各地の素敵な庭と住宅の実例をご紹介しているこの連載では、現在スタイリッシュなシンプルモダンデザインの邸宅を特集中。そんなシンプルモダンシリーズ第4弾となる今回は、直線が生きるシックなモノトーンの住宅をご案内します。落ち着きのある静かな環境にある住宅実例を見ながら、シンプルモダンのこだわりを徹底的に解説。ぜひご覧ください!
目次
直線が生きる住宅とエクステリアデザイン
今回ご紹介するのは、神奈川県藤沢市の閑静な一画にある住宅です。
すべての要素が直線で構築されたアプローチは、ミニマルでモダンな佇まい。外壁の素材は、木調とも石調ともつかないテクスチャーで構成されています。これにフィットするエクステリアが、マットな質感のシンプルなブラック門袖。門袖とは玄関の前に設置する壁のことで、玄関回りのデザイン性を高め、玄関ドアを開けたときの目隠しにもなります。
左わきのアプローチ階段の目地にも注目しましょう! 30cm角のブラックタイルに、リズミカルなホワイト目地のコントラストがオシャレですね。ポイントは、階段の段差がタイルの半分の15cmなので、半分ずつずれてきれいに割付けされていること。階段の手すりはブラックのフラットバーで、その薄さがシンプルかつスタイリッシュな印象を強調しています。
階段横の壁際に設置してあるコロンと四角いキュービックなポストは控えめなグレーで、周囲になじんで主張することなく、ブラックな門まわりに視線が集まるデザインです。
表札は横文字筆記体のゴールド。黒の背景に対し色のある金文字が目を引きますが、文字の大きさは小ぶりで控えめなところが絶妙なバランスです。
全体をシンプルモダンに統一し、小物もシンプルでオシャレに!
道路際から2m程度の幅を持たせた、ホワイトの土間コンクリートのアプローチスペース。ここには、コンクリート製のスリットが入っているブロックが設置してありました。これはじつは「サイクルスタンド」。スリット部分に自転車のタイヤをはめて駐輪します。無駄のない外観で、とてもオシャレですね! こうした細かい箇所にもシンプルデザインへのこだわりを感じます。
道路から見た住宅の全景。まるで立方体のブロックのような、直線を多用したデザインがカッコよく、存在感を放ちます。敷地を縁取る土間コンクリートのホワイトのライン、また住宅のグレーとカーポート屋根のナチュラルシルバーとの対比もステキです。
奥に向かう通路の先にはタイルテラスとガーデンが
カーポートを通って、奥へ進んでいくと、広いテラスに到着します。テラスは、60cm角のグレーのタイル張り。シンプルながらも、タイルの色ムラやテクスチャーに、洗練されたゴージャスな雰囲気が漂います。
テラスの壁際に設置された立水栓。シルバーの蛇口とブラックポールを組み合わせた引き締まったデザインで、クールな印象を与えます。立水栓の足元にある水を流すグレーチングは、パンチングメタルが使用されています。パンチングメタルとは、アルミ、鉄、ステンレスなどの金属に、金型を使って孔開け加工を施したもの。もともとは建築材料で、階段の目隠しやフェンスなどに使われて、孔の形状や大きさも大小さまざまな種類から選ぶことができます。ステンレス製であれば水にもさびにくく、実用性もばっちり。耐久性やデザインの自由度が高く、スタイリッシュな穴あきのパンチングメタルをグレーチングに使うのはアイデアですね。
平滑なタイルテラスは、ホームパーティーなどで床面が汚れても、立水栓からホースを使って水を流せば、簡単に掃除できます。日差しによる経年劣化が少ないことも利点です。
フェンスで囲まれた小さな庭の植栽と剪定のコツ
タイルテラスの向こうは植栽スペース。周囲を囲む高さ1.8mほどの木調横板張りフェンスが、隣家からの目隠しになっています。芝生の緑が鮮やかですが、じつはここは、見栄えがよくメンテナンスが楽な人工芝を取り入れたガーデンです。
敷地のコーナー部分にはシマトネリコ、その隣にはオリーブが植栽されています。シマトネリコは常緑樹ですが、落葉樹のように小ぶりの葉を持つ、樹形がきれいな庭木。成長が早い植物なので、真夏以外ならいつでも剪定ができますが、寒さに弱いので、冬の剪定は避けたほうがよいでしょう。冬が終わった後の3月終わりから5月ぐらいの時期が最適です。
オリーブは、シンボルツリーとして最近はとても人気のある常緑樹です。樹形をきれいにするために、伸びた枝を途中で切り揃える「切り戻し剪定」をするのがおすすめです。切り戻し剪定をする際は、外向きに生えている芽のすぐ上で切るようにしましょう。こうすることで、枝が真上ではなく斜め横方向に伸び、樹形が整っていきます。メインの剪定に適した時期は2月中旬から3月です。5月から10月頃までは成長期なので、この時期の強い剪定は控えましょう。葉を減らすなどの軽い切り戻し剪定は一年中行うことができますが、切りすぎると樹形が乱れてきれいに見えなくなるので注意が必要です。
素材のテクスチャーを生かすのがシンプルモダンのカギ
住宅の外壁が木調、石調などのテクスチャーを持つ場合や、モノトーンの濃淡が多い場合は、エクステリアの素材はシンプルにすることが大切です。この住宅の例のように、門袖や階段はブラック単色でスッキリと。階段のタイルのホワイト目地などでグラフィカルな変化を出すことで、センスが光る住宅デザインが生まれます。
また、敷地の床面はホワイトの土間コンクリート、アプローチに植栽されたシンボルツリーの足元にはブラックの少し大きめの砕石を敷くなど、単調さの中に変化を出す工夫も満載。土間コンクリートを分割してレイアウトしているところにも、さりげないスマートさを感じさせますね。
まとめ
モノトーンを主体とするシンプルモダンな住宅で、センスのよいデザインを作るポイントは、広い面積を占める素材の選び方や割付けの具合です。シンプルモダンは単調になりがちですが、この実例のように細かな部分まで配慮して設計することで、シンプルながらも絶妙な変化に富んだデザインが構成できます。
近年人気のモノトーンのコーディネートに興味をお持ちの皆さんは、ぜひ細部にわたって自分流の素材選びや割付けにこだわったデザインを研究してみましょう!!
設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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