花も野菜も生かしてカラフルに ドイツのミックスガーデン“MISCHKULTUREN”
ドイツの伝統的な“MISCHKULTUREN”
成田空港に降り立ち、自宅のある神奈川・湘南に向かっていると、電車の窓から次々と現れる畑や庭を見ることができます。日本の庭はドイツと比べて一般に小さいですが、ドイツでは寒さが厳しい冬にはほとんど植物を栽培できません。でも、現在、私の住んでいる湘南は冬でもひどく霜が降りたり、気温が大きく下がることがないので、どの季節でも植物を育てることができるのです。そのため、広い面積の庭がなくても、季節ごとに数種類の植物や野菜を栽培するには十分ですね。
私が日本に来て不思議に思ったことの一つが、野菜などを育てる時に、同じものを何株も植えている人が多いこと。農業を生業とする人だけでなく、一般のガーデナーさんでも、家庭菜園でトマトだけ、キュウリだけ育てているというように、少ない種類を栽培する人が多いように思います。ドイツでも、暮らしで使う野菜をガーデンの一角を使って育てることはもちろんありますが、ドイツには“MISCHKULTUREN”、つまりミックスガーデン、混植という文化が根付いています。一種類の野菜だけを育てるのではなく、野菜や花など何種類もの植物を組み合わせて植えるのです。そうすれば、ある野菜だけが取れすぎて困る、ということはありませんし、何より見た目もカラフルで美しくなります。
キッチンガーデンなので収穫はもちろん大切ですが、ガーデンである以上、見た目が美しいことは絶対に譲れない条件。ガーデンは心を癒してくれる大切な空間なのです。このようなミックスガーデンの文化があるのは、ドイツでは伝統的に修道院にハーブや薬草などを集めたメディカルガーデンがあり、多様なメディカルプランツを栽培して薬用などに用いていたことに関係しているのかもしれませんね。
収穫もバリエーション豊かで華やかに
ドイツのミックスガーデンでは、毎日たくさんの種類が少しずつ収穫でき、食卓にも彩り豊かな食事が並びます。新鮮なズッキーニは生のままサラダにしたり、半分に切って肉を詰め、オーブンで焼いてホワイトソースを掛けたり。小さめサイズのニンジンは、きれいに洗って、生き生きした緑の葉をつけたまま食卓に並べ、そのままいただきます。
ミックスガーデンの定番である、エディブルフラワーのナスタチウムは、サラダに加えて彩りにします。日本ではまだまだ馴染みが薄いコールラビは、ドイツでは欠かせない食材。皮をむいてスライスし、ブイヨンで柔らかくなるまで煮込み、ブイヨンと生クリームでソースをつくってかければ美味しい一皿に。フィレ肉のサイドディッシュやサラダにして食べることもよくあります。ドアから少し出れば、採れたての野菜類が手に入るのが、キッチンガーデンの醍醐味ですよね。
コンパニオンプランツの組み合わせがポイント
“MISCHKULTUREN”のポイントは、適当に植物を組み合わせるのではなく、相性のよい植物が隣り合わせになるように計算して植えられていること。日本ではコンパニオンプランツとして知られていますが、近くに植えることにより、相互によい影響を及ぼし合う植物はたくさんあります。中には何でこの組み合わせがよいのか分からないものや、伝統的に伝えられているから、というだけの組み合わせもありますが、多くは実際に病虫害などに効果があるようです。“よき隣人”が大切なのは、植物にとっても人生にとっても同じですね。
このようなミックスガーデンのテクニックは、花壇だけでなく、コンテナガーデンやウィンドウボックスなど鉢植えでもよく登場します。また、レイズドベッドのようにすることも一般的。それぞれの家庭に合わせた、オリジナルのミックスガーデンがつくられています。
さて、この相性のいい植物同士の組み合わせですが、さすがに全ては覚えきれません。では、どうやって決めていると思いますか?
実は、ドイツでは、どの植物を組み合わせるとよいかのチャート表“Mischkulturen-Tabelle”が、家庭に一枚常備されていることが多いのです。一目で植物同士の相性が分かるチャート表は、ガーデン雑誌などに掲載されていたり、ガーデンセンターで配っていたり。このチャートを参考にしながら、それぞれの家庭が自分らしいミックスガーデンを育てています。
もう一つ、このようなミックスガーデンでは、植物同士の相性だけでなく色合わせも大切です。一つの野菜だけを育てていると、どうしても景色が単調になりがち。野菜や花をバランスよく取り入れ、それぞれの色彩や形を生かしながら美しいガーデンになるように気を配っています。カラーチョイスで遊ぶこともできるので、キッチンガーデンがもっと楽しくなりますよ。