スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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ガーデン
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園【花盛りの4月】
第3回コンテスト会場は「都立砧公園」 公園の正門や駐車場からコンテストガーデンを向かうと見えてくる「東京パークガーデンアワード」の開催を示す2カ所の看板が目印。4月上旬はコンテストガーデンの近くに咲く桜の木の下でくつろぐ人も多く見られました。 2022年に代々木公園から始まった「東京パークガーデンアワード」。第2回の神代植物公園に続き、3回目となる今回は、成城学園、二子玉川など閑静な住宅街からほど近い場所にある都立砧公園(東京都世田谷区)が舞台です。芝生の広場と樹林で構成されたファミリーパークのほか、運動施設や遊具等が設置された広場が整備され、区民みんなに親しまれている公園でコンテストが繰り広げられます。 東京都立砧公園は、芝生が青々とした「みんなのひろば」をはじめ、バラ園、サイクリングコース、‘子供の森’など多数のエリアがあり、秋にはイチョウなどの紅葉・黄葉が楽しめます。 第3回のテーマは「みんなのガーデン」 今回のコンテストエリアは、‘みんなのひろば’前に広がるスペース。これから育っていく5つのガーデンは公園を訪れる多くの人の目を楽しませてくれることでしょう。 天気のよい休日には、家族連れがお弁当を広げる光景もあちこちで見られ、地域の住民をはじめ、多くの人々に親しまれている砧公園。‘みんなのひろば’前で開催される「第3回 東京パークガーデンアワード」のコンテストテーマは『みんなのガーデン』です。「東京パークガーデンアワード」の目指す“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることはもちろん、訪れる人々の五感を刺激し、誰もが見ていて楽しいと感じる要素を取り入れたガーデンであることが求められます。植栽のメインとなる宿根草は、丈夫で長生きすることから、季節ごとの植え替えは行わず、四季ごとに花の彩りがあることも期待されています。 5月25日(日)開催!「入賞者イベント」のお知らせ 第3回東京パークガーデンアワードの入賞ガーデナー5組によるガーデンイベントを5月25日(日)に開催します。入賞ガーデナーが案内する「ガーデンツアー」や「たねダンゴづくり」、「微生物観察ワークショップ」など、子どもから大人まで楽しめるガーデンイベントがいっぱい。ぜひご来園ください(雨天中止)。 ■日 時:2025年5月25日(日)10:00~15:10(雨天中止)■会 場:都立砧公園(東京都世田谷区砧)コンテストガーデンエリア(みんなのひろば前)■参加費用:無料■中止連絡:雨天中止の場合は、イベント前日までに都立砧公園の公式X(旧Twitter)にてお知らせします。 第3回のコンテストガーデン コンテストガーデンが設けられた敷地の平面図。A〜Eの各面積は約40㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、2024年10月に抽選により決定しました。 各コンテストガーデンは、高さ40cmの枠に囲まれた中に作られました。子どもたちの目線にも近い高さで、かがまなくても植物を身近に鑑賞できるのも今回の特徴です。4月の様子。 今回のガーデンでは、通路を挟んで対に設けられた2つ1組の花壇が5つ連なっています。隣接する‘みんなのひろば’や‘ねむのき広場’からコンテストエリア全体を眺めたり、花壇に挟まれた通路を歩きながら、左右に育つ植物を観賞したりするなど、さまざまな角度からガーデンを堪能することができます。 写真手前の北から奥の南に向けて、A・B・C・D・Eの順に花壇が並ぶ。4月の様子。 2024年12月に行われた第1回作庭。5つのガーデン制作に関わった皆さん。 【第3回 東京パークガーデンアワード in 砧公園 最終審査までのスケジュール】 コンテストに挑戦する5名の入賞者が1年を通してガーデン制作に挑む「東京パークガーデンアワード」。2024年12月中旬に、それぞれの区画で1回目の作庭が完了し、2025年2月下旬に2回目の作庭日が設けられています。その後、4月は春の見頃を迎えた観賞性を審査する『ショーアップ審査』、7月は梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査する『サステナブル審査』、11月は秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する『サステナブル審査』が行われ、グランプリが決定します。 以下、入賞者決定~審査結果発表までのスケジュール。 【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 Pick up 月々の植物の様子 4月の植物の様子 スイセン‘タリア’(Aエリア)、フロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’( Aエリア)、アジュガ‘ディキシーチップ’(Bエリア)、チューリップ‘エデュアルトペルガー’(Bエリア) 原種チューリップ・ヒルデ(Cエリア)、フリチラリア・インぺリアス‘オレンジビューティー’(Cエリア)、ベニバナマンサク(Dエリア)、ユーフォルビア・ウルフェニー(Eエリア) 3月の植物の様子 スイセン‘テータテート’(Aエリア)、ブラックローズリーフレタス(Bエリア)、原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’(Cエリア)、プルモナリア‘ダイアナ クレア’(Cエリア) ユーフォルビア・リギダ(ガーデンD)、アザレアツバキ(ガーデンD)、ナルキッスス ‘ペーパーホワイト’(ガーデンE)、クロッカス ‘アードジェンク’(ガーデンE) 2月の植物の様子 シラー・シベリカ‘アルバ’(Aエリア)、シラー・ミシュチェンコアナ(Aエリア)、日本スイセン(Bエリア)、イタリアンパセリ(Cエリア) ローズマリー(Dエリア)、カレックス・オメンシス‘エヴァリロ’(Dエリア)、ナルキッスス カンタブリクス モノフィルス(Eエリア)、コルヌス ‘ケッセルリンギィ’(Eエリア) 1月の植物の様子 左から/ロータス ‘ブリムストーン・ライムゴールド’(Aエリア)、ワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’(Bエリア)、コトネアスター(Bエリア)、エリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’(Cエリア) 左から/庭人さんのビオラ(Cエリア)、モンタナハイマツ(Dエリア)、アロエ ストリアツラ(Eエリア)、ユッカ ‘ゴールデンスウォード’ (Eエリア) 全国から選ばれた入賞者5名のガーデンコンセプトと月々の様子 コンテストのテーマとルールをふまえて制作される5つのガーデン。それぞれのガーデナーが目指す庭を、作者の制作意図や図面、植物リストの一部を紹介しながら、月々の様子を撮影した写真とともにお伝えします。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 【作品のテーマ・制作意図】 皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。 【主な植物リスト】 宿根草:エキナセア‘マグナススーペリア’/ペンステモン‘ストリクタス’/アガパンサス‘ピッチュンホワイト’/クラスペディア‘ゴールドスティック’/オルレア・グランディフローラ‘ホワイトレース’ などグラス類:ペニセタム・ビロサム‘銀狐’/メリニス‘サバンナ’/ホルデューム・ジュバタム/カラマグロスティス・ブラキトリカ など低木:コルヌス・ステラピンク/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’/ニシキギ・コンパクター/コバノズイナ など球根:チューリップ‘フレーミングピューリシマ’/レウコジャム‘スノーフレーク’/アリウム‘グレイスフルビューティ’ など コンテストガーデンA 月々の変化 4月の様子 数種類のチューリップが、ピンク色を軸とした色合いで一斉に咲き始めました。黄色が混ざった小ぶりの花‘ガボタ’がピリリとスパイスを効かせています。周りにはオルラヤやグラス類がふわふわとした草姿で合間を埋めつくし、まさに『ギャザリング=花束』の雰囲気が表現され始めました。 上左/前面を彩っているチューリップ‘パープルエレガンス’と‘ガボタ’。圧倒するようなボリュームで訪れた人を出迎えている。上右/チューリップ‘ガボタ’に寄り添い咲くのは、ナチュラルな雰囲気のブーケに近年よく使われているナズナ(タラスピ・オファリム)。中左/松の枝でやや日陰気味になるコーナーはオルラヤがメイン。中右/後方は明るいピンクのチューリップ‘フレーミングピューリシマ’が賑やかさをアップ。下左/アリウムの隆々とした葉が植栽に立体感をもたらして。下右/下方を軽やかに埋めているフロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’。チューリップ‘ガボタ’とのコントラストが素敵。 3月の様子 2月から東側のガーデンの一角で咲き始めたシラー・ミシュチェンコアナが、黄色いスイセン‘テータテート’とともに、ガーデンのあちらこちらで咲き始めました。また、対の花壇それぞれに一株ずつ植わるユキヤナギが咲き始め、植栽に立体感が出始めています。 左上/林の中の一角を切り取ったような、自然味あふれるシーン。右上/早い時点から勢いよく葉を伸ばす、瑞々しいアリウムが植栽にインパクトを与えている。左下/奔放に枝を広げるユキヤナギがデザインに動きを出している。右下/あちらこちらから顔を出すシラー・ミシュチェンコアナ。先月より花穂が伸びて存在感が増している。 2月の様子 全体的に楚々とした植物で構成されているナチュラルなガーデン。枯れた花茎を残し、頭上から落ちるたくさんのマツの葉を味方につけることで、優しい野の趣が見事に表現されています。白花の2種の球根植物が、いち早く咲き始めました。 左上/クジャクアスターなどの株間で、ひっそりと白い花を咲かせているシラー・ミシュチェンコアナ。草丈2cmにも満たない極小の球根植物。 右上/清楚な彩りを添えるシラー・シベリカ‘アルバ’。原種ならではの繊細さが、ここにはよく似合う。 左下/マツ葉の布団の下から、いくつもの球根が一斉に芽吹き始めて。 右下/1月まで咲いていたアガスターシェ‘モレロ’の立ち枯れの姿が、野趣あふれるシーンを描いている。 1月の様子 2つの花壇の中央に据えられたバイオネストは、線の細い枝で組まれているので、まだ小さく幼い植物ともよく馴染み、オブジェのような存在感を放っています。昨年からちらほらと咲いている名残の花が、高さ20cm程に芽を成長させた球根とともに冬の庭に明るさをプラス。ガーデンの上に伸びるマツから落ちる影ともよく似合い、植栽をより自然な風景に見せています。 左上/クジャクアスターやアガスターシェ‘モレロ’の残花の彩りが、冷たい空気を温めているよう。 右上/ロゼット状に広がるアキレア‘カシス’の株の合間に、球根の芽がひょっこりと顔を出して。 左下/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’の赤褐色の照り葉が、冬の光をきらきらと反射。 右下/成長を牽引するかのように球根類の芽が勢いよく伸びて、リズミカルで楽しげ。 12月の様子 コンテストガーデンA Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 【作品のテーマ・制作意図】 季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。 【主な植物リスト】 宿根草:バプティシア‘ブルーベリーサンデー’/アガスターシェ‘ゴールデンジュビリー’ /糸葉丁子草/スタキス・オフィシナリス などグラス類:カレックス‘プレーリーファイア’/メリニス‘サバンナ’/ぺニセタム・オリエンターレ など低木:ブルーベリー/イチジク/紫式部 など球根:アリウム各種/チューリップ各種 など コンテストガーデンB 月々の変化 4月の様子 西側のガーデンではピンクのチューリップの開花の盛りが過ぎ、東側のガーデンのオレンジ×黄のチューリップにバトンタッチしました。温かみのある色鮮やかな組み合わせが遠くからでも目を引き、心浮き立つ風景が広がっています。中央に植わるブルーベリーの開花がピークを迎え、収穫期の楽しい風景が待ち遠しいガーデンです。 上左/チューリップ‘バレリーナ’とスイセン‘フォーチューン’の元気が出る色合わせ。上右/こんもりと茂るギリア‘レプタンサブルー’の群生の中にチューリップ‘エデュアルトペルガー’が大人っぽいアクセントを加えている。中左/アジュガ‘ブロックスカップ’が広がる傍らで、ポツンポツンと咲くムスカリ・ラティフォリウム。中右/ピンクのチューリップ‘フレーミングピューリシマ’の株元でワレモコウのやわらかい新葉が無数に上がっている。下左/コーナーを彩る矮性のチューリップ‘ポップコーン’。 訪れた人を華やかに出迎えているよう。下右/イチゴと原種のチューリップ・ヒルデの素朴な愛らしさを漂わせるワンシーン。 3月の様子 モコモコとしたバークのマルチングの中からさまざまな小球根が芽を出し、ちらほらと花を咲かせ始めました。先月から開花し始めたニホンスイセンは花数が増え、植栽にやさしい華やぎをもたらしています。ガーデンの手前の方では、シラー・シベリカ‘アルバ’やピンクやブルーのムスカリの愛らしい姿が見られるようになりました。 左上/素朴な風情あふれる植栽にニホンスイセンがよく似合っている。右上/2月下旬に植えられたダークカラーのレタス。茶色いカレックスをクッションにして、ワイルドストロベリー‘ゴールデンアレキサンドリア’との色の対比を効かせている。左下/花壇の縁でひょっこり顔を出すムスカリ‘ピンクサンライズ’。右下/イチゴの株の中から花を上げるムスカリ・アズレウム。 2月の様子 やわらかい新葉を芽吹かせる宿根草のグリーンが、冬の日差しにまぶしく輝き、春の訪れを感じさせています。一番乗りでスイセンが咲き始めましたが、その他にもたくさんの球根類が芽を出し始め、のどかな風景が広がっています。 左上/大株のユンカス・ブルーアローがまだ寂しい植栽にボリューム感を与えている。 右上/日本スイセンが開花し始め、ほんのりと華やぎ始めた。 左下/繊細な細葉を上げるアリウム・レッドモヒカンなどの球根類の芽吹き。 右下/青みがかったルー(ヘンルーダ)の葉が、イエロートーンの植栽のアクセントになっている。 1月の様子 ふかふかとした明るい色のマルチングの中に、瑞々しくやわらかい草花の株が点在する様子は、まさに春遠からじといった風景。やわらかい葉のグラス類が風を受けて花壇に動きを感じさせています。グリーンを残すギリア ‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’や黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’が表土に明るさをもたらしています。S字状の溝部分に入れたトチノキの実やその殻が愛らしく、花壇の中にストーリーを感じさせます。 左上/ギリア‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’の明るいグリーンが、花壇に瑞々しい景観を作り出している。 右上/数カ所に設けたサークルネストが、愛らしい鳥の巣を思わせる。左下/冬の陽光に黄金色に輝く、黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’とブラウンがかったカレックス ‘プレイリーファイアー’の取り合わせが美しい。 右下/赤い実をつけるコトネアスターのシルエットがユニーク。 12月の様子 コンテストガーデンB Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 【作品のテーマ・制作意図】 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。 【主な植物リスト】 バンカープランツ:へメロカリス/ユウスゲ/イタリアンパセリ など宿根草:モナルダ・ブリドブリアナ/エキナセア‘メローイエロー’/アスター‘オクトーバースカイ’ などグラス類:スキザキリウム‘ハハトンカ’/ぺニセタム・カシアン/パニカム‘シェナンドア’ など低木:キンカン/アロニア/コバノズイナ など球根:ダッチアイリス‘ブルーマジック’/カマシア/カノコユリ‘ブラックビューティー’ など コンテストガーデンC 月々の変化 4月の様子 ビオラ中心の素朴だった風景に、オレンジのフリチラリアや純白のスイセンが開花し、華やかさとボリュームが加わりました。静かに眠っていたガーデンの‘目覚め’が強く感じられます。花壇の縁や通路沿いでは小さなスミレや原種のチューリップ、プルモナリアが開花。コンパクトな株姿が斜面に植わる様子はまるでヨーロッパの自生地のようです。 上左/フリチラリア・インぺリアス‘オレンジビューティー’×アリウムの葉が、動きのあるユニークな風景を創り出す。上右/プルモナリア‘ダイアナクレア’とスイセン‘タリア’の色合わせが上品な雰囲気の一角。中左/小さなビオラ・ラブラドリカとグラスのメリカ・ヌタンスの華奢な組み合わせが、眺める人の視点をぐっと寄せつけている。中右/春の日差しを愛らしく反射する、原種のチューリップ・トルケスタニカとヒルデの群落エリア。下左/エピデディウム‘ピンクエルフ’とビオラが描く、野趣に富んだ風景。下右/アシズリノジギクの上にゲラニウム・ツベロサムが咲くまでは、スイセン‘タリア’が華やぎをもたらしているエリア。 3月の様子 2月下旬の作業でビオラと数種類の苗が加わったことで、宿根草や球根の花が咲くまでのガーデンは、よりにぎやかになりました。ビオラは楚々としながらもニュアンスのある品種を用いているので、デザインに深みを感じさせます。植栽の中をよく見ると、チューリップやアイリスが広がる中で、勢いよくフリチラリア‘オレンジビューティー’の新芽が上がり始めました。 左上/パープルのビオラが広がるエリアで、フリチラリア‘オレンジビューティー’がニョキリと芽を伸ばし始めた。右上/東側のガーデンの一角でひっそりと咲くプルモナリア‘ダイアナ クレア’。左下/ダッチアイリスの群植がユニークな景色を作る。右下/原生地を思わせる咲き姿の原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’。 2月の様子 なだらかな丘に咲くビオラの株が少しずつ大きく育ってきました。全体的には大きな変化はありませんが、よく見ると球根類の小さな芽があちらこちらに芽吹き始め、これから先の時期への期待が高まります。 左上/ビオラの花色やモナルダ・ブラドブリアナの紫葉、グラスの赤みが、このエリアのメインカラーとなっている。 右上/腐葉土をかぶり、葉をつけたまま越冬したアシズリノジギクが、ひっそりと顔をのぞかせて。 左下/愛らしい綿毛が、晩冬の風情を高めているツワブキ。 右下/枯木立のアロニアやコバノズイナの合間に芽を出しているのは、ダッチアイリス‘ブルーマジック’。 1月の様子 花壇の中は盛土された場所や溝が掘られた場所があることで全体に起伏があり、いくつもの丘が広がるような風景を思わせます。斜面に植わる落葉した数本の灌木と冬枯れの宿根草が沢沿いのようなシーンを連想させたり、ビオラが群植する様子がのびやかに広がる丘のようなシーンを感じさせたりするなど、さまざまな素朴な風景が展開。全体にのどかな雰囲気が漂っています。 左上/落葉したアロニアやノリウツギの数本の幹が、野趣のあるシーンを演出。 右上/長い花茎の先に残るツワブキの花が、侘びと力強さを感じさせる。 左下/丘の斜面に咲き群れるように広がるビオラたち。 右下/まだ厳しい寒さを物語るほかのエリアとは異なり、青々としたイタリアンパセリとエリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’が明るい透明感を添えている。 12月の様子 コンテストガーデンC Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 【作品のテーマ・制作意図】 ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。 【主な植物リスト】 宿根草(蜜源植物):ルドベキア/オミナエシ/モルダナ/アザミ/ガウラ/スミレ/チェリーセージ など宿根草(四季の移ろい):グラス類のフェスツカ/カレックス/イトススキ/フウチソウ/チカラシバ/レモングラス/ミューレンベルギア‘カピラリス’ など低木類(鳥類・昆虫類来訪):スモークツリー‘グレース’/ガマズミ/アロニア‘メラノカルパ’カラーリーフ:カラスバセンリョウ/カリステモン‘リトルジョン’/イリシウム‘フロリダサンシャイン’その他(季節の果実や葉):ビルベリー/コバノギンバイカ/レモンマートル コンテストガーデンD 月々の変化 4月の様子 先月までは主に灌木が存在感を放っていましたが、4月になると数種の球根が咲き、ほんのり華やぎが加わり始めました。この時季の主役はあちらこちらに点在するピンクのチューリップ。濃緑の葉や銅葉の灌木を背景に、つややかさを際立たせています。2月末に据えた菌糸を固めたステップにオオヒラタケが生え始め、地中の活発な様子がうかがえます。 上左/カラーリーフの中でチューリップ‘メンフィス’の華やぎが際立っている。上右/冬の間からふっくら生成り色のつぼみをつけていたベニバナマンサクがようやく開花。中左/カリステモン‘リトルジョン’のホットな赤花が、他とは異なる異国情緒を漂わせて。中右/まだ銅葉のような葉色をしたヒメハマヒサカキが、植栽に陰影をプラス。下左/手前側を軽やかに埋めているのは、ユーフォルビア・リギダとフェスツカ・グラウカ。下右/ひらひらとしたオオヒラダケのキノコが、菌糸ステップからヒョコリと現れている。こんな風景もこのガーデンならでは。 3月の様子 冬の景色として残していたアスターやススキなどのシードヘッドを2月末の作業で切り戻し、すっきりとした風景となりました。ガーデン手前側のラムズイヤーやクリーピングタイムは茶色い葉が整理され、芽を出した球根類と共に、植栽の瑞々しさをアップ。茶~黄の色彩だった風景は、徐々に緑色の風景へと移ろいつつあります。 左上/つややかな緑が映えるチューリップの芽出し。右上/アザレアツバキが開花。褐色の葉がカラーリーフとして活躍し、イリシウムの黄葉やアカシアの銀葉との色の対比が楽しめる。左下/ラムズイヤー、クリーピングタイムが青々と成長し、ガーデンの色合いをグリーンに牽引。右下/ニョキリと伸びる茎の先に花をつけるユーフォルビア・リギダ。株元では新しい芽をたくさん確認。 2月の様子 冬の装いをした低木の下で、成長の早い宿根草や球根類が成長を始めています。ふわふわとした枯れ姿のノコンギクの株元には、新たな葉がびっしりと広がっています。マルチングに用いたナシのチップがキノコの菌糸と絡み合い、朽ちて土に馴染み始めました。 左上/ベルベット調の質感を持つベニバナミツマタのつぼみが日に日に膨らんでいる。 右上/まわりとの取り合わせで、朽ちた姿にも風情があるアメジストセージやフェスツカ・グラウカ。 左下/ひと足早く青々と成長しているバーベナ・ボナリエンシス。 右下/ラムズイヤーの傍らで芽吹く、赤い新芽のガウラ。奥には球根類がたくさん芽を出している。 1月の様子 落葉した灌木類と冬枯れしたススキやノコンギクなどの宿根草とのコンビネーションが、冬の日差しに反射し、きらめきのある風景を描いています。一方、常緑樹のモンタナハイマツやローズマリーの瑞々しくどっしりとした重量感が、花がないこの時期にも豊かな表情を見せてくれます。所々に配された菌糸を固めて作った平板をめくると、接地面から菌糸が広がっており、土中の微生物たちがぐんぐんと成長しているのが分かります。 左上/アーティチョークのギザギザとした葉で、空間に造形的な面白さをプラス。 右上/枯れ姿のノコンギクが風情たっぷり。フサアカシアなどの灌木同士を、ふんわりとつないでいる。 左下/赤みを帯びたユーフォルビアのユニークなフォルムが、植栽のデザインに動きをもたらしている。 右下/冬の間も楽しめる、モンタナハイマツ×テンジクスゲ×ツワブキの造形の異なる常緑植物の組み合わせ。 12月の様子 コンテストガーデンD KINUTA “One Health” Garden 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 【作品のテーマ・制作意図】 私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。 【主な植物リスト】 宿根草:マンガベ ‘マッチョモカ’/アムソニア ‘ストームクラウド’/アガパンサス ‘ブラックマジック’ /アネモネ トメントーサ/ジンジバー(ミョウガ)斑入り/イリス・エンサタ(ハナショウブ)‘バリエガータ’/パトリニア プンクティフローラ/タリクトラム ‘エリン’ /ユーフォルビア ‘ファイアーグロー’/ユーパトリウム ‘リトルレッド’ などグラス類:カラマグロスティス ‘カールフォースター’/モリニア ‘トランスペアレント’ /アンドロポゴン ‘ブラックホークス’ /スキザキリウム ‘ハハトンカ’ /コルタデリア ‘ミニパンパス’/メリニス ‘サバンナ’/ムーレンベルギア/スティパ/ホルデウム など低木:ネリウム(キョウチクトウ)‘ペティットサーモン’/コルヌス(サンゴミズキ)‘ケッセルリンギィ’/ロロペタルム (トキワマンサク) ‘黒雲’ /ブッドレア・ グロボサ など球根:ナルキッスス(スイセン)タリアなど数種/チューリップ(原種、園芸種含めて多品種)/アリウム (開花期をずらして数種)/イキシア・バビアナ・ワトソニアなどの南アフリカ原産種 など コンテストガーデンE 月々の変化 4月の様子 グラベルガーデンのような趣から一転! スイセンやチューリップ、フリチラリアなどの球根に加えてラナンキュラス・ラックスも満開を迎え、一気に華やぎのある風景となりました。 花色の美しさに加え、楽しませてくれるのが個性豊かな春咲き球根の開花リレーやリーフの鮮やかな芽吹き。独創的、かつ景色の移ろいと生命の歓喜を堪能できる季節です。 上左/コーナーで満開を迎えたロロペタルム’黒雲’の濃厚な銅葉と濃赤花が目を引く。黄金葉のトラデスカンティア‘スイートケイト’、青紫花のシラー・シベリカとのコントラストが挑発的。中央のアンティーク調の一輪はチューリップ‘ラ・ベルエポック’、その左、細い外弁に緑色がのる咲き方がユニークな白半八重チューリップは‘ホワイトバレイ’。 上右/ピンク花で黒軸のチューリップ‘ライトアンドドリーミー’やスイセン‘タリア’、銅葉のアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’の濃厚な対比がやわらかい葉群の中で際立っている。中左/ペルシカリア‘ゴールデンアロー’の黄金葉とチューリップ‘ハッピーフィート’の明暗の対比が鮮やか。 中右/大型で彫刻的な姿・不穏な花色のフリチラリア・ペルシカがシーンをぐっと劇的に引き締めて。下左/ユッカ‘ゴールデンスウォード’の株元を軽やかに彩るアスフォデリネ・ルテアの細葉とベロニカ‘ジョージアンブルー’の紫花。下右/原種系のチューリップ ‘ジャイアントオレンジサンライズ’。独特な葉模様と巨大花が個性的なフォーカルポイントに。 3月の様子 グラベル仕上げの地面で個性を放つ植物たち。それら一つひとつにフォーカスして楽しめるのは、地上部が少なく隙間があるこの時季ならではの見どころです。さまざまな芽が小さな景色を織り成す中、今春の一番手で花をつけているのはスイセンとクロッカスの2種。このガーデンでは真っ白い花が見られるのは春の初めだけで、これからカラフルに色づく植栽の静かなイントロダクションとして、清楚な彩りを添えています。 左上/世界の多種多様な植物が、健やかに成長できるよう配慮して植えられたガーデン。右上/ベタっと広がるアリウム ‘マイアミ’。アリウムだけでも大小・姿形さまざまに展開する多様な種類が用いられている。左下/透明感あふれるナルキッスス パピラケウス。右下/白花の外側の花弁が紫色のクロッカス ‘プリンスクラウス’。自然界で見られる“コロニー(群生)”のように、ぎゅっとまとめて植えている。 2月の様子 中央のニューサイランを軸にして渦を描くように設けられた花壇に、早くも植物たちが色形の異なる個性を見せ始めました。現在は、造形的なフォルムのアロエやエリンジウム ‘フィジックパープル’、黒葉のベルゲニア ‘レッドスタート’、ペンステモン ‘ダークタワーズ’などの植物が、他にリードして存在感を放っています。その間では小さな宿根草や球根が愛らしく芽を伸ばして。 左上/芽出しから独特な姿を見せるチューリップ ‘ジャイアントオレンジサンライズ’。 右上/葉の縁が赤く色づくチューリップ シルベストリスと黒みがかる繊細なダイアンサス カルスシアノルム、そしてベタっと大きめの葉を広げるフロミスなどが植わるエリア。どこを切り取っても組み合わせの妙が感じられる。 左下/ユッカの傍らに植わる、クルクルと渦を描く姿がユニークなアスフォデリネ ルテア。個性的だがブルーがかるやわらかい質感が、ユッカの強烈な雰囲気を和らげている。 右下/マットな革質の黒葉ならではの質感で存在感を放っているのはベルゲニア‘レッドスタート’。 1月の様子 化粧砂利のような明るい表土とアールを描く通路のデザインは、植物が小さなこの時期の大きな見せ場の一つとなっています。見下ろした風景はまるでノットガーデンのよう。常緑性のニューサイランやアロエなどのほかは、冬季落葉性の宿根草や低木類で、地上部がとても小さかったり枝のみだったりしますが、冬越しのロゼット葉の造形やカラーステムがとてもユニーク。それだけに、これからの成長と風景の変化も大きな見どころです。 左上/幹立ちして展開するアロエ ストリアツラと、カレックス ‘エヴァリロ’のライムイエローの葉が、植えたてのため不織布を被せて防寒養生中のベスコルネリアをやんわりと目隠し。右上/鹿沼土と軽石をブレンドした明るい表土をトキワマンサク ‘黒雲’の照りのある黒葉で引き締めている。左下/細い葉をふんわりと広げるルッセリア エキセティフォルミスやカレックス ‘プレイリーファイアー’、ロドコマ カペンシスに矮性のネリウム (キョウチクトウ) 、ネリウム ‘ペティットサーモン’を組み合わせた、植物の多様な面白さが感じられるシーン。右下/多くの植物が冬季落葉中のなか、放射状に葉を広げるエリンジウム ‘フィジックパープル’が、目を引くアクセントとして活躍しながら空間を埋めている。 12月の様子 コンテストガーデンE 「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 12月下旬、作庭後の様子。 5つの花壇のコンセプトについて詳しいレポートはこちらをチェック! コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせください。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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樹木
ハゴロモジャスミンはどんな花? 特徴や花言葉、育て方を解説
ハゴロモジャスミンの基本情報 tamu1500/Shutterstock.com 植物名:ハゴロモジャスミン学名:Jasminum polyanthum(ヤスミウム・ポリアンツム)英名:Pink Jasmine和名:ハゴロモジャスミン(羽衣素馨)その他の名前:ハゴロモソケイ、アラビアンジャスミン、ボルネオソケイ、 ピンクジャスミン科名:モクセイ科属名:ソケイ属原産地:中国雲南省形態:半常緑性つる性低木 ハゴロモジャスミンは、モクセイ科ソケイ属の半常緑性つる植物。ジャスミンティーなどに利用されるマツリカなどと同じジャスミンの仲間です。原産地は中国南部で、暑さには強いものの寒さにはやや弱い性質です。暖地では地植えにしても越冬しますが、冬に0℃以下になる地域では、鉢栽培にするか、地植えにしても冬は鉢上げして日当たりがよく暖かい場所で管理するとよいでしょう。 ハゴロモジャスミンは、つるを絡ませながら旺盛に生育します。つるの長さは2mほどになるので、植え付ける際は、支柱やフェンス、アーチ、オベリスクなど、つるを絡ませるための構造物を用意しておきましょう。 ハゴロモジャスミンの花や葉の特徴 Deni Williams/Shutterstock.com 園芸分類:庭木・花木開花時期:4~5月樹高:2m耐寒性:やや弱い耐暑性:強い花色:白 ハゴロモジャスミンの花色は白。ピンクまたは白のつぼみを立ち上げ、純白の5弁花が咲きます。花径は1〜2cmと小さいのですが、花数が多く一斉に開花するので、つるを伸ばした面を覆い尽くし、大変見ごたえがあります。花が咲くと甘い香りが辺りに漂うのも魅力。上品な芳香ではありますが、かなり強く香るので、敏感な方は気分が悪くなってしまうこともあるようです。 開花期には小花が煙るように咲いて、それは見事な景色を作り出しますが、じつは葉のフォルムも繊細で美しく、開花期以外の葉姿にも観賞価値があります。庭で育った花を花瓶などに活ける際には、飾り葉として利用しても素敵ですよ! ハゴロモジャスミンの名前の由来と花言葉 ViktoriaIvanets/Shutterstock.com ハゴロモジャスミンの名前の由来は、昔から日本で言い伝えられている「天女の羽衣」です。淡いピンクのつぼみから咲き進んで、やわらかな質感の白い花が咲く様子が、天女がまとう羽衣を連想させることから名づけられました。 ハゴロモジャスミンの花言葉は、「誘惑」「官能的な愛」「優しさを集めて」など。芳醇な香りを放ち、人を魅了することに由来しています。「あなたは私のもの」という花言葉もあり、これはインドで恋人から贈られたハゴロモジャスミンの花を、女性の髪に編み込む風習にちなんだものとされています。 なお、ジャスミンは、「Jasmine」と書きます。「神様からの贈り物」という意味のペルシャ語「ヤーサマン(ヤースミーン)」が語源となっているようです。 ハゴロモジャスミンの代表的な種類 ハゴロモジャスミンには、いくつかの品種があります。 ミルキーウェイ ミルキーウェイは、葉を縁取るようにミルキーカラーの斑が入る品種です。開花していない時期は、カラーリーフプランツとして存在感を発揮します。 レッドスター レッドスターは、つぼみが赤いのが特徴で、開花した白い花とのコントラストが美しい品種です。 ハゴロモジャスミンの香り simamusume/Shutterstock.com ハゴロモジャスミンは「香りの王様」と表現されるほど、強い芳香を持っています。フローラル系の甘い香りで、「姿は見えないけれど、どこかにハゴロモジャスミンが咲いている気配がある」といわれるほど広範囲に存在感をアピールします。じつはハゴロモジャスミンは虫媒花で、受粉を虫に頼っているため、強い香りを放って虫を誘い出しているのです。特に夜になると香りが濃くなるのが特徴です。 ハゴロモジャスミンの栽培12か月カレンダー Ness.BD/Shutterstock.com 開花時期:4〜5月植え付け・植え替え:3月中旬〜4月中旬、9月下旬~10月下旬肥料:2月上旬~3月下旬、5月下旬~6月下旬 ハゴロモジャスミンの栽培環境 simamusume/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】 ハゴロモジャスミンは日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。屋外に植える場合はほかの植物が密集していない、日光がよく当たる場所を選びましょう。 【日当たり/屋内】 ハゴロモジャスミンは屋内でも栽培可能です。屋外と同じく、日当たり・風通しがよい場所に鉢植えを置いておきましょう。 【置き場所】 ハゴロモジャスミンは水はけのよい環境を好みます。地植えの場合は水はけがよい土壌を選び、鉢植えの場合は土や鉢の水はけにも注意しましょう。 耐寒性・耐暑性 ハゴロモジャスミンは寒さにやや弱く、暑さに強い植物です。冬は北風が吹く場所を避け、気温が0℃を下回る場合は屋内に移動しましょう。 鉢植えの場合は春〜秋に屋外で十分に日を浴びさせて、冬のみ屋内に移すのもおすすめです。 ハゴロモジャスミンの育て方のポイント Olga Ilinich/Shutterstock.com 用土 【地植え】 地植えの場合は腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んだ用土を使います。肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。土壌が粘土質や砂質、水はけの悪い場合は、腐葉土や堆肥を多めに入れておきましょう。 【鉢植え】 鉢植えの場合は、赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合土を作ります。手軽に用土を手に入れたいなら、市販の草花用培養土もおすすめです。水やりのときに水があふれないよう、鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安に土を入れましょう。 水やり wavebreakmedia/Shutterstock.com 【地植え】 植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥しすぎる場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりするとすぐにぬるま湯になり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【鉢植え】 日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイントです。 また、真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないようにします。真夏は気温が上がっている昼間に水やりするとすぐにぬるま湯になり、株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は鉢内が乾きにくくなるので、水やりを控えめにして管理します。 肥料 New Africa/Shutterstock.com 地植え、鉢植えともに、2月上旬〜3月下旬に緩効性化成肥料を株周りに施し、土によくなじませます。春からの生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり、旺盛に枝葉を広げることにつながります。 また、地植え、鉢植えともに5月下旬〜6月下旬頃、開花が終わったら緩効性化成肥料を与え、土によくなじませます。これは花を咲かせてエネルギーを消耗した植物に、体力を回復させる目的で与える肥料で、「お礼肥(おれいごえ)」といいます。「たくさん花を咲かせてくれてありがとう」という気持ちを込めて与えましょう。 注意する病害虫 muroPhotographer/Shutterstock.com 【病気】 発生の心配はほとんどありません。 【害虫】 4〜10月にアブラムシが発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせてしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじき落としたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用するのがおすすめです。 ハゴロモジャスミンの詳しい育て方 tamu1500/Shutterstock.com 苗の選び方 ハゴロモジャスミンの苗を選ぶ際は、茎が太くしっかりとしたものがおすすめです。葉色がよい、カビや虫がいないかどうかもチェックしましょう。 植え付け・植え替え wavebreakmedia/Shutterstock.com 【地植え】 植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに30〜40cm程度の穴を掘り、掘り上げた土と肥料などを混ぜ込んで戻します。 植え付けの段階では、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘ります。つるを伸ばして生育するので、フェンスやオベリスクなどの構造物に誘引しておきましょう。植え付けの最後には、たっぷりと水を与えます。 一般地への地植えでは、植え替えは特に必要ありません。冬の寒さが厳しく0℃以下になる場合は、10月頃に鉢に植え替えて、室内の日当たりのよい場所で管理しましょう。霜の心配がなくなった頃に、再び庭に植え付けます。 【鉢植え】 Nataly Studio/Shutterstock.com 鉢植えの場合、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。 次に、苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。地植えと同じく、フェンスやオベリスクにつるを誘引しておくとよいでしょう。 最後に、鉢底から流れ出すまで十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。 花が終わる頃、根詰まりしそうになったら植え替えのタイミングです。 支柱やフェンスなどにつるを誘引している場合は、枝先から出ている枝を切り取ってつるを丁寧にはずします。根鉢を1/3くらいまで崩して、一回り大きな鉢に植え替えましょう。 日常のお手入れ 【花がら摘み】 ハゴロモジャスミンは、花が終わっても花弁を地面に散らすことがなく、茶色く枯れ込んで枝葉にそのまま残ります。放置すると見た目が悪いので、終わった花はまめに摘み取りましょう。ハサミを使う必要はなく、花弁を手でつまむとポロリと取れるのが特徴です。株周りを清潔に保つことで病害虫を抑制することができ、また株の勢いが保たれて、次から次へと花が上がってきます。 剪定・切り戻し Shigeyoshi Umezu/Shutterstock.com ハゴロモジャスミンの剪定の適期は、花が終わった後です。 つるが旺盛に茂りすぎて樹形を乱していたり、勢力を伸ばしすぎてほかの植物に悪い影響を及ぼすようであれば、株全体の2/3くらいまでを目処に切り戻してかまいません。剪定後もバランスを崩しているようであれば、込みすぎている場所を適宜間引くようにして切り取り、風通しをよくします。 ハゴロモジャスミンの花芽は、成長が止まった後の晩秋から冬にかけて形成されます。それ以降に剪定すると花数が少なくなってしまうので、注意しましょう。 仕立て方 Photology1971/Shutterstock.com ハゴロモジャスミンは、つるを支柱やフェンス、トレリスなどに誘引することで、好みの形に仕立てることができます。ハゴロモジャスミンのつるが伸びてきたら、麻ひもや専用のクリップを用意して、仕立てに挑戦してみましょう。 仕立てるときは、ハゴロモジャスミンの茎にひもをかけて1~2回交差させ、ひもの残りを支柱に結びます。つるの成長を妨げないように、茎と支柱は密着させず、余裕を持って結びましょう。 植える場所に合わせて、育てながらデザインできるのが仕立ての魅力です。つるの絡ませ方や広げ方を工夫して、素敵な空間を演出しましょう。 夏越し・冬越し ハゴロモジャスミンは暑さに強いので、夏越しは必要ありません。 冬は0℃以下にならない場合、冬越しは不要です。ただし、冬に0℃を下回る地域では室内に移動しましょう。花芽がついた後、霜が下りる前が冬越し準備の目安です。 増やし方 Taras Garkusha/Shutterstock.com ハゴロモジャスミンは、挿し木で増やすことができます。挿し木の適期は9月頃です。春から伸びた若くて勢いのある枝を選び、2〜3節つけて切り取ります。水を入れたコップなどに挿して水揚げした後、草花用培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した枝葉を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理しましょう。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。 家庭でハゴロモジャスミンを育ててみよう Esin Deniz/Shutterstock.com 開花期には一気に満開になり、強く芳醇な香りを放つため「春がきた!」と強く感じることのできるハゴロモジャスミン。咲き姿も香りも素晴らしく、ガーデナーに人気の植物です。ぜひハゴロモジャスミンを庭に迎え入れてはいかがでしょうか。
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一年草
【ラグラス】ウサギのしっぽのようなフワフワの穂が魅力! 特徴や育て方のポイントを解説
ラグラスの基本情報 Kristy craggs/Shutterstock.com 植物名:ラグラス学名:Lagurus ovatus英名:bunnytail、bunny tail grass、hare's tail、hare's tail grass、rabbit tail grass和名:ウサギノオその他の名前:ラビットテールグラス、バニーテール科名:イネ科属名:ラグラス属原産地:地中海沿岸形態:一年草 ラグラスは、イネ科ラグラス属の一年草で、植付け後は一年以内に枯死してしまう、ライフサイクルの短い植物です。原産地は地中海沿岸で、寒さや暑さに強く、丈夫で育てやすいので、ガーデニング初心者にもおすすめ。ただし、こぼれ種で自然に増えるので、増えすぎには注意が必要です。草丈は20〜40cmの矮性種と、40〜60cmの高性種があります。茎を伸ばした先につけるふっくらとした穂が愛らしく、切り花にして主役の引き立て役にしたり、ドライフラワーにして長く楽しんだりと、室内に飾っても素敵。日本の雑草として知られる「ねこじゃらし」と同じ仲間で、ラグラスはガーデニング用に改良された品種があります。 ラグラスのドライフラワー。Natureveryday/Shutterstock.com ラグラスの花や葉の特徴 IamTK/Shutterstock.com 園芸分類:草花開花時期:4月下旬〜7月草丈:20〜60cm耐寒性:強い耐暑性:強い花色:白 ラグラスは、グラス類に分類される草花で、フワフワとした質感の穂を観賞します。穂を楽しめるのは4月下旬〜7月。穂の長さは、高性種で5cmくらい、矮性種で3cmくらいです。葉はイネ科の植物らしい、細くて長い姿が特徴で、産毛に覆われています。 ラグラスの名前の由来や花言葉 Picmin/Shutterstock.com 日本で普及しているラグラスの名前は、学名のLaguras ovatus(ラグラス・オバタス)が由来となっています。ラグラスはギリシャ語の「lagos(ウサギ)」と、「oura(しっぽ)」からきているとされ、意味は「ウサギのしっぽ」。和名もそのままウサギノオで、英名もバニーテール、また別名としてラビットテールグラスがあるなど、いずれも見た目の印象などが由来となっているようです。また、ラグラスの花言葉には、「私を信じて」「感謝」などがあります。 ラグラスの代表的な品種 Lynn Hardies/Shutterstock.com ラグラスには、よりガーデニングで手軽に楽しめるように改良された品種が出回っています。‘バニーテール’は、矮性種でコンパクトにまとまるので庭や鉢植えなどで扱いやすい品種です。丸みを帯びた短めの穂も愛らしく、人気があります。ラグラス・オバタスは、学名そのままで販売されているもので、特に記載がなければ高性種と判断できます。大きめに育つので、ワイルドな草姿を生かすとよいでしょう。 ラグラスの栽培12カ月カレンダー 開花時期:4月下旬〜7月植え付け:3〜6月、10〜11月肥料:特になし種まき:9月下旬〜11月 ラグラスの栽培環境 F.Neidl/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では葉色が冴えずに穂つきも悪くなり、徒長して軟弱な株になるので、日光不足に注意しましょう。 【日当たり/屋内】一年を通して屋外での管理が基本です。 【置き場所】高温多湿を苦手とし、やせ地や乾燥地でもよく育ちます。また、弱アルカリ性から中性の土壌を好むので、地植えでは植え付けの1カ月ほど前に苦土石灰を散布しておくのがポイント。水はけの悪い場所では盛り土をして、周囲より少し高くしておくとよいでしょう。 耐寒性・耐暑性 ラグラスは耐寒性が高く、戸外でも特に防寒対策をせずとも越冬します。一年草なので、夏越し対策も特に必要ありません。 ラグラスの育て方のポイント 用土 funnyangel/Shutterstock.com 【地植え】 ラグラスは極端に酸性に傾いた土壌を嫌うので、植え付けの1カ月ほど前に苦土石灰を、表土がうっすらと白くなる程度に散布してよく耕しておきます。さらに植え付ける1〜2週間前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を植え場所に投入し、よく耕して水はけのよい土壌をつくっておくとよいでしょう。植え付けの少し前に土壌改良資材や肥料などを施しておくことで次第に分解して土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。 水やり cam3957/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えましょう。 真夏は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 育苗中、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。 【地植え】 根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になります。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。ラグラスは多湿を嫌うため、乾燥気味に管理することが大切です。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。 肥料 Sarycheva Olesia/Shutterstock.com 【地植え】 植え付ける際に元肥を施してあれば、特に追肥の必要はありません。ただし、株に勢いがないようであれば、液肥を与えて様子をみてください。 【鉢植え】 鉢植えの場合も元肥が施してあり、株に勢いがあれば特に不要です。しかし、鉢栽培では水やりと共に肥料成分が流亡しやすいので、生育が著しい時期は10日に1度を目安に、薄めの液体肥料を施すとよいでしょう。 注意する病害虫 nechaevkon/Shutterstock.com 【病気】 ラグラスは病気に強い植物ですが、まれに根腐れすることがあります。 根腐れは地中にある根に発生するために、他の病気よりも発見が遅れやすいので注意が必要です。日中に地上部が萎れるようになり、株に勢いがなくなっているようなら、根腐れを疑います。感染すると根が茶褐色〜黒に変色して枯死していき、地上部に水分や養分を送るのが難しくなって、やがて地上部の茎葉も黄色く変色して枯れてしまいます。株を引き抜いてみると、ほとんど根がついていないこともあるほどです。水はけのよい土づくりが大切で、また株が茂りすぎているようなら適宜間引いて風通しよく管理しましょう。適用のある殺菌剤で防除するのも一案です。 【害虫】 ラグラスに発生しやすい害虫は、アブラムシです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。 ラグラスの詳しい育て方 苗の選び方 苗を購入する際は、節間が短くがっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。黄色く傷んだ葉がついているものや虫食い痕のあるもの、ヒョロヒョロと茎葉が長く伸びて弱々しいものは避けたほうが無難です。 植え付け・植え替え Vasyliuk/Shutterstock.com ラグラスの植え付けの適期は、3〜6月または10〜11月です。ただし、植え付け適期以外にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、20〜30cmくらいの間隔を取っておきます。 ラグラスは一年草で、開花後は枯れてしまうので植え替える必要はありません。 【鉢植え】 鉢で栽培する場合は、5〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に入れて仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 ラグラスは一年草のため、開花後は枯れてしまうので植え替える必要はありません。 日常のお手入れや注意点 yoshiex/Shutterstock.com 【刈り込み】 草姿が乱れてだらしなく見えるようであれば、草丈の半分くらいまで刈り込んでもかまいません。ただし、穂が出始めてからの刈り込みはNGです。 【増えすぎに注意】 ラグラスは、こぼれ種で増えるほど強健な性質です。しかし、「環境に馴染みすぎたのか、増えすぎて困る」といったケースも発生しがちに。雑草化して、他の植物との調和を乱してしまう場合は、早めに抜き取るなどして対処しましょう。 増やし方 Gogaspb/Shutterstock.com ラグラスを増やす方法は種まき一択です。ここでは、ラグラスの種子の採取の仕方、種まきの方法について解説していきます。 【採取の方法】 9月下旬〜11月、茶色くなってきた穂を採取。茶色いヒゲを引っ張ると、種子が取れやすくなります。ラグラスの種子には毛がついていますが、つけたままでもかまいません。すぐに種子を播かない時は、密閉袋などに入れて保存しておきましょう。 【種まきの方法】 ラグラスは、ビギナーでも種まきから育てられます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。 ラグラスの発芽適温は20℃前後。種まきの適期は、9月下旬〜11月です。種まき用のトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れて種子を播き、軽めに覆土してください。種子が流れ出すことがないように、トレイより一回り大きな容器に浅く水を張り、トレイを入れて底面から吸水させます。乾燥しないように管理すると、2週間ほどで発芽します。 発芽したら日当たりがよく、風通しのよい場所で管理しましょう。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗します。本葉が5〜6枚つくまで管理し、ポットに根が回ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。 ラグラスの活用方法 Melidis Alexandros/Shutterstock.com ラグラスは、ガーデンでナチュラルな雰囲気を楽しめるほか、切り花やドライフラワーにしても楽しめます。ここでは、ラグラスの利用の仕方について案内します。 切り花 Totokzww/Shutterstock.com ラグラスは、花穂が美しい時期に切り取って、切り花として楽しむのがおすすめ。収穫は、朝か夕方の涼しい時間帯に行いましょう。大きめの容器に水を張り、採取したラグラスの切り口を浸け、水の中で茎を斜めに切り取ってからフラワーベースに活けると長もちします。ラグラスだけでも愛らしいですが、他の植物に添えて、脇役としても活躍します。 ドライフラワー severaltin/Shutterstock.com ラグラスはドライフラワーにすると、長い期間にわたって飾れます。庭などからラグラスを採取してきたら、穂の高さを揃えて茎が同じ長さになるように切り取りましょう。下部を麻ひもなどで縛り、風通しのよい半日陰の場所で逆さに吊るして乾燥させます。2〜4週間したら、ドライフラワーとして利用できます。乾燥が仕上がったら、ドライフラワースプレーをかけておくと、型崩れしにくくなりますよ! 矮性種の高性種を使い分けるポイント ラグラスには、草丈が20〜40cmの矮性種と、40〜60cmの高性種があります。これらを使い分けて庭やベランダに生かすのもいいですね。20〜40cmの矮性種はコンパクトにまとまる性質を生かして、単植での鉢植えや大鉢での寄せ植えに向いています。花壇では前面〜中段に配して他の植物とのコラボを楽しみましょう。40〜60cmの高性種は、株張りが大きくなるので、鉢植えにするよりは花壇に地植えしてダイナミックな草姿を楽しむのがおすすめ。アイキャッチとなる場所に植えるとよいでしょう。 愛らしいふわふわのラグラスを育ててさまざまな方法で楽しもう imageBROKER.com/Shutterstock.com ラグラスは、庭やベランダでふわふわとした質感の穂を楽しめるほか、切り花やドライフラワーにしてインテリアに飾っても素敵です。強健な性質で、放任しても機嫌よく育ってくれるので、ガーデニングのビギナーにもおすすめ。ぜひ庭やベランダでラグラスを育ててみてはいかがでしょうか。
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樹木
セアノサスはカリフォルニアライラックとも呼ばれる青花の花木! 特徴と育て方をご紹介
セアノサスの基本情報 Brookgardener/Shutterstock.com 植物名:セアノサス学名:Ceanothus英名:California Lilacs和名:セアノサスその他の名前:カリフォルニアライラック科名:クロウメモドキ科属名:セアノサス属(ソリチャ属)原産地:北アメリカの熱帯、メキシコ形態:常緑性・落葉性低木 セアノサスの学名はCeanothus。クロウメモドキ科ソリチャ属の低木です。原産地は北アメリカ、中央アメリカ。耐寒温度はマイナス10℃くらいで、関東地方以南の暖地などでは地植えにしても越冬できます。一方で、高温多湿の日本の夏はやや苦手です。樹高は1〜3mの低木で、地際から多数の枝を立ち上げる株立ちの樹形が特徴です。常緑性が最も多いのですが、半落葉性、落葉性のものもあります。 セアノサスの花や葉の特徴 Alex Manders/Shutterstock.com 園芸分類:庭木開花時期:4〜6月樹高:1〜3m耐寒性:やや弱い耐暑性:やや弱い花色:青、白、ピンク、紫 セアノサスの開花期は4〜6月。花色は冴えたブルーが最もポピュラーですが、他に淡いブルー、白、ピンクもあります。一つひとつの花はごく小さいのですが、花茎を伸ばした頂部にまとまってドーム状に咲くので色の塊となって見え、よく映えます。ソープのような爽やかな香りを放つのも魅力です。葉の形は楕円形や卵形などで、サイズは5〜15cmほど。枝に対生につきます。 セアノサスの名前の由来や花言葉 Tonyleathers/Shutterstock.com セアノサスは、学名をそのまま呼んだもの。この属名は、アザミを意味するギリシア語「keanothos」からきているとされています。以前はカリフォルニアを中心に分布していることから「カリフォルニアライラック」という別名でも呼ばれていましたが、ライラックはモクセイ科ハシドイ属の花木で分類がまったく異なっており、紛らわしいことから近年はセアノサスと呼ばれることが多いようです。 セアノサスの花言葉は、「純朴」「温厚」「初恋の思い出」などがあります。 セアノサスの代表的な品種 ‘スノーフリューリー’ Jcaley/Shutterstock.com セアノサスはブルーの花を咲かせるものが定番ですが、ほかにもいろいろな品種があります。代表的な品種をいくつかご紹介します。 最もポピュラーな品種が‘パシフィックブルー’で、濃いブルーの花色に大変人気があります。‘ロイヤルブルー’はパシフィックブルーよりも色が濃く、樹高はやや高めです。花色は淡いブルーで、葉に斑が入る‘エルドラド’や‘クールブルー’は、開花期以外にはカラーリーフとして庭に変化をもたらします。淡いピンク色の花色は‘パールローズ’、‘マリーサイモン’があり、いずれも落葉性です。‘スノーフリューリー’は白い花を咲かせる品種で、葉に光沢があります。 ‘マリーサイモン’ N.Stertz/Shutterstock.com セアノサスとライラックの違い 左がセアノサス、右がライラック。R.Moore、photolinc/Shutterstock.com セアノサスは別名カリフォルニアライラックとも呼ばれるように、ライラックによく似た美しい花を咲かせます。どちらも春から初夏に香りのある小花が密集した花穂をつけますが、ライラックの花は比較的大きく、小花の一つひとつがしっかり見えるのに対し、セアノサスの花はより小さな花が密集して咲き、ふんわりとした綿毛のようにも見えるのが特徴。また、ライラックはモクセイ科の落葉高木で、セアノサスはクロウメモドキ科の常緑低木と、種類はまったく異なります。 セアノサスの栽培12カ月カレンダー 開花時期:4〜6月植え付け・植え替え:3〜4月、9〜10月肥料:7月、10月 セアノサスの栽培環境 LifeisticAC/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。あまり日当たりがよくない場所では、花つきが悪くなってしまうので注意してください。 【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本ですが、寒さにやや弱いため、寒冷地では冬は室内の日当たりのよい窓辺などに取り込むとよいでしょう。 【置き場所】有機質に富んで水はけ・水もちがよく、肥沃な土壌を好みます。多湿を嫌うので、水はけの悪い環境であれば、土壌改良が必要です。 耐寒性・耐暑性 セアノサスは寒さにやや弱く、耐寒温度はマイナス5℃~マイナス10℃程度。関東以南のほとんど凍結することがない暖地であれば戸外で越冬できますが、凍結する寒冷地では鉢栽培にして、季節に応じて適した場所で移動しながら管理するとよいでしょう。高温多湿が苦手で耐暑性もやや弱いので、地植えにする場合は西日の当たらない場所を選び、鉢栽培の場合は風通しのよい半日陰に移動するのが無難です。特に、近年の温暖化により日本の夏は年々暑さが厳しくなっているので注意しましょう。 セアノサスの育て方のポイント 用土 funnyangel/Shutterstock.com 【地植え】 植え付けの3〜4週間前に苦土石灰を散布し、よく耕しておきます。さらに植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。セアノサスは、じめじめとした環境を嫌うので、水はけの悪い場所では川砂やパーライトなどを施し、土壌改良をしておきましょう。周囲より土を高く盛っておくのも得策です。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 市販の花木用培養土を利用すると手軽です。 水やり Vladimir Gjorgiev/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。 【地植え】 根付いた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。ただしセアノサスは乾燥を好み、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意してください。土の表面が乾いたのを見はからってから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。 肥料 Singkham/Shutterstock.com 【地植え・鉢植えともに】 植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。 花後の7月頃と、10月頃に緩効性肥料を株の周囲にばら撒き、スコップなどで軽く表土を耕し、土に馴染ませます。株に勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守りましょう。 注意する病害虫 Decha Thapanya/Shutterstock.com 【病気】 セアノサスの栽培では、ほとんど病気の発生の心配はありません。 【害虫】 セアノサスの栽培では、カミキリムシの幼虫、カイガラムシが発生することがあります。 カミキリムシは、主に夏から秋に発生しやすくなります。カミキリムシの幼虫が幹に穴をあけて中に侵入し、木質部を旺盛に食い荒らすので注意。被害が進むと木が弱るうえ、中が空洞化して枯れてしまうこともあります。成虫が飛来して卵を産み付けるので、成虫や卵は見つけ次第補殺しておきましょう。また、木の株元などにおがくず状のフンが見つかったら、木の内部で活動していると推測できます。おがくずが出ている穴があれば、穴に細長い針金状のノズルを差し込むタイプの薬剤散布をして駆除してください。 カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10㎜ほど。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。 セアノサスの詳しい育て方 苗の選び方 セアノサスの苗を購入する際は、葉が変色したものや間延びしたものは避け、株元がしっかりしてよく分枝した株を選ぶとよいでしょう。 植え付け・植え替え wavebreakmedia/Shutterstock.com セアノサスの植え付け・植え替えの適期は3〜4月か、9〜10月です。もっとも、植え付け適期以外にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。ただし、真夏や真冬の気候が厳しい時期は避けてください。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を崩して植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。 地植えにしている場合は、暖地では植えたままにしてもかまいません。寒さが厳しく、マイナス10℃以下になる地域では鉢に植え替えて、暖かく日当たりがよい場所で越冬させてください。 【鉢植え】 セアノサスを鉢で栽培する場合は、入手した花鉢よりも1〜2まわり大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。セアノサスの苗木をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めます。根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずして小さくし、新しい培養土を使って植え直しましょう。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。 剪定 mihalec/Shutterstock.com セアノサスの剪定適期は花が終わった後すぐです。翌年開花するための花芽は秋にできるので、それ以降に強く切り戻す剪定を行うと、翌年の花数が少なくなるので注意しましょう。 セアノサスは株立ち状で、地際から細めの枝を多数のばす樹形が特徴です。自然に樹形が整いやすいので、それほど剪定は必要ありませんが、剪定を行う場合は軽い切り戻しと、込み合った部分を間引く「すかし剪定」を基本とします。枝が地際から伸びて込み合い、風通しが悪くなる場合は、古い枝や細くて弱々しい枝、生育の邪魔になっている枝を選び、枝の途中で切らずに分岐点から切り取りましょう。また、セアノサスは刈り込みに耐えるので、生け垣のように形を整える剪定も可能です。 夏越しと冬越し Anton Starikov/Shutterstock.com 夏越し 【地植え】 近年、日本は温暖化が進んで夏の暑さが大変厳しくなっています。高温や強光線によって木が弱ることを防ぐために、遮光ネットを張るのも一案です。 【鉢植え】 少しでも暑さをやわらげるために、風通しのよい半日陰などに移動して、涼しい場所で管理します。 冬越し 【地植え】 凍結することがほとんどない暖地では、霜よけにバークチップなどを株元にマルチングしておくとよいでしょう。寒冷地では、鉢に植え替えて温室か日当たりのよい室内に置いて冬越しさせます。 【鉢植え】 凍結することがほとんどない暖地では、戸外の霜が降りない軒下などで越冬させます。寒冷地などでは、温室か室内の日当たりのよい窓辺などに置きましょう。 増やし方 Kunlanan Yarist/Shutterstock.com 挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、セアノサスは挿し木で増やせます。 セアノサスの挿し木の適期は、7月頃です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。 セアノサスの楽しみ方は? アレンジメントやブーケにも! DannyBuoy/Shutterstock.com セアノサスは樹高が低く株立ち状に育つ性質を生かし、ボリューム感のある樹形に仕立てて庭のアイキャッチにするのもおすすめ。また高木と草花を結ぶ役割として空間を埋めてもよいでしょう。葉に斑が入る品種を選べば、開花していない時期もカラーリーフプランツとして活躍します。 開花期には枝を切り取って、花束やフラワーアレンジメントに利用しても素敵です。水が下がりやすいので、湯揚げしてから利用するとよいでしょう。湯揚げとは、下葉を切り取って切り口の部分のみ20〜40秒ほどお湯に浸し、引き上げたらすぐに水に入れる方法です。花瓶などに飾った後は毎日水を変え、切り口の部分を少しカットしてから活け込みましょう。 花はもちろん美しい葉や香りも楽しめるセアノサスを育ててみよう Sarah Mathiesen/Shutterstock.com セアノサスは、暖地であれば地植えでの栽培も可能で、高温多湿に注意して管理すればよく育ちます。個性的で目を引く花姿は庭のアイキャッチとなり、また斑入り葉の品種を選べばカラーリーフとしても活躍します。初夏の庭の彩りにセアノサスを植栽してみてはいかがでしょうか?
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一年草
イタリアンパセリの育て方! 初めて栽培する際のヒントや楽しみ方をご紹介
イタリアンパセリの基本情報 Sarah Macor/Shutterstock.com 植物名:イタリアンパセリ学名:Petroselinum crispum var. neapolitanum英名:Italian parsley、Flat-leaved parsley、Plain-leaved parsley、Petroselinum crispum 'Italian'、French parsleyなど和名:イタリアンパセリその他の名前:フラットパセリ、プレーンリーブド種科名:セリ科属名:オランダゼリ属(ペトロセリウム属)原産地:地中海沿岸形態:一・二年草 イタリアンパセリは、セリ科オランダゼリ属(ペトロセリウム属)の一年草、または二年草です。原産地は地中海沿岸地域で、暑さが苦手な一方で、寒さに強い性質を持っています。生育適温は15~20℃。25℃以上になると葉が硬くなり、生育が悪くなります。草丈は20~30cmほど。日本では縮れ葉のモスカールドパセリのほうがパセリとして一般的に浸透していますが、ヨーロッパではこのイタリアンパセリのほうがホピュラーです。モスカールドドパセリよりも苦みが少なく、料理の香味づけによく利用されています。 イタリアンパセリの葉や花の特徴 Varts/Shutterstock.com 園芸分類:ハーブ開花時期:5〜7月草丈:20〜30cm耐寒性:普通耐暑性:強い花色:白、黄色 イタリアンパセリの葉は平葉で、パセリの縮れた葉とは異なり、羽のように深い切れ込みの入る三角形の平らな葉が特徴。柄は3つに分枝して茂ります。花はクリーム色で、セリ科らしい散形花序の小さな花を咲かせます。ただし、花が咲くと種子を作って枯れていくので、ハーブとして葉を利用している場合は、花茎が伸びてきたらすぐに切り取ると、長く収穫を楽しめます。 イタリアンパセリの名前の由来と花言葉 Boryana Manzurova/Shutterstock.com パセリという名前は、ギリシャ語で石や岩を意味する「Petro」とセロリを意味する「Selinon」を組み合わせた「Petroselinon」、つまり岩場のセロリという言葉に由来します。イタリアンパセリは、イタリア料理によく利用されていることからイタリアンと名付けられたと考えられています。 イタリアンパセリの花言葉は「お祭り」「小さな愛」「勝利」「祝祭」「万能」などです。 イタリアンパセリの近縁の仲間や似た植物 イタリアンパセリの仲間や見た目が似ている植物から、代表的なものをご紹介します。 パセリ Oksana Shufrych/Shutterstock.com 葉がくるくるとカールする一般的なパセリとイタリアンパセリは近縁の仲間。イタリアンパセリに比べるとやや葉が硬く、味わいも苦みやえぐみが強いのが特徴です。 チャービル Robert Buchel/Shutterstock.com チャービルはフランス料理によく使われるハーブで、イタリアンパセリと同じくセリ科の一年草。甘く爽やかな香りを持ち、明るい緑色の切れ込んだ葉はイタリアンパセリによく似ています。パセリよりも癖が少なく、葉も柔らかくて食べやすいことから、「美食家のパセリ」とも呼ばれています。 コリアンダー jeep2499/Shutterstock.com コリアンダーもセリ科のハーブの一つ。切れ込みが入る平たい葉が、イタリアンパセリによく似ています。別名はパクチーやシャンツァイ(香菜)など。独特な強い香りがあり、好き嫌いが分かれますが、エスニック料理などには欠かせないハーブです。 イタリアンパセリの栽培12カ月カレンダー 開花時期:5〜7月植え付け:4~5月、10月頃肥料:3〜11月種まき:4~5月、9月~10月上旬 イタリアンパセリは、苗の植え付け後、4月頃から生育が旺盛になり、本葉が13〜15枚ついたら頃から収穫できます。開花期は5~7月頃ですが、開花させると株が消耗するので、花芽が見えた茎は地際で切り取りましょう。枯れたら抜き取って処分します。 イタリアンパセリの栽培環境 Cheryl Ann Meola/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】適度な日当たりと、風通しのよい場所を好みます。日照が不足すると葉が黄色くなりますが、夏に日向で育てると葉が硬くなることがあるので注意しましょう。 【日当たり/屋内】日光が入る場所であれば、室内でも栽培することができます。ただし、夏場の直射日光に当てると葉焼けする場合があるため、レースのカーテン越しの光が入る場所などがおすすめです。 【置き場所】酸性の土を嫌い、土壌酸度はpH5.5〜6.0、肥沃で水はけ、水もちのよいふかふかとした土壌を好みます。 耐寒性・耐暑性 イタリアンパセリの生育適温は15〜20℃です。暑さには強いですが、乾燥すると葉が硬くなりやすいので水切れに注意しましょう。涼しい半日陰などに移動するのも一案です。耐寒性はマイナス5℃程度で、暖地では屋外でも冬越しできますが、強い寒波や寒風に当たると枯れてしまうこともあります。 イタリアンパセリの育て方のポイント 用土 Sleepyhobbit/Shutterstock.com 【菜園】 イタリアンパセリに適した土壌酸度はpH5.5〜6.0です。種まきの2〜3週間以上前に、必要に応じて苦土石灰を1㎡当たり約100g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおいてください。さらに植え付けの1〜2週間前に、1㎡当たり堆肥2㎏、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)100〜150gを植える場所に均一にまいて、よく耕しましょう。 畝の幅を約60cm取って、高さ10cmほどの畝を作ります。畝の長さは作りたい量や広さに応じて自由に決めてかまいません。表土は平らにならしておきましょう。土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成し、植物の生育がよくなります。 【プランター栽培】 野菜やハーブの栽培用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。 水やり cam3957/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【菜園】 地植えの場合は、下から水が上がってくるので、天候にまかせてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補いましょう。 【プランター栽培】 日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。 肥料 New Africa/Shutterstock.com 【菜園】 苗を植え付けた後、1カ月に1度を目安に1㎡当たり30gを目安に緩効性化成肥料を株の周囲にばら撒きます。その際に株の周囲をクワで軽く耕し、株元に土を寄せておきましょう。 【プランター栽培】 苗を植え付けた後、1カ月に1度を目安に緩効性化成肥料をひとつまみ程度、株の周囲にばら撒きます。その際に株の周囲をスコップで軽く耕し、土に馴染ませておきましょう。 注意する病害虫 M.V.Photography/Shutterstock.com 【病気】 イタリアンパセリに発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。 うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発生しやすくなります。うどんこ病が出たらただちに病気の葉を摘み取って処分しましょう。 灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。 【害虫】 イタリアンパセリに発生しやすい害虫は、アブラムシ、キアゲハなどです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。 キアゲハはアゲハチョウ科の昆虫で、春から秋にかけて発生しやすく、主に幼虫がセリ科の植物を好んで食害します。幼虫がまだ若いうちは黒字に白斑が入る姿でまだ小さく見つけづらいのですが、大きくなると5cmほどのビッグサイズになって黒と黄緑の横縞にオレンジの斑点が散りばめられた姿を現し、よく目立ちます。若芽や葉を好み、幼虫が大きくなると旺盛に葉を食べて一晩で被害が拡大することもあるので注意。葉の裏表をチェックし、葉に穴が空いていないかチェックしておきましょう。幼虫は見つけ次第補殺します。成虫は花の蜜をエサとするので、近くに花が咲く植物を植えないこともポイントです。 イタリアンパセリの詳しい育て方 苗の選び方 イタリアンパセリは種まきからでも育てられますが、手軽に苗から育てる場合は、ヒョロヒョロと頼りなく伸びているものや、虫食い痕があるものなどを避け、節間が短くがっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。 種まき Vladyslav Lehir/Shutterstock.com 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。イタリアンパセリの苗は花苗店やホームセンターなどで入手できるので、手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。「2〜3株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、苗を購入するとよいでしょう。 イタリアンパセリの種まき適期は「春まき」が4〜5月で、「秋まき」が9月〜10月上旬頃。発芽適温は約20℃です。 種まきから栽培する場合、菜園などに種子を直まきすると幼苗のうちに病気や虫の害にあいやすく、天候不順に左右されやすくなります。セルトレイに清潔な市販の種まき用の培養土を使って種をまき、適した場所で管理すると、より確実です。 種まき用のセルトレイに市販の種まき用の培養土を入れて水で湿らせ、数粒ずつ重ならないようにまきます。好光性の性質のため覆土はごく薄くにしておきましょう。霧吹きで水をかけるか、容器に水を張ってセルトレイの底から水を吸水させるなどし、発芽までは乾燥させないように水の管理をしてください。14〜20日ほど経つと発芽し、双葉が揃います。 発芽したら日の当たる場所で管理し、数本が込み合っている部分などがあれば抜き取って間引きましょう。もったいないからといって密になっている部分をそのままにしておくと、ヒョロヒョロと間のびした徒長苗になってしまうので、ご注意を。間引いた苗はベビーリーフとして利用できます。 本葉が2〜3枚ついたら、セルトレイから抜いて鉢上げします。黒ポットに野菜用の培養土を入れて、苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。日当たりのよい場所に置き、表土が乾いたら水やりして育成します。多湿になると根の張りが悪くなり、ヒョロヒョロと頼りなく伸びる徒長苗になったり、病気が発生したりするので注意。適切な水分管理をすることがポイントです。本葉が7〜9枚つくまでを目安に育苗します。 植え付け OlegDoroshin/Shutterstock.com 【菜園】 イタリアンパセリの苗の植え付け適期は、種まきをした場合は春まきが6月頃、秋まきが10月頃。花苗店やホームセンターなどでも春先から入手できるので、苗を購入したら早めに植え付けましょう。 植え付けの1〜2週間前に土づくりしておいた畝が少しくずれていたら、幅約60cm、高さ約10cmになるようにもう一度クワを入れて調整し、表土を平らにしておいてください。畝に2列植えとし、列の間隔は30cm取ります。1列ごとに約30cmの間隔を取って穴を掘り、苗を植え付けていきます。最後にたっぷりと水やりをしておきましょう。 【プランター栽培】 6〜7号鉢に1株、標準サイズのプランターに3株を目安に植え付けます。 底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。苗の根鉢より一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をくずして苗を植え付けます。最後に底から水が流れ出すまで、たっぷりと水やりをしましょう。 摘心・摘葉 mihalec/Shutterstock.com 【菜園・プランター栽培ともに】 植え付け後、幼苗のうちに茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、わき芽が出てこんもりとした株姿に成長し、花数も多くなります。 摘葉は、葉を摘み取ることです。込み合ってきたら収穫を兼ねて茎葉を摘み取ります。また、枯れた葉や傷んだ葉を見つけたら、早めに摘み取りましょう。 収穫 kazoka/Shutterstock.com 【菜園・プランター栽培ともに】 春まきした場合の収穫適期は7月下旬〜12月上旬、秋まきした場合は、翌年の3月〜6月上旬頃です。 本葉が13〜15枚ついたら、適宜収穫します。外葉から順にハサミで切り取っていきましょう。一度にたくさん収穫すると株が弱るので、バランスを見ながら行いましょう。 増やし方 Agave Studio/Shutterstock.com イタリアンパセリは、種まきのほかに挿し芽でも増やすことができます。 【挿し芽】 勢いのある茎葉を切り取り、切り口からの水の吸い上げと葉からの蒸散のバランスを取るために、下葉を取ります。水を張った容器に挿し、明るく風通しのよい場所に置いておきましょう。毎日水を替えてしばらくすると、発根してきます。十分に根が出たら、菜園やプランターに植え付けます。 【種まき】 花後に種子を採取して増やすことができます。種子を採取する場合は、花がら摘みをやめて枯れるまでそのまま育てます。種子が黒く熟し、完全に立ち枯れたら種子を採取し、播き時のタイミングを逃さずに播いて育てましょう。 イタリアンパセリを栽培する際のヒント Natalia Vostrikova/Shutterstock.com イタリアンパセリを初めて栽培する方のために、知っておきたいポイントをご紹介します。 乾燥を防ぐ パセリは乾燥しすぎるのを嫌う性質をもっています。プランター栽培では特に、水切れに注意しましょう。株元に乾燥防止のための敷きワラをしておくのもおすすめです。 初めての場合は苗から育てる パセリは発芽までに2〜3週間かかるうえ、植え付けに適した苗に成長するまで、70日ほどかかり、一般の草花や野菜よりも育苗期間が長いといえます。また、発芽適温は約20℃で、25℃以上になると発芽不良になりやすく、発芽率は60〜70%と、割と低いほうです。パセリの種まきは手がかかるともいえるので、初めて栽培するならホームセンターなどで販売されている苗を購入し、苗の植え付けからスタートするとよいでしょう。 イタリアンパセリの楽しみ方 OlgaBombologna/Shutterstock.com イタリアンパセリを採取したら、ぜひ暮らしに役立てましょう。栄養成分や利用の仕方、保存方法についてガイドします。 栄養 イタリアンパセリにはクロロフィル、β-カロテン、ビタミンB群やC、E、Kなど多くのビタミンを含んでいます。ほかにも亜鉛、カルシウム、鉄分、カリウム、マグネシウムなどがバランスよく含まれており、ヨーロッパではメディカルハーブとして重宝されています。 使い方 クセが少なく食べやすいイタリアンパセリは、さまざまな用途に利用可能です。そのまま葉をトッピングに使っても、刻んで混ぜても料理が鮮やかに仕上がります。刻んでサラダに入れたり、魚介料理やパスタに添えたりするのもおすすめ。におい消しや香味づけに、煮込み料理に入れてもよいでしょう。 保存方法 イタリアンパセリは必要な分だけ摘み取り、新鮮なうちに使い切るのが一番ですが、保存することも可能です。容器に水を張ってイタリアンパセリを挿し、水の中で切り口を斜めに切り取ってしばらく水揚げしておきます。コップなどに水を入れ、水揚げしたイタリアンパセリを葉が水に浸からないように活け、涼しい場所か冷蔵庫に入れて保存します。水は毎日取り替えましょう。または、水で湿らせたキッチンペーパーで包み、密閉できる保存袋に入れて冷蔵庫で保存してもかまいません。いずれも、香りを楽しむには2~3日のうちに使い切りましょう。 栄養豊富なイタリアンパセリを上手に栽培しよう PUDRA/Shutterstock.com 料理の彩りや風味づけなど、香味野菜として常備しておくと便利なイタリアンパセリ。プランターで容易に育てることができ、メンテナンスの手間もあまりかからない野菜の一つです。ぜひ庭やベランダで栽培にチャレンジしてみてください。
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宿根草・多年草
【実例でよく分かる!】花が咲かない、少ない…クリスマスローズの悩みを横山直樹さんが解決!〜Dr.横山のクリスマスローズ診察室〜
【診察①】環境は理想的…でもクリスマスローズが咲かないのはなぜ? 2020年の庭の様子。樹木の下で‘プチドール’がたわわに咲いて春爛漫の風景。 面谷さん:横山さんが作出されたクリスマスローズの‘プチドール’。数年前までは何十輪と花を咲かせ、圧巻の花姿から「まるでメガドールだね」と冗談を言っていたのに、数年前から数えるほどしか花を咲かせなくなってしまいました。このエリアは庭の南東で、落葉樹のウワミズザクラの下なので、クリスマスローズが好む「冬から春は日が当たり、夏は木陰」という好条件のはず。近くにバラも植わっているので、適度に肥料も効いているはずなんですが…。植えて7〜8年くらい経ちますが、寿命なんでしょうか? Dr.横山:クリスマスローズは限りなく寿命が長くて、40年以上も花を咲かせている株もあるくらいなんです。ですから、植えて7年の株が寿命ということはないし、栽培環境としても申し分ないですね。咲かないなあって思うようになったのは、去年が初めてですか? 面谷さん:いえ、ここ2〜3年くらいかな。 赤丸が2024年の‘プチドール’。 Dr.横山:なるほど。栽培環境もよくて、今までよく咲いていたクリスマスローズが咲かないなと気づいたとき、1年は様子をみて欲しいんですよ。というのは、その時たまたま気候や環境の影響によって咲かないけれど、次の年はまたいつも通りによく咲く、というケースもよくあるんですよね。だから、1年はまずは見守ってあげて、次の年もまた咲かないということであれば、対処するというのが基本的な考え方です。 【Dr.横山のワンポイントアドバイス】 クリスマスローズが咲かない、花が少ないという場合、1年はそのまま様子を見ましょう。翌年は再び前のように咲く場合もあります。2年連続で咲かない場合は原因あり! Dr.横山:このケースの場合、こういう状態になって2〜3年ということだから、たまたま咲かないんじゃなくて、何か原因があると考えましょう。ここは見たところ、5〜6㎡のエリアにウワミズザクラと‘プチドール’のほかにもクリスマスローズが数株、そのほかに球根類や草花も植わっているので、年数を経てそれぞれが生育して、手狭になってきている可能性が高いかもしれないですね。 面谷さん:そうなんです。クリスマスローズもこぼれ種でいつの間にか増えたし、鳥が落とした種子からホタルブクロもすごい増えちゃったし、一つのところにいろんな植物が多すぎるのかな。 Dr.横山:それが必ずしも悪いわけじゃないし、僕はこうやってクリスマスローズがほかの花と仲良く咲いているのはとっても好きですよ! ただ、ホタルブクロがすごい勢いで発芽しているのが気になるかな。とにかく、ちょっと掘り上げて見てみましょうか。 地植えのクリスマスローズの掘り上げ方 【Dr.横山のワンポイントアドバイス】 クリスマスローズは10年近く植えたままにすると、連作障害を起こすことがあります。2年連続で花が少なかったり、咲かなかった場合、また細かい葉ばかりになってきたら、株を掘り起こしてみましょう。株分けをしたり、違う場所に植え替えることで刺激が与えられ、再び元気に育ち始めます。 【診察②】根詰まりと競合植物が原因だった! ウワミズザクラの太い根が‘プチドール’の株の下に入り込んでいた。 Dr.横山:面谷さん、ほら、‘プチドール’を掘り上げた穴を見てみてください。ウワミズザクラの太い根っこが‘プチドール’の株の下に入り込んでいました。花が咲かなくなったのは、きっとこれが主な原因ですね。掘り上げた‘プチドール’の根っこにもホタルブクロの根がたくさん絡んでいるし、 ‘プチドール’が十分に根を伸ばせなかったんですね。 抜いた‘プチドール’の株を見ると、他の植物を避けるように、新芽が下へ潜りつつ横へ横へと出てきていた痕跡がありますね。ここでは十分な養分が得られないから、逃げるように株が新天地を求めて移動しようとしていたということです。 面谷さん:あらぁ、ここは窮屈だったんだ。気がつかず申し訳ないことをしてしまったなぁ。でも動かないと思っていた植物が、逃げようとして動くなんて大発見だわ。掘ってみるといろんなことが分かるものですね! ところで、この‘プチドール’はどうなりますか? もうダメなんでしょうか? 【How to】根詰まりのクリスマスローズの再生方法 掘り上げた‘プチドール’。赤丸で囲んだ白っぽい根は、新しい根。 Dr.横山:大丈夫! 私、失敗しないので! この‘プチドール’は、少ないけれどもまだ新しい白い根を出しているので、ひとまず鉢に掘り上げて夏は半日陰で養生させ、秋に植え直してあげましょう。僕がクリスマスローズのために長年研究して作った横山園芸のオリジナル培養土に植えておくと安心ですよ。水はけもよく、肥料持ちも適度で、固すぎず柔らかすぎず、植物の根に優しい土です。掘り上げた株は根っこがダメージを受けているので、鉢上げの際は肥料ではなくて、「活力剤」をあげておくといいですよ。 掘り上げた‘プチドール’の、新芽が出ていた部分を分けて、株分け(本来株分けは秋がおすすめ)。鉢に植えて養生させることに。 面谷さん:秋には同じ場所に植え直していいですか? それとも別の場所のほうがいい? Dr.横山:同じ場所でもいいんですが、このままの状態ではなくて、一度大胆にこのエリアをリフォームしたほうがいいと思うな。というのも、年数が経ってウワミズザクラの根っこが張り巡らされているうえに、球根や宿根草の根も絡みあっているので、いわばこの植栽エリアは盆栽の鉢の中のように根っこがギュッと締め固まっている状態なんです。ですから、一旦、樹木以外の植物を抜いて土壌改良をしたうえで、植物の数を減らして植え直してあげたら、また以前のようにたくさん花を咲かせるようになりますよ。 面谷さん:ああ、よかった! 庭ではたくさんのクリスマスローズを育てているんですが、「これは初めてサンシャインで買った株」とか「子どもが卒業した時に買った株」とか、どれも思い出があって大事にしているんです。この‘プチドール’にも「横山先生に助けてもらった株」というありがたい経歴ができました。とりあえず、秋まで鉢上げして療養入院ですね。私、元看護師なので、しっかりお世話させていただきます! 【診察③】日陰の庭では「控えめな咲き方」を楽しむのもアリ 面谷さん:先生、こちらの北の庭でも花がポツポツとしか咲かなくなってしまったんですが、ここも掘り上げて様子を見たほうがいいでしょうか。 Dr.横山:ここは見たところ、先ほどのエリアとは原因は別にありそうですね。まず、環境が先ほどの日向の庭と全然違って、ここは日陰で立ってるだけでも寒いなぁ。 面谷さん:そうなんです。ここは建物の影になる北側の庭で、日が当たるのは早朝の数時間で、10時くらいにはもう日陰になっちゃうかな。日陰すぎてここは無理なんでしょうか? 植えた当初は何輪も咲いていたのに、みんな1本立ちの可哀想なスタンダードみたいになってしまって…。 Dr.横山:大丈夫! 私、失敗しないので! 日陰ということもあるけど、朝日は浴びているわけですから、栽培環境としては悪くはないんですよ。ただ、ここは先ほどの日向の庭と違って、土が痩せてる感じがしますね。ここは他の場所ほど、肥料が足りていないんじゃないかな。ビオラやパンジーも他のエリアと比べて、株が小さいですもんね。 面谷さん:先生のおっしゃるとおり! ここはバラとか宿根草をあまり植えていなくて、他の場所より断然肥料をやっていないです。でも、春になるとサクラソウとか原種シクラメンとかエビネとかがポツポツ咲いて、その控えめな感じがかわいいんですよ。 Dr.横山:うんうん、僕もこの控えめに咲くクリスマスローズの感じもすごくいいと思ったんですよ。僕は必ずしも、いっぱい咲かせることだけが、正解じゃないと思うんだよね。2〜3輪で控えめに咲いても、クリスマスローズってかわいいし、場所の雰囲気に合ってるならそれでいいと思うんです。だから、ここはこのままでもいいけれど、もしもうちょっと花を咲かせたいと面谷さんが思うなら、腐葉土や肥料を施して土を肥えさせましょう。 そうだな、ここはあと5cmくらい腐葉土や堆肥を重ねておくといいと思います。毎年、そうやって秋に定期的に腐葉土や堆肥、肥料を与えれば、もっと花つきがよくなるはずです。それから、これまではきっときれいにお掃除されていたんでしょうけど、このエリアにも落葉樹がいくつか植わっているので、秋の落ち葉を植栽エリアに寄せておくのも効果的ですよ。 夏は緑陰が涼しい北の庭。 面谷さん:なるほど〜。落ち葉を活用すればよかったんですね。今年からそうします! ここは他のエリアより花は少ないんですが、雑木林のような自然な雰囲気が好きなんです。夏なんかは木陰がとっても涼しくて、ガーデニングの最中の避難所にしているんですよ。 Dr.横山:面谷さん、クリスマスローズにとってもここは夏の間の避難所として最適ですよ。さっき掘り上げた‘プチドール’みたいに、ちょっと生育が心配だなというクリスマスローズを養生させておくのにぴったりの場所ですよ。 面谷さん:それはいい考えですね! では、ここはクリスマスローズの保養所にすることにします! それにしても同じ庭の中でも、いろいろな環境条件が違って、咲かない理由も一つではないんですね。 【Dr.横山のワンポイントアドバイス】 日照不足の場所は、しばしばお世話が忘れられて肥料不足になっていることもよくあります。その場合、腐葉土や堆肥などで土壌改良をすることでクリスマスローズの花付きがよくなります。しかし、育て方の目標は必ずしも「たくさん咲かせる」ことだけではありません。その場所の雰囲気にあっていれば、花が少なくても魅力的に見えるものですよ。 【診察④】“葉ばかり茂る”のは古葉切り不足かも! 古葉切りをしたクリスマスローズ。見事な花つきの大株。 Dr.横山:あと、よく質問されるのは、葉っぱばかり茂って花が咲かないんです、というお悩み。これは古葉切りをまったくしていないと、そうなることがあるんですね。無茎種(多くは無茎種)は晩秋から冬にかけて、古葉を切るのがクリスマスローズの管理の基本です。切られる刺激でホルモンが働き、開花が促されるという仕組みになっているんですよ。 面谷さん:先生、いつ切ってもホルモンが働き、開花が促されるんですか? Dr.横山:そうそう、だから例えば夏に傷んだ葉をバンバン切ってしまうと、暑くて休眠しているクリスマスローズが動き出して、余計な体力を使って枯れてしまうことがあるから注意しましょう。基本的に古葉切りは11〜2月の間に行います。葉を切ることで株元にも日が当たり、寒いなかでも地温が上がってツボミが伸びてくるんです。面谷さんの庭のクリスマスローズはちゃんと古葉切りがされていますね。 面谷さん:はい! 米子は1月になったらたくさん雪が降って作業ができないこともあるので、いつも12月までにせっせと古葉切りをしています。じゃあ今、春から新たに葉っぱが出てきて、5月はフサフサになるじゃないですか。それは新葉だから切っちゃいけないということですね。 【楽しむヒント】咲き終わりの花でブーケを作ろう! Dr.横山:その通りです。それが晩秋になったら「古葉」という扱いになるわけです。晩秋から冬になると、古葉が外側に倒れてくるので、全部切らなくてもいいですけど、株元5cmを残して切るといいですよ。米子のような雪の降る地域は、冬のガーデニングは寒くて大変なことも多いでしょうけれど、雪国ならではのいい花が見られるという特典もあるんですよ。日当たりのいい場所に咲いているクリスマスローズは、茎がとても太くて充実しているでしょう。これは厳しい寒さに耐えたからこそなんですよ。面谷さんはアレンジメントも得意だから、こういうしっかりした茎の花はブーケにもいいんじゃないですか。 朝一でクリスマスローズを庭から摘んで、ブーケを束ねる面谷さん。 面谷さん:そうなんです! というわけで、診察のお礼に先生にブーケをプレゼントします! 庭のクリスマスローズを摘んで作ったブーケです。横山先生の「よしの」も入っていますよ。 Dr.横山:わぁ、なんて贅沢なブーケ! ありがとうございます! 4月はそろそろ花が咲き終わって色あせてくるので、そうなったら早めに花茎を切るのが翌年のためにもいいんです。もったいないと思うかもしれませんが、こうやってブーケにすると花の顔もよく見られていいですよね。クリスマスローズを育てている人はぜひ、4月はクリスマスローズのブーケを作ってみてくださいね。 クリスマスローズのブーケをもらったDr.横山、満面の笑み! 【まとめ】咲かない原因はひとつじゃない! クリスマスローズが咲かない原因は一つではありません。今回紹介した以下の原因をチェックして、それぞれに適切に対処しましょう。 【地植えのクリスマスローズが咲かない主な5つの原因】 根詰まり 他植物との競合 栄養不足 日照不足 古葉切りの不足 そして、1年目は様子を見るのも大事。2年連続で花が咲かないときは、今回の面谷さんの庭のように“掘り上げてみる”のが原因判明の近道かもしれません。 次回は鉢植えのクリスマスローズのお悩みについてご紹介します。
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イベント・ニュース
【5月の連休は横浜へ!】日本最大級の園芸イベント「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」に出かけよう
花盛りの季節を「ガーデンシティ横浜」で楽しもう! マリンタワーや観光船氷川丸を背景にバラ咲く景色が楽しめる山下公園(左3枚)と横浜ベイブリッジを望む高台に宿根草とバラが調和する港の見える丘公園(右)。 約1,900株ものバラが港を背景に咲く「山下公園」をはじめ、イングリッシュローズの庭・香りの庭・バラとカスケードの庭などでバラと草花が咲き競う「港の見える丘公園」など、多くの花の名所が点在する横浜市。港の春は、3月下旬のサクラからはじまり、4月上旬にはチューリップ、そして市の花でもあるバラへと華やかに咲き継いでいきます。バラが街のいたるところを彩る5月のゴールデンウィークには、花と緑が主役の新たなイベント「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」が開催されます。横浜市の各所のお花見散歩とセットで、イベントへも足を運んでみてはいかがでしょうか。 すべての園芸ファンのための花と緑のフェスティバル開催 「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」の会場は、横浜港を背にした「パシフィコ横浜」展示ホールA・B。picture cells/shutterstock.com 日本で37年ぶりとなるA1クラス(最大規模)の国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」の開催を控える横浜市。その世界的プロジェクトのプレ・イベントでもある「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」は、ショーガーデンやモデルガーデン、植物の最新品種の展示をはじめ、園芸業界を牽引する企業による展示やショップ、花緑にまつわる著名人が続々登場するステージ、ワークショップなど、多彩なコンテンツが満載。すべての園芸ファンのためのワクワクがぎゅっと詰まった3日間です。 入ってすぐ花緑の世界に引き込まれる! 吉谷桂子さんがプロデュースするガーデン展示「WHY WE GARDEN?」 メインのショーガーデンは、ガーデンデザイナーとしていち早く気候変動とその影響を感じてきた日本を代表するガーデンデザイナー、吉谷桂子さんがプロデュースします。ガーデンを手がけるのは、吉谷さんと同じ思いを持って集まったガーデンデザイナー、ガーデナー、生産者など、ガーデンの最前線で活躍するエキスパートたち。これからのガーデンづくりのヒントを共有する展示で、その巧みな技術をぜひ間近にご覧ください。 ローラン・ボーニッシュさんが「バラの咲く家」を花装飾で表現 左/ローラン・ボーニッシュさんが手がけた2024年の展示、「パリの小さな秘密の空間(Petit jardin secret parisiens)」。 フランス出身のフラワーアーティスト、ローラン・ボーニッシュさんが万人に愛され、人々を魅了するバラの魅力を「フレンチローズが咲く庭に佇む小さな家」に表現します。バラの色彩や姿を目で楽しみ、香りも感じられる展示です。個性きらめく花の装飾が随所にみられる、こだわりの世界観は必見! 花緑を愛するゲストが続々登場する2つのステージ 今年4月からガーデニングに関する冠番組を持つ女優の黒谷友香さんや、GREEN✕EXPO2027応援団長でシンガーソングライターの白井貴子さん、ガーデンデザイナーの吉谷桂子さん、園芸超人のカーメン君など、豪華ゲストが勢ぞろい! 園芸研究家、ガーデンデザイナー、熱帯植物栽培家、料理研究家など今、ガーデニング業界で活躍中のステージゲストが続々登場し、トークショーや園芸セミナー、デモンストレーションなど多彩なプログラムが予定されています。TVや雑誌などメディアで有名な方々の生の声が聞ける貴重な機会をお見逃しなく。 花と緑の楽しさ100人100通り! 植物のトレンドをキャッチ バラの街・横浜からトレンドのバラ一挙公開 最新のバラ、人気のバラ、インフルエンサーいち押しのバラなど、国内外で作出されたトレンドのバラが勢揃いします。ここでしか見られない華やかなバラの競演に酔いしれ、品種ごとに異なる個性あふれるバラの香りも堪能しましょう。 左:アローム ディヴァン/デルバール(フランス)華やかなロゼット咲き大輪の新品種。甘さと爽やかさが調和する豊かな香りもお楽しみに!右:クランベリー アイズ/ワーナーズ ローゼス(イギリス)柔らかく波打つ花弁。中心に入るクランベリーピンクのアイが個性的な人気のバラです。 左:カネット/ローズ ドゥ メルスリー(日本)明るい赤からローズピンクを帯びて咲き進みます。一重咲きのナチュラルな魅力の新品種です。右: スマイル ハニー ローズ/ くまのプーさん/メイアン(フランス)みんなを笑顔にしてくれる「くまのプーさん」。大好きなハチミツのような花色の人気品種です。 あなたも審査員! ガーデニングコンテスト&日本バラ切花〜新品種展示と人気投票〜 2024年に行われたガーデニングコンテスト3部門の受賞作品。 日頃から培ってきたデザイン力、植え付けの技術、提案性などを活かした美しい作品がずらりと並ぶガーデニングコンテストを会場内で開催! 部門は、①ミニガーデン部門 ②コンテナガーデン部門 ③ハンギングバスケット部門の3つ。来場者による人気投票と、審査員による部門別の審査結果は会場で発表。ガーデニングのヒントを得るコンテスト展示の機会をお見逃しなく。 Japan品質のクオリティーが高い花々を鑑賞 150点のバラ切花が集結し、栽培技術の日本一が決定する『日本ばら切花品評会』や、旬の花・自慢の花が5地域から集結する『ニッポン花ざかり』では、まだ流通していない新品種も含め、最新の鉢花・切花が勢揃い。彩り豊かな美しい花々を一堂に見られる機会です。 「公園愛護会」など横浜を彩る市民のチカラを紹介する『市民パワーで街に緑を』では、ガーデナーの永江晴子さんがモデルガーデンを披露。『花と緑 和の愉しみ』では、おもとやバラ盆栽、一葉式いけ花四代目家元による作品など、海外からも注目が高い日本の伝統園芸の今を知ることができます。 多彩な体験コンテンツで花と緑と親しもう! 国産の木のおもちゃを使って親子で楽しめる「木育キャラバン」や新しい種まきの手法を遊び感覚で体験できる「たねダンゴづくり(有料)」、話題の子供向け職業体験コーナー「植木屋さんになってみよう(有料)」、子供向け花育講座「子供のためのフラワーアレンジメント(有料)」のほか、大きな2人挽きノコギリでヒノキの丸太切りを体験できる無料の体験コーナーなど、他では経験できない花と緑にまつわるコンテンツが日替わりで登場! ハンギングバスケットや寄せ植え体験、いけばな、押し花、調香ワークショップ、園芸相談コーナーなども。 ガーデンストーリー出展ブースでは新ブランド「ガーデンストーリーシリーズ」の商品を初披露! 当サイト「ガーデンストーリー」も、ガーデニング&エクステリア専門のオンラインショップ「青山ガーデン」とコラボで会場中央奥30番ブースに出展いたします。ブースでは、ガーデンストーリーサイトやSNS、イベント会場にて読者投票を行ったガーデングッズの新ブランド「GARDEN STORY Series(ガーデンストーリーシリーズ)」の販売決定商品の展示と、イベント限定特別価格での先行予約販売を実施。さらに次回企画に向けての投票イベント(プレゼントあり!)も開催します。 また、当日ガーデンストーリーの書籍(KADOKAWA発行)『花や実を育てる飾る食べる 植物と暮らす12カ月の楽しみ方』または『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』をご購入いただいた方には、ガーデンストーリーオリジナルのオーガニックコットン巾着をプレゼント。 そして、初日の5月3日(土)に、エム・アンド・ビー・フローラの難波良憲さんによる寄せ植えデモンストレーション(時間未定)を、また同日の15:00〜15:40にガーデンステージにて、ガーデンストーリー編集長・倉重香理によるトークショーを行います。 「ガーデンストーリーシリーズ」の商品を実際に手に取ってご覧いただける貴重な機会です。皆様のお越しをお待ちしております! 無料会員限定でペアチケットをプレゼント! 2025年5月3日(土)~5日(月)に神奈川県横浜市「パシフィコ横浜」で2度目の開催となる「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」の入場チケットを、無料会員制度「ガーデンストーリークラブ」会員限定で10組20名様に抽選でプレゼント! 応募方法 ●新規会員登録の方①下記リンクの記事より無料会員制度「ガーデンストーリークラブ」にご登録。 ②自動返信メールに記載の応募フォームからご応募。※自動返信メールが届かない場合は、info@gardenstory.jp までご連絡ください。 ●会員登録済の方4月8日12:00配信のメールマガジンに記載の応募フォームからご応募ください。※メールマガジン配信設定をしていない方で抽選応募希望の方は、info@gardenstory.jp までご連絡ください。●応募締切 4月23日(水)9:00ご応募お待ちしております! Information 「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」開催日時 2025年5月3日(土)~5日(月) 10:00~17:00 ※最終日16:00まで ※入場は閉場時間の30分前まで会場 パシフィコ横浜 展示ホールA・B入場料 前売券 ¥1,500 当日券 ¥1,800 中学生以下無料 ※税込 チケット購入はこちら(https://yfg-fes.jp/ticket/)主催 横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025実行委員会 ガーデンネックレス横浜実行委員会 (公社)日本家庭園芸普及協会 (株)NHKエデュケーショナル 全国花みどり協会 (株)横浜国際平和会議場 (公社)2027年国際園芸博覧会協会 (公財)横浜市緑の協会共催 横浜市後援 農林水産省、国土交通省、神奈川県、NHK横浜放送局、UR都市機構、都市緑化機構
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一年草
アークトチスは愛らしく華やかな花が魅力! 特徴や育て方のポイント、霜よけ方法もご紹介
アークトチスの基本情報 Peter Turner Photography/Shutterstock.com 植物名:アークトチス学名:Arctotis英名:Arctotis、African daisy和名:ハゴロモギク(羽衣菊)その他の名前:アフリカギク、アルクトティス科名:キク科属名:アークトチス属原産地:南アフリカ形態:宿根草(多年草) アークトチスはキク科アークトチス属の多年草です。ただし、高温多湿が苦手で日本の暑い夏を乗り切れずに枯死しやすいため、一年草として流通していることが多くなっています。原産地は南アフリカで、約60種以上が確認されています。和名はハゴロモギクで、草丈は20〜70cmほどです。 アークトチスの花や葉の特徴 Wattlebird/Shutterstock.com 園芸分類:草花開花時期:4〜7月草丈:20〜70cm耐寒性:普通耐暑性:やや弱い花色:オレンジ、黄色、ピンク、白など 開花期は種類によって異なりますが、基本的に4〜7月です。花色はオレンジ、黄色、ピンク、白など。花茎を長く伸ばした頂部に一輪の花を咲かせ、日中に開いて夜には閉じる性質をもっています。細長く放射状に伸びる舌状花と中央の筒状花とがある、マーガレットやガーベラなどに似た花です。葉は種類によって異なり、切り込みが入る楕円形タイプが一般的。茎葉には細かい毛が生えています。 アークトチスの名前の由来や花言葉 Graeme L Scott/Shutterstock.com アークトチスの名は、ギリシア語で「arktos(熊)」「ous(耳)」、また代表的な種類であるグランディスは「grandis(大きい)」という単語からきており、「大きな熊の耳」を意味します。これは、種子についている毛をイメージしたものとされています。和名の「羽衣菊(ハゴロモギク)」は、天女の羽衣をまとっているような花の美しさを表現して名付けられたようです。 アークトチスの花言葉は「個性豊か」「若き日の思い出」などです。 アークトチスの種類 国内で流通しているアークトチスは、主にグランディスとアカウリスの2種。それぞれの特徴について見ていきましょう。 アークトチス・グランディス All for you friend/Shutterstock.com アークトチスとして日本で最初に導入されたのが、グランディスです。花のサイズは6cm前後で存在感があります。白い花色とシルバーの葉は、清楚な印象。草丈は50〜70cmになるので、花壇の中段向きです。 アークトチス・アカウリス LifeCollectionPhotography/Shutterstock.com 最近では、園芸店でアークトチスというと、アカウリスを指すことが多くなっています。アカウリスはオレンジや黄色などのビビッドカラーのほか、サーモンピンクやクリーム色などのパステルカラーも揃い、品種が多様です。人気の高い草花のため品種改良が進んでおり、キク科ベニジウムと交配して生まれたベニディオ・アークトチスも、近年はアークトチスとして流通しています。さらには違う種同士を掛け合わせた交配種もあり、それらはアークトチス・ヒブリダ(雑種)と呼ばれて分類がややこしくなっているようです。 アークトチスの栽培12カ月カレンダー 開花時期:4〜7月植え付け・植え替え:11月頃、4〜5月肥料:4月〜6月中旬種まき:9月下旬~10月中旬 アークトチスの栽培環境 alybaba/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】アークトチスは日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では、ひょろひょろと徒長した軟弱な株になり、また花つきも悪くなるので注意しましょう。 【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。 【置き場所】水はけのよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。 耐寒性・耐暑性 アークトチスの耐寒性はマイナス4℃程度とされ、低温で傷みやすいので、冬越しの際は霜や雪、寒風を避けられる場所で管理するとよいでしょう。また、高温多湿を嫌うので、込み合いすぎているようなら茎葉をすかす切り戻しをして、風通しよく管理します。 アークトチスの育て方のポイント 用土 Wstockstudio/Shutterstock.com 【地植え】 植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 市販の草花用培養土を利用すると手軽です。 水やり Zoom Team/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。 また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。 【地植え】 根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。アークトチスは乾燥に強く多湿を嫌う性質とはいうものの、乾燥しすぎると弱るので、水切れしないようにすることが大切です。しかし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に生育が止まってもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。 肥料 Sarycheva Olesia/Shutterstock.com 【地植え・鉢植えともに】 植え付けの際に肥料を施しておきます。開花期間は、10日〜2週間に1度は液体肥料を与えて、株の勢いを保ちましょう。 注意する病害虫 schankz/Shutterstock.com 【病気】 アークトチスに発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。 うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。 灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。 【害虫】 アークトチスに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。 ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。 アークトチスの詳しい育て方 苗の選び方 アークトチスは、種まきからでも簡単に育てられます。花苗店で苗を購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まった丈夫なものを選びましょう。 種まき YamabikaY/Shutterstock.com アークトチスは、ビギナーでも種まきから育てやすい花。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。 ただし、アークトチスの苗は春から花苗店に出回り始めます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめ。1〜2株あれば十分という方は、苗から栽培するとよいでしょう。 アークトチスの発芽適温は20℃前後で、種まき適期は、9月下旬〜10月中旬です。 まず、種まき用のトレイに市販の培養土を入れ、種を数粒ずつ播きます。浅く水を張った容器に入れて底から水を給水します。これはジョウロなどで上から水やりすると水流によって種が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に底から給水しましょう。 発芽後は日当たりのよい場所に置き、乾燥気味に管理します。勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。本葉が2〜3枚ついたら黒ポットに鉢上げして育苗し、十分に育ったら花壇や鉢などの植えたい場所に植え付けます。 植え付け・植え替え laenon/Shutterstock.com アークトチスの植え付け適期は、種子から育てて育苗した場合は11月頃、花苗店で苗を購入する場合は4〜5月です。植え付け適期でない時期も苗は園芸店などに出回っているので、入手したら早めに植え付けます。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗よりもひと回り大きな穴を掘って植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、30〜40cmほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。 真夏の暑さに弱い傾向にあるので、夏前に鉢へ植え替えて涼しい場所で管理するとよいでしょう。 【鉢植え】 鉢の大きさは、5〜7号鉢を準備しましょう。 用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐして植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出ないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。 鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。 日常のお手入れ Aleksei Golovanov/Shutterstock.com 【花がら摘み】 アークトチスは次から次へと花が咲くので、終わった花は園芸用バサミで切り取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。 夏越し・冬越し Anton Starikov/Shutterstock.com 【夏越し】 アークトチスは高温多湿を嫌うため、夏越しの際は可能なかぎり水はけのよい土で風通しよく管理することが大切です。地植えで育てている場合は、鉢に植え替えて、風通しがよく涼しい場所に移動するのも一案です。ただし、真夏の暑さを乗り越えられずに枯死してしまうことが多く、日本では一年草扱いもされることから、一年草と割り切って楽しむのもおすすめです。 【冬越し】 アークトチスは寒さにも弱く、耐寒性はマイナス4℃程度とされていますが、0℃以下では枯死してしまう確率が高まります。冬越しの際は、霜や雪を避け、寒風が当たらない場所で管理します。 寒さ対策や霜よけとして、地植えの場合は株元にバークチップなどをかぶせて凍結を防ぐとよいでしょう。鉢栽培の場合は霜の当たらない軒下などに移動して管理します。品種によっては耐寒性に優れるものと、寒さに弱いものとがあるので、購入の際にラベルをチェックし、適した環境で冬越しさせてください。 増やし方 アークトチスは、種まきや挿し木で増やすことができます。 【種まき】 アークトチスを種まきから増やしたい場合、開花後に種子を採取します。開花期が終わりを迎える頃に花がら摘みをやめ、熟したら種子を採取して密閉容器に入れ、種まき適期まで保管しておきましょう。ただし、交配された園芸品種の場合は、親と同じ性質になるとは限らないことを知っておいてください。 種まきの方法については、「種まき」の項目を参照してください。 【挿し芽】 挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し芽でができないものもありますが、アークトチスは挿し芽で増やせます。 アークトチスの挿し芽の適期は、6月頃か9月下旬〜10月です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。成長して根が回ってきたら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。 アークトチスを咲かせて華やかな庭をつくろう Peter Turner Photography/Shutterstock.com ビビッド系からパステル系まで、色幅が豊富に揃うアークトチスには、「どんなタイプを育てようかな」という選ぶ楽しみがあります。花のサイズがやや大きめなので、寄せ植えの主役としても活躍。ぜひアークトチスを庭やベランダで育ててみてはいかがでしょうか。
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観葉・インドアグリーン
虫が出ない!初心者も安心の“ハイドロカルチャー寄せ植え”でおしゃれな新生活
ハイドロカルチャーとは?土を使わない観葉植物の新しい育て方 ハイドロカルチャー(Hydroculture)とは、土を使わず、水と人工用土(ハイドロボールなど)で植物を育てる方法です。 水耕栽培の一種ですが、観葉植物をインテリアとして楽しむためにアレンジされたスタイル。 使用するのは、無菌で軽くて見た目も美しいハイドロボールや小石などの植え込み材。虫がわきにくく、においもほぼないので、室内でも清潔に植物を楽しめます。 ハイドロボールに植えた観葉植物の寄せ植え。室内にみずみずしい彩りをもたらす。 ハイドロカルチャーはこんな方におすすめ! 植物を育ててみたいけど、「土」や「虫」が気になる方 忙しい毎日でも手間なくグリーンを楽しみたい方 ワンルームやデスクなど、限られたスペースに癒やしを置きたい方 おしゃれなインテリアとして観葉植物を取り入れたい方 初心者だけど、ちゃんと育てられるか不安な方 ハイドロカルチャーは、そんな「植物は好きだけど、ちょっとハードルが高い」と感じている方にこそぴったりのスタイル。水の管理もラクで、虫がわきにくく、清潔。だから、植物ビギナーにも安心して始められます。 観葉植物の寄せ植えの魅力 観葉植物は、一般的には1つの鉢に1種類の植物を植えて育てますが、複数の植物を組み合わせた「寄せ植え」も魅力的。 ミニガーデンのような世界観! 小さな容器の中に多彩な植物が共存する姿は見ているだけで癒やされます。 高さ・色・葉の形のバランスで自分だけのレイアウトに! アート感覚で楽しめます。 省スペースでも存在感◎! 1つのガラス容器で、ぐっと空間が華やかに。 透明ガラスで失敗しない!初心者におすすめのハイドロカルチャー容器 ハイドロカルチャーにおすすめなのが、透明なガラス製の容器。これが便利かつおしゃれ! その理由は… 水の量がひと目で分かる:水を容器の底に1/3ほどためておけば、根が必要な分だけ吸い上げます。水の量を目で見て確認できるので、初心者も水切れの失敗がありません。 インテリア性も抜群:中のハイドロボールや根の様子まで見えることで、ナチュラルで洗練された印象に。 容器選びの注意点(深さ・形状) 排水穴のないもの。 深さ:10cmほどがベスト。浅すぎると根が張れず、水分管理が難しい。 安定性:底が広い、または重みのあるものを選ぶ。 口の広さ:蒸れ防止のために、ある程度開いている形状が理想。 ワイングラス型のようなおしゃれ容器は不安定になりやすく、根が張りづらいため、初心者にはやや難易度高め。 沼ノ上農園にはハイドロカルチャーに向くさまざまなデザインのガラスの器が並ぶ。 ハイドロカルチャーの寄せ植えに必要な資材と道具 ① ミリオン(またはゼオライト)/水質浄化作用がある天然鉱物。水の腐敗を防ぎ、根腐れ防止・肥料効果アップ・ミネラル補給などでよりよく育つ資材。ハイドロカルチャーには必須。② ハイドロコーン(小粒)/粘土を高温で焼き上げ発泡させたボール状のレンガのこと。無数の小さな空洞が水や空気を保ち、植物の根にとってよい環境を作る。病害虫の発生が少なく清潔で衛生的。ハイドロコーンでなくても、キレイに洗った小石などでもOK。③ ガラス容器/今回使用の容器は直径約14cm、高さ約12cm④ ハイドロカルチャー用の液肥/ハイドロカルチャー専用のものを使用すること。培養土用の液肥や肥料は病気や蒸れの原因になるためガイドロカルチャーでは不可。⑤ 活力材/植え込み時に使用。メネデールなどの活力材は肥料と異なり、あげすぎによる失敗がないので安心して使える。 ⑥ バケツ/植え込み時に根を洗うために水をはっておく。⑦ 小さいシャベル/植え込み時にあると便利。⑧ ピンセット/植え込み時にあると便利。⑨ 水さし/水やりの際に使用。 初心者でもできる!ハイドロカルチャー寄せ植えの作り方を解説 <今回植え込む観葉植物> ① コルジリネ② アジアンタム③ トラディスカンチア④ エバーフレッシュ 沼ノ上農園のハイドロカルチャー用観葉植物苗。イキイキと元気な苗が揃う。 寄せ植えに使用する苗は、プラグ苗など小型の容器で育苗された観葉植物から選びます。水耕栽培用の小さな苗もたくさんの種類があり、店頭で水に浸かった状態で販売されています。直径5〜6cmの小さなポットに入っているものや、根がオアシスでおおわれたオアシス苗などがあります。輪ゴムでくくられている場合がありますが、輪ゴムはとらずに植え込みます。観葉植物のほとんどの種類がハイドロカルチャーで育てられます。 <作り方> ① 容器にハイドロボールを入れますが、その前に袋の中に手を入れ、手に汚れがついてくるようであればハイドロボールを水で洗います。小石を使う場合も同様です。 ② 水の腐敗を防ぐためにミリオンをひとつまみ入れます。 ③ さらに上からハイドロボールを容器の3/4ほど入れます。 ④ 水をはったバケツにメネデールを規定量入れます。植え込み時には植物にストレスがかかるため、ダメージを防ぎ、その後の生育をよくするためにメネデールなどの活力剤を用いるのがおすすめ。 ⑤ 苗をポットから抜き、根をバケツの中で洗います。特に通常の培養土で育てられているものは、ピンセットで丁寧に根をほぐしながら、よく土を洗い落とします。ハイドロボールに植えられている場合は完全に落とさなくても大丈夫です。また、オアシス苗は、オアシスはとらずにそのまま植え込みます。 ⑥ 植え込む植物のなかで、最も背の高いもの、大きいものから最初に植えていきます。今回はエバーフレッシュから植えていきます。鉢の見る方向が決まっている場合、一番背の高いもの、大きいものは鉢の後方に配置します。全方向的に見る場合は、鉢の中央に配置します。 植え込み位置が決まったら、エバーフレッシュを置き、上からハイドロボールを少量入れて苗に寄せて安定させます。今回は一定方向から見ることを前提とし、エバーフレッシュを後方へ配置します。 ⑦ 手前に他の植物を置き、上からハイドロボールを入れて植え込んでいきます。植物が増えてくると手を入れにくくなってくるので、ピンセットを使って配置するといいでしょう。 ⑧ 鉢の手前に色のある種類をもってくるときれいです。植物同士の葉先が混ざるように微調整します。 ⑨ メネデール入りの水を容器の1/3〜1/4ほど入れて完成。ハイドロボールが水を吸い上げ、水が上へ伝わっていき、根にちゃんと届くので、たっぷり入れなくてOK。入れすぎると根腐れの原因になるので注意。 ピンクの斑入りのトラディスカンティアとコルジリネの赤い茎が、みずみずしいグリーンの中に華やかさを加える寄せ植え。個性の異なるものを組み合わせると見応えのある1鉢に。 観葉植物のハイドロボール寄せ植えの管理と置き場所 ◾️水やり/水が常に容器の1/3〜1/4ほど入っている状態を保ちます。水の減り具合は季節や植え込んだ種類や数、置き場所などによって異なるので、よく観察して完全になくなる前に、水を足してあげます。水を一度に多く入れると水の循環が滞り、健全な生育を妨げます。植物が常に新鮮な水が吸えるように、水は容器の1/3〜1/4に留めて循環させるのがポイントです。 ◾️置き場所/直射日光が当たらない明るい室内におきましょう。自然光がささなくても、室内の電気の光でも育ちます。窓辺の場合はレースや薄手のカーテン越しに光が当たるようにして、直射日光を避けます。 【避けたい場所】 葉焼けを起こすため、直射日光の当たる窓際は避けます。 エアコンの風が直接当たる場所は避けます。 暗くて空気の動かない場所は避けます。 ◾️肥料/ハイドロカルチャー専用の液体肥料を規定通り(製品の説明書に量や間隔など適量が記載されています)があげましょう。 ◾️その他/枯れ葉や変色した葉を見つけたら取り除きましょう。放置するとカビなどの原因になります。 まるでブーケ! 観葉植物の寄せ植えレベルアップ編 アンスリウム、シェフレラ、ペラエア、へデラなどをギャザリングの技法で寄せ植えにしたブーケのように華やかな一鉢。 草花の寄せ植えに「ギャザリング」という技法があります。苗を細かく分け、手の中で数種類をブーケのように組み合わせた状態で植え込む方法です。より繊細で複雑な表情を演出することができる技法ですが、観葉植物の寄せ植えでもこの技法が使えます。 水耕栽培用の観葉植物苗は、分けやすくなっているものも多いです。ギャザリングにする場合は、輪ゴムでくくってあるものは、輪ゴムを外すと細かく分けられます。メネデール入りのバケツの水で根を洗いながら、細かく苗をほぐして、組み合わせていきます。 今回は3束を作って1鉢に植えました。ギャザリングの場合、植え込み材料はハイドロボールより、「ベラボン®︎」が植えやすいです。ベラボン®︎は天然のヤシの実を原料とした植え込み材で、いったん水を吸うと膨らんで固定力が高まるので、株を細かく分けるギャザリングに適しています。 ベラボン®︎を使った場合の水やりは、ハイドロボールと少し異なります。水を容器の縁までたっぷり入れたあと株元を押さえ、鉢を逆さにして余分な水を流します。ベラボン®︎が白っぽくなったら、水やりのサインです。 上級者編ですが、草花でギャザリングをしたことのある方なら楽しんで作れるでしょう。観葉植物にもミニサイズのアンスリウムなど、お花が楽しめるものもあるので、ぜひ感性を発揮して作ってみてください。夏の暑い時期にも、涼しい室内で植物の美しい彩りが楽しめます。 Q&Aで分かる! ハイドロカルチャー寄せ植えの育て方 Q. 観葉植物のハイドロカルチャー寄せ植えの組み合わせのコツは? A1. 観葉植物の葉は形も葉色もさまざまな。特に形に注目して異なる個性のものを組み合わせると、お互いに引き立て合い素敵にまとまります。 左上から時計まわりに/エバーフレッシュ、サンセベリア・キリンドリカ、ミューレンベッキア、フィロデンドロン、フィカス、アスプレニウム A2. 斑入りのものやメタリックなものなど、緑色以外の色があるものを1つ加えると、華やかさが増します。 左上から時計まわりに/フィロデンドロン、ヒポエステス、トラディスカンチア、トラディスカンチア(ピンク斑入り)、ピレア、フィットニア Q. 植え方のコツはありますか? 根上がりのフィロデンドロンやオレンジの花のアンスリウムが南国の明るいムード。植え込み材にもオレンジブラウンの小石を使って。 A. 植物が素敵に見える向きや個性を見つけて、それが生きるように植えます。例えば、この寄せ植えで中央に植えたフィロデンドロンは、根上がりのように仕立てられており、3股に分かれた太い根っこがユニーク。それを株元まで植えてしまうと、せっかくの面白い形が見えなくなってしまうので、根上がり部分が見えるように植えこみました。同じ種類でもそれぞれ個性が異なるので、一つひとつをよく観察して「素敵ポイント」が生きるように植えるのがコツです。 Q. 肥料は必要? A. ハイドロカルチャーは無菌環境なので、有機肥料や土用肥料はNG! 「ハイドロカルチャー専用の液体肥料」を使用し、水に薄めて与えるようにしましょう。(月1〜2回) Q. 植え替えのタイミングは? A. 1年に1回植え替えましょう。鉢やハイドロボールを洗って、ミリオンを再度入れてリフレッシュさせます。植え替えることで、根詰まりを防ぎ、器やハイドロボールの交換で清潔さを保ちます。このタイミングで、大きく育ったものは株分けして別の鉢に植え替えて楽しむこともできます。春から初夏が植え替え適期です。 Q.根腐れやカビが出たらどうしたらいいでしょうか? A.表面のボールを取り除いて交換しましょう。根が腐っていたら剪定し、新しい器と植え込み材で植え直しましょう。 まとめ:小さな器に、癒やしと季節感を詰め込んで ハイドロカルチャーの寄せ植えは、誰でも気軽に始められて、暮らしにやさしい彩りを与えてくれる存在です。水と光、そしてほんの少しの手間で、あなたの部屋が癒やしの空間に変わります。 この春、自分だけの“ミニグリーンガーデン”をはじめてみませんか? Information 沼ノ上農園住所:埼玉県さいたま市南区太田窪2810TEL :048-881-1223営業時間:毎日10〜18時 創業から100年続く埼玉の南浦和にある園芸店。草花や観葉植物など、さまざまな植物を取り扱う。オンラインショップでは主にオージープランツを扱う。4代目の日暮準さんが寄せ植えや観葉植物の管理の仕方を指南するYou Tube「花屋のせがれのジュン」も好評。 沼ノ上農園 http://www.youtube.com/@花屋のせがれのジュン
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樹木
ハナミズキの特徴と育て方! 苗木の植え方や剪定についてご紹介
ハナミズキの基本情報 Lilac Mountain/Shutterstock.com 植物名:ハナミズキ学名: Cornus florida(Benthamidia florida)英名:Flowerdogwood和名:アメリカヤマボウシ科名:ミズキ科属名: サンシュユ属(ヤマボウシ属)原産地:北米東部からメキシコ北東部形態:落葉高木 ハナミズキは、ミズキ科サンシュユ属(ヤマボウシ属)の落葉高木です。原産地は北米東部〜メキシコ北東部で、寒さ、暑さともにやや弱い傾向にあります。最終樹形は8mにもなりますが、剪定によって樹高をコントロールすることができるので、一般家庭では4m以内におさめておくとよいでしょう。成長の速度はやや遅く、樹形も自然に整うので、メンテナンスしやすい樹木です。 ハナミズキの開花期は4月中旬〜5月中旬。花色は白、ピンク、赤があります。花弁に見える部分は苞で、じつはその真ん中に丸く集まったものが花の本体です。大変花つきがよく、開花期に満開になる様子は見応えがあるので、庭のシンボルツリーとして活躍します。 日本のハナミズキの歴史 Virunja/Shutterstock.com 1912年に東京市長が友好の印として、アメリカのワシントンD.C.に桜の苗木を贈った返礼に、アメリカからハナミズキが日本へ届けられたことが普及の始まりです。最初は白花が、その2年後に赤花が届いたとされています。その後広く親しまれ、花の美しい「ミズキ」として「ハナミズキ」と呼ばれるようになりました。漢字では「花水木」と書きます。 ハナミズキの花や葉、実の特徴 Jorge Salcedo/Shutterstock.com 園芸分類:庭木・花木開花時期:4月中旬~5月中旬樹高:4〜10m耐寒性:やや弱い耐暑性:やや弱い花色:赤、ピンク、白 ハナミズキは4月中旬から5月中旬にかけて花を咲かせ、同時期に葉も茂りはじめます。開花期が長めなので、花を十分に楽しめます。 赤やピンク、白の特徴的な花の形で知られるハナミズキですが、花弁に見える部分は実は「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれる葉の一種。本来の花は総苞片の中央部分にある黄緑色の部位です。 花が咲き終わると、1cmほどの赤い小ぶりな実がつきます。秋には美しい紅葉の様子が見られるのも、ハナミズキの魅力の一つです。 ハナミズキの紅葉 J K Laws/Shutterstock.com ハナミズキは開花後に新緑が出て夏には緑陰をもたらし、秋が深まるとともに赤く紅葉します。「紅葉は高冷地ほど発色がよくなる」といわれますが、ハナミズキは温暖な地域でも鮮やかに紅葉してくれるのが特徴。開花期の春と紅葉の秋、2回の観賞期がある花木です。 ハナミズキの実 rsev97/Shutterstock.com ハナミズキは、10月頃に艶やかな赤い実をつけます。小さな実が複数集まる姿は愛らしく、こちらも観賞価値があります。おいしそうにも見えますが、渋くて食べられたものではありません。毒はなく、鳥たちが食べにやってくるので、庭にいながらバードウォッチングを楽しめる一面も。鳥たちに実を食べてもらうことで、飛び去った移動先で落としたフンからタネが芽を出して繁殖するという生存戦略を持っています。 ハナミズキの名前の由来や花言葉 Danita Delimont/Shutterstock.com ハナミズキは、同じミズキ科のなかでもひときわ美しい花が咲くことから名付けられています。 1912年に東京からアメリカに桜を贈った返礼として、ハナミズキが日本に寄贈されました。このことから、「私の思いを受け取ってください」「返礼」「永続性」などの花言葉があります。 なお英語の花言葉には「永続性」を意味するdurabilityや、「逆境に耐える愛」を意味するlove undiminished by adversity、「私があなたに関心が無いとでも?」と問いかけるAm I indifferent to you? などがあります。 ハナミズキの代表的な品種 Lilylian12/Shutterstock.com ハナミズキは人気の花木のため、品種改良が進んでさまざまな品種が出回っています。品種ごとに開花時期や花の大きさ・色などに違いがあるので、個性の違いを楽しめるでしょう。 清楚な白花で花つきがよく、最もポピュラーな品種は‘クラウドナイン’、苞が反り返って、まるで王冠のような咲き姿になる白花の‘フェアリークラウン’、濃い赤花で若木のうちからよく花を咲かせる‘レッドジャイアント’、赤花の大輪品種で大変華やかな‘チェロキーチーフ’、小型の矮性品種で樹形がコンパクトにまとまる‘レッドドワーフ’、赤花でやや遅咲きの‘レッドビューティー’などがあります。 また、ハナミズキとよく似たヤマボウシとの交配種‘ステラピンク‘は、5〜6月に淡いピンクの花を咲かせます。寒冷地でも育てやすく、うどん粉病にもかかりにくい丈夫さが特徴の品種です。 ハナミズキとヤマボウシの違い 左がハナミズキで、右がヤマボウシ。Leene(左), tamu1500(右)/Shutterstock.com ハナミズキとヤマボウシは同じミズキ科の植物なので、姿がよく似ています。しかし、花や葉、実の特徴に少しずつ違いがあり、見分けることはそれほど難しくありません。 ハナミズキの花(総苞片)は先端の中央部分が凹んだ特徴的な形をしているのに対し、ヤマボウシの花弁の先は尖っています。また、ハナミズキの開花期が4月中旬〜5月中旬ですが、ヤマボウシは5月~6月が開花期です。 なお、ハナミズキは開花と同時期もしくは少し後に葉が茂りはじめますが、ヤマボウシの葉は花よりも前についています。 ハナミズキとヤマボウシは実にも違いがあります。ハナミズキは1cmほどの小ぶりな赤い実をつけ、ヤマボウシは2〜3cm程度のオレンジ色・または赤色の実をつけます。ハナミズキの実は食べられませんが、ヤマボウシの実は食べられるのも、異なる点です。 ハナミズキの栽培12カ月カレンダー Marls images/Shutterstock.com 開花時期:4月中旬〜5月中旬植え付け・植え替え:12〜3月肥料:5月中旬(鉢植え)、5月中旬〜6月上旬(庭植え)種まき:3月頃 ハナミズキの栽培環境 Vineyard Perspective/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 ハナミズキを栽培するときは、日当たりのよい場所に置くことが基本です。 ただし、近年の日本では夏場の暑さがかなり厳しいため、強すぎる日差しで土壌が乾燥して、株がダメージを受けたり、葉焼けする可能性があります。 地植えの場合は、午前中だけ光が当たる場所がよいでしょう。西日が当たる場所はなるべく避けた上で、土壌の乾燥を防ぐバークチップなどのマルチング資材を使うのも方法です。 耐寒性・耐暑性 ハナミズキは耐寒性・耐暑性ともにやや弱い植物です。 地植えの場合は、北風が当たる場所や西日が強く当たる場所を避けて植えましょう。 鉢植えの場合は、夏は涼しい場所に移動し、乾燥に注意しながら管理します。冬場はあまり暖かい環境だと休眠が不十分になるため、日が当たらない涼しい場所に置くことがおすすめです。 ハナミズキの育て方のポイント 用土 SujaImages/Shutterstock.com 【地植え】 植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 樹木用にブレンドされた培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合したオリジナル用土を用意してもよいでしょう。 水やり Vladimir Gjorgiev/Shutterstock.com 【地植え】 植え付け後にしっかり根付いて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【鉢植え】 日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。 肥料 tanaban chuenchay/Shutterstock.com 地植え、鉢植えともに開花が終わった5月中旬〜下旬頃に緩効性化成肥料を与え、土によくなじませます。たっぷりと花を咲かせてエネルギーを消耗した木に体力を回復させる目的で与える肥料なので、「お礼肥(おれいごえ)」といいます。「たくさん花を咲かせてくれてありがとう」という気持ちを込めて、肥料をあげてくださいね。 注意する病害虫 feathercollector/Shutterstock.com 【病気】 ハナミズキがかかりやすい病気は、うどんこ病、白紋羽(しろもんぱ)病です。 うどんこ病は、発生すると葉の表面に白い粉が吹いたようなカビが見られます。光合成を阻害されたり、葉から養分を吸収されたりして、木の勢いがなくなり、見た目も悪くなります。放任してひどくなると枯れてしまうこともあるので注意。兆候が表れたら早期に殺菌剤などを散布して対処しましょう。乾燥する時期に発生しやすい傾向にあるので、水もち、水はけのよい土壌作りと、適切な水やりの管理が回避のカギです。窒素成分の多い肥料を与えすぎるのも、発症のきっかけになります。 白紋羽病は、発症すると、木全体の葉が縮れて枯れ込み、根や地際に近い樹皮に白灰色の菌糸束や菌糸膜が見つかります。手遅れになると枯死し、周囲に病気が蔓延するのを防ぐために、早めに抜き取って土ごと処分することも考えなければなりません。樹勢が弱ると発症する傾向にあるので、勢いのある健康な状態を保つことが大切です。 【害虫】 ハナミズキにつきやすい害虫は、アメリカシロヒトリ、コウモリガ、テッポウムシなどです。 アメリカシロヒトリは蛾の一種で、葉に卵を産みつけて孵化した毛虫が葉を食い荒らします。大発生することがあるので要注意。見つけ次第、適応する薬剤を散布して駆除します。 コウモリガは蛾の一種です。秋頃、地上に産卵されて越冬し、孵化した幼虫は雑草などを食べて育ちますが、成長すると樹木などへ移動し、幹や枝の中に侵入して食害します。食害が進むと、樹勢が弱って枯死することもあるほど。春以降、周辺に雑草がはびこらないように草取りをまめにしておくと予防になります。見つけたらエアゾールタイプの薬剤を穴から注入して駆除しましょう。 テッポウムシは、ゴマダラカミキリの幼虫です。成虫が幹などに産卵し、木の内部に入って食害します。幼虫は1〜2年にわたって木の内部を食害し、木は徐々に樹勢が弱り、枯死することも。木の周囲にオガクズが落ちていたら、内部にテッポウムシがいることが疑われます。発見次第、侵入したと見られる穴に薬剤を注入して駆除しましょう。 ハナミズキの詳しい育て方 苗の選び方 苗を購入する際は、樹形が美しく、しっかりとした苗木を選ぶとよいでしょう。 植え付け・植え替え ハナミズキの植え付け適期は、休眠期の12〜3月です。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかり根付くまでは支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。 【鉢植え】 鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 剪定 RapunzielStock/Shutterstock.com ハナミズキの剪定の適期は、休眠期の12〜2月と、開花後の5月です。 休眠期に行う剪定は、樹形を整えるため。地際から立ち上がっている「ひこばえ」は、元から切り取ります。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。枝が込みすぎて日当たりや風通しが悪くなっている部分は、間引いて枝の数を少なくしましょう。「少し切りすぎたかも?」と思うくらいがちょうどよく、ハナミズキは春からどっと枝葉を伸ばして旺盛に茂ります。 開花後の5月に行う剪定は、充実した花芽をつくるため。込んでいる部分の枝を透かして、木の内側までまんべんなく光が差し込むように軽く剪定する程度にとどめましょう。枯れ枝や細い枝、樹形のバランスを崩している長い枝などを、元から切り取らずに、途中まで「切り戻す」程度に剪定します。太い枝の剪定は休眠期まで待ってから行いましょう。 増やし方 Montana Isabella/Shutterstock.com ここでは、ハナミズキの増やし方をご紹介します。いずれも植物の生命力に対して感動を覚える体験ができますよ! ただし、花を咲かせるまでには数年はかかることを覚えておきましょう。 【接ぎ木】 接ぎ木の適期は3月頃です。 接ぎ木は、台木と接ぎ穂の2本を用意し、それらを合体させて人為的に育成する方法です。台木は種まきから育てて2〜3年経った若木を、接ぎ穂は増やしたい品種の新芽が出て1〜2年の若い枝を切り取って使います。台木の地上部を地際近くまで深く切り取り、切り口の端に縦に切り込みを入れ、接ぎ穂を差し込んでビニールテープなどで固定します。湿度を保つために、小さな穴を複数あけたビニールを巻いて固定し、直射日光や雨が当たらない涼しい場所で管理しましょう。接ぎ穂から新芽が出て生育し始めたら、接ぎ木の成功です。 【種まき】 熟した実から果肉を取り除いてタネを採取します。そのまますぐ播いてもOK。よく水洗いをしたのち、園芸用培養土にタネを播きます。発芽まで乾燥しないように管理し、成長とともに鉢増ししながら育成します。 タネを保存する場合は、乾燥させないようにすることがポイント。キッチンペーパーを湿らせてタネを包み、冷蔵庫で保管しましょう。越年させた場合は3月頃にタネを播きます。 ハナミズキを育てるときの注意点 花木は、一度植え付けて根付いてしまえば、剪定以外のメンテナンスはほとんど不要です。しかし、環境などによって木が弱ってしまうポイントもいくつかあります。その弱点を把握しておけば、早期に対処することができるので、以下にまとめました。 ハナミズキは毒性がある Stephanie Frey/Shutterstock.com 秋になるとハナミズキはつややかな赤い実をつけ、鳥たちのエサになります。しかし、実には毒性があり、人間が食べることはできません。ハナミズキよりも少し大きな実をつけるヤマボウシの実は食用できるので、混同しないように注意しましょう。 また、枝や葉を切る際に出る樹液が肌につくとかぶれることがあります。剪定の際には気をつけましょう。 ヤマボウシよりも寒さに弱い ハナミズキは丈夫で育てやすく、栽培にさほど手間をかけなくても育つため、街路樹でもよく見かけます。しかし、近縁種のヤマボウシに比べると耐寒性がやや弱いので、寒冷地で栽培する場合は必要に応じて防寒対策をしなければなりません。 北海道中部あたりまでは、場所を選べば地植えも可能ですが、心配な場合は気温に応じて移動できるように鉢植えで育てるのがおすすめです。 隔年開花の傾向がある Lorri Carter/Shutterstock.com 可憐な花が人気のハナミズキですが、じつは隔年で開花する性質があります。そのため、前年にたくさんの花が咲くと、翌年は花の量が減るケースがあります。 毎年一定量の花を咲かせるためには、つきすぎた蕾を摘蕾(てきらい)して、花の数を調整するとよいでしょう。 また、日照りによる土壌の乾燥や栄養不足、樹齢が若すぎる場合にも花つきが悪くなることがあります。 ハナミズキは庭木におすすめ lenic/Shutterstock.com ハナミズキは生育スピードがやや遅めで、樹形が整いやすいため、メンテナンスのしやすい庭木の一つです。開花、新緑、結実、紅葉、落葉と、表情を変えて四季の移ろいを告げてくれるのも魅力。シンボルツリーとして大人気のハナミズキを、ぜひ庭に植えてみてはいかがでしょうか。