ふじおか・せいすけ/1963年、兵庫県生まれ。きびの森植物園マネージャー、株式会社タカショーの顧問を務める。兵庫県立淡路景観園芸学校元講師。
「きびの森植物園」 http://kibinomori.com/
藤岡成介
ふじおか・せいすけ/1963年、兵庫県生まれ。きびの森植物園マネージャー、株式会社タカショーの顧問を務める。兵庫県立淡路景観園芸学校元講師。
「きびの森植物園」 http://kibinomori.com/
藤岡成介の記事
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樹木

美しき日本の花を愛でる -桃の花編-
モモ(桃) Prunus persica (Amygdalus persica)バラ科 サクラ属(モモ属) 「李(スモモ)も桃も桃のうち」という早口言葉に登場するモモは、3月下旬より、サクラやウメよりも一回りほど大きな花をつけます。モモの歴史は古く、中国西北部の黄河上流の高山地帯原産のモモは、弥生時代後期にはすでに大陸から栽培種が伝来しています。モモは食用のほか祭祀にも用いられていました。主に薬用・観賞用として用いられ、江戸時代にさらに広まり、『和漢三才図会』では「山城伏見、備前岡山、備後、紀州」が産地としてあげられています。 現在日本で食用に栽培されている品種は、明治時代に導入された、水蜜桃系です。「モモ」の語源は、「真実(まみ)」より転じたとする説、実の色から「燃実(もえみ)」より転じたとする説や多くの実をつけることから「百(もも)」とする説などがあります。 古くからモモには邪気を祓う力があると考えられていました。「古事記」には、伊弉諸尊(いざなぎのみこと)が鬼女、黄泉醜女(よもつしこめ)にモモを投げつけて退散させたとあり、伊弉諸尊はその功からモモに大神実命(おおかむづみのみこと)の名を与えたという記述があります。「桃太郎」はモモから生まれた男児が鬼を退治する伝説です。また、桃の節句(3月3日)はモモのご加護による女児の健やかな成長を祈る行事でもあり、モモの花を飾ります。 モモに近いサクラ属には、モモ亜属としてアーモンドがあります。和名はヘントウ(扁桃)、またはハタンキョウ(巴旦杏)、アメンドウとも呼ばれますが、モモと異なり、果肉と種子の殻を取り除いた仁の部分を炒って食用とします。花はピンク色で、モモと非常によく似ています。アメンドウの杖は旧約聖書にも登場し、古くより人々に親しまれてきました。 春の訪れを祝う意味でも、モモは大切な花の一つといえます。3月下旬、山梨県の甲府や岡山県の瀬戸地方、和歌山県を旅すると、モモ畑一面に、美しい花を咲かせている風景を見ることができます。美しい日本の絶景の一つですね。 併せて読みたい ・季節を映す言葉「季語」で知る春の花 ・春を告げる上品な香りの花木 ジンチョウゲ ・日本の春を彩る美しい花 桜の名所に出かけよう Credit 文&写真/藤岡成介 1963年、兵庫県生まれ。きびの森植物園マネージャー、株式会社タカショーの顧問を務める。兵庫県立淡路景観園芸学校元講師。 「きびの森植物園」 http://kibinomori.com/
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ガーデン

【二十四節気】寒露は紅葉シーズン。一度は行きたい紅葉名所
二十四節気 寒露 10月8日頃 紅葉シーズンと球根 大自然の中の三段紅葉 朝夕の冷え込みが厳しくなってくると始まるのが、紅葉シーズン。北アルプス奥穂高岳の直下、3,000m級の山々に囲まれた涸沢(からさわ)カールは日本一の紅葉の名所として知られています。9月中旬から木々が色づき始め、下旬〜10月上旬にかけては赤、黄色、黄緑色の見事なパノラマが広がります。紅葉の「赤」と山の岩肌を覆う雪の「白」、空の「青」とのコンビネーションは「三段紅葉」と呼ばれ、この絶景を目指して全国から登山者や写真愛好家が訪れます。 三段紅葉は北海道でも。大雪山系・旭岳は日本一早い紅葉と全国初の冠雪場所として知られる山です。9月には紅葉が見頃を迎え、約1カ月かけて山を降りるようにさまざまな木々が色づき、雪が降り始めます。 平地での紅葉を楽しむなら11月上旬から。名所揃いの京都では街中が春の桜の季節と同じくらいにぎわい、ホテルも旅館もほぼ満室となります。京都の紅葉見物を計画の際は、どうぞお早めに。 英国の紅葉の名所 ヨーロッパでは日本のように燃え上がるような紅葉が見られないとよくいわれますが、英国コッツウォルズ地方には日本にも勝るとも劣らないドラマチックな紅葉が見られる公園があります。ウェストンバート国立森林公園には、600エーカーという広大な敷地に、3,000種、1万6000本の樹木が植えられています。この公園をつくった大富豪ロバート・ホルフォードは、単なる見本園ではなくピクチャレスクガーデンという絵画の概念を応用した造園手法によって、芸術性の高い公園をつくることを信条としました。第二次世界大戦で荒廃したものの、現在は英国政府の機関である森林保護委員会によって復興、管理され、氏の信条通り公園は四季を通じて生きた絵画のごとく美しい風景で人々を楽しませています。 京都の紅葉名所案内 宝筐院(ほうきょういん)京都嵯峨野にある寺院。モミジやドウダンツツジが多数。右京区嵯峨釈迦堂門前南中院町9 南禅寺(なんぜんじ)水面に映る色模様も美しい天授庵の池の紅葉。左京区南禅寺福地町86 禅林寺永観堂(ぜんりんじえいかんどう)853年(仁寿3)空海の弟子真紹が開いた道場。ライトアップが幻想的。左京区永観堂町48 光明寺(こうみょうじ)宗祖円光大師法然上人の立教開宗の地。参道の紅葉が趣深い。長岡京市粟生西条ノ内26-1 球根の植えどきは紅葉が目安 秋は春咲き球根の植えどきです。チューリップやスイセン、ムスカリ、ヒヤシンスなど春に咲く球根は冬の寒さにあうことで開花するリズムを持っているため、秋に植え、冬の寒さを経験させると、春に開花を迎えます。これらの春咲き球根は10〜15℃ほどの温度で根を伸ばしますが、20℃以上ではうまく育つことができません。球根が出回り始めるのは9〜10月ですが、近年の10月の平均気温は約19℃。球根を植えるにはまだ少し早いようです。ですから、球根を買ってきてすぐ植えると、温度が適さず生育不良の原因となることがあります。そこで役に立つのが紅葉。周囲の木々が紅葉を始める頃が、球根を植えるのに最適な地温となる目安です。紅葉の見頃は、球根の植えどきと覚えておきましょう。
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育て方

春・夏・秋の球根の植え方〜向きと深さとタイミングに注意!
土の深さや間隔、球根の向きに気をつけて植え付けましょう 植えどきは10月~12月上旬頃 チューリップ、ヒヤシンス、スイセンなど約4,000種類、数百万本の球根花が林床に植え付けられた、春らし色彩と香りあふれるオランダのキューケンホフ公園。 球根の植え付け【鉢植えの場合】 球根の植え付け【地植えの場合】 植え付けのポイント1 鉢植えは、土がかぶっている程度で大丈夫です。根を張ることができる深さのほうが重要です。 植え付けのポイント2 球根の大きさによってさまざまですが、球根の大きさの2~3倍の深さおよび間隔が目安です。 肥料について 花を咲かせるにはリン酸が必要になります。チューリップだけでなく植物は窒素肥料過多になると花つきが悪くなります。成長を考えるときは、窒素分を与えます。 チューリップの球根には向きがあります 球根の向きを揃えて植え付けると、葉の向きがキレイに並び、開花するととても美しく見えます。 春までワクワク! 秋植え球根 チューリップ チューリップ Tulipa gesneriana ユリ科チューリップ属 開花期:4~5月 花言葉:博愛 思いやり 名声 ムスカリ ムスカリ Muscari neglectum ユリ科ムスカリ属 開花期:3~4月 花言葉:通じ合う心 失望 スイセン スイセン Narcissus ヒガンバナ科スイセン属 開花期:1~3月 花言葉:神秘うぬぼれ イフェイオン アイフェイオン Ipheion uniflorum ユリ科トリスタグマ属 開花期:3~4月 花言葉:別れの悲しみ耐える愛 ユリ ユリ Lilium ユリ科ユリ属 開花期:5~8月 花言葉:威厳純潔 アリウム アリウム Allium giganteum ネギ科アリウム属 開花期:4~7月 花言葉:深い悲しみ 無限の悲しみ 優しい 春植え・夏植え・秋植えの各植え付け適期と特徴 花壇を彩る球根類は多年草の一種で、茎や根を地中で肥大させて翌年の成長と開花に必要な養分を貯蔵しています。多くの種類が寒さや暑さ、乾燥に強く、水分はあまり必要としません。原産地の自然条件や生育環境によって植え付けの時期にそれぞれ違いがあります。 春植え球根 3〜4月ごろに植え付けると、夏から秋に開花する球根類です。熱帯や亜熱帯原産地のものが多く、トロピカルな雰囲気でダイナミックに花を咲かせるため、夏の植栽では目立つ存在です。 寒さにはあまり強くないため、冬季は低温や霜で地上部を枯らし、休眠しますが、寒さに耐えられなくなると枯死することもあります。そのため、冬季は堀り上げを行い、雨のあたらない場所で貯蔵します。 夏植え球根 7~8月ごろに植え付けをすると、その年の秋に開花する球根類です。植えてから開花までの期間が短く、自然な雰囲気の花を咲かせます。とても丈夫で育てやすいため、ガーデニング初心者にもオススメです。 多くが温帯原産で耐寒性が強いものが多く、花後に葉を茂らせて冬の間も常緑です。冬中はずっと生育し続けますが、春になると葉が枯れ始め、夏の終わりまで休眠をします。 秋植え球根 10月ごろに植えると越冬して、翌年の春に開花する球根類です。花色が豊富で可憐に咲くものが多く、春の花壇にぴったり。春の開花後は、気温の上昇とともに葉を枯らして休眠します。多くが温帯原産で寒さにはやや強いものが多いのですが、原産地により耐寒性がほとんどないものもあります。特に、オーストラリアや南アフリカなどが原産地のものは、寒さに弱く越冬できない場合があります。 春植え・夏植えの球根 春植え、夏植えともに、植え込みの時期になると種類豊富な球根を購入することができます。咲かせる時期、庭や鉢植えのイメージに合わせて球根選びをしましょう。ほかの植物との組み合わせを考える場合は、花の大きさや草丈なども重要です。 春植え ①アマリリス 南アフリカ原産、ヒガンバナ科。花は5~6月に開花し、多くはオランダで品種改良が行われてきました。花が大きく華やかで、花もちが良く、切り花としての利用はもちろん、花壇でも活躍します。水耕栽培にも向くため、ヨーロッパでは冬季に花を咲かせ、クリスマスのプレゼントに使用します。 ②ダリア メキシコ、グアテマラ原産、キク科。花は7~9月に開花します。2万種以上の園芸品種が作出され、花色、花形もさまざまです。スウェーデンの植物学者アンドレアス・ダールを記念してダリアの名がつきました。 ③グラジオラス 南アフリカ原産、アヤメ科。4~5月に優しい雰囲気で咲く春咲きタイプと、カラフルに咲く夏咲きタイプがあります。剣のような葉の形が特徴。庭に植えて切り花で楽しむこともできます。 ④カラー 南アフリカ原産、サトイモ科。6~7月に開花します。花色は白や黄色、ピンクなどがあり、切り花に向いています。湿地を好みますが、球根タイプのカラーは庭に植栽することができます。 夏植え ①リコリス 東南アジア原産、ヒガンバナ科。赤、黄色、オレンジ、白など花色が豊富で、秋に花だけが立ち上がり咲きます。非常に丈夫で、花後に葉を茂らせて冬の間もよく育ちます。植えっぱなしでよく、高温多湿でも雑草にも負けず、花が咲くと庭に華やかさが増すでしょう。 ②サフラン アヤメ科、10~11月にクロッカスに似た紫の花を咲かせます。古来より赤いおしべを染料、薬用として利用してきました。料理では「サフランライス」がとても有名です。草丈は10cm程度で低く、地面を割るように開花して、良い香りを放ちます。 ③ダイヤモンドリリー 南アフリカ原産、ヒガンバナ科の植物で9月~10月に開花します。花弁がキラキラと光り、花は清楚ですが豪華な印象です。花後に葉を茂らせて生育し、夏に休眠をします。花もちが良いため、切り花として楽しむことも可能です。 ④コルチカム ヨーロッパやアジア原産、ユリ科。非常に乾燥に強く、植えずに置いていても花を咲かせます。名前は黒海東地域の地名「コルキス」に由来していて、園芸品種も豊富です。花後は日当たりの良い場所に植え付けして球根を育てます。湿気に弱いため、梅雨前に掘り上げておくと、また秋に開花します。 適切な時期に球根花を植え付けて、庭を華やかに彩ってみましょう。



















