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フランスの城で春のガーデニングフェア開催! ポタジェにも注目の「サン=ジャン=ド=ボールギャール城」【フランス庭便り】

フランスの城で春のガーデニングフェア開催! ポタジェにも注目の「サン=ジャン=ド=ボールギャール城」【フランス庭便り】

パリから南西に30kmほどの田園地帯に位置する17世紀の城館サン=ジャン=ド=ボールギャールは、同時代につくられたフォーマル・スタイルの素晴らしいポタジェで知られています。そして、この場所はまた、フランスの園芸ファンが毎年欠かさず通うといわれるほど人気の大規模なガーデニングフェアがあることでも有名です。2022年春に城で開かれたガーデニングフェアとポタジェについて、フランス在住の庭園文化研究家、遠藤浩子さんがレポートします。

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専門ナーサリーが一堂に集まる貴重な機会

サン=ジャン=ド=ボールギャール城

年2回、春夏の週末に城の庭園内で開催されるこのガーデニングフェアには、フランス内外の各種ナーサリーや園芸ツールなどを扱う200を超える専門店が出展します。タイミングによって花の咲く様子が見られる草花もあれば、そうでないものもありますが、出展ナーサリーの扱う植物は安定的に質が高く、信頼して買い物ができると園芸愛好家の人々に好評。

サン=ジャン=ド=ボールギャール城
左上/さまざまな形が楽しいスレート製のネームタグ。右上/柑橘類専門のナーサリー、中央付近に見えるのはなんと「Yuzu 柚子」。近年フランスでも人気です。右下/スタイリッシュな昆虫ホテル。左下/U形やコルベイユ(カゴ)形などに整形された果樹苗が買えます。フランスならでは。

特に、各地に散らばっているナーサリーをそれぞれ訪ねるのは園芸ファンといえどもなかなか大変。また、バラに限らず、シャクヤクやアジサイ、アイリス、アリウム、ダリアあるいはハーブ類、果樹類や紅葉する樹木類など、さまざまな異なる得意分野を持った地方の専門ナーサリーが一堂に集まるガーデニングフェアは、その場での買い物はもちろん、気になった植物やナーサリーをメモして後日の注文にも生かせる、貴重な機会となっています。

リラックスした心地よい雰囲気が魅力

サン=ジャン=ド=ボールギャール城
全部同じに見えるかもしれませんが、それぞれネームタグがついたミント苗。みんな微妙に違う種類でバリエーション豊かです。

また、このガーデニングフェアの魅力は、なんといっても会場が城の庭園の中であること。ゆったりとした木々や草地といった緑に囲まれた中でのガーデニングフェアは、そぞろ歩きをしているだけでもエネルギーチャージができる場所。自分の庭の一角に置いた時の雰囲気を容易に想像できるガーデンツールの展示など、見ているだけでも楽しいものです。

春のガーデニングショーの注目株は?

芍薬
華やかなシャクヤクの花はフランスでも大人気です。

今の時期、バラやシャクヤクは、展示用に早く咲くようにハウスで栽培されたもの以外は、基本的にはようやく葉っぱが出始めているところ。でも春からのガーデニングの仕事始めに、早速定植することができるので、苗木選びもリアリティがあって楽しいものです。ハーブ類の栽培もこれからがベストタイミングですし、ダリアの球根なども、夏に向かってこれからが植えどきです。逆に秋のフェアでは春球根が主になるなど、季節によって品揃えは変わりますが、それは季節感の味わいでもあります。

アンドレ・イヴのスタンド
バラの名門ナーサリー、アンドレ・イヴのスタンド。そのバラ農場は、映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』の撮影が行われたところでもあります。

ちょっと休憩、ランチどころは?

サン=ジャン=ド=ボールギャール城
左/購入した苗木をカートで引っ張るお客さん。その横に並ぶのはダリアの球根専門店です。右/なぜか毎年カヌレを売るスタンドがあります。美味しそう。

ガーデニングフェアといえば、フード・トラックやレストランも欠かせません。いつもは青空レストランが城の敷地の裏側に設置されるのですが、今年は悪天候の日もあったため、レストランスペースはテントの中に。しかし、通常もっともよく見られるのが、サンドイッチなどをフードトラックで購入し、あるいは自宅からランチを持参して、城館の正面の絶景を眺めながら食べたり、ポタジェ(菜園)でピクニックをする人々の姿です。この、人気のピクニック・スペースにもなっているポタジェのほうも覗いてみましょう。

17世紀のデザインを伝える、花咲く歴史的ポタジェ

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ
ポタジェの様子。中央の野菜栽培のカレ(四角)スペースから奥の果樹園コーナーを眺める。

ガーデニングフェアの絶好のランチスペースにもなっているポタジェ。じつは17世紀のフォーマルガーデンスタイルの姿を今日に伝える、貴重な歴史的庭園でもあります。

かつては城内に暮らす数十名の人々の自給自足のための野菜・果物、そして花々を栽培する場であったこのポタジェ、現在は、昔野菜などの一般的には栽培されなくなった希少種を中心とした野菜や、季節を通じて次々と入れ替わり咲き乱れる花々が栽培され、「花咲くポタジェ」として愛され続けています。

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ
ポタジェの中央を貫く直線の園路。ボーダーの植栽を縁取るのはボックスウッドの低い刈り込み。

こうした、実用(野菜果樹栽培)とオーナメンタル(花々)がバランスよく組み合わされた姿は、まさにフランスのポタジェガーデンの魅力といっていいでしょう。

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ

クレマチスやバラが這う石壁に囲われた約2ヘクタールほどの面積の中央部分が、フランスの昔ながらの野菜など、希少種を栽培する野菜畑。真ん中の丸い池の水は、ポタジェの散水にも利用されます。

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ
左/この時期の見どころの一つ、群生するクリスマスローズ。右/花がまだ少ない春先、早咲きのクレマチスが見事。

中央の野菜畑は、リンゴや洋ナシといったエスパリエ仕立ての果樹で区切られ、また春先のチューリップやスイセンに始まり、アリウムやシャクヤクやバラ、アイリス、と季節を追って次々と入れ替わり、3月から11月までさまざまな花が咲き乱れるボーダーに囲まれています。庭園内とポタジェを合わせて、全体で10万球もの球根が植えられているのだそう。

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ
ポタジェを囲む壁の開口部はハーハーになっていて、遠景が広がります。

緑が瑞々しい果樹園コーナーと珍しいブドウの温室

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ

ポタジェの一画を占めるデザインも素敵な温室は、ブドウ栽培用の珍しいもの。その奥にはリンゴなどの果樹が植えられた草地が広がります。ガーデニングフェアが開催されている昼どきには、果樹園の草地や、南向きの日差しが暖かい温室近くに、ピクニックする人々がどんどん集まってくるのが微笑ましい。

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ
早い者勝ちでテーブルに陣取ってピクニックする人々…気持ちよさそう。

私もピクニックしたい気持ちはやまやまながら、諸事情によりこの日は叶わず。絶景ポイントで風に吹かれながら、ノルマンディー風タルトとカフェをいただいたのみ(しかも写真は撮り忘れ)でした。それでも十分ほくほく満足してしまうガーデニングフェアです。

サン=ジャン=ド=ボールギャール城のポタジェ
前出のハーハーの手前でピクニックするカップル。微笑ましい。

どの季節にもそれぞれの良さがいっぱいの歴史的ポタジェの散策が楽しめて、かつ、フランスの日常生活の中に根付くガーデニング周りの様子がダイレクトにうかがえるのが、このフェアの一番楽しいところです。

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