「世界らん展2020 — 花と緑の祭典」レポート!

今年で30回を迎える「世界らん展2020 —花と緑の祭典」が東京ドームにて、2020年2月14日(金)〜21日(金)に開催されました。多くの人が訪れた会場の様子をレポートします。
目次
“ドームのらん展”という愛称でお馴染み、「世界らん展2020 — 花と緑の祭典」が今年も開催

毎年、東京都文京区の東京ドームで2月に開催される世界らん展。
今年で30回目の開催となり、“ドームのらん展”として、今やすっかりおなじみの園芸イベントです。
場内には約 3,000 種、約 10 万株、300万輪以上の花が飾られ、世界最大規模での開催となりました。
2019年からは、ラン以外の植物も展示・販売されるようになり、さらにパワーアップ。今年も、より幅広い園芸好きや、グリーンに興味がある人が楽しめるイベントになりました。
ランで覆い尽くされたオーキッドゲートをくぐると、そこは各部門でトップの評価を得たランが両側に飾られたシンボルロード。その奥には、一足先にお花見を楽しむことができる、シンボルモニュメント「桜蘭」が目を引きました。
大賞はパフィオペディラムが受賞!

らん展では、優れた花、優れた株にメダルやリボンなどの賞が授与されますが、その頂点が日本大賞です。日本大賞は、さまざまなカテゴリーで最も優れた株の中でも、特に優れたものに授与されます。
今年の大賞は、パフィオペディラム ツクバ スウィート ‘ヒサシ’(Paph. Tsukuba Sweet ‘Hisashi’)が受賞しました。
パフィオペディラムは、熱心なマニアも多い地生ラン。よい花を作るための交配も盛んに行われています。花弁が袋状になったユニークな花を咲かせ、一般にも少しずつ出回るようになってきました。
今回大賞を取ったパフィオペディラムは、いかに大きく丸い花を咲かせるかを競う整形花と呼ばれるカテゴリーから選ばれたものです。
優れた花を作るためには、よい花を咲かせる株同士を交配することも大事ですが、株の素質を引き出す栽培も重要。根気強い育種と、日々の手入れの賜物といえそうです。
大賞以外にも素晴らしいランが勢揃い!

今回の世界らん展には1,000近い株が出展され、会場にも展示されました。
関東近県を中心に、日本全国から出展されたランは多種多様。おなじみのコチョウラン(ファレノプシス)やシンビジウムをはじめ、希少な種、最新の園芸品種や野生味あふれる原種なども揃っています。
花の美しさに魅了されるだけでなく、興味があれば会場内で買って育ててみるのも楽しいもの。これまで知らなかった花と出合える、よいチャンスといえます。
ごく一部ですが、会場に展示されていたランをご紹介します。
(上のランは、フレッドクラーケアラ アフターダーク‘S.V.O.ブラックパール’ Fredclarkeara After Dark ‘S.V.O.Black Pearl’)

パフィオペディラム・ミクランサム‘ピュアウォーターNo.2’ Paphiopedilum micranthum ‘Pure Water No.2’

春蘭’令和の月’ Cymbidium goeringii ‘Reiwa no Tsuki’

ファレノプシス(コチョウラン)’コユキ’ Phalaenopsis(Kung’s Amar Dott×Sheena’s Bright Ruby)

プテロスティリス・ヌタンス Pterostylis nutans ‘Atu’
ラン育種の歴史の重みを感じさせる、カトレア・ドミニアーナ

1991年の第1回から数えて、今年は30回目となる世界らん展。
世界らん展では毎回、ランの世界の奥深さや歴史を感じさせる主催者展示が行われていますが、今回はカトレア・ドミニアーナの大株が展示されました。
カトレアは最も人気のあるランの一つで、数多くの品種が作られてきましたが、ドミニアーナは、およそ160年前に世界で初めて作られたカトレア品種として、ランの歴史に残るものです。
160年前といえば、日本はまだ江戸時代。ヨーロッパから始まった、いわゆる「洋ラン」が、まだ日本に紹介される前のことです。それほど昔から作られ、楽しまれてきたランの歴史を感じると同時に、初めて作られた品種が今も栽培されていることにも驚かされます。
今年も開催、スペシャルナイト

昨年からは夜まで入場ができるようになり、仕事帰り、学校帰りでもらん展を楽しめるようになりました。
スペシャルナイトは、その日のスペシャルゲストのカウントダウンとともにスタート。会場は明かりが落とされ、昼間とはちょっと違った独特の雰囲気でランを楽しむことができました。
今年はライトアップインスタレーションも

昨年までのスペシャルナイトでは、会場内が暗転するだけでしたが、今年はさらに光のインスタレーション「フラワーシンフォニー・オブ・ライツ」も開催。シンボルモニュメント「桜蘭」のライトアップや、東京ドームの天井を光で彩るインスタレーションで夜の会場を華やかに演出し、さながらランのテーマパークのよう。
いつもとは一味違う、らん展の空間を楽しむことができました。
販売ブースも大賑わい!

会場には100を超える販売ブースが集結。ランだけでも、人気のカトレアやパフィオペディラム、コチョウランなどをはじめ、フウランや春蘭など古典園芸で楽しまれているラン、世界各地の珍しい原種などが幅広く販売されました。
テーマごとにブースを集めたマルシェでショッピング

また、今回は主催者展示のカトレア・ドミニアーナの展示ブース周辺に、カトレアを得意とするラン園のブースが集められた「カトレアマルシェ」や、世界各地から出店した海外ブースを集めた「インターナショナルマルシェ」などが設けられ、個性ある区画でのショッピングも楽しむことができました。
令和の春を楽しむ、Japan Botanical Style

前回から登場した、和の園芸を紹介するコーナーでは、盆栽や春蘭などの古典的な日本の園芸を紹介。
自然の中でたくましく育つ樹木の姿を鉢の中で作り上げる盆栽は、海外でも高い評価を受ける木村正彦さんの名品の数々を展示。長い年月、細やかに手をかけられた作品は、どれもが思わず足を止めてしまう迫力のあるものばかりでした。
人気の多肉植物も!

世界らん展は、昨年からラン以外のさまざまな植物も楽しめるようになりましたが、今回は初めて、多肉植物の展示「TANIKU FANTASTIC!」が登場。
サボテンやアガベなど人気の多肉植物がたくさん並び、人気投票も開催されました。風格のある大株から、手のひらサイズまで、大きさはもちろん、さまざまな色や形で目を楽しませてくれました。
インターナショナルマルシェには多肉専門店も登場!

「TANIKU FANTASTIC!」の周辺では、エケベリアやセダムなどが販売されていたほか、インターナショナルマルシェにはアデニウムなどのコーデックス(塊根植物)をずらりと並べた専門店も出店。充実した大株がたくさん並び、初日から黒山の人だかりができるほどの人気となっていました。
今年も大人気の食虫植物

昨年は主催者展示が行われた、大人気の食虫植物。今年は食虫植物だけの展示はありませんでしたが、出店していた販売ブースは大盛況でした。
ブースには、もっともポピュラーな食虫植物の一つであるネペンテス(ウツボカズラ)のほか、サラセニア、ムシトリスミレなどがずらりと並び、レアな種や大株など高額なものも、なかなかの売れ行き。
どこでも目にできる植物ではないので、つい足を止めて見入ったり、小さなものを試しに育ててみようと、小型のセファロタスを購入する人の姿も見受けられました。
夜市の雰囲気で楽しむナイトショッピング

18時からのライトダウンの間も、ショッピングは可能。暗くなった会場の中で、販売ブースから漏れる光が独特の雰囲気を醸し出し、さながら東南アジアなどの夜の市場のよう。
店頭に並ぶランも熱帯産のものが多いこともあり、外の寒さを忘れるような雰囲気の中で楽しむショッピングは、なかなか得難い体験でした。
Credit
写真&文/土屋 悟(つちや さとる)
フリーライター。
インドアグリーンの最新事情に強い、園芸・ガーデニング関連のライターとして活動中。自宅でも、水槽、透明ケースなどを使って試行錯誤しながらランなどの植物を栽培。ときおり実家の庭の手入れも行い、家の中、外での園芸ノウハウを蓄積。
https://twitter.com/tutti0514
https://www.instagram.com/satorutsuchiya_/
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