30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了された遠藤昭さん。帰国後は、オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストでも数々の受賞歴があり、60㎡の庭づくりの経験は20年になるという遠藤さんに、庭で育てがいのあるオージープランツを解説していただきます。

日本では「ススキの木」とも呼ばれるグラスツリー

今回は、グラスツリーにスポットを当てて、ご紹介したい。グラスツリーとはXanthorrhoea(クサントロエア属)とKingia(キンギア属)の2属を総称した呼び名で、日本では「ススキの木」ともいわれている。日本で見かけるのは、前者のXanthorrhoeaだ。独自の生物進化を遂げた不思議大陸オーストラリアらしい、なかなかに個性的でカッコいい植物である。

日本ではかつては、浜名湖の花博など、特別な場所でしかお目にかかれなかった植物だ。我が家のグラスツリーは、15年ほど前に、マニアックな植物を扱う知人のコレクションを譲っていただいたもの。最近は、通販でも入手できるようだ。

玄関アプローチに置いても、庭に置いても個性的な雄姿は、独創的な雰囲気を醸し出してくれる。一味違った庭づくりには最適だ。

山火事を経験して再生する不思議な性質

このグラスツリーという植物は、1年間に幹が1㎝しか伸びず、山火事を経験した後にスパイク(穂)を出して花を咲かせるという不思議な性質がある。オーストラリアの樹木は、山火事を経験して、実がはじけ雨が降って発芽するものが多いが、このグラスツリーも焼け焦げた幹の先から、針のような長い葉を再生するという変わった植物である。以前、西オーストラリアを旅行して、幾度か山火事の後の焼け焦げた原野に遭遇したが、なんとグラスツリーだけは緑の葉をてっぺんから放射状に生やして生き残っているのであった。

グラスツリーの故郷のワイルドな生態

やはり、グラスツリーのある風景は印象的で思い出に残る。これは、西オーストラリアの原野に生えていたもの。手前の白い花はスモークブッシュ(Conospermum crassinervium)と呼ばれる。

この雄大な風景の中で、佇むのはグラスツリーの一種、Kingia australisだ。Xanthorrhoeaに比べてやや小型。葉の色はシルバーがかっている。Xanthorrhoeaは穂が上に1本伸びるが、Kingiaは太鼓のバチのような穂が複数生えるのが特色だ。写真はスターリングレンジという山で撮影。

パース近郊のジョン・フォレスト国立公園には、林の中に無数のグラスツリーが生えている。

オーストラリアのガーデンセンターに並ぶ、ビッグサイズのグラスツリー。
コンパクトな鉢植えも並んでいた。

ところで、このグラスツリーは現地のオーストラリアでも高価だが、背丈以上に育ち、幹が十分太ったビッグサイズが約500ドル(約4万円強)で販売されていた。鉢植えだと100ドルくらい。きっと日本では10倍の価格になるだろう。持ち帰れるものなら……と、思ってしまう。

タネから育てて10年が経過

オーストラリアの土産物屋でタネが販売されていたので、実生で生やしたことがある。比較的、簡単に発芽はしたが、その後はかれこれ10年ほど経つが、いまだに幹の姿が見えない。

1年に1㎝伸びると聞いていたのに10年経っても幹は1㎝にもならない。写真左の鉢植えは、この原稿執筆の休憩に撮った現在のグラスツリーだ。生きているうちに幹が見えるのだろうか? まあ、オーストラリアらしい大らかでノンビリした植物だ。

育て方は、日当たりのよいところに置いて、長雨には当てないようにし、乾燥気味にすること。冬は軒下に避難させればいい。丈夫な植物だ。

日本では珍しいグラスツリーだが、現地のキルト展でこんな作品に出合った。オーストラリア人にとってのユーカリが、日本人にとっての松や桜のような存在で、オーストラリア人にとってのグラスツリーは、さしずめ日本人にとってのソテツのようなものかもしれないと、ふと思った。

Credit

写真&文/遠藤 昭
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。現在は、川崎市緑化センター緑化相談員を担当しながら、コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施。園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。