フランスの園芸愛好家たちに愛されるガーデニングフェア「サン=ジャン=ド=ボールギャール城」をレポート

今年は寒い雨の日が多かったフランスのパリと近郊にも、ようやく春の陽射しを感じる季節がやってきました。庭仕事の始めの時期は、毎年フランスの園芸愛好家たちが楽しみにしている春のガーデニングフェアが相次いで行われるタイミングです。2025年春にサン=ジャン=ド=ボールギャール城で開催されたガーデニングフェアをフランス在住の庭園文化研究家、遠藤浩子さんがレポートします。
目次
愛され続ける老舗ガーデニングフェア

パリから南西に30kmほどの田園地帯に位置する17世紀の城館サン=ジャン=ド=ボールギャールのガーデニングフェアは、2024年の春に創立40周年という節目の年を迎えました。歴史的ポタジェで知られる個人所有のお城の庭園内で行われるという場所の魅力に加え、毎回フランス内外から200以上の種苗業者やガーデニング関連出展者が一堂に集まる場となっており、各地の生産者と交流しながら新種や希少種を発見したり、幅広い品揃えを実際に自分の目で確かめて、質のよいこだわりの植物苗を購入できるなど、魅力がぎゅっと詰まっています。



私自身毎年このフェアに行くのを楽しみにしているのですが、周りのガーデニング愛好家の方々も同様の様子で、約束せずとも現地で何人も友人知人に出会ってしまうのも面白いところです。この日たまたま出会った友人夫婦は、冬の間ダメになってしまったテラスの植栽の植え替えのために、シュウメイギクやエリゲロンなどの花苗を買い込んでいて、帰ったらすぐ植え替えると言っていました。ちなみに、選ぶのは奥様で、植え替え作業は旦那様担当だそうで、なんとなくフランスっぽい役割分担です。


ガーデニングのトレンドをキャッチ
毎年必ず見かける定番の樹木や多年草の他に、目新しい植物に出会えるのがガーデニングフェアの大きな魅力。さまざまな視点から選出される受賞植物のセレクションにも注目です。

ヤナギのトピアリーに注目

フランスのポタジェ(菜園)ではレイズドベッドの仕切りなどに、ヤナギの枝を編んだものが使われているのをよく見かけます。昔ながらの手法で、ナチュラルでリュステックな雰囲気が素敵ですが、作り込むのはなかなか大変そう。アール・ド・ヴィーヴル(生活芸術)賞に選出され、フェアで注目を集めていたのが、“ヤナギのトピアリー”と呼んだらよさそうな仕立てもの。

発根能力が高く、しなやかな枝をもつヤナギの性質を生かした鉢植えで、このまま一つ、または幾つかをテラスにアクセントとして飾る、あるいは並べて仕切りするなど、色々活用できそう。実際にこの鉢を抱えて帰路に着いている人も沢山見かけました。どんな風に使うのかしら。
充実のガーデニングツール

フェアの楽しみとしては、植物苗ばかりでなく、庭仕事を支えるガーデニングツールや、庭デザインのポイントにもなるアウトドアファニチャーにも注目したいところ。ファニチャーに関しては、木材などの自然素材を生かしたナチュラル感の高いものと、スチール素材のエレガント系が主流です。



そして、今回特に気になったのが、オーストリアの企業が作っている銅やブロンズ(銅合金)製のガーデニングツールです。

昔ながらの風合いの金属色が美しいばかりでなく、じつは鉄と異なり、酸化して錆びることがないので、土に鉄サビを残さず土壌のバランスを崩さないうえ、静電気をほどんど帯びないのでシャベルからの土離れがよく、根の周りを丁寧に扱うのにもよい。また微量ながら銅には天然の抗菌作用があり、病原菌やカビの繁殖を抑えるなどのいくつもの利点があるそうです。さらには、叩き直して修復することもできるので一生ものになる、世代を超えて使い続けられるといえば、かなりお高くはあるのですが、お値段以上に値打ちのある投資になるかもしれない、永遠の定番です。

さて、ブロンズの手作り伝統ガーデンツールはオーストリア製ですが、ガーデニング用品のスタンドを覗いてみると、イギリス製のガーデングッズも安定的な人気の様子。日本の皆さんがご存知のグッズも写真の中に見えているのではないでしょうか。
気になるランチタイムは

ところで、ガーデニングショーでもフード事情は気になりますよね。広い敷地を歩き続ければお腹も空いてきます。ということで、すでに朝のおやつタイムに、こちらのフードスタンド名物の昔風のマカロンをいただいてみました。
通常のマカロンの2倍くらいはありそうなサイズ。アーモンド感がたっぷりでかなり甘くて、昔風といえば納得の、素朴に美味しいマカロン。毎年これを必ず買って帰るというファンもいるそうです。ほかにもヌガー、カヌレやパン・デピスと呼ばれるハチミツ風味のお菓子など、どちらかといえば伝統的なお菓子が揃っています。

肝心のランチは、サンドイッチなどの軽食を売るフードトラックで調達して、ポタジェの草地やベンチでいただくか、あるいは、大テントとテラス席を備えた期間限定レストランでいただくか。いずれにしてもカジュアルな二択となるのですが、天気さえよければどちらも気持ちがよくておすすめです。今回は早めに着いたので、無事レストランのテラス席をゲットして、比較的優雅な外ランチを楽しむことができました。私が選んだのは、丸焼き豚ローストにポテトの付け合わせ、グリーンサラダとシードル、ついでにエクレアも。どれもシンプルに美味しくてお腹いっぱい、大満足です。
リンゴの花咲く早春のポタジェへ

ランチの後はゆるりとお城のポタジェを散策し、名残惜しいスタンドをもう一度確認し、まだスイセンの群生が美しい草地を通って、帰路へ。パリからは車で1時間弱の距離ながら、林に囲まれたお城の敷地に入れば、御伽話の世界に迷いこんだ感じすらしてきます。フランスではお城の敷地を利用してガーデニングショーが行われることが多いですが、それぞれフランスらしさに溢れる自然と歴史文化がミックスされた環境の使い方がじつに上手だなあと、いつも感心しています。

定番の植物たちや出展者のブースには安心感がありながら、新たな出会いもあり、毎年期待を裏切りません。今回は、早春の爽やかな花風景も一緒にお伝えしながらのフランスからのガーデニングフェア報告でした! 皆さんも春からのガーデニングをご一緒に楽しみましょう。

Information
サン=ジャン=ド=ボールギャール城(Château de St Jean de Beauregard)
Credit
写真&文 / 遠藤浩子 - フランス在住/庭園文化研究家 -

えんどう・ひろこ/東京出身。慶應義塾大学卒業後、エコール・デュ・ルーヴルで美術史を学ぶ。長年の美術展プロデュース業の後、庭園の世界に魅せられてヴェルサイユ国立高等造園学校及びパリ第一大学歴史文化財庭園修士コースを修了。美と歴史、そして自然豊かなビオ大国フランスから、ガーデン案内&ガーデニング事情をお届けします。田舎で計画中のナチュラリスティック・ガーデン便りもそのうちに。
- リンク
記事をシェアする
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園【花盛りの5月】
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第3回コンテストが、都立砧公園(東京都世田谷区)を舞台にスタートし、春の花が次々と咲き始めています。…
-
雑草対策
「芝生に雑草が生えない!」を叶える神アイテムとは? プロも実践する簡単メンテ術でラクラ…PR
ふかふかとした緑の絨毯が広がる芝生の庭。見た目に美しいのはもちろん、リラックスできるアウトドアリビングとして活躍したり、地温の上昇を防ぐ効果など、メリットがたくさんあります。その反面、雑草対策や生き…
-
ガーデン&ショップ
ローズトンネルも見頃! 特別な時間を過ごせるバラ園「横浜イングリッシュガーデン」 ロー…PR
バラ咲く季節がやってきました! 希少なアンティークローズから最新品種まで2,200品種、2,800株のバラをコレクションする「横浜イングリッシュガーデン」では、「ローズ・フェスティバル2025」(4/19(土)~5/25(日)…