スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
3and gardenの記事
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宿根草・多年草

英国の園芸愛好家を虜にした“生ける宝石”オーリキュラとは? 系統別の特徴から、失敗しない夏越しのコツまで徹底解説
オーリキュラの基本情報 Peter Turner Photography/Shutterstock.com 植物名:オーリキュラ学名:Primula x pubescens英名:Auricula、bear's ears、mountain cowslip和名:アツバサクラソウ(厚葉桜草)その他の名前:オーリキュラ、プベスケンス科名:サクラソウ科属名:サクラソウ属(プリムラ属)原産地:ヨーロッパアルプス形態:多年草 オーリキュラはサクラソウ科サクラソウ属(プリムラ属)の園芸植物群です。もととなった原種のプリムラ・オーリキュラの原産地はヨーロッパのアルプスの高山で、暑さに弱い一方で寒さには強い性質を持っています。そのため、山野草として栽培し、暖地では庭に植えるよりは鉢栽培にして、季節や気候に応じて適した場所に移動しながら管理するのがよいでしょう。常緑性の多年草で、冬は茎葉を保ちつつ生育が止まり、翌春には新たに芽吹いて開花することを繰り返すライフサイクルをたどります。 オーリキュラの花や葉の特徴 Peter Turner Photography/Shutterstock.com 園芸分類:草花開花時期:3月下旬〜5月上旬草丈:10〜20cm耐寒性:強い耐暑性:弱い花色:黄、赤、オレンジ、茶色、褐色、グリーン、グレーなど オーリキュラの開花期は3月下旬〜5月上旬で、花色は黄、赤、オレンジ、茶色、褐色、グリーン、グレーなどです。草丈は10〜20cmほど。株全体や花に白い粉を帯びる種類も多くあります。春になると肉厚な丸みのある楕円形の葉が開き始め、開花後に葉を大きく広げ、株が充実します。 オーリキュラの歴史 klemen cerkovnik/Shutterstock.com オーリキュラは特定の特徴を持つ園芸品種群のことで、園芸の世界ではAuriculaとしてまとめられています。しかし、プリムラ・オーリキュラは、本来アルプスに自生する高山植物のことを指します。ここでは、オーリキュラの歴史を簡単に見てみましょう。 黄色い花を咲かせる原種のプリムラ・オーリキュラ。SusaZoom/Shutterstock.com 原種であるPrimula auricula(プリムラ・オーリキュラ)とP. hirsuta(プリムラ・ヒルスタ)が自然交雑して生まれたのがP. pubescens(プリムラ・プベスケンス)で、これを種まきして育てると変異株が出やすい特性があります。このことが園芸愛好家の目に留まって人気を博したことから、16世紀頃のイギリスで育種が進みました。どれだけ新しい品種が生まれようともプリムラ・プベスケンスであることに変わりはないのですが、一定の決まりごとにかなった交配種だけがオーリキュラに分類され、原種とは区別したオーリキュラ群が誕生しました。言い方を変えれば、愛好家の審美眼にかなった交配種だけがオーリキュラと名乗れる特別枠、というところです。16世紀に始まったオーリキュラ群の愛好は現在にも受け継がれ、多くのコレクターがいます。 Wiert nieuman/Shutterstock.com 上の写真はイギリスの庭に見られる、オーリキュラを観賞するオーリキュラ・シアター。「劇場」という名のとおり、花をより引き立たせる背景となるよう暗く塗られたものが多く、鏡やカーテンがつくことも。強い日差しや過湿を避け、風雨にあたって花の重要な要素である白粉が流れ落ちたりしないように保護する目的もあります。 白粉が美しいオーリキュラ。Andrew Fletcher/Shutterstock.com オーリキュラ「Auricula」と認められる主な約束ごと Alex Manders/Shutterstock.com 前項で一定の条件にかなった交配種だけがオーリキュラと認められると説明しましたが、その条件には以下のようなものがあります。 花が円形に近く、花弁が平らでウェーブがかからない 花弁に入る切れ込みが少ない 中心円に歪みがない 雌しべが小さく、雄しべの下に隠れる その他、細かな決まりごと これらに当てはまる個体のみが、オーリキュラと認定されます。 オーリキュラが日本に来たのは? Judith Andrews/Shutterstock.com オーリキュラが日本にもたらされたのは、江戸時代頃です。イギリスでは限られた個体しか選抜されないことが伝わったのか高貴のシンボルとしてもてはやされ、多くの庭園で育てられたほか、茶会などの催しで展示されることもあったそうです。現在、日本の園芸店やホームセンターではあまり販売されていませんが、インターネットでの通信販売ではさまざまな品種が取り扱われています。 オーリキュラの名前の由来や花言葉 Peter Turner Photography/Shutterstock.com オーリキュラという名前は、原種であるプリムラ・オーリキュラ(Primula auricula)に由来します。属名のPrimulaはラテン語で「最初の」を意味するprimusに由来し、早春、ほかの花に先駆けて咲くことから。またauriculaはラテン語で「小さな耳」「耳たぶ」を意味し、肉厚で丸みのある葉を小さなクマの耳に見立てたとされ、英名でも「bear's ears」と呼ばれることがあります。 プリムラ・オーリキュラの花言葉は「信頼」「永続的な愛」です。 オーリキュラ(プリムラ・オーリキュラ)の系統や用語 Anne Kramer/Shutterstock.com この章では、オーリキュラの5系統についてご紹介します。 ショウ系 エッジショウオーリキュラ(グリーンエッジ)の‘ロベルト’。 Andrew Fletcher/Shutterstock.com オーリキュラの代表的な系統で、花の中心に白い粉が吹き、円環があるのが特徴です。さらに花弁の色で「セルフ」「エッジ」「ファンシー」など大きく3タイプに分類されます。ほかの系統よりも栽培難易度は高めです。 「ショウセルフ」は花弁が単色で、中心円に白い粉がはっきり現れるのが特徴。ビビッドな花色が多く、イエローショウセルフ、レッドショウセルフ、ブルーショウセルフ、ダークショウセルフ、その他に分類されています。 「エッジ」は18世紀に登場した貴重種で、黒系の花弁に縁取りが入るのが特徴。縁取りのタイプには、白い粉がないグリーンエッジ、白い粉があるグレーエッジやホワイトエッジがあります。 「ファンシー」はショウとエッジの中間タイプで、花弁は黄色か赤で、グリーンの縁取りが入ります。 アルパイン系 アルパインオーリキュラ(ゴールドセンタード)の‘ドラゴンズホード’ 。Andrew Fletcher/Shutterstock.com 比較的強健で育てやすく、愛好家に人気の高い系統で、葉や花、中心円に白い粉が吹かないのが見分けるポイント。「ライトセンタード」と「ゴールドセンタード」の2タイプがあります。 「ライトセンタード」の花色は青紫やピンクで、花弁の下から先端にかけてグラデーションになり、中心円は白〜クリーム色です。「ゴールドセンタード」は花色が赤、黄色、オレンジ、茶などで、花弁の下から先端にかけてグラデーションが入り、中心円は黄色です。 ストライプ系 ストライプ系の‘マーリンストライプ’。花弁がダブルになる珍しい品種。Anne Kramer/Shutterstock.com 花弁に絞りやストライプが入り、花弁の中心に白い粉がつきます。個体によって絞りやストライプの入り方が多様なのも魅力です。 ダブル系 ダブル系の‘アイスキャップ’。Anne Kramer/Shutterstock.com 八重咲きの系統です。花色が多数揃い、多数重ねる花弁にウェーブが入る「スタンダードダブル」と、花弁の枚数がやや少なめの「クラシカルダブル」があります。 ボーダー系 Galina Bolshakova 69/Shutterstock.com オーリキュラの条件を満たさない品種で、花の個性が多様。原種に近いタイプが多く、比較的育てやすいのが特徴です。 オーリキュラの栽培12カ月カレンダー 開花時期:3月下旬〜5月上旬植え付け・植え替え:4月下旬〜5月中旬、10月肥料:3月下旬〜6月、10~11月種まき:5月下旬〜7月上旬、1月下旬〜3月下旬 オーリキュラの栽培環境 Judith Andrews/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】開花期は明るい環境を好みますが、暑さが苦手で強い直射日光により傷むことがあります。開花後は30%ほど遮光するネットを張っておくと、葉の生育がよくなります。また、暑さと強い日差しを苦手とするので梅雨明け後からは50〜70%ほど遮光するネットを張って少しでも涼しい環境にするとよいでしょう。10月頃、涼しくなってきたら30%ほど遮光するネットに切り替えます。ただし、あまりに日当たりが悪いとヒョロヒョロと茎葉が間のびして軟弱な株になったり、花つきが悪くなったりするので注意してください。 【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。 【置き場所】多湿を嫌うためできるだけ水はけのよい環境で育て、梅雨時や秋の長雨時などは、雨の当たらない軒下などで管理するとよいでしょう。また、植え替えたばかりの株なども、凍結を避けるため冬は軒下などに移動すると安心です。 耐寒性・耐暑性 暑さに弱いため、夏は涼しい日陰などで管理します。寒さには強いので戸外で越年できますが、常に冷たい風にさらされ、凍結を繰り返すと葉が傷むことがあるので、弱った株や植え替えたばかりの株は軒下などに移動しておくとよいでしょう。 オーリキュラ(プリムラ・オーリキュラ)の育て方のポイント オーリキュラは、長雨や暑さ、真夏の直射日光を嫌います。そのため基本的には鉢栽培にして、季節に応じて適した場所に移動しながら管理するとよいでしよう。 用土 blueeyes/Shutterstock.com 市販の山野草用培養土を利用すると手軽です。自身で配合する場合は、鹿沼土5、山砂3、軽石2ほどの割合でブレンドするとよいでしょう。 水やり wavebreakmedia/Shutterstock.com 日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。 夏場は特に、水切れと蒸れに注意が必要。また、気温の高い日中に水やりすると、太陽の熱によってお湯のように熱くなってしまうことがあり、株が著しく弱ってしまいます。真夏の水やりは、気温の低い朝か夕方に行いましょう。一方で、真冬は十分に気温が上がった日中に水やりをすませておくことがポイントです。 肥料 Sarycheva Olesia/Shutterstock.com 植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。 越年後は、3月下旬〜6月に液肥を10日〜2週間を目安に与えます。真夏は肥料を切っておき、10〜11月にリン酸分が多めの液肥を2週間に1度を目安に与えましょう。 植え付け・植え替え Nataly Studio/Shutterstock.com オーリキュラの植え付け適期は4〜5月か10月頃です。 5〜6号鉢を準備します。水はけのよい環境を好むので、プラスチック製や釉薬が厚く塗られた陶器鉢よりは、素焼き駄温鉢など通気性のよい素材を選ぶとよいでしょう。 用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから山野草用の培養土を半分くらいまで入れましょう。オーリキュラの苗をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めます。根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずして小さくし、新しい培養土を使って植え直しましょう。 注意する病害虫 POOJA SAINI/Shutterstock.com 【病気】 オーリキュラに発生しやすい病気は、軟腐病やウイルス病などです。 軟腐病は細菌性の病気で、高温時に発生しやすくなります。特に梅雨明けから真夏が要注意。 芽や根、地際付近が腐って悪臭を放つので、発症したのを見つけたら、周囲に蔓延しないようにただちに抜き取り、周囲の土ごと処分してください。予防としては、連作(同じ科に属する植物を同じ場所に植え続けること)を避け、水はけや風通しをよくして、常にジメジメとした環境にしないこと。また、害虫に食害されて傷ついた部分から病原菌が侵入しやすくなるので、害虫からしっかり守ることもポイントになります。 ウイルス病はウイルス性の病気で、アブラムシやアザミウマ、コナジラミなどの虫が媒介します。したがって、発症しやすい時期はアブラムシなどの活動が活発な春から秋にかけて。主に花や葉にモザイク模様が現れ、症状が進むとウイルスの種類によっては葉などが縮れてきたり、湾曲して変形したりし、株の生育が著しく悪くなります。治療効果のある薬剤はないので、発症したら抜き取って土ごと処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。アブラムシ対策をしておくことが、発生を抑制することにつながります。 【害虫】 オーリキュラに発生しやすい害虫は、ナメクジやヨトウムシなどです。 ナメクジは花やつぼみ、新芽、新葉などを食害します。体長は40〜50㎜で、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に粘液の痕がついていたら、ナメクジの疑いがあるので夜にパトロールして捕殺してください。難しい場合は、ナメクジ用の駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。 ヨトウムシは蛾の幼虫で、漢字で「夜盗虫」と書き、主に夜に姿を現して茎葉を食害します。大きくなった幼虫は食欲が旺盛で、一晩に株を丸裸にしてしまうほどです。葉から食害し始めるので、異変を察したら幼虫がまだ若いうちに駆除しましょう。発生しやすい時期は4〜6月、9〜10月です。食害の痕が認められたら夜にパトロールして補殺するか、適用する薬剤を散布して防除します。 日常のお手入れ Early Spring/Shutterstock.com 【花がら摘み】 オーリキュラは次々に花が咲くので、終わった花は摘み取りましょう。傷んだ花がらをまめに摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。種子を採取したい場合は、開花が終わりそうな頃に花がら摘みをやめて、種子をつけさせましょう。 【枯れ葉の除去】 枯れ葉をそのままにしておくと病害虫を招く原因となるので、見つけたらこまめに取り除き、株まわりを清潔に保ちましょう。 夏越し Andrew Fletcher/Shutterstock.com オーリキュラは高温多湿や強い直射日光を苦手とし、夏越しが管理のポイントとなります。夏はできるだけ涼しく風通しがよい、明るい日陰で育てましょう。遮光ネットを用いて、開花後は30%ほど遮光して育て、梅雨明け後からは50〜70%ほど遮光して涼しく管理します。涼しくなってきた10月頃から再び30%ほど遮光するネットに切り替えるとよいでしょう。 増やし方 オーリキュラは、株分けと種まきで増やすことができます。 【株分け】 オーリキュラの株分け適期は4〜5月か10月頃です。大株に育っていたら、株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。あまり強引に引きちぎったり、小分けにしたりすると、株が弱ることがあるので注意してください。 【種まき】 オーリキュラの種まきはあまり一般的ではありませんが、品種によっては開花後にできた種子を採取して種まきで増やせます。ただし、必ずしも親と同じ花が咲くとは限りません。 種子を採取したい場合、開花期の終わりが見えてきたら花がら摘みをせずに、そのままにしておきます。実がついて茶色く変色したら完熟したタイミングなので採取し、中から種子を取り出しましょう。採種した直後(5月下旬〜7月上旬)か、密閉できる袋に入れて冷暗所で保存しておいて1月下旬〜3月下旬に種まきします。まず、種まき用のセルトレイを準備してください。トレイに市販の草花用培養土を入れて十分に湿らせ、1穴当たり数粒ずつ播きます。オーリキュラは発芽に光を必要とする好光性種子のため、土をかぶせる必要はありません。種が細かいので、浅く水を張った容器にセルトレイを置いて鉢底から給水します。発芽までは涼しい場所に置き、乾燥しないように適度な水管理をしてください。 双葉が出揃ったら、弱々しい苗を間引いて1本立ちにしましょう。残す苗の根を傷めないように、株元を押さえて抜き取ってください。本葉が4〜5枚出始めたら、セルトレイから鉢上げするタイミングです。3号の黒ポットに草花用の培養土を入れ、セルトレイから苗を抜き取って根鉢を崩さずにそのまま植え付けます。日当たり、風通しのよい場所で育苗し、根がまわるほどに十分育ったら、5〜6号鉢に定植します。 英国の伝統を感じさせる造形美が魅力! オーリキュラを育ててみよう AngieC333/Shutterstock.com 独特の造形美を感じさせるオーリキュラは、イギリスの美意識そのものといえるほど優美な花姿が魅力です。もともとは高山植物なので夏越しが管理のポイントとなりますが、手間を惜しまずに育てた株が開花した際の喜びはひとしお。ぜひ栽培にチャレンジしてみてください。
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一年草

庭が甘い香りの花の絨毯に? こぼれ種でも増える「スイートアリッサム」を長く咲かせる育て方
スイートアリッサムの基本情報 Thirteen/Shutterstock.com 植物名:スイートアリッサム学名:Lobularia maritima英名:sweet alyssum和名:ニワナズナ(庭薺)その他の名前:ニオイナズナ(匂薺)科名:アブラナ科属名:ニワナズナ属(ロブラリア属)原産地:西アジア~地中海北岸形態:一年草、多年草 可憐な小さい花を株いっぱいに咲かせるスイートアリッサム。地中海沿岸を中心とするヨーロッパ南部原産のアブラナ科の常緑多年草です。高温多湿に弱いため、日本では一年草として扱われてきましたが、ヨーロッパでは古くからの園芸品種が野生化していることもあるほど、丈夫な植物。近年では日本の夏にも耐え、花つきもよい「スーパーアリッサム」と呼ばれる園芸品種も多く出回っています。白花のイメージが強いですが、ピンクや紫、オレンジ、クリーム系など、色のバリエーションも豊富。10〜15cm程度という草丈の低さを生かして、グラウンドカバーはもちろん、花壇の縁取りやロックガーデン、寄せ植えやハンギングバスケットなど、さまざまな楽しみ方ができます。また、花の甘い香りに誘われて蝶や蜂がやってくる植物です。 アリッサムとスイートアリッサムは違う花! mssy/Shutterstock.com スイートアリッサムは、ときには“アリッサム”の名で売られていることもありますが、学名での“Alyssum”は異なる植物。スイートアリッサムの学名はLobulariamaritimaで、アブラナ科のニオイナズナ属に分類されます。一方、本来の“Alyssum”も同じアブラナ科で、鮮やかな黄色の花でロックガーデンを彩るA. montanumや、白やピンクの花を咲かせるA. spinosumなどがあります。また、菜の花を小さくしたような見た目のAurinia saxatilisが「宿根アリッサム」の名前で出回ることがありますが、スイートアリッサムに比べると、その流通量は少ないようです。 欧米ではポピュラーなロックガーデン植物のAlyssum montanum。C. Nass/Shutterstock.com こちらもロックガーデン向き、Alyssum spinosum。hWeiss/Shutterstock.com 「宿根アリッサム」の名で流通するAurinia saxatilis。Animaflora PicsStock/Shutterstock.com スイートアリッサムの花や葉の特徴 Dina Rogatnykh/Shutterstock.com 園芸分類:草花開花時期:2月下旬~6月上旬(一年草)、9月下旬~12月上旬(一年草)、周年(多年草)草丈:10~15cm(一年草)、20~30cm(多年草)耐寒性:弱い(一年草)、普通(多年草)耐暑性:弱い(一年草)、普通(多年草)花色:ピンク、赤、白、紫、オレンジ(一年草)/白、紫(多年草) スイートアリッサムの花は、直径5mmほどの小さな四弁花が集まるようにして咲いています。花色は白や紫、ピンクなどさまざまで、一年草、多年草でも違いがあります。 葉はほっそりとしており、先に向かって細くなる披針形です。 スイートアリッサムの名前の由来と花言葉 suprabhat/Shutterstock.com スイートアリッサムは、ほんのりと甘い香りがすることから、混同されがちなアリッサムと組み合わせてスイート(Sweet)アリッサム(Alyssum)と呼ばれています。 なおアリッサムは古来、狂犬病の治療に使われていたことから、ギリシャ語で「a(否定語)」と「lyssum(狂犬病)」を組み合わせてアリッサム(Alyssum)となりました。 アリッサムの花言葉は花色によって異なります。たとえば白は「飛躍」「優美」、紫やオレンジは「美しさに優る価値」です。 スイートアリッサムの代表的な種類 ‘スノークリスタル’ ESB Essentials/Shutterstock.com 他種に比べ株が大きくなり、花も大輪で華やか。多花性で、純白の花が株を埋めるように咲く。ほのかな香りも魅力。 ‘ロイヤルカーペット’ Galina Gutarin/Shutterstock.com 欧米ではとてもポピュラーな紫系の代表品種。白とラベンダー色の小花が混じり合うように咲き、可憐な印象。 ‘イースターボネット’ Belikart /Shutterstock.com 白、クリーム、ピンク、紅、紫と花色が豊富な品種。秋播き一年草として、色混合の“ミックス種子"が出回ることも。 ‘ワンダーランド’ Irenestev/Shutterstock.com ピンクや白、バイオレットなど豊富な花色が特徴の品種。スイートアリッサムの中では草丈が低めで、花も小ぶり。横に広がるように成長するので、花壇を縁どったりコンテナに植えたりするとよく映えます。 ‘アルール’ 白、黄色、ピンク、紫などさまざまな花色がある品種。花や草丈がバランスよく成長する、コンパクトなスイートアリッサム、小さめの鉢植えでも育てられるのがポイント。 ‘クリアクリスタル’ スイートアリッサムの中では大きな花が咲く品種。勢いよく成長し、地植えでもたくましく育つ丈夫さが特徴。花色は白~紫で、開花期は華やかで上品な花を楽しめます。 ‘アフロディテ アプリコット’ アプリコット色の優しい花色が特徴の品種。一年草で、基本的には種から育てる実生タイプ。やや乾燥ぎみに管理するのが、より大きく育てるためのポイント。 スーパーアリッサム ‘スノープリンセス’ JollySam/Shutterstock.com 栄養繁殖で増やされたスーパーアリッサムの品種。耐暑性、耐病性に優れ、夏越しさせやすく大株に育てることも可能。 スーパーアリッサム ‘フロスティナイト’ 葉っぱの縁にクリーム色の斑が入る、スーパーアリッサムの品種。淡い色の葉に白の小花の組み合わせが、明るく涼やかなイメージ。 スイートアリッサムの栽培12カ月カレンダー 開花時期:2月下旬~6月上旬(一年草)、9月下旬~12月上旬(一年草)、 周年(多年草)植え付け・植え替え適期:2月下旬〜3月(多年草)、9月下旬~11月上旬(多年草)肥料:2月下旬〜6月上旬、9月下旬~11月上旬種まき:9月中旬~10月上旬 スイートアリッサムの栽培環境 Lana B/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 スイートアリッサムは、日当たりのよい場所を好む植物です。よく日が当たる場所での管理が基本ですが、夏の強い日差しや西日は避けるようにしましょう。 置き場所は湿度が低く乾燥ぎみの環境が適しています。風通しがよく、水はけのよい場所がおすすめです。 耐寒性・耐暑性 スイートアリッサムの耐寒性・耐暑性は、一年草タイプは弱く、多年草タイプは普通程度です。高温多湿を苦手とするため、どちらかといえば耐暑性のほうが弱いといえるでしょう。 多年草の場合は、後ほど紹介する夏越し・冬越し対策をすることで、元気な状態を保てます。 スイートアリッサムの育て方のポイント Tatyana Mi/Shutterstock.com 植え付けのタイミングと、高温多湿の夏に注意すれば、丈夫で育てやすいスイートアリッサム。ここからは、植え付け方法のほか、水やりや肥料、病害虫対策など、栽培のポイントを伝授します。 用土 スイートアリッサムの用土づくりは水はけのよさがポイントです。水はけがよければ土質にそこまでこだわらなくても問題ありません。 ただし、酸性の土壌には、1mfあたり70g程度の苦土石灰を混ぜ込んでおきましょう。腐葉土も入れておくと、よく根を張ります。 鉢植えの場合は赤玉土と腐葉土、川砂を6:3:1で配合しておきます。 水やり 砂礫地に自生する植物だけに、やや乾いた状態を好むスイートアリッサム。地植えの場合は、水やりの必要はほとんどなく、雨が少ない季節のみ“気づいたらやる”程度がよいでしょう。鉢植えの場合も、鉢土の表面が完全に乾くのを確認してから水やりを。鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与え、次は乾燥するまで与えないのがコツです。とくに梅雨から夏にかけては、根腐れを起こしやすいので、水やりは控えめに。 肥料 どちらかといえば多肥を好むので、植え付けの際に元肥として緩効性の固形肥料を用土に混ぜておきましょう。さらに、開花期にはリン酸やカリの配合が高めの液体肥料を、1週間から10日に1度の目安で与えると、花が長く楽しめます。 注意する病害虫 アブラナ科の植物を食害するコナガの幼虫と成虫。Tomasz Klejdysz/Shutterstock.com 春から秋口はアブラムシやアオムシ類がつきやすいので、オルトラン粒剤などを月2回程度、表土にまいて予防しましょう。アブラナ科につきやすいコナガの幼虫も葉を食害するので、発生初期に薬剤で対処します。 また湿度が高い季節には、白いカビが生えて茎が腐る菌核病も発生しやすくなります。下葉が黄変して株の勢いがなくなってきたら、菌核病の疑いが。放っておくと全体に広がり、やがて枯死してしまいます。病斑部を切り取り、ベンレート水和剤などで防除を。多湿の環境に発生しやすいので、早めに切り戻すなど、風通しをよくしておくと予防になります。 スイートアリッサムの詳しい育て方 WDnet Creation/Shutterstock.com 苗の選び方 スイートアリッサムの苗を選ぶときは、葉や茎、根の状態をよく観察しましょう。葉に穴や変色がなく鮮やかな緑色であることや、茎が太くしっかりとしていること、根が黒や茶に変色しておらず白色であることが、主なポイントです。 植え付け・植え替え Satyrenko/Shutterstock.com 植え付けの適期は春と秋、霜の心配がなくなる3~4月、または暑さが落ち着く10月以降~11月中旬ぐらいまで可能です。 枝葉を伸ばして広がるので、株と株の間は20cm以上あけるように。根が弱いので、ポットから抜くときに根鉢を崩さないように細心の注意を。寄せ植えなどの場合も、あらかじめ植える場所を決めておき、設置後はなるべく動かさないようにしましょう。乾燥に強い植物ですが、根が定着するまではしっかりと水やりをします。 通常は一年草扱いのため、植え替えの必要はありませんが、スーパーアリッサムのように夏越しをさせやすい品種の場合は、下葉が枯れて草姿が乱れてきたら根詰まりのサイン。植え替えを行います。地上部を剪定して半分程度のボリュームに抑えたら、一回り大きな鉢に。根が傷むのを嫌うので、根鉢を崩さないように注意しましょう。 日常の手入れ スイートアリッサムの開花期のお手入れで重要なのは、花がら摘みです。 咲き終えた部分を剪定することで栄養が偏らず、株の元気が保たれます。また、花がら摘みをすることで新しい芽がつきやすく、次の花が早く楽しめます。風通しのよい状態を保てるので、スイートアリッサムが苦手な多湿を避けられるのもメリットです。 剪定・切り戻し 開花期の剪定は、先端の花房が咲き終えた茎を選び、脇芽の出ている節の上で切り戻せばOK。花が満開になったときに葉が覆われすぎず、過湿による葉の変色などを防げます。 さらに、夏越し前にはより強めの切り戻しを。スイートアリッサムの苦手な高温多湿を防ぎ、夏越しさせやすい状態に整えられます。 開花期が終わり、草姿が乱れてきたら、草丈の1/2を目安に切り詰めましょう。そのままにしておくと茎が徒長して、バランスの悪い見た目になってしまいます。 “大株に仕立てて何年も楽しむ”ことができるスーパーアリッサムはもちろん、従来の一年草扱いの品種も、暑くなる前に剪定を行うことで、秋以降もう一度花を楽しむことができます。 適切なタイミングで剪定を行い、スイートアリッサムを長持ちさせましょう。 夏越し・冬越し スイートアリッサムは高温多湿が苦手です。多年草の場合は特に、開花期が終わったら、涼しくやや日陰になる場所に移動しましょう。前項で解説したように、夏越し前には強めの剪定をしておきます。 冬は弱ってしまわないように、寒風や霜に当てないことが大切です。マルチングなどの防霜対策を行い、気温が氷点下になる場合は寒さをしのげる場所に移動しましょう。 増やし方 Ken Schulze /Shutterstock.com 【種まき】 日本では一年草として扱われることの多いスイートアリッサム。一般的な増やし方は「種まき」です。発芽適温は15~20℃、寒くなる前にしっかりと根を生やしておきたいので、9~10月中旬頃までが播種適期とされています。直根性で細根が張りにくく、移植を嫌うので、育苗ポットに直接播くのがベター。 ポットに種まき用土を詰めたら、事前に吸水させておきます。種子はとても小さいので、2つ折りにした紙に乗せ、粉をまくように振りかけると、一カ所にかたまらずに全面に播くことができます。風で飛んでしまわないように、室内や風よけのある場所で行いましょう。 種まきしたポットは風通しのよい場所に置き、水やりを続けますが、種子が流れてしまわないように霧吹きなどで。1週間程度で発芽してくるので、葉と葉が触れ合うようになったら、間引きを行い、最終的に数株を残して育てます。 発芽後は日当たりのよい場所に移して、月1回程度、薄めの液肥を与えます。草丈が5cm程度になったら、定植が可能ですが、寒さにあたると枯れてしまうので、植え付けは3月以降がよいでしょう。なお、春播きも可能ですが、根張りが遅くなるため、秋播きに比べると開花期のボリューム感は劣ります。 【株分け・挿し芽】 本来、多年性植物であるスイートアリッサムは、株分けや挿し芽といった栄養繁殖で増やすこともできます。 根が弱いので、根土部分を分けての株分けではなく、茎を切って挿す「挿し芽」がおすすめです。 作業の適期は5月もしくは9月。生育の旺盛な茎を選び、5cm程度の長さに揃えて水に挿しておきます。用土は小粒の赤玉かバーミキュライトなど、肥料分を含まない種まきや挿し木専用の土も販売されています。ポットに詰めて十分に吸水させたら準備完了。数本をひとまとめにして挿しと、ボリュームのある株に育ちます。 明るい日陰で風通しのよい場所に置き、水を切らさないように管理しましょう。とはいえ、発根しやすい植物ではないので、成功率はあまり高くないでしょう。 スイートアリッサムが枯れる原因 alybaba/Shutterstock.com スイートアリッサムが枯れる原因としては、寒さや高温多湿などの気候、過湿による根腐れなどがあります。主な2つの原因について解説します。 気温 スイートアリッサムは、気温が原因で枯れることがあります。暑さや湿気に特に弱いため、あまりに気温が高い環境だと、多年草タイプであっても弱ってしまうでしょう。夏の直射日光や西日が当たらない場所での管理がおすすめです。 日本では一年草タイプのスイートアリッサムが多く出回っていますが、基本的に夏越しはできないと考えましょう。 蒸れ・過湿 スイートアリッサムは、蒸れや多湿が原因で枯れることもあります。過湿の環境下では根腐れが発生しやすく、病害虫がつきやすいため注意しましょう。 梅雨~夏は高温多湿になるため、特に弱りやすい季節です。切り戻しを行ったり、蒸れにくい環境に移動することで、多湿をしのぎましょう。切り戻しを行い、株の風通しのよい状態にすることも大切です。 スイートアリッサムを育てて庭を華やかに彩ろう! Layue/Shutterstock.com 真夏の高温期を除けば、3月から11月中頃までと、とても長い期間楽しめるスイートアリッサム。播種から育てた苗で、花壇を“お花畑”にしてみるのも素敵です。草丈が低く、大きく広がって花を咲かせる草姿は、プランターや吊り鉢、寄せ植えにしても映えます。好みや用途に応じて、お気に入りの品種を育ててみてはいかがでしょう。
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花と緑

「都道府県の花」3択クイズ! 宮城県の花は次のうちどれ?【Let’s Try! 植物クイズ】Vol.35
「宮城県の花」は次の3つのどれ? Photo_J/Shutterstock.com 宮城県には、伊達氏によって城下町として栄えた仙台を中心に歴史に触れられるスポットが多くあり、また日本三景の1つに数えられる松島や、紅葉に彩られる姿が美しい鳴子峡、樹氷や御釜で有名な蔵王など、雄大な自然美が魅力の観光地もたくさんあります。海・山・市街地から温泉やスポーツまで、さまざまなレジャーが楽しめるとあって、旅行先としても人気です。そんな宮城県を象徴する「木」はケヤキ、「鳥」はガン、「獣」はシカ。それでは、宮城県の花は、次のA~Cのどれでしょう? A センダイハギ Flower_Garden/Shutterstock.com B ミヤギノハギ tamu1500/Shutterstock.com C オミナエシ Rossi0917/Shutterstock.com ヒント 日本特産で、秋の七草の1つ。各地で観賞用として愛され、歌にも多く詠まれてきたほか、家畜の飼料にも利用されてきた身近な花です。細い枝に蝶のような形の小さな花がたくさん咲きます。 正解は… ↓ ↓ ↓ ↓ B ミヤギノハギ tamu1500/Shutterstock.com ミヤギノハギ(ハギ)の基本データ 学名:Lespedeza thunbergii科名:マメ科属名:ハギ属原産地:日本和名:ハギ(萩)別名:ミヤギノハギ(宮城野萩)英名:Thunberg's bushclover、Thunberg's lespedeza、shrub lespedeza、bush cloverなど開花期:7~9月花色:赤紫形態:落葉性低木樹高:1.5~2m 秋の七草の1つに数えられるハギ。万葉集では、花の歌の中でハギに関するものが一番多いといわれるなど、日本で古くから愛されてきた花です。ハギという名前はじつは総称で、どれか1種の植物を指す名称ではなく、ハギ属の仲間にはハギと呼ばれる種類がいくつかあります。そのうちの1つがこのミヤギノハギ。ハギと呼ばれる植物の中では大型で、花も大きくて花付きがよく、色鮮やかなので、公園や庭園などの植栽にもよく利用されます。園芸品種として改良されたものだと考えられていますが、広く野生化している身近な花木です。ミヤギノハギという名前の由来は諸説あり、仙台市の東部にあったハギの名所「宮城野」を原産とする説や、花の美しさを表す美称として宮城野と付けたという説などがあります。宮城県では昭和30年に県の花として選定されました。 tamu1500/Shutterstock.com ミヤギノハギはマメ科ハギ属の落葉性低木。高さ2mほどになり、しなやかな枝は弓なりに下垂します。長い花序にマメ科らしい蝶形花がたくさん咲き、風に揺れる姿は風情があります。花は1.5cmほどで紅紫色。白い花が咲く白花品種もあります。葉は広楕円形の小葉3枚が1組になる3出複葉。葉裏は産毛が生えて白色を帯びます。 白花のハギ。tamu1500/Shutterstock.com 水はけ・日当たりがよい環境であれば、土質を選ばずに栽培できます。ハギの根には根粒菌が共生しているため、やせ地にも適応してよく育ちます。日陰でも育ちますが、花付きが悪くなるので注意しましょう。放任しても毎年開花しますが、生育旺盛で大きくなりやすいので、花が終わった後に株元から切り戻すとコンパクトに管理できます。春には新芽が出てまた茂ります。株が込み合ってきたら、休眠中に株分けをするとよいでしょう。 tamu1500/Shutterstock.com クイズ一覧はこちら!
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寄せ植え・花壇

広い庭がなくても、春はこんなに可愛い。3つのリースで描く、早春の庭
庭を“一周”で描くという発想 リースの器には、始まりも終わりもありません。視線は自然に円を巡り、花の表情を一周しながら味わいます。 その構図は、どこか庭や花壇を上から眺めたときの景色に似ています。円の中に季節を閉じ込めることで、小さな空間でも“ひとつの庭”が完成するのです。 今回紹介するのは、ハンギングバスケットの第一人者である武島由美子さんの作品。リースを単なる飾りではなく、「庭を描く器」として捉える視点が印象的。 「円というかたちは、それだけで物語をつくる力を持っています。小さくても、立体的で、視線が自然とぐるりと巡るのがポイント」と武島さん。 リースの器が、初心者でもうまくいく3つの理由 ① 360度均等に植える=考えすぎなくていい 通常の寄せ植えや花壇は、横や奥行きに広がりがあります。正面を決め、高低差を考え、前後左右のバランスをとる――意外と頭を使うものです。 バランスを配慮する寄せ植え。 一方、リースの器は面積が限られているので、基本は一列ぐるっと均等に、同じ調子で回していけばOK。それだけで視線が自然に一周するので、構図で悩むことがありません。 ぐるっと均等にが基本のリースの寄せ植え。 ② 円形は「まとまり」を自動で作る 円のフレームが、柔らかさや安定感、まとまりを自動的に生み出してくれます。多少花の向きがバラついても、問題なし。形そのものがデザインを助けてくれるので、初心者でも安心して楽しく作れます。 ③ 早春の花と相性がいい 早春の花は草丈が低く、丸みのあるものが多い季節。リースの形と相性がよく、“ちゃんと可愛い”仕上がりになりやすいのです。 3つのリースが描く、3つの「早春の庭」 武島さんに3つの「早春の庭リース」を解説していただきます。 ① 花束のように、ぎゅっと咲く「春の入口」のリース 春が来たことが一瞬で伝わる、やわらかな花色をセレクトしました。玄関先やベランダで、椅子に立てかけておけば目線の高さで花束のような華やか春が迎えられますよ。 主役はプリムラ‘エムズセレクション マビリア’。淡いピンクとイエローのグラデーションと、バラのような花形が花束のような存在感を放ちます。同系色のフリル咲きビオラ‘アイクルール’を傍に添えて、やさしい変化を加えました。 花を引き立てるのは、ピンクパープルの斑入り葉のキンギョソウ、クリーム色の斑入り葉のタイム、そしてワイヤープランツ。小葉のリーフの色と質感を重ねることで、甘さの中に奥行きを生み出しています。 <植え方のポイント> 同じ草丈のものを揃えて、規則的に配置するのがリースの寄せ植えの基本です。 まず主役のプリムラを3株、リースの中で三角形を描くように配置。その間をビオラ、タイム、キンギョソウの順にリズムよくつないでいきます。 小さく株分けしたワイヤープランツを鉢ふちに植え込み、ふんわりと動きをプラス。タイムはやや内側寄りに、ワイヤープランツは外側寄りに配置すると、器の輪郭がやわらぎ、ナチュラルでやさしい雰囲気になります。 ② いろいろな春を重ねる「ガーデンリース」 こちらは、ほぼ一株ずつ異なる草花を組み合わせたリース。花壇の一角をそのまま切り取ったような、にぎやかで自然な春の景色を目指しました。 主役をひとつに絞らず、プリムラ・マラコイデス、パンジー、ハナカンザシ、イベリス、プリムラ・ジュリアン、クリスマスローズ、オキナグサ、ムスカリ、黄花アリッサムと、咲き方も高さも異なる花を重ねています。 規則的に並べる①とは違い、ここでは“庭のリズム”を取り入れます。リースはどこから見ても楽しめますが、ほんの少しだけ高さのリズムを意識すると、より庭らしい奥行きが生まれます。 背の高いプリムラ・マラコイデスやクリスマスローズは奥寄りに。ボリュームのあるハナカンザシやイベリスはサイドへ。ムスカリやオキナグサは手前に。 こうして高低差をつくることで、小さな器の中に奥行きが生まれます。 これは壁に掛けるリースではなく、置き型を前提にした構成。上からの視線と横からの視線、どちらも楽しめるよう、高さの違いをあえて生かしています。 <植え方のポイント> リースは器がデザインを助けてくれますが、庭のルールを少し取り入れてみるとグッと洗練されます。このリースのように異なる草花を使う場合は、「高さ」と「株の密度」を意識して、三角形の立体感が出るようにすると、どの花の顔もきれいに見えます。 また、このリースでの配置は、「均等」ではなく「リズム」がポイント。 密な部分(プリムラ・マラコイデスやハナカンザシのボリュームゾーン) 少し抜ける部分(ムスカリやオキナグサのスッキリゾーン) これがあると庭の一画を凝縮したような自然な景色が生まれます。 ③ 余白が春を語る、森の林床のリース 早春の森の林床をイメージしたリースです。 春が訪れたばかりの森は、まだ地面が見えていて、花は“点”で咲いている景色です。 だから、このリースではぎゅっと咲かせるのでもなく、多彩な花を重ねるのでもなく、苔の緑をベースに、ムスカリやスノードロップ、ヒナソウをぽつり、ぽつりと配置。すべてを埋め尽くさず、あえて余白を残すことで、静かな春の空気感をつくっています。 中央に置いた鳥の巣は、実際に庭に落ちていたヒヨドリの巣。自然の中にあった素材を合わせてみたら、より森っぽい雰囲気になりました。小枝などでも同じ雰囲気が再現できそうです。 <植え方のポイント> このリースで大切なのは、「詰めない勇気」。 花は均等に散らすのではなく、少し偏りをつくる 苔や土の面をあえて見せる 草丈は低めを基本にする 春の林床は、まだ隙間の多い世界。その“未完成さ”が美しさ。 ぐるりと一周すべてを華やかにしなくてもいい。ぽつぽつと咲く花の間に、空気が流れるように配置するのがコツです。 リースの器での基本の作り方ポイント ① まずは「土台づくり」が8割 ワイヤーの場合は、麻布を敷き詰めた上にビニールを敷くとナチュラル。 リースの器はバスケットやワイヤー素材のものが多く、あらかじめ土こぼれしないようにビニールがセットされているものが多いです。もしビニールがセットされてない場合は、ご自身でビニールを器に敷き詰めて、土こぼれしないようにしましょう。ビニールには水抜け用の穴をあけるのも忘れずに。 花苗用の培養土を器の1/3〜半分の高さまで入れ、苗を植え込んだらしっかり間に土を詰めていきます。その上から水苔をしっかり敷くと、土こぼれがしにくくなります。リースは縦に使うこともあるので、土がゆるいと崩れやすくなります。 ②水やりは“たっぷり・しっかり” リースは土量が少ないので乾きやすいです。 表面が乾いたら 底から水が流れるまで 全体に行き渡らせる のが基本。壁掛けにする場合は、水やり後すぐにではなく、水が染み渡ってしばらく経ってから掛けます。 リースの器の失敗しないコツQ&A Q1. 色は何色まで? A. 3色程度にまとめると失敗しにくいです。同系色+差し色1色が基本。 Q2. 壁掛けと置き型、初心者はどちらがいい? A. まずは置き型がおすすめ。水やりや管理がしやすく、失敗しにくいです。 Q3. 水やりは難しい? A. 土量が少ないので乾きやすいのがリースの特徴。表面が乾いたら、全体にしっかり水を行き渡らせましょう。ハス口のあるジョウロで柔らかく水やりをすると、土こぼれがしにくいです。 Q4. 肥料はどうする? A. 植え込む際の土に、元肥を規定量混ぜて植え込みます。暖かくなってくると、株が生育してくるので、定期的に液肥を与えると花が長もちします。 Q5. うまくまとまらなかったら? A. 大丈夫です。円の形が自然にまとめてくれます。少し引いて全体を見ると、意外と“ちゃんと可愛い”はずですよ。 庭は、広さではなく“描き方” 庭というと、広いスペースや立派な花壇を思い浮かべがちです。でも本当は、庭は広さで決まるものではありません。 円という小さな器の中にも、規則的に咲く春も、にぎやかな春も、静かな林床の春も描くことができます。 リースは、花を飾るものではなく、“庭を描くキャンバス”なのかもしれません。 広い庭がなくても大丈夫。今年は、リースという円の中に、あなたの春を描いてみませんか。
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樹木

【人気の庭木】ハイノキの育て方|枯らさないコツは? ローメンテナンスで爽やかな常緑シンボルツリーを徹底解説
ハイノキの基本情報 植物名:ハイノキ学名:Symplocos myrtacea英名:Japanese sapphireberry和名:ハイノキ(灰の木)その他の名前:イノコシバ科名:ハイノキ科属名:ハイノキ属原産地:日本形態:常緑性小高木 ハイノキはハイノキ科ハイノキ属の常緑樹で、学名はSymplocos myrtacea。原産地は日本(近畿地方以西〜九州)で寒さにやや弱く、地植えにするなら近畿以西の霜が降りない地域が適しています。常緑性で冬でもみずみずしい葉姿を保つのも魅力の一つで、半日陰の場所でも生育し、あまり手がかからず放任してもよく生育します。軽やかな葉姿は和洋のスタイルを選ばず、シンボルツリーとして人気のある樹種です。 ハイノキの花や葉、樹形の特徴 Illust/draw inks/Shutterstock.com 園芸分類:庭木開花時期:4〜5月樹高:5〜10m耐寒性:やや弱い耐暑性:普通花色:白 ハイノキの樹高は5〜10mで小高木に分類されていますが、毎年の剪定によって適した樹高にコントロールすることができます。成長スピードはゆるやかで、比較的手入れがしやすいのも特徴です。常緑の葉は長さ5〜7㎝ほどの楕円形で先端が尖っており、斑入り種も出回っています。 ハイノキの開花期は4〜5月で、花色は白。花弁は5つに深く裂け、長い雄しべが多数集まった直径1cmほどの小さな花を咲かせます。花は葉の脇に集まって咲き、ほのかに漂う甘い香りも魅力の1つ。年によって花数が多いときや少ないときがある傾向にあります。8〜10月に果実をつけ、熟すと黒紫色になり、野鳥が好んでやってきます。 ハイノキの名前の由来と花言葉 ハイノキは、漢字で「灰の木」と書きます。これはハイノキを焼いて出た灰が、染色の触媒として利用されていたことが由来です。「イノコシバ」の別名もあり、九州でイノシシを縛るための枝として利用されてきたことにちなみます。 ハイノキには広く認知された花言葉はありませんが、小さな花が集まって咲く姿を、誕生日をみんなで祝う様子に見立てた「誕生花」などとされることがあります。そのため、新しい生活のスタートや家族の記念日を祝うシンボルツリーとして、新築祝いや誕生記念の記念樹としても人気があります。 ハイノキに似ている樹木の種類 ここでは、ハイノキに似ている樹種をいくつかピックアップし、ご紹介します。 クロキ 日本原産で、南関東地方以西の暖かい海岸付近に多く分布しています。樹高は5〜10m。開花期は3〜4月で長い雄しべをつけた白い花が咲き、秋になると黒く熟します。また、株によっては秋に奇形花として紫色がかった花を咲かせることもあります。枝葉を燃やした後に出る灰は染料の材として利用されてきました。 チチジマクロキ 小笠原諸島の父島に自生するクロキの仲間で、50本ほどしか確認されていない貴重な樹種です。樹高は1〜2mほどで、10〜12月頃にハイノキに似た白い花を咲かせ、翌年の秋に黒い果実をつけます。 クロバイ 関東地方南部以西に分布しているハイノキの仲間です。樹高は5〜10mで、4〜5月に5cmの総状花序に小さな白い花を咲かせます。開花後に楕円形の果実をつけ、秋から冬にかけて黒く熟します。ハイノキよりも葉色が濃く厚いのが特徴です。樹皮は灰黒色で、地域によってはこちらをハイノキと呼ぶこともあります。 シロバイ Hank Asia/Shutterstock.com 近畿地方以西に自生しているハイノキの仲間です。樹高は7〜8mほどで、8〜9月にハイノキに似た白い花を咲かせます。10〜12月に丸い実をつけ、熟すと黒くなります。葉の表面に光沢があり、縁が波打つのが特徴です。クロバイによく似ていますが、樹皮の色が白っぽく、葉柄が短いなどの違いがあります。 サワフタギ 北海道〜九州に分布している、ハイノキ科の落葉樹で、樹高は2〜5m。開花期は5〜6月で、ハイノキに似た白くて小さな花が集まって咲きます。9〜11月に果実をつけ、熟すと深いブルーになり、実姿が大変美しいのが特徴。野鳥が実をついばみにやってきます。 サワフタギの実。 ハイノキの栽培12カ月カレンダー 開花時期:4〜5月植え付け・植え替え:4〜5月肥料:2月頃剪定:3~4月、6~7月、11~12月挿し木:5~6月 ハイノキの栽培環境 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】西日が当たらない半日陰の環境を好みます。ただし、あまりに暗い環境では葉色が冴えなくなったり、間伸びして株姿が乱れたりするので注意してください。 【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。 【置き場所】乾燥に弱く、また強い日差しを浴びると葉焼けすることがあるので、西日が当たる場所は避けましょう。また、水はけ・水もちのバランスがよい、ふかふかとして腐植質に富んだ土壌を好みます。 耐寒性・耐暑性 冬の寒さはやや苦手で、特に乾燥した寒風により葉を落とすことがあるため、北風が吹きつける場所は避けます。関東以南の太平洋側などの暖地では地植えにしても冬越しできますが、凍結する寒冷な地域では鉢栽培にして季節によって移動できるようにし、冬は室内の窓辺や温室などに置いて越年させるとよいでしょう。耐暑性は普通程度にありますが、乾燥や葉焼けには注意が必要。根元を下草やマルチングで覆って乾燥を防ぐのもよいでしょう。 ハイノキの育て方のポイント 用土 funnyangel/Shutterstock.com 【地植え】 植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 庭木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。 水やり Osetrik/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。 真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。 また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。 【地植え】 植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥する場合は水やりをして補いましょう。 【鉢植え】 日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が緩慢になり、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。 肥料 sasimoto/Shutterstock.com 【地植え・鉢植えともに】 植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。 越年後は、毎年2月頃に有機質肥料を株の周囲にまき、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えると、新芽を出すエネルギーとなり、旺盛に枝葉を広げることにつながります。 注意する病害虫 Decha Thapanya/Shutterstock.com 【病気】 ハイノキに発生しやすい病気は、黒点病やすす病などです。 黒点病は、カビによる伝染性の病気です。雨が多い18〜20℃の環境を好むため5〜7月に発生しやすく、葉、枝、果実に黒っぽくて丸い斑点が現れ、全体に広がっていきます。日当たり、風通しが悪いと発生しやすくなるので、込み合っている枝などはすかすように剪定して発生を防ぎましょう。病気にかかった後に剪定した枝や落ち葉は、地中に残らないように処分することも大切です。また、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して防除します。 すす病は、一年を通して葉や枝などに発生する病気で、病状が進むと黒いすすが全体を覆っていきます。葉に発生すると表面につやがなくなり、見た目が悪いだけでなく、光合成がうまくできなくなって樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因になるので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込んでいる枝葉があれば、剪定して日当たり、風通しをよくして管理します。 【害虫】 ハイノキに発生しやすい害虫は、アブラムシやカイガラムシなどです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると枝葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。 カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われ、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。 ハイノキの詳しい育て方 苗木の選び方 がっしりと締まって勢いがある苗木を選びましょう。枝がヒョロヒョロと間のびしているものや葉色が冴えないもの、虫食い跡のあるものは避けたほうが無難です。 植え付け・植え替え Jurga Jot/Shutterstock.com ハイノキの植え付け・植え替え適期は、4〜5月です。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。根付いたら、支柱を取り外してもOKです。 地植えの場合、環境に合って健全に育っていれば、植え替えの必要はありません。 【鉢植え】 鉢で栽培する場合は、10号以上の鉢を準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れ、苗木を鉢に仮置きして高さを決めます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内の隅々まで行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引しておくとよいでしょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水やりをします。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。根付いたら、支柱を取り外しても構いません。 鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、軽く根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。 剪定 Aleksei Golovanov/Shutterstock.com ハイノキの剪定適期は新芽が動き始める前の3~4月、花後の6~7月、生育が止まる11~12月などです。生育は遅めで自然に樹形が整うので、剪定はほとんど必要なく、強剪定すると回復に時間がかかります。深く切り戻すというよりは樹形を生かした透かし剪定を基本にするとよいでしょう。 ハイノキは、緩やかにカーブした細い幹が地際から数本立ち上がる株立ちの樹形をしています。1本の幹を大きく育てる単幹と比べて、株立ちの樹形は華奢な雰囲気に人気がありますが、放任するとそれぞれの幹が太く大きくなって、手に負えなくなりがちです。株立ちの樹形を維持するには、株元から出てくるひこばえを1〜2本残して上に伸ばすようにし、数年経って太くなりすぎている幹は地際から切り取ります。切り口には癒合剤を塗っておいてください。こうして数年ごとに幹を切り替えるようにメンテナンスすると、細い幹のまま楽しむことができます。常に4〜5本の細い幹をキープするとよいでしょう。 株立ちの樹形を維持する目的以外の剪定は、地際から立ち上がっている「ひこばえ」は元から切り取ります。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。1カ所から3本以上の枝が出ていたら、間引いて枝を透かすとよいでしょう。 これ以上大きくしたくない場合は、大体のアウトラインを決めて、そこからはみ出している枝を、分岐点までさかのぼって切り取ります。 増やし方 ハイノキは、挿し木で増やすことができます。ただし、生育が遅く、成功率が低いため上級者向け。挿し木とは、枝を切り取って土に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。 ハイノキの挿し木の適期は、5〜6月です。その年に伸びた新しくて勢いのある枝を10cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。成長とともに鉢増ししながら管理し、苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。 成長がゆっくりで剪定もほぼ不要!シンボルツリーに取り入れよう 春に白い小花をびっしりと咲かせるハイノキは、秋には果実をつける姿も愛らしく、シンボルツリーとして好まれています。生育スピードが遅く手入れもしやすいので、庭を彩る木として植栽してはいかがでしょうか。
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観葉・インドアグリーン

手軽にできる苔(コケ)栽培! 癒やしの“苔植物”の基礎知識と枯らさない管理術
苔の基本情報 Hanahstocks/Shutterstock.com 植物名:コケ植物学名:Bryophyla(広義)英名:bryophyte和名:苔その他の名前:コケラ・コケゴ原産地:世界各国 苔植物という生き物は、陸上にすむ「非維管束植物」の総称で、生物の分類上「苔植物門」に属するものを指します。胞子で繁殖するという特徴をもち、国内では約1,700種、世界では約18,000種もの苔が、さまざまな環境の地域に自生しています。苔類は匍匐(ほふく)性を持っており、地面を這うように広がって生育します。「苔」という名前は「木毛」に由来するという説があり、木の株元や幹などに生えることから名付けられたといわれています。 Svitlyk/Shutterstock.com 一般的な植物には、水分や栄養を吸収するための「根」があり、吸収した水分や栄養を各部に運ぶ「維管束」という管がありますが、苔にはどちらもありません。根のように見える「仮根(かこん)」は、体を固定するためだけのもので、水分や養分は葉や茎から直接吸収します。 根や維管束などの器官は、植物が約5億年前に水中から陸上に進出し、シダ植物、裸子植物、被子植物へと進化する過程で獲得したものです。苔類は最も早く陸上に進出した植物であるため、原始的な陸上植物と呼ばれています。 苔の名前の由来や花言葉 Snow At Night/Shutterstock.com 苔という名前は、木の幹などを覆うように付く様子から「木毛」、また、小さい毛のように見えるため「小毛」と呼ばれたことが由来とする説があります。 苔は花が咲きませんが、花言葉があります。苔の花言葉は、「母性愛」「孤独」「物思い」「退屈」などです。「母性愛」は、苔が木や石などをくるむように覆う様が、子を優しく包み込む母の愛情に通じるため、付けられた花言葉とされています。「孤独」「物思い」「退屈」は、苔が人里離れた場所に多く生息することに由来するとされています。 苔の主な種類 Doodeez/Shutterstock.com 苔という植物は、分類上「苔類(たいるい)」「蘚類(せんるい)」「ツノゴケ類」という3つのグループに分けられます。 また、苔の形を大きく分類すると、根っこや葉がきちんと分かれていない葉状体という形状と、一般的な植物の茎や葉にあたる部分が分かれている茎葉体があります。葉状体の苔は苔類またはツノゴケ類で、茎葉体の苔は蘚類のほとんどが属します。 苔類は丸みを帯びたものが多く、身近によく見かけるゼニゴケやジャゴケが属しています。日本には約620種が自生しています。 蘚類は茎葉体で、よく見ると葉の中心に中肋という葉脈があります。種類がとても多く、群生して繁殖します。 ツノゴケ類は葉状の苔類と似た、尖ったツノのような胞子体を持つことが特徴です。藍藻というバクテリアが共生しており、国内では17種類しか見つかっていません。 苔栽培におすすめの種類は? スギゴケ。Alena Gavrilchik/Shutterstock.com 屋外での栽培におすすめの種類は、一般にスギゴケと呼ばれるものやエゾスナゴケと呼ばれるものです。これらは半日陰でも育つため、日のあまり当たらない場所での野外栽培に適しています。シノブゴケも半日陰を好みます。シッポゴケは風通しのいい場所に定着成長しやすいため、初心者向けの種類です。ハイゴケは横に這うように育つ種類で、これも育ちやすい種類ですので初心者の方におすすめです。 スナゴケ。HWall/Shutterstock.com 直射日光と乾燥に強く、日当たりのよい場所を好むスナゴケは、乾燥するとしぼみますが、少しの水分ですぐ開きます。星形で見た目が美しいので、苔庭やテラリウムなどがおすすめです。ただし、保水力が弱いため、盆栽や苔玉には適しません。 コツボゴケは、透明感のある緑色の葉が特徴で、水を与えると輝くような光沢を放ちます。比較的丈夫なので、初心者にも育てやすく、苔玉や苔庭、テラリウムにもおすすめです。 タマゴケは、胞子体が球状であるためこの名が付けられました。美しい緑色と柔らかそうな葉が特徴で、春頃にまんまるの胞子体をつけます。耐寒性は強いものの耐暑性に弱いため、夏は室内など涼しい場所を選んで置くようにしましょう。湿気は好むものの、水に浸るのを嫌うので、水はけのよい斜めの場所に植えるか、テラリウムなどで楽しむとよいでしょう。ホソバオキナゴケ(別名ヤマゴケ)は、丸みを帯びた半球の形状が特徴で、苔庭や盆栽、テラリウムでよく使われています。乾燥に強く、初心者にも育てやすい苔です。 苔の栽培環境 JoannaTkaczuk/Shutterstock.com 苔は種類ごとに必要な明るさや湿度が異なります。苔を購入する場合は、育てたい場所の日当たりをよく考慮して、それに合ったものを選びましょう。 また、苔は湿度が高いほうが生育がよくなるものが多いです。こうした苔を育てる場合は、乾燥に注意して、直接風が当たる場所は極力避けるようにしましょう。 苔を植える場所は、水はけのよい土壌にします。湿度を好む苔でも水がたまるような環境は苦手なので、庭植えの際には、植え付けたい場所の土に川砂を混ぜ込み、鉢植えにする際は、小粒の赤玉土などに川砂や竹炭を混ぜ込んで、水はけのよい土作りに徹しましょう。ガラス容器などに入れて育てるときは、腐葉土などの有機物を入れるとカビが生えやすくなるので注意しましょう。 苔の育て方 Piti Tan/Shutterstock.com 用土 苔は根から養分を吸収する植物ではないため、必ずしも用土を必要としませんが、一般的には赤玉土、黒土、砂など水はけのよい土や、市販の苔テラリウム用の配合用土などを利用します。なお、苔の種類によって好む用土が異なるため、種類に合った土を用意し、苔ごとに適した育て方を心がけましょう。 水やり 苔の水やり頻度は、品種や育てている環境などによって異なります。庭で育てている場合は、基本的には雨が降れば十分です。苔は乾燥すると縮んで茶色っぽくなりますが、枯れているわけではありません。とくに、夏は日が当たる時間帯に水やりをすると、蒸れて弱ってしまいます。水のやりすぎや、水やりのタイミングには注意しましょう。 蓋つき容器で苔テラリウムにしている場合は、湿度が保たれるので、2~3週間に1回を目安に水やりをするとよいでしょう。苔玉や盆栽の場合は、2~3日に1回は水やりを行いましょう。空中湿度が高い状態を好む苔もありますが、蒸れや過湿は傷む原因になるので注意が必要です。 肥料 苔は光と空気、適度な水分があれば育つ植物です。そのため、基本的に追加の肥料はほとんど必要ありません。逆に肥料を与えすぎると枯れてしまいます。盆栽や寄せ植えなど、ほかの植物とともに育てている場合は、ほかの植物にだけ液体肥料を与えて、苔には肥料が極力いかないようにします。 GrooTrai/Shutterstock.com 増やし方 Hans.P/Shutterstock.com 苔の増やし方には「張り苔法」「移植法」「まき苔法」と、大きく分けて3つあります。 「張り苔法」は、3つの増やし方で最も簡単です。これはマット状の苔をそのまま庭や培養土に張るように植え付けるという方法で、短時間で広範囲に植え付けることが可能です。苔のシートを地面にしっかりと密着させることが大切です。 「移植法」は、1本ずつ土に挿すように植え付ける方法です。これは手間がかかりますが成功率は高く、ヒノキゴケやスギゴケなど広範囲に大型の苔を植え付ける際に適しています。また、苔テラリウムの場合も、この方法で1本ずつ植え付けていきます。 「まき苔法」は、ほぐした苔を種子のようにまいて植える方法です。この方法のメリットは、少ない手間かつ少量の苔でたくさん増殖させることが可能である点で、最もポピュラーな増やし方です。苔は株ごとにほぐしたもののほか、細かく刻んだものをまいても生えてきます。 苔が持つ驚くべき効果とは? Lillac/Shutterstock.com 苔は空気中から水分や栄養分を吸収することができ、さらに苔の細胞壁が金属を蓄積することから、抗菌・消臭効果があるとされています。 また数々の研究や実験から、苔を見ていることでストレス解消や癒やしの効果が得られるといわれています。苔のもつ独自の芳香に土の香りが混ざると、よりその効果が増し、さながら静かな森の中にいるかのようなリラックスした心理状態になることが期待できます。 さらに、苔は水分を吸収するだけでなく、蒸散することもできます。そのため大気の湿度や温度を調整することが可能であり、吸収した二酸化炭素を蓄積したまま泥炭層を構築するので、環境保護にもつながるといわれています。園芸用土として使われるピートモスは、苔が堆積したピート(泥炭)が原料ですが、近年は長年にわたって二酸化炭素を蓄積している泥炭をみだりに掘り起こして活用することに対する批判も巻き起こっています。 苔の活用方法とは? sei.N/Shutterstock.com 苔といえば、まず挙げられるのは苔玉です。土を丸く固めて周りに苔を張って仕立てた苔玉を鑑賞して楽しみます。この際、置き場所は風通しのよい棚の上などにして、しっかりと外気を吸わせましょう。 また透明なガラス容器の中に入れて独特の世界を表現できるテラリウムも、インテリアとして生かすことができて人気です。苔を主体とした独特の雰囲気を醸し出すことができ、気軽に世話を楽しめるので、おすすめの活用法です。 さらに、盆栽の株元に敷くと土がむき出しにならず、苔のグリーンで一気に雰囲気を変えることもできます。美観だけではなく、保湿や土の流出を防ぐといった効果もあり、こちらも人気の活用方法です。 苔庭のつくり方 Vera Larina/Shutterstock.com 苔庭は、苔を中心にして設えられた庭のことです。小さな坪庭や、石を組み合わせて作る日本庭園など、さまざまなバリエーションがあります。苔庭を作る際は、日当たりなど庭の環境に合う苔を選びましょう。日当たりのよい庭であれば、スナゴケやギンゴケなど、半日陰の庭にはオオスギゴケ、ヒノキゴケ、ムチゴケなどがおすすめです。 育てる場所は、水はけが良く、風通しの良い場所を選びましょう。下準備として、除草後に砂利や水はけの良い土を敷き、その上に苔を配置し、上から薄く土をかけておきます。苔が定着するまでは、毎日水やりを行い、環境になじんできたら徐々に水やりの頻度を減らしていきましょう。 苔が枯れる原因は? 苔は丈夫で初心者でも育てやすい植物ですが、育てている場所や管理方法によって、茶色く変色するなど、枯れてしまうこともあります。ここでは苔が枯れる主な原因をご紹介します。 日照不足 Makivka_photo/Shutterstock.com 苔は、日当たりの悪い場所を好むというイメージを持たれているかもしれませんが、植物である以上、光合成ができなければ枯れてしまいます。種類によって好む日当たりは異なりますが、室内で育てている場合は、日光が当たる場所に置くか、照明を利用して光合成を行うための適度な光を確保しましょう。 蒸れ 苔は自然環境への適応力は高いものの、急激な環境変化には適応できない場合があります。また、蒸れにも弱い植物です。とくに、真夏の日差しの下での水やりなどは、人為的に作られる急激な環境変化であり、蒸れの原因にもなります。苔を弱らせてしまうため、注意が必要です。 水分過多 Morningstar Sun/Shutterstock.com 苔は多湿を好むというイメージがありますが、実は乾燥に強い植物です。乾燥すると、茶色く縮れた状態になるため、枯れているように見えるかもしれません。しかし、この状態は枯れているわけではなく、乾燥から身を守っているだけなので、水をやると緑色に戻ります。むしろ、水のやりすぎは傷んで枯れてしまう可能性があるので注意しましょう。 気温低下 苔は寒さに強く、日本の苔の多くは氷点下でも生存可能です。ただし、気温が低下すると生育が鈍り、5℃以下になるとほとんどの苔は成長を停止します。茶色くなって、枯れたように見えますが、春になると新芽を出して綺麗な緑色に戻ります。一年中、緑色を楽しみたい場合は、室内に移して温度管理をすると良いでしょう。 乾燥 前述したように、苔は乾燥に強いため、こまめに水やりを行う必要はありません。よく晴れた日や風の強い日は苔が縮れているように見えることがありますが、水やりを行うとすぐに元に戻ります。水やりを行う際は、蒸れないようにするために日没まで待ってから行うようにしましょう。 苔を採取する際の注意 苔は街中や公園など至る所に生えているため、気軽に採取できるように思われがちですが、自宅に生えているもの以外は、他の植物と同様に無断で採取することはできません。採取する際は、自治体や土地の所有者などに許可を得てから行いましょう。散歩の途中などで観察して見守るのも楽しい接し方です。 「難しそう」を「楽しい」へ。気負わずに始める苔ライフ saori580/Shutterstock.com 「肥料のやりすぎは厳禁」「茶色くなっても水で戻る」など、苔の特性を知れば、栽培は決して難しいものではありません。むしろ、過保護にしすぎず、自然に近い環境を維持することが成功の秘訣です。 庭の片隅からデスクの上のテラリウム、散歩の途中で自生しているコケを見つけて観察するなど、場所を選ばずに楽しめるのも苔の大きな魅力です。まずは気に入った一株から、気負わずに苔のある暮らしを始めてみましょう。その小さな緑が、日々の生活に潤いをもたらしてくれるはずです。
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ガーデン

「東京パークガーデンアワード@夢の島公園」でガーデン制作に挑む! 5人のガーデンデザイナーの庭づくりにかける思い
コンテストガーデンA花の巡り、風と大地の詩 Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由 私はマンション住まいで、自分のお庭を持っていません。自分の好きにデザインした庭をつくってみたくて、TPGAに挑戦し始めました。また、公園という誰でも集える公共の場に、ガーデンという憩いの空間を生み出すことにも強く惹かれました。植物があるだけで、人が立ち止まり、会話が生まれ、心がふっとやわらぐ——そんな場を自分の手で形にしてみたいと思いました。TPGAは、その思いを実際のデザインとして表現できる貴重な機会だと感じ、参加を決めました。 尊敬するガーデン@服部牧場 Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由 雹(ひょう)被害をきっかけに、マンションの仲間が始めた地域のゴミ拾い活動が、ガーデニングに触れる最初の一歩でした。活動の途中で気づいた、枯れていたツツジの代わりに、イベントで余った花を植えて世話をするようになったことが、植物との関わりを深めるきっかけとなりました。 ちょうどその頃、マンションで緑化クラブを立ち上げ、植栽管理日に一緒に作業するようになりました。そこで出会ったガーデナーさんが、植物との向き合い方を丁寧に教えてくださり、植物の世界に強く惹かれていきました。 「もっといろんな植物を知りたいなら」と庭仕事の現場を紹介していただいたことが大きな転機となり、植物に携わる仕事を始める決心につながりました。 マンション植栽@モンヴィラージュ仙川 Q3. 仕事に向き合う時のこだわり 「その時の自分の120%を、誠実に」。これは、仕事に向き合ううえで大切にしている姿勢です。 仕事は自分ひとりでは成り立たないからこそ、どんな場面でも誠実でありたいと思っています。また、100%では現状維持のまま。自分に無理のない範囲で120%を目指して取り組むことで、ほんの少しの気遣いや挑戦が自分を成長させ、やがて自信にもつながっていくと感じています。 植栽デザインの管理をしているガーデン@あいかわ公園 Q4. 制作したガーデンで表していること、見てほしいポイント 風に応えるしなやかさと、根を張る力強さが共存し、自然との共鳴を体感できる場を目指しました。自然はたくましく、偉大です。できることは、植物を適切に選び、適切に見守ること。東京湾に面した海岸沿いの波形2本(@1.2m×10m)のロングボーダーガーデンという条件のもと、耐乾性・塩耐性・耐暑性のある植物を自分なりに選びました。花壇全体に統一感を持たせつつ、単調にならないよう品種構成や配置に工夫を重ね、歩きながら変化を楽しめるようにしています。通年を通して自然に美しいガーデンであるよう細やかに整えていきますので、四季それぞれの表情を感じてください。 植栽工事@夢の島公園コンテストガーデン Q5. 長年の趣味、もしくは今夢中になっていること ガーデニングです。仕事と趣味の境目はほとんどなく、空いた時間があればライフワークにしている地域のボランティア花壇や、住んでいるマンション植栽の見守りをしています。 担当しているガーデンの管理計画を立てたり、植栽を考えたりする時間も、悩ましさと楽しさが同居する大切なひとときです。また、気になるテーマの講演に参加したり、興味をひかれたガーデンを訪れたりと、日々の中で自然と植物に触れる時間を楽しんでいます。 ライフワーク「せんがわ緑化部」@仙川なかよし公園 コンテストガーデンB潮風に揺れるプレイフルガーデン-Playful Garden Swaying in the Coastal Breeze- Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由 庭は、誰かの意図によって始まりながら、ほどなく人の手を離れ、環境や時間の無意識に委ねられていくものだと思います。設計された秩序の内外から、予期しない振る舞いや関係性、余白が静かなざわめきとして立ち上がってくる。そのずれやノイズとの応答を、私たちは愛おしく感じるのではないでしょうか。TPGAは、庭を完成形として閉じるのではなく、育ち、使われ、変わっていく時間そのものに立ち会える場だと感じました。意識と自然のあいだに生じる揺らぎを、つぶさに愛で観察し、これからの空間づくりの糧にしたいと考え、参加しました。 Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由 建築と緑を等価に扱う設計事務所で実務を積みました。植物の扱いが空間の完成度を大きく左右する一方で、自身の理解が十分でないと感じる場面に何度も直面しました。そこで自宅の空地を試験庭とし、植え付けや剪定、季節ごとの変化を観察しながら、植物の性質や管理の感覚を体で学びました。教科書には載っていない経験や、図面だけでは捉えきれない草木の振る舞いに触れることで、建築と植栽を切り分けずに捉える視点が少しずつ育まれました。こうした実感を重ねる中で、自然や風景づくりへの愛着が深まり、それを生業にしたいと考えるようになりました。 Q3. 仕事に向き合う時のこだわり フォトジェニックな景色を作ることよりも、その空間や環境が課題解決のツールとして機能しているかを常に意識しています。施設や企業の理念、持ち主の考え方が空間として無理なく表れていること、周辺環境や建築と関係を結ぶことで、場の社会性や利用価値が高まり、結果として集客や売上など経済的な側面にもつながる場所づくりであることを重視しています。多様な使われ方を受け止める余地を備えることが、人の愛着を育み、建築や庭の持続性を支える一つの生存戦略になると考えています。 Q4. 制作したガーデンで表していること、見てほしいポイント 単体として完結する庭ではなく、周辺環境と関係を結ぶことで、公園全体に小さな発展や気づきを生む場所をイメージしました。島のシグニチャーであるユーカリ樹林を主役とする前景構成に、回遊ステップや草木による見え隠れを重ね、園内に不足がちな遊具的な体験性やヒューマンスケールの空間性を補完。熱帯・亜熱帯植生や豪州庭園との調和に配慮した樹種で園内の一施設として風景の連なりを意識しました。眺望の制約となりがちな前面ベンチや照明ポールも、視点場や景色のリズム要素として読み替え、人の行為で意味が広がる場所となることを意図しています。 Q5. 長年の趣味、もしくは今夢中になっていること 学生時代の恩師の教えをきっかけに、訪れた建築や風景、植物、そして日常の中の何気ない場面をスケッチするようにしています。趣味のドローイングではありますが、アイデアの記録という側面もあり、環境やものごとの成り立ち、そこに込められた考え方を観察することで、自分なりの小さな発見につながることもあります。スケッチブックは設計検討のスクラップ帳も兼ねており、描き留めた気づきやフィードバックをもとに考えをチューニングできる点も、意外と重宝しています。 コンテストガーデンCStewardship Garden:The Way Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由 僕がいつも実現している庭づくりは、植物が日常生活に深く根付いているスタイルのお庭です。TPGAの特徴の“宿根草の持続可能なガーデン”は、僕たちの目指す『庭と、新しい暮らし』の基礎となるテーマです。このコンテストを通じて、僕はより広く深く知識と経験を得ることができ、世界中の皆さんの“心豊かな暮らし”の実現に、より貢献できると思い参加させていただきました。また一つの作品を仲間と作り上げるということは、とても楽しい祭りごとであり、成長するチャンスでもあります。TPGAは未来の可能性を押し広げる貴重な時間になると信じています! 子供と一緒に庭づくり。 Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由 『なぜ人に植物が必要なのか?』僕は知っているんです。“挑戦”それが僕の人生のキーワード。しかし若い頃はあきれられるぐらい無知で未熟でした。挑戦したことは全て失敗、自分が何をやったらいいのか分からなくなった、人生の迷子になったんです。その時、ほったらかしの観葉植物の存在に気付いたんです。なぜかとても癒やされ、心落ち着ける時間を与えてくれることを知ったんです。『ありがとう』植物に伝えた言葉は“感謝”でした。それから庭づくりという世界に飛び込み、世界を見て回った。そして今『何でもできる』そう思って今日まで挑戦を続けています! 植物と子供とブランコ。 Q3. 仕事に向き合う時のこだわり 全てにおいて一番大切なことは『聞くこと』です。暮らしと密着したお庭を提案している僕たちは、皆さんが“心豊かな暮らし”を実現できれば幸せなのです。何が“心豊か”であるかは、皆さん人それぞれです。だから僕たちは皆さんに聞くのです。『困っていることは?』『どうなったら幸せですか?』そして僕たちは他にも聞くことがある。土の状態、日当たり、風通し。それら全部をふまえて、皆さんの新しい暮らしを明確にイメージして、実現することが僕たちの幸せなのです。だからいつも聞くのです『まずあなたの話を聞かせてください!』それが“僕のこだわり”です。 庭に作った植物いっぱいのブランコ。 Q4. 制作したガーデンで表していること、見てほしいポイント 僕のガーデンは『変化』がキーワードです。端っこは砂浜で、中心に向かって土壌は豊かになっていく。それは植物が生まれ枯れる、昆虫や動物が暮らし、土に還っていく。そういった自然の循環が影響している、そんなことを表現しています。それはまるで人の一生のようで、砂浜は柔らかい心を持った子供たち。それから色んな影響や経験を通じて、花や実を育てる子育て世代になり、最後は人生の全てを謳歌してきた成熟世代へと変化していく。ガーデンは四季によりどんどん変化していきます。皆さんの記憶に残る、キラッ! と輝く一瞬をお見逃しなく! 左/東京パークガーデンイメージ図。右/夢の島のコンテストガーデンに作った砂浜。 Q5. 長年の趣味、もしくは今夢中になっていること 『趣味が仕事で、仕事にはまっています』僕のホームページでも公表していますが、かつて俳優や伝統工芸士、生け花の池坊を学んでいました。映画鑑賞は2,000本以上、20年間ずっと月に一度は美術館に行くなど芸術が好きです。いくつかの賞をいただいたり、皆さんご存じの有名人と一緒に仕事をしたり、海外にも何度か作品を持って行きました。それらの体験が与えた僕の感性への影響は計り知れなく、今でも人生の基礎となっています。今後は『庭づくりから暮らしへ』と新しい暮らしの提案をしながら、皆さんと一緒に楽しめる空間づくりの実現に向けて、『ぐりんぐりんパーク』の実現を加速していきます! ぐりんぐりんパークイメージ図。右/伝統工芸作品。 コンテストガーデンDSurFIVE Garden Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由 2023年に参加した代々木公園ガーデナー養成講座がきっかけです。ガーデンの歴史や社会的な意義、設計に向き合う姿勢など、多くの考え方と技術を学び、それらを自分なりにアウトプットしたいと考えて応募しました。今回の舞台となる夢の島公園はかつて廃棄物処理の島として生まれ、緑豊かな公園へと再生してきた歴史があります。都市と自然との関係を象徴するような場所で庭づくりに関われること、1年を通して植物と向き合えるこの貴重な機会に大きな魅力を感じています。 夢の島コンテストガーデンの作庭メンバーと記念の一枚。 Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由 1990年頃、NHKで放送されていたバーネット原作のアニメ『ひみつの花園』に夢中になったことが、植物の仕事に惹かれる原点です。自分の地面や庭を持ち、整えることで暮らしの質が高まり、その心地よさが周囲や街へと広がっていくことを実感してきました。身近な自然に触れる中で育まれるセンス・オブ・ワンダーの大切さを、仕事を通して次の世代にも伝えていきたいと考えています。屋号「PICNIC」には、外で過ごす喜びを日常に取り戻したいという想いを込めています。 「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」のガーデン部門で受賞した作品(作品名『Little Gardener's Nest 小さなガーデナーの秘密基地』)です。センス・オブ・ワンダーをコンセプトにしています。 Q3. 仕事に向き合う時のこだわり 新築住宅のエクステリア提案や庭のリフォームを中心に、限られたスペースでも外で過ごす心地よさを感じていただける庭づくりを心がけています。日差しや人目を気にせずに過ごせることや、窓からの眺め、使いやすい動線や道路からお家が素敵に見えるかなど、さまざまな角度から検討します。植物は住まいを美しく見せる最もコストパフォーマンスの高い要素なので、無理なく続けられるローメンテナンスな植栽との付き合い方まで含めて提案することを大切にしています。 ご依頼主へのプレゼン資料として毎回作成しているエクステリアの完成3Dパース。 Q4. 制作したガーデンで表していること、見てほしいポイント このガーデンで最も大切にしたのは、季節を通して全体のシルエットが崩れないことです。 雨や風で植物が倒れていると、見る人に残念な印象を与えてしまうため、倒れにくく生命力の強い植物を選び、植え付け時からしっかり根を張れるよう土づくりにも工夫を重ねました。夏の厳しい暑さの中でもサバイヴする植物のエネルギーと、個性的な葉の形と色鮮やかな花々が作る景色を楽しんでいただけたら嬉しいです。 夢の島公園のコンテストガーデンの制作で参考にした、ロンドンのガーデン。 Q5. 長年の趣味、もしくは今夢中になっていること 旅行が趣味です。自然そのものよりも、都市の街並みや建築、美術、庭園など、人の手が加わった空間を見ることに惹かれて、作られた背景や意図を想像しながら歩く時間が好きです。最近は一昨年に手に入れた自宅の庭を、荒地だった状態から少しずつ改装しています。気になる植物を植えてみたり配置を変えてみたりと、暮らしの中で試行錯誤する時間が、いま一番の楽しみになっています。 改装している自宅の庭の一部。 コンテストガーデンE「東京サバンナ・バイ・ザ・ベイ」 〜地の記憶と環境を翻訳する庭 Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由 知人から紹介を受け、「宿根草」というテーマであれば、これまで自分が取り組んできた領域とも重なると感じ、応募しました。動物園デザインや生息環境の再構築に携わる中で、植物は常に重要な役割を担ってきました。TPGAは、そうした実践や思考を、都市のガーデンという場で試し、表現できる機会だと感じています。 Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由 動物園デザインでは動物だけでなく、その背景となる生息地を空間として表現する必要があります。その中核にあるのが植物です。植物を単なる素材として扱うのではなく、性質や個性を理解する必要性を感じ、自らガーデンを開設し、実践を通して学び始めました。現在の植物との関わりは、その延長線上にあります。 Q3. 仕事に向き合う時のこだわり 求められている要望や背景を丁寧に咀嚼し、その上で、条件や文脈を自分なりに言語化し、デザインに落とし込む。先入観にとらわれず、環境や植物そのものの本質に向き合いながら、要望と現実をつなぐ提案を目指しています。 Q4. 制作したガーデンで表していること、見てほしいポイント 都市の果てにある過酷な埋立地に、洗練された都会的なサバンナを作ることをコンセプトとしました。オーナメンタルグラスによって生まれる構造と、その足元を支える繊細な小花たちが織りなす、静かで地味だけど、可憐でインパクトある風景を目指しています。近づくほどに、植物同士の関係性を感じてほしいです。 Q5. 長年の趣味、もしくは今夢中になっていること 物心ついた頃からホラー好きで、幼稚園の頃に初めて自分で買った本は中岡俊哉の『恐怖の心霊写真集』。寝る時も怪談を聴きながらじゃないと安眠できません。動植物との関わりについては、趣味というよりライフワークに近く、生活そのものの一部になっています。 TPGAだけではない! たくさんの植物に出会える夢の島公園 夢の島公園には、一般的な公園とはひと味違う植物が数多く植えられています。その背景にあるのが、東京湾に面し、運河と水路に囲まれた人工島という立地です。塩害や強風への対策が必要だったことに加え、かつてゴミの埋め立て地だった場所のイメージを払拭したい、という目的もありました。こうした環境のもとで選ばれたのが、異国情緒あふれる植物たちです。なかでもひときわ目を引くのが、コンテストガーデンの背後で茂るユーカリの木々。ユーカリは、異国の植物がこの土地でどの程度成長するかを検証する実験的な目的で植えられたほか、都内の動物園で飼育されているコアラのためのエサとして、品種選びや葉の供給候補地としても活用されてきました。 【園内で見られる草花】スイセン、菜の花、ナツズイセン、イペー、ジャーマンアイリス、カンナ、シュクシャ、ツワブキ、メドーセージ、ローズマリーほか 【園内で見られる樹木】ミモザ、アセビ、ドウダンツツジ、ツバキ、トベラ、キンモクセイ、オオシマザクラ、八重ベニオオシマザクラ、ユキヤナギ、シャリンバイ、ヤブツバキ、アベリア、ユーカリほか 左/コンテストガーデンの背後に広がるユーカリ林。冬の間につける花と実は、ほかではなかなか見られない。右/コンテストガーデンの脇の晩秋の風景。 ガラスのドームが目を引く緑のシャワーを浴びに「夢の島熱帯植物館」に行こう! コンテストガーデンの隣のエリアに見えるのは、キラキラと陽の光に反射する大きなガラスのドーム。ここは、約1,000種類もの熱帯植物がひしめく「夢の島熱帯植物館」です。宿根草とはひと味もふた味も異なる、熱帯植物の世界。力強く葉を広げる植物の生命力と甘く漂う花の香りで、驚くほどリラックスできます。ガーデン観賞を楽しんだあとは、ゆっくりと館内をめぐりながら、トロピカルムードに浸るのがおすすめです。 ここは、隣接する「新江東清掃工場」の余熱を利用して熱帯植物を生育している、東京都運営の熱帯植物館。年間を通じて気温20℃、湿度60%に保たれており、広さ約1,500㎡、高さ約28mの空間に、熱帯雨林の世界が再現されています。なかでも印象的なのは、最初のドームに設けられた大きな滝。絶え間なく流れ落ちる水音が、訪れた人を出迎えてくれます。 視線を上げると、天井付近で30m級のヤシ類が葉を展開。熱帯植物の重なりと、アーチを描くドームの鉄骨が観る人を圧倒する。 テーマが異なる3つのドームで熱帯雨林の世界を楽しもう Aドーム 水辺の植物のエリア 滝からのしぶきは迫力ある景観を演出するだけでなく、館内の湿度を上げる効果も。 滝と池のまわりには、熱帯性スイレンをはじめ、水辺に生育する植物が数多く見られます。滝の下をくぐるように設けられた通路では、マイナスイオンをたっぷり体感。通路の脇には、あでやかなラン類が彩りを添え、足元から視線の先まで、南国らしい風景が広がります。 気根を伸ばすマングローブなどが植えられた池のほとりでは、サガリバナが白い花を下げています。「ぽとりぽとりと落ちる花が水面を一面に覆うさまが幻想的」と、その姿に魅了される人も多い人気の植物です。おもな開花期は7月頃ですが、ここでは開花に適した温度が保たれているため、長期間花を咲かせています。 このエリアの植物で圧巻の姿を見せているのは、ドームの一角で勢いよくズドンと伸びる、巨大なゾウタケ(象竹)。世界一大きな竹として知られ、そのスケール感は、見上げると思わず足が止まるほど。 Bドーム 実がなる植物のエリア 南国の果物を集めたエリアです。バナナやカカオ、マンゴー、パイナップル、ゴレンシなど、さまざまな植物がユニークな果実を実らせています。果実のつき方も植物ごとに個性豊か。枝先につくものもあれば、幹に直接実をつけるものもあり、その違いを間近に観察できます。植物の前には、果実の紹介や展示も設けられているため、子どもから大人まで、楽しく学ぶことができます。 本物そっくりの果実の模型と分かりやすい解説パネルが設けられている。 左から/カカオ、バナナ、ゴレンシ(スターフルーツ)が結実中。 バナナの株元では、個性的な植物が生い茂っている。 左から/カラテア・クロタリフェア、レッドジンジャー、クロトン Cドーム 小笠原諸島のエリア 東京都・小笠原諸島の植物を集めたエリアで、希少な固有種も観察することができます。ユニークな気根を伸ばすタコノキや、大きな葉を広げるタビビトノキなど、迫力のある樹木が数多く植えられており、没入感満点。小笠原諸島の雰囲気を、肌で感じ取れる空間です。 左/頭上を覆うタコノキの葉。右/タコノキに似ているアダンが実をつけている。 美しい鳥のさえずりが聞こえてきそうな、トロピカルなシーンの連続。 Cドームの出口近くにある見晴らし台からの眺め。植栽の重なりや細い滝の流れ、石積みのディテールまでがリアルに再現され、まるで秘境を訪れたかのような感覚を楽しめる。 左上から時計回りに/タビビトノキ、バニラ、ハナキリン、サンタンカ、ドンベヤ・ウォリッキー。 温室ドームの熱帯エリアを出た先にある「食虫植物温室」と、オースラリアの植物が集まる「オーストラリア庭園」も必見です。熱帯植物とは大きく趣が異なり、生育環境によって植物の姿がここまで変わるのかと、その奥深さをあらためて実感させてくれます。 【オーストラリア庭園】 バンクシアやウエストリンギアなど、今人気のオージープランツが植えられた、雰囲気のよいルーフガーデン。 【食虫温室】 さまざまな形態の食虫植物が育てられている。子どもたちの自由研究にもピッタリ。 植物の展示のほかにも、日本の自然を紹介する貴重なアーカイブ映像を上映する「映像ホール」や、ワークショップやコンサートが開催される「イベントホール」、ユニークな切り口で植物について学べる「企画展示室」など、楽しい企画が目白押し。一年を通して心地よい温度に保たれているため、ぜひ季節ごとに訪れて、その時々の魅力を味わってみてください。 Information 夢の島熱帯植物館 住所:東京都江東区夢の島2-1-2 入場料:大人250円,65歳以上120円,中学生100円(小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料) 開館時間:9:30~17:00(入館は16:00まで) 休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)*12月29日~1月3日は年末年始休館 https://www.yumenoshima.jp/botanicalhall
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花と緑

「薇」ってなんて読む? 正解できたらすごい難読植物名漢字クイズ【Let’s Try! 植物クイズ】Vol.34
食用にも!「薇」ってどんな植物? Fumeezz/Shutterstock.com 実際に育てていても、漢字で表記されると案外分からない植物も多いもの。普段呼んでいるのとは違う名前があったり、意外な漢字表記があったり、植物の漢字も面白いものです。 そんな植物の漢字表記の中から、身近な植物に関するものをクイズで出題! 今回のお題は「薇」。あなたはこの漢字が表す植物が分かりますか? ヒント 山菜としても知られる日本在来の植物。若芽を食用にします。 正解は… ↓ ↓ ↓ ↓ ゼンマイ High Mountain/Shutterstock.com ゼンマイの基本データ 学名:Osmunda japonica Thunb.科名:ゼンマイ科属名:ゼンマイ属原産地:日本、朝鮮半島、台湾、中国、ロシア、インドシナ半島、南アジアなど和名:ゼンマイ(薇、紫萁)別名:ハゼンマイ、シシゼンマイ、ゼンメ、ゼンゴなど英名:Japanese royal fern、Asian royal fern形態:多年草(宿根草)草丈:60~100cm くるくると丸まった姿でおなじみのゼンマイ。古くから山菜として親しまれてきた、日本全国に自生するシダ植物です。おひたしや炒め物、山菜そばなどに利用され、韓国料理のナムルでもよく目にする食材ですね。アクが強く、あく抜きや天日干しなどの下処理をして利用されます。 Botamochy/Shutterstock.com 食用にするのは、春に伸びる栄養葉の若芽。若芽は緑色で淡い赤褐色の綿毛に覆われ、先端が渦巻きのように丸まります。栄養葉は別名「女ゼンマイ」、同時期に伸びる胞子葉は「男ゼンマイ」とも呼ばれ、胞子葉は次世代を残していくために採取せずに残します。胞子葉は胞子を放出後に枯れます。 ゼンマイの栄養葉。emongrara/Shutterstock.com 栄養葉は2回羽状複葉で、一番下の羽片が最大。綿毛は成長するとなくなります。シダの仲間らしい涼やかな姿で、シェードガーデンの下草などにも利用されます。日向~半日陰で水はけのよい肥沃な場所を好みます。 「薇」の由来とは? QueSeraSera/Shutterstock.com ゼンマイは漢字では「薇」と書き、漢名の「紫萁」と書くこともあります。この「薇」という字、常用漢字ではありませんが、どこかで目にしたことがある方が多いはず。ガーデナーにとってはおなじみ、難読漢字として一般にも有名な「薔薇(ばら)」で使われている漢字です。「薇」は日本ではゼンマイを意味しますが、もともとは風にそよぐという意味を持つ漢字で、エンドウを表していたそう。「薔」は垣根を表すので、垣根に咲いて風にそよぐつるバラを指していたのでしょう。 ちなみに、ゼンマイという名前の由来には、先が巻いた新芽の姿が古銭に似ることから「銭巻(ぜにまき)」がなまったとする説、「千巻き(せんまき)」に由来するという説などがあります。ちなみに、時計やおもちゃなどの「ぜんまい仕掛け」に使われる、金属を渦巻き状に巻いたぜんまい(発条)は、植物のゼンマイに形が似ていることから名づけられました。 クイズ一覧はこちら!
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イベント・ニュース

2日間だけの夢の祭典——「クリスマスローズの世界展 2026 〜魅惑の花たちの宴〜」開催!
そもそも、クリスマスローズってどんな花? クリスマスローズは、冬から早春にかけて咲く宿根草。寒さの中でも花を咲かせる強さと、うつむき加減に咲く奥ゆかしい姿が、多くの人を魅了してきました。 一見控えめでありながら、よく見ると花色・花形・模様は驚くほど多彩。シンプルな一重咲きから、華やかな八重咲き、フリル咲き、スポット模様やピコティ咲きまで——。“ひとつとして同じ花がない” といわれるほど、個性豊かな世界が広がっています。 近年では育種技術の進化により、かつては夢だった花色や花形も次々と誕生。いま、クリスマスローズは世界的なブームを迎えています。 雄しべが花弁化して内側にカールした二段唐子‘ソフトアプリコットピコティ’/野田園芸作出。 「クリスマスローズの世界展」とは? 20年以上の歴史を誇る、日本最大級のクリスマスローズ専門イベント「クリスマスローズの世界展」。全国からトップクラスの育種家・生産者・専門ナーセリーが一堂に会し、 最新品種の展示、希少原種の公開、芸術作品のような展示株、限定苗の販売、専門家によるセミナーなど、 “ここでしか体験できない”内容が凝縮された2日間です。 かつては愛好家中心のイベントでしたが、近年は初心者や若い世代にも門戸を広げ、 「見て楽しい・学べて楽しい・育てて楽しい」 総合園芸イベントへと進化しています。 実際に、 初心者でも分かる育て方展示 思わず写真を撮りたくなる空間演出 気軽に質問できる相談コーナー など、初めての方でも安心して楽しめる工夫が随所に散りばめられています。 「クリスマスローズの世界展 2026」の開催概要 「クリスマスローズの世界展 2026 〜魅惑の花たちの宴〜」 公式サイト:https://crsekai.com/ 開催日:2026年2月20日(金)・21日(土) 時間:10:00〜19:00(※アーリーチケット入場 9:00〜) 会場:サンシャインシティ ワールドインポートマートビル4F A-1ホール(東京都豊島区東池袋) 主催:クリスマスローズの世界展 実行委員会 特別協力:日本クリスマスローズ協会、サンシャインシティ 2025年2月に開催された展示の様子。 【展示・イベント内容】 日本各地の生産者によるオリジナル交配品種の特別展示 日本クリスマスローズ協会主催「新花コンテスト」入賞・出品作品展示 希少な原種展示と、クリスマスローズの歴史紹介 育種家・専門家によるセミナー&ワークショップ 園芸相談コーナー(初心者も安心) クリスマスローズマーケット(苗・園芸グッズ・関連雑貨の販売) ※内容は変更になる場合があります。 ガーデンストーリーも出展! 限定企画が盛りだくさん ガーデンストーリーもブース出展します。編集部が長年取材を重ね、植物と真剣に向き合ってきたからこそお届けできる、 「本」と「道具」と「体験」 を、会場で直接感じていただける特別な空間です。 ① ガーデンストーリー書籍の販売 ガーデニング初心者から上級者まで、多くの読者に支持されてきたガーデンストーリーの人気書籍を販売。実際に手に取って選べる貴重な機会です。 ② ガーデンストーリーシリーズ 人気商品を展示 編集部が「本当に欲しい園芸グッズ」を追求して開発したオリジナルブランド 「ガーデンストーリーシリーズ」。 水やりアイテム、ガーデン雑貨、使い勝手にこだわった園芸ツールなど、 普段はオンライン中心でしか見られない人気商品を実物展示。オンラインショップでご利用いただけるクーポンをお渡しします。その場でオンラインショップからご購入いただいた方には、先着で下記特典のお渡しも! ③ ご購入者限定|クリスマスローズ苗プレゼント *プレゼント苗は複数品種があり、写真と異なる場合があります。 ガーデンストーリーブースで商品をお買い上げいただいた方(その場でオンラインショップから「ガーデンストーリーシリーズ」商品を税込2,000円以上ご購入いただいた方や書籍を1冊以上ご購入の方・各日先着限定数)に、エム・アンド・ビー・フローラのクリスマスローズ苗をプレゼントします。同社のクリスマスローズは、メリクロン(組織培養)という技術によって増殖されています。 メリクロン苗の大きな特徴は、親株の優れた性質をそのまま受け継ぐこと。花形や花色が安定しやすく、生育のばらつきが少ないため、初めて育てる方でも安心して楽しめます。また、ウイルスフリーで健全な苗が得られるのも、メリクロンならではのメリット。 「毎年きちんと咲いてくれる」「株が衰えにくい」といった嬉しい特徴から、長く付き合えるクリスマスローズを育てたい方にこそおすすめです。ガーデニングの楽しみは、育てる時間も含めて味わうもの。信頼できる生産技術から生まれた苗で、この機会にぜひクリスマスローズのある暮らしをぜひ体験してみてください。 また、合計5,000円以上ご購入いただいた方にはオリジナル巾着(先着50名様)もプレゼント! 「買って、学んで、育てて楽しめる」—— ガーデンストーリーならではの特別な来場者特典です(※数量限定・なくなり次第終了)。 【読者プレゼント】チケットを抽選で50名様に!*締め切りました ガーデンストーリーサイトの無料会員制度「ガーデンストーリークラブ」会員限定で25組50名様に 「クリスマスローズの世界展 2026」入場チケットを抽選プレゼントします。 応募方法 ●新規会員登録の方 ①下記リンクの記事より無料会員制度「ガーデンストーリークラブ」にご登録。 ②自動返信メールに記載の応募フォームからご応募。 *自動返信メールが届かない場合はinfo@gardenstory.jpまでご連絡ください。 ●会員登録済みの方 2月6日12時配信のメールマガジンに記載の応募フォームからお応募ください。 *メールマガジン配信設定をしていない方で応募希望の方は、info@gardenstory.jpまでご連絡ください。 ●応募締め切り 2月12日(木)23:59 *当選発表:厳正なる抽選のうえ、発送をもって代えさせていただきます 初めての方へ|このイベントの楽しみ方 昨年展示された華やかなクリスマスローズの寄せ植え。エム・アンド・ビー・フローラの寄せ植え名人ナンバッチこと難波良憲さん制作。 「クリスマスローズ、名前は聞いたことがあるけれど…」 そんな方にこそ、ぜひ訪れていただきたいイベントです。 会場では、 花の選び方 育て方の基本 失敗しない管理方法 なども、展示と実演を交えながら分かりやすく紹介。実物を見て、触れて、専門家に直接質問できるので、 初めてでも安心して苗選びができるのが最大の魅力です。 「1株育ててみたら、すっかり虜に」 ——そんな声が後を絶たない、奥深いクリスマスローズの世界。この春、あなたも一歩踏み出してみませんか? 今年の春は、“本物”に出会いに行こう 一輪の花に、これほど多様な表情が宿る植物は、そう多くありません。育種家の情熱、長年の研究、自然が生み出す偶然—— そのすべてが結晶した、奇跡のような花の世界。この2日間だけの特別な空間で、 あなただけの一株、あなただけの物語に出会ってみませんか? ガーデンストーリー編集部一同、 会場で皆さまにお会いできることを、心より楽しみにしています。
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樹木

ひと鉢で部屋が華やかに! 冬にも春にも楽しめる「アザレア」の失敗しない育て方
アザレアの基本情報 New Africa/Shutterstock.com 植物名:アザレア学名:Rhododendron英名:Rhododendron和名:セイヨウツツジその他の名前:オランダツツジ科名:ツツジ科属名:ツツジ属原産地:交配親のヤマツツジの仲間は、中国、台湾、日本、ベトナムやフィリピンなど形態:常緑性低木 アザレアはツツジ科ツツジ属の花木。日本に自生するヤマツツジやサツキをもとに、ヨーロッパで人の手による交配によって生まれた園芸品種です。もともと日本に自生している植物のため、日本の環境に馴染んで育てやすいのが特徴。ビギナーでも容易に育てることができます。本来の開花期は春ですが、秋から冬にかけて室内で観賞を楽しめるように開花調整された花鉢も多く出回っています。この場合は特に寒さに弱いので、最初のシーズンは日当たりのよい窓辺など、室内で管理するようにしましょう。 樹高は1〜1.5mほどで、低木に分類されています。冬でもみずみずしいグリーンの葉色を保つ常緑性の庭木で、耐寒性はやや弱いものの、暑さには強い性質があります。ただし、真夏に強い日差しを浴びると葉焼けすることがあるので注意が必要です。ちなみに、落葉性で耐寒性のあるエクスバリーアザレアと呼ばれるものもあります。 エクスバリーアザレア‘ゴールデンフレア’。Alex Manders/Shutterstock.com アザレアの花や葉の特徴 Totokzww/Shutterstock.com 園芸分類:庭木開花時期:4月下旬〜5月中旬樹高:1〜1.5m耐寒性:やや弱い耐暑性:強い花色:赤、ピンク、白、オレンジ、紫、複色など 本来の開花期は4月下旬〜5月中旬ですが、冬の鉢花として開花調整されたものも多く出回っています。花色は赤、ピンク、白、オレンジ、紫などのほか、絞り咲きや覆輪咲きといった複色がまじるものなど多様で、カラーバリエーションが豊富にあります。品種によって一重咲きや八重咲き、花弁が緩やかにウェーブするフリル咲きなどがあり、豪華な花姿が魅力です。葉は長卵~楕円形で、濃い緑です。 Katjabakurova/Shutterstock.com アザレアの名前の由来や花言葉 Nick Pecker/Shutterstock.com アザレアという名前は、乾燥を意味するラテン語「Azaleos」から。これは、アザレアが水はけのよい土壌に生育することに由来するとされています。また、和名のセイヨウツツジは、オランダやベルギーなどヨーロッパでアザレアの交配が盛んだったことに由来します。 アザレア全般の花言葉は、「節制」「禁酒」「恋の喜び」などです。また、アザレアの花色別にも花言葉があります。赤い花のアザレアは「節制」、白い花は「あなたに愛されて幸せ」「充足」などです。白い花は花嫁を連想したものとされています。 アザレアの代表的な品種 LariBat/Shutterstock.com 品種改良も盛んなアザレアには大輪で豪華な園芸品種が多数あります。 ‘ロマンスパール’ パステルピンク色の半八重咲きで、大輪の花弁にはゆるやかにフリルが入ります。 ‘越の淡雪’ 清楚なピュアホワイトの花色が魅力。大輪の花弁には淡いグリーンのブロッチが入ります。半八重咲き。 ‘ロザリー’ 優しいピンクの花色で、一重咲きの大輪花が次々に咲きます。 ‘カメレオン’ ヨーロッパから導入された品種。半八重咲きで、白にピンク~赤の絞りが入ります。 アザレアは毒性に注意 Olha Solodenko/Shutterstock.com アザレアは、ほかのツツジ科植物の多くと同様に、グラヤノトキシンなどの成分を含む有毒植物です。中毒症状としては、嘔吐、下痢、けいれんなどが現れます。蜜を含む全草が有毒なので、蜜を吸ったりしないようにしましょう。特に、ペットや子どもが葉などを誤食しないよう注意が必要です。 アザレアの栽培12カ月カレンダー Sunny March/Shutterstock.com 開花時期:4月下旬〜5月中旬(開花調整されていないもの)植え付け・植え替え:5月〜6月中旬肥料:5月中旬〜6月中旬、9月頃入手時期:12月〜翌年3月剪定:5月~6月中旬 アザレアの栽培環境 New Africa/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】日当たりと風通しのよい場所を好みます。強い直射日光を浴びると葉焼けすることがあるので、午前中のみ日が差す東側や、真夏はチラチラと木漏れ日が差すような半日陰になる場所がベターです。 【日当たり/屋内】春先に開花株を手に入れた場合は、日当たりのよい窓辺などに置いて花姿を楽しみます。遅霜の心配がなくなる5月頃から戸外に出すとよいでしょう。 【置き場所】西日が強く当たらない場所や、真冬に寒風が吹きつけない場所を選びましょう。 水はけ、水もちのよい酸性土壌を好むので、地植えではピートモスを施して酸度調整しておきます。室内に取り込む際は、暖房の風が直接当たる場所では花が傷んだり、つぼみが落ちたりすることがあるので注意しましょう。 耐寒性・耐暑性 耐寒性がやや弱く、耐寒温度は5℃程度。暖地を除き、鉢植えにして冬は室内に取り込むなど、寒さ対策が必要です。鉢栽培では、11月下旬くらいまでは寒さを体験させ、凍結するような寒さがやってくる前に、日当たりのよい軒下か、室内の窓辺などに移動して冬越しさせます。 アザレアの育て方のポイント 用土 bluedog studio/Shutterstock.com 【地植え】 植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに40㎝程度の穴を掘ります。掘り上げた土にピートモス、腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 ツツジ科の植物用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。自身で配合土を準備する場合は、鹿沼土小粒3、赤玉土小粒3、腐葉土2、ピートモス2の割合でブレンドするとよいでしょう。 水やり wavebreakmedia/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。 また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。 【地植え】 植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、水を欲しがる開花期や、晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。 【鉢植え】 日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。開花期は水を欲しがるので水切れしないように注意し、真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように管理します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。 肥料 Pawel Beres/Shutterstock.com 【地植え・鉢植えともに】 花後の5月下旬〜6月上旬と、暑さがおさまった9月頃に緩効性肥料を与えて樹勢を保ちます。地植えの場合は、幹のすぐ下ではなく樹冠の下あたりに施すと、肥料成分が根からよく吸収されます。 注意する病害虫 nechaevkon/Shutterstock.com 【病気】 アザレアに発生しやすい病気は、うどんこ病や褐斑病などです。 うどんこ病は、カビによる伝染性の病気で、葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になります。放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると発生しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。 褐斑病は、カビによる伝染性の病気です。主に葉に褐色またはくすんだ茶色の斑点が現れ、下葉から枯れ上がっていきます。雨が多い時期に発生しやすいのが特徴です。病葉を見つけたらすぐに切り取って処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。適用のある薬剤を葉の表と裏に散布して、防除します。 【害虫】 アザレアに発生しやすい害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。 カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われて、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。 アザレアの詳しい育て方 苗の選び方 Taras Garkusha/Shutterstock.com アザレアは、主に晩秋~春にかけて、開花調整された花鉢が出回ります。購入する際はつぼみの多いものを選ぶとたくさんの花が楽しめます。また、葉に褐色の斑点などの異常がないものがよいでしょう。 植え付け・植え替え laenon/Shutterstock.com アザレアの植え付け適期は5月〜6月上旬です。花苗店などでは植え付け適期以外でも苗木が出回っていることがあるので、入手したら植えたい場所へ早めに定植しましょう。ただし、真夏や真冬の気候が厳しい時期は避けたほうが無難です。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って、根を傷めないように植え付けます。苗木がぐらつくようであれば、しっかり根付くまでは支柱を設置してビニタイや麻ひもなどで誘引し、倒伏を防ぎましょう。最後にたっぷりと水を与えます。 地植えの場合、暖地で環境に合って順調に育っているようであれば、植え替えの必要はありません。しかし冬の寒さが厳しい地域では、鉢に植え替えて日当たりのよい暖かい場所で冬越しさせるとよいでしょう。 【鉢植え】 鉢で栽培する場合は、入手した苗より1〜2回り大きな鉢を準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてからツツジ科用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木を鉢に仮置きして高さを決めたら、根鉢をあまりくずさずに植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、根鉢を軽くくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。植え替え後1週間〜10日くらいは、半日陰の場所に置いて養生させます。 日常の手入れ Lapa Smile/Shutterstock.com 【花がら摘み】 アザレアは次から次へと花が咲くので、終わった花は園芸用バサミで切り取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。 剪定 mihalec/Shutterstock.com アザレアの剪定適期は5月〜6月上旬です。7月頃には翌年の花芽ができ始めるので、これ以降に切り詰めると花が咲かなくなってしまいます。そのため、開花後すぐのタイミングを逃さないことがポイントです。 アザレアはよく枝を伸ばすので、込み合っている部分があれば、間引くように枝を切り、風通しをよくします。間引く枝は、枯れ枝や内向きに伸びている枝、勢いよく伸びすぎている徒長枝、ほかの枝に絡んでいる枝などです。途中で切らずに基部まで遡って切り取ります。全体にボリュームが出過ぎて邪魔になっているようであれば、枝の1/3くらいまで切り戻してもOKです。アザレアは芽吹く力が強いので、刈り込みにも耐えます。 増やし方 Kunlanan Yarist/Shutterstock.com アザレアは、挿し木で増やせます。 挿し木とは、枝葉を切り取って土に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、アザレアは挿し木が可能です。 アザレアの挿し木の適期は、6〜7月です。新しく伸びた枝を10㎝ほど、切り口が斜めになるように切り取り、蒸散のバランスを取るために数枚の葉を落とします。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。黒ポットを用意して新しいツツジ科用の培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。 アザレアの美しく鮮やかな花を自宅で楽しもう Varavin88/Shutterstock.com 日本のヤマツツジやサツキをもとにヨーロッパで品種改良されたアザレアは、日本に里帰りした植物ともいえます。促成栽培されたものが多く出回り、冬に華やかな姿を楽しめる鉢花として人気があります。環境に馴染みやすく、寒さと真夏の強い日差しにさえ注意すれば容易に育てられるので、ぜひ自宅に取り入れてみてはいかがでしょうか。





















