-ガーデンライフコーディネーター-
ローズと植物のある暮らしから、心と身体、意識を整える生き方を提案。自然と調和するバラの庭や菜園づくりを通して、人と地球の健康を育む活動を行う。福祉事業所での食用バラ栽培により、「生物多様性アクション大賞2019」審査委員賞受賞。
持田和樹の記事
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育て方

【バラの無農薬栽培】長年の経験から見えた病気の意外な性質と病気対策を解説
時間がないからこそ薬剤無散布でローメンテナンスな庭づくりを 私はバラの無農薬栽培を長年続けてきました。初めてバラを育て始めた16年前から有機無農薬栽培に関心があり、化学的な農薬は一切使わず、木酢液やニームオイルなど自然由来のものを使用して病気対策をしてきました。当時は実家で暮らしていたため、仕事前や仕事終わり、休日と手入れをする時間があり、病気対策に時間をかけられたのです。現在は実家から離れ、アパートに住んでいるので庭がありません。親戚に元田んぼだった畑を借り、週末に隣町まで出かけてバラ園と菜園づくりをしています。 実際にやってみて感じたのは、庭や畑は目の前にあるかないかで、難易度が全く違うということです。 私の場合は、庭まで車で20分かかり、週末の午前中しか手入れをする時間がありません。したがって、丁寧に病気対策をしている時間も余裕もなく、自然由来のものを使用したそれまでのやり方は全く通用しませんでした。だからこそ今は、「病気対策に何も散布していません」! むしろ散布する余裕がありません。 一般に病害虫対策に有効とされる散布剤は、農薬か天然成分かを問わず、一切使用していません。一読して信じられないかもしれませんが、本当に時間がなく、何もしていないのです。それでも美しいバラの花畑をつくることができています。 「植物本来の力を発揮させれば、何もしなくても健康に育てられる」。それが、私が実感していることです。病気という固定観念や先入観に縛られることなく、見方や捉え方を変えることで、よけいな労力を減らす。これが私のローメンテナンスな美しい庭づくりの秘訣です。 今回は、経験から学んだことを基に、私なりの病気対策についてお話ししたいと思います。 「多様性」が病気の発生を抑える鍵 皆さんは「連作障害(れんさくしょうがい)」という言葉をご存じでしょうか? 特に野菜作りでは、この連作障害という言葉をよく耳にします。同じ場所で同じ種類の植物(または同じ科に属する植物)を繰り返し栽培すると土壌環境が悪化し、植物の生育に支障が出るという現象です。 植物は、成長の過程で特定の栄養素を多く吸収します。同じ植物を繰り返し栽培すると、その植物が必要とする特定の栄養素(窒素、リン、カリウムなど)が不足し、土壌の栄養バランスが崩れます。結果として、栄養が偏った土壌になるため、植物がうまく成長できなくなります。 Borri_Studio/Shutterstock.com また、連作を続けると特定の植物に寄生する害虫や病原菌が土壌中に蓄積され、次の栽培シーズンに同じ植物を植えた場合、それらの病害虫が急激に増殖し、植物に悪影響を与えます。特に、根腐れ病や線虫などの土壌病原菌や害虫は、連作によってその数が増え、植物の健康を脅かします。 例えば、バラ園でバラしか植わっていないような状況は、土壌の栄養バランスや生態系が乱れやすく、病気が多発しやすい環境といえます。一方で自然界では、多種多様な植物が育つことで栄養バランスや生態系が整い、病害虫の発生を抑制しています。このことから分かるとおり、多様性こそが病気の発生のみならず、害虫の抑制にもつながるのです。 私のバラ園では、バラ以外にも多種多様な草花を育てています。栄養を奪われてしまうのではと心配する方もいると思いますが、多種多様な草花があることで土壌の栄養や微生物のバランスが整い、バラも元気に咲いてくれます。 ポイントは、同じ科の植物ばかり植えず、違う科に属するものも植えること。 私のバラ園では、セリ科のオルレア‘ホワイトレース’やパクチー、アオイ科のマロウ、シソ科のミント系、キンポウゲ科のオダマキ、マメ科のスイートピー、ボタン科のシャクヤク、アヤメ科のアイリス、キク科のシュンギク、イネ科の野草など、多様性を意識して、さまざまな植物を取り入れています。 そうすることで自然と病気の発生を抑えるだけでなく、美しい花畑のようなガーデンに仕上がり、一石二鳥です。 雨で消えたうどんこ病 うどんこ病が発生したバラ。Bunina Darya /Shutterstock.com バラの病気といえば、開花直前に咲かなくなる「うどんこ病」が有名です。この病気には実家の庭を手入れしているときにも悩まされ、あと少しで咲きそうなタイミングでうどんこ病にかかり、開花せずに終わるなんてことが何回もありました。 しかし、そのうどんこ病が薬剤散布せずに予防できると聞いたら、絶対に知りたいですよね! 私がうどんこ病の意外な性質に気づいたのは、ビニールハウスで育てているバラからでした。ビニールハウス内のバラは、毎年必ずうどん粉病にかかってしまうため、病気対策としてよくいわれる風通しをよくすることを行っていましたが、まるで効果がありません。しかし、外の庭に咲くバラはうどんこ病に全くかかっていないことに気がつき、なぜなのか観察したところ、ある事実に思い至りました! それは「雨が当たるか、当たらないか」です。 soohyun kim/Shutterstock.com 試しにビニールハウス内のバラに、株の頭から雨のようにシャワーで水をかけてみました。すると、明らかにうどんこ病の被害が減ったのです! そのときに「人間がお風呂で汚れを落とすように、自然界では雨が汚れを落とすシャワーになっているのではないか」と気がつきました。うどんこ病の原因はカビの1種です。カビが付着したままでは病気になるはずだと思い、バラに対して申し訳ない気持ちになりました。 そこで、ビニールハウスの屋根を外したらどうなるか試してみました。すると、うどんこ病が発生しなくなったのです! これはあまりにも衝撃的でした。なぜなら、私がいままでガーデニングの常識として教わってきた“雨が病気を運んでくる”とか、“植物に頭から水をかけるな”ということは、この現実とは真逆だったからです。 常在菌のバリアが病気を防ぐ そこで菌についての本を読みあさり、分かってきたことがありました。 それは、私たちの肌も植物の表面も常在菌が埋め尽くしており、常在菌のバリアで病気から身を守っているということです。病気のメカニズムの1つに、この常在菌のバリアが大きく関係しているのです。 分かりやすい例えをすると、菌の繁殖は椅子取りゲームと同じ仕組みです。 健康な状態ではよい菌が椅子のすべてを埋め尽くしており、悪い菌は座れないので病気にならない。しかし、健康状態が崩れ、よい菌が弱ったり、殺菌や消毒などで常在菌のバランスが崩れて空席ができると、病気の原因になる悪い菌が椅子に座り、増殖してしまうのです。 新型コロナウイルスが大流行したときに、アルコール消毒を熱心にしている人の手は常在菌のバリアが崩壊して、酷い手荒れが続出したことをご記憶かと思います。私たちの肌も植物にも、目には見えない常在菌たちが共生していて、健康を守ってくれているんですね。この働きを知ったときは、菌に感謝の気持ちでいっぱいになりました。 Alexandra Bobir/Shutterstock.com そのことから考えると、水道水をバラの頭からかけてもうどんこ病が消えなかったのは、塩素などの消毒液が含まれている水道水では、常在菌も一緒に殺菌していたからかもしれません。自然の雨には消毒液など含まれておらず、常在菌がたっぷりいます。この雨が、植物の常在菌バリアを綺麗に保っているのではないでしょうか。実家の庭でも、雨があまり当たらない軒下や壁際などのバラは、顕著にうどんこ病の被害が出ていました。 だからこそ、雨が当たりやすいように工夫しただけで、うどんこ病が確かに減ったのです。自然のメカニズムは本当に凄いなと改めて感じました。 そもそも自然界では消毒も存在しませんし、木酢液やニームオイルが空から降ってくるなんてことはあり得ないのです。だとしたら、じつは手を掛けず自然に近い環境にしてあげることが、一番の病気対策になるのではないかと、自然から学ぶことができました。それ以来、木酢液などの天然成分の散布剤も一切使用していません。 枯れる前にうどんこ病になる植物たち High Mountain/Shutterstock.com 早春に咲く紫色のホトケノザという野草があります。私の住んでいる地域では、春になると一面紫色に染まるホトケノザの絨毯が畑に現れます。まるで小さなラベンダー畑のように美しい光景です。 そのホトケノザが、一斉にうどんこ病になるときがあります。それが花の見頃を過ぎた頃。その後4月になると枯れて、5月にはすっかりなくなってしまうのです。 その経過を見て、植物は枯れないといつまで経っても種が落ちないため、次世代への交代を手助けしているのがうどんこ病ではないのかと感じました。うどんこ病の原因菌は土や落ち葉などにいる糸状菌というカビ菌の一種なので、土に還るために土壌細菌のうどんこ病にかかるのも納得がいきます。 同じ現象が菜の花やギシギシなどの野草でも見られます。花が咲き受粉が始まる頃になると、虫がつき、病気になり、葉がなくなっていくのです。 病気が促す植物の生育サイクル Kalinin Ilya/Shutterstock.com 花が咲き、実ができると、植物ホルモンのエチレンが分泌されます。このエチレンの効果に、果実の熟成と落葉・落果の促進、花の開花促進と老化という作用があります。ここから推測できるのは、開花後に病気になることは、次の世代へのサイクルを促す自然の摂理ではないかということです。 もっとも、バラのうどんこ病は開花前のつぼみにも発生するので、必ずしも枯れるためにうどんこ病になっているとは限りません。 しかし、自然界には病気の役割も多々あり、時に植物が自ら病気にかかる選択をしていることもあるのではないでしょうか。動物のようには動けない植物は、代わりに外部のものの手を借りる必要もあるでしょう。人間が病害虫と決めつけているものが、じつは植物と共生関係だという可能性は十分にあるのです。 謎の多い微生物の世界 William Edge/Shutterstock.com 私たちの知る病気の原因となる微生物を含め、微生物について現代で解明できているのは、なんとたったの1%程度だそう。99%は何をしているか分かっていないのです。微生物の研究は、病気を起こす原因になるものを中心に、それ以外の人間の役に立つ善玉菌などの有用菌から解明が進んでいるようです。研究にも資金が必要なので、悪い菌に効く薬を開発したり、善玉菌を活用した商品を発明するのに注力し、商売にならない菌の研究が進まないのもうなずけます。 最近では、病気の原因菌として知られてきたものが、じつはよい効果ももたらしていることが判明したという記事も見かけます。自然界は私たちが想像する以上に、病気だから悪という単純なものではないのかもしれませんね。 時が経ち研究が進めば、今の常識がじつは違っていたなんてこともあり得ますし、過去に何度も繰り返されてきた話です。だからこそ私は、あまり病気に対してネガティブなイメージは持たず、ありのままを感じるように心がけています。 暑さからバラを守る黒星病(黒点病) Douglas Cliff/Shutterstock.com 黒星病もバラを代表する病気です。私も皆さんと同じように悩まされてきました。 そもそも、なぜ黒星病になるのでしょうか。 一般的には、泥はねなどにより土壌にいる病原菌が付着するためだといわれています。しかし、実際に栽培していると、どう考えても泥はねが届かない高さまで黒星病になったり、黒星病になるバラとならないバラがあったりと不思議でなりませんでした。 育てているバラの中には、夏になると毎年必ず黒星病にかかる品種があります。それをあえてそのままに放置したらどうなるか実験してみたところ、下の葉から病気になり葉が落ちていきました。 しかし、途中で気がついたことがあります。それは、上半分の新しい葉は病気になっていないということ。また、病気で古い葉が落ちて、自然と風通しがよくなっていました。 このときに思い浮かんだのが、農家が野菜を育てるときに行う「葉かき」という不要な葉を落とす技術です。もしかしたら、バラ自身が病気になり古い葉を落とすことで、葉からの蒸散量を抑えて脱水症状を防ぎつつ、風通しをよくして身体を冷やしていたのかもしれないと思いつきました。 夏の間に黒星病ですべての葉が落ちてしまうバラもありましたが、枝は緑のままで潤っていたので、夏剪定だけしてそのまま様子を見てみました。秋になり涼しくなると、まるで春に新芽が芽吹くように、新しい枝が元気よく伸びて見事な花を咲かせてくれました。 こうして観察していると、暑さ対策として植物が自ら黒星病にかかり、葉の量を調整したり休眠しているかのようです。あくまで私の考察ですので、必ずしもそうでないかもしれませんが、これをきっかけに、黒星病に対してあまり神経質にならず様子を見るようになりました。黒星病に弱く夏に葉を落としやすいバラは、もともと暑さが苦手な品種なのでしょう。 赤さび病の自然治癒 コムギに発生した赤さび病。Tomasz Klejdysz/Shutterstock.com 以前、赤さび病が大発生し、それも耐病性の高い新しい品種にだけ赤さび病が出た年があります。 はじめは落葉性の病気だからと、黒星病と同じ感覚で様子を見ていたのですが、黒星病と異なり、赤さび病は葉だけでなく茎や芽まで侵食し始め、バラがひどく弱ってしまいました。そこで無農薬ではどうしたら克服できるのかを考え、いくつか実行してみた結果、翌年には赤さび病を減らすことに成功しました。 その方法を3つご紹介します。これは、赤さび病に限らず病気対策に共通する有効な手段です。 ① 剪定をして風通しをよくする VH-studio/Shutterstock.com 植物に病気が発生する原因は、70〜80%が菌類によるものだとされています。 病気の原因の大半を占める菌に対し、簡単で最も有効な手段が、風通しをよくすること。風通しをよくするだけで、以下の3つの効果があります。 湿気を抑える: 多くの植物病原菌、特にカビや菌類は湿度の高い環境で繁殖しやすいため、風通しをよくして湿気を抑えることで、病気の発生リスクを減らせます。 葉の乾燥を促進: 植物の葉が濡れていると病原菌が繁殖しやすくなります。風通しがよければ、葉の水分が早く蒸発し、病原菌の繁殖条件が揃わなくなります。 空気循環の促進: 空気がよどむと、病原菌が集まりやすくなりますが、風が通ることで病原菌の蓄積を防ぎ、植物の健康を保つのに役立ちます。 私流の考え方では、「洗濯物理論」です。 洗濯物を干すときに風通しがよくないと乾きにくく、生乾き臭がしますよね。このニオイも菌の増殖が原因です。植物を育てるときも洗濯物を干すときと同じ感覚で、風が通るよう剪定するとよいでしょう。 風通しのよさは、じつは農薬を使うよりも効果があるという研究もあります。農薬は対症療法であって根本療法ではなく、一時的には確かに効果があっても、環境が悪ければ再発してしまうためです。 無農薬栽培をしたい方は、ぜひ剪定に力を入れてみてください。 ② 剪定をして日光がよく当たるようにする katushOK/Shutterstock.com 日光は植物の病気対策として非常に効果的です。植物の健康を保ち、病気を防ぐ役割を果たす日光が葉にまんべんなくいきわたるよう、剪定しましょう。日光の効果には次のようなものがあります。 光合成を促進: 日光が十分に当たることで植物は光合成を効率的に行い、栄養を作り出して強い免疫力を保つことができます。健康な植物は病原菌に対する抵抗力が高まります。 湿気を抑制: 日光が植物に直接当たることで、土壌や植物の表面が早く乾燥し、菌類やカビの繁殖条件である高湿度の環境を防ぐことができます。 紫外線の殺菌効果: 日光に含まれる紫外線は、植物の表面に付着している病原菌やウイルスをある程度殺菌する効果があります。特に、カビや菌類は紫外線に弱いものが多く、日光を浴びることは自然な消毒方法となります。 植物の成長を促す: 十分な日光は、植物の健康を支え、丈夫な茎や葉を形成するのに役立ちます。これにより、病害虫に対する防御力が強化されます。 ただし、植物によっては強い直射日光がストレスになる場合もありますので、適切な日照条件を選ぶことが重要です。 ③ 有機石灰を施し、土壌のpHを整える FotoHelin/Shutterstock.com 見逃しがちな土壌のpHですが、病気対策では非常に重要です。雨の多い日本は酸性雨により、自然と酸性に傾きやすい土壌です。有機石灰を施して土壌のpHを整えることを意識しましょう。 有機石灰が植物の病気対策に役立つ理由として、以下の5つが挙げられます。 土壌のpHを調整する有機石灰は酸性の土壌を中和し、適切なpHバランスを保つことで、植物にとって健康な成長環境を作ります。多くの植物病原菌は酸性土壌で活発になるため、土壌のpHを調整することで、病気の発生を抑制することができます。 カルシウムの供給有機石灰には植物にとって必須の栄養素であるカルシウムが豊富に含まれています。カルシウムが不足すると、植物の細胞壁が弱くなり、病原菌が侵入しやすくなります。十分なカルシウムを供給することで、植物の免疫力を強化し、病気に対する抵抗力が向上します。 微生物環境の改善有機質が原料である有機石灰には、土壌中の有益な微生物の活動を活発にし、土壌の健康状態が改善する効果も期待できます。健全な微生物環境は、病原菌の繁殖を抑える効果があり、植物の病気対策に役立ちます。 栄養素の吸収効率向上有機石灰は土壌の養分バランスを整え、他の栄養素(特に窒素、カリウム、リンなど)の吸収効率を高めます。土壌中の栄養がうまく吸収されると、植物の健康が向上し、病気に対する耐性も強くなります。 根の発育促進石灰を適切に施すことで、根の発育が促進され、植物の全体的な健全性が向上します。強く健全な根は、病原菌に対してより強い防御力を持ち、病気にかかりにくくなります。 ◎おすすめはリサイクルされた天然由来の石灰 貝殻や卵殻などの自然に存在する材料から生成された石灰は、持続可能で自然への負荷が少ない資材です。これらの石灰は、土壌に必要なカルシウムやマグネシウムを自然な形で供給してくれます。 免疫力を生かした柔軟な無農薬栽培 私たちも、普段ワクチンなどの予防接種を受けたり、乳幼児は風邪を引くことで免疫を獲得して病気にかかりにくくなるといわれますよね。私はガーデニングでも免疫獲得を意識しており、病気にかかっても慌てずに様子を見たり、あえて病気で落ちた葉をそのまま土に還したりしています。早期対処や病原体の隔離が鉄則な中、なんて非常識なことをするんだと思われるかもしれませんね。 ですが、自然界では薬剤散布をしなくても病気は少なく、美しい循環と調和の中で、植物も元気に育っています。だからこそ、あえて自然な方法で栽培できないか研究と探求をしたくて仕方ないのです。 実際に、自然に近い形で病気の葉を落としておいても、バラは元気なままでスクスク育っています。むしろ、どうしてこんなに色艶がよく、丈夫で生き生きとしているのですかと驚かれることもあります。自然界には必ず反作用が働きます。病気にしろ害虫にしろ、植物は害されると必ず抵抗物質を作り、病害虫に負けない株になるのです。 ただし、これは病気に負けない株になっていればの話。人間も体力が落ちて衰弱している人が病気にかかったら薬を使うように、育てている植物が弱っていたら、私のようなスパルタなことはやめておきましょう(笑)。 目の前の植物を見て薬が必要だと感じたら、無農薬栽培にこだわらず、薬に頼ることも大切です。 適材適所が大切 そもそも病気になる原因として、育てる場所や品種が合っていないケースがあります。 私のバラ園ではオールドローズしか植えていないのですが、ガリカ系のバラはことごとく育ちませんが、ダマスク系のバラはよく育っています。このように、一口にバラといっても品種により性質が違い、植え場所の気候や風土に合わないことがあります。日当たりが好きな植物を日陰で育てることが難しいように、合わない環境では元気に育たず、病気になりやすくなります。ご自身の育てる環境をよく調べた上で、適材適所で合う植物を選ぶことが大切です。 肥料過多も病気の原因 JulieK2/Shutterstock.com 最後にご紹介する病気の原因は、肥料過多です。 誰しも花をたくさん咲かせたい、元気に育てたいというあまり、つい肥料をあげすぎてしまうことがあるもの。肥料の規定量はパッケージに記載されていますが、何となくであげている方も多いのではないでしょうか? 肥料が多すぎると、植物に多くの問題を引き起こし、結果として病気にかかりやすくなります。過肥が引き起こす問題は、次の5つです。 1. 塩害による根のダメージ 肥料が過剰に与えられると、肥料に含まれる塩類や土壌中の成分と反応して生み出された塩化ナトリウムにより、土壌の塩分濃度が上がります。これを「塩害」と呼びます。塩分が多いと、植物の根が水分を吸収しにくくなり、逆に根から水分が失われることもあります。この状態では、植物は水不足に陥り、弱ってしまいます。根が損傷すると病原菌が侵入しやすくなり、病気のリスクが高まります。 2. 不均衡な栄養吸収 肥料が過剰になると、特定の栄養素(例えば窒素)が過剰に供給され、他の重要な栄養素(例えばカリウムやリン)が不足することがあります。栄養素の不均衡は、植物の成長や免疫力に悪影響を及ぼします。特に窒素過多は、葉や茎が過剰に成長する一方で、根の発達が不十分で、病気に対する耐性が弱くなることがあります。 3. 成長が不自然に早くなる 肥料過多は植物の成長を促進しますが、急激な成長は植物の組織を柔らかく脆弱にします。このような軟弱な組織は、害虫や病原菌の攻撃に対して弱く、病気にかかりやすくなります。また、葉や茎が過度に成長すると、密集しすぎて風通しが悪くなり、病原菌が繁殖しやすい環境になります。 4. 土壌の微生物環境の悪化 肥料が過剰に供給されると、土壌中の有益な微生物のバランスが崩れます。特に化学肥料が多い場合、土壌中の有益な菌が減少し、病原菌が増殖しやすくなります。この結果、植物の根が弱り、病気に対する防御力が低下します。 5. 植物の免疫力低下 過剰な肥料は、植物にとってストレスとなり、免疫力を低下させます。栄養の過剰摂取は、植物の自然な防御メカニズムを損なうため、病気に対して抵抗力が弱くなります。特に、窒素過剰によって柔らかくなった葉や茎は、真菌や細菌の侵入に対して無防備になります。 肥料過多で軟弱に育った株は、人間でいえば肥満に近い状態です。万病の元ともいわれる肥満は生活習慣病の1つで、食生活が大きく関係していますよね。植物の肥料も食事と同じ。バランスのよい適切な食事が取れているかが、健康の鍵になります。 無農薬栽培でもローメンテナンスを実現 私は無農薬栽培でも、週末の限られた時間の手入れのみで美しい花畑をつくることができています。無農薬栽培は難しいというイメージがありますが、自然の力を発揮させることで、ローメンテナンスな庭づくりが可能になるのです。 これからの時代は気候変動により、今まで以上に病害虫の発生しやすい環境になると予想されます。 しかし、自然界にはもともと病害虫の多発を抑制する素晴らしいシステムや循環、調和が備わっています。それらがうまく機能するように人間がサポートすることで、植物が健康に育ち、同時に自然環境を保護することにも繋がります。 地球環境を守るという観点からも、環境負荷の少ないガーデニングが世界に広がっていくことを願っています。
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雑草対策

理想的な土づくりと雑草対策【意外に知らない雑草の効果】
夏の庭は雑草との戦い Vita Sorokina/Shutterstock.com 日本の夏は雑草との戦いといっても過言ではないほど。ガーデニングや家庭菜園をされている皆さんは、梅雨から夏の終わりにかけては草取りや草刈りに追われ、一年で一番大変な時期ではないでしょうか? 私も全く同じです。 最近の夏は猛暑日が多く、暑さのため、まともに手入れできる時間も早朝や夕方遅くのみ。しかし、そんな中でも、雑草は雨が降る度にスクスク元気に育つので、そら恐ろしいですよね。 花や野菜が元気に育たないで雑草ばかり育つ、なんてことはよくあります。ガーデニングや家庭菜園を始めた人が挫折する一番の理由が、この雑草との戦いではないでしょうか。 草取りの落とし穴 africa_pink/Shutterstock.com 今回ご紹介するのは、皆さんお困りの雑草対策ですが、じつは草取りをしすぎるのもよくないという事実をご存じでしょうか? 近年多発している猛暑や豪雨、長雨などにより、育てている植物の生育が悪くなることがあります。もしそんな猛暑や大雨から植物を守ってくれているのが雑草だなんて知ったら、皆さんの雑草に対する見方や価値観が変わるかもしれません。 雑草が植物を守る? 雑草を取りすぎた結果 それでは、意外な雑草の効果について見ていきましょう。 まずは、この写真。一見すると、雑草が綺麗に取り払われた手の行き届いた家庭菜園の写真です。 しかし、視点を変えて見てみましょう。 このしっかり除草された土は、豊かな土壌に見えるでしょうか? ここでYesと答えるには、少々疑問が湧くのではないでしょうか。 写真を見る限り、地面がひび割れていてガサガサで、まるで不毛の大地です。この土は、保水性がほとんどなくカチカチになっています。常に強い日差しが地面に照りつけ、地中の水分が地表から蒸発してしまっている状態なのです。これでは土の団粒構造に不可欠な微生物や土壌生物(ミミズなど)、昆虫など、水分を必要とする生物が生きていけません。 こうなると、異常気象と温暖化による日本の過酷な夏ではすぐに土が乾いてしまい、何度も水やりをしなくてはならなくなります。 続いて、こちらも同じ場所の写真です。 なんと、雨が降っても水が浸透しないので、水たまりができてしまっています。 あまりに土壌が劣化しているので、土の排水機能が低下し、雨が上がって1日経ってもぐちゃぐちゃで、苔まで生えています。このような状態では、近年よくある大雨や長雨の際には大切な草花や野菜は水浸しになりますし、病気も多発しやすくなります。 土の団粒構造が崩壊するということは、土が隙間のない状態になって目詰まりしているようなものです。こうなると雨が降っても水が浸透しないので、土の保水量も下がってしまいます。 これが雑草を取り過ぎた結果が招いた悲惨な現状です。排水性が悪く保水性もないカチカチの土になり、猛暑にも弱く、大雨や長雨にも弱いという、最悪な土壌状態になってしまうのです。 もちろん除草剤の散布をしすぎても同じことが起きます。 日本ではこのような光景は普通に見られるもので、今まで違和感を覚えることはほとんどなかったのではないでしょうか? しかし、今お伝えした事実を知って、常識といわれることに改めて疑問を抱くきっかけになっていただけたら幸いです。 雑草対策と土壌劣化の原因 Bayhu19/Shutterstock.com 世の中、ほとんどの人が雑草が生えることは悪いことだと思い込んでいるのではないでしょうか。 「雑草が生えると栄養が奪われて、栽培している植物の育ちが悪くなる」とか、「雑草が生えているとみっともない。だらしないと思われる」とか、雑草=悪と思われがちです。 確かに花や作物の光合成の邪魔をするなどデメリットがありますが、じつは持続可能な栽培方法として、今まで敵視してきた雑草を有効活用する方法が世界では進んでいます。 なぜ「雑草=悪」のような価値観が浸透したのか、その裏には、日本の慣行栽培の影響が大きいと感じています。 日常生活で見る畑の栽培方法、つまり農薬や化学肥料、トラクターや耕運機を使用して効率性と大量生産を重視した慣行栽培のやり方や価値観が、ガーデニングや家庭菜園にも浸透しているという訳です。 しかし、ガーデニングや家庭菜園で効率や大量生産を重視して、農薬や化学肥料を多用することを皆さんは望んでいるでしょうか? これは、必ずしも農薬や化学肥料が悪いということではありません。効率的に大量生産をして収入を稼ぐ農家と違い、ガーデニングや家庭菜園は目的が違うので、全てを真似する必要はないということです。 さて、世界に目を向けてみるとどうでしょうか? じつは、草生栽培(草を生やす栽培法)や不耕起栽培(耕さない栽培法)では、あえて草を生やすことで土壌構造を維持したり、土地を保護して長期的に豊かな土壌を維持していく方法があります。 日本でこうした手法をよく見かけるのは、果樹園です。果樹の下にあえて草を生やし、土壌の豊かさを維持しています。 土づくりのポイントは土を露出させないこと Marina Varnava/Shutterstock.com ここで最大のポイントは、「土を露出させない」ことです。これが最も重要です。 じつは、一番土壌にとってよくないのは、地面がむき出しになっている状態です。地面がむき出しになっていることで起きる主な土壌劣化の原因について、以下にまとめます。 1 栄養分の喪失 土壌表面の有機物や栄養分が風雨によって流出することで、土壌の肥沃性が低下します。これにより、植物の生育に必要な栄養素が減少し、植物の生育が悪くなる可能性があります。 2 土壌の水分保持能力の低下 土壌がむき出しになると、水分の蒸発が増加し、土壌の水分保持能力が低下します。これにより、乾燥に弱い土壌となり、植物の生育に影響を及ぼすことがあります。 3 土壌の保護機能の喪失 土壌は本来、風や水の浸食から植物の根や有機物で保護されています。むき出しの土壌ではこの保護機能が失われ、浸食が進むことで土壌の層が削られることがあります。 4 生態系への影響 土壌が劣化することで、土壌中の微生物や動植物の生息環境が悪化します。これにより生態系全体に影響が及ぶ可能性があります。 これらのデメリットはほんの一部で、土がむき出しになることでこれ以外にもさまざまな弊害が起こります。 実践的な雑草対策 ここからは、土がむき出しになるのを防ぐために、明日から使える実践的な方法を3つお伝えします。 【① 土が露出しないように有機物で覆う】 New Africa/Shutterstock.com この方法は、雑草が生えるのを抑えつつ土壌を豊かにする、一番おすすめの方法です。腐葉土やバーク堆肥などのマルチング資材を活用し、地面を覆います。土壌浸食の防止、土壌温度の調節、土壌構造と肥沃度の向上、雑草抑制、水分保持などの効果があります。 この方法をおすすめする理由の1つは、雑草の発芽抑制効果があることです。 植物の種子には、好光性種子という光が当たると発芽する性質を持つものと、嫌光性種子という発芽に光を必要としないものがありますが、雑草に多いのは好光性種子。特に畑で見かけるような雑草には、この性質があります。 雑草は人の営みに合わせて進化しており、特に耕すという人間の行為に合わせてこの性質が効果を発揮しています。耕すたびに、土の中に眠っている種子に光が当たり発芽するようにできているのです。 この性質を逆手に取り、光が当たらないように有機物で地面を覆えば雑草の発芽を抑えることができるのです。 【② グラウンドカバー植物で覆う】 tamu1500/Shutterstock.com 雑草が生えないようにグラウンドカバー植物で地面を覆う方法も有効です。 土壌浸食の防止、土壌肥沃度の向上、雑草抑制、病害虫の発生抑制、水分保持などの効果があります。 植物で地面を覆うことで、①でも述べたように、好光性種子の性質を逆手に取り、雑草の発芽を効果的に抑制しつつ、雑草の成長も抑えます。植える植物によっては美しい景観を演出したり、ミツバチや蝶などの蜜源植物として生物多様性の向上を図ることもできます。 ただし注意点としては、グラウンドカバー植物自体が繁茂しすぎてしまうこともある点があります。一般に、グラウンドカバーとして選ばれる植物は、生育旺盛で密に茂るものが多いため、コントロールできるかに注意して、適切な植物を選ぶことが重要です。 実際に私も実践しておすすめしたいのが、空いている場所には積極的に花を植えること。雑草は何もない所に旺盛に生えますが、ほかの草花がある場所は嫌がる傾向があります。雑草の種子は他の植物が生えていることを認知できるため、先手必勝で雑草が生える前に草花の種子を播いて発芽させるか、苗を植えるかすれば、雑草の発芽と成長を抑えることができるのです。 【③ 雑草を活用する】 Mariana Serdynska/Shutterstock.com これは、生えている雑草をうまく活用する方法です。 生えてしまった雑草を切り、その場所に敷き詰めます。こうして地表をカバーすることで雑草の発芽を抑えつつ、有機物を地面に敷くことで時間とともに土に還し、土壌を豊かにするというやり方です。 雑草活用の効果的な方法として、次の2パターンがあります。 BlueRingMedia/Shutterstock.com 1つ目は、雑草の成長点より下を切り、雑草が再生しないようにして刈り取った草を敷き詰める方法です。成長点とは、茎や根の先端にある、細胞分裂が活発なところ。ここから新しい細胞が分裂して植物が成長します。成長点より下で切れば、雑草が再生しないためローメンテナンスになります。ここでのポイントは「根っこを切る」こと! 根は一番弱いため、楽に切れます。 BlueRingMedia/Shutterstock.com 2つ目が、雑草の成長点をあえて残して再生させ、伸びたらまた切って地面に敷き、有機物層を厚くする方法です。この方法は手間がかかりますが、有機物層が厚くなることでミミズなどの土壌生物が増え、土壌構造や土壌肥沃度が向上して植物の育ちがよくなります。イメージとしては、人工的に森の腐葉土を再現する感覚です。 特にイネ科の縦に伸びる草は、切っても切っても伸びるので、有機物層の構築に何度も使えておすすめです。 日本の伝統的な栽培知識の再評価 7maru/Shutterstock.com じつは雑草を利用するこうした方法は、日本茶を育てる畑で古くから使われていた知恵です。 畑の隣にあえて草を生やしておく畑を作り、そこで刈り取った草を通路に敷くのです。しかし、現代では農薬や化学肥料、機械化の導入が進み、このような伝統的な方法はほとんど消滅してしまいました。 日本には里山文化というものがあり、自然と共生する栽培方法を長く行ってきました。 水路の護岸工事や機械化、農薬・化学肥料の普及などにより便利になった一方で、こうした古い自然と共生する栽培方法が廃れてしまったことは残念なことです。 しかしながら、この地球温暖化と気候変動により、従来の人工的な栽培方法では対応できなくなってきているとも感じています。もう一度、古き良き日本の知恵を活かすときが来たのかもしれません。 「土を露出させない」ことが重要 Tatsiana Kalasouskaya/Shutterstock.com 雑草対策にはこれまで述べてきたさまざまな方法がありますが、土壌環境のために一番大切なことは、「土を露出させない」ことです。 どの方法で土を覆うかは、庭や畑でも違いますし、広さや環境、地域特性、手入れできる頻度など人それぞれになります。自分のライフスタイルに合う方法で、改めて雑草との上手な付き合い方について、ぜひ実践しながら試してみてください。
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家庭菜園

【手間いらずのオーガニック家庭菜園】野菜本来の味を楽しめるのがオーガニックの醍醐味!
家庭菜園だからこそ楽しみたいオーガニック栽培 haireena/Shutterstock.com 家庭菜園に興味のある方の中には、「せっかく家庭菜園をやるならオーガニックにこだわりたい」と思っている方も多いのではないでしょうか? 家庭菜園の収穫物は市場に出す訳ではないので、見た目のよさを気にしたり、規格に合わせる必要がありません。だからこそ、ぜひオーガニックに挑戦していただきたいと思います。もちろん失敗することはありますが、その過程を楽しみながら野菜を育てることこそが、オーガニック栽培の醍醐味です。 また、オーガニックのよさは、ただ野菜を育てるだけではありません。 生き物たちや自然をより身近に感じ、いろいろ観察するなかで、沢山の発見や小さな幸せを感じることができます。自然にも優しく、自分自身の心にも身体にも心地よい栄養を与えてくれるのです。 オーガニック栽培のポイント オーガニックは難しいというイメージがありますが、大切なことは「よく観察し、自然と向き合うこと」、そして「心構え」です。 異なる環境では、同じことをやってもそれぞれ結果が変わってきます。化学的な農薬を使えばある程度病害虫などをコントロールできますが、オーガニック栽培を目指す場合は、なるべく使いません。ご自身の庭や畑とコミュニケーションをとり、心を通わせてみましょう。 今回は、私なりの「ポイント」と「心構え」、「自然との付き合い方」についてお伝えします。楽しいオーガニックライフの参考になれば幸いです。 野菜の上で日向ぼっこをしているハート柄のテントウムシ。 タネから簡単! 葉物野菜ブレンド nimon/Shutterstock.com 皆さんは、タネから野菜を育てたことがあるでしょうか? 初心者でも簡単に種まきから育てられる野菜は、葉物野菜です。葉物野菜のタネは、ホームセンターや100円ショップでも安価で手に入りますよ。 種まきの際に私がおすすめしたいことは、タネをブレンドして播くこと。ブレンドすると何がいいかというと、病気に強くなります! 自然を観察するとよく分かりますが、自然の中ではさまざまな植物が混在しています。そして、それぞれが一番過ごしやすい場所を選んで育ちます。 一方、畑などで特定の単一品種ばかり育てると、土壌の生態系に偏りができ、特定の病害虫が増殖しやすくなります。また、単一品種だと同じ成分ばかり吸収してしまうため、土壌の栄養バランスにも偏りが出やすくなります。たとえ今回はうまく育ったとしても、次に育てたときに悪影響が及ぶことも(連作障害)。 タネをブレンドして播くことで、こうした偏りを防いでくれるのです。 さまざまなアブラナ科の葉物野菜をブレンド。 ブレンドしてタネを播く以外にも、育てたい野菜の近くに、草丈が邪魔にならないような花を一緒に育てるのも効果的です。花がコンパニオンプランツとなって益虫を呼び寄せ、そこから生まれた食物連鎖が生態系のバランスを取り、害虫の発生を抑制してくれたり、受粉の手助けをしてくれます。 畑と花壇が入り交じるような新しいスタイルを、ぜひ試してみてください。生き物たちの躍動を感じられることも、楽しみの1つになると思います。 イヌフグリの花の蜜を吸うハナアブ。ハナアブの幼虫はアブラムシが大好物。 タネのブレンドをするときの注意点 giedre vaitekune/Shutterstock.com では、ただ単にタネをブレンドすればいいかというと、そうではありません。ブレンドのポイントを解説しましょう。 系統を合わせる 失敗しないポイントは、まず「①なるべく同系統」です! 例えば、「リーフレタスを数種類組み合わせる」「アブラナ科の葉物野菜を組み合わせる」など。同系統を合わせると、だいたい同じように育つので、一方だけが淘汰される可能性が低くなります。 特性を合わせる 「②特性を合わせる」こともポイント。例えば、リーフレタスは好光性種子ですが、ここに嫌光性の特性を持つタネを混ぜてしまうと、それぞれ種まきの際の適切な深さが異なるため、どちらか一方が発芽しにくくなってしまいます。 ※好光性種子は発芽に光が必要。嫌光性種子は発芽に光を嫌う。 生育環境を合わせる また、日向が好きか日陰が好きかなど、植物の好む環境に配慮が必要です。 例えば、セリ科のミツバは、生育適温は15〜20℃で、冷涼な気候を好みます。暑さ寒さには弱く、霜に当たると枯れてしまいます。夏は乾燥しやすいので寒冷紗(かんれいしゃ)をかけるか、あまり日の当たらない半日陰で育てます。一方、同じセリ科のパクチーは、生育に適した温度は18~25℃で、真夏や真冬は苦手ですが、基本的に日当たりのよい場所を好みます。この2種を混ぜると、どちらかはうまく育たなくなってしまいます。 このように、「生育適温や生育適性地」を考慮したブレンドも大切です。 結球性と非結球性 「結球性と非結球性」にも注意します。例えば、レタスには結球性(玉レタス)と非結球性(リーフレタス)があります。ブレンドするのであれば、非結球性のリーフレタスにしましょう。玉レタス、白菜、キャベツなど、結球性の野菜は大きく育つため、ブレンドにはあまり向いていません。これらを育てる場合は、1つの穴に一緒に播くより、別々の穴に播いて隣接する場所で育てるほうがよいでしょう。 おすすめのブレンド 誰でも簡単にできる葉物野菜のおすすめブレンドをご紹介します。 ①「リーフレタスMIX(非結球性)」 Jacqui Martin/Shutterstock.com リーフレタスにはさまざまな種類があります。サラダ菜のような緑のものや、赤く華やかなポリフェノールたっぷりのもの、葉にウェーブがかかるものなど、見た目も美しく楽しませてくれます。 リーフレタスは生育が早く、収穫までの期間が短いのが嬉しい野菜。さらによいところは、成長点である中心を摘まなければ、中央からどんどん葉っぱが展開されること。周りの葉っぱだけを切るように収穫していけば、長期間楽しむことができます。ここがリーフレタスの大きな魅力です。これが結球する玉レタスだと、結球するまで待つ必要があり、玉を収穫すれば終わってしまいます。 そして、最も嬉しい強みは「病害虫に強い」ことです。品種改良により耐病性が強い品種が多く、葉の苦味成分から害虫も付きにくい特性を併せ持っています。 ②「アブラナ科MIX(非結球性)」 Rostovtsevayu/Shutterstock.com アブラナ科の葉物野菜は種類が豊富です。代表格に、小松菜や水菜、チンゲン菜、ルッコラなどがありますが、どれも成長が早く、育てやすいのが特徴です。 しかし、アブラナ科の野菜のもう1つの特徴として、特定の虫が付きやすいという傾向があります。虫食いを気にする方は、しっかりと防虫ネットを張るなどの対策が必要です。 中央から葉が展開してくるので、周りの葉を少しずつ切り取り収穫すれば、何度も収穫できます。 ファイトケミカル(フィトケミカル)について 皆さんは野菜を育てるとき、虫が付かないように頑張って労力を使い、さまざまな対策を施しているのではないでしょうか? この害虫対策に追われて心身共に疲れてしまうケースはよくあります。では、害虫が付くことは、本当に悪いことなのでしょうか? じつは、植物も一方的に食べられている訳ではありません。虫などに食べられたら直ぐに反応して、防衛物質を作り始めます。さらに、食べられている植物は周囲に危険を知らせる物質を拡散するので、虫に食べられていない周囲の植物も同じ防衛物質を生成して、害虫に備えることができるのです。 植物が生き抜くために作り出すこうした化学物質の総称を「ファイトケミカル」と呼びます。これらの化学物質は、植物が生存するためにさまざまな役割を果たしており、人間の健康にもいろいろなメリットを提供することが知られています。 以下に、ファイトケミカルの種類とその効果について、いくつか例を挙げます。 【①ポリフェノール】ポリフェノールは抗酸化作用があり、炎症を抑制し、免疫系を強化するとされています。フラボノイドやポリフェノールは、果物や野菜、茶、赤ワインなどに多く含まれています。 【②カロテノイド】カロテノイドは抗酸化作用があり、免疫機能を強化し、視力を保護するとされています。ベータカロテンやリコピンは、人参、トマト、パプリカなどの野菜や果物に多く含まれています。 【③フィトステロール】フィトステロールは、コレステロール吸収を阻害するため、動脈硬化や心臓病のリスクを減少させる効果があります。ナッツ、種子、全粒穀物、植物油に多く含まれています。 【④イソフラボン】イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをするため、更年期障害の緩和や骨密度の維持に役立つとされています。大豆製品やレンズ豆などの大豆類に多く含まれています。 これらのファイトケミカルは、植物が自然に生産するため、植物性食品に多く含まれています。バランスの取れた食事でファイトケミカルを摂取することは、健康維持や疾病予防に役立つとされています。 そして重要なことは、ファイトケミカルは害虫に食べられたときなど、植物がストレスにさらされたときに多く生成されること。つまり、害虫に少し食べられた程度なら、むしろ栄養が強化されラッキーだと思えば、躍起になって駆除する必要もありませんし、穏やかな心で自然と向き合うことができると私は感じています。 花束のような葉物野菜のベジタブルフラワー。 手間をなくして収穫量を上げるビニールマルチ Natalia Garidueva/Shutterstock.com 私は農薬や化学肥料は使わない代わりに、ビニールマルチは活用しています。 実際にビニールマルチを使うか使わないかで生育を比較して確かめましたが、ビニールマルチを使うと圧倒的に育ちがよくなり、雑草取りの手間も省けて助かっています。 ビニールマルチの長所は、以下のような点があります。 ①【雑草抑制】 ビニールマルチは土の表面を覆うため、雑草の成長を抑制します。これにより、作物に十分な栄養や水が供給され、雑草による競争が減少します。 ②【保湿効果】 ビニールマルチは土の表面を覆い、水分の蒸発を抑制します。これにより、土壌の乾燥を防ぎ、作物に適切な水分を供給します。特に乾燥地域や夏場の栽培に適しています。 ③【土壌温度の上昇】 ビニールマルチは日光を反射し、土壌を暖かく保ちます。これにより、作物の発芽や成長を促進し、早い収穫を可能にします。特に寒冷地域や早春の栽培に適しています。 ④【土壌の保護】 ビニールマルチは土の表面を覆うことで、土壌を保護します。雨や風による侵食を防ぎ、土壌中の栄養分や微生物を保持します。これにより、土壌の健康を維持し、作物の生育を支援します。 ⑤【収穫量の増加】 ビニールマルチは作物の成長を促進し、雑草の競争を減らすため、収穫量を増加させる効果があります。また、収穫作業が容易になり、作業効率が向上します。 これらの長所により、生産効率が上がり、作物の品質や収量を向上させることにつながります。ビニールマルチはホームセンターに行けば安価で手に入るため、畑で露地に植える方にはおすすめの資材です。 水やりのしすぎは禁物 Rawpixel.com/Shutterstock.com 私の両親も家庭菜園をしていますが、重い水をタンクに入れてわざわざ畑に運び、水やりをしています。毎回「そんなことしなくてもいいのに」と言っていますが、一向にやめる気配はありません。それ以外にも、庭に水やりを何度もしている人を見かけますが、私は鉢植えや軒下など雨が当たらない場所を除き、自然の降雨に任せ水やりは不要だと考えています。 私が水やりをするのは植え付けのときだけ。後は全て自然任せにしています。 なぜなら、植物は水を求めて自然と根を伸ばすからです。水が近くにあれば根を伸ばすことをやめ、植物は雨が多い場所と勘違いしてしまいます。こうして植物が甘えると、水やりをしないと育たなくなってしまうのです。 植物を育てるのは子育てと同じで、いかに自立させるかが重要です。 本来、植物たちは厳しい自然界で生き抜く適応力を持っています。品種改良され人間の手を必要とする部分はありますが、植物は植物なりに生き抜くために、強くたくましく成長してくれるものです。介護でも、何でも手を貸してしまうことは自立を阻害し、かえって身体能力を低下させてしまいます。同じように、私たちが植物の自立を少しサポートするという感覚が大切なのです。私たちも疲れてしまいますから、過保護は禁物。ほどほどが一番です。 春にタネを播くおすすめ葉物野菜4選 Anton Khodakovskiy、lzf、yoshi0511、BlueSky_31/Shutterstock.com 最後に、春にタネを播く、初心者でも育てやすく料理に使いやすい野菜やハーブをご紹介します。 ①【レタス(リーフレタス) 】 春に育てるのに適したレタスの品種が多くあります。新鮮なサラダに向いています。 ②【春菊】 春菊は、春にタネを播くのが一般的です。煮物や鍋料理に使われる日本の野菜です。 ③【小松菜】 春にタネを播いて育てると、柔らかくておいしい小松菜が収穫できます。サラダや炒め物に利用できます。 ④【ケール】 ケールは春にもタネを播くことができ、栄養価の高い葉物野菜です。サラダやスムージーに。 これらの野菜は、春の気候に適した条件で育ち、初夏には収穫ができるでしょう。 【春にタネを播くおすすめハーブ5選】 Tatyana Mut、Oksana Shufrych、Tatjana Meininger、vaivirga、DD Images/Shutterstock.com ①【バジル】 バジルは育てやすく、日当たりのよい場所でよく水やりをするだけで育ちます。パスタやピザ、サラダなどに使われることが多いです。 ②【パセリ】 パセリは日陰でも育ちやすいハーブで、料理の風味付けや装飾に使われます。成長が遅いため、早めに種まきをするとよいでしょう。 ③【ディル】 ディルは育てやすく、爽やかな風味が特徴です。サラダや魚料理、ソースによく使われます。 ④【ルッコラ】 ルッコラは日当たりのよい場所で育てるとよく育ちます。サラダやピザ、パスタに使われることが多く、シャキシャキとした食感とピリッとした風味が特徴です。 ⑤【パクチー】 パクチーは日陰でも育ちやすく、水やりをしっかり行うことが大切です。アジア料理やメキシコ料理などによく使われます。香り高い味わいが特徴です。 これらのハーブは初心者でも育てやすく、料理に幅広く使われるので、ぜひ挑戦してみてください。
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ガーデンデザイン

英国でも話題! 来春に向けてつくるメドウガーデン
英国王室が愛する「メドウ」とは 英国の植物学者、ナイジェル・ダネットらがつくったロンドン塔のメドウ。paula french/Shutterstock.com メドウとは野の花が咲く野生の花園のこと。多種多様な花が入り交じり、風にそよぐ風景は、まるでリバティプリントのファブリックを広げたような素朴な愛らしさです。英国にはヒナギクやキンポウゲなどが咲き乱れる愛らしいメドウがそこここにあり、チャールズ国王は、自身の私邸ハイグローブの庭にもメドウガーデンをつくるほどの大ファン。しかし近年の調査で、英国では過去75年間に97%ものメドウが消失したという事実が判明しました。多種多様な植物が生育するメドウは単に美しいだけでなく、あらゆる昆虫や生き物の棲み処であり、生物多様性のゆりかごでもあります。長年、環境保護活動に心血を注いできたチャールズ国王(当時は皇太子)は、メドウの急速な消失を深く憂慮。 ロンドン塔に出現した巨大メドウ「スーパーブルーム」。paula french/Shutterstock.com 2012年、すべての郡に少なくとも1つはメドウをつくる「コロネーション・メドウ」プロジェクトを開始しました。そして、昨年2022年にはメドウを愛するエリザベス女王の戴冠70年を記念して、ロンドン塔のお堀に「スーパーブルーム」と名付けた巨大メドウがつくられました。一年草、二年草、多年草など2,000万粒の種子を播き、英国をあげてメドウガーデンを推進しています。 チャールズ3世戴冠式の招待状にも英国のメドウの草花や生き物が描かれています。いくつお花を見つけられますか? Photo/BUCKINGHAM PALACE メドウガーデンに適した庭環境 そんな英国で話題のメドウガーデンを日本で実践している私なりのつくり方をご紹介します。規模はもちろん小さいですが、さまざまな花が一斉に咲き揃い、蝶やミツバチが行き交う様は、本当に心穏やかで幸福感あふれる風景です。さて、メドウガーデンをつくる前に、大切なことを2つあげます。 適材適所・植物特性を考慮する キンポウゲやアザミ、グラスが入り交じる英国のメドウ。明るく開けた場所。 ①草原や野原を知ること 草原や野原を思い浮かべてみてください。上の写真のように木があまりなく、一面に草花が広がり、風に揺れている風景が思い浮かぶと思います。つまり、日当たりと風通しがよく、水はけがよいことがメドウガーデンにとって最良の条件です。大きな樹木や建物で、日陰が多くできる場所や風通しの悪い場所などでは、メドウガーデンは難しいでしょう。しかし、コンテナを利用して日当たりを確保できれば、小さくともメドウガーデンのエッセンスを味わうことは可能です。 ②自分の庭の環境を知ること ①を念頭に、ご自身の庭のどこがメドウガーデンに向いているかを考えてみましょう。メドウガーデンで使う植物は、日当たりを好む草花です。その植物を半日陰などのシェードガーデンで育てても、弱々しくヒョロヒョロとした茎になり、どこもかしこも支柱が必要になるなどとても手がかかるうえ、美しく咲いてくれません。植物には適材適所があるので、向かない場所では無理してメドウガーデンを選ぶことはおすすめしません。幸いなことに日本には日陰で美しく生育する植物もたくさんあるので、もしご自身の庭が日陰環境ならば、こちらの記事をご参考に。 ミックスシードで簡単にできるメドウガーデン 白い花だけを集めたホワイトフラワーミックスガーデン。 メドウガーデンのポイントは、まず植物が「多種多様」であることです。そして、多種多様な植物を一斉に咲かせるためには、開花時期が揃っていることが大事。難しそうですが、ミックスシードを使えば簡単です。9〜10月には、各種苗メーカーから春に咲く花の種のミックスが販売されるので、それを利用すると簡単にメドウガーデンが作れます。気温が高くなると蒸れなどでミックスフラワーが上手に育たないことがあるので、春に咲くミックスシードがおすすめです。また、買ってきた苗を植え込むよりも、種子から育てて自然の風雨にさらされたほうが、よりナチュラルな仕上がりになります。メーカーによってはホワイトガーデンMIXやピンクガーデンMIX、ブルーガーデンMIXなど、色彩に統一感を持たせたミックスシードもあるので、好みに合わせて選ぶと楽しいですよ。 草丈が似通った植物が集まるのもメドウの特徴。ian woolcock/Shutterstock.com 草花を熟知している方であれば、ミックスシードを買う必要はありません。好みの草花の種子を自分でブレンドすれば、満足度も上がるでしょう。組み合わせのポイントは、なるべく草丈を揃えることです。野原の植物は、似たような草丈のもので構成されており、どれか一つが突出して高かったり、ボリュームがあったりすることはありませんね。特に小さい庭では突出するものがあると、その陰に他の植物が隠れて咲かないことがあります。すると、結果的に単一の花の風景になってしまい、メドウになりません。それぞれの場所や条件に応じて、一つひとつの草丈にも留意しながら選びましょう。 海外のワイルドフラワーミックスには少し注意 特定外来生物に指定されているオオキンケイギク。Vipul1989/Shutterstock.com 海外から輸入されたワイルドフラワーミックスの中には、日本の植生に影響を及ぼす外来種も交じっていることがあります。特に現在、日本で野生化して特定外来生物に指定されているオオキンケイギクやオオハンゴウソウなどの近縁種は避けたほうが無難です。また、日本では栽培禁止のケシの花の種子も交じっていることがあるので注意し、咲いてしまった場合は、抜かずに保健所へ速やかに連絡しましょう。故意でなければ罪に問われませんのでご心配なく。 メドウガーデンをより楽しむための秘訣 オールドローズも咲くメドウガーデン。 より上級者向けのコンビネーションは、球根植物や多年草、宿根草と組み合わせる方法です。春咲き種子ミックスは、耐寒性一年草の組み合わせが多く、それらの開花期の前後はさびしい風景になりがちです。そこで、ミックスシードが咲き出す前の早春はスイセンやムスカリなどの球根植物を、ミックスシードの花後の初夏にはシャクヤクやアイリス、サンジャクバーベナ、エキナセアなどの多年草、さらにバラなどの低木も入れると、長期間バトンタッチしながら草花が咲いてくれます。 名脇役! イネ科の植物が大活躍 花の間に穂を伸ばすイネ科の植物がガーデンのアクセントに。 私のメドウガーデンではイネ科の植物も取り入れています。種子を播いたわけではなく自然に生えたものです。海外ではオーナメントグラスとして人気が高く、日本のイネ科の植物の美しさに感動するガーデナーも少なくありません。イネ科の植物は風に揺れる動きと、カサカサという音色が美しく、目を閉じると草原にいるかのような雰囲気を醸し出してくれます。そこに風に乗ってバラや草花のほのかな香りが漂うと、五感を刺激して極上の癒やしを味わえます。 イネ科の植物やワイルドフラワーで構成された英国の庭。 また、イネ科の植物があると、花のシルエットを浮き立たせるガーデンの引き立て役にもなり、程よい抜け感がメドウガーデンとしての美しさを格段に上げてくれます。英国ではイネ科の植物を生育させた後、デザイン的に刈り取ることで美しいグラスガーデンをつくっているケースもあります。 イネ科の植物を取り入れる際の注意 ただし肥沃な土壌だと想像以上に育ってしまうので、取り入れる前にご自身の環境でどの程度育つか検証することをおすすめします。育ちすぎる場合は、肥料を控えたり、早めに剪定するようにします。また、水はけがよくなるよう土壌改良するとよいでしょう。 【オススメのイネ科プランツ】 イヌムギ、カモジグサ、ネズミムギ、コバンソウ、オニウシケノグサなどが私のおすすめ。ちょっと郊外の道端や車道脇などをよく観察すると、ほかにも美しい品種がたくさんありますので、お気に入りの植物を見つけて取り入れてみると楽しいですよ。 メドウガーデンで害虫対策⁉ じつは、メドウガーデンをつくることで害虫が減る効果も期待できます。多種多様な草花を植えると、それらの花の蜜を求めて虫たちが集まります。その虫たちを捕食する生き物も増え、食物連鎖が健全に機能し、害虫の被害が軽減されるのです。 私はバラを栽培しているので、バラの周りに蜜源植物を植えることで害虫対策をしています。特に小さく見つけ難い厄介なバラゾウムシをクモが食べてくれるのには大助かりです。生き物たちがガーデニングの手助けをしてくれますし、彼らの営みを愛でる楽しみも増えて一石二鳥です。 メドウガーデンは種取りも醍醐味 メドウガーデンに使われている草花は一年草が多く、種子をつけるものが多いです。その種子を採取して、また秋に播くこともできます。ほとんど知られていませんが、植物はその土地の記憶を種子に残すというユニークな性質があります。つまり自分で育てた草花の種子からまた育てれば、よりその土地に馴染み、育てやすい草花になるのです。虫たちのおかげで自然交配する花もあるので、今年はなかった花色が来年は出たりすることもよくあります。そこが自家採種の面白さでもありますので、ぜひチャレンジしてみてください。
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ストーリー

【嫌われ者たちの大活躍】庭を潤す雑草の打ち水効果/新連載ローズメドウレポート
猛暑に活躍する雑草たちの働き 猛暑でも潤いあふれるバラ。 猛暑で野菜の生育にも影響が及び、夏野菜の高騰が懸念されています。私の暮らす埼玉県深谷市も、連日35℃を超す猛烈な暑さを記録しており、趣味で野菜作りを楽しんでいる私の母も、「暑さで野菜の葉がチリチリになってしまう!」と水やりにおおわらわです。一方、私が近くで作っているローズメドウは、一切、水やりをしていません。でも、バラたちはみんな、真夏も瑞々しい葉を展開しています。土はいつも適度に湿っており、朝のガーデンはひんやり、しっとり、とても快適です。なぜ母の畑は乾き、水やりもしない私の庭は潤っているのか。その違いは、雑草です。 植物に起こる「溢水」とは 左はバラの葉。右はイネ科の雑草。溢水による滴が葉のそこここに輝いている。 「溢水」という言葉をご存じでしょうか。あふれる水と書いて「いっすい」と読みます。意味は、まさに水があふれることです。河川などがあふれることにも用いられる言葉ですが、じつは植物でも溢水が起こります。植物の場合の溢水は、葉の先から水がこぼれることを指します。この溢水は、朝露とよく勘違いされることがありますが、朝露とは別の成分です。朝露は空気中の水分が葉っぱについたものですが、溢水は植物が根から吸い上げた水で、葉にある水孔という穴から植物が過剰な水分を出しているものです。この現象は溢泌(いっぴつ)とも呼ばれ、イネ科の植物で顕著です。 バラを潤す雑草の溢水 私のローズガーデンでは雑草をほとんど抜いていません。雑草にはイネ科の植物が多く、私の庭では溢泌現象がそこここで起きています。これによりバラの株の周りは毎朝、霧を吹いたように湿っています。まるで天然の打ち水のように雑草たちがバラに水分を与えてくれるため、バラ自身も溢泌現象を起こすほど潤って、猛暑でも瑞々しい葉を展開しています。 地温の上昇や乾燥も抑える雑草の効果 雑草が「邪魔な存在」として嫌われるようになったのは、いつからでしょうか。野菜畑では、雑草が養分を奪って野菜の収量に影響を及ぼすからなのでしょうが、雑草の働きをよく見てみると、メリットもかなり多いように思います。雑草は地中深くに根を張り、土の中に水や空気の通り道を作ってくれますし、土の保水力も保ってくれます。特に、この異常な暑さが続く日本の夏では、雑草の働きは貴重です。溢水による打ち水効果に加えて、土の表面温度を抑える役目も果たしてくれます。何も生えていないむき出しの土の表面温度は、真夏は60℃近くまで上がりますが、植物で覆われた場所は30℃台を保ちます。雑草をきれいに抜いている母の畑は、まさに灼熱地獄。野菜の葉がチリチリになって当然なのです。 雑草も昆虫も共存する有機無農薬のバラの庭 それに、雑草も一つひとつをよく見ると、意外と美しいのです。特にイネ科の雑草はエノコログサもカゼクサもススキの類も、スッと細い茎を伸ばして穂を風に揺らし、風情があります。バラの株に覆いかぶさるように旺盛に茂るものは、時折、適度に刈り取り地面に敷きます。こうしておくと地面が乾きませんし、昆虫や微生物の棲処にもなります。私のローズメドウはこんな風に、雑草も昆虫もみな共存する庭です。草取りも薬の散布もせず、施肥もほとんどしないので、とってもラク。美しい花を見て、香りを楽しみ、味わい、バラを堪能しています。 バラと雑草を一緒に育てているなんて、私の庭はちょっと珍しいガーデンかもしれません。バラ栽培の教科書には、雑草は抜くべきだし、昆虫は駆除するものとして解説されていますから。そして私自身も、かつてはそれらと格闘してきたのです。それがどうして共存という道を選ぶようになったのか。そのきっかけは、私の仕事場にあります。 有機無農薬で食用バラ栽培への挑戦 障害福祉サービス事業所「深谷たんぽぽ」の食用バラの畑。国連生物多様性の10年日本委員会が主宰する「生物多様性アクション大賞2019」の審査委員賞を受賞。 私は普段、障害福祉サービス事業所で社会福祉士として働いています。そこでは主に、知的障害をもつ利用者の方たちと一緒に、食用のバラを栽培しています。これを販売した売り上げは、利用者の方々の賃金となります。事業所にはさまざまな彼らの仕事があり、バラ栽培はその一つです。 事業所でバラ栽培を始めたきっかけは、足利フラワーパークのシェフからの依頼でした。「持田君は園芸が得意と聞いたけど、食用の花を福祉事業所で作れませんか?」と声をかけていただきました。私は昔からガーデニングが好きで、自宅の庭や畑でさまざまな植物を育ててきましたが、花を食用として栽培したことはありませんでした。ですから、どんな花を栽培したらいいのかも分かりませんでした。そこで、これまで最も栽培経験のあるものを選ぶことにしました。それが私の場合、バラだったのです。自宅でずっと育てていた四季咲きのバラなら、年間を通じて収穫が見込め、定期収入として成立させられるだろうと考えました。所長の後押しもあり、事業所初の食用バラ栽培生産がスタートしました。 しかしそれは、まさしく茨の道でした。自宅で観賞用に育てていたバラ栽培と、食用のバラを育てるのとでは勝手が大きく違いました。まず、食用として出荷するバラの花びらは、傷がついてしまうと商品価値がなくなってしまいます。そして、病害虫に対して薬品を使うこともできません。誤解のないようにお話ししておきますが、バラの病害虫に効果のある薬品はありますが、「食用生産」という前提でのバラ栽培に適用のある薬品は日本にはありません。ですから、必然的に我々のバラ栽培は無農薬有機栽培という道を選ぶことになりました。土壌改善や食用バラに向く品種の選定など、さまざまな難関があった中で、最も大きな壁は、この無農薬栽培による虫たちとの戦いでした。 終わらない病害虫との戦い。巧妙な害虫たち 前述のように、私たちは薬品を使用せず栽培することにしたので、害虫対策として物理的に虫がバラに近づけないよう、ビニールハウス内でバラ栽培を始めました。最初の5月は美しく花が咲き、収穫も順調でした。しかし、夏になると害虫が増え始め、夕方には小さなビニールハウスにもかかわらず、おびただしい数の蛾が卵を産み付けようと飛んできました。自分で張り直した防虫ネットにはわずかな隙間があり、その隙間をかいくぐり、ビニールハウスの中に侵入してくるのです。1匹でも中に入ってしまったら、もう終わりです。その1匹が数百個の卵を数カ所に産み付けて回るため、幼虫が孵化した途端、私たちは虫取りに明け暮れることになりました。あるときはヨトウムシの幼虫からバラのつぼみを守ろうと、一輪一輪にお茶のパックをかけて回りました。しかし、お茶パックを外してみて愕然。お茶パックの中で悠々と幼虫がつぼみを食べていたのです。他のバラもよく観察してみると、なんとつぼみの一つひとつに卵がすでに産み付けられており、私は昆虫の巧妙な戦略に驚くとともに絶望感を味わいました。 「ないない尽くし」だからこそ辿りついた共生という選択 福祉事業所では時間はない。お金もない。労力もない。この厳しい条件下で難易度の高い無農薬栽培で、さらに難易度の高い食用バラを成功させるのは、もはや不可能だと思いました。精神的にも肉体的にも疲れ果て、諦めかけたとき、ふと美しく咲くバラに目がとまりました。虫にも食べられず、芳しい香りを放ってたおやかに咲くバラ。それは私たちが虫と格闘してきたビニールハウスの外で咲いていました。 「あれ?!外のバラは病害虫にやられていない!?」 そのことに気付き、入念に観察をしました。すると、ビニールハウスの外ではヨトウムシの幼虫を食べる生き物がじつに多いことが分かりました。クモ、アシナガバチ、カエル、鳥…。ヨトウムシにとって、ビニールハウスの外は天敵がいっぱいいたのです。虫から守ろうとしたビニールハウスは、むしろ自然界の食物連鎖を妨げ、私たちは自分で自分を苦しめていたことに気付きました。そこで、私は思い切ってビニールハウスを取っ払い、生き物が行き来しやすい環境を作りました。これは正直、バラが全滅する覚悟で挑んだチャレンジでしたが、驚くことに害虫被害が激減しました。あれほど苦しめられた害虫被害が嘘のように減り、自然の摂理がどれほど偉大であるか身をもって知りました。 (左)畑に咲いたジニアの花に潜むクモ。バラを食害する幼虫を食べてくれる。(右)バーベナの花は蝶を呼び、蝶はあらゆる虫を食べてくれる鳥を呼ぶ。 自然の循環の中に無駄な命は一つもない (左)バラの花粉を食べるマメコガネ。幼虫が根を食害するので、見つけたら手で取る。(右)多くの虫を食べる肉食昆虫のカマキリは有機無農薬バラ栽培の強力な助っ人。 この経験から、私は自然のシステムの中には、我々人間が活用できるものがとてもたくさんあることに気づきました。それを見つけ出して利用させてもらうほうが、生き物を排除したり、自然をコントロールしようとするより、はるかに労力が少なく効率的だと悟りました。そしてこの方法は、自然と闘おうとするより、精神的にもとても穏やかでいられるのです。それは人間もまた、自然の一部だからではないかと私は思います。自然界には食物連鎖があり、循環の中でバランスが保たれています。人間もその循環の中にいるはずですし、害虫と呼ばれる生き物も、それを食べ、頼りにしている生き物もいて、循環のバランスの中では皆大切な役目を担っているのです。「無駄な生命は一つもない」ということを、私はバラ栽培を通して体感しました。 自然が起こす「奇跡」を発見する楽しみ 以来、私たちは生き物が暮らしやすい環境作りを優先してバラ栽培をするようになりました。そして、無農薬での食用バラ栽培に成功し、今ではたくさんの出荷先を抱えるようになりました。不可能と思われた私たちのバラは、「奇跡のバラ」と呼ばれています。奇跡とは、神様が起こす不思議な出来事を指す言葉ですが、私たちの奇跡は自然科学に裏付けられた明確な理由があります。裏を返せば、自然には人が奇跡と呼びたくなるほど心を震わせる事象が、多分に秘められているということかもしれません。私自身、バラ栽培を通して奇跡をいくつも発見してきました。冒頭にご紹介した「溢水」も、その一つ。草の縁についた無数の水滴が、赤い朝日にキラキラと輝くローズガーデンは、瞬きを忘れるような光景です。これからこの連載を通して、私自身がガーデニングで発見した自然の奇跡を、皆様と共有していければ幸いです。




















