・花木
開花時期:5月中旬〜10月
植え付け時期:4月または9〜10月
樹高:1〜1.5m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、淡ピンク
アベリアの開花時期は、5月中旬〜10月。白や淡いピンク色で釣鐘状の小さな花を枝先に咲かせます。葉は濃い緑色のほか、白や黄色の斑入りもあります。公園や道路の植え込み、生垣、庭木としてよく使われています。
アベリアの名前の由来や花言葉
「アベリア」という名前は、イギリスの植物学者で医師のクラーク・エーブル氏の名前に由来しています。エーブル氏は19世紀初めに中国に派遣され、植物の研究を行っていました。
また、和名のツクバネウツギは、漢字にすると「衝羽根空木」。 衝羽根(ツクバネ)とは、羽子板遊びに使われる羽根のこと。 花後に果実の下に残る5枚のプロペラのような萼片が、衝羽根によく似ていること、そして、樹形が空木(ウツギ)に似ているところから、この名がついたといわれています。
アベリアの花言葉は、「謙虚」「強運」。その小さく控えめな花姿から「謙虚」、そして病害虫にも強くて長い期間咲く性質から「強運」とつけられました。
アベリアの原種ってどんな植物?
交雑によってできた園芸種
一般的にアベリアといえば本種A.×grandifloraを指します。19世紀中期にイタリアで、A.chinensis(タイワンツクバネウツギ)とA.unifloraとの交雑により作出されました。長期間開花することや、半常緑なのに寒さに強いなどの元となった親の長所を受け継いでいます。
日本に自生するアベリアの仲間
日本にもアベリアと近縁の野生種がいくつかあります。そのひとつがツクバネウツギです。樹高は2mほどになり、5月頃に白い花を咲かせます。
アベリアの種類、園芸品種の特徴は?
アベリアには、美しいカラーリーフの園芸品種や白以外の花色のものがあります。
葉色に特徴のある園芸品種
葉に斑が入る品種には、‘ホプリーズ(ホープレイズ)’や‘コンフェティ(コンフェッティ)’などがあります。また明るい葉の色や、色が変化する品種には、‘フランシスメイソン‘や‘カレイドスコープ’、‘エドワードゴーチャ’などがあります。これらの品種は、庭にやわらかな色合いを与えてくれます。
花色を楽しむ園芸品種
基本的な園芸品種のグランディフローラは、花色が白から淡いピンク色をしています。‘エドワードゴーチャ’は、濃いピンクの花をつける品種です。アベリアの花は長さ2cmほどで小さいですが、長期間たくさん花を咲かせるので、庭を賑わせてくれます。
人気のあるアベリアの品種をご紹介
育てやすく、カラーリーフとしても人気のアベリア。以下におすすめの品種をいくつかピックアップしてご紹介します。
グランディフローラ
アベリア・グランディフローラは基本的な園芸種で、大正時代に日本に入ってきました。葉は緑色で、花は白から淡ピンク色をしています。また、萼は赤い色をしており、白い花との対比もきれいです。開花期が長いので、花を長く楽しめます。丈夫で育てやすいのも魅力です。
‘エドワードゴーチャ’
‘エドワードゴーチャ’はグランディフローラよりも濃いピンクで、ややふっくらとした花をつける園芸品種です。全体的にコンパクトで、葉はグランディフローラよりも小さく、緑色をしており、寒くなるとオレンジから赤紫色に紅葉します。
‘ホプリーズ(ホープレイズ)’
‘ホプリーズ(ホープレイズ)’は、光沢のある葉の緑に、クリーム色から白の覆輪の入る園芸品種です。葉色が明るいので、カラーリーフとして楽しめます。洋風なお庭にもぴったりです。花色は、白からピンク色をしています。ほかの品種に比べて、比較的萌芽力があります。
‘カレイドスコープ’
‘カレイドスコープ’は、季節で葉色が変化する園芸品種で、昨今ではカラーリーフとしても人気です。春はブライトイエロー、夏はゴールデンイエロー、低温期にはブライトオレンジに変わります。別名「万華鏡」とも呼ばれています。‘ホプリーズ’同様、萌芽力があります。花は白色で、ほのかに香ります。他の品種に比べて、冬の落葉が少ないといわれています。
‘フランシスメイソン’
‘フランシスメイソン‘は、葉の縁に、黄色の斑が大きく入る園芸品種です。特に春と秋に、葉の色が鮮やかになります。花は白色で、斑が入る以外はグランディフローラと性質はほぼ同じです。葉の色が明るいため、庭を明るい印象にしてくれます。
‘コンフェティ(コンフェッティ)’
‘コンフェティ(コンフェッティ)’は、葉の縁にクリームホワイトの斑が入る園芸品種です。新葉は斑が濃桃色になります。また、冬の時期には斑の部分が紅葉し、濃桃色になります。冬以外でも、日当たりの具合や生育環境によっても色が変化します。斑入りの品種ですが、夏の葉焼けに強いのが特徴です。
‘マジックデイドリーム’
‘マジックデイドリーム’は、アベリアの新しい改良種で、2017年にイギリスのHTAナショナルプラントショーで銅賞を、また、オランダのプランタリウム展示会主催の王立ボスコープ園芸協会審査による「the best novelty award賞2017」において銀賞を受賞した品種です 。葉はピンクの斑入りで華やかさがあり、花は大きめで春夏は爽やかな白っぽい色に、秋冬は鮮やかなピンクにと、一年を通して楽しめます。
‘ラッキーロット’
‘ラッキーロット’は、渋緑の葉に薄いクリーム色の斑が入る園芸品種です。夏から秋にかけ、白い小花がいくつも咲きます。寒さに強く、冬でもあまり落葉しないのが特徴。成長は遅く、アベリアの中では比較的わい性で、横に広がるので、グラウンドカバーにも適しています。
‘サンシャインデイドリーム’
‘サンシャインデイドリーム’は、葉にオレンジとライムグリーンの斑が入る園芸品種です。花付きがよく、薄いピンク色の小花を咲かせます。葉のサイズが小さくコンパクトにまとまり、成長は遅めです。冬の寒風により落葉するので、植える場所を選ぶとよいでしょう。
‘ラディアンス’
‘ラディアンス’は、‘ホプリーズ’によく似た覆輪が入る園芸品種です。黄色の葉は、夏には緑、秋には赤褐色へと変化し、紅葉が楽しめます。枝はクリムゾン(紫がかった赤)で、花は大きめの薄いピンク。‘ホプリーズ’に比べて徒長枝が少なく、樹形は自然にドーム状に育ちます。耐寒性が強く、冬季に落葉しにくく、一年中緑を保ちます。
アベリアの育て方
アベリアは、耐寒性、耐暑性に強く、生育旺盛で、初心者にも育てやすい樹木です。日当たりがよく、水はけのよい場所を好みます。日陰でも育ちますが、枝が徒長しやすい性質があります。花をたくさん咲かせるためには、日向で栽培するほうがよいでしょう。 また、冬の乾燥した冷たい風に当たると葉が傷みやすいので、育てる場所に気をつけましょ
種類が違っても基本的な育て方は同じ
葉や花の色に違いはありますが、アベリアの基本的な育て方やお手入れ方法は、ほとんど同じと考えてよいでしょう。
鉢植えで育てる準備
鉢植えで育てる場合、植物の生育は植え付けたプランターの大きさで決まります。コンパクトに育てたいときは小さなプランターで、ある程度の大きさに育てたい場合は大きなプランターを選ぶようにします。基本的には苗木の根鉢の大きさより一回りほど大きなプランター、具体的には7〜10号程度(21〜30cm)のものを用意しましょう。あまり大きなものを使うと、移動や植え替えなどの作業時に負担が大きくなってしまうので注意してください。
プランターの材質にはさまざまなものがあります。安価で軽く扱いやすいのはプラスチック製ですが、通気性や水はけといった植物の生育を考えると素焼き鉢が向いています。なお、形や色のバリエーションに富んだグラスファイバー製のものもあります。
地植えで育てる準備
日光を好むので、日当たり、風通しのよいところに植えます。とくに生垣などとして列植するときには、成長後の大きさを予測して株間を十分にとりましょう。水はけが良ければ、土質は特に選びません。
根鉢の大きさの倍の深さ・直径の穴を掘り、掘り起こした庭土に堆肥をよく混ぜて半分ほど穴に埋め戻します。苗木の株元が地面の高さになるように調整し、残りの土を戻して植え付けます。
植え付けは真夏と真冬を避けて
アベリアの苗木の植え付けは4月、または9月下旬〜10月が適期です。真夏(7月〜9月中旬)と真冬(12月〜2月)を除けば、いつでも植え付けできます。
植え替えも春または秋に
鉢増し・鉢替えといった植え替えは、4月、または9月下旬〜10月が適期です。
弱酸性の土に植え付けることが大切
植物の生育にはおおむね、弱酸性(pH5.5〜6.5)の土が適しています。酸性が強すぎると、根が生育障害を起こしやすくなります。また、アルカリ性が強いと、土の中に鉄やホウ素などの微量要素が含まれていたとしても、根から吸収されにくく、欠乏症を起こす可能性があるので気をつけましょう。
鉢植えの土作り
プランターでは市販の庭木用培養土をそのまま利用します。しかし、製品によって排水性や保水性が異なります。各用土の排水性、温度や日当たり、風通しなどの環境によって、土の乾き具合が変わることを確認し、覚えておくとよいでしょう。鉢植えで使用した培養土の保水性が悪いと感じたときは、堆肥や腐葉土を混ぜてみてください。また、排水性が悪いと感じる場合には、赤玉土や鹿沼土を配合することで改善できます。
鉢植えの用土を自分でブレンドして作る場合は、赤玉土(細粒):鹿沼土(細粒):腐葉土を、5:2:3の割合で混ぜます。赤玉土は排水性を高め、根腐れを防ぎます。
地植えの土作り
地植えの用土は、庭土に堆肥や腐葉土、培養土をよくすき込んでおきましょう。
寒肥・追肥を施す
鉢植え、庭植えともに寒肥(寒い時期に与える肥料のこと)を与えます。時期は2〜3月です。また、開花中盤の9月中旬に、緩効性の肥料を土の上にまいて施すとよいでしょう。
水やり
アベリアはどちらかというとあまり水を必要としませんが、水切れすると、生育や花つきが悪くなるので注意が必要です。地植えの場合は、植え付け直後から根づくまでは水やりをし、その後は、夏の高温期など乾燥が気になる時期に、朝または夕方に水やりをする程度でよいでしょう。
鉢植えの場合は、表面の土が乾いてきたら、たっぷりと水やりをするようにしましょう。
アベリアの水やりについては、こちらの記事もご参照ください。
剪定
アベリアは成長が早く、萌芽力も強く、強い刈り込みにも耐えます。剪定の最適期は2〜3月ですが、樹形が乱れてきたら、比較的いつでも剪定できます。不要な枝と樹冠から出た徒長枝を間引いて、株全体のバランスを見ながら風通しと日当たりを改善し、コンパクトにしましょう。多少強く刈り込んでも生育に問題ありませんが、開花中に強剪定すると、その年の花数は少なくなるので、気をつけましょう。
アベリアの詳しい剪定方法は、こちらの記事をご参照ください。
アベリアの増やし方
アベリアを増やす方法には、挿し木があります。葉が小さめで形がそろった部分の充実した(少し硬くなった)新梢を約10cmの長さで切り取って穂木にします。切り口を水に浸したら、土に挿して発根させます。
挿し木の適期は、6〜7月、または9月。その年に伸びた枝を採取し、挿し穂にすると、根付きやすいでしょう。
アベリアの挿し木の具体的な方法は、こちらの記事で解説しています。
Credit
監修 / 宮内泰之
みやうち・やすゆき/1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。
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