広島県福山市は「ばらのまち」として知られ、市内には約100万本のバラが咲きます。公園や街路、学校、企業、そして個人の庭まで——。市内には400以上のバラ花壇が点在し、まるでまち全体が一つのローズガーデンのような風景が広がります。
そんな福山では、市民が育てた庭を巡る「ばらのまち福山ガーデンツーリズム」も楽しめることをご存じですか? 個人邸のローズガーデンから、港町・鞆の浦まで。あなたが訪れたい庭や観光地を組み合わせたカスタマイズの旅を、ガーデンツーリズムセンターが丁寧にコーディネート。
5月、バラ色に染まる福山を巡る旅の魅力をご紹介します。
目次
5月の福山市は、まちまるごとローズガーデン
広島県福山市は、いまや「ばらのまち」として全国に知られています。市内には約100万本ともいわれるバラが植えられ、公園や街路、学校、住宅地まで、まちのさまざまな場所でバラが咲き誇ります。

ばらのまち福山の始まりは、戦後の復興期にさかのぼります。福山は1945年の空襲で市街地の約8割が焼け野原となりました。やがて「荒廃した街に潤いを与え、人々の心に和らぎを取り戻そう」と、1950年代半ばに市民がバラ苗1,000本を植え始めたことをきっかけに、福山の「ばらのまちづくり」はスタート。以来70年以上、ばらのまちづくり活動は広がり、学校や企業、地域団体が参加する市民運動として発展していきました。

現在でも、市民・企業・行政が一体となってバラを育てる「ばらのまちづくり」が続けられています。通り沿いの花壇や公園だけでなく、個人の庭にも美しいバラが咲き、市内には400以上のバラ花壇が点在し、まち全体がまるで一つのローズガーデンのような風景をつくり出しています。
こうして福山に根づいたのが、バラを愛し、育て、まちを彩る中で育まれた「ローズマインド」。この精神こそが、福山を特別な「ばらのまち」にしている理由なのです。
市民が育てる「ばらのまち」──ローズマインドとは
福山市では、バラは単なる観光資源ではありません。市民一人ひとりが育て、まちを彩る花として大切にされてきました。その背景にあるのが、福山で語られる「ローズマインド(思いやり、優しさ、助け合いの心)」という考え方。
バラを愛し、育て、まちを美しくする──そんな市民の思いが、福山のバラ文化を支えています。

その取り組みの一つが、市民向けの講座「福山ばら大学」です。ここではバラの栽培や剪定、管理の技術を学ぶことができ、これまでに700人以上の市民が修了。受講者の多くは自宅でバラを育てるだけでなく、市内の花壇や公園の手入れに関わるなど、まちのバラを支える担い手として活動しています。
さらに2026年度から、バラ栽培やバラによる景観づくりを人に教える専門人材「マイスター」を育成する講座も始まるなど、市民同士が技術を伝え合う仕組みが築かれています。こうして福山では、市民のバラ栽培の知識と技術が世代を超えて広がってきました。

特筆すべきは、市民だけでなく福山市役所の職員もまた、バラや庭づくりの技術を学びながら公園管理に携わっていることです。ばら公園のリニューアルでは、従来のハイブリッドティー中心の植栽に加え、つるバラや半つる性のバラ、宿根草などを組み合わせた景観づくりが取り入れられました。そのため、公園管理にはバラを咲かせるだけでなく、景観として美しく仕立てるガーデンデザインの視点や管理技術も求められています。

行政がこうしたガーデン技術や文化を積極的に学び、市民とともに庭を育てていく例は、じつは日本ではそれほど多くありません。市民が植えた花が管理の都合で刈り取られてしまう、といった話も各地で聞かれる中、福山では市民と行政が同じ目線でばらのまちづくりに取り組んでいるのです。
こうした積み重ねが、「ばらのまち福山」を支えるローズマインドを育ててきました。そしてこの文化は、まちの公園だけでなく、個人の庭にも広がっています。福山ではいま、その美しい庭を巡る「ガーデンツーリズム」も楽しめるようになっています。
個人のバラ庭園も巡ることができる「ガーデンツーリズム」
福山のバラ文化は、公園だけでなく個人の庭にも広がっています。そんな庭を巡る旅として楽しめるのが、「ばらのまち福山 ガーデンツーリズム」です。

公式ガーデンとして登録されているのは、選りすぐりの市内21の庭園。ばら公園や緑町公園といった大きな公園のほか、個人邸のローズガーデン、企業や学校の花壇、バラ農園など、多彩な庭が含まれています。個人邸は4邸が登録されており、バラを愛する人たちが長い年月をかけて育ててきた庭を、庭主の話を聞きながら見学することができます。

ばら花壇コンクールで受賞した美しい植栽など、市民が育てるバラ文化の広がりを実感できます。庭のスタイルもさまざまで、和風の庭と組み合わせたガーデンや、高台に位置し美しい景色が楽しめるガーデンなど、福山のバラの楽しみ方の多様さを感じられるのも魅力。

さらに、登録庭園に含まれるバラ農園では楽しいバラ体験もできます。ここでは農薬を使わず、有機肥料で食用バラを育てており、園内ではバラ摘み体験のほか、バラアイスやバラジュース、バラティーなど、バラの香りと風味を堪能できます。

訪問する庭は、21カ所の中から自由に選ぶことができ、希望に合わせてコースを組み立てることができます。さらに、旅の途中にはユネスコ世界の記憶や日本遺産にも認定されている港町「鞆の浦」での昼食やまち歩き、神勝寺、福禅寺 対潮楼、阿伏兎観音、内海大橋などの名所を組み合わせることも可能。
庭を巡りながら、その土地の歴史や風景、食文化にも触れる——。福山のガーデンツーリズムは、バラをきっかけにまち全体を楽しむことができる旅なのです。
ツアーは完全カスタマイズ。ガーデンツーリズムセンターが旅をコーディネート
「ばらのまち福山 ガーデンツーリズム」の特徴は、あらかじめ決められたツアーではなく、希望に合わせて旅を組み立てられることです。
ガーデンツーリズムセンターに相談すると、訪れたい庭や観光スポットをもとに、オリジナルのコースを提案してくれます。個人邸の庭を訪れる場合には、事前に所有者の都合を確認してスケジュールを調整してくれるため、個人では難しい庭見学も安心して楽しむことができます。
また、移動手段としてタクシーの手配や、ランチやカフェ、地元のお土産スポットの紹介なども相談可能。庭巡りに加えて観光や食事も組み合わせた、一日を通して楽しめる旅をつくることができます。

さらに希望すれば、ばらのまち福山ガーデンツーリズム協議会認定のばらガイドを依頼することもできます。ガイド料は1グループ2時間2,200円。ばらのまちづくりの歴史や庭の見どころ、福山ならではのバラ文化について解説を聞きながら巡ることで、庭の楽しみ方がより深まります。
個人で庭を探して回るのではなく、地域の人たちに支えられた庭を訪ね、まちの文化に触れる——。福山のガーデンツーリズムは、そんなゆったりとした庭の旅を体験できる仕組みになっています。
バラを巡る福山の一日|ガーデンツーリズム一例
ここではその一例として、バラの庭と福山の名所を巡るモデルコースを紹介します。
9:30 ばら公園へ

旅のはじまりは、福山を代表するバラの名所「ばら公園」。リニューアルによって、つるバラや宿根草を組み合わせた立体的な植栽が増え、バラの景観を楽しめる公園へと生まれ変わりました。アーチやトンネルをくぐりながら、さまざまな品種のバラを楽しめます。
11:00 鞆の浦で昼食とまち歩き

続いてユネスコ世界の記憶や日本遺産にも認定されている港町「鞆の浦」へ。ここは古くから船が潮と風を待った「潮待ちの港」として知られ、江戸時代の面影を残す町並みが今も続いています。瀬戸内海の穏やかな景色を眺めながら、ゆっくりとまち歩きを楽しみましょう。海辺の食事処では、新鮮な魚料理や名物の鯛料理も味わえます。
13:30 個人邸のローズガーデンを訪問

午後は、市民が大切に育ててきた個人邸のバラ庭から。バラの美しさや色、香りが調和する庭は、それぞれに個性があり、庭づくりのアイデアもたくさん見つかります。オーナーからバラの育て方や庭づくりの話を聞けることもあり、庭好きにはたまらない時間です。
15:00 バラ農園で香りを楽しむ

旅の締めくくりは、食用バラを栽培する農園へ。ここでは農薬を使わず、有機肥料で育てたバラを使った体験が楽しめます。バラ摘み体験のほか、バラアイスやバラジュース、バラティーなど、花の香りと風味を味わえるのも魅力です。
バラの庭を巡り、瀬戸内の風景に触れ、食や文化も楽しむ——。
福山のガーデンツーリズムは、バラをきっかけにまちの魅力をゆっくりと味わう旅なのです。
5月はバラがまちを染める「第59回福山ばら祭2026」と「Rose Expo FUKUYAMA 2026」

毎年5月中旬、福山のまちは一年で最も華やかな季節を迎えます。市内のバラが見頃を迎えるこの時期に開催されるのが「福山ばら祭」です。ばら公園や緑町公園などを中心に、市民パレードやステージイベント、バラにちなんだ展示や体験など多彩な催しが行われ、まち全体が花の祝祭に包まれます。

そして近年、このばら祭の時期に合わせて開催されるのが「Rose Expo(ローズエキスポ)」です。バラの展示や新品種の紹介、園芸用品の販売、トークイベントなど、バラの魅力を多角的に体験できる“ばらの博覧会”のような催しです。

会場では、バラの育種家やガーデナー、研究者などが登壇するトークイベントなど内容盛りだくさん。例えば、YouTubeでも人気の園芸家、松尾祐樹氏による「バラや植物と気軽に楽しく付き合うコツの紹介」やバラの世界で女性育種家として憧れの存在と言われる後藤みどり氏によるトークなど、最新のバラ育種や栽培の魅力を紹介。
さらに、バラ専門誌『New Roses』編集長 玉置一裕氏と、ローズスタイリスト 大野耕生氏によるトークショーや、横浜イングリッシュガーデンのスーパーバイザー 河合伸志氏×植栽家 入谷伸一郎氏、女性造園家の阿部容子氏と、NHK『趣味の園芸』でも知られる園芸家・天野麻里絵氏などによるガーデンデザインのトークイベントも予定しています。

ばら祭の賑わいと、Rose Expoで出会うバラの世界。そして市内に点在する庭を巡るガーデンツーリズム。福山では、バラを見るだけでなく、育てる文化や暮らしの楽しみ方まで体験することができます。
まち全体がバラの香りに包まれる季節、バラの庭を巡り、瀬戸内の風景を楽しみ、まちに息づくローズマインドに出会う旅。春の福山で、そんな特別な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
【Information】
第59回福山ばら祭2026
開催日時:2026年5月16日(土)・5月17日(日)
会場:ばら公園、緑町公園、花園公園、中央公園、福山駅前ほか
Rose Expo FUKUYAMA 2026
開催日時:2026年5月16日(土)・5月17日(日)10:00〜17:00
会場:福山通運ローズアリーナ(福山市緑町2-2)
入場無料
https://fukuyama-matsuri.jp/publics/index/395/
ばらのまち福山ガーデンツーリズム協議会
https://www.fukuyama-kanko.com/travel/garden-tourism/
ガーデンツーリズムセンター 084-944-7222
月~金曜日 10:00~16:00
事務局:福山観光コンベンション協会 084-926-2649
Credit
写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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