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- 【プロが解説】憧れの観葉植物「ビカクシダ」初心者でも失敗しない育て方
おしゃれなインテリアのアイテムとしても爆発的人気の“吊せる観葉植物”ビカクシダ、別名コウモリラン。鹿の角に例えられる株姿が個性的で、天井から吊したり、壁にかけて飾れることから、ガーデニング初心者でも育ててみたくなる魅力的な植物です。小さな株から巨大な株までサイズも品種もバリエーションが多い、ビカクシダ。何を選び、どうしたら失敗しないのか、その育て方のコツと品種選びについて、プロが徹底解説します。
目次
ビカクシダの基本情報
科属:ウラボシ科ビカクシダ属
学名:Platycerium bifurcatum
自生地である熱帯の地域では、樹木の幹などにへばりつくように生育する着生のシダです。鹿の角にも例えられるユニークな姿から、コウモリランなどの別名があります。
ビカクシダの仲間は、形と役割が違う2タイプの葉があるのが特徴です。前に長く伸びて目立つ胞子葉(繁殖葉)は、成熟すると繁殖のための胞子が葉裏につきます。株元に張りついているような貯水葉(栄養葉)は、幾重にも重なって落ち葉や雨水を受け、水分と養分を貯め込む独特な性質があります。
ビカクシダの仲間は18種類ほどが知られています。しかし、一般に多く流通するのは、太平洋諸島、インドネシア、オーストラリアが原産で、ビカクシダの和名があるビフルカツムP. bifurcatumです。ちなみにビカクシダの名は、ビカクシダ属の植物の総称として使う場合もあります。
ビフルカツムは他の種類に比べて乾燥や寒さに強いので、一般家庭でも育てやすい植物といえるでしょう。また、他の種類と比べて安価で流通しているものもあるので、初心者が気軽に栽培に挑戦するのに最適です。ここでは、丈夫で育てやすいビフルカツムを中心に解説します。
ビカクシダの入手ポイント
ホームセンターや園芸店などで、鉢植えやコケ玉、板付けの株などが販売されています。主な流通時期は春から夏ですが、大型店では季節を問わず、いつでも売られていることも多いようです。葉に枯れた箇所やしみなどがなく、がっしりとした印象の株を選ぶようにしてください。ビフルカツム以外の種類を確実に入手するには、専門店などのネット通販を利用するのもよいでしょう。
適した栽培環境と置き場所
ビフルカツムは環境適応性が比較的高く耐陰性もありますが、本来は日当たりのよい場所を好みます。半日以上は日光に当てるようにしますが、閉め切った室内の日当たりがよい場所は、葉焼けするので注意してください。ただし、暗すぎる日陰に置くとだんだん弱って葉が小さくなり、枯れてしまうので避けましょう。
また、夏に風通しが悪くて温度が上昇しやすい場所でも、葉焼けすることがあります。午前中だけ日光が当たる場所か、30%程度の軽い遮光下に移動させるとよいでしょう。戸外で木の幹などに吊り下げるのが理想的で、適度に風に当たることで株も引き締まって育ちます。
ビフルカツム以外のビカクシダの仲間は、多くの種類が直射日光に当てると葉焼けするので気をつけましょう。遮光カーテンなどを利用したり、木陰のような50%くらいの遮光下に置くとよいでしょう。
湿度に注意
高湿度な環境を好むので、室内でエアコンなどの風が当たるような場所には置かないようにしてください。特に風が直接当たるとすぐに枯れてしまいます。エアコンを作動させている場合も空気が乾燥するので、湿度を保つため、こまめな霧吹きが必要です。
ヘゴや木製の板に着生させた株を湿度が低い場所に置いておくと、乾燥によって生育が悪くなることがあります。その場合、水槽や水瓶などのすぐ上に置くと改善されます。
注意事項のまとめ
- 暗い場所から急に直射日光が当たる場所に移動すると葉焼けします。ネット情報などで日光浴をすすめる記述を見かけますが、その方法はNGです。移動する場合は、1カ月くらいかけて徐々に葉焼けしにくい朝の日光から慣らすようにしてください。
- 屋外で風当たりの強い場所は、乾燥で葉が著しく傷んだりします。
- 屋外で育てる場合は、台風など強風に当たると葉が傷みやすいので注意してください。
水やりのコツ
鉢植えのビカクシダは、春から秋は用土の表面が乾いたらたっぷり与え、冬は用土が完全に乾燥したら与えます。受け皿に水を貯めたままにすると根腐れします。水やり後に受け皿に貯まった水は、数時間以内に捨ててください。空気中の湿度は高めを好みますが、用土が常に湿ったままだと根腐れするので気をつけましょう。
ヘゴや木製の板などに着生させた株や小さな株は、水切れしやすいので十分注意してください。初心者の方や小さな株を栽培する場合は、鉢植えのほうが水切れにしにくく失敗が少ないのでおすすめです。
板などに着生させた株の水やり
水やりのタイミングは、株と板の間に挟まっているミズゴケが乾いたら、を目安にしてください。季節や天候によってタイミングは変わるので、できるだけ毎日チェックするのがおすすめです。
水やりは、根の部分全体に水がよく浸透するようにたっぷりと与えましょう。また、ミズゴケは乾燥すると水をはじいて1回の水やりでは浸透しないことがよくあるので、数分程度の間隔を空けて複数回水やりするとよいでしょう。
着生させた株の水やりで最も失敗する可能性が高いのは、水不足です。小株ほど乾燥しやすく、また室内では水やりが霧吹きだけだったり、与える回数が少なくなる傾向があります。
一方、水を毎日与えて過湿にしすぎると、根が腐って最悪の場合枯れてしまうことがあります。大株は過湿になりやすい傾向があり、また梅雨時や秋の長雨に当たると腐ることがあるので注意してください。
ビカクシダに施す肥料
4~10月の成長期に、貯水葉の裏に油粕などの肥料を与えると生育が旺盛になります。
ビカクシダの冬越し方法
ビフルカツムは乾かし気味に管理すれば0℃近くまで耐えます。ただし、葉を美しく保つには5℃以上を保つようにしてください。室内の日当たりのよい場所に置き、用土が乾いてから水を与えれば、容易に越冬します。
他の種類は寒さに弱いものが多いので、最低温度を10℃以上に保つようにしてください。
冬の暖房した室内は空気の乾燥が激しいので、前出の置き場所で解説した通り、注意してください。
関東地方南部など、霜がほとんど降りない地域では、屋外で越冬することもあります。ただし、数年間隔の強い寒波でひどく傷むこともあるので、おすすめできません。
手入れ
大株になって葉が混んできたら、混み入った葉や縁が枯れてきたなくなった葉などを間引きして風通しをよくすると、日光が全体に当たって株が引き締まります。またカイガラムシなどの害虫類もつきにくくなります
植え替え
植替えの適期は、5~8月。鉢植えで育てている場合は、根詰まりすると生育が衰えるので、1~2年に1回は植え替えてください。板などに着生させる場合は、植え込み材のミズゴケをしっかり敷いて根が伸びる場所を確保するようにしましょう。
気をつけたい害虫
風通しの悪い室内で管理するとカイガラムシが発生します。一年中室内で楽しむ場合は、こまめに観察するようにしてください。一度発生すると跡が残って葉が汚くなり、観賞価値が下がってしまいます。また、カイガラムシは薬剤が効きにくいので、発生したらブラシなどでこすって落とします。その後に適用のある薬剤を散布してください。
丈夫でおすすめのビカクシダの種類
ウィリンキー
ジャワ島原産でビフルカツムの亜種とされますが、独立種とする見解もあります。ビフルカツムと比較すると上下に伸ばしたような株姿で、葉はより銀色に近く大型になります。寒さには強くないので注意してください。他の育て方は、ビフルカツムに準じます。
ビーチー
オーストラリア東部原産でビフルカツムの亜種とされますが、独立種とする見解もあります。ビフルカツムより日光が当たる場所が適します。銀白色の葉が美しく、日光をよく浴びた株は剣が刺さったような姿になり特徴的です。風通しのよい場所で直射日光に当てて育てるとよいですが、真夏は午後に葉焼けしやすいので注意してください。
ネザーランド
ビフルカツムの交配種で、さらに丈夫ともいわれている品種です。ビカクシダには交配種も多く存在します。
初心者でも失敗しない栽培ポイント
- 栽培が難しい種類に挑戦せず、最も一般的な種類(ビフルカツム)を育てること。
- 大株は過湿による根腐れに注意するが、板付けの株や小株は乾燥に注意すること。
- 小株は鉢植えで育てると水やりの手間が減り、失敗が少ない。
- 暖房や冷房時の空気の乾燥に注意すること。
以上のことをふまえて育てれば、失敗は少ないでしょう。個性的な株姿が魅力のビカクシダを育てて、さまざまに飾って身近に楽しんでください。
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