ローメンテナンスでワイルドなカッコよさから、今、人気急上昇中のドライガーデン。しかし、人気のアガベやユッカなどばかりコレクションのように植えても単調な植栽になってしまいます。ここでは、ドライガーデンに取り入れても異彩を放つアガベ近縁種、マンフレダとマンガベの魅力、そして栽培のコツを、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。

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キモカッコいいキャラが魅力の珍ドライガーデン素材、マンフレダとマンガべ

今回より概要編と品種編の2回に渡り、アガベの近縁種で、葉に入るチョコチップ状の斑点模様や、アガベよりもドロっとダレた姿が珍妙で目を引く新感覚素材、マンフレダと、アガベとマンフレダの交配種であるマンガべをご紹介します。今回は概要編をお届けします。

マンガベやアガベの植栽例
マンガべ ‘マッチョモカ’ (左手前)とアガベ・オバティフォリア(右奥)、黄金葉のカレックス・オシメンシス ‘エバリロ’ などを組み合わせた植栽例。

近年、ローメンテナンスでワイルドなカッコよさから、アガベやユッカなど、メキシコ~アメリカ南部原産の植物や、アロエやプロテアなど南アフリカ原産種、オージープランツなど、乾燥地由来のオーナメンタルプランツを組み合わせたドライガーデニングを楽しむ方も増えてきていますよね。

特にアガベは近年とても人気が高まってきており、かつては珍しくてなかなか手に入らなかった希少種も、お金とタイミング次第で手に入る時代になりました。

確かに、アガベの硬質なロゼット姿は植栽の中でも低い位置にどっしりとしたボリューム感をもたらしてくれ、植栽を引きで見た時に、大ぶりのコサージュのように目に留まる装飾性があります。 現に乙庭でも、「ここぞ!」という見せ場にはお気に入りのアガベをしばしば植栽します。

アガベ・トルンカータ
アガベ・トルンカータ(Agave parryi ssp. truncata)を見せ場に使った乙庭店頭植栽。

しかし、アガベ属内を俯瞰して見てみると、多少の差はあれど見た目や葉色が似通ったものも多く、たくさん植えるほど「似たようなものがたくさんある」コレクション展示のような状態になり、一つひとつの品種や個体のキャラクターが引き立ちにくくなるんですね。

アガベ
Lukiyanova Natalia frenta/Shutterstock.com

上写真のようにいろいろアガベばかりが植わっていると、なんとなく圃場のようになってしまいます。ぜひ多様な植物のセレクトで庭主のセンスを見せたいところです。

そこで今回は、あえてアガベの近縁種で、カッコいいというよりはやや方向性の違う「ちょいグロめ」な異彩も兼ね備えたマンフレダやマンガべを新たな選択肢として提案したいと思います。

マンガべ‘デザートドラゴン’

上写真は、黒紫褐色のドット模様が濃く入るマンガべ‘デザートドラゴン’ (xMangave ‘Desert Dragon’)。近縁種ながらアガベと全く違う個性を持っていますね。

アガベと組み合わせても、見た目の違いで引き立て合い、そして性質が近いので同様の管理で育てられます。

アガベとマンガべ
アガベとマンガべを比較対照的に植えて差異を強調した植栽。

マンフレダやマンガべは、まだ日本国内では育て方や性質などの情報も少なく、気にはなっているんだけど情報が少なくて一歩踏み出せずにいる方も多いのはないでしょうか。

他とは違う個性的なドライガーデンを目指している方々に新たな視点を提供できれば幸いです。

マンフレダとマンガべのプロフィール

マンフレダは、アガベとほぼ同じく、メキシコ~アメリカ南部を原産とするキジカクシ科の植物です。

マンフレダは近年では分類上、アガベの亜属あるいはアガベ属に統合して見なされる傾向にありますが、柔らかい葉質やアガベには見られない斑点模様など、園芸的にはかなり違った性質や見た目をもった一群なので、本記事では便宜上アガベとは区別して論じます。

マンフレダ ‘チョコレートチップ’

上写真は、マンフレダ ‘チョコレートチップ’。写真右奥のアガベと比較しても歴然としたキャラクターの違いがありますね。

そして、マンフレダとアガベの交配種がマンガべ(xMangave)。アガベの豪壮な草姿とマンフレダの葉模様など、双方の個性が融合し新しい魅力を体現したハイブリッド種です。

マンガべ ‘マッチョモカ’
マンガべ ‘マッチョモカ’。数年に一度しか見られない、花茎が上がってきている様子。

マンガべという名は、初期の大型品種 ‘マッチョモカ’がアメリカで開発され流通し始めた2003年頃から使われるようになりました。‘マッチョモカ’を皮切りに、アメリカのナーセリーを中心に、斑入り品種や別のアガベとマンフレダの交配による新品種が現在も次々と作られています。

マンガベ ‘シルバーフォックス’

上写真は、これまでのアガベにもマンガべにもない、銀灰紫色の美しい葉色を実現したマンガべ ‘シルバーフォックス’。2017年に発表されたばかりの新品種です。

21世紀に突如出現したハイブリッド! リアルタイムで改良が進んでいる、まさに「新しい」園芸素材ですね。

葉が柔らかくて棘も少なく安全。個性的でデザイン性抜群!

マンフレダや今日開発されているマンガべの品種の多くは、アガベのように、地面に巨大な花が咲いたような多肉質のロゼット葉を展開しますが、アガベよりも葉質や葉縁の棘が柔らかく、安全に植栽できます。

マンガべ ‘マッチョモカ’の葉

上写真はマンガべ‘マッチョモカ’の葉のアップ。アガベのように硬くなく、柔らかくしなやかな葉の質感がお分かりになるかと思います。人通りのあるアプローチ周りや道路添いの植栽など、アガベの棘が危険と感じられる場所にも植栽できるメリットがありますね。

マンガベの植栽

本記事冒頭の植栽例も、引きで見ると上写真のようにすぐ横を人が通る花壇です。棘の鋭いアガベを危なくない奥の場所に植えて、手前に安全なマンガべを印象強く植栽しています。

葉の柔らかさはマンフレダ特有の性質で、原種のマンフレダはアガベのように立体的な硬質ロゼット型にはなりにくく、多肉質葉が地面にベタッと平たく展開したりドロっと垂れたような姿になったりします。

一方マンガべは、アガベの血統も引き継ぎ、マンフレダの原種よりも葉質が厚くしっかりしていて立体的なロゼットになりますが、アガベよりも柔らかい葉質のため、アガベの硬質な姿とはちょっと趣の異なる、ぼてっとした肉感のある巨大な花が地面から直接咲いているような姿に仕上がるものが多いです。

マンガべ ‘スポッティドッティ’

上写真は、マンガべ‘スポッティドッティ’を使った大鉢植栽例。この鉢も人がすぐ横を歩くクリニックのエントランスに置かれています。鉢を覆い隠すようなボリューム感とちょっと不気味な巨大花のような造形に目を奪われます。

また、マンフレダおよびマンガべの魅力的なポイントとして、独特の葉模様や葉縁の装飾性が挙げられます。マンフレダにしばしば見られる、葉面全体に入るチョコレートチップのような斑点模様は、他にあまり類を見ない異彩を放ちます。

マンフレダ ‘チョコレートチップ’
Pavaphon Supanantananont/Shutterstock.com

また、上写真のマンフレダ‘チョコレートチップ’の基本種であるマンフレダ・ウンデュラータなど、葉縁がラッフル状に波打つタイプの原種もあり、マンフレダ側の葉模様や葉縁ラッフルと、もう片親となるアガベの特徴との組み合わせで、多様なバリエーションのマンガべが育種されています。自然が生み出すさりげない美しさとは一線を画す、人工的なデザイン性を強く感じさせますね。

珍妙な花が目を引きます! そして、花が咲いても枯れないのも魅力

マンフレダおよびマンガべは、晩春~夏にぐんぐんと花茎を伸ばして咲かせる奇妙な花もとてもおもしろいです。

マンフレダ ‘チョコレートチップ’ の花
マンフレダ ‘チョコレートチップ’ の花 。

紫褐色の芯だけが目立つ花は、パッと見とても地味な感じがしますが、開花に向けて毎日ぐんぐんと伸びていく(開花高さ2m以上)花茎の成長の様子や、あまりに花らしくない花であるため、逆に庭の来訪者の目を引き、開花時には話題の的になります。

マンガべ‘マッチョモカ’
2019年6月、乙庭店頭でのマンガべ‘マッチョモカ’ の壮大な開花の様子。

アガベは数十年に一度、3~5m程度にもなる壮大な花茎を伸ばして開花して枯死しますが、マンフレダやマンガべは、環境が整えば数年に一度のペースで開花し、花が咲いても枯れないので、安心して開花を楽しむことができます。

マンガべ ‘マッチョモカ’ の花
マンガべ‘マッチョモカ’の花。

通常、開花後は分頭したり脇に子株を多く生じます。頭数が増えて群生化すると一頭あたりのボリュームは小さくなりやすいので、適宜株分けしたりして、好みの姿を維持していくとよいでしょう。

暑さ寒さにも耐え、成長も早く育てやすい

マンフレダやマンガべの多くの品種は、多肉質で熱帯的な雰囲気があり、いかにも寒さに弱そうに見えますが、実は耐寒・耐暑性もあり、夏は40℃以上、冬はマイナス5℃程度になる群馬県の乙庭でもほぼ問題なく夏冬を越しています。関東平野部以南の温暖地であれば屋外でも越冬可能です(※耐寒性の弱い品種もあるので導入時によく確認しましょう)。

アガベ同様、北風が避け、日向のカラッとしたような場所に植えてあげるとよいでしょう。基本的に手間いらずな植物ですが、成長期の晩春~夏にかけて水や肥料を与えて管理してあげると早く大きく育ちます。逆にほぼ休眠期となる冬場は、水やり頻度を少なくして乾燥ぎみに管理するとより耐寒性が増します。

冬の霜や凍結により、真冬~春先にかけては外葉や葉先が傷むこともありますが、気温が上がる晩春以降、ロゼット中心側から新葉が次々と出て、夏前には元の姿に復旧します。

マンガべ ‘マッチョモカ’

上写真は、冬の寒さがとても厳しかった2018年4月のマンガべ‘マッチョモカ’ 植栽例。写真で見られるように外葉や葉先に冬傷みの跡が見られますが、この後、6月頃までには新葉で更新されました。

日本での屋外栽培では冬の厳しさによっては葉傷みにより実質冬季落葉に近い状態になることもありますが、アガベと違い新陳代謝が早く、宿根草のようなサイクルで葉が更新されるのでご安心を。

マンガべ‘エスプレッソ’

上写真は比較的暖冬だった年の春の庭。写真左手前のマンガべ‘エスプレッソ’、チューリップの奥の‘マッチョモカ’も葉先も冬傷みせず、良い状態を保って春を迎えています。このように暖冬の年や、霜や凍結を避けられる暖かい場所であれば、葉傷みもなく、常緑でこっくり濃厚になる冬の葉色も楽しめます。

また、アガベと比べて成長が早く、順調に育てば3年程度で完成形に近いサイズに育ちます。

マンガべ‘スポッティドッティ’

上写真は直径18cm程度の苗を植栽し、1年経過したマンガべ‘スポッティドッティ’。直径50cm以上となり、とても見応えのある大きさになりました。

アガベは初期成長がとても緩慢なので、小さな苗から育てるとなると、長期間かけて気長に育てていかないといけませんが、その点、マンフレダやマンガべは即戦力性も高くてよいですね。

では次回、耐寒性もあり、植栽効果も高く庭植えにもおすすめのマンフレダとマンガべを、定番種から2019年現在の最新品種まで、セレクトしてご紹介します。

マンガベ

「大胆であれ。最初であれ。他者と異なっていろ。」
(ラルフ・ワルド・エマーソン 思想家・作家  1803 – 1882)

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp
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