昼はもちろん、夜景もステキ! な住宅実例をご紹介する、夜景シリーズ第2弾! 今回ご案内するのは、シンプルながらも細部まで行き届いたファサードデザインにセンスが光る住宅。なかなか見られない住宅内部も拝見します。施主様が大工さんであるこの住宅は、あちらこちらにさりげない工夫が満載! ぜひ、参考にしてくださいね。
目次
ファサードはコンクリート打ち放しと工夫された砕石のレイアウトで
建築物を正面から見た際のデザインで、住宅の顔であるファサード。街でもよく見かけるのは、床面がコンクリートの打ちっ放し仕上げだけの住宅です。一方、今回ご紹介する住宅は、そんなシンプルなコンクリート打ち放し仕上げに一工夫が施された、スタイリッシュなファサード。
コンクリート打ち放しの床をいくつかに分割し、間に砕石を詰めデザイン的に仕上げています。道路際から1mほどの場所はコンクリートと砕石を交互に敷いたボーダーデザインとし、玄関までのアプローチには植栽マスを設けてリズミカルな動きを出しつつ、樹木を玄関ドアのソフトな目隠しとして機能させています。ほかではなかなか見かけない面白い構成ですね。また、エントランスポーチと階段にはグレーのタイルを使用し、白一色のコンクリートや砕石主体の色彩を引き締めることで、ファサードをより強調しています。
左右の隣地との境界を区切る塀は、一部を細い立て格子とし、単調さを防いでナチュラルな雰囲気を演出しています。
ゴロタ石と植栽のコラボで和モダンに
エントランスドアの手前に配された、シマトネリコと住宅外壁横に植えられたアオハダの植栽マスには清潔感のある白い砕石を敷き、株元にはこぶし大ほどの大きめでゴロゴロとしたゴロタ石が並びます。花壇の周囲を囲む立ち上がりをつけ、グラウンドカバーを植えるケースも多いですが、このようなゴロタ石と砕石の組み合わせは、スマートで和モダンなイメージになりますね。アプローチにはシンボルツリーの植栽に加えてもう1カ所植栽スペースを設け、こちらはツリバナの足元を覆うグラウンドカバーとしてギボウシやヒューケラ、ヒイラギナンテンなどを並べ、和モダンを強調しています。
シンボルツリーのシマトネリコは常緑樹ですが、落葉樹のような枝ぶりと、小ぶりな葉が風にそよぐ姿がステキな庭木です。エントランスに植えるシンボルツリーは、見た目とともに、メンテナンスがどのくらい必要になるかが重要なポイント。「落ち葉」は意外にも近隣トラブルの原因になる場合があります。その点、常緑のシマトネリコは安心ですが、成長が早いので、春から初夏または秋には剪定をおすすめします。真冬は休眠期に入りますが、寒さに弱いため、剪定をすると枯れることもあるので避けたほうがよいでしょう。
ダイニングキッチンとテラスを一体に
施主様のご厚意により、室内も拝見することができました。大工さんだという施主様らしく、随所に暮らしの工夫がちりばめられたディテールは必見!
エントランスから廊下を通りすぎると、間仕切りのない広いスペースのLDK(リビング・ダイニング・キッチン)がありました。しかもこの部屋は、屋外テラスとつながっているので、より一層広々と開放感があります。よく見るとLDKとテラスの床はフラットにしてあり、全体の一体感を高めています。段差がないので、車いす歩行や足の悪い方にも歩きやすいですね。
シンプルで使い勝手のよいプライベートテラス
それではテラスに出てみましょう! マットな質感のホワイトタイルの床や壁を、ダークブラウンの木製フェンスが引き締めます。横板張りのフェンスには、硬質で耐久性が高いウリン材をチョイス。フェンスの高さは2m程度あり、隣家の視線を気にせず安心してくつろげます。また、テラスのコーナー部分には、シャワーヘッド付きの立水栓が設置されていました。シャワーヘッドがあると、ペットがテラスで遊んだ後の足洗い場としても、お掃除の際にも便利ですね。立水栓やシャワーヘッドは、窓回りのサッシと同じシルバーで統一されています。
大工さんならでは! 埋め込みのバスルーム・スケール
バスルームに向かう洗面所に入ってみると、床に埋め込まれたバスルーム・スケール(ヘルスメーター)が。これは驚き! 床とフラットになっているので場所をとらず、子どもが足を引っかけてケガをすることもありません。いちいち取り出さなくてもいつでも計測できるので、バスに入る前には必ず体重を計る習慣が身に付きます。このアイデア、さすが大工さんの家ですね! ちなみにヘルスメーターは和声英語で、正確にはバスルーム・スケールと呼ぶそうです。
バスルームには、テラスを眺められる窓がありました。バスルームからは外の景色が楽しめる一方で、テラスからは室内が見えない工夫も施されています。
配慮が行き届いたワンコスペース
テラスにつながるダイニングキッチンの隅、食器収納棚と観葉植物の間には、愛犬のためのフードボウルと水入れがありました。床に敷かれたランチョンマットが、ワンコの顔のようなシルエットで可愛らしいですね。廊下の奥に設置されたペット用トイレは、両側を壁に囲まれた物入れの下にあるので、落ち着いて用を足すことができるはず。ホントにワンコ思いの施主様でワンコも幸せですワン!
植栽シルエットでステキな夜景に
この住宅のファサードは、ライトアップされた夜景も見所です。
周辺が薄暗くなってくると、奥まったエントランスドア周辺が、明るく存在感を増してきます。壁の横に植栽されたアオハダは、チラチラとほの明るくライトアップされ美しい影を壁に描き出します。壁面から少し浮かせて立体感を持たせた、筆記体の横文字がオシャレな門袖の表札も、スリット状のライトに照らされてよりシックな雰囲気になります。
そして、周囲が真っ暗になると、アッパーライトで照らされた、住宅壁面に映る放射状のアオハダのシャドウシルエットが幻想的なシーンが生まれました。エントランス手前のゴロタ石と植栽は、低めのポールライトで控えめに照らし、エントランスからこぼれる光の効果で、料亭のような落ち着いたアプローチが演出されています。
まとめ
ホワイトベースのモノトーン構成のデザインは、使う素材次第で、エクステリアのイメージが全く変わってきます。今回ご紹介した住宅のように、打ちっ放しコンクリートの床は、スリット部分に砕石を入れた目地や、ボーダータイルと砕石の組み合わせでオシャレに演出できます。植栽の足元をカバーするゴロタ石は、並べ方次第で、ナチュラルな花壇や景石にもなります。
植栽は日本の在来種であるアオハダやツリバナを配植して和モダンイメージを強調。在来種とは、昔から日本の自然の中で生きてきたもので、その地域に本来自生している植物です。日本の土地柄や気候に合った植物を植えることで、管理に手がかからないだけでなく生態系も成り立ち、いっそう自然風に近づいていきます。
モノトーン構成のシンプルデザインは、ゴロタ石や砕石、在来種の植栽で、和風や和モダンなイメージになります。ほんのりと柔らかい光や庭木のシャドウシルエットを効果的に取り入れれば、高級感のある印象的な夜景を演出できます。
皆さんも、いろいろな素材を工夫して、素敵なファサードを創造してみてくださいね。
設計施工:ヘブンズガーデン 宮元健太
Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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