小川恭弘 -園芸研究家-

小川恭弘 -園芸研究家-の記事
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一年草
ユーフォルビア・ダイアモンドフロストは長期開花が魅力! 特徴や育て方を詳しく解説
ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの基本情報 VickyLuffy/Shutterstock.com 植物名:ユーフォルビア・ダイアモンドフロスト学名:Euphorbia hypericifolia ‘Inneuphe’科名:トウダイグサ科属名:ユーフォルビア属分類:一年草扱い(本来は常緑低木または多年草) ユーフォルビアの仲間は非常に多く、ポインセチアのような低木や多肉植物、草本性植物まで多様な種類があります。その中でも白い小花がたくさん咲いてカスミソウのように見える種類が、近年とても人気があります。寒さに弱いので屋外では冬越しできずに一年草として扱われますが、本来は常緑低木または多年草です。 ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの花や葉の特徴 園芸分類:草花開花時期:4〜11月草丈・樹高:30~50cm耐寒性:弱い耐暑性:強い花色:白 代表種が「ダイアモンドフロスト」で、4月から11月までの長期間開花し、夏の暑さにも弱らず咲き続けます。気温が下がると株が弱り、生育が止まりますが、寒さに当てず室内の暖かい場所で冬越しさせれば、多年草として育てることができます。 RuthG/Shutterstock.com ポインセチアのように白い花びらのように見える部分は葉に由来する苞(ほう)で、本来の花は目立ちません。株姿はよく分枝してふんわりとしたボリューム感があり、剪定しなくても自然に形が整います。たくさん開花する白い清楚な小花は、他の植物と組み合わせやすく、寄せ植えに最適です。鉢植えや吊り鉢、グラウンドカバーなど、さまざまな楽しみ方で育てることができます。また手間がかからず病気に強いので、初心者にもおすすめです。 茎や葉を切った際に出る白い乳液は、皮膚や目に炎症を引き起こすことがあります。また衣服等に付くと落ちにくいので注意してください。 ダイアモンドフロストの花言葉や名前の由来 ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの花言葉「君にまた会いたい」や「デリケートな美」など。「君にまた会いたい」は、古い葉を自ら落とし、花が咲き終わっても次の花を咲かせ続ける様子からつけられたのではという説があります。もう一方の「デリケートな美」は、茎が細く繊細なイメージと、雪のように真っ白な小花が咲く様子が由来という説があります。 ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの仲間 ダイアモンドフロスト Euphorbia hybrid 写真/小川泰弘 手間がかからず、丈夫でよく咲き続けることから世界中で人気です。種苗会社のハクサンが参加する植物の国際ブランドPW(PROVEN WINNERS)の品種です。草丈30~40cmほどで、地植えすると1株でもよく広がって見応えがあります。 ダイアモンドスター Euphorbia hybrid 白い苞がさらに目立つように改良された品種で、株姿は比較的コンパクトにまとまります。苞の密度が高いため、白色の苞がより鮮明に引き立っています。白い苞の密度が高い類似した品種に、生育旺盛でボリューム感のある「ダイアモンドスノー」があります。 オトギリバニシキソウ Euphorbia hypericifolia Hamdani Arie/Shutterstock.com 熱帯、亜熱帯のアメリカが原産の一年草、または株元付近だけが木質化する亜低木で、高さ60㎝ほどになります。世界の広い地域で野生化しています。 ダイアモンドフロストは、このオトギリバニシキソウからの選抜によって誕生した品種です。 ユーフォルビア・レウコケファラ Euphorbia leucocephala Jerry Lin/Shutterstock.com 中央アメリカ原産で、高さ2~3mになる常緑低木です。短日開花性で、10月頃から咲き出します。‘白雪姫’などの品種があり、ポインセチアと相性のよいクリスマスシーズンの鉢花などとして流通します。冬咲きなので、剪定は春に行ってください。 ユーフォルビア‘グリッツ’ Euphorbia graminea 'Glitz' メキシコから熱帯アメリカ原産で、沖縄などにも帰化しているカワリバトウダイ(変葉燈台)から育種された実生系品種で、種も販売されています。根は直根性なので、移植は根を崩さず行ってください。姉妹品種に、グリッツより開花が早く背丈も大きい「グラマー」があります。 ユーフォルビア ブレスレスブラッシュ Euphorbia hybrid 銅葉にほんのりピンク色の苞が個性的な品種です。おしゃれな大人の雰囲気の演出に最適です。 ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの栽培12カ月カレンダー 開花時期:4〜11月植え替え適期:5~9月肥料:5~10月入手時期:4〜10月植え付け時期:5~9月 ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの栽培環境 Open_Eye_Studio/Shutterstock.com 日当たり・置き場所 【日当たり/屋外】日向から半日陰の風通しのよい場所が適しています。地植えする場合は雨が降ると水が溜まりやすい場所は避け、排水のよい場所に植えてください。 【日当たり/屋内】基本的に屋外で育てるのをおすすめしますが、屋内で引き続き育てる場合は、日が当たる窓辺で風通しよく育ててください。 温度 寒さには弱く、生育には5℃以上が必要です。冬越しさせる際は室内で5℃以上を保ち、乾かし気味に管理します。窓際の日当たりのよい場所に置きますが、夜間は厚手のカーテンを引いてください。 ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの育て方のポイント 用土 【地植え】腐葉土や堆肥などの有機質資材をすき込んで土づくりをしておいた場所に、5〜10cmほどの穴を掘り、苗を植え付けます。 【鉢植え】土は、草花の栽培用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。 水やり 【地植え】地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がってすぐお湯になってしまうので、朝か夕の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【鉢植え】表土が乾いたらたっぷり与えてください。温度の低下とともに乾きにくくなります。温度が低いと根腐れしやすいので、過湿に注意してください。 肥料 【地植え・鉢植えともに】花が長期間咲き続けるので、肥料を切らさないようにしてください。5~10月に、3要素(チッ素・リン酸・カリ)が等量の緩効性化成肥料を規定量あたえてください。 ユーフォルビア・ダイアモンドフロストの詳しい育て方 Traveller70/Shutterstock.com 苗の選び方 よく分枝して全体的に葉がよく茂りっている株がよいでしょう。 植替え 春から夏に購入したダイアモンドフロストのポット苗は、すぐに一回りから二回り大きな鉢に植え替えてください。春に購入して植え替えた鉢植えは、7~8月に最終的に10号鉢に植えるとよいでしょう。深型の10号鉢を使う場合は、鉢底石をやや多めに入れて排水よくしてください。 花がら摘み 小花が全体に咲きますが、花が咲き終わると自然に落下するので花がらを都度摘む必要がなく、ローメンテナンスな植物です。 剪定・切り戻し ダイアモンドフロストは、そのままでも自然に形が整います。ただし大きくなると台風の強風による被害を受けやすくなるので、風の当たりやすい場所では夏頃に半分程度までバッサリと切ると安心です。 室内で冬越しさせる株は、移動する際に半分~3分の1程度まで枝を切り詰めるとよいでしょう。また冬に枝が間延びして伸びた場合は、春先に再度半分適度まで切り詰めてください。 増やし方 写真/小川泰弘 5~10月に挿し木で簡単に増やすことができます。切り花として楽しみながら、水挿しでよく発根します。 ※ダイアモンドフロストはPWのブランド苗です。種苗法で無断増殖して商取引したり、人に譲渡するのは禁止されていますので注意してください。 冬越し 寒さには強くないので室内で5℃以上を保ち、乾かし気味に管理します。窓際の日当たりのよい場所に置きますが、夜間は厚手のカーテンを引いてください。また冷え込みの厳しい時は、温度が下がりやすい窓際から離すとよいでしょう。 繊細な美しさと強健な性質が魅力のユーフォルビア・ダイアモンドフロスト Johanna Muehlbauer/Shutterstock.com ユーフォルビア・ダイアモンドフロストは、いろいろな植物と組み合わせしやすいカスミソウのような小花がふんわり咲き、ナチュラルな美しさがあって、他の植物を引き立てます。もちろん主役としても暑さに負けず長期間花が咲き続け、グラウンドカバーにしても白いフワフワの絨毯のようです。近年に急速に人気が出たのも納得でしょう。まだ育てたことのない人はぜひ入手してみてください。
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樹木
コルジリネの育て方<屋外・屋内>用途別にプロが解説!
コルジリネ(コルディリネ)とは 左/屋外で育てるコルジリネ・オーストラリス(ニオイシュロラン)の花。右/観葉植物として室内で育てるコルジリネ・フルティコサの花。Photo_Olivia /Sahed Ad/Shutterstock.com キジカクシ科センネンボク属学名 Cordyline原産 中国南部、台湾、東南アジア、太平洋諸島、オーストラリア、ニュージーランド コルジリネは常緑の低木または高木です。地下の多肉質の根茎はよく発達し、大きく育つにつれて乾燥に強くなります。また地上部が寒さなどで枯れてしまっても、株元から新しい芽が出てくることがあります。細い葉を放射状に伸ばす姿がよく似ていることからドラセナの名で呼ばれることがありますが、分類上ドラセナとは異なります。 コルジリネは、高木に育ち寒さに強い種類と、低木でコンパクトに育ち寒さに弱い種類の2タイプに分けられます。それぞれ、育て方や楽しみ方が異なるので、混同しないよう注意が必要です。 屋外のガーデニングや造園用とされるコルジリネと、室内で冬越しさせる観葉植物のコルジリネに分けて解説します。 屋外で育てるコルジリネの種類 Photo Image/Shutterstock.com 屋外用の植物として主に育てられるのは、ニオイシュロランの和名があるコルジリネ・オーストラリスです。また同じニュージーランド原産の近縁の種類やその交配種も同様で、世界の温帯地域で広く栽培されています。 耐寒性が強く、屋外で地植えすると7〜8mの大きな木に成長します。関東以西の地域では造園用の植物としてよく使われます。 購入しやすい小さなポット苗から、造園用として人間の背丈を大きく超える大木まで、非常に幅広いサイズの株が流通しています。 屋外用の代表種 ニオイシュロラン(コルジリネ・オーストラリス)Cordyline australis Ian Grainger/Shutterstock.com 原産地のニュージーランドでは高さ20mにもなります。ニュージーランドのマオリ人は古くから栽培し、葉から繊維を採取したり、食用や薬用などさまざまに利用してきました。 幹は直立し、大きく育ってくると分枝します。春から秋に、先端付近から茎を伸ばして芳香の強い白花を咲かせます。枝先付近に葉を付ける株姿はヤシのようにも見え、アジアンリゾートやエキゾチックな雰囲気を演出するのに最適です。大株に育つと-9℃までの低温に耐え、目立った病気が少なく、丈夫で育てやすいです。 品種は多くは流通していませんが、葉が赤銅色の‘レッドスター’がよく育てられています。 ガーデニングでは手ごろなサイズの株が、枝先に葉を付ける株姿を生かして寄せ植えなどにもよく使われます。 近年は流通する品種が徐々に増え、緑の葉に株の中心付近が赤みを帯びる‘サンダンス’や白斑が目立つ‘トーベイ・タズラー’なども見られます。 コルジリネ・エレクトリックシリーズCordyline banksii ニュージーランド原産でオーストラリスに近縁な原種バンクシーの園芸品種です。鮮やかな斑入りの葉が美しいです。 成長はやや遅く、地際から葉が出ているように見える株も年数が経つと幹が伸びてきます。購入したばかりの株は、強風で根元から折れることがあるので、風当たりの強い場所に置くのは避けたほうがよいでしょう。 ピンクと紫のストライプが美しい‘ピンク’、落ち着いたストライプ模様がクールな‘スター’、明るいストライプ模様がナチュラルな美しさの‘フラッシュ’など品種のバリエーションがあります。 屋外栽培向きのコルジリネの育て方 Sarah2/Shutterstock.com 適した環境・置き場所 日当たりと排水性のよい場所を好みます。最低半日以上日光が当たる場所で育てるようにしてください。雨が降ると水がたまりやすい水はけの悪い場所は避けてください。また小さな株や枝が細い株は、台風などの強風で幹が折れるなどの被害を受けやすいので注意してください。 斑入りの品種は、35℃を超えるような夏の猛暑時に日向に置くと葉焼けすることがあります。夏は午前中だけ日光が当たる半日陰で育てたほうがよいでしょう。 水やり 鉢植えは、表土が乾いてから水やりします。大株になるにつれて乾燥に強くなります。過湿を嫌うので、受け皿に水はためないようにしてください。 地植えした株は、根付けば水やりは不要です。 肥料 鉢植えは、4〜10月に窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)の三要素が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えます。あまり大きくしたくない場合は、肥料の規定量の半分程度を与えてください。 地植えの場合は、肥料は与えなくてよいでしょう。 冬越し 大株になると-10℃近くの低温に耐えます。ただし小株は性質が弱く、寒さにも強くありません。軽い霜に当たった程度で枯れることもあります。また斑入りの品種は寒さに弱い傾向があります。 地植えしたい場合は、大きく育った株を植えたほうが冬に枯らすことが少ないです。また植え付けは春に行い、冬までにしっかりと根が張るように育ててください。地下部が発達すると、地上部が寒さなどで枯れても春に芽が出てくることが多くなります。 台風対策 地植えした株は、台風の強風で折れることがあります。しっかりとした支柱を立て、先端部の葉も支柱にヒモなどで縛って固定してください。 剪定と増やし方 剪定に強いので、大きくなりすぎたら好みの位置で切ってください。切った枝は土に挿すと簡単に発根します。大きな木の太い幹を切って地面に植えるだけでも発根します。5~6月に作業を行えば、冬までに根が成長します。 室内で育てるコルジリネの種類 thitima khudkam/ GYAN PRATIM RAICHOUDHURY /Shutterstock.com 熱帯産で寒さにあまり強くないため、室内で冬越しさせる観葉植物として楽しむ種類をご紹介します。丈夫で育てやすいので、ミニ観葉から大型の鉢植えまで幅広いサイズの株が販売されています。 室内用の代表種 コルジリネ・フルティコサCordyline fruticosa socrates471/Shutterstock.com カラフルな葉が美しく、観葉植物として多く育てられるコルジリネです。 中国南部、東南アジアからオーストラリアまで熱帯の広い地域に分布し、最大で高さ4mほどになります。 鮮やかなカラーリーフが美しく、観賞用植物として盛んに栽培されています。例えば、ポリネシア東部では肥大した根茎をもつ品種が食用されていたり、ハワイでは葉の厚い品種をレイの材料にするなど、古くから熱帯の広い地域でさまざまな用途に使われ、暮らしに密着した植物として栽培されています。 品種が多く、大きく厚い葉や小さく薄い葉、細長い葉や短くずんぐりした印象の葉など、葉のバリエーションも豊富です。 コルジリネ・ストリクタ Cordyline stricta Trish Jose/Shutterstock.com オーストラリア原産で、高さ5mほどに成長します。葉は細長く先端が尖り、艶やかな緑色が美しい観葉植物です。長さ20〜40cmの穂に紫色の花を咲かせ、花後に紫色から黒色の果実を無数につけます。 環境適応性が高く、日向から明るい日陰で育てることができます。 大株に育つと-5℃程度の耐寒性があり、霜が降りにくい地域では屋外でも越冬します。関東南部や都心部の条件のよい場所では庭木になります。 葉先が丸まった‘グローカル’や斑入りの品種などがあります。 屋内栽培向きのコルジリネの育て方 plew koonyosying/Shutterstock.com 適した環境・置き場所 日向から半日陰が適します。葉の薄い品種は高温時の強い直射日光で葉焼けすることがあるので、夏は半日陰に置いたほうがよいでしょう。 日光に当てて育てることで、葉色が鮮明になります。5〜10月は、葉焼けしないように気をつけながら屋外で育てるのがおすすめです。 水やり 土の表面が乾いてから水やりしてください。大株になるに従い、乾燥に強くなります。空気が乾燥する場合は、葉水をこまめに与えたほうがよいでしょう。 肥料 5〜10月に、三要素(N/P/K)が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えてください。あまり大きくしたくない場合は、肥料の規定量の半分程度を与えればよいでしょう。 植え替え 根の成長が旺盛なので、毎年植え替えるとよいでしょう。5〜8月に根鉢の1/3程度、底の部分を崩し、伸びすぎた根茎は切ります。一回りから二回り大きな鉢に、観葉植物用の培養土などを使って植えてください。 冬越し 葉を美しく保つためには、11〜4月は室内の日当たりのよい場所に置いてください。株が大きくなってくると0℃程度の低温に耐えますが、葉は枯れて枝も傷みます。ですが、寒さで地上部が枯れても、地下部が生きていて春に再び芽が出てくることがあります。 増やし方 Jus_Ol/Shutterstock.com 5~9月に挿し木で簡単に増やすことができます。葉の付いた先端部の枝を10cmほど切り、葉をヒモなどで軽く縛って蒸散を防ぎます。赤玉土小粒などの清潔な用土に挿し、明るい日陰で乾燥させないように管理してください。他の枝も5~10cmほど切って挿し木すれば発根します。 水挿しでも簡単に発根し、透明の器越しに見た目にも楽しめます。 植え替え時などに余った根茎を利用して増やすこともできます。その場合は、3~5cmに切った根茎を赤玉土小粒を入れた浅鉢などに置いて、軽く覆土してください。 コルジリネを育てるポイントまとめ RICARDO ALGAR/Shutterstock.com 屋外で育てるガーデニング向けの種類と、熱帯性のため室内で冬越しさせる観葉植物向けの種類がある分類上は異なるドラセナの名で間違って認識されることがある地上部が損傷しても復活しやすい好みの位置で切って仕立て直すことができ、切った枝は挿し木で簡単に発根する エキゾチックな、アジアンテイストのリゾートの雰囲気がある種類が見つかります。左上から時計回りに/Alexander Narraina/ Khairil Azhar Junos/ Miftachul_Huda/ ayla-story/ Alohapatty/ Nooumaporn/Shutterstock.com 南国リゾート風の雰囲気の演出に最適なコルジリネ。カラーリーフとしてのバリエーションが多彩で、どの種類も丈夫で育てやすく、増やすのが非常に簡単なのも魅力です。リーフプランツとして優秀で重宝するコルジリネを、ぜひ育ててみてください。
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おすすめ植物(その他)
【専門家が選ぶ】自宅でハワイ気分! 魅惑のハワイアンプランツ5選
ハワイアンプランツとは All a Shutter/Shutterstock.com ハワイ諸島はアメリカ大陸まで3,600km離れており、最も孤立した島々の一つです。大型の草食動物がいない環境で独自に進化したことから、植物は貴重な固有種が多いのが特徴。一方、世界中からの移民が多いので、さまざまな地域から持ち込まれた外来植物も豊富です。ハワイで熱帯雨林へのトレッキングに出かけると、世界各地の熱帯植物を見ることができ、さながら植物園のよう。ホテルや公園の植栽も多くの植物が使われ、洗練された美しい景観で楽園の雰囲気が効果的に演出されています。 ハワイアンプランツ5種の魅力と育て方のコツ photopmh/Shutterstock.com そんな豊富な熱帯植物の中でも多く植えられて親しまれているハワイアンプランツは、ハイビスカスやプルメリア以外にもじつに多彩。美しい花が咲き芳香豊かで、ハーブとしての有用性を備えたものもあるうえ、育てやすさなどにも優れた植物です。 この記事では、その中でも日本の家庭で育てやすい種類を選んで5種ご紹介。まだ日本では聞きなれない植物名が多いですが、どれも花や葉が美しく、爽やかな香りが楽しめたり、ユニークな姿に驚いたり、お茶としても活用できるなど、多彩な魅力を備えています。 ここからは、ハワイアンプランツ5種の魅力と愛されてきた理由、育て方のコツを解説します。 おすすめハワイアンプランツ1 ピカケ bonchan/Shutterstock.com 学名 Jasminum sambac分類 モクセイ科ソケイ属原産 熱帯アジア和名 マツリカ ピカケの特徴 高さ3mほどになる半つる性の常緑低木で、世界の熱帯地域で広く栽培されています。ジャスミンの仲間で、英名は、アラビアンジャスミン。甘く爽やかな芳香のある白花は、ジャスミンティーの材料になることでも有名です。 四季咲き性で、春から秋まで長期間開花します。八重咲きなど品種も多数あり、ハワイではつぼみの状態でレイに用いられ、結婚式などに多く使われています。また、ハワイ王国最後の王女プリンセス・カイウラニ(Princess Kaiulani)が愛したことでも知られ、ハワイを象徴する特別な花の一つ。多くの国々では神聖な花などとして愛され、フィリピンやインドネシアでは国花とされています。 ピカケの育て方 photosthai/Shutterstock.com 栽培環境は、日向から半日陰の場所が適します。日光が不足しがちな場所では枝が細くよく伸びて生育し、つる性の性質が強くなります。 水やりは、鉢土の表面が乾き始めたら与えます。夏に大株になり花をよく咲かせている場合、晴れの日は毎日与えてください。 肥料は5~10月の成長期に、リン酸が多めの化成肥料などを規定量施してください。 冬は戸外ではほぼ越冬しませんが、室内に置けば容易です。 おすすめハワイアンプランツ2 イリマ tamu1500/Shutterstock.com 学名 Sida fallax分類 アオイ科キンゴジ属原産 ハワイ諸島、太平洋諸島 イリマの特徴 樹高1m程度の常緑低木で、オアフ島の島花とされています。直径2~3cmの小さな黄色い花は四季咲き性で、春から秋まで長期間楽しめます。暑さにも強く、環境適応性が高いので育てやすいです。 海岸沿いの乾燥した地域に生育するイリマは、葉が銀色がかり、枝は横方向に広がって伸びます。森に生育するものは、葉は緑色で大きくなり、背が高くなります。 イリマの花は、古くはハワイの王族のためのレイに使われていましたが、現在は一般に広く利用されて親しまれています。 イリマの育て方 alybaba/Shutterstock.com 栽培環境は、日向から半日陰の場所が適し、暑さに負けず長期間開花します。春から秋まで庭などに地植えすれば、長期間手間いらずで花が咲き続けます。 水やりは、鉢土の表面が乾いてから与えます。地植えの場合は、根付けば水やりをしなくてもよいでしょう。 肥料は控え気味でよいですが、よく成長させたい場合は5~10月に液体肥料を2週間に1回施してください。 冬越しは、11月までに庭から掘り上げて、鉢植えの状態で室内に置けば容易に越冬します。 おすすめハワイアンプランツ3 ティー pilialoha/Shutterstock.com 学名 Cordyline fruticosa分類 キジカクシ科コルジリネ属原産 熱帯アジア~オーストラリア北部別名 ティーリーフ、コルディリネ ティーの特徴 樹高2~4mになる常緑低木で、カラフルな葉色が美しく、観葉植物としても栽培されています。コルジリネの仲間には、関東でも地植えで越冬する種類もありますが、このティーは室内で冬越しさせてください。品種が多いので、コレクションしても楽しいでしょう。 ハワイではティーの名で知られ、厚みのある葉はフラダンスのスカートやレイ、屋根葺き材料、サンダル、食品の包装用などさまざまな用途で古くから利用されてきました。また魔除けの力があると信じられ、健康の象徴としても親しまれています。 ティーの育て方 sharohyip/Shutterstock.com 栽培環境は、日向から半日陰が適します。葉の厚みが薄い品種は、夏は半日陰に置いたほうがよいでしょう。 水やりは鉢土の表面が乾いてから与えます。 肥料は、観葉植物用のものなどを5〜10月に規定量施してください。 冬は11月までに室内に移動し、日当たりのよい場所に置いて冬越しさせましょう。 おすすめハワイアンプランツ4 ラウアエ Soranan Boonyoung/Shutterstock.com 学名 Phymatosorus scolopendria分類 ウラボシ科オキナワウラボシ属(ミクロソリウム属)原産 沖縄~東南アジア~オーストラリア~大平洋諸島~アフリカ和名 オキナワウラボシ ラウアエの特徴 光沢のある葉はユニークな形で、ハワイアンキルトなどのモチーフにも使われるシダ植物です。切れ込みが多く入った葉は直立し、高さ40cmほどになります。ハワイに自生していた植物ではありませんが丈夫な性質で、ハワイ諸島各地でグラウンドカバーなどとしてもよく植栽されています。また甘い芳香があることも人気の理由で、レイの素材にも利用されています。 シダ類としては例外的に乾燥に強く、日向の岩場にも生育し、環境適応性が高いという特徴もあります。 ラウアエの育て方 Cheng Wei/Shutterstock.com 栽培環境は、日向から明るい日陰で生育します。戸外で育ててもよく、室内で観葉植物として楽しむことも可能で、栽培用途が広いです。 水やりは鉢土の表面が乾いてから与えます。 鉢植えの場合は植え替えを適切に行えば、地植えと同じく特に肥料は施さなくてもよいでしょう。早く生育させたい場合は、5~10月に液体肥料を2週間に1回、水やり代わりに与えてください。 冬越しは、11月までに鉢植えにして室内に取り込めば容易に越冬します。 おすすめハワイアンプランツ5 ママキ Merissa Revestir/Shutterstock.com 学名 Pipturus albidus分類 イラクサ科ヌノマオ属原産 ハワイ諸島 ママキの特徴 ハワイ諸島の固有種で、昨今人気上昇中のハワイアンハーブです。樹高9mになる常緑樹ですが、小さな株の間は草本植物のように見えます。古くからハーブとして利用され、葉は万能薬とされます。お茶にすると、苦みの少ないまろやかな甘味で、カテキンなどの抗酸化物質やミネラルが豊富に含まれているので、体の調子を整え、アンチエイジングやデトックス、疲労回復、高い美容効果などが期待されています。お茶の市販品もありますが、流通量は多くありません。苗の流通量も少ないので、ネット通販などを利用するとよいでしょう。 お茶の作り方は、目安として500mlの熱湯に対し、生葉を4~5枚入れ、10~15分蒸らしてください。冷やして飲んでもおいしいです。 ママキの育て方 Merissa Revestir/Shutterstock.com 栽培環境は、午前中だけ日光が当たる半日陰が適します。夏の強い直射日光に当てると葉焼けするので、注意しましょう。 水やりは、鉢土の表面が乾いてから与えます。過湿は嫌うので注意してください。 肥料は、5~9月に液体肥料を2週間に1回、規定量与えてください。 寒さには弱いので、10月中に室内に取り込み、暖房の入る暖かい場所で冬越しさせてください。 魅力いっぱい! ハワイアンプランツを育てて自宅でハワイ気分 makenamedia/Shutterstock.com 丈夫で育てやすく観賞性の高いハワイアンプランツ4種と、ハーブとしての効能に優れるママキをご紹介しました。ママキのお茶は、今後ハワイアンハーブティーとしても人気が期待できますが、飲料や茶葉を探し求めるよりも育てたほうが入手が簡単です。日本ではまだ珍しい、ハワイの人々に愛される魅惑の植物を育てて、ハワイの気分や雰囲気をご自宅で味わってみてください。
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果樹
【ドラゴンフルーツの育て方】美と健康に効能のある果実と花を家庭でも楽しもう!
ドラゴンフルーツの基本情報 EugeneEdge/Shutterstock.com ドラゴンフルーツはサボテン科ヒモサボテン属の森林性サボテンで、中米から南米北部が原産です。ピタヤの別名でも知られています。茎は自立せず、木や岩などに気根を出しながらよじ登り、20mを超えるほどになります。環境がよいと1年で1m伸びるほど生育が早く、育てる上では適切に仕立てて強く剪定することが必要で、熱帯の農園などでは、傘状に仕立てて栽培されています。ベトナムで多く生産され日本にも輸入されているほか、熱帯の乾燥した地域でも商業栽培が盛んです。 Bigc Studio/Shutterstock.com サボテンなので乾燥に強く、病害虫の被害も少ないです。また水を切れば0℃近くまで耐え、丈夫で育てやすいのも特徴。冬は室内で管理すれば、家庭でも開花させて実を収穫することは十分可能です。 開花習性と果実 Kanurism/Shutterstock.com 6〜10月には月に1回、満月の頃に開花します。そして年に3~5回開花結実し、開花から1カ月程度で果実が収穫できます。 果肉はゴマのような小さな種が無数にありますが、そのまま気にせずに食べることができます。一般に甘味が少なく薄味ですが、甘味の強い品種もあり、栄養豊富でヘルシーなことから世界的に人気が上昇しています。 一般に流通しているドラゴンフルーツは果実を未熟なうちに収穫していることが、甘味が薄い原因となっています。樹上で完熟させた果実は甘味が強くなり、これは育てた人だけが味わえる特権です。 ドラゴンフルーツの美しい花 PickyPow/Shutterstock.com 夜に月下美人を思わせる直径20~30cmほどの白くて大きな美しい花が、一晩だけ咲きます。花は美しいだけでなく、爽やかな芳香も楽しめます。ドラゴンフルーツの農園で見られる、満月の夜に花が一斉開花する光景は非常に幻想的な美しさで、一見の価値があります。 ドラゴンフルーツの種類 Bigc Studio/Shutterstock.com 多く流通しているのは果皮が赤で果肉が赤と白の種類ですが、他の種類もあります。 ・果肉が赤色の種類(赤肉種) 鮮烈な赤色の果肉が人目を引きます。甘みがやや強く、服などに果汁が付くと落ちにくいです。例外はありますが、自家不和合性の品種があるので、品種名が不明の場合は白肉種と混植するとよいでしょう。 ・果肉が白色の種類(白肉腫) 世界で最も多く生産される種類です。夏の終わり頃に集中して結実する傾向があります。赤色に比べると甘味がやや薄いですが、酸味が少しあってすっきりした味わいです。自家不和合性の品種もあります。 ・果皮が黄色で果肉が白色の種類 Gregory Gerber/Shutterstock.com ニュージーランドから輸入されるドラゴンフルーツです。味はほとんど変わりませんが、より高価格で流通しています。近年は見かけることが少ないようです。 ・果肉がピンクの種類 果肉が赤と白の種類を交配したピンクの品種(ちゅらみやらび)が、沖縄や通販などで少数ですが流通しています。 ・その他 イエロードラゴン、またはイエローピタヤの名で輸入果実が少数販売されています。別属ともされますが、ドラゴンフルーツの中では一番美味です。またイエロードラゴンと一般的な赤と白の果肉の品種との交配種、オレンジドラゴンもありますが、こちらはほぼ流通していません。 ドラゴンフルーツの栄養と食べ方 mama_mia/Shutterstock.com 各種ビタミンとミネラルがバランスよく豊富に含まれていることから、スーパーフードとして知られています。美容に効果のあるビタミンとミネラルを多く含み、アンチエイジング効果も期待されるため、女性に強く支持されるのも納得です。体内の代謝を促進し、高血圧などの生活習慣病やがん予防、疲労回復などさまざまな効能があるといわれています。 また、体内を内側から綺麗にしてくれる食物繊維が非常に豊富に含まれています。ただし食物繊維はとりすぎるとお腹を壊すので、ドラゴンフルーツも食べすぎには注意してください。1日に半分程度なら多くの人は問題ないですが、お腹の調子が悪いときや便秘気味のときは避けたほうがよいでしょう。 また、ジュースやスムージーにして味わうのもおすすめです。そのまま食べるとほとんど吸収されない種の部分の栄養と繊維も効率よく吸収することができます。 食用としてのさまざまな利用法 BBA Photography/Shutterstock.com ピューレ状にしたドラゴンフルーツに、ベリー類やバナナなどをトッピングしたピタヤボウルは、ハワイでは定番のヘルシーデザートになっています。 癖がないので、アボカドのように野菜感覚でサラダに使ってもよく合います。 赤肉種は色素のアントシアニンが豊富なので、アイスやシャーベットの栄養豊富な着色原料として使うこともできます。 ドラゴンフルーツは果実以外も食用でき、原産地では捨てるところのない植物とされています。果実の皮も火を通すと柔らかくなり、パプリカに似た食感と味。つぼみや花弁は野菜として、天ぷらやスープなどに使えます。新しく伸びた枝の葉肉は柔らかく、刻めばオクラに似た味です。 ドラゴンフルーツの育て方 Ralyb/Shutterstock.com 置き場所 春から秋は、屋外の日光がよく当たる場所が適します。日光不足になると花も咲かなくなるので、半日以上日光が当たる場所に置くようにしてください。 ビニールハウスの中や暑さの厳しい地域、風通しの悪い場所では夏に葉焼けすることが多いです。午前中だけ日光が当たる場所に置くか、遮光率50%くらいの遮光ネットを張ってください。 水やり よく花を咲かせて実を収穫するには、春から秋は鉢土の表面が乾いてからたっぷりと水を与えてください。水はけのよい用土の場合は、表層を湿らすように毎日少しずつ与えるとよいでしょう。乾燥に強いですが、水が不足すると花が咲かなくなります。開花から結実までは、水切れしないようにすることで果実の品質がよくなります。また受け皿に水をためると根腐れするので、注意してください。 冬は断水します。 肥料 実をたくさん収穫したい場合は、十分な肥料が必要です。春から秋の成長期に、骨粉が入った発酵済み油粕などの有機肥料を規定量与えてください。 用土 比較的選びませんが、初心者はサボテン用の土など排水性のよいものがおすすめです。花を多く咲かせたい場合は、汎用性の高い一般的な培養土に、赤玉土中粒を3~4割混ぜるとよいでしょう。 また、植え付けや植え替えの際は、急に大きな鉢に植えないでください。根腐れしやすく、成長も遅くなります。 冬越し 断水すれば、0℃近くまで温度が下がっても耐えます。11~12月までに室内に移動すれば容易に越冬します。関東南部の海沿いの地域では大株が戸外で越冬することもありますが、失敗も多く難しいです。 病害虫 被害は少ないですが、花や果実にアブラムシが発生することがあります。水を勢いよく当てて洗い流すとよいでしょう。 実をならせるための仕立て方と作業 Havryliuk-Kharzhevska/Shutterstock.com よく実をならせるには、仕立て方が重要です。10~15号くらいの鉢に2株程度植えるとよいでしょう。自家不和合性の品種もあるため、1鉢だけ育てる場合は赤肉種と白肉種の2株を植えると確実です。 1mほどのしっかりとした支柱を立て、枝をヒモで固定しながら伸ばします。支柱の先端部付近からは、1株につき枝を2~4本ほどさらに伸ばし、ヒモなどで縛って垂らすように誘引してください。枝を垂らすようにしないと、花芽がつきにくくなります。また新芽が至る所から出るので、余分な新芽は早めに切りましょう。 人工授粉 花は20時頃に満開になります。筆や軍手などに花粉を付け、中央のめしべに人工授粉すると確実です。花が雨に当たると花粉が不活性化し、受粉がうまくいきません。 ドラゴンフルーツの増やし方 Mr.Thanathip Phatraiwat/Shutterstock.com ドラゴンフルーツは、挿し木で非常に簡単に増やすことができます。30~50cmほど切って切り口を日陰で1週間ほど乾かした後、赤玉土小粒や川砂などの清潔な用土に挿します。雨と風が当たらない明るい日陰に置き、用土が乾いたら表層がだいたい湿る程度に水やりします。新芽が勢いよく成長を始めたら日当たりのよい場所に置き、水やりの量を増やしていきます。 育てればさまざまな楽しみが! ドラゴンフルーツを栽培しよう Thanu Garapakdee/Shutterstock.com ドラゴンフルーツはサイズが大きくスペースをとるのが難点ですが、花を咲かせたり実を収穫できる容易さはトップレベル。しかも果実は女性の美と健康、若さの維持に役立つのも見逃せません。年に何度も美しい花や果実を楽しめ、いろいろに食用できるドラゴンフルーツは、家庭で育てればさまざまなメリットがあることでしょう。ぜひこの機会にドラゴンフルーツの栽培にチャレンジしてください。
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樹木
【夏花】芳香豊かなトロピカルフラワー「プルメリア」の鉢植えの育て方&イチ推し品種
プルメリアの基本情報 ‘インカゴールド’ プルメリア(Plumeria)は、キョウチクトウ科プルメリア属に分類され、熱帯アメリカ原産の常緑、または落葉性の花木です。高さは、4〜10m。過湿を嫌いますが、乾燥には強く、多肉植物に近い性質です。意外と手間いらずで長期間開花するので、世界の熱帯地域で広く栽培されています。 フランジパニの別名でもよく知られ、ラオスでは国家とされ、チャンパーと呼ばれています。また東南アジアでは墓地やヒンズー教などの寺院に多く植えられ、テンプルツリーの名もあります。 Lungkit/Shutterstock.com 寒さには弱く戸外では越冬できませんが、室内に置いて断水すれば比較的容易に冬越しできます(詳しい育て方は後半で解説)。 温暖な沖縄では地植えで育ちます。ただし強風に弱く、台風が直撃すると大きく育ったプルメリアは根元から折れるなど甚大な被害を受けるので、沖縄などでは思ったほど植栽されていません。 枝などを切ったときに出る白い乳液は毒性があり、服などに付くとシミになるので注意が必要です。 プルメリアの花と香り glenrichardphoto/Shutterstock.com プルメリアの花はフローラルな甘い香りがするのも魅力で、香水の原料にもなっています。また、ハワイをはじめ、タヒチやフィジーなど太平洋の島々では、プルメリアの花がレイにも使われています。 花色は白のほか、ピンクや赤、黄などがあります。またその複色の花も多様にありますが、中央が黄色の花が多いです。 ハワイで親しまれているプルメリア Phillip B. Espinasse/Shutterstock.com ハワイでは「Pua melia(プアメリア)」の名でも親しまれ、オアフ島のココクレーター植物園に、多くのプルメリアがコレクションされています。サボテンなど多肉植物がよく育つ乾燥気味の気候ですが、プルメリアも元気に育っています。 Nikita M production/Shutterstock.com ハワイでは、レイは観光客を歓迎するためのものだけではなく、暮らしている人々のさまざまな日常のシーンでも使われます。プルメリアもレイを作る花材として、農園などでも多く栽培されています。 また、花心付近が黄色い白花の栽培品種である‘シンガポール’は、街路樹としても多く植えられています。近年のハワイアンブームから、日本でもハワイをイメージさせる花としてプルメリアの人気が高まっているので、これからあちこちで見かける機会も増えそうです。 プルメリアの種類 SEEDA/shutterstock.com よく栽培されている品種は、インドソケイの和名があるプルメリア・ルブラ(P. rubra)とプルメリア・オブツサ(P. obtusa)です。またその園芸品種も多く栽培され、プルメリア専門のナーセリー(ジャングルジャックプルメリア https://www.junglejacksplumeria.com/)などで新しい品種も盛んに作られています。 プルメリア・オブツサ Plumeria obtusa Kruch Elizaveta/Shutterstock.com キューバ、ユカタン半島原産で、高さは4~6m。葉先が丸いことからマルバプルメリアの和名があります。常緑のプルメリアとされますが、強く乾燥させたり冬の低温下では落葉します。 セラダイン Plumeria ‘Celadine’ Meidiyanola Kartika/Shutterstock.com 葉先が尖る園芸品種で、白い花の中央に黄色が多く入ります。丈夫でハワイで多く栽培され、レイの材料によく使われます。 日本で育てるなら矮性品種がおすすめ 従来の品種は、枝が分枝せずに1m以上伸びて開花し、大株でも枝数が少なく毎年花が咲かない場合も珍しくありません。分枝性が悪い反面、枝がよく伸びるので、家庭で鉢植えとして手軽に楽しむには不向きな植物ともいえます。 近年は30cmほどの高さで開花する矮性品種や分枝性に優れる品種が登場しているので、家庭で育てるには、以下でご紹介する品種を選ぶとよいでしょう。よく分枝するので花もよく咲き、10号鉢以上の大株に仕立てると見応えがあります。また台風の到来が毎年予想されるので、矮性の品種なら強風による被害も少なくなります。じつは、プルメリアの花色はとてもバリエーションが多く、コレクションする楽しみもあり、プルメリアを集めたイベントも開催されているほどです。 プルメリア初心者でも鉢植えで育てやすく、美しい花が楽しめるおすすめの品種を2種ご紹介します。 ディヴァイン トロピカルムード満点の花は、グラデーションがかかる美しい色合いで、プルメリア栽培デビューにもおすすめです。丈夫で花付きがよく、育てやすい点でも人気の品種です。 ミニホワイト 花付きがよく、他の品種と比べても特に矮性でコンパクトに育つうえ、丈夫。この品種も、プルメリア栽培デビューにイチ推しの品種です。 適した栽培環境と置き場所 日光がよく当たる場所が適します。半日以上日光が当たる場所に置いてください。暗い場所に置くと花が咲かなくなり、枝も細く伸びて軟弱になります。冬の間、室内に取り込んでいた株は、5月のゴールデンウィークくらいを目安に戸外で育てます。 <強風対策> 枝の先端部に葉が集中するので安定が悪く、鉢が倒れやすいです。茎が柔らかいので、倒れると折れてしまうこともあります。鉢転倒防止用のストッパーを使うか、柱など支えられる場所に枝を括りつけるとよいでしょう。 台風や暴風雨が予想される時は、前もって室内に避難させるのが確実に安心です。室内への移動ができない場合は、あらかじめ鉢を倒しておきます。そして、その上にシートなどを被せるとよいですが、中途半端に固定するとシートが飛んだりバタついたりして被害が拡大することがあるので注意してください。 プルメリアの育て方と手入れのポイント norinori303/Shutterstock.com <水やり> 表土がしっかり乾いてから、たっぷり水やりしてください。よく乾燥する夏は、水やりの際に葉全体に水をかけるようにすると、ハダニなどの害虫の発生が防げます。 過湿にすると根腐れしやすく、また樹姿が徒長気味になって軟弱になり、花付きも悪くなります。 春から6月までは、特に過湿による根腐れや病気などのトラブルが発生しやすい時期です。水の与えすぎに十分注意し、5月はやや乾かし気味に管理したほうがよいでしょう。 <肥料> 大きく成長させて花をたくさん咲かせたい場合は、5~10月にリン酸分の多い化成肥料などを規定量か、やや少なめに与えてください。窒素肥料が多いと枝ばかり伸びて花が咲きにくくなります。 肥料を控え気味に育てると枝の成長が抑えられ、コンパクトで引き締まった樹姿になります。矮性品種なども、液体肥料を7〜10月に月1回のペースで、規定量を与えればよいでしょう。 <剪定> 分枝が少ないので、ほとんど必要ありません。むやみに剪定すると、長期間花が咲きにくくなります。大株になって枝が密集しすぎたら、軽くすかすように切るとよいでしょう。 伸びすぎて仕立て直したい場合は、株元から30~50cmの位置でバッサリと切り戻して大丈夫です。ただし、開花まで2~3年かかる場合が多いです。 <植え替え> 5~9月に、1~2年の間隔で植え替えをしますが、過湿を嫌うので、大きすぎる鉢を使わないようにしてください。大きめの鉢を使った場合は、鉢底石を多めに入れて水はけよく植えるようにしましょう。 <用土> 水はけのよい用土が適します。販売されている鉢植えは、水もちのよいピートモスを主体とした用土に植えられていることがあります。ピートモス主体の土では水分過剰になりやすく、初心者の場合、立ち枯れなどの病気や、冬越しの失敗などのトラブルが多くなります。 用土としては、多肉植物用の培養土が手軽でおすすめです。また、一般的な培養土を使いたい場合は、赤玉土中粒を3割程度足すとよいでしょう。 自分で配合する場合は、赤玉土小粒に腐葉土3割、川砂1割を配合した用土、また6~8号鉢以上は赤玉土中粒を使うのがおすすめです。水はけのよい用土を使うことが、失敗なく簡単に育てるための大きなポイントになります。 プルメリア栽培のコツと注意事項 melissamn/Shutterstock.com <病害虫> 害虫の発生は少ないです。乾燥した場所では、ハダニが発生することがあります。水やりの際に勢いよく葉水すると、発生を防ぐ効果があります。 過湿にすると立ち枯れ病などが発生しやすくなります。梅雨時は、鉢を雨の当たらない場所に移動すると安心です。 春によく多発するのは、枝先が黒くなって枯れるブラックティップと呼ばれる症状です。大株は枝先が枯れるだけですが、小株はそのまま根元まで腐って枯れてしまうこともあります。プルメリア・オブツサとその系統に多く発生します。6月までは雨が当たらず、日当たりと風通しのよい場所に置くのが理想的です。 <冬越し> 11月までに室内に移動してください。水やりの間隔をあけて徐々に減らし、葉が落ちたら断水します。 15℃以上を保つと落葉しませんが、冬に落葉することでさび病やハダニの発生を防ぐことができます。断水している間は、日光に当てる必要はありません。部屋の中央付近など、温度が下がりにくく温度変化の少ない場所が適します。床からの冷え込みが予想される場合は、発泡スチロールの中に入れたり、断熱シートなどで覆うとよいでしょう。 3月頃から室内の日光が当たる場所に置いてください。ただし急な冷え込みが予想される日は、窓から離れた部屋の中央付近に移動すると安心です。葉が3~4枚になり勢いよく成長を始めたら、水やりを再開します。はじめは表層を濡らす程度の量を与え、徐々に水やりを増やしていきます。 <プルメリアの挿し木> faithie/Shutterstock.com 4~8月に、挿し木で簡単に増やすことができます。挿し木は、先端部の充実したやや木化した枝を使うと理想的です。20~30cmほどの長さに切り、日陰に置きます。2~3週間して、切り口に小さなコブのようなカルスができたら植え付けてください。温度が低い4月頃は、カルスができるまで時間がかかる場合があります。鉢は4~5号の深めの鉢(腰高鉢)などを使用し、用土は赤玉土小粒など、清潔で排水性のよいものが適します。 挿し木後に水やりし、その後は表土が乾燥してから水やりします。置き場所は、室内の明るい場所に。7~8月は、戸外の軒下など雨の当たらない涼しい場所がよいでしょう。 海外のお土産用プルメリアの枝に注意 ハワイまたは東南アジアからのプルメリアの苗や枝は、日本向けの検査証明書がないと国内に持ち込めません。これは、ミカンクロトゲコナジラミの日本への侵入を防ぐための措置です。お土産などの販売店で枝が売られていますが、気軽に土産として持ち帰らないように注意してください。 プルメリアを地植えする場合 Koko Hary/Shutterstock.com 5月から10月の期間限定ではありますが、庭などに地植えして育てることもできます。植え付ける際は、周囲より20~30㎝ほど高くしたレイズドベッドや畝などに植えると水はけがよく、立ち枯れや徒長を防げます。 植える場合、プルメリアの株は、中~大株を植えたほうが失敗が少ないでしょう。水やりの心配がなく手間いらずですが、強風に注意してください。台風が到来する場合は枝が折れる心配がありますが、少し掘り起こして寝かせると被害が防げます。 秋に掘り起こして鉢植えにする際は、赤玉土だけか、赤玉土にパーライトを3割程度混ぜた用土を使用するのがおすすめです。温度が低下していく時期の植え替えなので、腐葉土などの有機物を入れると根腐れする可能性が高くなります。 丈夫で手間いらず! プルメリアを咲かせて自宅でリゾート気分 ‘カリフォルニア・サン’ プルメリアは生命力が強く、手間いらずで丈夫な植物です。初心者で栽培に失敗している人は、通常のピートモスが多い水もちのよい培養土で大きめの鉢で育てている場合が多いようです。多肉植物のような花木と想定して、水はけのよい用土で育てて冬は断水すれば、意外と育てるのは簡単です。矮性の品種など種類を選べば花もよく咲きます。プルメリアの栽培にぜひ挑戦して、トロピカルな美しい花と甘い香りを身近に楽しんでください。
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観葉・インドアグリーン
人気の観葉植物! スパティフィラムの育て方や特徴、ユニークな楽しみ方もご紹介!
スパティフィラムの基本情報 Georgina198/Shutterstock.com サトイモ科スパティフィラム属 多年草学名 Spathiphyllum原産地 熱帯アメリカ スパティフィラムは水芭蕉を連想させる白い花が特徴の多年草で、条件がよいと一年中開花を続けます。 白い花のように見えるのは、葉に由来する仏炎苞(ぶつえんほう)です。本来の花は、中央の棒状の部分(肉穂花序/にくすいかじょ)に多数つきますが、目立ちません。耐陰性が強く、寒さにも弱くない、比較的丈夫で育てやすい植物です。小~中サイズの鉢植えが販売されており、室内で楽しむ定番の観葉植物として広く親しまれています。 スパティフィラムの品種 Creative by Nature/shutterstock.com 日本で作出された‘メリー’や‘ミニメリー’がよく流通しているほか、葉に白い斑が入る品種‘ドミノ’や‘ダイアモンド’なども人気があります。また草丈2mもの大型になる‘センセーション’やその斑入りの品種などもあります。 スパティフィラムの育て方 Mikhail Gnatkovskiy/Shutterstock.com 適した環境、置き場所 スパティフィラムの置き場所は、春から秋は明るい日陰、冬は午前中だけ日光が当たる半日陰が適します。直射日光に当てると葉焼けしやすいですが、暗すぎる場所だと花が咲かなくなるので注意してください。 冬でも暗い場所から窓越しの日光が当たるような場所へ急に移動すると、葉焼けすることがあります。移動させる場合は、1カ月くらいかけて徐々に日光にならすようにしてください。 水やり Ludmila Kapustkina/Shutterstock.com 湿り気のある土壌を好みます。基本的には用土の表面が乾いてから水やりしますが、夏の乾燥が激しい時期は水切れに注意。やや根詰まり気味の株や購入したばかりの鉢植えは、夏の晴天が続くときなどは毎朝与えてください。また鉢を池や水がめなどに漬けたまま育てる腰水栽培も可能で、水やりの手間が省けておすすめです。 肥料 肥料が不足すると花も少なくなるので、4~10月に肥料が切れないように注意。鉢花用の液体肥料を週に1回、水やり代わりに、またはリン酸がやや多めの緩効性化成肥料を規定量与えてください。 冬越し stock_studio/Shutterstock.com 成株を乾かし気味に管理すれば、最低0℃近くまでの寒さに耐えますが、葉はひどく傷みます。葉を傷めることなく冬越しするには、最低温度を8℃以上に保つようにしてください。 11月までに室内に移動し、水の与えすぎに注意しながら管理しましょう。戸外に出す場合は、5月に移動するとよいでしょう。 スパティフィラムの栽培作業 よく花を咲かせるには、適切な植え替えが欠かせません。数年経って葉がいっぱいに茂ったら、株分して増やすこともできます。株を弱らせないための作業をご紹介します。 植え替え Svetlana Khutornaia/Shutterstock.com 成長が早く根づまりしやすいので、1~2年ごとに植え替えてください。用土は観葉植物用の培養土のほか、草花用の培養土でもよいでしょう。自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)7:ピートモス 3 :パーライト 1 などの割合で混ぜるとよいでしょう。 株分け Tatiana Foxy/Shutterstock.com 5~7月に、株分けで増やすことができます。根詰まり気味の株は2~3株にナイフなどで切り分け、同じ大きさの鉢に植え付けます。株を細かく分けると生育が鈍り、花も長期間咲かなくなるので注意してください。 また、株分けと同時に、外側の古い葉や傷んだ葉を2~3割間引くように切り、風通しよくするとよいでしょう。 日頃の手入れ BAZA Production/Shutterstock.com 花が終わるにつれて、仏炎苞が緑色に変化していきます。早めに根元から花茎を切ったほうが繰り返し、よく開花します。 スパティフィラムの病害虫 病害虫の発生は少ない植物ですが、室内で育てていると乾燥気味になり、ハダニが発生することがあります。こまめに霧吹きをして湿度を保つか、戸外に出すと予防できます。 葉が密生して風通しが悪いとカイガラムシが発生します。いったん発生すると薬剤が効きにくく厄介なので、混み合っている根元から切って間引き、カイガラムシはブラシなどでこすり落としてください。そのうえで薬剤散布をして防除するとよいでしょう。 スパティフィラムのユニークな育て方 soohyun kim/Shutterstock.com スパティフィラムは、ハイドロボールやセラミスなどの資材を使った水耕栽培にも適した観葉植物です。ただし根の成長が旺盛で、比較的早く容器いっぱいに根詰まりしてしまうので注意してください。 一方、スパティフィラムは根だけでなく葉が水に大部分浸かっても問題ありません。容器と水だけで育てる水挿し栽培がおすすめです。水が日光で高温にならないように配慮しつつ明るい日陰に置けば、花も咲きます。一番労力がかかる水やりの手間も大幅に省けるでしょう。 スパティフィラムのお悩みQ&A Q:花をよく咲かせたいが、どのように日光に当てたらよいか分からない A:夏が一番葉焼けしやすいので、温度が上昇するにつれて暗い場所に移しますが、葉焼けしない範囲で可能な限り明るい場所に置くことが大切です。一日の中では朝のほうが葉焼けしにくいので、目安としては、冬は午前中だけ日光が当たる場所に。春には、暖かくなるにつれて朝だけ日光が当たる場所か、薄いカーテン越しの日光に当てるようにします。夏は直射日光が当たらない明るい日陰、または北側の窓の側などがよいでしょう。 また風通しのよい場所のほうが葉焼けしにくいので、5~10月までは戸外で栽培したほうがよいでしょう。 Q:冬に午前中だけ日光が当たる窓辺に置いたが、葉焼けした。その原因は? A:葉焼けは、気温が高いと起こりやすくなります。セントラルヒーティングなど、冬でも薄着で過ごせるほど暖房を強めに入れている室内では葉焼けする可能性が高いです。直射日光は避け、レースのカーテン越しの日光に当てるようにしてください。また急に暗い場所から移動しても葉焼けします。1カ月くらいかけて徐々に日光に慣らしてください。 Q:株分け後、葉がしおれ気味で元気がありません。 A:古い用土をきれいに落とし、根も整理した場合、葉もかなり減らさないと根とのバランスが取れず、葉がしおれて水不足の状態になります。根を切って取り除いたら、同じ割合で葉も減らすようにしてください。また初心者は、細かく分けすぎると失敗しやすいので注意してください。 丈夫で白い可憐な花が魅力のスパティフィラムを育てよう! lidian Neeleman/Shutterstock.com スパティフィラムの育て方5つのポイントは、 直射日光で葉焼けしやすい暗すぎると花が咲かない肥料切れと根詰まりに注意腰水栽培が可能冬は室内で越冬 以上のポイントを把握していれば、スパティフィラムは丈夫で育てやすい植物です。観葉植物として長く人気を維持しているのも、育てやすさが大きな理由でしょう。またスパティフィラムならではの水挿し栽培など、ユニークな育て方もできます。ぜひ5つのポイントを覚えて、美しい花と葉を楽しんでください。
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果樹
家庭でも育てられる! おすすめのトロピカルフルーツ5選&育て方
熱帯果樹の育て方の基本 Photoongraphy/Shutterstock.com 春から秋の成長期は、できるだけ戸外の直射日光が当たる場所で育てるようにしてください。ただし気温が35℃以上に上昇する暑さが厳しい夏は、午前中だけ日光が当たる場所に置くか、軽く遮光したほうがよいでしょう。 強風に当たると枝葉が傷んだり、株がグラつくなどの被害を受けます。特に実がついている時期は深刻な被害になりやすいので、注意してください。 熱帯果樹の冬越しの方法 地域によって差はありますが、紅葉が始まったら鉢植えのまま室内へ移動し、春まで室内で乾かし気味に管理します。小さな株は寒さに弱いので、室内の暖かい場所に置くようにしてください。窓のすぐ近くは、外気と同じくらい温度が下がることがあります。厚手のカーテンを間に引くか、部屋の中央付近に夜間だけ移動すると安心です。また暖房機器の近くや、風が直接当たる場所には置かないようにしてください。 寒さに強い種類を戸外で越冬させる場合は、建物近くの南側に置くとよいでしょう。冬の冷たい北風が当たらず、冬越しが成功しやすくなります。 以下にご紹介する各品種は、耐寒温度がそれぞれ異なり、お住まいの地域によっては地植えで越冬するものもあります。 家庭で育てるトロピカルフルーツおすすめ5選 トロピカルフルーツにはいろいろな種類がありますが、鉢植えでコンパクトに育てられるうえ、比較的耐寒性もあり、家庭でも果実が収穫できる育てやすい種類を5種ご紹介します。 ビタミンCが豊富な果実「アセロラ」 NIKCOA/Shutterstock.com キントラノオ科ヒイラギトラノオ属の常緑低木 学名 Malpighia glabra原産地 熱帯アメリカ 特徴と魅力 ビタミンCが豊富で、各種ジュースなどによく利用されています。生の果実は一般にはほとんど流通していないので、栽培している人だけが味わうことができます。 春から秋に数回開花し、1カ月程度で収穫できます。樹勢が強く、水と肥料を多く与えると旺盛に成長しますが、花が咲きにくくなります。 育て方 Huy Thoai/Shutterstock.com 日当たりのよい場所に置き、水は鉢土が乾いてから与えます。ただし結実中は水切れに注意してください。肥料は春と秋に3要素が等量程度の有機肥料をやや控えめに与えます。冬は室内に入れれば容易に越冬します。水を控えれば0℃近くまで耐えますが、葉を落とさせずに越冬させるには、10℃以上を保つようにしてください。 栽培作業・管理のコツ 肥料と水を多く与えすぎると枝葉ばかり茂って花が咲きにくくなります。また花が咲いても結実しないことが多いので、トマトトーンやジベレリンを花全体に吹き付けるように散布するとよいでしょう。 枝先を切ると花がつきやすくなります。 伸びすぎた枝は随時剪定し、枝が混みすぎている部分は根元から切って間引きます。作業の際に肌を露出しているとかゆくなる場合があるので、手袋や長袖の着用をおすすめします。 収穫と利用 NIKCOA/Shutterstock.com 生の果実は、赤くなると2~3日で変色するので注意してください。収穫した果実は冷凍保存できるので、ある程度たまったらジュースやジャムなどに利用するのもおすすめです。 幹に直接実がなる⁉︎ 巨峰に似た「ジャボチカバ」 Marco Tulio/Shutterstock.com フトモモ科プリニア属の常緑低木学名 Plinia cauliflora英名 Brazilian grapetree原産地 南アメリカ中部 特徴と魅力 Leonidas Santana/Shutterstock.com 実は幹に直接つき、大きさは2~3cmです。ブドウの巨峰にそっくりで、味もブドウのようですが、種子は大きいです。実は日もちが悪いので、一般には流通していません。成長は遅いですが、幹が太くなるに従って収穫量が増え、原産地では一度植えれば孫の代まで収穫できるといわれています。 ビタミンCとカリウムのほか、高血圧と脳卒中に効果が期待できるタンニンや、抗炎症・毛細血管強化などに効果があるといわれるシアニンを多く含みます。 幹から直接咲く白い花は春と秋に数回開花し、1カ月程度で収穫できます。成株の耐寒性は強く、-3℃くらいまでなら耐えます。霜がほとんど降りない地域では、戸外でも越冬します。 ジャボチカバの種類 実の大きさが2~3cmで四季成りの大葉系タイプと、寒さに強く年1~2回収穫できる葉と実が小さいタイプの苗が流通します。ほかに実の大きさが3~3.5cmの中葉系の‘アッスー’や‘アッスーワン’がありますが、こちらはやや酸味が強いです。 育て方 litchima/Shutterstock.com 日光がよく当たる場所を好みます。ただし、夏に株の調子が悪い場合は、午前中だけ日光が当たる半日陰に移動してください。乾燥を嫌うので、春から秋の成長期には晴れた日は毎日水やりし、夏に高温乾燥の日が続くときは、夕方も与えるとよいでしょう。 肥料を与えすぎると調子が悪くなることが多いので、成長期に薄めの液体肥料などを1カ月に2回程度施せばよいでしょう。 寒さには強く、関東南部では戸外でもよく越冬します。寒さが厳しい冬は、やや乾かし気味に管理します。 栽培作業・管理のコツ 用土は、水はけがよく清潔なものが適します。充実した枝に実がつくので、細い枝が密生しすぎたら適宜切るとよいでしょう。 実が密集しすぎるとアブラムシやカイガラムシがつくことがあるので、発生が見られたら実を間引き、水やりの際に果実に勢いよく当てて、害虫類をはじき飛ばすとよいでしょう。 収穫と利用 収穫した果実は短時間で味が変わってまずくなってしまうので、収穫したらすぐに食べるのがおすすめです。収穫してすぐ冷凍すれば、1カ月程度保存できます。 皮にしわが寄っているのは熟しすぎで、発酵したような味になります。 イチゴのような芳香の果実「イエローストロベリーグアバ」 ChameleonsEye/Shutterstock.com フトモモ科バンジロウ属の常緑低木和名 キミノバンジロウ学名 Psidium cattleianum var. lucidum 原産地 ブラジル 特徴と魅力 グアバの仲間で、名前はイチゴのような芳香があることに由来します。果実はタネが多く小さいですが、風味はよく、熱帯では周年開花して実をつけます。日本では4~5月に開花し、8~10月に収穫できます。寒さには比較的強く、海沿いの霜がほとんど降りない地域では、戸外でも越冬します。 その他の種類 Pikchy/Shutterstock.com 果実が赤く熟す系統に、ストロベリーグアバ(テリハバンジロウ)があります。イエローストロベリーグアバより、実は少し小さいです。 育て方 日当たりのよい場所に置き、水は鉢土が乾いてから与えます。用土は排水性がよく清潔なものが適します。肥料は、春から秋にリン酸がやや多めの有機肥料を適量与えてください。冬は室内に入れれば容易に越冬しますが、できるだけ暖かい場所に置いたほうが多く結実しやすくなります。関東地方南部の海沿いの地域では、戸外でもよく越冬します。 栽培作業・管理のコツ 寒さには比較的強いですが、温度を高く保ったほうがよく結実します。果実が熟してくると、虫や鳥による被害を受けることがあるので、注意してください。 収穫と利用 黄色くなり、果肉が少し柔らかくなってきたら食べ頃です。果肉の中には小さくて硬いたくさんのタネがありますが、生食するときは気にせず食べてかまいません。もし気になる場合は、ジューサーなどで濾してジュースにすると風味がよく、おすすめです。 星形の映え果実「スターフルーツ」 vasanty/Shutterstock.com カタバミ科ゴレンシ属の常緑低木学名 Averrhoa carambola原産地 マレー半島 特徴と魅力 果実は枝に直接つき、名前のように輪切りにした断面は星形になります。果実も花も美しく、観賞価値が高いです。酸味の強いものと酸味が少なく甘みのある品種に大きく分けられ、一般に販売されている果実は酸味の少ない品種が多いです。果肉はサクサクとした歯切れのよい食感で、サラダなどの料理にも合います。接ぎ木苗を育てれば、6~7号鉢程度の大きさでも実がなります。寒さに比較的強く、成木は最低温度ー3℃くらいまで耐えます。 育て方 Tanya_Terekhina/Shutterstock.com 日向から半日陰の場所で、やや湿り気のある土壌が適します。水やりは、鉢土の表面が白っぽく乾いてから与えるのが基本ですが、夏の晴天が続くときは毎日与えてください。肥料は3要素が等量か、リン酸がやや多い化成肥料や骨粉入り油かすなどを規定量与えます。接ぎ木された小株は弱いので、冬は室内のできるだけ暖かい場所に置くようにしてください。 栽培作業・管理のコツ 横方向、または下垂した枝に実が付きやすいです。好みの高さまで成長したら、上方向に伸びる枝は根元から切るとよいでしょう。 収穫と利用 Guy' s Art/Shutterstock.com 果実は黄色くなってから収穫しても、1~2週間冷蔵庫で保存できます。果実が黄色から少しオレンジ色を帯びてきたら食べ頃です。ジュースにするのもおすすめです。 味覚が変わる⁉︎ 不思議な果実「ミラクルフルーツ」 successo images/Shutterstock.com アカテツ科シンセパルム属の常緑低木学名 Synsepalum dulcificum原産地 西アフリカの赤道直下 特徴と魅力 実を食べた後、酸っぱいものを食べると甘く感じさせる不思議なフルーツです。2cmくらいの赤い果実には、「ミラクリン」という成分が含まれています。この成分が、舌の味覚に作用し、レモンのような酸っぱいものを甘く感じさせる効果があります。これをダイエットなどに利用してもよいでしょう。 高温多湿を好み、夏を中心に年に数回結実しますが、大株になると年中よく結実します。結実したら、1カ月程度で収穫できます。大株になれば最低5℃近くの温度まで耐えますが、小株は10℃以上を保つようにしてください。 生育がやや遅く、小苗を購入すると結実まで年数がかかります。できるだけ大きな苗を購入したほうが早く結実が見られます。 育て方 SIJO88871/Shutterstock.com 日光がよく当たる場所を好みますが、暑さが厳しく葉の傷みがひどい場合は半日陰のほうがよいです。水やりは、春から秋の成長期は鉢土が乾いてから与えます。 肥料はリン酸が多めのものを規定量与えてください。 有機物の多い肥沃な用土を好みますが、排水性のよいものを使うようにしてください。 冬越しは小株の場合、温度不足が原因で枯れることが多いので、15℃以上を保ったほうが安全です。また水も控え気味に管理してください。 栽培作業・管理のコツ 結実率はよいほうですが、開花時に木をゆすると結実率が上がります。 自然に形が整うので、剪定の必要性はあまりないでしょう。枝が混みすぎたら、根元から枝を切って間引くようにしてください。 収穫と利用のポイント Ahmad Adnan/Shutterstock.com 食べる際は、口の中でタネを噛み砕かないように軽く果肉を噛み、2~3分間舌の上にのせたままにしてからレモンなどの酸っぱいものを食べてください。効果は数時間持続します。たくさん収穫した場合は、冷凍すれば数カ月保存できます。 トロピカルフルーツが身近に実る楽しみに挑戦しよう! Marcia Cobar/Shutterstock.com ご紹介した熱帯果樹は、定番の観葉植物と同じくらい寒さに強く、丈夫で育てやすいものです。果実は一般に入手が難しいものばかりで、樹上で完熟させた果実は、育てた人のみが味わうことができます。うまく栽培すれば年に何度も実がなり、一味違った観葉植物としても楽しいことでしょう。栽培は難しくないので、ぜひ挑戦してみてください。
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おすすめ植物(その他)
【プロが選ぶ】暑さに負けずに秋まで長期間開花! おすすめ春植え花壇苗12選
【セレクト1】アンゲロニア orientalprincess/Shutterstock.com 本来は草丈1mほどになる多年草ですが、矮性でよく分枝する品種が登場してから花壇苗として人気が出ました。 暑さに強く、春から秋まで長期間咲き続けます。ピンチしなくてもよく分枝して適度なボリューム感が出るので、花壇からプランター、寄せ植えなど、ガーデニングで幅広く活躍します。花色は青、紫、白、ピンク、ローズなどのほか、2色咲きの品種もあります。草丈30cmほどの品種から、高性とされる品種でも60cmくらいです。 <育て方のポイント> 日当たりと風通しのよい場所が適し、水はけの悪い場所は避けてください。明るい日陰でも育ちますが、株姿が間のびして花付きも悪くなります。乾燥する夏は、水切れしないよう注意してください。 【セレクト2】ランタナ Nuk2013/Shutterstock.com 四季咲き性の熱帯花木ですが、寒さに比較的強く育てやすいです。環境適応性が高く非常に丈夫で、熱帯では雑草化して問題になるほどです。関東南部地域ではよく越冬し、大株に育てば都心部などでも戸外で越冬することは珍しくありません。地上部の大部分は冬の寒さで枯れますが、株元付近が越冬し、春になると勢いよく新芽が成長します。 低木のランタナ・カマラと、枝が細く匍匐(ほふく)性のコバノランタナの2種類が流通しますが、その交配種もあります。ランタナ・カマラは花色が変化することから七変化の和名があり、種子をよく付けます。種子は毒性があるので、誤って口にしないよう注意してください。「ブルーミファイ」シリーズは種を付けない品種で、種子による株の消耗がないことから、花付きや連続開花性に優れます。 交配種は種子がつきにくく、分枝性や連続開花性に優れるスーパーランタナなどの品種があります。 ランタナの仲間 コバノランタナ コバノランタナ。wuanxiang/Shutterstock.com 種子は付かず、花色は紫と白で、寒さにはカマラより強いです。枝がよく伸びるので花壇ではやや扱いにくく、吊り鉢やスタンド鉢、グラウンドカバーなどに向きます。 <育て方のポイント> 日向~半日陰が適し、水はけの悪い場所は避けてください。環境適応性が高く、明るい日陰でも育ちますが、株姿が間のびして花付きも悪くなります。3要素が等量の化成肥料などを規定量、またはやや少なめに与えるほか、伸びすぎたら半分程度切り戻し、追肥してください。 【セレクト3】ベゴニア Kristine Rad/Shutterstock.com ベゴニアの花壇苗はセンパフローレンスが定番ですが、夏の終わり頃までに株が非常に弱ってしまったり、枯れてしまうことがあります。 従来のセンパフローレンスと比べて3倍くらい大きくなる‘ビッグ’や‘トップハット’などは、見応えがあって暑さに負けず、丈夫でおすすめです。また、さらに大型の‘ビッグデラックス’や‘ワッパー’などもあり、花壇に植えれば50~70cmにも成長し、巨大な存在感が人目を引きます。 ベゴニア‘ドラゴンウィング’ ベゴニア‘ドラゴンウィング’。Hecos/Shutterstock.com 木立性のベゴニアで、丈夫で花壇に植えることもできます。吊り鉢仕立てもおすすめです。 <育て方のポイント> 日向~半日陰が適し、水はけの悪い場所は避けてください。リン酸がやや多めの化成肥料を規定量与え、伸びすぎたら半分程度切り戻し、追肥してください。 【セレクト4】ペチュニア ペチュニア‘タイダルウェーブ’。Kryvosheia Yurii/Shutterstock.com ペチュニアは花色が豊富で、また1株で大きく広がるなど品種のバリエーションも多く、人気の植物です。ただし、長雨や泥はね、夏の高温多湿に弱いのが欠点です。近年は品種改良により、花壇に植えて秋まで長期間咲き続ける品種が登場しています。切り戻しなしで夏も元気に咲き、1株で大きく広がって見応えがあります。 <おすすめ品種> タイダルウェーブ、スーパーチュニア、さくらさくら、YES! <育て方のポイント> 日当たりと風通し、排水のよい場所が適します。鉢植えやプランターの水やりは表土が乾いてから与えますが、夏は1日2回の水やりが必要な場合があります。また大株になると肥料を多めに必要とします。3要素が等量の化成肥料などを規定量与えるほか、よく開花している場合は液体肥料も併用して与えてください。 【セレクト5】ニチニチソウ ニチニチソウ‘ニルヴァーナ カスケード’。Lucy Flo/Shutterstock.com 従来のニチニチソウを花壇に植えると、次第に溶けるように枯れてしまいます。これはニチニチソウに多発する疫病によるもので、薬剤防除が難しく厄介です。ニチニチソウを地植えする場合は、疫病耐性のある品種を選びましょう。 <おすすめ品種> バリアント、ニルバーナ、ストロングコーラ、トコナツ <育て方のポイント> 日当たりと排水のよい場所が適します。過湿を嫌うので、水の与えすぎに注意してください。花壇植えでは、根付けば水やりはほぼ不要です。花が少なくなったら追肥してください。また、伸びすぎたら半分程度切り戻し、追肥するとよいでしょう。 【セレクト6】マリーゴールド マリーゴールド‘ゼニス’。Lushchikov Valeriy/Shutterstock.com 小苗からすぐに花が咲き始め、花付きがよいフレンチマリーゴールドが花壇苗としてよく植えられます。ただし猛暑で夏の終わり頃に株が弱り、枯れてしまったりすることも多くあります。 夏も元気で、秋まで咲かせたい場合におすすめなのが、アフリカン種とフレンチ種の交配により作られたアフロフレンチ系の3倍体品種です。アフリカン種の大輪で暑さに強い丈夫な特性と、フレンチ種の優れた連続開花性を併せ持っています。 <おすすめ品種> ゼニス、エンデュランス <育て方のポイント> 日当たりと水はけのよい場所が適します。油かすなど窒素成分が多い肥料では、枝葉ばかり茂って花付きが悪くなり、暑さにも弱くなります。リン酸が多めの化成肥料などを規定量与えてください。 【セレクト7】ペンタス yod 67/Shutterstock.com 小型の熱帯花木ですが、矮性で分枝性に優れる品種が登場し、ガーデニングに欠かせない植物として多く流通しています。暑さに強く、夏でも元気に開花し、春から秋まで長期間咲き続けます。丈夫で四季咲き性の性質が強く、冬に室内の日当たりのよい場所で管理すれば、開花することも珍しくありません。 花色は、赤やピンク、白、紫のほか、青に近いものもあるなど豊富で、八重咲きや2色咲きの品種もあります。 <育て方のポイント> 日向~半日陰で、風通しと水はけのよい場所が適します。過湿に弱いので、水やりは表土が乾いてから与えるようにしてください。肥料は3要素が等量、またはリン酸が多めの化成肥料などを規定量、春から秋まで切らさないように与えてください。 【セレクト8】センニチコウ(ゴンフレナ) Monthira/Shutterstock.com 暑さや乾燥に強く長期間開花し、ドライフラワーにも最適です。カラーはピンクや紫、赤、白など。高さ30cmほどの矮性の品種は、以前から流通していた定番ですが、近年は高さ70~80cmになる高性品種も人気があります。‘ファイヤーワークス’は冬は地上部はほとんど枯れますが、関東の南部や都心部では戸外でも越冬します。 Photo/3and garden <おすすめ品種> 高性品種 ストロベリーフィールズ、ラブラブラブ(上写真)、ファイヤーワークス <育て方のポイント> 日当たりと水はけのよい場所が適します。過湿を嫌うので、水のやりすぎに注意してください。地植えなら、根付けば水やりはほぼ不要です。油かすなど窒素分の多い肥料は花付きが悪くなり、高性種は倒れやすくなるので注意してください。リン酸が多めの化成肥料を規定量与えますが、地植えではほぼ必要ないでしょう。 【セレクト9】サンパチェンス John R Martin/Shutterstock.com 長年人気を保ち続ける、ニューギニアインパチェンスの改良品種です。従来の品種は夏の強い直射日光や地植えの立ち枯れ病などに弱かったのですが、こちらは夏の日向の花壇でも元気よく咲き続けます。春に小型のポット苗を入手して育てると、夏までに旺盛に成長して、大きくなった株全体に秋まで長期間花が咲き続けるので、見応えがあり、育てる楽しさも味わえます。 <同様に育てられるおすすめ品種> 太陽のサンバ、ファンファーレ <育て方のポイント> 日向~半日陰の場所が適し、水はけの悪い場所は避けてください。暑さの厳しい地域では、午前中だけ日光が当たる場所に置くと安心です。 鉢植えの水やりは、6月までは表土が乾いてから与えます。梅雨明け後の7月くらいからは、晴れの日は毎日、さらに夕方もチェックして乾いていたら与えてください。地植えでは、夏に雨が降らず土壌の乾燥が続いたら、水やりしてください。 肥料は3要素が等量の化成肥料などを規定量与えるほか、よく開花している場合は液体肥料も併用して与えるとよいでしょう。また大株でよく咲いている場合は、肥料を十分に与えましょう。ポット苗を購入したら5~6号鉢に植え替え、最終的に10~12号くらいの鉢に植え替えてください。 【セレクト10】サルビア サルビア‘インディゴスパイアーズ’。Ksu Shachmeister/Shutterstock.com サルビア・ファリナセアなどが四季咲きのサルビアとして定番ですが、交配種には連続開花性と丈夫さに優れる品種があります。関東地方では枯れずに宿根し、地上部が枯れても春に新芽が出てくることも多いです。 <おすすめ品種> スーパーサルビア サルビア インディゴスパイアーズ、イパネマ <育て方のポイント> 日向~半日陰の場所が適し、排水の悪い場所は避けてください。地植えでは、根付けば水やりはほぼ不要です。日照不足や油かすなど窒素分の多い肥料を与えると、倒れやすくなるので注意してください。リン酸が多めの化成肥料を規定量与えますが、地植えの場合はやや少なめに与えてください。 【セレクト11】メランポディウム Mang Kelin/Shutterstock.com メキシコ原産の一年草で、小さなヒマワリのような花が株いっぱいに開花します。終わった花を覆うように新芽が伸びて、新たに花を咲かせるので、花がらが目立ちません。 暑さに強く、肥料分の少ない土壌でよく育ち、秋まで手間いらずなうえ長期間開花します。矮性の品種ジャックポットは高さ30cmほどで、株はボール状にきれいにまとまります。 <育て方のポイント> 日向~半日陰が適し、水はけの悪い場所は避けてください。地植えでも夏に7~10日以上雨が降らず土壌がカラカラに乾燥した場合は水やりしてください。油かすなど窒素肥料の与えすぎは避け、やや控え気味に肥料を与えます。地植えでは、追肥はほぼ必要ないでしょう。 【セレクト12】宿根バーベナ Opachevsky Irina/Shutterstock.com 品種名などがなく単に宿根バーベナという場合は、バーベナ・テネラかリギダを指します。多く流通するバーベナ・テネラは、葉は細かく羽状に切れ込み、茎は匍匐性で地面に接すると発根してさらに広がっていきます。 暑さに強く、春から秋まで長期間咲き続けます。 <おすすめ品種>メテオールシャワー 高さ1mほどになり一部野生化しているバーベナの原種ボナリエンシスの交配種です。高さ50~70cmとコンパクトで扱いやすくなり、花の大きさや分枝性、連続開花性も改良され、長期間多くの花を楽しめます。高性の新しいイメージのバーベナとして注目されています。 <育て方のポイント> 日当たりと排水性のよい場所が適します。地植えでは、根付けば水やりはほぼ不要です。油かすなど窒素分の多い肥料は花付きが悪くなり、高性種は倒れやすくなるので注意してください。 リン酸が多めの化成肥料を規定量与えますが、地植えの場合は、やや少なめに与えてください 長期間花を咲かせるコツ Elena Larina/Shutterstock.com 水やりは朝か夕方に行いますが、ひどく水切れさせた場合は、日中でも水やりしてください。 肥料は、種類によって与え方が違うので、注意してください。また暑さが厳しいときに花付きが悪くなったり、元気がない場合は肥料を控えるようにしてください。与えるとかえって悪化することが多いです。 ご紹介した植物は、育て方のコツをつかめば手間のかからないものばかりです。冬はビオラなどを植えれば、年2回の植え替えで花が咲き続けるロングライフな花壇を作ることができます。手間いらずで花いっぱいのガーデニングを、ぜひ楽しんでください。
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育て方
【プロが解説】葉焼けの原因を解説! 誤解の多い植物の置き場所を正しく理解しよう
よい株姿を維持するには? Fauzio/Shutterstock.com 暗い場所で育てていたのか、徒長気味に伸び、葉も小さく少なくなってしまった株を見かけます。例えば、サンセベリアも長期間日陰に置くと葉が細長くなり、自立できないほど軟弱になってしまいます。日当たりのよい屋外に出せない場合は仕方がありませんが、そうなった原因として、遮光を勧めるネット記事などを参考にしたケースも多くあるようです。筆者の周りでも、そのような実例がよく見られるようになってきました。 観葉植物をよい状態に保つには、むやみに遮光したり、日陰に置いたりせず、葉焼けを起こさない範囲で可能な限り日光に当てて育てることが大切です。正しく日が当たっていれば、葉が大きく密についてコンパクトに引き締まった株姿になり、葉色なども鮮明になります。 葉焼けを起こさない範囲を把握するために、まずは、葉焼けが起きる原因について解説します。 葉焼けが起きる原因 Aryari/Shutterstock.com 葉焼けする直接の原因としては、葉面温度の上昇があります。人間に例えると「火傷(やけど)」のようなものです。 光の強さだけが葉焼けを起こす原因と考える人が多いようですが、それは誤った認識です。葉焼けは光の強さだけでなく、気温や風なども要因となります。また、水不足などのストレスによっても影響を受けて発生します。 <葉焼けを起こす5つの原因> 光の強さ気温風ストレス(水不足他)急な移動 強い光と気温が葉面温度の上昇に関連するのはイメージしやすいと思います。 風に関しては、適度な風が当たれば葉面温度が気温以上に上昇するのを抑えられます。一方、無風状態で強い光に当たると、葉面温度は気温以上に激しく上昇を続け、結果的に葉焼けします。 他の原因として、水不足になると葉焼けを防ぐ植物内の働きが衰えるため、葉焼けする可能性が高くなります。また暗い場所から急に移動すると、葉焼けを防ぐ働きがないために葉焼けします。 葉焼けの実例 夏の屋外の日向では葉焼けしない植物も、閉め切った室内の日向では、すべて葉焼けします。このように建物の内外だけでも条件が全く変わります。 また屋外でも、立地条件や地域によって風の当たり具合や気温も異なるので、同じ地域内でも海沿いの日向では葉焼けしなくても、数キロ離れた内陸部では葉焼けすることがあります。 庭の中でも気温や風通しは大きく異なり、コンクリートの近くに置いた植物は葉焼けしても、周りが開けた高い場所に置いた植物は問題ないこともあります。 このように、葉焼けはさまざまな要因に大きく左右されて起こるので、同じ場所でも少しの条件などの差で結果が全く異なることが多いのです。 コーヒー栽培の例 Felipe Zerbini/Shutterstock.com 熱帯でも、平均気温20℃くらいの涼しい山や高原地帯では、日向でコーヒーの木が葉焼けせずに栽培できます。一方、山のふもとの平均気温30℃近くの地域では、遮光しないと葉焼けします。同じ光線の強さでも、山や高原地帯が葉焼けしない理由は、標高が高いため気温が低く、風通しもよいため、葉面温度が上昇しないからです。 ちなみに日本でも30℃近い気温は珍しくないため、日向では葉焼けします。コーヒーの名産地は夏でも涼しい高原地帯が多く、日光をいっぱい受けて育つことで質のよいコーヒー豆になります。 西日に注意 Lertwit Sasipreyajun/Shutterstock.com 夜に冷えた気温は、太陽光により徐々に温められて温度が上がります。そのため、日の出から時間が経過した午後のほうが気温が高くなり、葉焼けが発生しやすくなります。また特に午後に風がない日は、強い西日に当たると葉焼けする可能性が高くなるので注意してください。 室内の置き場所 家の中での置き場所の実例と注意点などを解説します。 不在時の閉め切った、日光がよく当たる室内 SUNG YOON JO/Shutterstock.com 気温が上がった晴れの日は、無風状態の室内はさらに非常な高温になり、植物の置き場所として適しません。特に夏の不在時の閉め切った室内の日向は、植物の葉面温度が50~60℃、またはそれ以上になることも多いです。夏の晴れた日の車のダッシュボードを想像すると分かりやすいと思いますが、外気の流入がなく、無風で空気が停滞しているため、異常に温度が上がります。このような場所に植物を置けば、すぐにひどく葉焼けするどころか、枯れてしまいます。高温すぎて通常の生物が生存できない環境ともいえます。 閉め切った室内の日向を基準にすると、すべての植物は遮光下に置くことになりますが、これが多くの観葉植物を夏に遮光下に置く誤った認識の根拠になっているかもしれません。 晴れの日に温度が上昇しやすい5~10月は、閉め切った室内の日の当たる場所に植物を置くのは避けてください。期間はあくまで目安で、建物の立地条件や材質、地域などによって1~2カ月前後します。 風通しのよい、またはエアコンの効いた日光がよく当たる場所 常に窓を全開にしてよく風が入ってくる室内の日向では、日光を好む種類の観葉植物は夏でも葉焼けしません。外気が盛んに流入することにより、株の周辺も異常な温度上昇が起きないのが理由です。ただし、風がなく気温が35℃以上まで上昇する猛暑の天気では、葉焼けする可能性が高いです。 エアコンで冷房を強めに作動させれば、冷風の流れができて葉面温度が上がらず葉焼けしないでしょう。オフィスや店舗などの窓際なども該当します。ただし休日などでエアコンを作動させないと葉焼けするので、注意してください。また、エアコンの風が直接当たる送風口のそばなどは避けましょう。 サーキュレーターを使用するだけでも、空気が循環して葉焼けする可能性がさらに低くなります。 朝だけ日光が当たる場所、カーテン越しの明るい日陰 metamorworks/Shutterstock.com 日中に家を不在にする人が春から秋に日当たりを好む観葉植物を室内で育てる場合、東向きの窓辺など朝だけ日光が当たる場所か、カーテン越しの日光が当たる場所が適します。カーテンは、春と秋はレースなどを、夏はやや薄い生地のものを使用するのがおおよその目安になります。 また直射日光を嫌う植物も、カーテン越しの光が当たる明るい場所で育てると株姿が引き締まります。 冬の日向 気温が低いため、最も葉焼けしにくい季節です。日光を好む種類は、窓越しの日光が当たる場所に置いてください。明るい日陰で育てる植物を日向に置いても葉焼けしない可能性が高いです。生育が止まる冬でも日光に当てるようにすると丈夫に育ちます。また、アンスリウムやスパティフィラムなど花を楽しむ種類は、日光にできるだけ当てるようにすると花がよく咲きます。ただし暖房がよく効いた部屋では葉焼けしやすいので注意してください。また、窓の近くは温度が下がりやすいので、アンスリウムなど寒さに弱い種類は、冷え込みが厳しい夜間は室内の中央付近に移動するなど保温に注意してください。 ※他の保温方法として、夜間は段ボールなどをかぶせる、厚手のカーテンを引く(効果弱)、暖房器具を夜間もつけるなどがあります。また雪が降るような日は昼も冷え込みが厳しいので、保温に注意したほうがよいでしょう。 屋外の置き場所 日向 Amovitania/Shutterstock.com 日光を好む観葉植物は、春から秋は屋外の風通しのよい日向で育てるのが理想的です。節間が詰まって葉が多くなり、株姿が引き締まって本来の魅力が引き立ちます。またクロトンやコルディリネなどのカラーリーフ類は、日光によく当てることで色も鮮明になります。 照り返しに注意 コンクリートの上に鉢を直接置かないでください。コンクリートが熱を持ち、照り返しによる高温で小型の植物は深刻な葉焼けになりやすいです。台の上など、風通しのよい場所に置くとよいでしょう。 午前中だけ日光が当たる半日陰 薄葉系クロトン‘アケボノ’。Jazziel/Shutterstock.com 夏の猛暑時は、日光を好む種類でも、風通しの悪い場所や暑さの厳しい地域では葉焼けすることが多くなります。温暖化が進行し夏の暑さが厳しくなっている日本では、内陸部や盆地のような地域、住宅や建物の密集した地域は特に注意してください。夏は建物の東側など、あらかじめ午前中だけ日光が当たる半日陰に置くと安心です。該当する置き場がない場合は、遮光率30~50%の遮光ネットを張ってください。 また斑入りの品種や、クロトン、コルディリネの葉の薄い品種は葉焼けしやすいので、同様に半日陰に置くとよいでしょう。 夏に乾燥が激しく日向で水やりが大変な場合は、半日陰に移動すると水やりの手間や水切れによる失敗が少なくなります。 ベランダ環境の場合 Nataly Reinch/Shutterstock.com 日光を好む種類は、できるだけベランダに出して育てるとよいでしょう。ただし立地などによって風通しが悪かったり、暑さの厳しい地域や場所、壁や床からの照り返しが強い場合は、葉焼けすることがあるので注意してください。葉焼けする場合は、家庭用のサンシェードや遮光ネットを張るなどの対策をしてください。 葉焼けしていない近隣のベランダと比較して、一見同じような環境に見えても、葉焼けが発生することがあります。 急な移動は葉焼けの原因に 日光を好む種類でも、暗い場所で適応した株を急に強い直射日光に当てると葉焼けします。また買ってきたばかりの植物も日陰に適応している場合が多いので、注意してください。 日向に移動する場合は、1カ月くらいかけて、葉焼けしにくい朝の直射日光から徐々に慣らすようにしてください。ただし暑さの厳しい時期は、直射日光に当てるのは午前中だけにしたほうが安心です。 よくある失敗 日光浴に注意 Beatriz Dominguez Gracia/Shutterstock.com 日光不足解消のため、暗い場所に置いてある植物に日光浴を勧める記事があるようなので注意してください。暗い日陰から明るい日陰への移動ならよいですが、直射日光が当たる場所への急な移動は厳禁です。 日向を好む観葉植物 以下の植物は、戸外の風通しのよい日向で育てるのが理想的です。ただし、斑が多く入った品種などは葉焼けしやすいので注意してください。 クロトン(厚葉系)/コルディリネ(厚葉系)/ストレリチア/ユッカ/サンセベリア/パキラ/シェフレラ/フィカスの仲間(ベンジャミン、ゴムの木、ガジュマル、アルテシマ、ウンベラータ他)/ドラセナ(コンシンネ、ソングオブインディア他) 植物に必要な「光」の正しい知識を身につけて丈夫に育てよう! New Africa/Shutterstock.com 葉が密に付き、引き締まった株姿を保つには、可能な限り日光に当てて育てることが大切です。立地や地域などさまざまな条件で葉焼けのリスクが変わるので、近隣の様子を観察したり、情報交換するのもよいかもしれません。葉焼けについて正しく理解して、トラブルなく素敵な観葉植物を育ててください。
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樹木
【プロが解説】長期開花! トロピカルな花「マンデビラ」の特徴・系統ごとの育て方・楽しみ方
マンデビラの基本情報 写真/小川泰弘 マンデビラは鮮やかな花と艶のある葉が美しい、つる性の熱帯花木です。温度が保たれていれば常緑で周年開花します。寒さには強くありませんが、室内で管理すれば、比較的容易に越冬できます。 キョウチクトウ科マンデビラ属に分類されますが、以前は旧属名のディプラデニアの名で流通していました。近年は多く流通しているマンデビラの品種シリーズ・「サンパラソル」が、そのままマンデビラの名前として知られるようになってきています。 左/KeiferPaceDesigns 右/ Manfred Ruckszio/Shutterstock.com 花色は、ピンクや赤、白のほか、アプリコットなども増え、八重咲きの品種もあります。種類や品種によりますが、鉢物として楽しんだり、つるを誘引してグリーンカーテンやトレリスなどに仕立てたりして親しまれています。また母の日ギフト用として、混色で植えた鉢物なども流通するようになってきました。 枝や葉を切ると出る白い乳液は有害で、皮膚につくとかぶれたり痒みがでることがあり、口に入れると嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こします。また、服などにつくと落ちにくいので注意してください。 マンデビラの種類 マンデビラの仲間は南米に110種が知られています。サンデリやスプレンデンス、ボリビエンシスなどの原種から多くの園芸品種が生み出されています。 マンデビラの園芸品種は、花が大輪でつるがよく伸びる系統と、つるの成長が遅いサンデリの系統に大きく分けられます。系統によって育て方や楽しみ方が異なるので注意してください。 マンデビラ・ボリビエンシス(Mandevilla boliviensis) Nahhana/Shutterstock.com マンデビラ・ボリビエンシスはコスタリカからボリビア、ブラジル原産で、花は白い花弁に中心が黄色の美しい原種です。サマードレスの名でも流通しています。つるの成長はやや遅く、マンデビラの2つの系統の中間的な性質です。小~中サイズのトレリスなどに誘引するほか、伸びすぎたつるをピンチしながら支柱なしでも育てることができます。 ウレキテス ルテア (Urechites lutea (= Pentalinon luteum))Tejas Prajapati/Shutterstock.com 黄色のマンデビラとして、別属のウレキテス・ルテアがサマーブーケの名で流通しています。花はやや小さめですが、マンデビラよりつるの成長が早く旺盛です。 つるがよく伸びる系統の特徴と楽しみ方 ローズジャイアント 写真/小川泰弘 【主な品種】 ローズジャイアント/ルビースター/ホワイトデライト/レッドインパクト/アリスデライト(薄ピンク~白)/ピンクパフェ(八重咲き) /ピンクマリー(半八重咲き)/クライミングサンパラソル つるの伸びが早く、支柱やトレリスに誘引して育てます。暑さに強く、大輪の花が魅力です。 深型のプランターに植え付けて楽しむのがおすすめです。つるはほとんど分枝しないので、多くの株をプランターに植えると枝数も花も多くなり、大きめのグリーンカーテンに適します。鉢植えの目安は、60cm幅のプランターにポット苗を5株植えます。比較的分枝に優れるクライミングサンパラソルは、ポット苗2~3株程度でよいでしょう。 地植えでも楽しむことができますが、水はけのよい場所を好むので、腐葉土や堆肥などの有機物を2~3割程度すき込み、畝を作るなど、排水をよくして植え付けてください。 つるの伸びが遅い系統の特徴と楽しみ方 リップギャル 写真/小川泰弘 【主な品種】 サンパラソル/リオ/アロハ/リップギャル マンデビラ・サンデリとその改良品種の系統です。つるの成長が遅いので、支柱を立てずにそのまま育てます。剪定せず大株で冬越しさせ、翌年は支柱に誘引してさらに大きく育てると、見応えが出ます。 明るい日陰でも開花しますが、徒長気味になってつる性の性質が強くなります。室内でも朝だけ日光が当たる場所に置けば、一年中室内で育てることができます。 鉢植えやプランターのほか、花壇に植えても栽培が可能です。吊り鉢などに仕立ててもよいでしょう。 花壇に植える際は、排水がよく午前中だけ日光が当たる場所が適します。植え付け前に腐葉土や堆肥などの有機物を十分すき込んでください。 マンデビラの入手 4~5月に出回り始め、小型のポット苗や5号鉢くらいの行燈仕立ての鉢物が流通しています。 つるが伸びる系統のポット苗は花が咲いていないものが多いですが、徐々に鉢を大きくすれば、夏までに十分成長して花を楽しむことができます。 つるの伸びが遅いサンデリの系統は、小苗でも花が咲いているものが多く、成長はゆるやかです。 また品種名がない状態で販売されていることも多いです。 株を購入する際は、葉が黄色くなっていたり、落葉が見られるもの、日陰に置かれて徒長したような株は避けてください。がっしりとした印象で茎が太く、葉が多く葉色もよいものを選びましょう。 マンデビラの育て方 RStollner/Shutterstock.com 置き場所 日光がよく当たる場所を好みます。最低でも半日以上日光が当たる場所に置いてください。ただし夏の猛暑で株が弱ることも多いので、暑さの厳しい地域では、風通しの悪い場所は避けましょう。また株の調子が悪い場合は、午前中だけ日光が当たる場所に置くか、30~50%程度の遮光ネットを張るなどの対策を行いましょう。 水やり 水やりは用土の表面が乾いてから与えますが、盛んに開花している時期は水切れさせないように注意してください。また用土が湿っているのに水を与えると、根腐れなどを起こしやすいので、与えすぎには十分注意してください。 肥料 よく花を咲かせるには十分な肥料が必要です。三要素が同じ割合で含まれている化成肥料などの置き肥を規定量与え、さらに旺盛に開花しているときは、液体肥料も併用して与えると効果があります。 植え替え 冬越しさせた株は、4月中旬に根鉢を1/3から半分程度くずし、新しい用土を足して植え替えてください。用土は、赤玉土に腐葉土を3割程度混ぜたような排水性がよいものが適します。 病害虫 害虫類は新芽付近にアブラムシが発生するほか、ハマキムシなども発生するので、アセフェート粒剤等をあらかじめ鉢土にまいておくと予防になります。 過湿にすると立ち枯れが発生するので注意してください。 増やし方 挿し木で増やすことができますが、上級者向けで難しいです。挿し木に挑戦する場合は発根剤を使用します。水やりは表土が乾いてから与え、気温20~30℃、かつ湿度の高い環境で管理してください。 2つの系統の作業と冬越し ここからは、2つの系統で管理方法が異なる点を解説します。 つるがよく伸びる系統の作業と冬越し つるの誘引と剪定 Molly Shannon/Shutterstock.com つるはそのまま伸ばすと上方向だけに伸びて密集してしまうので、横や斜めに適宜誘引してください。 支柱につるを誘引する際は、反時計回りに巻きつけてください。理由は、反時計回りに巻きつく習性があるため、時計回りに巻きつけるとほどけてしまうからです。つるを支柱から外したり、誘引する際に折ってしまっても、軽く折れた程度なら回復することがあります。 ピンチについて 基本的にピンチは必要ありません。ピンチをしても枝数が増えることは少なく、また増えても生育が遅くなり、生育初期は特にその傾向が強いです。 冬越しについて 霜が降りる前の10月中に剪定作業をすませ、室内に取り込むとよいでしょう。場所を取らないよう小さくしたい場合は、株元から20~30cmほど残してばっさりと切り詰めてもよいでしょう。室内の明るい場所で冬越しさせ、用土を乾かし気味に管理してください。寒さなどで地上部が枯れても、5~6月に新芽が出てくることがあります。 つるの伸びが遅い系統の作業と冬越し Simone Hogan/Shutterstock.com 剪定、ピンチ 剪定せず放任しても、大株になりながら、よく開花します。吊り鉢では枝が下垂しつつボリューム感が増します。 つるを伸ばさずにコンパクトに楽しみたい場合は、つるが3~4節ほど伸びたら先端付近をピンチすると、新しいつるが伸びてよく開花します。 冬越し前につるが伸びている場合は、軽く枝先を切り詰めてください。コンパクトにしたい場合は、株元から20~30cmほど残して切り詰めてもよいでしょう。大株に育てたい場合は、剪定は不要です。 冬越し 室内の日向から明るい日陰に置けば、容易に越冬します。サンデリとその系統は周年開花性が強いので、冬でも花を咲かせやすいです。開花させるには剪定を行わず、室内の日光がよく当たる場所で最低温度を15℃以上に保つようにしてください。よく開花している場合は、10日に1回を目安に、規定の半分程度の濃度の液体肥料を与えてください。 マンデビラを上手に育てるコツのまとめ Boryana Manzurova/Shutterstock.com マンデビラの育て方は、以下が大きなポイントとなります。 支柱を立てるか否か、系統を確認する日光に当てて育てる夏に暑さが厳しい場合や調子が悪い場合は、半日陰に移動するか遮光する水のやりすぎに注意肥料切れに注意 育て方が分かれば、鮮やかな花が手軽に長期間楽しめます。赤やピンク、アプリコットの花色のマンデビラは、トロピカルな華やかさを演出できます。一方、白や薄ピンク色のマンデビラは、清楚で涼し気な雰囲気に。また背丈の低いものから、つるがよく伸びる品種まで性質が幅広いので、コレクションして育てるとマンデビラだけでも見応えがあるでしょう。花期の長いマンデビラを育てて、夏も元気にトロピカルなガーデニングを満喫してください。