最近は、昼間はもちろん、夜間のライティングも素敵なエクステリアデザインを多く見かけるようになってきました。夜のファサードは、帰ってきた人々を迎えてくれる住宅の顔。このシリーズでは2回に分けて、ライティングも美しいファサードの実例をご紹介していきます。Vol.1となる今回は、おしゃれな工夫がちりばめられたファサードをご紹介します。
目次
住宅の高級感にフィットする、重厚な石張りのエクステリアデザイン

住宅の一部を格調高い石張りで仕上げた外観デザインに合わせて、エクステリアもさまざまな工夫で高級感を演出。窓の目隠しとなる位置に設えたデザインウォールは、住宅の外壁に合わせたマットな質感のシンプルな石目調タイル張りにし、統一感を演出しています。一方、エントランスの左右を対称に飾るよう据えた門袖は、少しラフな印象の石を用いたランダムな小端積み(こばづみ)。テクスチャーを変えることで、ファサードに個性が生まれています。
小端積みとは、レンガや石などを、小口(細長い厚み部分)を見せるように重ねて積み上げること。花壇や門袖など、横方向のラインを強調したいときに使うと効果的な手法です。
デザインウォールを背景にしたドライガーデン

デザインウォール部分に注目してみましょう。デザインウォールのシンプルな石目調タイル張りに対し、小端積みで構成された門袖と花壇の立ち上がりのゴツゴツとした立体感が好対照なデザインです。また、門袖はグレーを基調に暖色の色ムラが入る素材を用い、デザインウォールと花壇はワントーン明るいグレーに統一。3つの要素にそれぞれ共通項を持たせてまとめると同時に、門袖が独立した存在感を放っています。デザインウォールの中央に設けた細長い窓は、デザイン性を高めるとともに、内側への風通しとしても機能しています。

花壇には、大株のアガベやニューサイラン、マホニア・コンフューサなどを植栽。植物の株元は細かい白い砕石を敷くことで土を隠し、美観を向上させるとともに雑草を生えにくくしています。品のある石張りの住宅とデザインウォールに似合うドライガーデンです。
ドライガーデンとは、乾燥を好む植物で統一したガーデンスタイルのこと。水はけのよい環境を整えてやれば、自然の雨水程度で育つので、頻繁な水やりの必要がありません。ドライガーデンで特に人気の高いアガベは、メキシコを中心に中央アメリカやアメリカ南部に自生する植物です。そのほか、サボテンや多肉植物なども人気の素材です。
ウォールに隠された窓前ガーデン

石目調タイルのデザインウォールの裏側に回ると、コンパクトな庭がありました。こちらは雑草の心配や水やりがいらない、ローメンテナンスな人工芝を取り入れたガーデンです。
門袖の後ろには黒い木箱が据えられていますが、こちらはなんと、ゴミの戸別収集用ボックス。傷みにくいハードウッドを使い、マットなペイントで仕上げたハンドメイド品です。ハードウッドとは赤道付近に分布する広葉樹の木材で、繊維が密になっているため硬くて重量があり、虫害や腐食に強く丈夫なのが特徴。シックなブラックの中に輝く蝶番や取っ手、止め金具のシルバーが、さりげなくエレガントさを感じさせるアイテムです。


窓前のローメンテナンスガーデンには、ツリバナが植栽されています。ツリバナは日本に自生している在来種で、環境になじみ手を掛けなくても育てやすい庭木です。ツリバナという名前の由来は、5月から6月の開花期に、枝から吊り下げられたように小さな花がたくさん咲くことから。9月から11月には赤い実がなり、紅葉とともに秋の風情を楽しむことができます。

ヨーロピアンな門袖まわりと玄関アプローチ

もう一方の門袖には、ポストや表札などの機能を持たせています。この門袖の後ろは、玄関へと続くアプローチになっています。舗装のピンコロタイルはヨーロピアンな石畳風で、自然な目地が柔らかな雰囲気。それをブラックの門扉で引き締め、高級感を出しています。

門扉をくぐり、玄関に向かうアプローチは、施主様の希望でアールヌーボー調のデコレーションが施され、まるでパリの地下鉄の出入り口のよう。舗装のピンコロタイルがよく似合います。

夜景が生きるデザインウォールとアプローチ


夜景もご覧のように、とてもおしゃれな雰囲気。デザインウォールの中央にあけた細長い窓から室内の灯りが漏れ、合わせて花壇に設えた間接照明が植物のシルエットを浮かび上がらせスタイリッシュ。玄関アプローチは電球で足元を明るく照らし、街灯に照らされたヨーロッパの街角のような雰囲気に。
ライティングは幻想的な世界を演出できる手法

ライティングは、一般には防犯を目的とすることが多いと思いますが、幻想的な夜景を演出する効果もあります。夜道の歩行者や家族が帰宅するときの安心感など、夜景のライティングは心にも作用します。
ライティングには、電球で直接照らす方法もあれば、間接照明で植栽に優しく光を当てる方法もあります。間接照明とは、照明器具の光を壁や天井などに反射させ、間接的に光を当てる方法です。光源が直接見えないので、まぶしさを抑えるとともに、照らされる壁面の素材感の陰影を際立たせたり、空間を柔らかな雰囲気にするなどの演出ができます。
家人が我が家の外観を見るのは夜景のことも多いので、ぜひ照明にもこだわってエクステリアデザインを考えてみてはいかがでしょうか。
設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司

Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -

まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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