-ガーデンライフコーディネーター-
ローズと植物のある暮らしから、心と身体、意識を整える生き方を提案。自然と調和するバラの庭や菜園づくりを通して、人と地球の健康を育む活動を行う。福祉事業所での食用バラ栽培により、「生物多様性アクション大賞2019」審査委員賞受賞。
持田和樹の記事
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ガーデンデザイン

英国でも話題! 来春に向けてつくるメドウガーデン
英国王室が愛する「メドウ」とは 英国の植物学者、ナイジェル・ダネットらがつくったロンドン塔のメドウ。paula french/Shutterstock.com メドウとは野の花が咲く野生の花園のこと。多種多様な花が入り交じり、風にそよぐ風景は、まるでリバティプリントのファブリックを広げたような素朴な愛らしさです。英国にはヒナギクやキンポウゲなどが咲き乱れる愛らしいメドウがそこここにあり、チャールズ国王は、自身の私邸ハイグローブの庭にもメドウガーデンをつくるほどの大ファン。しかし近年の調査で、英国では過去75年間に97%ものメドウが消失したという事実が判明しました。多種多様な植物が生育するメドウは単に美しいだけでなく、あらゆる昆虫や生き物の棲み処であり、生物多様性のゆりかごでもあります。長年、環境保護活動に心血を注いできたチャールズ国王(当時は皇太子)は、メドウの急速な消失を深く憂慮。 ロンドン塔に出現した巨大メドウ「スーパーブルーム」。paula french/Shutterstock.com 2012年、すべての郡に少なくとも1つはメドウをつくる「コロネーション・メドウ」プロジェクトを開始しました。そして、昨年2022年にはメドウを愛するエリザベス女王の戴冠70年を記念して、ロンドン塔のお堀に「スーパーブルーム」と名付けた巨大メドウがつくられました。一年草、二年草、多年草など2,000万粒の種子を播き、英国をあげてメドウガーデンを推進しています。 チャールズ3世戴冠式の招待状にも英国のメドウの草花や生き物が描かれています。いくつお花を見つけられますか? Photo/BUCKINGHAM PALACE メドウガーデンに適した庭環境 そんな英国で話題のメドウガーデンを日本で実践している私なりのつくり方をご紹介します。規模はもちろん小さいですが、さまざまな花が一斉に咲き揃い、蝶やミツバチが行き交う様は、本当に心穏やかで幸福感あふれる風景です。さて、メドウガーデンをつくる前に、大切なことを2つあげます。 適材適所・植物特性を考慮する キンポウゲやアザミ、グラスが入り交じる英国のメドウ。明るく開けた場所。 ①草原や野原を知ること 草原や野原を思い浮かべてみてください。上の写真のように木があまりなく、一面に草花が広がり、風に揺れている風景が思い浮かぶと思います。つまり、日当たりと風通しがよく、水はけがよいことがメドウガーデンにとって最良の条件です。大きな樹木や建物で、日陰が多くできる場所や風通しの悪い場所などでは、メドウガーデンは難しいでしょう。しかし、コンテナを利用して日当たりを確保できれば、小さくともメドウガーデンのエッセンスを味わうことは可能です。 ②自分の庭の環境を知ること ①を念頭に、ご自身の庭のどこがメドウガーデンに向いているかを考えてみましょう。メドウガーデンで使う植物は、日当たりを好む草花です。その植物を半日陰などのシェードガーデンで育てても、弱々しくヒョロヒョロとした茎になり、どこもかしこも支柱が必要になるなどとても手がかかるうえ、美しく咲いてくれません。植物には適材適所があるので、向かない場所では無理してメドウガーデンを選ぶことはおすすめしません。幸いなことに日本には日陰で美しく生育する植物もたくさんあるので、もしご自身の庭が日陰環境ならば、こちらの記事をご参考に。 ミックスシードで簡単にできるメドウガーデン 白い花だけを集めたホワイトフラワーミックスガーデン。 メドウガーデンのポイントは、まず植物が「多種多様」であることです。そして、多種多様な植物を一斉に咲かせるためには、開花時期が揃っていることが大事。難しそうですが、ミックスシードを使えば簡単です。9〜10月には、各種苗メーカーから春に咲く花の種のミックスが販売されるので、それを利用すると簡単にメドウガーデンが作れます。気温が高くなると蒸れなどでミックスフラワーが上手に育たないことがあるので、春に咲くミックスシードがおすすめです。また、買ってきた苗を植え込むよりも、種子から育てて自然の風雨にさらされたほうが、よりナチュラルな仕上がりになります。メーカーによってはホワイトガーデンMIXやピンクガーデンMIX、ブルーガーデンMIXなど、色彩に統一感を持たせたミックスシードもあるので、好みに合わせて選ぶと楽しいですよ。 草丈が似通った植物が集まるのもメドウの特徴。ian woolcock/Shutterstock.com 草花を熟知している方であれば、ミックスシードを買う必要はありません。好みの草花の種子を自分でブレンドすれば、満足度も上がるでしょう。組み合わせのポイントは、なるべく草丈を揃えることです。野原の植物は、似たような草丈のもので構成されており、どれか一つが突出して高かったり、ボリュームがあったりすることはありませんね。特に小さい庭では突出するものがあると、その陰に他の植物が隠れて咲かないことがあります。すると、結果的に単一の花の風景になってしまい、メドウになりません。それぞれの場所や条件に応じて、一つひとつの草丈にも留意しながら選びましょう。 海外のワイルドフラワーミックスには少し注意 特定外来生物に指定されているオオキンケイギク。Vipul1989/Shutterstock.com 海外から輸入されたワイルドフラワーミックスの中には、日本の植生に影響を及ぼす外来種も交じっていることがあります。特に現在、日本で野生化して特定外来生物に指定されているオオキンケイギクやオオハンゴウソウなどの近縁種は避けたほうが無難です。また、日本では栽培禁止のケシの花の種子も交じっていることがあるので注意し、咲いてしまった場合は、抜かずに保健所へ速やかに連絡しましょう。故意でなければ罪に問われませんのでご心配なく。 メドウガーデンをより楽しむための秘訣 オールドローズも咲くメドウガーデン。 より上級者向けのコンビネーションは、球根植物や多年草、宿根草と組み合わせる方法です。春咲き種子ミックスは、耐寒性一年草の組み合わせが多く、それらの開花期の前後はさびしい風景になりがちです。そこで、ミックスシードが咲き出す前の早春はスイセンやムスカリなどの球根植物を、ミックスシードの花後の初夏にはシャクヤクやアイリス、サンジャクバーベナ、エキナセアなどの多年草、さらにバラなどの低木も入れると、長期間バトンタッチしながら草花が咲いてくれます。 名脇役! イネ科の植物が大活躍 花の間に穂を伸ばすイネ科の植物がガーデンのアクセントに。 私のメドウガーデンではイネ科の植物も取り入れています。種子を播いたわけではなく自然に生えたものです。海外ではオーナメントグラスとして人気が高く、日本のイネ科の植物の美しさに感動するガーデナーも少なくありません。イネ科の植物は風に揺れる動きと、カサカサという音色が美しく、目を閉じると草原にいるかのような雰囲気を醸し出してくれます。そこに風に乗ってバラや草花のほのかな香りが漂うと、五感を刺激して極上の癒やしを味わえます。 イネ科の植物やワイルドフラワーで構成された英国の庭。 また、イネ科の植物があると、花のシルエットを浮き立たせるガーデンの引き立て役にもなり、程よい抜け感がメドウガーデンとしての美しさを格段に上げてくれます。英国ではイネ科の植物を生育させた後、デザイン的に刈り取ることで美しいグラスガーデンをつくっているケースもあります。 イネ科の植物を取り入れる際の注意 ただし肥沃な土壌だと想像以上に育ってしまうので、取り入れる前にご自身の環境でどの程度育つか検証することをおすすめします。育ちすぎる場合は、肥料を控えたり、早めに剪定するようにします。また、水はけがよくなるよう土壌改良するとよいでしょう。 【オススメのイネ科プランツ】 イヌムギ、カモジグサ、ネズミムギ、コバンソウ、オニウシケノグサなどが私のおすすめ。ちょっと郊外の道端や車道脇などをよく観察すると、ほかにも美しい品種がたくさんありますので、お気に入りの植物を見つけて取り入れてみると楽しいですよ。 メドウガーデンで害虫対策⁉ じつは、メドウガーデンをつくることで害虫が減る効果も期待できます。多種多様な草花を植えると、それらの花の蜜を求めて虫たちが集まります。その虫たちを捕食する生き物も増え、食物連鎖が健全に機能し、害虫の被害が軽減されるのです。 私はバラを栽培しているので、バラの周りに蜜源植物を植えることで害虫対策をしています。特に小さく見つけ難い厄介なバラゾウムシをクモが食べてくれるのには大助かりです。生き物たちがガーデニングの手助けをしてくれますし、彼らの営みを愛でる楽しみも増えて一石二鳥です。 メドウガーデンは種取りも醍醐味 メドウガーデンに使われている草花は一年草が多く、種子をつけるものが多いです。その種子を採取して、また秋に播くこともできます。ほとんど知られていませんが、植物はその土地の記憶を種子に残すというユニークな性質があります。つまり自分で育てた草花の種子からまた育てれば、よりその土地に馴染み、育てやすい草花になるのです。虫たちのおかげで自然交配する花もあるので、今年はなかった花色が来年は出たりすることもよくあります。そこが自家採種の面白さでもありますので、ぜひチャレンジしてみてください。
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ストーリー

【嫌われ者たちの大活躍】庭を潤す雑草の打ち水効果/新連載ローズメドウレポート
猛暑に活躍する雑草たちの働き 猛暑でも潤いあふれるバラ。 猛暑で野菜の生育にも影響が及び、夏野菜の高騰が懸念されています。私の暮らす埼玉県深谷市も、連日35℃を超す猛烈な暑さを記録しており、趣味で野菜作りを楽しんでいる私の母も、「暑さで野菜の葉がチリチリになってしまう!」と水やりにおおわらわです。一方、私が近くで作っているローズメドウは、一切、水やりをしていません。でも、バラたちはみんな、真夏も瑞々しい葉を展開しています。土はいつも適度に湿っており、朝のガーデンはひんやり、しっとり、とても快適です。なぜ母の畑は乾き、水やりもしない私の庭は潤っているのか。その違いは、雑草です。 植物に起こる「溢水」とは 左はバラの葉。右はイネ科の雑草。溢水による滴が葉のそこここに輝いている。 「溢水」という言葉をご存じでしょうか。あふれる水と書いて「いっすい」と読みます。意味は、まさに水があふれることです。河川などがあふれることにも用いられる言葉ですが、じつは植物でも溢水が起こります。植物の場合の溢水は、葉の先から水がこぼれることを指します。この溢水は、朝露とよく勘違いされることがありますが、朝露とは別の成分です。朝露は空気中の水分が葉っぱについたものですが、溢水は植物が根から吸い上げた水で、葉にある水孔という穴から植物が過剰な水分を出しているものです。この現象は溢泌(いっぴつ)とも呼ばれ、イネ科の植物で顕著です。 バラを潤す雑草の溢水 私のローズガーデンでは雑草をほとんど抜いていません。雑草にはイネ科の植物が多く、私の庭では溢泌現象がそこここで起きています。これによりバラの株の周りは毎朝、霧を吹いたように湿っています。まるで天然の打ち水のように雑草たちがバラに水分を与えてくれるため、バラ自身も溢泌現象を起こすほど潤って、猛暑でも瑞々しい葉を展開しています。 地温の上昇や乾燥も抑える雑草の効果 雑草が「邪魔な存在」として嫌われるようになったのは、いつからでしょうか。野菜畑では、雑草が養分を奪って野菜の収量に影響を及ぼすからなのでしょうが、雑草の働きをよく見てみると、メリットもかなり多いように思います。雑草は地中深くに根を張り、土の中に水や空気の通り道を作ってくれますし、土の保水力も保ってくれます。特に、この異常な暑さが続く日本の夏では、雑草の働きは貴重です。溢水による打ち水効果に加えて、土の表面温度を抑える役目も果たしてくれます。何も生えていないむき出しの土の表面温度は、真夏は60℃近くまで上がりますが、植物で覆われた場所は30℃台を保ちます。雑草をきれいに抜いている母の畑は、まさに灼熱地獄。野菜の葉がチリチリになって当然なのです。 雑草も昆虫も共存する有機無農薬のバラの庭 それに、雑草も一つひとつをよく見ると、意外と美しいのです。特にイネ科の雑草はエノコログサもカゼクサもススキの類も、スッと細い茎を伸ばして穂を風に揺らし、風情があります。バラの株に覆いかぶさるように旺盛に茂るものは、時折、適度に刈り取り地面に敷きます。こうしておくと地面が乾きませんし、昆虫や微生物の棲処にもなります。私のローズメドウはこんな風に、雑草も昆虫もみな共存する庭です。草取りも薬の散布もせず、施肥もほとんどしないので、とってもラク。美しい花を見て、香りを楽しみ、味わい、バラを堪能しています。 バラと雑草を一緒に育てているなんて、私の庭はちょっと珍しいガーデンかもしれません。バラ栽培の教科書には、雑草は抜くべきだし、昆虫は駆除するものとして解説されていますから。そして私自身も、かつてはそれらと格闘してきたのです。それがどうして共存という道を選ぶようになったのか。そのきっかけは、私の仕事場にあります。 有機無農薬で食用バラ栽培への挑戦 障害福祉サービス事業所「深谷たんぽぽ」の食用バラの畑。国連生物多様性の10年日本委員会が主宰する「生物多様性アクション大賞2019」の審査委員賞を受賞。 私は普段、障害福祉サービス事業所で社会福祉士として働いています。そこでは主に、知的障害をもつ利用者の方たちと一緒に、食用のバラを栽培しています。これを販売した売り上げは、利用者の方々の賃金となります。事業所にはさまざまな彼らの仕事があり、バラ栽培はその一つです。 事業所でバラ栽培を始めたきっかけは、足利フラワーパークのシェフからの依頼でした。「持田君は園芸が得意と聞いたけど、食用の花を福祉事業所で作れませんか?」と声をかけていただきました。私は昔からガーデニングが好きで、自宅の庭や畑でさまざまな植物を育ててきましたが、花を食用として栽培したことはありませんでした。ですから、どんな花を栽培したらいいのかも分かりませんでした。そこで、これまで最も栽培経験のあるものを選ぶことにしました。それが私の場合、バラだったのです。自宅でずっと育てていた四季咲きのバラなら、年間を通じて収穫が見込め、定期収入として成立させられるだろうと考えました。所長の後押しもあり、事業所初の食用バラ栽培生産がスタートしました。 しかしそれは、まさしく茨の道でした。自宅で観賞用に育てていたバラ栽培と、食用のバラを育てるのとでは勝手が大きく違いました。まず、食用として出荷するバラの花びらは、傷がついてしまうと商品価値がなくなってしまいます。そして、病害虫に対して薬品を使うこともできません。誤解のないようにお話ししておきますが、バラの病害虫に効果のある薬品はありますが、「食用生産」という前提でのバラ栽培に適用のある薬品は日本にはありません。ですから、必然的に我々のバラ栽培は無農薬有機栽培という道を選ぶことになりました。土壌改善や食用バラに向く品種の選定など、さまざまな難関があった中で、最も大きな壁は、この無農薬栽培による虫たちとの戦いでした。 終わらない病害虫との戦い。巧妙な害虫たち 前述のように、私たちは薬品を使用せず栽培することにしたので、害虫対策として物理的に虫がバラに近づけないよう、ビニールハウス内でバラ栽培を始めました。最初の5月は美しく花が咲き、収穫も順調でした。しかし、夏になると害虫が増え始め、夕方には小さなビニールハウスにもかかわらず、おびただしい数の蛾が卵を産み付けようと飛んできました。自分で張り直した防虫ネットにはわずかな隙間があり、その隙間をかいくぐり、ビニールハウスの中に侵入してくるのです。1匹でも中に入ってしまったら、もう終わりです。その1匹が数百個の卵を数カ所に産み付けて回るため、幼虫が孵化した途端、私たちは虫取りに明け暮れることになりました。あるときはヨトウムシの幼虫からバラのつぼみを守ろうと、一輪一輪にお茶のパックをかけて回りました。しかし、お茶パックを外してみて愕然。お茶パックの中で悠々と幼虫がつぼみを食べていたのです。他のバラもよく観察してみると、なんとつぼみの一つひとつに卵がすでに産み付けられており、私は昆虫の巧妙な戦略に驚くとともに絶望感を味わいました。 「ないない尽くし」だからこそ辿りついた共生という選択 福祉事業所では時間はない。お金もない。労力もない。この厳しい条件下で難易度の高い無農薬栽培で、さらに難易度の高い食用バラを成功させるのは、もはや不可能だと思いました。精神的にも肉体的にも疲れ果て、諦めかけたとき、ふと美しく咲くバラに目がとまりました。虫にも食べられず、芳しい香りを放ってたおやかに咲くバラ。それは私たちが虫と格闘してきたビニールハウスの外で咲いていました。 「あれ?!外のバラは病害虫にやられていない!?」 そのことに気付き、入念に観察をしました。すると、ビニールハウスの外ではヨトウムシの幼虫を食べる生き物がじつに多いことが分かりました。クモ、アシナガバチ、カエル、鳥…。ヨトウムシにとって、ビニールハウスの外は天敵がいっぱいいたのです。虫から守ろうとしたビニールハウスは、むしろ自然界の食物連鎖を妨げ、私たちは自分で自分を苦しめていたことに気付きました。そこで、私は思い切ってビニールハウスを取っ払い、生き物が行き来しやすい環境を作りました。これは正直、バラが全滅する覚悟で挑んだチャレンジでしたが、驚くことに害虫被害が激減しました。あれほど苦しめられた害虫被害が嘘のように減り、自然の摂理がどれほど偉大であるか身をもって知りました。 (左)畑に咲いたジニアの花に潜むクモ。バラを食害する幼虫を食べてくれる。(右)バーベナの花は蝶を呼び、蝶はあらゆる虫を食べてくれる鳥を呼ぶ。 自然の循環の中に無駄な命は一つもない (左)バラの花粉を食べるマメコガネ。幼虫が根を食害するので、見つけたら手で取る。(右)多くの虫を食べる肉食昆虫のカマキリは有機無農薬バラ栽培の強力な助っ人。 この経験から、私は自然のシステムの中には、我々人間が活用できるものがとてもたくさんあることに気づきました。それを見つけ出して利用させてもらうほうが、生き物を排除したり、自然をコントロールしようとするより、はるかに労力が少なく効率的だと悟りました。そしてこの方法は、自然と闘おうとするより、精神的にもとても穏やかでいられるのです。それは人間もまた、自然の一部だからではないかと私は思います。自然界には食物連鎖があり、循環の中でバランスが保たれています。人間もその循環の中にいるはずですし、害虫と呼ばれる生き物も、それを食べ、頼りにしている生き物もいて、循環のバランスの中では皆大切な役目を担っているのです。「無駄な生命は一つもない」ということを、私はバラ栽培を通して体感しました。 自然が起こす「奇跡」を発見する楽しみ 以来、私たちは生き物が暮らしやすい環境作りを優先してバラ栽培をするようになりました。そして、無農薬での食用バラ栽培に成功し、今ではたくさんの出荷先を抱えるようになりました。不可能と思われた私たちのバラは、「奇跡のバラ」と呼ばれています。奇跡とは、神様が起こす不思議な出来事を指す言葉ですが、私たちの奇跡は自然科学に裏付けられた明確な理由があります。裏を返せば、自然には人が奇跡と呼びたくなるほど心を震わせる事象が、多分に秘められているということかもしれません。私自身、バラ栽培を通して奇跡をいくつも発見してきました。冒頭にご紹介した「溢水」も、その一つ。草の縁についた無数の水滴が、赤い朝日にキラキラと輝くローズガーデンは、瞬きを忘れるような光景です。これからこの連載を通して、私自身がガーデニングで発見した自然の奇跡を、皆様と共有していければ幸いです。




















