アイスランドポピーの特徴や育て方のコツを紹介! 似た品種もご紹介

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花壇に群植すると華やかな景色をつくり出すアイスランドポピー。鮮やかなオレンジや黄色の花がたっぷり咲く姿には元気をもらえそうです。開花期は種類によって3〜6月中旬、種まきで咲かせるなら播き時は9月下旬〜10月頃。花後の6〜7月に採取した種子からも増やせます。この記事では、アイスランドポピーの基本情報や花言葉、詳しい育て方などについてご紹介します。
アイスランドポピーの主な特徴とは
春にカラフルな花を咲かせるアイスランドポピーは、どんな特徴を持っているのでしょうか。ここでは、基本情報や名前の由来、花言葉、花や葉の特徴について解説します。
基本情報

アイスランドポピーはケシ科ケシ属の植物です。原産地はシベリアなど寒い地域で、本来は多年草ですが、日本の暑さを乗り越えられないので一年草として流通しています。和名はシベリアヒナゲシで、大正時代頃に伝わりました。ポピーという名前がつく植物はいくつかありますが、ポピーといえばアイスランドポピーを指すことが多く、最もポピュラーに出回っています。草丈は30〜50cmほどで、花茎を伸ばした頂部で咲くため花壇の中程などに配置するのに向いています。
名前の由来や花言葉

アイスランドポピーという名前から「故郷はアイスランドなのかな?」と思う方がいるかもしれませんね。でも実際は、シベリアで発見された植物なんです。アイスランドのような厳寒地に自生することが、名前の由来となっています。
アイスランドポピーは色別に花言葉があります。赤は「なぐさめ」「感謝」、オレンジは「思いやり」、黄色は「私が勝つ」、白は「眠り」「忘却」です。
花や葉の特徴

アイスランドポピーの開花期は3〜5月。花茎を長く伸ばした先端に、6〜10cmほどの花を一輪咲かせます。花色は赤、ピンク、オレンジ、黄色、白など。切れ込みのある葉をもち、株元で放射状に広がります。
アイスランドポピーの育て方のポイント9つ
ここまで、アイスランドポピーの基本情報や名前の由来、花言葉、特徴などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、植え付けや水やり、施肥、花がら摘みや注意したい病害虫など、育て方について詳しく解説します。
1.栽培環境

日当たり、風通しのよい場所を選びます。日当たりの悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意しましょう。
土壌は、水はけ、水もちのよい環境を好みます。地植えする場合は植え付け前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土づくりをしておくとよいでしょう。多湿を苦手とする傾向があるので、土を盛って周囲よりも高くしておくのも一案です。湿り気の多い場所では、川砂やパーライトなどの土壌改良資材を投入しておくとよいでしょう。また、酸性に傾いた土壌を嫌う性質があるので、土づくりの際に苦土石灰を散布して土壌の酸度調整をしておきます。
冬の寒さには強いのですが、霜柱によって根が傷むことがあるので、バークチップなどを株元に施してマルチングをし、対策をしておいてください。
2.用土

【地植え】
酸性に傾いた土壌を嫌うので、植え付ける3〜4週間前に苦土石灰を散布して土に混ぜ込んでおきましょう。さらに1〜2週間前に腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきます。水はけの悪い場所では、川砂やパーライトなどを施し、周囲より土を盛って土壌改良しておくとよいでしょう。土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
3.種まき

アイスランドポピーは、ビギナーでも種まきから育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。
ただし、手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。アイスランドポピーの苗は春から花苗店に出回り始めます。「1〜2株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、後出の「植え付け」の項に進んでください。
ポピーの種まき適期は、一般地で9月下旬〜10月頃です。ポピーはゴボウのように太く長く伸びる「直根性」の根を持っていて、この根を傷めると後の生育が悪くなるので、「直まき」か「ポットまき」の方法がおすすめです。
【直まき】
土づくりをしておいた場所に、種をばらまきます。アイスランドポピーの種はごく小さく、発芽の際に光を必要とする「光好性種子」のため、土をかぶせる必要はありません。はす口をつけたジョウロで高い位置からやわらかい水流で水やりし、種が流れ出さないようにしましょう。発芽後は間引きながら育成し、最終的に株同士の間隔を20cmほど取ります。密植すると蒸れたり、病気にかかりやすくなったりするので、風通しよく管理しましょう。
【ポットまき】
まず、黒ポットに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れ、種を数粒ずつまきます。アイスランドポピーの種はごく小さく、発芽の際に光を必要とする「光好性種子」のため、土をかぶせる必要はありません。最後に浅く水を張った容器に入れて、底から水を給水します。これはジョウロなどで上から水やりすると水流によって種が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に底から給水しましょう。
発芽後は日当たりのよい場所で管理します。勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。本葉が7〜8枚ついたら花壇や鉢などの植えたい場所に植え付けます。
4.植え付け・植え替え

アイスランドポピーの植え付け適期は種から育てて育苗した場合は10〜11月、花苗店で苗を購入する場合は3〜4月頃です。花苗店で苗を購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選びましょう。
アイスランドポピーは、ゴボウのように太くて長く伸びる「直根性」の根を持っています。この根を傷めると生育が悪くなるので、植え付けの際には根鉢を崩さずに丁寧に扱うのがポイントです。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に苗よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を崩さずに植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、20cmほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
鉢の大きさは、6〜7号鉢を準備しましょう。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きして高さを決めたら苗をポットから出し、根鉢を崩さずに植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
5.水やり

株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
【地植え】
地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥し、茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、多湿にすると株が弱るので、水の与えすぎには注意。土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。冬は夕方に水やりすると凍結の原因になるので、十分に気温が上がった真昼に水やりしましょう。
6.肥料

【地植え・鉢植えともに】
植え付けの際に肥料を施してあれば、必要ありません(鉢植えで使用する市販の培養土にはほとんどの場合肥料が配合されています)。しかし葉色が冴えず、株に勢いがない場合などには、液体肥料を施して様子をみましょう。
7.日常のお手入れや注意点

【冬越し】
秋に種まきから育てて冬越しさせる場合、霜柱によって幼苗の根が傷むことがあります。バークチップなどを株元に施してマルチングをし、対策をしておいてください。
【花がら摘み】
アイスランドポピーは次から次へと花が咲くので、終わった花は花茎の元から摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
8.増やし方

アイスランドポピーは種まきで増やせます。その場合は開花後に種を採取します。開花期が終わりを迎える頃に花がら摘みをやめ、熟したら種子を採取して密閉容器に入れ、種まき適期まで保管しておきましょう。
種まきの方法については、前述の「種まき」の項目を参照してください。
9.注意すべき病害虫

【病気】
ポピーの栽培では、苗立枯病、灰色かび病の発症に注意します。
苗立枯病は、種まき後のまだ幼い苗に発生しやすい病気で、全体が黒ずんでやがて枯死します。土壌に生息する病原菌が感染原因で、高温多湿の条件下で発症しやすくなります。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどで、多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合いすぎていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合いすぎている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
アイスランドポピーの栽培では、アブラムシの発生に注意します。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも不愉快なので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
アイスランドポピーの仲間
日本でガーデニング用として流通しているポピーは、アイスランドポピー以外にオリエンタルポピー、ヒナゲシ、ナガミヒナゲシなどがあります。ここでは、それぞれの特徴についてご紹介します。
オリエンタルポピー

別名オニゲシ、学名はPapaver orientale。原産地はトルコ、イランなどの西南アジアで、寒さには強い一方、高温多湿の環境に弱い性質を持っています。多年草で夏は落葉して休眠しますが、一度植え付ければ毎年開花してくれます。開花期は5〜6月で、花色は赤、オレンジ、ピンク、白、複色など。花姿も一重咲き、半八重咲き、八重咲き、フリンジ咲きがあります。草丈は60〜100cmほど。
ヒナゲシ

別名シャーレーポピー、虞美人草(グビジンソウ)といい、学名はPapaver rhoeas。原産地はヨーロッパ中部で、寒さには強い一方で暑さには弱く、夏を乗り越えられずに枯死する一年草です。開花期は4月中旬〜7月中旬で、花色は白、赤、ピンク、複色など。基本は4枚の花弁をもつ一重咲きですが、八重咲きもあります。草丈は15〜80cmほど。
ナガミヒナゲシ

ナガミヒナゲシは淡いオレンジ色の花色で、繁殖力が非常に強いのが特徴です。根からほかの植物の生育を妨げる物質を出すため、生態系に影響を与えるとして、駆除を推奨する自治体もあります。また、素手で触れるとかぶれることがあるので注意が必要です。
育ててはいけないケシの仲間

アイスランドポピーが属するケシ科の仲間には、麻薬成分を含むために日本国内では栽培が禁じられている種類があります。ケシ、アツミゲシ、ハカマオニゲシの3種類です。しかし、ガーデニング用の植物としては流通していないので、「間違えて育ててしまって、罰せられることはない?」と心配する必要はありません。
春を彩るアイスランドポピー

種まきから簡単に育てられるアイスランドポピーは、ビギナーでも大変育てやすい草花の一つです。花のサイズが大きいため、色の塊となって目に飛び込んでくるため、春の庭を華やかに彩ってくれます。ぜひアイスランドポピーの栽培にチャレンジしてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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