飼い主も愛犬も一緒にリラックス。愛犬のためのアロママッサージ

ほんのりと精油が香るアロママッサージは、愛犬にとっても飼い主にとっても癒やしの時間。ゆっくりとスキンシップをすることで、犬の体の小さな変化にも気が付き、健康を保つためにも役立ちます。ハーバルセラピストの資格を持ち、ペットのための自然療法も学ぶ海野美規さんに、精油を使った愛犬用の手作りマッサージオイルの作り方と、海野さんが実践するマッサージについて、注意したい点も含めて教えていただきます。愛犬とのリラックスタイムに、アロママッサージを取り入れてみましょう。
目次
犬のプレシニア期
季節の変わり目ということもあるかもしれませんが、愛犬あんの元気がありません。心配になり、健康診断を兼ねて動物病院に行ってきました。いろいろ検査をしていただき、生活習慣病や首のこりなど、気を付けなければいけないことを教えていただきました。
愛犬あんは8歳になったところです。犬の8歳はプレシニア期になるそうで(犬種によって異なる)、これから迎えるシニア期を前に、今のうちからいろいろな変化や体調不良をうまくケアして、いつまでも健康でいてほしいと思っているところです。
アロママッサージはお互いの癒やしの時間
あんが通っている動物病院は、東洋医学からのアプローチもされている獣医師です。あんの場合、首のこり、首から尻尾までの背中の緊張状態、その不調による心臓への負担があるとのことで、お灸をすることになりました。冷えはさまざまな体調不良を引き起こします。血流をよくすれば、気力も上がってくるとのことで、お灸やマッサージはとても有効。ぜひおうちでもマッサージをするようにとアドバイスされました。
それならば、アロマテラピーの要素を取り入れて、あんと一緒にマッサージタイムを楽しもうと思いました。

愛犬へのアロママッサージのメリットは、マッサージすることで犬の身体の小さな変化に気がつく、犬に触れることで飼い主がヒーリング効果を得られる、犬と飼い主のコミュニケーションが図れる、免疫機能を活性化して自然治癒力を向上させる、などの効果が得られるそうです。
確かに、ほっとできる好きな香りの中で、愛犬の柔らかい温かな体を触っているととても気持ちが落ち着きます。きっと犬も、飼い主の優しい手の温もりでリラックスできることでしょう。アロママッサージは、飼い主にとっても愛犬にとっても癒やしの時間になります。その上愛犬が元気になれば、うれしいことばかりです。
キャリアオイルについて

今回は、愛犬にアロママッサージをする際の、マッサージオイルを作りましょう。キャリアオイル(ベースオイル)といわれる植物油で精油を希釈して作ります。
キャリアオイルは、精油を「薄める」目的と、精油成分を体内に「運ぶ」という意味から名付けられたということです。精油が親油性で皮膚への浸透性がよいことから、アロマテラピーでは植物油が使用されます。
アロマテラピーで使われる植物油は、スイートアーモンドオイル、オリーブオイル、マカデミアナッツオイル、ホホバオイル、ウィートジャームオイル、カレンジュラオイルなどがあります。
植物油は溶剤としての役割と、皮膚に栄養を与えて保護する役割もあり、柔軟作用、強壮作用、組織再生作用により、健康な皮膚をサポートしてくれます。
犬に適したキャリアオイル
人間の場合は、皮膚にマッサージオイルを塗ってトリートメントして浸透させますが、犬の場合は、皮膚を覆っている厚いモフモフの被毛(犬種にもよりますが)に塗るということになります。ですので、なるべく被毛に負担にならないマッサージオイルを使うこと、犬に適したキャリアオイルを選ぶことが大切です。
被毛に塗るとなると、ベタベタしたものよりも、さらっとした感触の粘性の低いものが好ましいです。
犬のマッサージオイルにおすすめなのは、ホホバオイル。ホホバオイルは、南米の砂漠に自生するツゲ科の植物、ホホバの種子から採れる液体ワックス(ロウ)です。気温が5℃以下になると固まり、10℃になれば元に戻ります。このため酸化しにくく、安定した性質のオイルといわれています。外傷の治癒や皮膚病、強い日差しから皮膚を守るのに役立ち、古くから利用されてきたそう。浸透性に優れ、ビタミン類が豊富、皮膚への刺激が少なくアレルギーも起こしにくいという点も安心です。
犬のマッサージオイルに使う精油

植物油で希釈する精油の量は、人の場合は1%以下、犬の場合は0.25%以下。犬の嗅覚は、人間の1億倍ともいわれていますから、人間の基準よりも少なめに使用します。
1滴が0.05mlのドロッパービンの場合で計算すると、植物油20mlに対して0.25%は0.05ml、1滴ということになります(ホリスティックケアカウンセラーテキストより)。このほか、ペットのアロマテラピーに関した書籍やテキストなどによって、濃度の規定に差があります。30mlに対して1〜3滴、多いもので10mlに対して4滴などと紹介されているものもありました。どちらにしても、ごく少量の精油で作りましょう。
おすすめの精油は、ラベンダー、ローズウッド、ゼラニウム、カモミール、ティーツリー、ローズマリーなど。愛犬も飼い主もよりリラックスできる、好きな香りを選ぶとよいですね。我が家の愛犬あんは、柑橘系の香りがちょっと苦手です。ラベンダーやローズマリーは身近に感じる香りなのか、安心できるようです。犬によって香りの好みもありますので、事前にしっかり確認をするようにしましょう。
マッサージオイルの作り方
今回のマッサージオイルは、
- ホホバオイル 10ml
- ラベンダーの精油 1滴
で作ります。
- ビーカーにホホバオイルを10ml入れます。
ホホバオイルは、無色〜黄色。今回使用した有機ホホバオイルは未精製なので黄色です。 - ラベンダーの精油を1滴入れて、よく混ぜます。
精油は入れすぎないように注意しましょう。 - 遮光ビンに入れます。
酸化しないうちに使い切れる量を作りましょう。
マッサージ方法
ツボを把握した本格的なマッサージでなくても、優しく撫でるだけでも十分です。撫でることで、心身ともにリラックスできれば、きっと愛犬も喜んでくれます。飼い主も、ゆったりした気分のときに行いましょう。
以下は、我が家の愛犬あんにしているマッサージです。愛犬によって、触ると嫌がる部位があったり、避けたほうがよいところがあるかもしれません。優しくゆっくり撫でることから始めて、様子を見てください。
- 手にマッサージオイルを少量(大豆くらい)取ります。
- 手のひらをこすり合わせて、体温でオイルを温めます。
- 犬の鼻に手を近づけて、香りを嫌がらないか確認します。
- 首から尻尾までゆっくり撫でます。
- 首から肩にかけて、ゆっくり揉むようにします。
- 手や脚を柔らかく揉みます。

あんも気持ちよさそうな表情。
香りと嬉しい出来事を結びつける

嗅覚は、感情をコントロールする中枢である大脳辺縁系に直接結びついていて、記憶も司るところ。なので、香りは思い出の中で記憶と一緒に残ります。犬の場合も、香りと出来事を結びつけて記憶しているのだそうです。
例えば、今回のラベンダーの香り。
ラベンダーの香り→ママ(飼い主)リラックス→上機嫌→わたし(犬)に優しい→わたし嬉しい→ラベンダーの香りはよいことが起こる
ラベンダーの香り→わたしを撫で撫で(マッサージ)→わたしリラックス→ママもリラックス→わたし嬉しい→ラベンダーの香りはよいことが起こる
このように飼い主と愛犬が一緒に過ごす癒やしの時間を繰り返すことで、あのラベンダーの香りがすると、とてもよいことが起こる! と愛犬は学んでいきます。
このような好きな香り、うれしい香りがあると、犬が興奮したとき、緊張したとき、不安なときなど、いざという場面で、犬を落ち着かせてリラックスさせることができます。飼い主としては、とても安心できて心強いことです。
一つ注意したいことは、人間のひとりよがりな考えでアロマテラピーを施しすぎないようにすること。香りの強さ、マッサージする時間、タイミングなど、くれぐれも愛犬のためであるよう気をつけましょう。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
https://www.annegarden.jp/
参考:
「ペットのためのアロマセラピー」西村早苗著
「ホリスティックケア・カウンセラーテキスト」株式会社カラーズ
「アロマテラピー検定公式テキスト」日本アロマ環境協会