あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
阿部容子 -ガーデンデザイナー/造園家-
あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
阿部容子 -ガーデンデザイナー/造園家-の記事
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植物の効能
豪雨対策から冷却効果まで!ローメンテナンスな庭で暮らしが変わる5つの方法
激烈化する気候、都市部の住宅地にも迫る危険 2024年7月から9月初頭までの間に発令された「記録的短時間大雨情報」は計47回。そのうち43回が1時間に100mmを超す豪雨でした。1時間に100mmの雨とは、ほとんどの排水システムでは処理できない量の水が発生し、大規模な冠水が発生する雨量です。実際、この夏には台風でないにもかかわらず、豪雨により東京都内のあちこちで道路が冠水し、車が水没する事態が起きました。都市部の排水システムは通常、1時間あたり数十ミリの降雨量を想定して設計されているため、下水管がすぐさま満杯になり、マンホールから水が噴き出したり、トイレや台所の排水溝から水が逆流するなどの被害も発生。こうした都市型洪水は排水システムの限界のほかに、都市の地面のほとんどが透水性の低いアスファルトやコンクリートで覆われていることも原因の一つです。そのため、地中への水の浸透が間に合わず、短時間で大量の雨水が地表に流れ、冠水や洪水の原因となっています。 グリーンインフラとして世界に増える街中の庭 高架の廃線跡地を約2.3kmの公園にしたニューヨークのハイライン。Pit Stock/Shutterstock.com こうした気候変動がもたらす課題への解決策として、「グリーンインフラ」の整備が進んでいます。「グリーンインフラ」とは、自然のプロセスを利用して雨水管理や都市の温暖化対策などを行う仕組みのことで、世界ではグリーンインフラとして街中や住宅地に庭を増やす取り組みが始まっています。 雨水吸収&水質ろ過装置として機能するレイン・ガーデン 例えば、ニューヨークの観光名所にもなっている全長2.3kmに渡る廃線跡を公園にした「ハイライン」では、土の層、下層土、排水マットを組み込んだ高度な排水システムが採用されており、最大80%の雨水流出を削減し、都市型洪水を防止する役目を果たしています。植物にすぐに吸収されなかった水は排水マットに蓄えられ、乾燥時に利用できるようになっており、補助的な灌漑の必要性を減らし、ハイラインをより持続可能なものにしています。 かつて治安悪化の要因となっていた廃線跡地は「ハイライン」として生まれ変わり、周辺の不動産投資も活性化した。MisterStock/Shutterstock.com また、同市ではハリケーンによる都市型洪水の対策として、街中に1万箇所以上のレイン・ガーデンをつくる「ミリオンダラー・レイン・ガーデン・プロジェクト」が進行中です。レイン・ガーデンとは、雨水を吸収させることを目的につくられた庭で、地中に張り巡らされた植物の根が雨水の通り道となり、地下へ水を誘導したり、植物が水を吸い上げることを利用したものです。ニューヨークでは庭1箇所あたり1万3千ℓ以上の雨水を吸収し、下水システムに流れこむ雨量の削減に成功しています。レイン・ガーデンを通した雨水は土に浸透する過程でろ過され、河川の水質の改善にもつながるため、日本でも善福寺川の水質向上を目的として、杉並区でレイン・ガーデンの取り組みが行われています。 庭によるヒートアイランド現象の緩和効果 緑によるヒートアイランド対策を観光にもつなげているシンガポールの繁華街。Sergey Peterman/Shutterstock.com 庭は雨水を吸収するだけでなく、都市部の熱帯化を緩和するクーリング装置としても着目されています。コンクリートで覆われた地面は、真夏の日射で表面温度が60℃近くまで上がることも珍しくありません。さらに熱せられた地面は赤外放射という熱を発し、頭上からの日射にこの赤外放射が加わると、外気温が30℃の場合、体感温度は40℃にも上がってしまいます。こうした都市部特有の熱帯化をヒートアイランド現象と呼び、熱中症対策として近年、街中にミストを設置しているところがありますが、まさにガーデンはそのミスト装置と同様の働きをします。植物は根から水分を吸い上げ、余分な水分を葉の裏から水蒸気として放出する「蒸散」を行っており、ガーデンは水道代や電気代のかからない天然のミスト装置ともいえるのです。 「ホテル・イン・ア・ガーデン」をコンセプトにしたラグジュアリーホテル「パークロイヤルオンピッカリング」。RuslanKphoto/Shutterstock.com 緑による先進的な取り組みが進むシンガポールのホテル「パークロイヤルオンピッカリング」では、植物の蒸散作用を利用したエネルギー削減に成功しています。このホテルでは敷地面積のほぼ2倍にあたる15,000平方メートルを超える緑を有し、建物表面に受ける熱を遮断するとともに、植物の蒸散作用によって建物外壁の全体的な温度を下げ、エアコンのようなエネルギーを大量に消費する冷却方法の必要性を減らしています。同ホテルの環境に配慮した設計は数々の賞を受賞しており、サステナブル建築が都市の居住空間を向上させながら、ヒートアイランドの影響をいかに軽減できるかを示す好例となっています。 ガーデンプランツの炭素固定能力にも集まる注目 根が深く炭素固定に効果的で、バイオエネルギーとしての利用研究も進むパニカム・ウィルガツム。Molly Shannon/Shutterstock.com 植物は光合成を通じて大気中のCO2を取り込み、炭素を有機物として蓄積します。特に成長が早く盛んに光合成を行い、なおかつ根が深く長寿命の植物は、多くの炭素を土壌深くに固定し、長期的に安定した炭素ストックを形成するため、気候変動の緩和に重要な役割を果たすとして注目されています。樹木で構成された森林は重要なCO2吸収源とされていますが、環境省の発表によると2020年の日本の森林等によるCO2の吸収量は4,450万トン、それに対し排出量は11億5千万トン。今ある森林の吸収量では到底追いつかないため、CO2の削減とともに吸収源を増やす対策の一つとしてグリーンインフラが急がれているのです。ガーデンを彩る草花のなかにも炭素固定能力に優れたものはいくつもピックアップすることができ、特に長寿命の宿根草類や低木類は有力候補となります。 都市公園は緑の機能性を市民に共有する知的共有スペース 浜名湖ガーデンパークのユニバーサルガーデン。 このようにガーデンは気候変動の影響を緩和し、持続可能な社会を構築するためのインフラとして重要な役割を果たすことが期待されています。 「都市公園はこうしたインフラ機能を街に提供する役割があり、さらにガーデンの有用な機能を市民に知識として共有する役目も担っています」と話すのは造園家の阿部容子さん。ガーデンの持つさまざまな機能を分かりやすくデザインした浜名湖ガーデンパークの「ユニバーサルガーデン」の設計者です。阿部さんはガーデンのインフラ機能として、人々の心身の健康を向上させる面にも注目し、五感に積極的に働きかけるようユニバーサルガーデンを設計しました。 五感に合わせてエリア分けされており、小道状のガーデンを通り抜けると心身が健やかになることをコンセプトとしている。 「ガーデンがインフラとして浸透するには、ガーデン自体の持続可能性がポイントです。植物はメンテナンスをしなければ、その機能を十分果たさないばかりか、倒木や予期せぬ繁茂などのリスクを招く場合もあります。また、メンテナンスに労力がかかり過ぎても維持が難しくなります。ですから、メンテナンスは必要ですが、ローメンテナンスな庭であることが重要なのです」。 阿部さんは庭のメンテナンスの中でも最も労力が高い雑草管理を大幅に削減する工法を用い、さらにローメンテナンスな植物を200種以上組み合わせてユニバーサルガーデンを設計施工。持続可能でグリーンインフラとしても有効なガーデン設計について解説してもらいました。 雑草管理を大幅に減らす「ノンストレスガーデン工法」 ユニバーサルガーデンの施工中。植え穴には専用のリングをはめて、防草シートをしっかり土に留めつける。 「ユニバーサルガーデン」は基本的に雑草管理の必要がないように、ノンストレスガーデン工法で施工しています。ノンストレスガーデン工法とは、簡単にいうと植栽帯全面に防草シートを敷き、植栽計画に沿って適切な植え穴を開けて植栽することで、ガーデン全体に雑草を生えさせない工法です。植栽後、防草シートの上にはバークチップや土壌資材のバイオマイスターを施すので、施工直後から防草シートは見えずに自然な雰囲気です。 マルチングに使用しているバイオマイスター。 バイオマイスターは根を生育させるための肥料成分や土壌中の有害な菌の発生を抑え、植物の生育を助ける善玉菌を多く含んだ土壌資材です。防草シートの上からもそれらの有効成分を土壌に浸透させることができるので、仕上げのマルチング材に使用すると、より効率的に植物を育てることができます。マルチングは自然に減っていくので、上から追加してまき直すことで植物の健全な生育が維持できます。地表は防草シートとマルチング材で覆われており、乾きにくいので基本的に植え付け初年度以外は自然の降雨に任せ、水やりの手間も必要ありません。 ノンストレスガーデン工法のポイントは、排水を整えた土壌整備と防草シートの敷き方・留め方、植物ごとの適切なサイズの植え穴です。ノンストレスガーデン工法の詳細はこちらで解説しています。 グリーンインフラプランツとして有効な植物 マット状に広がるクラピアは地熱を抑える役目を果たす。 ガーデンを持続可能なものとするか否かは、植物選びも重要なポイントです。環境にあった植物を選ぶことでメンテナンスの労力は大幅に減らすことができます。特に近年は、夏の暑さや豪雨に耐えられるものであることが大事な条件になってきています。ローメンテナンスの観点から見れば「丈夫で長寿命」な低木や宿根草が挙げられますし、暑さに耐えられるものは根が深く張るもの。つまりこれらの条件が揃う植物は、グリーンインフラに最適な「グリーンインフラプランツ」といえます。 クラピアの白い小花にはミツバチが集まり、生物多様性にも寄与する。 例えば、ユニバーサルガーデンでグラウンドカバーとして使っている宿根草のクラピアは、地上部の草丈は最大20cm程度ですが、地中の根はなんと150cmまで深く伸びます。一般的に深さ1m以上になると炭素固定に有効とされており、クラピアは雨水の貯水や炭素固定能力に効果的であると考えられます。また、クラピアは生育が早く地表近くにも細根が密集し、植栽後2カ月で1株が約0.25㎡を覆い、地温を下げるのにも有効なので、優秀な「グリーンインフラプランツ」といえます。 探そう!グリーンインフラガーデンプランツ こんもり茂った日本の自生種アシズリノジギク。 クラピアの原種は海岸沿いで生育する在来種イワダレソウです。こうした海浜植物は砂地に生育するため、深く広く根を張る性質があり、クラピアの他にもユニバーサルガーデンに取り入れているアシズリノジギクも同様の能力が期待できます。他にもイトススキやフウチソウなどのイネ科のグラス類は、根が深く炭素固定能力が高い植物として注目されており、イネ科が多い日本の在来種には有効なものがまだまだあると私は考えています。光合成を盛んにするという観点からは葉が大きいギボウシや常緑のノシランなども候補になるでしょう。このようにグリーンインフラという観点で植物を見直すと、目に見える美しさに加え、植物のすごい能力に改めて気付き、魅力を再発見することができます。公園の植物やご自身の庭にも、地球温暖化の危機的状況を救う「グリーンインフラプランツ」がたくさん見つけられるかもしれません。 病害虫対策を大幅削減する生物多様性ガーデン ユニバーサルガーデンは200種以上の植物が入っており、基本的に防除や予防の散布といったメンテナンスはしていません。多品種を入れることで益虫と害虫のバランスが自然に保たれ、予防や防除の労力を大幅にカットできます。また、病害虫がよく発生するのは風通しの悪い場所なので、植物が混み入らないよう注意します。植栽計画を立てる際、植える植物の最終的な株サイズを把握し、隣り合う植物の葉が触れ合う程度の間隔を保って植栽位置を決めると、風が通り抜け病害虫が発生しにくくなります。 また、五感に働きかけることをテーマにしたユニバーサルガーデンの「音のエリア」には、鳥を呼ぶエゴノキやジューンベリーなどの樹木があります。実際、木にかけた巣箱では春に子育てをする姿が見られたので、小鳥たちも害虫防除に大いに活躍してくれていることと思います。病害虫対策の観点からだけでなく、たくさんの生き物がいるガーデンは、人にとっても心地よいものです。気候変動の緩和だけでなく、人の心身の健康を向上するという観点からもガーデンは重要なインフラ機能として評価されています。 未来を変える庭の力 このようにガーデンはさまざまな問題を解決する力があり、環境面や経済面、健康福祉の観点からも多大な価値を持つグリーンインフラとして社会に広がり始めています。もしあなたが庭を持っているなら、もちろんその庭は重要なグリーンインフラの一つです。庭は私たちが楽しみながら日常生活に取り入れられる持続可能な解決策であり、地球規模での環境保護に寄与する重要な一歩となるのです。
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ガーデンデザイン
【実例】ストレスから解放するセラピーガーデンデザインVol.1 健康と社会にアプローチする都市公園
大規模都市公園の中の「ユニバーサルガーデン」の役割 * 浜名湖ガーデンパークは、浜名湖畔に56ヘクタールという広大な敷地を有する都市公園です。2004年に「浜名湖花博」の会場として整備され、その翌年から静岡県営の公園として一般に無料で開放されています。2024年春には花博から20周年を迎え、その記念事業の1つとして、私たち「かたくり工房」はパークの西側エリアにある「ユニバーサルガーデン」のリデザイン&施工を引き受けることになりました。 市民が暮らしの中で日常的に親しむ公共空間をデザインするにあたり、私は改めて公園の役割について考えました。公園はしばしば「憩いの場」と表現されますが、「憩い」には「身体や心を休めること」「安らかにする」という意味があります。つまり、公園には疲れた身体や心を安らかな状態にする「癒やし」の役割が求められているのです。そこで、私はデザインコンセプトを「セラピーガーデン」とし、植物が人の心身にもたらす作用を積極的に取り入れることにしました。 緑を見てホッとしたり、癒やされるという感覚は、誰しも経験があるかもしれません。これまで体験的なものとして知られてきたこうした感覚は、近年さまざまな研究によって科学的に解明されてきています。例えば、千葉大学大学院・園芸学研究科の岩崎寛准教授は、血圧の正常化など、緑が心身にもたらす生理的作用を発見。緑を見ることで恒常性回路(健康を維持するための機能)が崩れる要因となるストレス刺激が緩和され、自己治癒力を高める効能があることを解明しました。 また、植物の香りには種類ごとにさまざまな作用があり、ラベンダーの香りが副交感神経に働きかけ、心身をリラックスさせたり、安眠効果があることは有名です。このように植物は視覚や嗅覚など人の五感に作用し、安らかな状態にするさまざまな力を持っているのです。そこで私は、東西に細長い敷地のこのユニバーサルガーデンを嗅覚・触覚・味覚・視覚・聴覚の5つのエリアに分類し、それぞれの感覚に働きかけることが期待される植物をセレクトしました。 聴覚に働きかける「音のエリア」。 例えば、嗅覚のエリアでは、前述したラベンダーのほかに、同様の効果があるとされるクチナシや、女性ホルモンに作用するバラ、認知機能を高める柑橘系の香りのタイム‘レモン’など、香りの効果があるものをセレクトして入れています。また聴覚のエリアでは、小鳥が訪れるのを期待して、エゴノキやジューンベリーを植栽し、巣箱をかけておきました。すると早速、オープンから1カ月余りでシジュウカラが入居し、かわいいさえずりをガーデンに提供してくれています。 2024年春のオープンの際の様子。車椅子の利用者と家族がガーデンを散策していた。宿根草はまだ小さく、植物は2年後に本来の大きさに生育する。 このように、エリアごとの目的に合わせて植物をセレクト。東西に細長い100mほどの小道状のガーデンを端から端まで歩いていけば、植物が五感に働きかけ、通り抜けた後には心身が安らいでいる、というイメージで設計をしました。それぞれのエリアの植物とその作用については、今後の連載内で詳しく解説していきます。 (*ガーデンは現在夏季養生中/2024年8月中) 維持管理のストレスを極力減らす雑草対策 このようにユニバーサルガーデンは植物のセラピー効果を積極的に取り入れたガーデンですが、一方で植物は人にストレスを与えることがあります。その一つが雑草の繁茂。ガーデニングをしている人は実感があると思いますが、草取りの労力はガーデニングの中で大きなストレスとなります。ことにこうした公園のような広いエリアでは雑草の管理も重労働となり、管理が行き届かなければ植栽した植物の生育が阻害され、デザイン意図が崩れる大きな要因にもなってしまいます。 私はこれまでさまざまな観光ガーデンを手掛けてきましたが、草取りのためにしばしばシルバー人材センターからお年寄りが派遣され、真夏の炎天下で作業をする姿が心配でなりませんでした。ガーデンの維持管理は設計施工者である私たちではなく、公園側へ委ねることになり、こうした市民の力を借りることも大いに考えられたため、雑草管理を極力少なくするということも私の使命と考えました。 植栽時の様子。左の花壇はマルチング済み。右の花壇はマルチング前で、専用に開発された植栽リングの中に植物を植えた状態。 そこで、この庭では、長年私たちがガーデン施工をする中で研究開発してきた「ノンストレスガーデン工法」を採用することにしました。簡単に説明すると、防草シートを植栽エリア全面に敷き、配置図に沿って植栽箇所にのみ穴をあけて植物を植えるという工法です。最後に全面にマルチングを施すため、防草シートが入っているようには見えません。この工法では、雑草を極力防ぐことができるため、選んだ草花を育てることに専念できます。ですから、草取りのストレスから開放されるという意味で、「ノンストレス」と名付けました。実際、ノンストレスガーデン工法で施工したあるバラ園は、それまで草取りにかけていたメンテナンス費が1/10に削減され、主役であるバラの手入れにより力が入れられるようになったといいます。 植物が生育すると植栽リングも隠れ、防草シートが入っているようには見えなくなる。 草取りの手間がないなら、庭を持ってみたいという人は多いのではないでしょうか。ノンストレスガーデン工法は、もちろん個人の庭でも施工可能で、私が手掛けている個人邸は、近年すべてこの工法で施工しています。私はこの工法が広がって、よりガーデンの楽しみを享受する人が増えることを期待しています。ただし、防草シートの敷き方や穴のあけ方、留め方など細部で正しく施工しないと逆効果になってしまうため、私たちが長年培ってきた知識や技術、施工後の管理方法などを他の施工者の方々に丁寧にお伝えできる形を現在模索中です。 グラウンドカバープランツとしても優秀な「クラピア」 そしてもう1つ、より誰もができる雑草対策として、グラウンドカバープランツによる雑草対策も取り入れています。グラウンドカバープランツとは地面を這うように広がってくれる植物で、さまざまな種類があります。代表的なものは芝生やリシマキア・ヌムラリア‘オーレア’などですが、芝生は密に生えそろうまでに雑草のタネが落ちて数年は除草作業が必要ですし、リシマキアはかんかん照りの場所より少し日陰を好みます。そこで近年、重宝しているのが「クラピア」です。クラピアは暑さに強く日なたでよく育ち、小さな丸い葉が重なっているので雑草が入る隙を与えません。芝生より早く生育して広がるので、新たなグラウンドカバープランツとしてさまざまな施工現場で活用されています。 グラウンドカバーとしてクラピアが優秀な理由の一つに、クラピアが日本の在来種から品種改良され、タネを作らないよう開発されていることも重要な点として挙げられます。クラピアによく似たヒメイワダレソウ(リッピア)という植物がありますが、こちらは外来種で旺盛に繁殖するため、日本では「生態系被害防止外来種リスト」に指定されています。ヒメイワダレソウはタネが飛んでいってしまうため、仮に農作物を作る田畑にタネが飛んで旺盛に繁茂してしまったら、とても厄介なことになります。雑草対策には、このように雑草化してしまう可能性のあるものはNG。植物には種類によってそうしたリスクもあるので、近隣への配慮もしながら選ぶ必要がありますが、クラピアは人がコントロールできるので安心して使えます。 また、浜名湖ガーデンパークはすぐそばに海があるため、クラピアが塩害に強いということもポイントです。海が近くにあるエリアでは、台風がくると海水を巻き上げた暴風雨の影響で、庭の植物が塩害によって枯れることがあります。そのため、台風の後にはホースで真水をまいて洗い流すなどの作業が必要になることがありますが、クラピアはもともと沖縄の沿岸に自生しており、塩害に強いため安心して植えられました。 白い花が咲いたクラピア。 さらに、クラピアは管理の面でも芝生と比較し、楽なのもよい点です。緑の絨毯のような芝生は植えれば勝手にできるわけではなく、むしろ植えた後の管理が肝心。芝生は刈り込むことで分枝し、密に茂って絨毯のようになるため、生育が始まる春から2週間に1回、そして生育が旺盛になる夏には1週間に1回芝刈りをするのが理想です。一方、クラピアはシーズンに1回の刈り込みで十分緑の絨毯状になります。春から夏にかけては1cmくらいのクローバーに似た可愛らしい花を咲かせ、一面の花畑のような風景を作ることも可能ですし、刈り込みの頻度を増すことで葉が小さくなり、草丈低くより緻密な緑の絨毯に仕上げることも可能です。このように、こちらの都合に合わせて管理方法が選べる点も私が気に入っている理由です。 庭づくりのアイデアを知らせる看板にも注目 クラピアについて解説した看板。文字が読めない人でも、意味が伝わるようイラストも添えた。 管理の負担を低減したり、暮らしに合わせて選択できるようにすることは、デザインや植物のセレクト次第で可能になります。特に年々、暑さが厳しくなる夏の管理を減らすことは、今後ますます課題になっていくでしょう。こうしたガーデニングの知識や技術を訪れた方にお伝えし、自宅でも活かしてもらえるように、ガーデン内には解説ガイドの看板も要所要所に立ててあります。このアイデアは、私がアメリカ園芸療法学会の会員としてカンファレンスに参加していたシカゴボタニックガーデンから得ました。このガーデンには車椅子のガーデナーが設計した「イネイブリングガーデン」というエリアがあります。「イネイブリングガーデン」とは(不可能を)可能にするガーデンという意味です。この庭には、さまざまな障害を持った人でも庭や庭づくりが楽しめるアイデアが詰まっており、そのアイデアが看板に記され、小さなポストからアイデアメモを持ち帰ることができるようになっていました。 シカゴボタニックガーデンで「イネイブリングガーデン」を設計したジムさんと。* シカゴボタニックガーデンからは、この看板だけでなく、ユニバーサルの機能についても大いに参考にさせてもらいました。ガーデンの名前にもなっている「ユニバーサル」は、しばしば「バリアフリー」と混同されますが、バリアフリーが特定の障害を持った人へ配慮したデザインであるのに対し、ユニバーサルデザインは障害を持った人もそうでない人も、大人も子どもも性別も超えて、すべての人にとって快適であるデザインのことを指します。不特定多数の人が訪れる公園には、ユニバーサルデザインの考えが不可欠ですが、私はそれを「複数の選択肢を用意する」という手法でデザインしました。 誰にとっても通りやすい園路の工夫 ユニバーサルガーデンの東口の入り口。 例えば、東口の入り口は階段を設け、西口の入り口はスロープにしました。すべてをスロープにしたほうが誰にとっても使いやすいのではないかと思われがちですが、足腰の弱った人の中には、平らな部分がない傾斜が続くほうがしんどいこともあるのです。その点、階段は一段一段平面があり安定しているため、自分のペースで進み、休みが必要ならば手すりにつかまって休憩することも可能です。 この階段は、じつは介助付きの車椅子でも、上り下りが可能です。介助者がいる場合、車椅子の後方にあるティッピングレバーを踏んで押し進めることで、前輪を浮かせて階段を上ることができます。階段の段差(蹴上げ)はその許容範囲内である14.5cmとし、一段一段車椅子が安定するように、階段の奥行き(踏み面)を120cmとしました。上るときも下がるときも介助者が下から支えて利用するよう説明した看板もあります。前述のようにスロープは傾斜が続くため、介助者は上り切るまで手を緩めることができないので、こちらのほうが都合がよい場合もあります。このように階段とスロープ、都合に合わせてどちらも選べるように東西の入り口の形状を変えてデザインしましたが、ここでは両方を体験してもらうことも目的の1つです。 車椅子の利用者になることは誰にでも起こりうることですが、家の入り口などのデザインにはいくつかのバリエーションが可能で、自身にあったスタイルはどれなのか、体験したり練習する場所として公園ほど安全な場所はありません。このようにさまざまなアイデアを持って帰ってもらい、自宅で活かしてもらうことも都市公園の役割の1つではないかと考え、より具体的に活かせるよう看板には寸法も入れています。 すべての人が過ごしやすい場所を目指したユニバーサルガーデン もう1つ、芝生のベンチも車椅子の利用者のことを考慮してデザインしました。ここは芝生に座る感覚を車椅子の人にも味わってもらいたいと作った場所です。芝生の地面から車椅子への移動は高さがありとても大変ですが、芝生の高さを上げてベンチ状にすることでスライド移動となり、車椅子の人も楽に芝生に座ることができます。 これは前述のイネイブリングガーデンを参考にしたもので、車椅子のデザイナーならではの発想に、とても感心したことを覚えています。実際座ってみると分かりますが、地面から立ち上がるより、高さのあるベンチのほうが誰にとっても負担が少なく済みます。例えば公園には赤ちゃん連れの方も多く訪れますが、芝生のベンチなら、赤ちゃんを抱いた状態でもバランスを崩さず安全に座ったり立ったりできます。 草花に触れやすいように、沿道側はレイズドベッド状花壇にした。高・中・低と3つの高さがあるので、自身に合う花壇を楽しめる。 世の中のデザインは一般に健常者の視点で作られていることが多く、ハンデを負っている方の不都合には気づきにくいものです。ユニバーサルデザインでは、その不都合を意識し、解消するデザインを模索する必要がありますが、結局それはハンデのない人にとっても快適な形であることが多いことに、このガーデンの設計を通して気づきました。また、公共の場所のデザインはそうであるべきとも思います。特に、公園は一定の時間を過ごす場所であるからこそ、いろいろな人がいることを認識し、相手の存在をお互いに気遣ったり思いやったりする場面も生まれ、「気づきにくさ」というものが解消されていくことも期待したいです。都市公園には「憩いの場」としての役割のほかに、多様性への理解を進め、よりよい社会へと導く役割もあるのではないでしょうか。ユニバーサルガーデンがたくさんの方に利用され、そうした役割を果たすことを期待したいと思います。
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ガーデンデザイン
【永久保存版】草取りのいらない「ノンストレスガーデン工法」を詳しく解説!
雑草との戦いから解放する「ノンストレスガーデン工法」 季節ごとに移り変わる美しい花々を眺めて暮らせたら素敵…と多くの人が思うものです。しかし、いざガーデニングを始めてみたら、自分が植えた花以上に、勝手に生えてくる雑草に手をわずらわされ、「こんなはずじゃなかった…」と思っている人は少なくありません。 施工前の更地。雑草に悩まされていた。 草取りのいらない「ノンストレスガーデン工法」で施工。芝生エリアを含め、庭全面に防草シートが敷かれている。 「育てたい花だけを育てたい」というごく当たり前でのようでいて、これまで叶わなかった夢をついに実現したのが、かたくり工房が開発した「ノンストレスガーデン工法」。草取りから解放されるだけでなく、プラスαのメリットがある画期的なガーデン工法です。 ノンストレスガーデン工法の3つのメリット 1 草取りをしなくていい!2 育てたい植物の生育を促進!3 育てたい植物の病気予防が期待できる! ノンストレスガーデン工法施工直後。マルチングのバークの下は防草シート。 ノンストレスガーデン工法施工2年後。植えた植物が育って、マルチングは見えない。草取りの労力ほぼなし! かたくり工房所属の造園家、阿部容子さんは、「ノンストレスガーデン工法は、年齢とともに庭づくりの体力がなくなり、植物の世話ができないとお客さまから相談されたことがきっかけです」と話します。なんとか労力を少なく、大好きな花を育てることを今までどおり楽しんでほしいと生み出したノンストレスガーデン工法ですが、今では個人邸はもちろん、公共の公園など全国から多くの依頼があります。実際に、かたくり工房がノンストレスガーデン工法で施工したバラ園は、それまで草取りにかけていたメンテナンス費が1/10にまで削減され、主役であるバラの手入れにより力が入れられるようになりました。 ノンストレスガーデン工法のSTEP この工法が正しく広がり、もっと手軽に緑を楽しめる人が増えてほしいと願う阿部さん。この工法について、詳しく解説してくれました。 【ノンストレスガーデン工法に必要な主な資材】 カラー防草シート(植栽シート)/防草効果の高い高密度の不織布製で厚さ0.45mm程度のもの。あまり分厚いものだと扱いにくいです。色は土壌となじむブラウンがおすすめ。ノンストレスガーデン工法用土壌資材(以下工法解説Step3に詳細)ノンストレスガーデン工法専用植栽リング(*ガーデンストーリーで取り扱い)防草シート用強力ガムテープ(なるべく強度の高いもの)モルタルバークか砂利(防草シートを隠すためのマルチング材)その他の道具/チョーク、カッター、ハサミ、スコップなど 【ノンストレスガーデン工法(土壌の下準備編)】 Step1 除草をする ●植栽しようと思っているエリアに雑草が多く生えている場合は、薬剤で除草します。特にスギナなど、地下茎で増える雑草がある場合は、除草剤を用いるのが効果的です。枯れた雑草はいったん取り除き、土の中に残らないようにします。 ●宿根草など必要な植物がすでに植わっている場合は、それらをいったん別の場所に仮植えしてから除草します。宿根草は根が本格的に動き出す前の3月くらいまでは移植が可能です。 ●樹木など移植が難しいものがある場合は、樹木から1m以上離して(大木の場合は上部の枝の広がり以上離して)除草剤を使います。樹木がたくさん植わっていて1m以上離せない場合は、除草剤は使わず手で除草します。 ●新築の場合、敷地内に使われている土の中には発芽前の雑草のタネが含まれていることが多いので、発芽を抑制する効果のある除草剤を用います。 <除草剤の選び方&参考商品> 除草剤は商品によって効果の持続期間が2週間〜1年と大きく異なるので、植栽までの期間を計画的に考え、適したものを用いて除草します。また、除草剤には液剤や粒剤がありますが、液剤のほうがムラなく、まんべんなくまきやすいです。 ●「グリーンスキットシャワー」/草花の周りで使用可能。1〜2週間で雑草が枯れた後すぐ、新たに植栽できる。液剤なので、まんべんなくまくことができる。 ●「草退治メガロングFL」/スギナ・ドクダミ・ススキ・ササ・ゼニゴケなどの枯れにくい雑草を退治し、発芽抑制効果もある。ただし、効き目は8カ月残るので、植栽時期を計画的に。液剤なので、まんべんなくまくことができる。 Step2 排水勾配をつける 土壌を整地します。傾斜があると、後から用いるマルチング材が流れるため、なるべくフラットにしてから、排水勾配を1%つけます(水平器を用います)。排水勾配1%とは、敷地外の排水方向に向かって1mで1cm低くなるように傾斜をつけることで、歩道もそのように作られています。見た目も歩いた感じも傾斜があるようには感じられませんが、庭の環境を健全に維持するのに必須です。排水勾配がないと雨水が庭にいつまでも溜まってしまうため、植栽した植物が根腐れしてうまく育たないばかりか、家を傷めたり、健康被害をもたらすこともあります。 Step3 土壌改良 植栽エリア内の土壌改良をします。ノンストレスガーデン工法の土作りでは、有機物をあまり含まない土壌資材を用います。有機物はいずれ分解されてなくなり、シートが徐々に沈んできてしまうためです。前のステップで除草した雑草は有機物になるため、土の中に混ぜないようにします。以下の土壌資材は団粒構造が壊れにくく、シートの浮き沈みが少ない配合です。植物の生育に必要な養分は、植栽後にシートの上から与えます。 【ノンストレスガーデン工法用土壌資材】 パーライト 14ℓバーミキュライト 14ℓ燻炭 8ℓ牛フン 4ℓダイアジノン(コガネムシの幼虫などのネキリムシ用殺虫剤) 規定用法量 上記計40ℓを、1㎡に深さ20〜30cmで敷き詰めます。 【ノンストレスガーデン工法(シートの敷き方編)】 Step1 構造物をつくる 敷地の境界線になっているブロック(自身の敷地専用か共有ブロック)に防草シートをモルタルで固定していきますが、共有でない場合は、境界線のブロックから3cmセットバックして構造物を新たに設けます。シートを留めつけるためなので、高さは5cmあればOKです。 モルタルで留めつけないと、ほんの少しの隙間からもこのようにスギナなどの雑草が繁茂してしまうので、シートの端はモルタルできっちり接着する必要があります。 Step2 防草シートを広げる 防草シートを庭に広げます。庭の外周方向のシートの端は20cm程度余裕を持たせて配置します。この20cmは、①モルタルとののりしろ ②つっぱり防止のためのふくらみです。このふくらみがないと、人が歩いたときの重みでシートが沈んで引っ張られ、シートが破れたり、引き抜けたりする可能性があります。また、温度でシートが伸び縮みするのに対応する目的もあります。 Anastasiia Smiian/Shutterstock.com シートは細長いロール状になっており、複数枚をつなぎ合わせながら敷くことになります。シートとシートのつなぎ目は10cmほど重ねて、つなぎ目を防草シート用強力ガムテープで隙間がないようぴったり貼り合わせます。つなぎ目に隙間があると、強風であおられシートがはがれることがあります。防草シート用のピンのみだと隙間ができるため、ピンは仮留めとして用い、最終的にはガムテープでしっかり留めつけます。 Step3 防草シートの端処理 M.KOS/Shutterstock.com 庭の中に花壇の縁や敷石などの構造物がある場合は、シートの端を構造物に沿ってカットします。シートの端から2cmほどのところに、シート端と平行するように、ハサミやカッターで長さ10cmほどの切り込み(青のハサミ印)を入れます。モルタルで留めつける際、この切り込みの中にもモルタルを入れ込みながら接着すると、モルタルがフックのようにシートを留めつけ、複雑な形でも固定強度が高まります。カーブした箇所では赤のハサミ印のようにシートに縦に切り込みを入れると、フィットさせることができます。*直線箇所では、赤のハサミのように切り込みを入れる必要はありません。 Step4 シートを留めつける構造物の端を掘り下げる 防草シートを留めつけるレンガなどの構造物の際(きわ)を、5cm程度の深さに掘り下げます。 クワなどを用いて構造物の際を掘り下げます。 掘ったらコテなどで土を斜めに押さえつけて整えます。 ハケで構造物側についた土を払います。 シートと構造物をモルタルで接着します。その際、シート端と平行に入れた横の切り込みの中にもモルタルを詰め込むのがポイント。 庭全面にシートが敷かれた状態。 【ノンストレスガーデン工法(植栽編)】 Step1 植栽箇所にリングを当てて印をつける どこに何を植えるのか、あらかじめ決めておき、シートの上にチョークで植栽ポイントを記していきます。宿根草の植栽場所には「ノンストレスガーデン工法専用植栽リング」を当てて、チョークでリングをなぞります。 *ノンストレスガーデン工法専用植栽リングとは 防草シートの上から宿根草や小型の低木類を植栽するために開発した円形状のプラスチック製リングです。植物の根張りや給排水が正常に行われ、シートの押さえとして機能し、バークで隠れる仕様になっています。防草シートとの併用で植物が健全に育つよう開発された専用アイテムですので、ノンストレスガーデン工法ではこの専用植栽リングを用いることを推奨します。植え穴をリングでしっかり抑えないと、風にあおられシート全体がめくれ上がってしまうことがあります。 (cap)左は株元が1本立ちで上部が大きく生育するタイプ。右は株元から茎が増えて株立ちになり、横に広がって生育するタイプ。 サイズは6号(直径18cm)と8号(直径24cm)の2サイズがあるので、最終的に植物が生育する大きさや生育に従い変化する株元の形状に合わせて、どちらかを選んで使います。株元の形状が1本立ちで生育するタイプは6号サイズ、株元から複数茎が立ち上がって株立ちになるタイプは8号サイズがおすすめです。(植物については続編でも詳しく解説します) 「ノンストレスガーデン工法専用植栽リング」はこちら 宿根草以外の樹木や一年草のエリアは、チョークで植栽エリアのラインを描きます。一年草は植え替えや花がら摘みなどの作業がしやすいように、たいていは花壇の手前に配置するといいでしょう。 Step2 植え込み穴をあけ植栽 チョークで記した部分をカッターで切り取ります。植栽リングをギュッとはめ込み、シートをしっかり押さえます。植え込み穴の土を苗の根鉢の大きさ程度掘り上げ、リングの中に苗を植え込みます。 バラや樹木の植栽エリアはカッターで十字に切り込みを入れ、中央に植栽した後、切り込みに強力ガムテープを貼って留めます。 十字の切り込みを強力ガムテープで留める。 タイムを植栽。 リシマキア、タイムなどのグラウンドカバー類の苗(3号ポットサイズ)を植栽する場合には、10〜12cmの円をカッターであけて植栽します。グラウンドカバー類は横に広がって地面を覆い、それ自体が押さえとして機能します。 季節で植え替え作業が必要な一年草のエリアは植栽エリアの手前に。 一年草のエリアはシートをカットし、端を樹脂エッジで押さえ、樹脂エッジと防草シートを強力ガムテープで留めます。その後、一年草を植栽します。 Step3 マルチング 植栽後は穴の中にたっぷり水やりをし、防草シート部分が隠れるようバークや砂利などでマルチングをします。防草シートは紫外線によって劣化が早まるので、必ず覆い隠します。バークは堆肥に近いバークチップを敷くと雨水によって防草シートの中に養分が染み込んで植物の生育をサポートしてくれます。砂利をマルチングとして用いると、夏には日射で砂利が50℃以上になるため植栽エリアにはあまり向きません。砂利は通路など植栽をしない場所に向いています。 植栽直後の花壇。 植栽から1年後。 【ノンストレスガーデン工法(メンテナンス編)】 ●水やり 初年度の水やりには注意が必要です。植栽した穴の中を意識してたっぷり水を与えます。ホースで全体的に水まきをしていると、植物に水が届いていない場合があります。また、ちょっとした雨では植物に十分行き渡らないことが多いので、初年度は乾きに注意します。可能なら自動灌水装置があると楽です。自動灌水装置の設定は朝1回(AM5時)にして、たっぷりめに。足りない場合は夕方に手灌水で水分をプラスします。2年目以降は極端に雨が降らない場合を除き、自然の降雨に任せてOKです。 ●肥料 植栽の穴の中に、各植物の適期に肥料を施します。バラや樹木の箇所は、一度マルチングをどけて、ガムテープをはがして与えます。メネデール社の「バイオマイスター」をマルチングとして用いている場合は、防草シートの上から全体的にバイオマイスターを施すだけでOKです。バイオマイスターは防草シートの上から肥料成分を植物に届けることができ、マルチング材としても活躍する土壌資材です。 根を育てる肥料成分や土壌環境をよくする善玉菌を配合したバイオマイスター。 ●マルチング バークチップ(またはバイオマイスター)は分解されてなくなっていくため、減ってきたら植物の葉が少なくなる冬期に足します。 草取りから解放されれば、庭の大小を問わず、体力のない人も、時間がない人も、美しい庭のある暮らしが叶います。この工法についてご質問のある方(プロ)は、ガーデンストーリーinfo(https://gardenstory.jp/contact)までお問い合わせください。次回はノンストレスガーデン工法で植栽する植物の使い方について解説します。
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宿根草・多年草
【優秀すぎる!】プロが選ぶ庭づくりで使い勝手抜群の宿根草ベスト7
庭の骨格を作ってくれる宿根草たち 葉っぱの美しい宿根草で、ある程度庭の骨格を作っておくと、花の端境期も庭がきれいに保てます。特に夏は暑くて庭仕事どころではないので、これからご紹介する宿根草を取り入れると、お手入れも楽に済みます。どれも丈夫で育てやすいものばかりですから、ぜひ庭で育ててみてくださいね。 1 コンパクトで使いやすい!「ロシアンセージ‘リトルスパイヤー’」 loflo69/Shutterstock.com ロシアンセージは白い茎に小葉のシルバーリーフ、淡い青紫の花が美しい宿根草です。夏に花が咲くと、涼しげな雰囲気を庭にもたらしてくれます。耐暑性・耐寒性にも非常に優れ、花壇の背景などにとても重宝する植物ですが、通常のロシアンセージは草丈も株張りも1m以上に育つため、日本の家庭の庭ではサイズが大きすぎて取り入れられないケースが多くあります。そのサイズ問題を解決したのが、‘リトルスパイヤー’です。ロシアンセージの繊細な美しさと丈夫さはそのままに、サイズが半分ほどに小さくなった品種です。スッと茎が立ち、猛暑でも株姿が乱れないのもおすすめの点です。 非常に旺盛に伸びるので、年に3回、茎が伸び始めた春先、花後の秋、落葉した冬に枝を半分以下に剪定すると、きれいな株姿が保てます。剪定することで分枝し、花数も増えます。 植物名:ロシアンセージ‘リトルスパイヤー’学名:Perovskia atriplicifolia 'Little Spire'英名:Summer Lavendar科名:シソ科属名:ペロブスキア属原産地:中央アジア(原種の自生地)分類:草花(宿根草)開花時期:7〜9月草丈:40〜60cm耐寒性:強い耐暑性:強い花色:淡青紫 2 日陰を明るくしてくれる!「斑入りカリガネソウ‘スノーフェアリー’」 白い斑入りの葉が美しい宿根草で、半日陰で湿った場所でもよく育ち、暗くなりがちなシェードガーデンをパッと明るくしてくれます。葉だけのときも美しいのですが、夏から秋に咲く青紫色の花は非常にユニークな姿で魅了されます。この花の形が野鳥の雁(がん)に似ていることから雁草(カリガネソウ)の名が付けられています。繊細な雰囲気ですが、カリガネソウは日本を含め東アジアに自生し、暑さ、寒さ、湿気、日陰に強く、とっても丈夫。植えっぱなしでも株が暴れず、こんもりきれいに茂ります。 植物名:斑入りカリガネソウ‘スノーフェアリー’学名:Tripora divaricata 'Snow Fairy'和名:ホカケソウ科名:シソ科属名:トリポラ属原産地:日本(主な自生地)分類:草花(宿根草)開花時期:7〜9月草丈:60〜80cm耐寒性:強い耐暑性:強い花色:青紫 左が斑入りカリガネソウ。繊細な葉姿で、ギボウシやツユクサなどシェードプランツとも相性抜群です。 3 花が長期間咲く!「カリオプテリス‘サマーソルベット’」 左が斑入り品種の‘サマーソルベット’、右は普通種のカリオプテリス。 カリオプテリスはハナシキブとも呼ばれ、日本に古くから自生する宿根草です。とても丈夫で育てやすく、初夏から秋まで長期間花を咲かせてくれます。なかでもライムイエローの斑入り葉の‘サマーソルベット’はカラーリーフとしても楽しめる品種で、花のない時期もガーデンを美しく彩ってくれます。夏になると淡い青紫色の花を段々に咲かせ、葉色とも相まってとても爽やか。冬の間に短く剪定しておくと、春に輝くような新芽を伸ばします。 植物名:カリオプテリス‘サマーソルベット’学名:Caryopteris × clandonensis 'Summer Sorbet'和名:ハナシキブ科名:クマツヅラ科属名:カリオプテリス属原産地:九州西部、朝鮮半島南部、中国東部~南部、台湾(原種の自生地)分類:草花(宿根草)開花時期:6〜9月草丈:50〜90cm耐寒性:強い耐暑性:強い花色:青紫 4 バラを守る!「ツルバギア‘シルバーレース’」 christophe.dtr、Nahhana/Shutterstock.com ツルバギアはガーリックプランツとも呼ばれ、ニンニクのような香りがします。そのため、バラの側に植えるとコンパニオンプランツとして害虫を寄せ付けない効果が期待できます。暑さにも寒さにも強く、長雨にも耐え、とても丈夫。日本の過酷な夏でも心配ありません。おすすめは細葉に白い斑が入るツルバギア・ビオラセア‘シルバーレース’。四季咲き性が強く、ピンクの愛らしい花は、5〜10月まで繰り返しよく咲いてくれます。 植物名:ツルバギア・ビオラセア‘シルバーレース’学名:Tulbaghia violacea ‘Silver Lace’英名:ソサイエティ・ガーリック科名:ネギ科属名:ツルバギア属原産地:南アフリカ分類:草花(球根)開花時期:5〜10月草丈:30〜60cm耐寒性:普通耐暑性:強い花色:ピンク 5 黄金のマット!「ゴールデンオレガノ」 Irenestev/Shutterstock.com ゴールデンオレガノはハーブのオレガノの中でも、輝くような葉が美しい品種です。草丈は20cmほどで、マット状に広がるので、グラウンドカバーや花壇の縁などに重宝します。同じ黄金葉で‘ノートンズ・ゴールド’という品種がありますが、こちらは茎が立ち上がりやすい性質があるため、グラウンドカバーには向きません。葉にはいい香りがあり、お料理やお茶などで使うことができます。 植物名:ゴールデンオレガノ学名:Origanum vulgare ‘Auren’ 英名:ゴールデンマジョラム科名:シソ科属名:ハナハッカ属原産地:ヨーロッパ〜西アジア(原種の自生地)分類:草花(宿根草)開花時期:8〜9月草丈:20cm耐寒性:強い耐暑性:強い花色:白 6&7 2大優秀グラウンドカバー!「リシマキア‘オーレア’」「アジュガ・アトロプルプレア」 リシマキア‘オーレア’もアジュガ・アトロプルプレアも、ほとんど全ての施工現場で使っている2大グラウンドカバープランツです。日陰にも強く密に茂って雑草が生えるのを防いでくれます。リシマキア‘オーレア’は輝くような黄金の葉色が日陰を明るくしてくれます。艶やかなチョコレート色の葉が美しいアジュガ・アトロプルプレアは、春先に青紫色のかわいい花が立ち上がります。どちらも常緑で冬の庭にも彩りをもたらしてくれます。よく広がるのですが、地下茎で増えないところがポイント。植物の中には地下茎やこぼれ種で思いのほか増え、コントロールできなくなるものも多いのですが、この2つは広がってほしくない場所に侵入した場合、簡単に引き抜くことができます。こちらの思うようにコントロールでき、とても使い勝手がよいグラウンドカバープランツです。 アジュガ・アトロプルプレアの花。Lidia Kovacs/Shutterstock.com リシマキア ‘オーレア’とアジュガ・アトロプルプレアにタイム(ピンクの花)を混植した例。 植物名:リシマキア・ヌムラリア‘オーレア’学名:Lysimachia nummularia 'Aurea'英名:ゴールデンクリーピングジェニー科名:サクラソウ科属名:オカトラノオ属原産地:ヨーロッパ(原種の自生地)分類:草花(宿根草)開花時期:8〜9月草丈:2〜10cm耐寒性:強い耐暑性:強い花色:黄 植物名:アジュガ・レプタンス・アトロプルプレア学名:Ajuga reptans cv. Atropurpurea和名:セイヨウキランソウ科名:シソ科属名:アジュガ属原産地:ヨーロッパ分類:草花(宿根草)開花時期:4〜5月草丈:10cm耐寒性:強い耐暑性:強い花色:青紫
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寄せ植え・花壇
入手しやすい身近な花でつくるBlack&Whiteの寄せ植え
上手な花選びのための5つのチェックリスト 1.色合わせ ここでは白い鉢と黒い鉢に合わせて、それぞれ5つの花苗と球根を選んでいます。寄せ植えは、鉢も含めた全体の色合わせを考えましょう。 <黒い鉢> ビオラ‘ヌーヴェルヴァーグ’(紫色)プリムラ・マラコイデス(濃いピンク)ヒューケラ・ドルチェ‘ブラックナイト’コクリュウハボタン‘光子プレミアム’チューリップ‘コンプリメント’ <白い鉢> ビオラ(淡い黄色)スーパーアリッサム‘フロスティーナイト’プリムラ・マラコイデス(白)斑入りヤブコウジ‘十両金’カレックス・オシメンシス‘エヴァリロ’チューリップ‘バレリーナ’ 4月のアリッサムの様子。成長すると花壇から枝垂れるように咲き広がります。 2.高低差 草丈が揃いすぎると、寄せ植えが平面的になり、それぞれの花の個性も引き立ちません。「横に広がって成長するもの(ビオラやアリッサム)」、「縦に伸びるもの(プリムラやチューリップ)」など、生育形態を考えて取り入れると、立体的でバランスのよい寄せ植えができます。 3.形の違い 花の大きさや葉の形の違いを意識して選びましょう。細葉のカレックスやコクリュウは、寄せ植えに変化を生み出す名脇役です。 チューリップ‘バレリーナ’。甘い香りとスレンダーな咲き方が人気。草丈40〜60cm。Photo/ Mayabuns/Shutterstock.com 4.季節の変化 植えたときだけでなく、育っていく過程でも変化があると、より季節感が味わえます。それぞれの植物は春に向けてグンと成長し、それだけでも春の訪れを感じられますが、ここではさらに季節感を演出する仕掛けとして、チューリップの球根を用います。春以降、チューリップの茎が伸びてきて、5月半ばには白い鉢にはオレンジ色の、黒い鉢にはパープルピンクのチューリップがブーケのように華やかに咲く予定です。 5.使い回し この寄せ植えでは一年草(ビオラ、プリムラ、アリッサム、ハボタン)、宿根草(ヒューケラ、コクリュウ、カレックス)、球根(チューリップ)、低木(ヤブコウジ)を取り混ぜています。5月下旬には一年草やチューリップが終わりますが、宿根草や低木は引き続き次の季節の寄せ植え素材として使うことができます。植え替えるたびに全ての植物を一から揃えるより、ローコストで充実感のある寄せ植えができますよ。 フラワーアレンジのテクニックで‘馴染んだ感’を出す 植え込んだばかりのときは、どうしても「今、植えた感」があり、なんとなく植物同士もよそよそしい感じがします。成長していく過程で、葉が重なり合ったりしながら植物同士が馴染んでいい具合になりますが、少し時間はかかってしまうもの。そこで、1ポットの苗をいくつかに分け、フラワーアレンジメントで花を束ねる時のように植物同士をあらかじめ組み合わせて植えます。すると、時間が経って植物が馴染んだ感じが最初から演出できます。すべての植物が1ポットから分けられるわけではありませんが、カレックスやコクリュウは数株に分けることができます。これらの細葉を散らして植えこむと、全体の調和がとれ、馴染んだ感の演出に重宝します。 植え込みをしよう! 植え込み手順1 鉢底石の上に用土を入れます。鉢底石は生ゴミ用のネットに入れておくと、植え替えの際に土ふるいにかけずに簡単に取り除くことができて便利です。用土は水やりの際に土が流れ出ないように、鉢の縁から少なくとも3〜4cmは下げた位置を上限とします。花苗を植え込んだ後も用土を足すことを考慮して、最初に鉢に入れる土の高さを調整しましょう。 <使った資材> 左/「きれいな鉢底石」根腐れ防止に効果的な木炭やゼオライトが入り。3ℓ 410円(税込)/花ごころ右/「花ちゃん培養土」12ℓ 905円(税込)土壌改良効果と肥料効果を併せ持ち、通気性がよく軽いので鉢植えに最適。緩効性肥料も入っているので、これ一つで始められて手軽。12ℓ 905円(税込)/花ごころ 花ごころ直営オンラインショップ「花ちゃん園芸ショップ」http://hanachan-shop.com/index.html 植え込み手順2 カレックス(黒い鉢ではコクリュウ)は1ポットを数株に分けます。水の中で土を洗い落としながら根っこをほぐしていくと、分けやすいでしょう。 植え込み手順3 小分けにしたカレックスをフラワーアレンジメントの要領で、他の植物と組み合わせた状態で植え込んでいきます。 植え込み手順4 花苗を全て植えたら、最後にチューリップの球根を植えます。チューリップの葉は幅が広いので、葉が展開してきたときに他の植物を覆い隠してしまわないよう、端にまとめて植えます。 植え込み手順5 球根の上や苗と苗の間に用土を入れていきます。苗と苗の間は狭く、土を入れたつもりでも意外と隙間があいてしまうことがよくあるので、指で土を寄せてしっかり根を覆いましょう。土を入れたら水やりをしますが、水やりをすると空気を含んでいた土が沈んで隙間があくことがあるので、そこにも土を足しましょう。 植え込み手順6 チューリップの部分にプランツネームを立てましょう。何もないと間が抜けた感じになってしまいますし、案外何を植えたのか忘れてしまうものです。チューリップの芽が出てきて葉が展開し始めたら外します。 <使った資材> 黒にペイントされたステンレス製のプランツネーム。ホワイトマーカーなどで植物名を書き込みます。500円〜/ベルツモアジャパンhttp://bellsmore.jp 完成! Black&Whiteの寄せ植えの完成です。並べて置いても素敵ですが、それぞれ背景の明暗が反対の場所に置くと花色がよく映えて綺麗です。黒い鉢は上の写真のように背景が白っぽい明るい場所へ、白い鉢は下の写真のように緑や濃い色を背景にすると引き立ちます。
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ガーデニング
草取りで心が折れそうな人へ。除草剤の効果的な使い方
草取りの原因になる雑草対策は早めが肝心 春、明るい黄緑色の若葉を開く木々や草花。空気の温みとともに、その色は日に日に濃くなり、桜の花が散る頃にはまるで衣替えをするかのように、庭は瑞々しい緑で覆われます。しかし、その瑞々しい緑の中には、歓迎されざる草たち、いわゆる「雑草」も混ざっています。最初は雑草も小さく、あまり目障りではないものの、放っておけばアッという間にボウボウと茂って、梅雨を迎える時期には鬱陶しいほどに。しかも、その繁殖力は驚異的。真夏は草取りをするそばから生え、ガーデニングのほとんどが草取りに占められ「もうウンザリ」というケースも少なくありません。こんな大変な思いをするなら、庭などやめて業者に依頼して一面コンクリートで固めてしまえ、なんて早まらないで! きちんと対策さえすれば、草取りに追われることなくガーデニングを楽しむことができます。 Photo/damiangretka/Shutterstock.com その対策の一つとして、庭づくりの初期に有効なのが除草剤。特に新築や完全な庭リフォームの場合には、最初に庭に持ち込まれる土は、山を崩した土や野ざらしの残土などで、もれなく雑草のタネがたっぷり入っています。そのまま何もせずにバラや園芸植物を植えて肥料をやろうものなら、雑草のほうが大いに茂って、楽しいはずのガーデニングが草取りに明け暮れることになってしまいます。ですから、好きな植物を植える前に、一度土壌をリセットする意味で除草剤を用いると効果的です。 草取りに役立つ除草剤は適期に適正なものを使おう 敷き詰めたレンガの隙間でも雑草はたくましく育つ。放っておくと伸びて庭が荒れた雰囲気になるので早めに対策を。Photo/Maria Meester/Shutterstock.com ただし、使う際には最低限の使用量で最大の効果を発揮するように、適期・適性を見極め、希釈率などを守って適量を用います。また、持病やペットへの配慮など、特定の事情がないかどうか、確認できた場合にのみ使います。 除草剤と一口にいってもいろいろな種類がありますが、まず大きく分けて雑草の発芽前と発芽後では適する製品が異なります。冬から初春にかけて使うなら、発芽前の土中の種子に対して働きかける「発芽抑制効果」のタイプのものを、春以降、雑草が既に生えてきてからなら「草と根を枯らす」タイプのものが適しています。 抜きにくい目地などには除草剤が便利。Photo/damiangretka/Shutterstock.com 除草効果の持続するものとしないものがある また、効果の持続期間も製品によって異なります。除草剤を使うと、その場所では永遠に植物が育たないように思っている方も少なくないようですが、除草剤は効果がずっと持続するものではありません。ホームセンターなどで入手できる除草剤の中で、最も効果の長いものでも約6カ月ほど。持続期間について特に記載のないものは約2〜3週間で効果が切れます。ですから、駐車場などのように、そもそも植栽計画がない場合には効果の長いもののほうが向いていますし、庭などでその後植栽をするつもりなら、効果が持続しないものを使います。そして、効果が切れた頃を見計らって好きな植物を植えれば、問題なくちゃんと育ちます。このように除草剤にはたくさんの種類がありますから、まず売り場で製品の説明をよく読みましょう。 生命力、繁殖力が強く、たくましい雑草たちですが、我が家の庭には歓迎したくない草類。左上から時計回りに、エノコログサ、チガヤ、セイタカアワダチソウ、スズメノカタビラ。 左上から時計回りに、スギナ、ドクダミ、シロザ、カタバミ。 草取りのコツは「タネを落とさない」こと 除草剤を使って雑草を一掃したとしても、その後も雑草のタネはどこからでも飛んできて、生えてくるものです。けれど、植えた植物のほうが先に大きく育っていれば、後からやってきた雑草はその陰に隠れてさほど大きく育つことができません。このように、育てたい植物が雑草よりも優先的に生育できる環境を整えてあげるという意味でも、最初に雑草を絶やしておくことが大切です。 その後、雑草を見つけたら、小さいうちに抜くことが肝心です。草取りのコツは、とにかく「タネを落とさない」ということ。タネができた状態で草取りをすると、タネがあちこちにこぼれ落ちて、再びアッという間に生えてきます。ですから、タネができる前の小さいうちに抜くことが大事。小さいうちは根張りも浅く、花壇用に土壌改良されたフカフカのよい土なら雑草も簡単に抜けるので、さほど苦労することもありません。 草取りの服装は、動きやすい格好で手袋を装着。道具は、小型の草取り鎌や立ったまま使えるフォークなら腰痛防止に。長時間のしゃがんだ姿勢がつらい場合は、座ったまま移動できる車輪付きの椅子があると楽で効率的です。雑草を若い芽のうちから取り去るには、根っこごと確実に抜くこと。熊手で表土をひっかいた程度では、土中に根っこが残ってしまい再び新芽が伸びてくるので気をつけましょう。 園芸植物が大きく育っている場所では、雑草の入り込む余地があまりない。 グラウンドカバーと呼ばれる匍匐性の植物で地面を覆っておくと、雑草が生えにくい。これも草取りをしない方法の一つ。写真のリシマキア‘オーレア’はゴールドの葉が美しく、丈夫。 ●『足元のカバーや雑草対策に欠かせない グラウンドカバーに最適な植物7選』 雑草とうまくつき合うのも大事 「雑草」といっても、それぞれに名前があり、意外と庭の彩りになってくれるものもあります。また、ドクダミやヨモギなど生活に利用できるものもありますし、抜いた雑草は堆肥としても役立ちます。庭づくりをするうえで、雑草と無縁ではいられませんので、上手につき合いながら庭づくりができれば理想的。そしてたいてい、庭づくりの年数を経ていけば、次第にそうなっていくものです。 ただし、最初から草取りに明け暮れて、心がくじけそうな人には、除草剤という選択肢もあります。草取り回避のためにせっかくの庭スペースをコンクリートで固めてしまう前に、除草剤を賢く使って楽しいガーデニングのスタートを切って欲しいと思います。 Photo/Simon Kadula/Shutterstock.com 抜き取った雑草は一箇所にまとめて置いておくと、分解されて堆肥として利用できるようになる。 日本では雑草といわれる植物も英国ではメドウ(野原)ガーデンの素材として使われる。全体に生やしておいて、後から道を刈り込むだけで、美しいメドウガーデンに。 ナチュラルでくだけた演出にも意外と効果的な雑草。 併せて読みたい
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ガーデン&ショップ
都市公園に全国初の「ガーデンセラピー」を体感できるユニバーサルガーデン
庭が人へもたらす生理学的作用 2004年の浜名湖花博でつくられた「花の美術館 モネの庭」を再整備した浜名湖ガーデンパーク内の「印象派庭園 花美の庭」。(*) 画家のクロード・モネは草花を絵の具代わりに、キャンバスの上に絵を描くように庭づくりに没頭し、「生きた美術館」と評される美しい庭を残しました。しかし今、庭は芸術的価値を持った観賞の対象としてだけでなく、私たちの暮らしや心身に好影響をもたらす空間として、新たな価値が見いだされつつあります。 緑の血圧正常化作用 緑を見てホッとしたり、美しい風景に癒やされるという感覚は、誰しも経験があるでしょう。これまで体験的なものとして知られてきたこうした感覚に、千葉大学大学院・園芸学研究科の岩崎寛准教授は、血圧の正常化など緑が心身にもたらす生理的作用を発見。緑を見ることで恒常性回路が崩れる要因であるストレス刺激が緩和され、自己治癒力を高める効能があることを解明しました。 緑のストレス減少作用 また、オランダのある市民農園では、読書とガーデニングを比較したストレス値の計測実験が実施され、ガーデニングのほうが読書よりもストレスホルモンを軽減するという結果が得られました。さらに、東京都市大学総合研究所・環境学部の飯島健太郎教授が行った実験では、ガーデニングをしなくても、単に緑との距離が近いほど、ストレスホルモンが減少することが分かっています。このように、これまで「癒やし」という言葉で表現されてきた庭の効果には、生理学的作用があることが科学的に裏付けされ始めています。 理学療法的効果をもたらすガーデンデザイン 一方、こうした生理学的な作用に対し、理学的な療法効果を得られる空間としてガーデン設計を行っているのが、造園家の阿部容子さんです。阿部さんはアメリカ園芸療法協会会員として、米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かした庭設計を行っています。 整形外科の屋上ガーデン。車椅子の人が移動しやすい、高さを上げた芝生の花壇。足裏刺激も得られる歩行訓練の場所として活用されている。 「理学的な療法効果とは、簡単にいえば、リハビリ効果がその一つです」と阿部さんは話します。例えば、過去に阿部さんが設計施工した整形外科の屋上ガーデンでは、加齢や事故、病気などさまざまな事情により身体機能が失われた方が、庭を歩くことでリハビリ効果が得られるよう道幅や距離、花壇の高さなどを専門医の意見を取り入れながら設計しました。そうした特別な事情がない場合でも、個人邸ではより使う人の心身の事情に寄り添って、背丈や腕幅、足の昇降高、視力など個人のフィジカルデータを反映した設計をすることで、その人がより快適に過ごせる庭づくりを行っています。 「もちろん、美しいというのは大前提。それに加えて、その人にフィットする機能を庭に落とし込むのが、私のガーデンデザインの信条です」(阿部容子さん) 浜名湖ガーデンパークに誕生する「ガーデンセラピー」を体感できるガーデン こうした庭の生理学的・理学的な療法効果を体感できるのが、浜名湖ガーデンパークに誕生するユニバーサルガーデンです。このプロジェクトは2024年春、浜名湖花博20周年を記念した「浜名湖花博20周年記念事業実行委員会(県部会)」の事業の一環で、阿部容子さんがデザインを担当。ガーデンセラピーを取り入れたデザインが予定されています。 浜名湖花博20周年記念事業は、内閣が提唱する国家戦略とも呼応する「デジタル田園都市(ガーデンシティ)」をテーマとしており、高齢化社会における健康寿命の延長や多様性を理解するための世代間交流など、浜名湖周辺の環境を活かした、自然の癒やしと現代の利便性を体感できるライフスタイルの提案の場として展開されます。 阿部さんがセミナー内でセラピーガーデンの実例として示した米国シカゴボタニックガーデンの「イネイブリングガーデン」。車椅子のガーデナーが設計した。Photo/Cicago botanic garden 2023年4月24日、ガーデンセラピーという新たな庭の価値観を取り入れたユニバーサルガーデンの設計を担当する阿部容子さんのセミナーが開催されました。セミナーには市内外の造園業者や学生など約35名が参加。ユニバーサルガーデン及びガーデンセラピーの考え方や認知機能に好影響を及ぼす特定の植物を取り入れたガーデン設計アイデア、療法的効果に積極的にアプローチする庭での五感刺激の方策などについて、阿部さんが解説し、参加者が熱心にメモを取る姿が見られました。 2023年4月24日に開催されたセミナーの様子。 市民の健康増進に寄与する新しい都市公園の提案 2024年春の浜名湖花博20周年記念事業へ向けて再整備されている浜名湖ガーデンパーク。(*) 浜名湖ガーデンパークという都市公園において、ガーデンセラピーを体感できるユニバーサルガーデンが展開される意義について、阿部さんに伺いました。 「庭は、これから向かう超高齢化社会において、さまざまな療法効果を得られる住宅の必須機能として位置付けられていくでしょう。しかし、まだその情報発信は十分ではありませんし、体感できる場所もありません。ですから、今回のユニバーサルガーデンでは、さまざまな庭の療法的効果を体感できる場所であると同時に、市民の皆さんがこのガーデンからさまざまなアイデアを持ち帰って、ご自宅の庭で実践できるセラピーガーデンのモデルガーデン的役割を担う必要があると思っています。訪れて楽しい場所であると同時に、市民生活の向上のための情報発信基地という役目も、浜名湖花博20周年記念事業が掲げる新しい都市公園のあり方として重要なポイントだと考えています」 造園家の阿部容子さん。 公園という不特定多数の人が利用する場所では、誰もが利用しやすいデザインとしてユニバーサルデザインを意識する必要がありますが、今回は「誰もが」という条件に応える一つのデザインに限定しない形を、阿部さんは考えています。 「例えば、回遊路を全部、車椅子で通れるスロープにしておけばユニバーサルなのかといったら、そう単純なものではありません。車椅子ユーザーにもさまざまな体格の人がいますし、介助の必要がある方もない方もおられ、お使いの車椅子の機能も異なります。場合によっては長いスロープより、車椅子で上がれる高さにした階段状の道のほうが安心な方もいらっしゃいます。また、足腰の弱った方には、高さや手すりのデザインに配慮した階段のほうが、スロープを歩き続けるより楽なことがありますし、健康な方にとってはスタスタ上がれる階段のほうが快適でしょう。 ですから、複数の選択肢を用意することによって、ガーデンを訪れた方がご自身のそのときの事情に合わせて園路を選んでこの庭を楽しみ、またいろいろな方法で楽しむ他の人の姿を目にすることで、他者への相互理解も進み、多様性を自然と受け入れる社会に繋がっていくとも思います。そして、ここを訪れた皆さんが、さまざまなことを体験し、自宅の庭にそのアイデアを持ち帰ってご自身の生活に生かしたいと思ったとき、今回セミナーに参加してくださったプロの造園業者の方々が、セラピーガーデンの設計知識を生かして活躍してくれたら理想的ですよね。そうなれば、県が掲げるデジタル田園都市構想が着実に実現化されていくのではないかと、私自身とても楽しみにしています」 コロナや社会情勢のめまぐるしい変化を受け、私たちの暮らし方や価値観も大きな変革期を迎えてさまざまな模索がされています。浜名湖花博20周年記念事業で推進されるプロジェクトは、新時代の暮らし方への一つの明確な回答として、2024年の春の開幕が大きな期待とともに待たれます。
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ガーデンデザイン
【プロが解説】芝生の庭のつくり方&絨毯のように美しくするコツ
芝生のメリット 緑の絨毯のように広がる青々とした芝生…そんな庭に憧れる人は少なくありません。「芝生の庭つき一戸建て」は、ヨーロッパでかつて芝生の庭が富の象徴とされた歴史を経て、第二次大戦後にアメリカで大人気となり、日本にもその価値観が持ち込まれました。 「確かに手入れの行き届いた芝生はとても美しいですが、見た目の美しさ以上に芝生にはたくさんのメリットがありますし、広いエリアに敷き詰めるだけではない使い方があるんです」と阿部さん。芝生を庭に取り入れるメリットと、さまざまなシチュエーションでの芝生の取り入れ方を伺いました。 【芝生のメリット1】リラックスして過ごせる屋外空間 芝生は植物の中でも踏圧性に優れており、人がその上を歩いたり、集ったりすることができます。ですから寝転んだり、遊んだり、ピクニックをしたり、芝生はそんなリラックスして過ごせる空間を屋外に提供してくれます。 芝生の庭にガーデンテーブルを設置した施工例。テーブルの下は日陰になり芝が育たないので、あらかじめ砂利敷きに。 【芝生のメリット2】雑草を抑えて庭の機能性を高める 上の写真は、広々とした芝生の奥に植栽帯を設けた庭です。庭を作ろうとするときに、花いっぱいの庭にしたいと思われる人は少なくありませんが、全てのエリアに花を植えるとメンテナンスに追われて苦労することになります。花を含む植物を植えるエリアは、敷地面積に対し20〜30%あれば緑の量感は十分。残りの70〜80%は庭の機能を果たすエリアになりますが、土がむき出しになっていると雑草が生え放題になり、また雨のたびにドロドロになります。芝生が密に地面を覆っていれば、雑草が生える隙を与えませんし、雨の後も芝地が水分を吸収してドロが跳ねずに快適に歩けます。 【芝生のメリット3】地温を下げる効果 芝生は地温を下げる効果もあります。上の写真は7月の同じ日に同じ庭の砂利敷きのエリアと芝生のエリアで測った温度です。砂利敷きのエリアは50.2℃、芝生は33.2℃と、17℃もの差があります。これは植物には蒸散作用があり、葉っぱから水蒸気を放出して周囲の温度を下げる効果があるためです。家の周りが全面コンクリートや砂利で覆われている場合と、芝地が広がっている場合とでは冷房効率にも影響を及ぼします。また、ペットを飼っている場合、地面の温度が50℃以上あると肉球を火傷してしまいますが、芝生なら安心して遊ばせることができます。 【芝生のメリット4】植栽を美しく見せ暑さから守る 芝生は広いエリアに敷く使い方だけではありません。植栽帯とタイルなどのペイビングの間に芝生を入れると、植栽の色合いを美しく引き立たせてくれる緑のキャンバスとして活躍し、なおかつ夏場の高温から草花を守ってくれます。芝生はハサミで簡単に切ることができるので、上の写真のように細いライン状に使うことも可能です。 張る前の芝生は園芸バサミで根っこごと切り分けられる。 【芝生のメリット5】足裏刺激と緑の効果で健康維持に VALUA VITALY/Shutterstock.com 足裏への刺激が健康維持につながることは、足裏マッサージなどで周知の事実です。裸足になって芝生の上を歩くことで刺激が得られ、脳の活性化が促進され老化防止や子どもの生育を促す効果が分かっています。また、千葉大学大学院園芸学研究科の岩崎寛准教授の研究では、芝生を眺めながら5分座って休憩した場合、ストレス値が下がり、血圧が正常化されるという結果も得られています。 芝生の種類 芝は大きく暖地型と寒地型に分かれます。 【暖地型の特徴】 種類は高麗芝(コウライシバ)や野芝(ノシバ)など。11〜3月は休眠。地上部の葉は枯れて茶色くなり、春に再び芽吹く。高温多湿に適し、病害虫に強い。 【寒地型の特徴】 種類は多くが西洋芝。常緑性があり、冬でも緑を保つ。夏の暑さに弱く、特に関東以南では管理が難しい。 「私の施工先では、主にTM9という高麗芝の園芸品種を採用しています。従来品種に比べて草丈が短く、緻密で青々としており、足で踏んだ感触もよい芝です。また、芝刈りの頻度が圧倒的に少なくて済むのも魅力です」(阿部さん) 芝生の正しい敷き方 ① まず、芝生を植えるエリアを決めたら、整地します。雑草が生えている場所であれば、短期的な効果の除草剤を用いて除草したのち、土壌改良を施して培養土を入れ、平らにならしてよく踏み固めます。このとき、水のはける方向へ1%ほど地面に傾斜をつけると雨がたくさん降ったときも安心です。これを水勾配といいますが、1%の水勾配は1mで1cm下がる斜度です。見た目にはほとんど傾斜しているようには見えませんし、歩いてもほとんど感じられないくらいの斜度です。 ② 芝生を張っていきます。写真のように、縦の切れ目のラインが上下で重ならないように配置すると、作業中にずれずにきれいに並べられます。また、切れ目のラインが揃ってしまうと溝ができやすくなり、芝が割れる原因にもなります。 ③ その後、上から砂をかけ隙間を埋めます。芝生を踏んで上から圧力をかけ、芝生の根と地表をしっかり密着させます。 ④ 最後に、たっぷり水やりをして完成です。このとき、根の生育を促進する活力剤を使うと、より芝生が根付きやすくなります。早く根付かせ密に茂らせることで、雑草が生える隙も与えません。できれば1カ月ほどは活力剤の使用を継続するとしっかりと根付き、その後の生育もよくなります。 きれいな芝生を保つには肥料が必須 「芝生はカーペットのように広がっていて、変化もあまりないので、植物であるということを忘れられがちですが、もちろん他の植物と同じように手入れが必要です。定期的な芝刈りや散水、施肥は必須。手をかければかけた分だけ、きれいな状態を保ってくれますよ」(阿部さん) 芝生管理におすすめの活力剤&肥料 芝生をきれいに保つために活躍してくれるのが、この3アイテム。活力剤のメネデールと液体肥料の芝肥料、芝肥料ecoです。それぞれの使い分けを解説します。 ■植物活力素メネデール(茶色の容器) 植物の成長に欠かせない鉄を、根から吸収されやすいイオンの形で含む活力剤。芝張り直後の水やり時に与えると、新しい根の発生を促し、芝生を早くしっかりと根付かせてくれます。その後、週に1回程度のペースで3~4回与えると、より効果的。また、芝生が弱ったときや夏場の管理にも役立ちます。「肥料」は弱った植物に使うとさらに弱らせてしまうリスクがありますが、「メネデール」は肥料分を含まない活力剤で、そういったシーンでも安心して使用でき芝生の回復をサポートします。100倍に希釈したメネデールを、週に1回程度、1㎡あたり2~3ℓ散布します。夏場の管理においては毎日のように水やりが必要ですが、メネデールを使用する頻度を通常時より高める(週に2~3回にする)と、暑さなどで弱るリスクを低減できます。 ■芝肥料 チッソ、リン酸、カリの三要素に、植物の成長に欠かせない鉄や微量要素をバランスよく配合している液体肥料です。速効性があることや肥料焼けが起こらないことが特徴です。また、ペットや小さい子どもがいるなど、粒状肥料を使いづらいシーンでも活躍します。1,000倍に希釈した芝肥料を週に1回程度、1㎡あたり2~3ℓ散布します。 下草類専用に配合した液体肥料で、リシマキアやクラピアなどのグラウンドカバー類や苔などにも安心して使うことができます。 ■芝肥料eco 一般的な液体肥料のデメリットを解消したアイテムです。緩効性の肥料分を主成分とし、長期間の肥料効果が期待できることが最大の特徴。一般的な液体肥料は散布頻度が高く、散布量も多いので作業が大変でした。芝肥料ecoは施肥が月に1回、散布量は一般液肥の1/6で済み、散布する水量も削減できるので、作業時間と作業量を削減できる逸品です。 芝生への施肥は今がやりどき 芝生が生育を始める4月は、施肥のタイミングです(ただし、今年張った場合は、張り付け2週間後から施肥してください)。施肥をすることで芝生がより早く密に茂り、雑草が生えてくるのも防ぐことができます。スカスカしていると雑草のタネが飛んできて、芝生の中に生えてしまうので、生育初期からしっかり茂らせることが大事です。 高麗芝などの日本芝の場合は4〜8月の間に、西洋芝の場合は3〜6月と9〜12月に定期的に施肥をすることで、カーペットのような美しい芝生を保つことができます。また、芝生の種類によりますが、定期的な芝刈りも芝生を美しく保つために必須です。草丈が2〜3cmを保つようにするのが理想的。芝刈り後も施肥を行うと分枝が促され、緻密な芝生をつくることができます。 芝生を上手に使えるようになると、庭デザインの幅も広がります。円形や有機的なラインを描いて地面を緑で彩ったり、植栽の囲いとして使ったり、さまざまな使い方ができます。たくさんのメリットがある芝生を取り入れて、庭作りを楽しみましょう! メネデール社のホームページ https://www.menedael.co.jpメネデール社のInstagram公式アカウント
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ガーデン&ショップ
庭の骨格を作りローメンテナンスでいつもきれいが叶う低木(シュラブ)
低木(シュラブ)の魅力 私が庭づくりをするとき、絶対に欠かせないのが低木(シュラブ)です。花好きさんが植栽計画を考えるときには、どうしても花ばかりを選びがちですが、花だけで庭を構成しようとすると、とてもたくさんの株数が必要になります。花がたくさんあれば、花がら摘みや切り戻しといったお手入れもそれだけ必要になり、メンテナンスに手がかかるもの。 シュラブはスーパーローメンテナンス カラーリーフのシュラブが美しい庭の実例。かたくり工房設計・施工 そこでおすすめしたいのが、シュラブです。シュラブは草花類と比較し緑の量感がたっぷりあり、花々をより美しく見せる緑のキャンバスとしても活躍してくれます。シュラブには常緑性と落葉性がありますが、落葉性であっても枝だけの期間は2〜3カ月。草花類と比較し圧倒的に見頃が長く、「いつも庭を緑で瑞々しく」という願いを叶えるには、シュラブが必須です。基本的に、手入れは年に1回程度の剪定のみ。ものによっては生育がとてもゆっくりなので、数年に一回の剪定で済む場合もあります。コンパクトなので剪定もしやすく、手入れも楽。シュラブはスーパーローメンテナンスな植物なのです。 シュラブには美しいカラーリーフがいっぱい! 英国のシュラブガーデン。 シュラブには緑の葉だけでなく、赤紫色や斑入り、ライムイエローなどさまざまなカラーリーフがあり、花を咲かせるものも多数あります。シュラブだけで構成しても上の写真のように美しい花壇ができるほど。ほぼ一年中、この風景がデフォルトとして庭にあり、次々に花を植え替える必要はありません。これだけでも十分見応えのある風景ですが、例えば、このシュラブの手前に季節の草花を少量入れると、季節ごとの変化が楽しめる花壇になります。 美しいシュラブを生み出す「小関園芸」 というわけで、庭づくりではとても頼りにしているシュラブですが、シュラブの中でもとても美しいカラーリーフを作り出す人が、私が拠点とする岐阜県にいます。40年以上の歴史がある「小関園芸」の小関正司さんです。「小関園芸」はアメリカンブルーの新品種 ‘ブルーコーラル’や‘サマースノー’など、たくさんのオリジナル品種を生み出してきた植物の生産農家です。2代目を継ぐ正司さんは、もともとはパソコンのプログラマーをしていましたが、家業を継ぐべくアメリカで植物生産の研修を経て、20年以上前に就農。すぐにシュラブの葉の美しさに魅せられ、自身でも育種を手掛けるようになりました。 生産・育種を手がける小関正司さん。 ほふく性で色変わりするヒペリカム‘ゴールドフォーム’ 最初に育種に着手したのが、ヒペリカム‘ゴールドフォーム’。一般的なヒペリカムは樹高0.2〜1m程度の低木で、夏から秋にかけて黄色の花が咲き、その後には可愛らしい赤い実ができ、フラワーアレンジメントでもよく使われます。 一方、小関園芸オリジナルのヒペリカム ‘ゴールドフォーム’は、ほふく性で這うように広がり、さらに葉の色変わりが楽しめるというユニークな特徴を持った品種。春先のライムグリーンからイエロー、オレンジ、チョコレートと、晩秋まで葉色が変化するのです。半日陰でより美しさを発揮し、耐寒・耐暑性にも優れ、庭作りではとても重宝します。 繊細な斑入り葉のヒサカキ‘ミスティーホワイト’ 「砂子斑(すなごふ)」と呼ばれ、まるで霧を吹いたかのような繊細な斑入り葉が美しいヒサカキ‘ミスティーホワイト’も小関園芸のオリジナル品種です。ヒサカキといえば、日本では古くから神棚に飾る習慣があり、日本の気候にとても適しています。白をベースに緑の極小砂子斑のミスティーホワイトは、とてもおしゃれな雰囲気。ヒサカキの「和」のイメージを覆し、モダンな住宅にもよく似合います。 コントラストが美しいヒサカキ‘残雪’ 斑入り葉のヒサカキ‘残雪’。じつは、この‘残雪’の生産中に小関さんが枝変わりを発見し、数年かけて固定させたのが‘ミスティーホワイト’です。白と緑のコントラストが美しく、やはりおしゃれな雰囲気。ヒサカキは常緑なので、一年中庭に緑を提供してくれます。こうした斑入り葉の品種は日陰に強く、葉色が明るいため、暗くなりがちな日陰エリアで重宝します。 「小関園芸」が生産する美しいシュラブ類 「小関園芸」が生産している黄金ユキヤナギ。古くから日本に自生する植物の中から、改めて美しい植物を再発見するのも小関さんの得意とするところ。 「小関園芸」ではヒサカキなど日本の自生種から斑入り葉などを育種し、さまざまなカラーリーフのシュラブを生産・育種しています。自生種が元になっているので、丈夫で育てやすく、私は庭づくりでとても頼りにしているのですが、その生産の仕方はじつに丁寧で、すべてのポットの水やりを手で行っています。生産農家では頭上からスプリンクラーで一斉に水まきをするところが多いので、3寸ポットの小さなものから一つひとつ手で水やりをしていると聞いて、とても驚きました。その理由を、小関さんは次のように話します。 1ポットずつ水分量を調節して水やりを行っている。 「シュラブは草花類と違って育つのがとても遅く、生育初期段階で最低3カ月はかかります。一年草のパンジーだったら、種を播いて開花している期間ですよね。でもシュラブはようやくそれらしい形になってくるのに1年以上かかることもあります。生育初期は葉があまりないため蒸散もしません。つまり水が乾きにくいんですが、少しの大きさの違いで、水を欲する量がひとつずつ違います。ですから、生育に合わせて、それぞれ異なる適量に水を調節する必要があるんですよ」(小関さん) 西洋イボタ(プリペット)‘カスタードリップル’ 特に「小関園芸」が多く生産している斑入り葉は、生育が遅い特性があります。斑が白く抜けている部分は葉緑素が少なく、育ちにくいのです。まるで盆栽のように気をつかいながら水やりを1ポットずつ丁寧にやるのには、そうした理由もありますが、もう一つ大きな理由があります。それがオリジナル品種の育種です。 1/30万の可能性で生まれる新品種 「新品種の育種は、突然変異や枝変わりを見つけるところからスタートするのですが、その発生率は、例えば斑入りのものだったら1万ポットに1個ほど。最初から他と違う個性がはっきりと出ているわけではなく、なんか違うぞという可能性を感じるところからスタートするものもあるので、そういうのを見逃さないという目的もあって、手灌水にこだわっています。出荷前にも全てのポットをもう一度自分の目でチェックして、可能性があるものを拾うのが育種のスタート地点なんです」 小関さんが最初に育種を手掛け大ヒットしたヒペリカム‘ゴールドフォーム’。 しかし、他と異なる個性のものを見つけたとしても、全てが新品種として世に出るわけではありません。突然変異は生育特性上弱く、育種の過程でダメになってしまうものがほとんど。新品種としてデビューできるのは、1/30万ほどしかありません。私たちの手元に届く新品種は、膨大な手間と時間をかけて生まれた奇跡の植物なのです。 「生産効率は悪いですよね。うちは一つひとつに目が届きやすいように、ポットを置くスペースもゆったり確保しているので、なおさら。僕はITの世界から植物生産の世界に来たので、最初はなんて労力がかかって効率が悪いんだと思っていたんですけど、でも面白いんですよね。昨日までこの世になかった美しい植物をこの手で生み出す喜びは、全ての原動力です。まず単純に美しいなぁという感動があるし、何年もかけて性質を固定させ、新品種として初めて市場に持って行く時のワクワク感。『何、これ?!』って興味津々で聞かれた瞬間、心の中でガッツポーズですよ(笑)」 ガーデンですぐに使えるプロ仕様のシュラブを近日限定販売! 左は一般に流通している3号ポット苗。右がガーデンストーリーWebショップで限定販売予定の大苗。 前述の通り、シュラブは生育がゆっくりで、斑入り葉などは特に生産に時間がかかるため、流通量は限られています。近年はカラーリーフが寄せ植えなどでも重宝され、小さなポットのものも流通していますが、3号ポットは庭植えで大きくなるまでに時間がかかりすぎます。造園家としては、庭植えですぐに効果を発揮して欲しいもの。そこで、造園設計の私たち「かたくり工房」特別発注で、「小関園芸」にシュラブの大苗生産を依頼。プロが庭づくりに使う大苗をガーデンストーリーショップで、一般の方にも近日販売できることになりました。生産に時間がかかるため、限定数で近日販売いたします。販売開始はガーデンストーリーのインスタグラムでご案内します。 1.ヒサカキ‘ミスティホワイト’2.ヒサカキ‘残雪’3.チリメンカズラ(白斑)4.黄金ユキヤナギ(ユキヤナギ‘オーレア’)5.西洋イボタ(プリペット)‘カスタードリップル’6.チリメンカズラ‘オーレア’ さまざまなカラーのシュラブが花壇の中央から後方へ配置されている。かたくり工房設計・施工 シュラブは庭の骨格、背景、彩りとして活躍し、なおかつスーパーローメンテナンスな素材です。「いつもきれいな庭」を叶えるために、庭に取り入れてみませんか?
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ガーデンデザイン
【プロが解説】初めての庭づくり 地面に絵を描いてみよう
無駄な草取りはすぐやめましょう しばしば、新築の家の庭の草取りを一生懸命しているパパさんを見かけますが、草取りはすぐやめましょう。パパさんの休日はもっと楽しく、有意義なものでなければなりません。それに、残念なことにその草は取っても取っても、すぐに生えてきますよ。というのも、新築の家の造成地には、山から運ばれてきた土が入っています。山から運ばれてきた土には、ありとあらゆる草の種子が仕込まれており、いわば雑草の苗床状態。取ったところで徒労に終わりますので、もっと有意義な庭づくりの始め方をお教えします。 除草剤を使っていったん土をリセット まずは除草剤を使って、土をいったんリセットしましょう。「除草剤」と聞くと、使うのがなんだかコワイ、環境への影響が心配、と思われる方がいるかもしれませんが、ご安心を。「農林水産省の農薬登録を取得している除草剤」は、農薬として登録するまでに人や生物、環境の安全を確保するためのさまざまな審査をクリアしています。商品ラベルに「農林水産省登録〇〇〇〇〇号」という番号が入っている商品を選び、使用方法を守れば安全です。 適した除草剤を選んで使いましょう 除草剤は用途によってさまざまな種類があります。大きく分けると、以下の2つのタイプになります。 ■土に薬をまくタイプ/薬の成分が根から吸収されて草を枯らす。効果は6カ月から1年近くなど長いものが多い。駐車場など、長期的に植物を育てる予定のない場所に向く。 ■雑草に直接かけるタイプ/葉や茎から成分が吸収されて草を枯らす。薬の成分は土に落ちると効果がなくなるため、かかっていない雑草には効かない。効果は2週間など短いものが多い。 防草シート 庭の予定地には後者のタイプが向いています。除草剤をかけて雑草を枯らしたら、防草シートをとりあえず庭全体に敷いておきます。この防草シートは、庭計画にともなって後から部分的に取り除きますが、後々にも必要になります。防草シートを敷けばとりあえず、これで草取りの労役からは解放されます。さあ、楽しい庭計画をじっくり練りましょう。 防草シートの上に庭の絵を描こう 防草シートは雑草を防ぐためのものですが、キャンバスとしても役立ちます。防草シートの上に、ペンやチョークを使って庭のレイアウトを描いてみましょう。まずはざっくりとしたエリア分けでOK。デッキや花壇、芝生のエリア、ガーデンテーブルを置く場所など、庭をどんな風に使いたいか、室内からはどう見えるかなどを考慮しながら、家族であれこれ考えてみましょう。 日当たりの確認をしましょう エリア分けを考える上でヒントになるのは、日当たりです。植物が健全に生育するには、基本的に日光が必要ですから、樹木や花壇、芝生のエリアは日が当たる場所にレイアウトしましょう。「日が当たる」と一口にいっても、当たり具合で適した植物が異なります。植物の生育に関連して、日当たり具合を以下の4つに分けました。庭のどこがどれに当てはまるか、チェックしてみましょう。 日当たり良好/朝日が当たり、午後過ぎまで日が当たって、西日(3時以降の日)は建物などで遮られる。日当たり強光/午前中から日暮れまで、ずっと日が当たる。半日陰/午前中のみ、または午後からのみ日が当たる。日陰/一日中、日が当たらない。 最も植物の選択肢が多いのは、①の「日当たり良好」エリア。②も植物がよく育つエリアですが、夏の暑さと乾燥に注意が必要。強い光によって「葉焼け」するような植物は避けます。③は日陰にも強い植物を選びます。④は植栽する場所ではなく、収納スペースなどに活用するとよいでしょう。 植栽は庭の敷地の20〜30% 植栽スペースは敷地の20〜30%ほどでも、緑は豊かに見える。 これから庭づくりをしようというとき、緑いっぱい、花いっぱいの庭にしたい、と思っている人は少なくないでしょう。もちろん、できますとも。でも、庭いっぱいに植栽をしてはいけません。植栽帯は庭の敷地の20〜30%がちょうどよいくらいです。「えっ!少なっ!」と思ったあなた。植物は立体物ですから、面積ではなく体積で考えましょう。例えば、樹木は枝葉を伸ばして空間を豊かな緑で彩ってくれます。この緑の見え方のことを「緑視率(りょくしりつ)」といいますが、植栽帯は20〜30%でも緑視率は十分です。 70〜80%は庭の機能面 タイルでペイビングし、周囲を花壇にした例。小さなカゼボ(東屋)は日を遮り、庭で快適に過ごせる空間。 では、植栽していない他の70〜80%はどうするのかというと、そこは人のための場所です。デッキやガーデンテーブルを置く場所、人が歩く動線や水場、作業場、収納場所など、庭の機能面を充実させるスペースとして考えましょう。 Magdanatka/Shutterstock.com 芝生を全面に張った場合でも、人がよく行き来する動線部分は芝生がはげてくることがあります。また、テーブルを置いたらその下は陰になり、芝生は早々に枯れてきます。芝生がなくなったところは土が剥き出しになり、雨が降るとドロドロになります。足元がドロドロのテーブルでお茶を飲むのは不快極まりありません。ですから、人の動線や居場所は最初から決めておいて、タイル敷きや砂利敷きにしておくことをおすすめします。そうすれば、枯れゆく芝生を悲しむ必要もありませんし、何度も芝生を張り替える労力も必要ありません。 まずは樹木から選びましょう 幹肌が美しいアオダモ。樹高が高くなりすぎず、目線で緑の葉っぱが楽しめるのでおすすめ。 植物には大きく分けて樹木類と草類があります。まずは庭の骨格を作る樹木から考えましょう。小さな庭でも樹木はあったほうがいいです。先ほど述べたように、樹木は圧倒的な緑視率に貢献しますし、庭が整った印象になり、草花の彩りも美しく見えます。ただし、木の大きさに注意。家の近くに高木を植栽して、樹木の根っこが家の基礎の下に入りこんで家が傾いてしまったという事例もあります。樹木を選ぶ時は、次のことを必ずチェックしましょう。 ●生育後の大きさ/大きくなる木は根っこも地上部と同じサイズ感で大きくなると考える必要があります。また、樹木がある程度生育したら、定期的な剪定などの手入れが必要です。 ●常緑か落葉か/常緑樹の場合、その下は木陰になります。落葉樹の場合、夏は木陰に、秋冬は日向になります。また、落ち葉の掃除の必要があります。 樹木を買うなら冬がチャンス 樹木の苗が豊富に流通するのは冬です。冬は落葉樹など多くの樹木が休眠期や生育緩慢になる時期で、植木屋さんの畑から苗木を傷めず掘り上げて出荷することができるからです。植栽にも適した時期ですので、冬のうちに樹木だけでも決めておくことをおすすめします。 住宅街の庭におすすめのコンパクトな樹木 住宅街の庭では、あまり大きくなりすぎる樹木を植えると、庭全体が日陰になってしまって他の植物が育たなくなったり、近所への落ち葉の心配などもあります。シンボルツリーとしてよく選ばれる木には樹高が10m以上になるシマトネリコやハナミズキなどがありますが、生育すると自分で剪定するのは難しくなるので、プロに依頼する必要があります。住宅街の庭なら、樹高3〜4mでも十分です。家の天井高の平均が2.2〜2.4mですので、それよりも大きい木ですが、樹木では低木に分類されます。低木は庭では垣根などとして扱われることが多いですが、自然樹形で育てるととても美しい枝ぶりでシンボルツリーに適したものもたくさんあります。おすすめの樹木を以下にご紹介します。 ニシキギ ニシキギの紅葉。poupine/Shuttersutock.com 低木に分類される樹木で、樹高は大きくなっても3m。住宅街の庭にちょうどよい高さで止まってくれます。紅葉の美しさを錦に例えられて名前がついたほど、秋は見事に紅葉します。枝を奔放に伸ばし、自然樹形だと上の写真のようにゆったり枝を広げますが、剪定しやすい高さなので、枝ぶりを庭の広さに合わせて自分でコントロールできます。 小さな庭のシンボルツリーとしておすすめのニシキギ。 エルダー エルダーフラワーとして知られる西洋ニワトコも低木〜中低木類に分類され、樹高は約3〜6m。初夏に咲く白い花は、さまざまな薬効のあるハーブとしても知られ、シロップ漬けにしてコーディアルとして飲まれます。園芸品種に黒葉でピンクの花を咲かせる‘ブラック・レース’があります。花後にはエルダーベリーと呼ばれる黒い艶やかな実がなり、この実もジャムなどにして食されます。 西洋ニワトコ‘ブラック・レース’。alfotokunst/Shutterstock.com エルダーフラワーもエルダーベリーも、英国では古くから風邪などの諸症状によいとされ親しまれている。domnitsky/Shutterstock.com オオベニウツギ 自然樹形だと3mほどに育ち、春はピンクの花をたわわに咲かせて見事です。耐暑性・耐陰性に優れ、病害虫にも強く非常に丈夫です。シンボルツリーとして扱われることの少ない樹木ですが、下枝を整理するように樹形を仕立てていくと、とても美しく印象的です。 冬の間にシンボルツリーを決め、植栽するところまでやっておくことをおすすめします。次回は、樹木以外の植物の選び方をご紹介します。