さまざまな花が競うように咲く初夏は、ガーデンが最も華やかになる季節です。ドイツでも、初夏から夏がガーデンのハイシーズン。今回は、初夏のガーデンでもひときわ目を惹く大輪の花、シャクヤクを中心に、ドイツの初夏のガーデンやバルコニーを彩るガーデンプランツについて、ドイツ在住のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに教えていただきました。

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2020年のドイツの5月

初夏のガーデン

ドイツにも美しい5月の月がついに訪れ、多くの変化が始まりました。

新型コロナウイルスの影響により、3月から2カ月の間、私たちの生活は厳しく制限され、公共の場やプライベートで人々と会う機会はほとんどゼロ。週に1度の買い物は、なんだか特別な行事のようでした。そんな規制期間に終わりが見えた現在は、少しずつ制限が緩和され、新たな日常に向かって進みだしています。

パンデミック以前のドイツでは、マスクで口元や鼻をカバーする人はまずいませんでしたが、突然誰もがマスクを着けるようになり、またそのうちの多くの人が、綿やその他の布で作った可愛い手作りマスクを使っています。手作りマスクが今日の服装にマッチするかどうか、なんてコーディネートの悩みまで生まれました。個性豊かなマスクのバリエーションは、見ていてなかなか面白いですよ。例えば、私の兄はサボテンの収集に熱心なので、姪はサボテン柄のマスクを縫ってあげたのだとか。とても素敵な仕上がりでしたし、ユニークでスペシャルなプレゼントですね。

現在私の暮らすバイエルンでは、外出制限期間中は休業していた園芸店や花屋さんも、5月から再開し始めました。

たとえなかなか外出ができない時でも、庭やベランダ、バルコニーを持つ家族は皆、ちょっとした自由と自然に触れることができます。ガーデンに育つ植物でも、何年も花壇やボーダーガーデンに植えられていた宿根草は、とても頼りになる存在。毎年いつの間にか成長してつぼみをつけ、その素晴らしい色合いを見せてくれます。中でも、この時期に一際豪華に咲いてくれる主役花の一つが、ドイツ語でPfingstrosenと呼ぶ、シャクヤクの園芸品種です。

シャクヤクのあるドイツの初夏

シャクヤクのあるガーデン

シャクヤクはボタン科に分類される植物。ドイツでとても人気があるのは、中国やチベット、韓国を原産とするシャクヤクの園芸品種(Paeonia lactiflora hybrid)。これは、19世紀以降にヨーロッパで品種改良されてきたもので、高さおよそ50~110cmにまで成長する草本の宿根草です。花径およそ7~15cmにもなる大輪の花は、とても印象的。よくある花色は白色から、淡いピンク色、濃いピンク色、そして赤色までの幅があります。私はシャクヤクの優しい香りと、バラエティー豊かな色彩のたっぷりとした花弁が大好きなんです。

シャクヤクの花期には大きく3つのタイプがあり、早咲きのタイプは、5月の初め頃から咲き始め、それに少し遅れてもう一種が5月の半ばから終わりまで咲きます。そして、遅咲きのものは6月の初めから咲き始めます。

ドイツでシャクヤクの人気が高い理由の一つに、この花期があります。イースターサンデーからちょうど50日後の祝日に、キリスト教の重要な祝祭日である”Pfingstferien”、ペンテコステ(聖霊降臨祭)があります。バイエルンではその10日後の”Fronleichnam”、コルプス・クリスティ(聖体祭)の日に、教会のシンボルの周りに花のカーペットを作って飾るという風習があるのですが、ちょうどこの時期に咲き、花弁が多くて花色のバリエーションが豊富なシャクヤクの花がよく使われているのです。2020年にその日にあたるのは6月11日。残念ながら、今年はシャクヤクが咲き始めるのがとても早かったため、この祝祭日には残っていないでしょう。なんといっても、4月の終わりにはもう咲き始めていたのですから!

シャクヤクの花

さて、シャクヤクは宿根草なので、ボーダー花壇などで何年も咲き続けてくれるうえ、一本でもとても華やか。フロックス・パニキュラータやアイリス・シビリカ、サルビア・ネモローサ、ゲラニウム、ネペタ、スカビオサなど、初夏に咲く宿根草と合わせても素敵です。シャクヤクの花が終わってしまった後も、他の宿根草がカバーしてくれるので、見た目も寂しくなりません。

シャクヤクはもちろん鉢植えでも栽培できます。私の友人の一人が、シャクヤクを大きなプランターで育てていますが、毎年彼女のバルコニーでは美しい花が開き、目を楽しませてくれています。切り花として部屋に飾るのも一般的です。花もちがよいのも嬉しいですね。

ドイツのコテージガーデンでは、オランダシャクヤクもよく使われます。オランダシャクヤクの原産は南東ヨーロッパで、16~18世紀頃の中世にガーデンでも植えられるようになりました。ヨーロッパの絵画を見ると、たくさんの画家がキャンバスにその姿を描き残しています。

シャクヤクのガーデン

各地に咲く季節の花々

バイエルンでは墓地に花々を植栽することが一般的。5月の半ば頃になると、ガーデナーの多くはその植栽を入れ替えるため、ドイツの園芸界がとてもにぎやかになる時期でもあります。墓地に植える植物は、ローメンテナンスで、毎日の水やりが必要ないことが条件。例えば、センペルビブム(ベンケイソウ)やセダム、ユキノシタ科の植物などです。どれも葉色が美しくて種類豊富な、コンパクトに育つ植物で、水やりもほとんど必要なく、何年も同じ場所で育ってくれます。誰でも簡単に育てられる植物なので、ガーデニング初心者にとってもおすすめですよ。ほかに人気の高い植物としては、ベゴニアやインパチェンス、サンビタリア(ジャノメギク)などがあります。

バルコニー・ベランダ・玄関を飾る一年草

アイビーゼラニウム

生粋のバイエルンっ子にとって、バルコニーといえば、すなわち細長いウィンドウボックスに植えたアイビーゼラニウム(ペラルゴニウム・ペルタツム)を楽しむ場所。アイビーゼラニウムは茎が下垂し、鉢から溢れるように花が咲く姿が楽しめます。アイビーゼラニウムの中には、私が「セルフクリーニング」と呼んでいる、乾燥した花がらが風によって飛ばされ、自然ときれいになくなるような種類もあり、手入れが簡単。強い風が吹いた時には、細い枝が折れてしまうこともありますが、さほど気にしなくてもよいでしょう。このゼラニウムは、ピンクと明るい赤色の2色が一般的。白花品種も手に入ります。11月に最初の霜が降りるまで咲き続きます。花を咲かせ続け、生育をよくするためには、週に1度追肥をするとよいでしょう。

このアイビーゼラニウムと、スウェーデンアイビーともいわれるプレクトランサスの仲間とを合わせて、枝垂れるようなカスケードに仕立てるのも、ウィンドウボックスやエントランスのハンギングの定番。これらプラクトランサス属の植物は、白い縁取りのある緑色の美しい葉を持ち、触ると強い香りを放ちます。この香りは蚊よけに効果があるといわれています。もっとも、香りはかなり好き嫌いが分かれるタイプのもの。香りの良し悪しはともかく、さまざまな一年草と組み合わせて活用されています。

アイビーゼラニウムのカスケード仕立ては、ヨーロッパの窓辺でとてもよく見られる光景です。種類によってはさほど花が下垂しないものもあり、小さめのコンテナや、他の一年草と合わせるのにぴったり。花色の幅もより多く、赤やピンク、白、そして複色など、選ぶ楽しみも広がります。

アイビーゼラニウム

バルコニーや玄関で育てるには、サフィニアとペチュニアも、とても人気がある植物です。育てやすくて花色のバリエーションも豊富な可愛らしい花ですが、雨に当たるとちょっと汚くなってしまうのが難点。また、花びらが落ちると、床面に跡が付いてしまいます。サフィニアを育てる場合は、屋根のある場所に置くなどして雨対策をするとよいでしょう。ほかに、ロベリアやサンビタリア、バーベナ、ブラキカム、フクシア、マリーゴールド、ヘリオトロープなども、いろいろな植物と合わせて育てるのにおすすめです。

どの植物を選ぶにしても、適した場所に適した植物を植えることが大切です。日当たりや気温などの環境に合わせて選ぶとよいでしょう。例えば、半日陰や日陰の場所には、ベゴニア・ペンデュラやベゴニア・センパフローレンスを植えるのが一般的です。

誰もが楽しめる自然の美しさ

野原

たとえたくさんの花々をバルコニーで育てることができなくても、少し郊外に出れば、誰でも花の野原を楽しむことができます。4月には野原一面にタンポポが咲き、黄色い絨毯を1週間ほど広げていたものですが、花の時期が過ぎると、タンポポのふわふわとした軽い綿毛のパラソルが、まるで空でダンスをしているかのようにあちらこちらで飛んでいました。私の娘はこの綿毛が嫌いなのですが、私は大好き。外で食事をしているときに、綿毛がどこからともなく飛んできて、飲み物やケーキの上に着陸しても、あまり気にしないくらいです。隣人をからかいたい時だって、「芝生のタンポポはどうですか?」と聞くだけ。彼は毎日タンポポを抜いて回っていて、薬品を使って防除しようとしたこともあります。事程左様に、好き嫌いは人によって異なるものですね。

タンポポの後には菜の花畑が満開になり、鮮やかな黄色で空間を埋め尽くします。満開になるまでには数週間がかかり、その後は緑の葉がまだ茶色い景色に現れて、素敵なコントラストを描きます。

野原に目を移せば、次にスポットライトを浴びるのはホソバキンポウゲ。タンポポとはまた異なる黄色い花を咲かせます。このタネはタンポポほど特筆するものではなく、花が終わると消えてしまいます。

さて、5月半ばの現在、マーガレットがちょうど満開を迎えています。白い絨毯が広がり、先日は女性がたっぷりとその花を摘み取っている姿を見かけました。なんて素敵なアイデアでしょう!

少し外に出るだけで、この素晴らしい光景が誰でも無料で楽しめるのですから、自然は本当に寛大です。季節が過ぎ去ってしまう前に、美しい花景色に足を止め、その瞬間を楽しむことは、私にとってとても大切な時間なのです。

Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss/Stockfood

取材/3and garden 

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