あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
阿部容子 -ガーデンデザイナー/造園家-
あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
阿部容子 -ガーデンデザイナー/造園家-の記事
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雑草対策
庭づくりは暑さ対策にも効果絶大! 10℃も差が出る緑の実力
庭が雑草だらけになるワケ 「雑草が生えていることに罪悪感やストレスを感じる方は多いんです」と話すのは造園家の阿部容子さん。「でも、そもそも庭に雑草が生えてしまうのは当然。というのも、住宅地の造成には、雑草のタネが大量に含まれている山土や野ざらしの土を使用しているので、何もしなければ、あらゆる雑草が生えてきます。そして、『雑草』とひとくくりにして邪険にしていますが、植物学的に見たら、特殊な生態を獲得したユニーク植物たちで、まともに草取りしていてもかなう相手ではないんですよ」。 雑草は生態学的には「撹乱依存型」と呼ばれ、踏まれたり、抜かれたり、環境がかき乱される状態にめっぽう強い性質があります。アスファルトの隙間から雑草が生えているのを見たことはありませんか? これはどんな植物にもできる技ではなく、雑草といわれる植物たちだけがもつ特殊な能力なのです。例えば、野菜やバラなどは、適期に肥料をやったり剪定をしないと花や実をつけなかったり、逆に肥料を与えすぎても「肥料焼け」という症状を起こし、健全に生育できないことがあります。しかし、雑草は悪条件下でも種子を残し、好条件下ならより種子を多く生産するという性質があります。つまり、どんな環境下でもベストを尽くして必ず花を咲かせ、種子を残すというわけです。さらに、最初は草丈の低い一年性の雑草が発芽し、次に草丈の高い多年性の雑草が発芽してくる、というように、発芽のタイミングが異なる種類がたくさん土の中に仕込まれた状態にあるため、取っても取っても生えてくる、という草取りループから抜け出せないのです。 庭をコンクリートで覆うと灼熱地獄に 雑草で覆われた庭は雑然とした雰囲気ですし、ヤブ蚊も発生してしまいます。雑草だらけの庭をどうにかしたいと思っている方は非常に多く、その手段の一つとして、コンクリートで表面を覆ってしまうケースもあります。しかし、その前に、別の案を探ってみることを強くおすすめします。 というのも、コンクリートで覆われた庭は、夏の暮らしの快適度を著しく低下させるからです。コンクリートで覆われた地面は、真夏の日射で表面温度が60℃近くまで上がることも珍しくありません。これは、もし犬を飼っている場合、愛犬が肉球に簡単に火傷を負ってしまう温度です。もちろん靴を履いている人間にも過酷です。日射を受けた地面からは赤外放射という熱が発せられ、頭上からの日射に、足元からの赤外放射が加わり、外気温が30℃でも体感温度は40℃にも上がってしまうのです。近年は35℃を超える猛暑日といわれる日が続くことも珍しくありませんが、地面からの赤外放射がある場合、気温プラス10℃が体感温度だとすると、猛暑日の体感温度は45℃以上。もはや熱湯風呂です。 さらに、コンクリートで覆われた面積が広ければ広いほど、この赤外放射の熱量は増します。環境省が発表している「まちなかの暑さ対策ガイドライン」によると、真夏の正午(気温約33℃)に、幅の広い道路で歩行者が受ける受熱量を計算したところ、6畳の部屋で1,000Wの電気ストーブを10台使用した場合と同程度の熱量になったという報告があります。まさに灼熱地獄。こんな環境に長く身を置いたら、冗談ではなく死にそうです。 自動車が走る道路はアスファルトで覆う必要がありますが、自宅の敷地内にこんな過酷な環境を自ら作り出すのは、まったく名案とはいえません。もちろん、室内ではエアコンを利用するでしょうが、前述したように、外は電気ストーブを並べて家をガンガン温めているような状態なのですから、冷房効率はとても悪く、CO2排出量も無駄に上がってしまいます。草取りから解放されるというメリットを得る代わりに、灼熱地獄に毎夏、耐えなければならないなんて、あまりにも代償が大きく、無謀なチャレンジ。 しかし、もちろん選択肢は、この2つだけではありません。 緑で覆われた地面は10℃も低い! おすすめの選択肢は、小さくても庭をつくることです。地面には雑草の代わりにグラウンドカバープランツと呼ばれる地被植物を植えます。地被植物は草丈が低く、地面を這うように育つため、緑の絨毯のように茂って、雑草が生えにくくなります。芝生もその一つですが、他にも花が咲くものや香りのよいものなど、いろいろな種類があるので、以下の記事を参考にしてみてください。 ●グラウンドカバーに最適な植物10選【足元のカバーや雑草対策に活用!】 地面をグラウンドカバープランツで覆った部分は、日向のアスファルトより10℃以上低いことが確認されています。そのメカニズムは、植物の蒸散作用にあります。植物は葉っぱの裏から水蒸気を出して水分量の調節をしており、気温が高ければ高いほど多くの水蒸気を放出します。この蒸散作用のおかげで、グラウンドカバープランツで覆った地面は日射を受けても表面温度が上がりにくく、夕刻以降は気温よりも低くなります。同様の理由で、家の周りに植物の垣根を巡らせたり、フェンスにつる植物を這わせたりすることも効果的です。ただし、蒸散作用は植物の生命活動の一環ですから、人工芝やフェイクグリーンなどでは、その効果を得ることはできません。 緑の木陰は同じ気温でも体感温度が7℃も低い! また、樹木が作る木陰は、頭上からの日射と赤外放射を軽減し、同じ気温でも体感温度が7℃程度低くなるという結果が出ています。個人邸の庭では、あまり高くなりすぎないニシキギやマンサクなどの中低木を植えたり、藤棚などのようなパーゴラを設置するのも手です。また、ゴーヤなどで作るグリーンカーテンにも夏の強い日差しをカットし、蒸散作用によって気温を下げる効果があります。植物は日光を浴びて光合成し、新鮮な酸素をたっぷり排出してくれるので、緑の庭から入ってくる空気も美味しく感じられることでしょう。 ●庭木にオススメの樹木と選び方、助成金も賢く利用しよう! 庭をつくり始める前に除草処理をしておこう さて、植物を植える前に、大事な作業が除草処理です。前述したように、庭の土にはあらかじめ雑草の種子がたっぷり含まれているため、そのまま庭づくりをスタートすると、雑草が生えてきます。草取りの労力を減らすために、阿部さんは造園の前準備として、除草剤を使って一度地面をリセットしてから土壌改良を行い、植栽をしています。「除草剤にはさまざまなタイプがあります。発芽前の種子に効くものや、すでに生えている草に効くもの、また持続期間も2〜3週間で切れるものから半年以上続くものまであるので、適したものを選んで使います」。 ●草取りで心が折れそうな人へ。除草剤の効果的な使い方 植物を植えるエリアと人の通り道、居場所を明確に 除草したあと、地面の表面温度が下がるからといって、一面に植物を植えてもよい結果にはなりません。植物の手入れをしたり、家との出入りをしたり、庭の中には人が通る動線があります。いつも踏まれているところは、芝生も傷み、張り替え作業が必要になります。ですから、人の動きを予測し、歩く場所にはあらかじめレンガやタイルで小道をつくっておきます。 しばしば、屋外空間が車庫スペースとして大幅に取られる場合がありますが、その場合にはグラウンドカバープランツで地面を覆い、車のタイヤが通る部分だけをタイル敷きにするという方法で緑化面積をつくることができます。 また、阿部さんは庭に人の居場所をつくると、より暮らしが楽しくなると話します。「デッキを設けたり、ガーデンファニチャーを置く場所をあらかじめ決めて庭をデザインするといいですよ。室内から眺めるだけでなく、庭を生活空間の一つとすることで、Stay Homeの難局も苦にならずに過ごせると思います。実際、そのように思われる方が多いようで、造園の依頼は増えていますね。緑は温度を下げるというだけでなく、さまざまな季節の楽しみをもたらし、植物の手入れをすることでリラックス効果が得られることも科学的に分かっています」。 阿部容子さんが実践する庭づくりのメソッドが詰まった新刊書『宿根草で手間いらず 一年中美しい小さな庭づくり』 雑草対策の他にもキッチンガーデンや果樹、ハーブなど、さまざまなアイデアで庭のある楽しい暮らしを提案してくれる阿部さん。これまで数々の庭づくりの経験をしてきた阿部容子さんが監修した庭づくりの書籍『宿根草で手間いらず 一年中美しい小さな庭づくり』(西東社刊)が、2022年4月25日に発売されました。 庭は暮らしにもっとも身近でありながら、日常の緊張感からも身も心も解きほぐしてくれる癒やしの空間になります。ですが、どんな小さな庭でも少なからず手入れが必要になります。庭主がメンテナンスによってストレスにならないようにと阿部さんがこれまで実践してきた庭づくりのノウハウが詰まった一冊。ガーデニングに悩む方や、これから本格的に庭をつくろうとしている方への力になる書籍です。 <主な内容>手間をかけずに四季を彩る!居心地のよい小さな庭のつくりかた! ●植え替え不要の宿根草を生かした庭! ●まねしたくなる、美しい実例がたくさん! ●植物の選び方、配置、組み合わせ方が理論で理解できる! ●小さな庭で活躍する植物図鑑つき! 『宿根草で手間いらず 一年中美しい小さな庭づくり』 監修/阿部容子 発行/西東社 A4変形版 カラー144ページ 定価1,500円+税 造園家・阿部容子さんを講師に迎えるオンライン配信「ストレスフリーの庭づくり」 2022年5月14日(日)15時より、ガーデンストーリークラブ会員さまと一般の方に向けて、造園家・阿部容子さんを講師に迎えるオンラインサロンをおこないました。2022年4月25日に発売された阿部さん監修の新刊書籍『宿根草で手間いらず 一年中美しい小さな庭づくり』をテキストに、庭づくりの手順やストレスフリーな庭づくりのために抑えておきたいポイント、気を付けたいNG集などを解説。サロンは、阿部さんが手掛けた庭から生中継!アーカイブで全編閲覧ご希望の方は、クラブ会員サイトよりお申し込みください。 ●ガーデンストーリークラブについてのご案内はこちらのページをご覧ください。 YouTubeライブ配信URLはこちら→https://youtu.be/COXyLBTAPYY
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樹木
庭木にオススメの樹木と選び方、助成金も賢く利用しよう!
庭の中での樹木の役目 樹木も草花と同様にさまざまな種類があり、樹高や樹姿、落葉、常緑といった特徴を踏まえて庭に適したものを選びます。樹木を選ぶときは、庭のどこに何の目的で植えるかを明確にしておく必要があります。 生け垣に向く樹木の特徴 植える目的が分かりやすいのは、生け垣。生け垣は、主にフェンスなどと同様に、敷地の境界線を示し、公道からの視線を遮るという明確な目的で植えられます。ですから、向こう側が見通せないよう枝葉の密度が高く、下部から葉が茂り、病害虫に強いものが適しています。また、公道に面している生け垣は、美観はもちろんのこと、枝葉が伸びすぎて通行の邪魔にならないように、常に形を保っておく必要があります。このため、年に3回程度は刈り込みますが、刈り込んでもすぐに新芽が発生する性質も生け垣にする樹木の条件です。これらの特徴を備えているのが、生け垣によく用いられるレッドロビン、オウゴンマサキ、トキワマンサク、アラカシ、シルバープリペットなどです。 生け垣に助成金が出る自治体も 生け垣はフェンスと同様の目的と書きましたが、そのほかにも防音効果や火災の際の延焼防止、空気の浄化、さらに街の景観の一部としてなど、公共的な役目も果たします。そこで、自治体によっては新たな生け垣の造成に助成金制度を設けている地域があります。一軒あたり、総額500,000円という決して少なくない額を示している地域もあるので、生け垣を作ろうと思っている場合は、一度お住まいの自治体の制度を調べてみるとよいでしょう。 シンボルツリーとは シンボルツリーとは、その家の象徴となる樹木のことです。家の外観に調和させるため、低木ではなく、ある程度高さのある樹木が植えられます。花が楽しめるハナミズキやヤマボウシ、ヒメシャラに加え、近年は常緑でおしゃれな雰囲気のオリーブやシマトネリコなども人気です。ただし、これらの樹木はいずれも「高木」といわれる樹種で、10年もすると見上げるような姿になるので、植え場所をよく検討し、高くなりすぎる場合は剪定で樹高を抑えて育てる必要があります。ちなみにシンボルツリーの植樹にも助成金が出る自治体があります。 小さな庭に向く樹木 紅葉が見事なニシキギ 日本の狭小な住宅事情を考えると、前述の樹木より樹高の低い樹木のほうが扱いやすく、親しみやすいかもしれません。小さな庭にオススメなのが、ニシキギです。ニシキギは低木といわれる部類に入り、樹高は大きくなっても2〜3mで自然に止まります。このくらいの樹高で止まってくれれば、自分で剪定もしやすいでしょう。それになんといっても葉の美しさが格別です。ニシキギという名の通り、最大の魅力は錦のごとく見事な紅葉です。晩秋には実がはじけてオレンジ色のタネがぶら下がり、その姿はなんとも可愛らしいものです。冬は落葉します。春から夏にかけては明るく柔らかい黄緑色の葉が茂り、「翼(よく)」と呼ばれる特徴的な姿をした枝は生け花の花材としても重宝されています。剪定によく耐え、新芽を素早く吹くため生け垣にもしばしば用いられますが、自然樹形で育てても写真のような品のよい姿にまとまります。季節ごとにさまざまな表情で楽しませてくれるオススメの樹木です。 鮮やかな花と葉が美しい赤葉紅花トキワマンサク もう一つおすすめなのが、赤葉紅花トキワマンサクです。常緑の葉は鮮やかな赤色になり、春になるとフューシャピンクの花が木の全体を覆うように咲き、華やかこの上ない姿になります。よく垣根にも利用される樹種ですが、単独で自然樹形に仕立ててもシンボルツリーや庭木として活躍してくれます。3m以上伸びる中木に分類されますが、主幹を好みの高さで切って樹高をコントロールすることが可能です。下のほうにも枝葉が茂るので、見上げることなく目線で美しい葉が楽しめます。手入れも比較的楽で、芽吹きがよいので、あまり時期や切る場所を気にせず剪定ができます。枝の伸びがよいので、花が咲き終わるのを待って5月くらいに切り戻すとよいでしょう。また、枝が混み合う場合には枝元から剪定して枝数を間引き、風通しをよくしておきましょう。 花も実も紅葉も楽しめるジューンベリー ジューンベリーも庭木にオススメの樹木です。春には白い小さな花が咲き、初夏には赤いベリーがたくさん実ります。果実は甘酸っぱく生食もできますし、ジャムにして保存も可能です。秋の紅葉も見事です。高木に育ちますが、生育がゆっくりなので毎年、落葉期に剪定することで樹高のコントロールが容易です。剪定も難しいルールは一切ないので、伸びすぎた枝や混み合った箇所の枝を切るようにしましょう。また、果樹の多くが害虫被害を受けやすいのに対し、ジューンベリーはほとんど心配がありません。ただし、この赤い果実は鳥たちも好物。いろいろな野鳥がやってきますが、庭でバードウォッチングができると思って、彼らをあまり敵視しないほうが楽しいガーデンライフを送ることができるでしょう。 株立ちと単幹(一本立ち) 株立ち・単幹(一本立ち)の雰囲気の違い 樹木には株立ちと単幹(一本立ち)という樹姿があります。株立ちとは、根元から複数の幹が生えている状態の木で、上の写真では左側のカツラのような樹姿です。複数の幹に栄養が分散されるため、幹が細く繊細で優しい雰囲気になります。1株で雑木林っぽい雰囲気を出せるのも特徴です。 一方、単幹(たんかん)とは、幹が1本の樹姿です。上の写真では右側のクローブが単幹です。1本の幹に栄養が集約されるため、太くしっかりとした幹になり、堂々とした雰囲気が出ます。 株立ち・単幹(一本立ち)のそれぞれの役割 こうしたビジュアルや雰囲気の違いだけでなく、株立ちと単幹では、同じ樹種でも育ち方に違いが出てきます。複数の幹に栄養が分散される株立ちは、上に伸びるスピードが比較的遅く、樹高も単幹より低くなります。ですから、住宅街の庭などで、あまり大きくしたくないけれど、どうしても高木の樹種を植えたい場合などは、株立ちを選ぶことで解決できることもあります。 また、株立ちは横に広がって育つため、隣家からの視線を遮る目隠しの効果もあります。さらに、株立ちの樹木は屋上ガーデンやベランダガーデンなど、根が張れるスペースが限られている場所にも向いています。単幹は台風などの場合に強い風にあおられ根こそぎ倒れてしまうことがありますが、株立ちは幹の間から風を逃がすことができるので、倒れにくいからです。 一方、単幹はスッキリとした樹姿を生かしてフォーマルな雰囲気をつくることができます。上の写真ではシラカバを小道の両脇に左右対称に植え、ゲートのようにしました。落葉樹なので冬には葉が落ちますが、白い幹肌が際立って美しい風景をつくってくれます。 また、単幹は使い方次第で庭を実際よりも広く見せることができます。伝統的な庭園の構成には、樹木の足元に「根締め」といって、低木のツツジなどを植えるセオリーがありますが、小さな庭ではそれとは逆に、意識して何も植えずに空白をつくります。この空白のことをエアポケットといいます。あえて何もない余白の空間をつくることで印象を操作し、庭にゆったりとした雰囲気を生み出すことができるのです。ですから株元に植栽をするなら、グラウンドカバー程度にとどめておくといいでしょう。 このように樹種や樹姿の選び方、使い方によって印象操作が可能になり、より魅力的な庭をつくることができます。樹木は一度植えたら変更や移動が難しい植物です。キレイだから、好きだからということはもちろん大事ですが、それに加えて、その場所でのその木の役割を考えてみることも、樹木選びのポイントです。
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宿根草・多年草
庭に一度植えたらどんどん増殖!? はびこって困る要注意植物5つ
一番困る植物は「地下茎で増える」植物 写真は、街中ではびこっているのをよく見かけるヒメツルソバです。野生化してどんどん広がる生育旺盛な植物ですが、増えすぎれば抜き取ってなくすこともできます。でも、これからご紹介する5つの植物は、抜いても抜いてもどこからか生えてくる“地下茎(ちかけい)”で広がる困った植物です。地下茎で増えるとは、地面の中で根を横に広げながら伸びていくという意味。その根はどこまで伸びているか目で確認ができないため、思いがけないところから芽を出します。また、地面を掘り起こして根をすべて除去できたと思っていても、5㎜でも地中に根が残っていたら再び芽を出すという生命力を持っています。 これから登場する5つの植物は、花や緑を楽しみたいガーデンには、極力植えないほうがよいと覚えておきましょう。 はびこる植物1つめは、竹・笹 寒さに強く、春にはタケノコの味覚の楽しみをもたらしてくれる竹。日本でも古くから親しまれてきた植物ですが、新たに住宅街のガーデンに植えるのはやめましょう。竹や笹など竹の仲間は成長力が強く、1日で1m以上伸びるともいわれています。竹林の近くにある民家の敷地に竹が侵入して、困ったという事例が多くあります。 はびこる植物2つめは、ミント類 葉を揉むと爽やかな香りが立ち上り、ハッカとしても馴染みがある代表的なハーブの一つ、ミント。切った茎をコップの水に挿しておくだけでも根が出るほど丈夫で、こぼれダネや地下茎で繁茂します。ミントの仲間はとても多く、ペパーミントやスペアミント、モロッコミント、アップルミント、グレープフルーツミント……と書き出すときりがありません。バリエーションが豊かなので、いろんな品種をコレクションしようと、何種か一緒に花壇に植えると、地下茎同士で交雑してしまい、品種の区別もつかなくなってしまいます。もしミントを育てるなら、品種ごとに鉢植えにしましょう。そして、鉢は地面から離すことが肝心。地下茎が鉢底穴から伸びて、気がついたら地面に這って伸びていたということもあります。 「レモンバーム」と名前がついていても、ミントの仲間です。苗を買う時、何の仲間か見ても分からない時は、札をよく見て選びましょう。お店の人に教えてもらうのも一案です。 はびこる植物3つめは、グレコマ 別名、カキドオシ(垣通し)と呼ばれ、名の通り垣根を通り越してお隣さんの敷地にまで伸びていく、生育旺盛な植物。葉が白く縁取られた、カラーリーフ(グレコマ・ヘデラケア/西洋垣通し)としてもよく目にする植物です。茎を伸ばし、小さめの葉がアクセントになることから、寄せ植えの脇役としても人気です。「鉢植えなら広がって困ることはないでしょう」と思ったら大間違い。成長スピードが速いので、鉢の縁から伸び出た茎が地面に到着。そして、根を下ろして地面を這って広がってしまうのです。グレコマを鉢植えにしたら、地面に届かない場所かテラスなどに飾りましょう。 はびこる植物4つめは、ラミウム グレコマと同様に小ぶりの葉をつけ、20〜40㎝ほど茎を立ち上げながら地下茎でどんどん増えるラミウム。道端でも見かける日本の自生種、ホトケノザやオドリコソウの仲間です。環境に適した場所だと、どこまでも伸びていく生育旺盛な性質。ハンギングバスケットや寄せ植えのカラーリーフとしてよく使われています。また、庭植えのグラウンドカバーとしての役目を果たしますが、思いがけない場所に生えてしまうので注意が必要です。 ラミウムには、葉に入る白い斑模様にいくつかバリエーションがあります。5〜6月には黄色や紫などの花が咲きます。姿は可愛らしく、ガーデンにも似合いますが、広がることを知ったうえで取り入れるとよいでしょう。 はびこる植物5つめは、ドクダミ 道端や空き地などでも群生し、独特な香りを放つドクダミ。お茶などでも馴染みがあり、抗菌作用があるといわれています。半日陰の湿った場所が好みですが、生育に適した環境だとどんどん広がっていきます。家の影になって、他の植物が育ちにくいデッドスペースに育っている分には特に気にならない、というならば恐れなくても大丈夫です。 ドクダミと認識していなかったのに、いつのまにか鮮やかなカラーリーフがドクダミに占領されていたら驚きますよね。ハート型の斑入り葉の周囲が赤く染まり、一見カラーリーフとして目を引く写真の植物は「ゴシキドクダミ」。別名、カメレオン、フイリドクダミ、トリカラーなどとも呼ばれるドクダミの園芸品種です。これもドクダミと同様に地下茎で増えるのですが、日照りが続いて水が切れたりすると原種にかえり、いつのまにか鮮やかな斑がない緑葉のドクダミへと変わってしまうという事例があります。お気に入りの植物を育てる場所としてガーデンを楽しんでいるところに、植えた覚えのないドクダミが取っても取っても生えてくる。思いがけない地下茎のワナにはまらないためにも、ゴシキドクダミは地植えにするのは避けましょう。 はびこる植物を庭に取り入れたい場合 これらのように、旺盛に茂る植物は場合によっては大変なことになりますが、その性質を知ったうえで、上手に取り入れる手段もあります。それはルートコントロール。「ルート」とは根っこのことです。地中に根っこが伸びられる範囲を制限する仕掛けをする方法です。そのように根の生育をコントロールしておけば、必要以上にはびこって、草取りに追われることもありません。詳しくは以下の記事で紹介していますので、参考にしてみてくださいね。 Photo / 1) A.Sontaya/ 2) Teresa Design Room/ 3) footageclips/ 4) agatchen / 5) Skyprayer2005 / 6)mizy7-1) InfoFlowersPlants/7-2) Ole Schoener/ 8)feathercollector / 9) guentermanaus / Shutterstock.com