咲かせて、眺めて、飾って嬉しい、花のある暮らしにオススメの植物をセレクトしてご紹介。小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんの、お正月の過ごし方とは? 外の庭が寂しい季節でも、身近に花と緑を必ず取り入れる、前田さんのガーデニングエッセイ。

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わが家の新年の迎え花は、毎年、暮れに高知の実家の庭から届く松や椿などの常緑樹と、花屋さんに並ぶ水仙。そして、季節の旬のお野菜や果実です。

歳神様を、慎ましくも晴れやかな気持ちで迎えられるように、ひとつひとつ心を込めてしつらえます。

キッチンに春野菜を

おせち料理用にスーパーで買った菜花は、食するものと分けて、何株かキッチンカウンターに飾ります。水切りして器に挿すと、葉はみるみる生き返り、みずみずしい緑に。日を追うごとに咲き始める小さな黄色い花は、キッチンにひと足早い春を届けてくれます。

紅白の小蕪は、鮮やかな色のコントラストが引き立つように、黒いお皿に盛りつけてダイニングテーブルの上へ。こんなちょっと遊び心のある迎え花も、わが家らしくてなかなか気に入っています。

春一番を告げる水仙

お正月に欠かせない花といえば、水仙。中でも寒さを包み込むような香り高い和水仙を玄関に飾ります。まっすぐ伸びた葉の凛々しさと楚々とした花の美しさが際立つように、花器は滑らかな白磁。その横に邪気を払うといわれる縁起物の「獅子ゆず」を添えます。清楚な和水仙と、堂々たる「獅子ゆず」の佇まいに、辺りの空気が清められ、自然と心も浄化されていくような気がします。因みに、この「獅子ゆず」は、ゴツゴツとして大きなものがより良いそうです。

そしてこの時季、園芸店に並ぶ芽出し球根のミニ水仙「ティタティタ」も欠かせません。こちらは花丈が短いので、ポットごと燗鍋に入れて室内に。和水仙の花が終わった後も、しばらく可憐な花を楽しむことができるうえ、花後は、地植えにすると翌春に再び庭で楽しむことができます。

椿の花と葉を愛でる

古来より神宿る木として日本人に愛されてきた椿は、お正月を迎えるのに最もふさわしい花の一つ。ありがたいことに、わが家も、毎年暮れに母が送ってくれる実家の庭の椿を飾り、歳神様を迎えています。

八重咲きの花は存在感があるので、一輪挿しに活けて華やかな花の表情や光沢のある美しい葉を堪能します。また、白木の重箱に敷き詰めた杉やヒバの常緑樹の緑の中に、差し色として一輪添えても、お正月らしい晴れやかな花あしらいに。

大好きな一重の白侘助は、小さな剣山をしのばせた愛らしい輪花皿に活けます。剣山を隠すために足元に添えた「ヒカゲノカズラ」は、常緑のつる性シダ植物。昔、生け花を習っていた時に花材として使っていた馴染み深い植物ですが、最近、この「ヒカゲノカズラ」が、生命力に富む縁起の良い植物だということを知りました。短く切って挿すと、まるで苔のように白侘助を引き立たせ、つる性を生かして枝垂れるように飾ると、なかなかの迫力。更に、水引を締めると松にも劣らない厳かな風格です。

それもそのはず、この「ヒカゲノカズラ」は、なんと古事記の中で、あの有名な天の岩戸開きの場面に登場しているのだとか。想像以上に古くから存在し、日本人と深い繋がりのある神秘的で神聖な植物だったのですね。植物の由来を知ると、設え場所や器、活ける心構えまで変わってきます。

新しい歳神様を迎えられたことに感謝し、今年も佳き年になりますようにと願いたいものです。

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Credit

写真&文/前田満見

高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。

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