華やかな園芸品種とはまた違う、野趣あふれる姿にさまざまな魅力を持つ原種系のバラ。他の植物と合わせやすく、オリジナリティのある庭づくりに一役買ってくれるガーデン素材です。そんな原種系バラの魅力について、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。

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ナチュラルにも独創的にも演出自在。さりげなく個性的な原種系バラの世界への誘い

個性的なガーデンをつくる素材をご紹介するシリーズ「乙庭Styleの植物」。今回は、ガーデニング素材としても多様で個性的な美観を庭に提供してくれる、原種や原種の雰囲気を色濃く漂わせる品種のバラ(以下、原種系バラと略称)をご紹介します。

ロサ・ファレリ・ペルセトーサ’のガーデン例
ロサ・ファレリ・ペルセトーサをシェードガーデン素材と組み合わせた植栽例。

バラを中心にした庭づくりを楽しんでいる方でも、原種系バラまでは射程に入っていないことが多いのではないでしょうか。華やか・優美な魅力満点の現代バラや名高いオールドローズに比べると、原種系のバラは「地味」とか「マニアック」な印象が強いかもしれませんね。

ロサ・オメイエンシス・プテラカンサの花とマルバノキ’恵那錦’
ロサ・オメイエンシス・プテラカンサの花と、マルバノキ’恵那錦’の美しい覆輪葉。

原種系バラは、たしかに情報も流通量も少なく、やや取っ付きにくいジャンルなのですが、改良品種にはない野趣があって、他の植物に合わせやすかったり、葉やトゲ、茎や実など多様な観賞価値があったりと、掘り下げてみるとなかなか「使える」興味深い分野なんですよ。

ロサ・スピノシッシマのローズヒップ
ロサ・スピノシッシマのダークチェリーのようなローズヒップ。Wiert nieuman/Shutterstock.com

バラの原種は種類も数多く、網羅しようとするとたいへん深い世界ではありますが、ここでは「植栽の差別化に役立つ」という観点から、現代バラや宿根草と合わせやすく、かつ異彩があってさりげなく目立つ原種系バラの魅力と、キャラの際立ったオススメ種を2回にわたりご紹介します。第1回の今回は、原種系バラの魅力と概要をご紹介。個性的な庭づくりのヒントや深遠な原種系バラの魅惑世界への入り口として参考にしていただけたら幸いです。

原種系バラは「差別化が図れる」穴場アイテム

バラに限らず、ガーデニング全般におしなべていえることですが、花の少ない季節にも長い期間にわたって庭の美観を保ってくれることから、葉や茎の美しい植物の有効性が注目されていますよね。カラーリーフや斑入り品種、カラーステムの品種など、いろいろな種類の植物で、美しい葉や茎を持った品種が次々に開発されています。

原種系バラにも、原種でありながら園芸品種のようにちょっと変わった葉や茎の色のものや、古典園芸で珍重されてきた葉芸種などがあり、むしろ大量生産で多く出回っている最新品種カラーリーフプランツよりも「差別化が図れる」穴場アイテムだったりします。

ロサ・グラウカと、イヌコリヤナギ
ロサ・グラウカの灰紫葉と、イヌコリヤナギ ‘白露錦’ の白~ピンクを合わせた春の植栽。

また、原種系のバラは、トゲの形状やローズヒップにも特徴があるものが多いです。トゲや実のオーナメンタルさにも、華やかなバラの花とは異なる見どころがあります。

ロサ・オメイエンシス・プテラカンサ
ロサ・オメイエンシス・プテラカンサのサンショウに似た葉と、強烈な印象の赤いヒレ状のトゲ。

花に関しても、花粉たっぷりのしべの妖艶さとか、蝶のようにヒラヒラした一重咲きなど、自然界が生み出した不思議さ・個性的な美しさを持ったものもたくさんあります。

ロサ ‘ベイシーズパープルローズ’
バラというよりは牡丹に近い雰囲気。しべの妖艶さが魅力のロサ ‘ベイシーズパープルローズ’。

このように見てみると「花弁がたくさんある優美なバラ」のイメージとは違うけれど、面白い、多様で新しいバラの美的世界観が拓けてきませんか?

ロサ・グラウカの植栽例
湿度の低いヨーロッパ原産のロサ・グラウカと、同様にカラっとした気候風土を好むクロコスミアやペロフスキアなどを組み合わせた植栽例。Adrian March/Shutterstock.com

原種系だけに、宿根草などのナチュラル植栽に合わせても浮きすぎることもなく、さりげなく目立ってくれます。ナチュラルにも独創的にも、さまざまなシーンで使える意外な原種系バラ。ぜひ庭の差別化に活用してみてください。

植栽でのポイント! キャラの濃い個性的な種を選ぶことで差別化しよう

原種系のバラには、現代バラのようなインパクトの強い優美さはないかもしれませんが、「現代バラにはない個性」があります。

ロサ・キネンシス‘ムタビリス’
開花が進むにつれ花色が変容していく神秘さが魅力のロサ・キネンシス ‘ムタビリス’。BeppeNob/Shutterstock.com

そこが今回、優美な品種バラの個性的共演者として、あるいは宿根草の植栽などに合わせるちょっと珍しい花木素材として、原種系のバラに注目してみた理由です。なので、ナチュラルな雰囲気よりは個性重視で原種系バラをセレクトすることを考えていきましょう。

ロサ・ムルチフロラ・ワトソニアナ。
バラとは思えない、ヤナギのような風流な葉をもつ、ロサ・ムルチフロラ・ワトソニアナ。

華やかな現代バラや、庭園の審美の歴史を生き抜いてきたオールドローズの名花が咲く庭は、とても華やかで優美。文句なく美しいですよね。しかし、誰しもを虜にする優美なバラは、同時に誰しもが我先に手に入れたいと思うアイテム。おのずと美の激戦区になってしまい、ハイレベルで差がつきにくい状況になりやすいのです。

ローズガーデン
Heller Joachim/Shutterstock.com

バラに組み合わせる宿根草や一年草も、ジギタリスやデルフィニウムなど、バラとセットのように定番化されているアイテムは、必然的に他所の植栽とカブりやすいので、差別化という側面で考えると、激戦状況を踏まえた上で注意深くセレクトしていく必要があります。

そこで、「どれだけ優美なバラがあるか」という似たものの足し算から少し視点を変えてみて、「優美なバラに何を組み合わせると、新しい独自の効果が生み出せるか」という組み合わせの掛け算を考えてみると、人それぞれ結果に差異や多様性、独創性が生まれ、個性的な庭づくりに効果的です。

ロサ・グラウカ
ロサ・グラウカ。Marinatakano/Shutterstock.com

スイーツにちょっとだけ塩味やピリッとした辛味を効かせることで「強烈に記憶に残る」逸品が生まれるように、「花弁の多い優美なバラ」とは違う価値尺度を持ったバラをほんの少し織り交ぜることで、その庭の印象を、観る者の記憶に焼き付けることができます。人を惹きつけ、人の記憶に残るのは「他とは違う部分」なんですね。

ロサ・オメイエンシス・プテラカンサとクレマチス

他では見かけないようなバラがさりげなく混ざっていると、アンテナの高いバラ好きな人ほど敏感に反応してくれますし、独自の話題ネタも提供できます。バラという限られた範囲の中でも「トゲの様子が不思議」とか「葉色が変わっているね」といった「差異」をアピールできると、庭にぐっと「意味深なおもしろさ」が増しますよ。

次回は、今回解説に登場したバラを中心に、乙庭オススメの原種系バラを、より具体的にご紹介します。

原種バラ

「際立ったポジショニングを達成したブランドには必ず『掛け算』の要素があります。」
(山口周 独立研究者・著作家 1970 – )

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。
オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp
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