トクサという植物をご存じでしょうか? 細く垂直に伸びるトクサは、すっきりとしたフォルムが和風モダンな雰囲気の庭によく似合います。今回はトクサとはどのような植物なのか、その基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方や種類などについて、詳しくご紹介します。
目次
トクサの基本情報
植物名:トクサ
学名:Equisetum hyemale
英名:Dutch rush、horsetail、rough horsetail、scouring rush
和名:トクサ(木賊、砥草)
その他の名前:エダウチトクサ、ハミガキグサ(歯磨草)
科名:トクサ科
属名:トクサ属
原産地:日本を含む北半球の温帯地域
形態:宿根草(多年草)
トクサはトクサ科トクサ属に分類されるシダ植物で、ツクシ(スギナ)と同じ仲間です。日本では本州中部地方より北に分布し、山間部の湿地や谷川の岸辺などに自生しています。草丈は数十cmから1mに達します。湿地性植物ですが、丈夫で環境をあまり選ばず、普通の土でもよく育ちます。半日陰を好み、和風の庭でよく利用されます。
また、トクサは湿地に生える植物であるため、ビオトープの植物としてもよく利用されています。ビオトープという言葉はもともと「生き物が生息する空間」のことで、水場を作ることで、人為的に植えた植物以外にも多様な動植物が自然に発生し、遷移する環境が整えられたエリアをビオトープと呼びます。
トクサの茎の特徴
園芸分類:草花
開花時期:7~8月(胞子嚢)
草丈:30〜100cm
耐寒性:強い
耐暑性:強い
トクサは通常枝分かれすることがなく、まっすぐ伸びていく姿が特徴。茎には節がいくつかあり、それを囲むように葉が変形した袴(はかま)がついています。茎は中空で、強い風に吹かれると折れることがあり、上に引っ張ると節からスポッと抜けます。花は咲きませんが、夏に茎の先端にツクシに似た楕円形の胞子嚢(ほうしのう)をつけます。茎の表面にはケイ酸が多く含まれ、ザラザラとした質感です。直線と節で構成された独特の草姿は竹のような雰囲気で、生け花にもよく使われます。性質は頑健で、地下茎でよく増えます。
トクサの名前の由来や花言葉
トクサは漢字では砥草や木賊と書きます。トクサの名前の由来は、砥石になる草であるため「砥ぐ草」からトクサと呼ばれるようになったといわれています。歯磨草(はみがきぐさ)という別名もあります。トクサの花言葉は「率直」「非凡」です。
トクサは天然のやすり
トクサの茎の表面にはケイ酸が多く含まれており、ザラザラとして固くなっています。これを利用して、昔の日本ではツゲの櫛などの木工品を磨くための“やすり”としても利用されていました。やすりにするためにはそのままではなく、皮をむいて煮込み、乾燥させたものを板に張り付けて使います。
トクサの代表的な種類
トクサにはいろいろな種類があります。日本には9種類が自生していますが、ここではトクサ以外の種類をいくつかご紹介します。
オオトクサ
オオトクサは成長すると草丈が1.5~2mにもなる大型のトクサで、一本の茎がまっすぐ伸びるのが特徴です。節は黒く、茎も太いためインパクトのある草姿が人気の品種です。
ヒメトクサ
ヒメトクサは草丈が10~20cmと小型のトクサで、茎の中に空洞がなく、細い茎が枝分かれするのが特徴です。
ミズトクサ
ミズトクサは草丈が20~80cmほど、太さは1.5mmほどのトクサです。上の2種よりも節の色が薄く柔らかい印象が特徴。通常のトクサと違い、水底に根を張って葉や茎を伸ばして一部を水面上に出す抽水植物なので、株元をしっかり水に浸けて育てます。
トクサの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7~8月(胞子嚢)
植え付け・植え替え:4〜6月
肥料:4〜9月
トクサの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】耐陰性があり、半日陰から明るい日陰で栽培できます。真夏以外は日の当たる場所のほうがよく育ちますが、夏の日差しには弱いため、真夏は西日や直射日光を避けた場所に置きましょう。
【日当たり/屋内】耐陰性があるため、明るい場所であれば室内でも育てることができます。
【置き場所】水はけがよい環境であれば、土質を選ばずよく育ちます。やや湿り気のある場所でも栽培できるため、日陰のシェードガーデンにも向きます。ただし、本来は湿地性の植物のため、極端に乾燥する場所では育ちにくいので注意しましょう。
耐寒性・耐暑性
耐寒性は高く、寒冷地では地上部が枯れることがありますが、地下茎が凍らなければ春に再び芽吹きます。ただし霜で傷みやすいので、霜が降りない軒下や日当たりのよい暖かい室内に取り込み、0℃以下にならないように管理するとよいでしょう。耐暑性は高いですが、夏の日差しには弱いため、真夏は西日や直射日光を避けた場所で管理します。
トクサの育て方
用土
トクサは用土を選ばない植物ですが、水はけのよい土で育てるのがおすすめです。
【地植え】
植える場所の水はけがよければそのまま植えても問題ありません。水はけが悪い場合は、腐葉土やバークチップ、パーライト、バーミキュライトなどを混ぜて水はけをよくします。
ただし、トクサは地下茎で広がっていくため、あちこちに繁茂させたくない場合は、根止めシートなどで根の伸びる場所をコントロールするなどの注意が必要です。
【鉢植え】
市販の草花用培養土で育てることができます。自分で配合する場合は、水はけのよい土にするために、赤玉土と鹿沼土を配合するのがおすすめです。
水やり
トクサは湿地性の植物なので、極端に乾燥する土地は苦手です。春~秋の生育期は土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。冬は生育が鈍るためやや乾かし気味に管理しましょう。
【地植え】
基本的に水やりの必要はありませんが、過度な乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
春~秋の時期は水切れに注意し、土の表面が乾いたらたっぷりと水やりします。冬は休眠期で生育が鈍るので、水やりは控えめにします。乾燥を嫌うとはいえ、常にジメジメとした状態が続くと根腐れしやすいので、土が乾いてから水を与えるようにしましょう。
肥料
基本的に肥料は必要ありませんが、生育を早めたい時には肥料を与えると効果的です。与える場合は4~9月の生育期に、緩効性化成肥料や希釈した液肥を与えます。ただし生育が鈍る冬は肥料焼けしやすいため、肥料は与えないようにします。
病害虫
トクサは注意すべき病害虫は特にありません。
トクサの詳しい育て方
苗の選び方
トクサの苗はあまり流通していません。購入する際は、病害虫の痕がなく、茎が曲がらずまっすぐ伸びているものを選びます。また、トクサは通常分岐せずに伸びますが、先端が傷むと枝分かれすることがあるため、枝分かれしていないものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え
トクサの植え付け・植え替え適期は4~6月です。旺盛に生育するため、スペースを確保してから植え付けます。
【地植え】
根が旺盛に生育するため、深さ50cmほど掘り下げ、苗の2~3倍程度の幅を耕して植え付けましょう。地植えの場合は、環境に合ってよく生育していれば植え替えの必要はありません。株が込み合っているようであれば、株分けをして整理しましょう。
【鉢植え】
旺盛に生育するため、地上部とのバランスがとれるよう、ある程度深さのある鉢に植えるとよいでしょう。鉢植えの場合、根詰まりしないように1~2年に1度植え替えが必要です。1回り大きな鉢に植え替えるか、株分けしてサイズを小さくし、元の鉢に植えなおしましょう。
冬越し
耐寒性は高いですが、霜で傷みやすく、地下茎が凍ると枯れてしまう可能性があるため注意しましょう。霜が降りない軒下や日当たりのよい暖かい室内に取り込み、0℃以下にならないように管理するとよいでしょう。10℃以上の気温を保てば冬も生育します。霜に当たらなければ、屋外でも越冬可能です。寒さで地上部が枯れ込んでも、地下茎が凍らなければ春に再び芽吹きます。
増やし方
トクサは挿し芽と株分けで増やすことができます。
【挿し芽】
トクサは切り花にしたものも水につけているだけで発根する、といわれるほど発根しやすく、挿し芽で簡単に増やすことができます。挿し芽をする場合は、トクサを2節ほどの長さで切り取って、切り口をしばらく水に浸けておきます。その後湿らせた土に植え付けます。
【株分け】
株分けは、地上の茎を数本つけた状態で地下茎を切り分け、それぞれ土に植え付けて増やすことができます。トクサは生育旺盛なので、植え替えの際に株分けをし、サイズを調整しながら育てるとよいでしょう。
トクサは増えすぎに注意が必要
トクサは非常に丈夫で育てやすい反面、地下茎を伸ばして旺盛に広がり、ほかの植物の生育を阻害したり、思いもよらない場所から出てくることもあります。地上部を引き抜いても地下茎が残るため、根絶が難しい植物です。地植えにする場合は、増えても困らないような場所に植えるか、広がりすぎないように根を制限する仕切りを設置するなど対策をしておきましょう。
庭に彩りを添えるトクサは初心者にもおすすめ
トクサは一見シンプルで地味な印象ですが、一風変わった見た目が和風モダンな庭の雰囲気づくりにぴったりの植物です。湿地の植物なのでビオトープづくりの脇役にもおすすめですが、地下茎で広がりやすいので植える場所には注意が必要です。耐陰性もあり非常に丈夫で、ほかの植物が育ちにくいシェードガーデンの下草にも向き、ガーデニング初心者にも育てやすい植物ので、ぜひ庭の雰囲気づくりに取り入れてみてはいかがでしょうか?
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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