ステキなお庭にするためのカラーコーディネートを考えるVol.1 ~簡単な色の知識とイメージキーワード~

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庭を作りたいと考えたとき、何から着手すればいいのでしょうか。草花をすぐ植えたくなりますが、その前にまずは計画を立ててみましょう。庭計画の一つのきっかけとなるのが、「色の選択」。草花はもちろん、簡単には取り替えられないレンガや枕木、フェンスなどのエクステリアも素材や色合わせに気をつけると、ステキな庭をつくれます。これから15回ほどにわたって、素材と色に着目したエクステリア提案を行っていきます。
目次
簡単な色の知識を身につける

カラーコーディネートを解説する前に、簡単な色のことを知っておきましょう! 図1のように、虹色のように並んでいる色の輪があります。これを「色相環(しきそうかん)」といいます。
この色相環は12色で構成されています。
①黄、⑤赤、⑨青の「3色の純色」が基本です。
そこから、
①黄と⑤赤を混色すると③橙
⑤赤と⑨青を混色すると⑦紫
⑤赤と①黄を混色すると⑪緑
というように、合計6色の六角形の環ができます。
同様に、①黄と③橙を混色して②黄橙、③橙と⑤赤を混色し④赤橙・・・というように、6色の隣同士の色を混色していくと、12色の色相環ができあがります。
この12色の各1色は色のグループとして考えます。
例えば①黄のグループ、②黄橙のグループ、③橙のグループのように、全体で12グループの色ができます。①~⑤は暖色系、⑦~⑩は寒色系、それ以外は中性色と呼びます。
一般的に、初心者のエクステリアのカラーバリエーション(色彩構成)は、暖色系①~⑤の中から考えると無難にまとめることができます。
それでは、この色相環を基本にして色の組み合わせを考えます。まず、①~⑫の各グループはそれぞれ、明るい色から暗い色までの無数の色のグループと考えます。

そこで、図2にように、①黄~⑫黄緑グループごとにグラデーションをつくります。グラデーションとは、連続した階調の色調の集合体のことを意味しますが、ここでは上部が明るい色から、下部が暗い色の順に並べています。
この12グループのグラデーションのカラーチャートを使って色の組み合わせをすると、頭で考えるより、著しくカラーバリエーション(色彩構成)がしやすくなります。これは参考までに、私独自で作成したカラーチャートですが、建築やエクステリアのカラーバリエーションがしやすいように考案しました。色相環は①黄~⑤赤までが暖色系の色になりますが、このカラーチャートでは1~7グループまでを暖色系として作成しています。暖色系グループは暗い色(濃い色)になってくると焦げ茶になっていますね。黄色や橙色などは濃くなると濃い茶色になっていくことも覚えておきましょう。
それともう一つ! 無彩色(モノトーン)という色みのない白から10%ずつ黒を混ぜてつくったグラデーション(図2・上)も使います。例えば、素材では白い吹付、タイル、コンクリートなどが、これに当たります。
カラーバリエーションをしてみよう!
いよいよ色の組み合わせをしてみましょう! 簡単な組み合わせは3つあります。
1グループの中から数色選ぶ(同系色同士)
1~12のグループから1つを選び、その中の色を数色選びます。同系色の色合わせで、色の濃淡で構成します。
図は①黄グループの濃淡3色で選んだ配色例です(外壁:2階アイボリーと1階少し濃い黄色、1階屋根や窓枠などは焦げ茶の3色)。参考までに同系色の専門用語は「同一色」といいます。

1つまたは2つ飛ばしたグループから選ぶ(類似色同士)
2つのグループから数色選ぶ配色で、グループ間を1つまたは2つ飛ばして2つのグループを選びます。例えば、①黄グループと1つ飛ばした③橙グループ。または、2つ飛ばして④赤橙グループの中から数色選びます。
図は①黄グループから2階外壁と塀のアイボリーと、1階屋根と玄関ドアの焦げ茶で2色。④赤橙グループから1階外壁の薄い赤橙色1色の合計3色で構成しています。窓枠などの白は無彩色なので色数には含まないで考えます。

点対象の2グループから選ぶ(補色同士)
色相環の①黄グループと⑦紫グループなどのように、点対称同士の組み合わせです。それぞれのグループには人間と同じように色の性格があり、黄と紫はお互いに正反対の性格を持ち合わせていることから、同じ広さにするとチカチカして見えたり、お互いの色が正確に見えにくいこともあります。薄い色と濃い色で組み合わせたり、片方は小さい面積で組み合わせるなどして、お互いがケンカしないように注意が必要です。店舗などの商業施設向けです。


このカラーチャートは1グループが7段階のグラデーションですが、知識や経験のある皆さんの場合は、もっと無数の色で構成を考え、参考にしていただければよいと思います。
どんなイメージにしたいか考える
「どんな色をメインに選び、どの色と組み合わせたらいいのかな?」なんて考えると難しいですよね。カラーコーディネートを考える前に、どんな素材を使いたいかを決めることから始めてみましょう。使いたい素材が決まれば、メインに使いたい素材、サブに使いたい素材に分け、色決めに入っていくと決めやすくなります。
素材選びをするときに、どんなイメージにしたいのかを想定してみるのも楽しくなります。
少し色選びから離れてみましょう。
どんな庭にしたいかイメージする方法をご紹介します。
1. イメージを形容詞(イメージワード)にしてみる
まずは、「どんな庭にしたいか!?」で思い浮かぶことを形容詞や形容動詞などにして書き並べてみましょう。例えば、「楽しい」、「明るい」、「可愛らしい」などです。
このように、イメージを書き並べていき、カラーイメージをつくっていきます。
2. 形容詞からカラーイメージを決める
この形容詞がイメージワードになり、カラーバリエーションを決めるきっかけになります。ですが、カラーやイメージは感覚的なところが多く、頭で考えることは難しいですよね。そこで、感覚的に書き並べた形容詞を、イメージキーワードに分類してみました。
◯ナチュラル:なじみやすい 暖かみ くつろいだ 柔らかい
◯ナチュラルモダン:ナチュラルにプラスして直線的な
◯カジュアル:楽しい 華やかな 活動的な 鮮やかな 軽快な 子どもっぽい
◯エレガント:ナイーブな 優雅な 穏やかな 優しい しみじみとした
◯クラシック:伝統的な 堅実な どっしりとした 高級感のある 豪華な
◯シックモダン:気品のある 素朴な 地味な 無機質な
◯和モダン:シャープな 落ち着きのある 品格のある 厳粛な
◯シンプルモダン:シャープな 素朴な 単調な 無機質な
◯クリア:涼しい 爽やかな すっきりした シンプルな リゾート風な
各イメージキーワードは何となくわかると思います。それを、私の考案ですが、その意味をエクステリアに合ったイメージにして解説してみました。
◯ナチュラル:自然素材を使った暖かみのあるイメージ
◯ナチュラルモダン:ナチュラルをシャープにしたイメージ
◯カジュアル:楽しく明るい軽快なイメージ
◯エレガント:穏やかで優しいフェミニンなイメージ
◯クラシック:落ち着きのある重厚感で高級なイメージ
◯シックモダン:無機質でシンプルなイメージ
◯和モダン:落ち着きと品格のあるイメージ
◯シンプルモダン:洗練されたシンプルなイメージ
◯クリア:爽やかでスッキリしたイメージ
このように、カラーコーディネートのイメージをきっかけに、カラーバリエーションを考えていくと、統一感が生まれてきます。
イラストで見るイメージキーワードとカラーバリエーション
それでは、簡単で分かりやすい、カラーイメージキーワードにあったエクステリアのカラーバリエーションをご紹介します。言葉のみでは難しいのでイラストを参考にしてみてください。
ナチュラルなエクステリア

自然素材を使った柔和なイメージ。
①黄グループの木のドア、塗り壁と、表札の台の枕木で同系色の配色に加え、アイアン製の表札文字やポストで全体を引き締めます。
カジュアルなエクステリア

明るい色調の中にセルリアンブルーのアクセントで軽快で楽しいイメージ。
①黄グループの住宅の壁をアイボリー(象牙色)と③橙グループの玄関ドアとその脇の袖壁は類似色同士の組み合わせで明るい色調にしています。床面には①と②の市松模様でリズミカルな軽快さを、バルコニーの脚とつながる花壇にはビビットカラー(鮮やかな色)を配置することで、楽しいイメージを演出しています。
エレガントなエクステリア
ワインベージュを基調にした穏やかで優しいイメージ。
④赤橙グループのワインベージュの住宅壁やアプローチ床と、その濃い色の門柱、塀のレンガタイルで構成しています。色むらのあるレンガタイルと不揃いの目地で穏やかさを演出します。
クラシックなエクステリア
茶系レンガタイルで落ち着きと重厚感のあるイメージ。
②黄橙グループの明るい外壁吹付、暗いレンガタイルの同系色(同一色)同士の配色です。レンガタイルのエクステリアで安定感を出し、重厚なイメージを出しています。門袖前のポール照明のディープグリーン(濃い緑色)をワンポイントにするとよく似合います。
シックモダンなエクステリア

無機質なモノトーン構成でシンプルなイメージ。
外壁の黒いボーダータイル、床のグレーのタイルや土間コンなどの濃淡で、モノトーン(無彩色)構成になっています。黒の玄関ドアをバックに、透ける感じの明るい穴あきブロックのコントラストが、程よい立体感を出しています。赤い車も、モノトーンの中でアクセントカラーになっていてオシャレです。
クリアなエクステリア

涼し気なリゾート風でスッキリしたイメージ。
アイボリーをベースにして白いボーダーでクリアな感じを出しました。左手のペパーミントグリーンのルーバー、奥のパラソルや右手を紺色のアクセントカラーにして、涼し気なリゾート風イメージになっています。
まとめ
カラーコーディネートの考え方はいかがでしたか? 今回の内容は、色の知識がほとんどだったので、難しいところもあったと思いますが、イメージキーワードからカラーコーディネートをすると、まとまりのあるカラーバリエーションをつくることができます。もちろんデザインとカラーをバランスよく取り込むことも必要になってきます。
次回は、イメージキーワード「ナチュラル」をテーマにイラスト付きでデザインとカラーコーディネートをご紹介していきます。お楽しみに!
Credit

文&イラスト/松下高弘(まつしたたかひろ)
長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数