かわい・たかし/千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
河合伸志 -バラ育種家-
かわい・たかし/千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
河合伸志 -バラ育種家-の記事
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育て方
冬の手入れができなかった人へ。春先でも間に合う鉢植えバラの手入れ方法
冬に作業できなかった人のためにこれだけはやっておきたい春先の鉢植えバラの手入れ 剪定や植え替えなど、バラは花の咲かない冬の時期にやっておくべき作業がいくつかあります。それらの作業は本来なら冬の間に行うのがベストですが、初めてのバラ栽培でタイミングを逃したり、忙しかったりと、冬のバラの手入れができなかった人もいるはず。そんな人たちのために、春先に葉を展開した後からでも間に合う、バラのお手入れ方法をご紹介します。冬の間に剪定や植え替えといった必要な作業を完了させた人は、これらの手入れは必要ありません。 春先の手入れでは、まず必要以上にバラをいじらないことが大切なので、最低限の世話にとどめます。枯れ枝や勢いのない枝を軽く剪定し、育てている鉢が小さくなっている場合は、一回り大きな鉢へと植え替える鉢増しを行いましょう。暖かくなり、すでに樹液が動き出している状態では強い剪定はかえってダメージになってしまいますが、剪定をすることで少しでも樹高を下げ、株のバランスをよくすることができるので、様子を見ながら行います。 春先の剪定方法 剪定前。既に葉が大きく展開している。 剪定は、本来であれば芽が動き始める前に行います。剪定適期は、関東以西の平地でバラが休眠している12月下旬から2月末頃。適期に行う剪定方法は『バラの専門家が教える! 鉢植えで育てるバラの剪定方法』の記事をご覧ください。 春先になり、すでに新芽を吹いている場合、剪定は枯れた枝や弱った枝、弱小枝などを取り除き、樹高を下げるように少し枝を剪定します。すでに樹液が動いているため、強い剪定を行うと株へのダメージが大きく、かえってマイナスに。樹高を少しでも下げて株のバランスをよくするイメージで軽い剪定を行うにとどめ、強く切り詰めることは避けましょう。 葉を展開するだけでなく、すでに小さなつぼみを付けていることも。 剪定の手順 1.茶色い枯れ枝を付け根から切ります。 2.枯れ枝と同様に、勢いがなく、今後枯れてしまいそうな枝も付け根から切ります。 3.花を付けない細く弱々しい枝(弱小枝)を切ります。 4.枝の途中から勢いのある枝が伸びている場合、その枝を残して上部の勢いのない枝を切り、樹高を下げます。本来であれば切り戻しをして樹高を下げたいところですが、この時期にはすでに樹液が動いているため、切り詰めてしまうとバラへのダメージが大きいため、このような剪定にとどめます。 枝の途中からつぼみが付いた勢いのよい枝が伸びているので、つぼみの付いた枝を残し、それより上の部分を分岐点から切る。 剪定後。軽い剪定にとどめたため、大きな変化は見られません。不要な枝を除いて風通しをよくし、勢いのない枝を切ったことによって、樹高をやや抑えてバランスよく育てることができます。 鉢が小さい場合は、続いて一回り大きな鉢へ植え替える鉢増しの作業を行います。 大きな鉢へ植え替えることで、春から初夏にかけての成長期に根詰まりや水切れを起こす確率を下げることができます。植え替え作業の時も、あまり根をいじらないように注意しましょう。 鉢増し作業のやり方 準備 一回り大きなサイズの鉢鉢底石培養土肥料 鉢増しの手順 1.植え替え用の鉢に鉢底石を底が見えない程度に敷き、その上に培養土を入れます。培養土を入れる際には、根鉢の大きさを考えて、鉢土の表面が鉢の縁の数cm下になるようにします。 2.バラを元の鉢から抜きます。根鉢を崩す必要はありませんが、大苗の植え替えではそれほど根が回っていないため、自然に少し崩れることもあります。また、表面の土を軽く落とし、雑草のタネなどを払い落としておきます。 3.鉢の中心にバラを据え、株と土の間に隙間ができないようにしっかりと土を入れます。軽くゆするとうまく土を詰めることができます。土が入ったら、鉢底から流れ出るまでしっかりと水やりをし、肥料が切れているようであれば、必要に応じて肥料を与えます。肥料の分量は種類により異なるため、袋に記載されている量に従ってください。 春先に行う駆け込み作業はこれで終了。 もちろん冬の適期に作業をするのがベストですが、冬の間に必要な作業をすることができなかった人も、ここで紹介した作業だけでもやっておくと、初夏の開花だけでなく翌年以降の生育にもつながります。気が付いた時に、ぜひ作業を終わらせておきましょう。
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育て方
バラの専門家がズバリ答える! 下枝がなくなってきたつるバラの剪定&誘引のテクニック
年数が経過し、株元からのシュートが出にくくなってきたバラの対策 つるバラはフェンスやアーチ、オベリスクなどさまざまな構造物に誘引することで、立体的な演出ができる魅力的なバラです。苗を植え付けての数年間は、概ね教科書通りに誘引でき、コツさえ覚えればさほど迷うことがないのですが、年数の経過と共に品種によっては新しいシュートの発生が少なくなり、気がつけば“株元付近は枝がスカスカ!”なんて状態になってしまうことがあります。そこで今回は、株元付近の枝が少なくなってきた場合の剪定&誘引のテクニックをご紹介しましょう。 なお、典型的なつるバラの剪定と誘引に関しては『バラの専門家がズバリ答える! 冬の大切な作業「つるバラの剪定」』と『バラの専門家がズバリ答える! 美しく咲かせるための作業「つるバラの誘引」』を参照してください。 シュートが出にくいつるバラの剪定&誘引テクニック 品種は、‘ZENtulavende’。‘まほろば’の姉妹個体で、試作中の品種。紫色のセミダブルの花を大房で咲かせます。 植えつけ5年後の株。年数の経過と共に株元からのシュートの発生が減少し、近い将来、株の下方がスカスカになってもおかしくない状況。この先がとっても不安です。 【対策その1】株元からの貴重なシュートは、下方にとどめおく 株元から出た貴重なシュートは、どんなに長く伸びていても上方まで誘引せずに、下方で留めるためにバッサリ短く切ります。写真は、下方、左側のアップです。丸印の場所が思い切って剪定した場所です。こうしておくことで、下枝がなくなりにくくなります。 【対策その2】上方で元気よく茂っている古い枝を思い切って短く切り詰め、下枝を発生させる 写真は、下方、右側のアップです。こちらも丸印が剪定した先端です。古い枝でも上部が元気よく茂っている枝はそれなりに力を蓄えているので、思い切って短く切り詰めると、新しい枝が下の方に発生します。 ここで注意したいのが、古い枝を短く切る場合、元気のよい枝であることが必須です。元気がない古い枝を短く切っても、そもそも力を蓄えていないので、切ったことをきっかけにその枝が枯れてしまうことが多いです。 株元から新しいシュートが発生しなくなったつるバラ Case1 品種は、‘まほろば’。茶色と紫色が絶妙に混ざった複雑な色彩。極早咲きのカップ咲きの品種で、花つきがよいです。 植えつけ後5年の株。数年前より株元からのシュートはまったく発生していません。時々、古い枝の途中より中程度の発生は見られますが、ほとんどは古い開花枝。それでも毎年多数の花を咲かせています。 【対策】後生大事に古い枝を残す 写真は‘まほろば’の株元付近(剪定後)。あるのは過去数年間花を咲かせ続けてきた古い開花枝のみで、新しいシュートがまったく発生していないのがわかります。上方の枝に比べると、下方の枝は細く元気がないようにも思えますが、大切にし、剪定の際はこの古い開花枝を2~3節残して切ります。剪定後の姿は枝がゴツゴツした印象になりますが、成育期になればまったく気にならず、また花も問題なく咲きます。 株元から新しいシュートが発生しなくなったつるバラ Case2 品種は、‘マニントン・マウブ・ランブラー’。ライラック色のポンポン咲きの可憐なランブラー。スパイシーな香りも心地よい品種。しなやかな枝が長く伸びます。 年数が経過しても、比較的シュートが発生しやすい品種ですが、今回の株は株元からのシュートの発生はなく、下枝も少ないです。ただし途中よりサイド・シュートが発生しています。 【対策】枝のしなやかさを活かして、サイド・シュートを思い切って反転させ下方に誘引する 古い枝の途中(ピンクの矢印)から長いサイド・シュートが発生したので、上部で反転させて(ピンクの丸印)下方へつるを下ろしています(緑の矢印の方向)。‘マニントン・マウブ・ランブラー’のような小輪系のランブラーローズなら、このようにシュートを下げても春には花を咲かせます。しかし、多くの場合下げた枝は開花後に弱っていき、反転させた付近(ピンクの丸印)より新しくサイド・シュートが発生します。したがって、下げた枝に花が咲くのは概ね1年限りのことが多いです。 株元から新しいシュートが発生しなくなったつるバラ Case3 品種は、‘つるエンジェル・フェイス’。強い香りを放ち、波状弁の美しい品種。早咲きで花つきがよく魅力的ですが、つる性の性質が不安定で、ブッシュローズに戻りやすいです。 この場所に植えて5年が経過した株。古い枝の途中から発生したサイド・シュートはありますが、株元からのシュートはなく、年々下方が寂しくなってきています。 【対策】他人の力を借りる 左隣に植えてあるつるバラ‘スーパー・フェアリー’のシュート(ブルーの楕円印)をこの株の下方に誘引しました。この助っ人は別にバラである必要性はなく、クレマチスなどバラと相性のよい植物を選んでもよいですし、少し背丈の高い植物を株元付近に植栽すれば、空きスペースは十分に隠せます。 ここの剪定と誘引の事例は、すべて神奈川・横浜にある観光ガーデン「横浜イングリッシュガーデン」にて行われました。これらの株がどんな風に花を咲かせるのか、ぜひバラの最盛期が到来する5月に見に行ってみてはいかがでしょうか。
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育て方
バラの専門家がズバリ答える! 美しく咲かせるための作業「つるバラの誘引」
つるバラの誘引 つるバラは「つる」とは付きますが、アサガオのように自分で勝手にアーチやオベリスクなどの構造物に巻き付いていくことはありません。そこで人がつるバラの枝を構造物に沿わせるように曲げながら、紐などで固定していく必要があり、この作業を誘引といいます。つるバラを栽培するということは、この作業が必ず伴います。誘引をしなくてはならないと考えると面倒にも思えますが、つるバラは庭を立体的にすることができ、一度に多数の花を咲かせる姿は圧巻です。 誘引の基本的な考え方は、立ち上がった枝を水平に寝かせることで、頂芽優勢(ちょうがゆうせい)の性質を崩すことにあります。頂芽優勢とは、株の中でも高い位置に養分が集まりやすい性質のこと。この性質があることにより、植物はより上へと伸びることができ、多くの日光を浴びて光合成をして、競争相手に勝つことができるのです。バラも例外ではなくこの頂芽優勢の性質を保有しているため、上方に伸びた枝をそのままにしておくと、株の上部では花が咲くけれど株元には花が咲かないということになってしまいます。 つるバラの誘引は、剪定後に行います。まず剪定を済ませて余分な枝を整理することで、誘引がとてもやりやすくなります。剪定のやり方は『バラの専門家がズバリ答える! つるバラの剪定』をご覧ください。 つるバラの誘引実例 それでは、実際に剪定を終えたつるバラを誘引していきましょう。 誘引するバラ:‘伽羅奢(がらしゃ)’誘引する場所:高さ1.9×幅2mのフェンス 今回の株は、株元からシュートが上がっていて良好な状態なので、思い切って、古い枝と新しい枝を入れ替えていきましょう。 年数を経たバラの場合、どうしても株元からシュートが上がりにくくなります。そのようなバラの誘引方法は、『バラの専門家がズバリ答える! 下枝がなくなってきたつるバラの剪定&誘引のテクニック』をご覧ください。 誘引の手順 剪定が終わって、だいぶ見た目がすっきりしました。株姿をコントロールして美しく花を咲かせるためにも、誘引をしていきましょう。 誘引の基本は、上方に向かって伸びている枝を、水平になるように曲げること。このような板塀の場合、ビスやワイヤーなどでバラの枝をとめつける場所を用意し、無理なく水平になるように枝を曲げたら、麻紐などの誘引紐で固定していきます。つるバラの誘引を行う時には、つるを押さえる人と誘引紐をとめつける人に分かれて2人1組で作業すると、格段に作業性がアップします。 誘引紐を結ぶ場所は、ワイヤーやフックだけでなく、枝同士で固定してもOK。 誘引のときに長すぎる枝があれば、収めるように必要な長さに切り詰めます。 フェンス全体をまんべんなく覆うように、バランスよく枝を配置して誘引しました。 剪定・誘引が終わったら、株元を掃除して落とした枝や落ち葉などを取り除き、作業は終了です。
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育て方
鉢植えのつるバラを春に向けて再生!冬の植え替え&剪定誘引
普段手入れをしていないつるバラの株の現状をチェック! 【現状】春から育て始めた四季咲き性のシュラブローズ‘ブリーズ・パルファン’を1日2回自動灌水で水やりをしながら、特に植え替えをせず育ててきた鉢。写真右は、5月の開花の頃。葉が青々と茂り、次々と半八重の淡いピンク花を咲かせていました。左は、この作業当日の12月中旬の様子。ほとんどの葉が落ちています。 バラの専門家、河合伸志さんのつるバラ生育診断 ‘ブリーズ・パルファン’はシュートがよく発生するバラですが、この株はシュートの発生はなく、一番花以降の花も咲いた形跡がほとんどなく、全般に順調とはいえない状況。その要因は、数年間鉢替えをしていないために根詰まりしていること、肥料切れしていること、またさらには、黒星病(黒点病)が原因で落葉していることなどが考えられます。残っている葉を見てみましょう。 河合:ほら、枝先に残っている葉に黒いシミのような点がありますね。これは黒星病です。これが原因で葉が落ちてしまったのでしょう。それに、表土を見てください。コケの隙間に根がびっしり張っている様子があり、これは根詰まりしていると考えられます。このバラの状態ですが、枝数や株の様子から想像すると2〜3年は植え替えをしていないのではないでしょうか。ですから、鉢増しをしながら病葉を摘み取るのが今日の主な作業内容になります。 つるバラの鉢増しの作業プロセス 【用意するもの】現状より2回り大きい鉢(鉢底にしっかり穴があるもの)、鉢底石(鉢底のサイズに合わせて量を調整。ここでは軽石をネットに入れたものを5つ使用)、用土(堆肥入りバラ専用用土)、元肥、剪定鋏、シャベル、熊手。 まずは、鉢から根鉢を抜き出す 底の方は根の塊しかないほど、びっしりと根が回っています。これくらいまでになると、順調に水や肥料が届きにくくなり、生育に影響が出始めます。今回は鉢増し(現状より大きな鉢に植え替える)なので、たくさんの根を崩す必要はありませんが、熊手で根をかき取るように表土とサイド、鉢底をほぐします。このように根がガチガチに固まっていると、新しい根が伸びにくいので、全体的に軽くほぐしましょう。 植え込み前の準備 鉢底穴が隠れるように鉢底石を入れます(軽石やパーライト、硬質赤玉土<大粒>など)。あらかじめ培養土に元肥を混ぜておいた用土を鉢底石の上に根鉢の大きさに合わせて適量入れます。 今回は植え込み後に枝をアーチに誘引するため、根鉢を鉢の端に寄せて植え付けます。用土をまんべんなく入れていきます。掘り上げた際、根鉢をあまり崩していないのと、根鉢と新しい鉢の大きさの差が十分なので、棒などでつつかなくても隙間にしっかりと用土が入ります。 あいたスペースに草花を植えるアイデア 鉢の端にバラを寄せたことで、片側に少しスペースがあきました。今後、そのスペースに草花を植え込む際、作業がラクにできるように、あらかじめ空のビニールポットを置いてから隙間に用土を入れます。ウォーター・スペース(灌水の際に水が溜まる部分)を残すため鉢の縁から3〜5cm程下まで用土を入れ、水をやったら植え込み完了です。 つるバラをアーチに沿わせる前の4つの作業 今回の株は順調に生育していないので、あまり切り詰めないようにし、枝を多く残します。まずは、残った病葉を全部摘み取り、次に茶色く枯れた枝を切り取ります。冬に葉(特に病葉)を取り除くのは、病気を次のシーズンに持ち越さないための大切な作業です。 楊枝ほどの弱小枝(じゃくしょうえだ/細く弱々しい枝)は、今後の開花が見込めない枝です(小輪の品種の場合)。また、弱小枝が株に多く残っていると蒸れて病虫害が発生しやすくなるので、根元から丁寧に切り落とします。不要な枝(枯れた枝や弱小枝)を切り終わったら、花枝(開花する、もしくは開花した枝)を1〜2節残して切り落とします。 写真上は、剪定前。下は不要な枝を切り落とし、開花する花枝を残した剪定後です。切った枝の量は少ないですが、見た目にもスッキリしました。 写真左は、植え込み直後の剪定前。右は、株全体の不要な枝を切り落とした剪定後の姿。 剪定後、つるバラをアーチに誘引する アーチに誘引するほどたくさんの枝がないので、アーチの幅に合わせてまんべんなく一番太い枝を配置して、麻紐でとめつけました。これで誘引は完了です。枝数が少ないなら支柱を添えるだけでもよいでしょう。 オベリスクへ誘引するつるバラの冬作業の記事はこちら。 トレリスや塀、壁などへ誘引するつるバラの冬作業の記事はこちら。 後日、ビオラやアリッサムなどのポット苗を用意し、あらかじめ空けておいたスペースに植え込みました。自動灌水の水量は、休眠期に合わせて2日に1度、2ℓ程度に調整。1~2月に寒肥を与え、これで春を待ちます。つるバラは前年度に伸びた枝に花を咲かせるので、前年度の生育が順調でないこの株に多数の花は望めませんが、来年度の成育の改善が見込まれ、結果さらに翌年の開花もよくなることが期待できます。
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園芸用品
バラを育てる植木鉢の素材は何がベスト?専門家が解説!
ライフスタイルで選ぶバラ栽培用の鉢の素材 バラの栽培には、プラスチック鉢やテラコッタなどの素焼き鉢が一般的に用いられますが、それぞれメリットとデメリットがあるので、自分のライフスタイルなどに合わせて鉢の種類を選択します。 バラ栽培で素焼き鉢がよい点、悪い点 Photo/joloei/Shutterstock.com 素焼き鉢は鉢の側面からも水が抜けるため、通気性がよく根にとっては適した環境ですが、この利点は乾きやすいという欠点でもあり、外出が多い方などは水切れによって株を傷めてしまうことがあります。また割れやすかったり、重いなどで、鉢が大きくなると植え替えの際に扱いにくいというデメリットがありますが、デザイン性に優れ、演出効果が高い点ではプラスチック鉢よりはるかに優れています。 バラ栽培でプラスチック鉢がよい点、悪い点 一方、プラスチック鉢は水もちがよく、外出しがちの方でも水切れの心配が少ない反面、過湿には注意が必要です。重量が軽いため持ち運びにも便利ですが、風などで鉢が転倒しやすく、時に割れることもあります。また、デザイン性では素焼き鉢よりも劣ります。プラスチック鉢の中でもスリット鉢と呼ばれる側面に切れ込みが入ったものは、通常の仕様よりも排水性に優れますが、そこから土がこぼれやすいので要注意です。 バラを育てるために適した鉢の大きさとは Photo/stanga/Shutterstock.com 四季咲き中輪もしくは大輪のバラでは、鉢サイズは最低でも6号、できれば7〜8号鉢が理想的です。6号鉢で栽培をスタートした場合、半年後には7号以上に鉢増しをしないと順調に生育しません。鉢の号数は1号3㎝が基本で、6号ならば直径18㎝前後となりますが、メーカーによって多少の差があります。 バラを育てる素焼き鉢の水もちを改善するアイデア 素焼き鉢を使いたいものの水切れは困るという場合は、あらかじめシート状に切断したビニールを鉢の内側に入れると、見た目は素焼き鉢のままプラスチック鉢の水もちを確保できます。写真のように使用済みの用土の袋などを利用するのも一案です。 大きな穴には鉢底網を入れる 底面に大きな穴がある場合は、穴からの用土流出を防ぐために鉢底網を入れます。右写真の上のような銅製の鉢底網を使用すると、ナメクジ避けに効果があります。なお、多数の小さな穴があいているプラスチック鉢やスリット鉢では鉢底網は必要ありません。
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育て方
晩秋から初冬はバラの鉢替えシーズン!専門家が解説する5つの手順
バラの鉢替えとは 鉢植えのバラは、そのままの用土で何年も栽培し続けると、さまざまな要因で成育が悪くなります。特に化成肥料を多用している場合などは、有機肥料単独の場合と比べて用土の劣化が早く、バラが順調に生育しなくなります。この成育不良を解消するために、根鉢を崩して新しい用土で植え付ける作業を「鉢替え」といいます。 鉢替えの間隔は8号鉢以上の大鉢では2~3年に1回でも構いませんすが、それ以下の鉢の場合は可能な限り1年に1回行います。鉢替えの際には根が切断されますが、春の成育開始時期までに十分に根が再生するためにも、作業時期は年内が理想的です(関東以西の平地の場合)。 鉢替えは雑草と縁を切るチャンス! 植え付け後1年間を経過したバラの鉢植えの表土を見ると、雑草が生えていることもあります。カタバミやカラスノエンドウ、セイタカアワダチソウなどの雑草は鉢植えのままでは抜き取りにくく、また表土には雑草の種子も落ちていることがあります。鉢替えの際に丁寧に表土を崩すことで、これらを除去することが可能です。 植え替えに用意するものは7つ 鉢替えをする苗(品種:北斗)と用土、元肥、鉢底石、バケツ、熊手、土入れ、鋏を用意したら、植え替えスタート! 1 咲いている花や新芽がある場合は切り取る 鉢替えを行うと、必ず根が切断され一時的に植物の吸水能力が低下します。そのため水を多く必要とする新芽や花などが株に残っていると、脱水症状を起こす危険性があります。これらの部分はあらかじめ切り落としておくと、安全に作業を行えます。枝に残っている堅く成熟した葉は脱水症状を起こす可能性が低く、むしろ根の再生を助けるので、今回のような部分的に根鉢を崩す鉢替えの場合は、そのまま作業を行うことが多いです(根鉢をすべて崩すなど根を大きく切断する場合は、成熟した葉も落としたほうが安全です)。 2 固まった根をほぐす 鉢から抜いた根鉢は、鉢底まで根がしっかり回っています。固まった根をほぐし、同じ鉢に再び植え込むために、古い土を落として新しい用土が入るスペースを確保します。 まずは熊手などで表層をよく崩して、カタバミなどの抜きにくい雑草や雑草の種子などを用土ごと取り除きます。次に株をぐるぐる回しながら、サイドや底の根の塊を崩すようにかきとっていきます。この時、根が切れますが、構わずに進めましょう。写真右くらいの状態まで根が崩れたら終了です。鉢替え前の根鉢の3~5割程度崩しても問題はありません。 3 新しい用土の準備 バラ専用用土に元肥を混ぜて植え込み用土を準備します。今回は、天然素材をブレンドし、有効菌も豊富な培養土『バイオゴールドの土』に、天然有機肥料の『クラシック元肥』をブレンドしました(両資材ともに販売元:タクト)。 4 鉢底石を敷いてから用土を入れる 元々植えていた鉢に再び植えるので、バラの株を取り出したら一度鉢を水洗いします。見た目もきれいになり、雑草の種子なども洗い流されます。 排水性を高めるために底が見えなくなる程度、鉢底石(軽石やパーライト、大粒の硬質赤玉土など)を入れ、先に準備した用土を根鉢の大きさに合わせて入れます。 枝の広がりのバランスがよいように鉢の中央に苗をすえたら、株を押さえながら周囲に用土を入れていきます。ある程度土が入ったら、根と根の間に土が入るように、割り箸や棒などで軽く用土をつつきます。同じ鉢に植え込む場合は、根の間に土が入りにくいので、しっかりと行います。ウォーター・スペース(灌水の際に水が溜められる)を残すため、鉢の縁から3〜5cmほど下まで土を入れたら完了です。 5 水をたっぷりやって完了! 活力剤を入れた水をたっぷり与えます(鉢底から水が流れ出るまで)。鉢替えなどで根を傷めた場合、活力剤『バイオゴールドバイタル』(販売元:タクト)などを薄めて与えると、その後の回復がスムーズに進みます。 株の状況にもよりますが、一連の写真の作業は約10分程度で終わります。ぜひ、鉢替えの時期を逃さずに、バラを健やかに育てましょう。
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育て方
専門家が解説! 秋冬にやっておきたいバラの大苗の植え付け【鉢植え編】
購入した大苗を確認しましょう 晩秋から早春にガーデンセンターや通信販売などで購入できるバラの大苗には、大きく分けて3タイプあります。(詳しくは『よいバラ苗を選ぼう!初心者でもチャレンジしやすいバラの大苗をご紹介』を参照)。鉢に植え込まれた大苗(右)は春の開花までこのまま育てることができますが、裸苗(左)やロング・ポット苗(中央)は、植えつけ作業が必要です。 【全苗共通】植え付け前の準備 株元のテープを外す 株元を見ると、テープが巻かれていることがあります(接ぎ木の仕方によってはない場合もある)。これは、接ぎ木(ノイバラの台木に園芸品種を接合する増殖方法)の際に固定するために巻いたテープなので、大苗まで生育すれば、もう必要ありません。テープが巻かれたままだと株に食い込んでしまうこともあるので、残っている場合は写真右のように外します(自然分解性のテープの場合は放置しても問題ありません)。 【裸苗】の植え付け前の準備 用土に植え込まれていない裸苗は、時に苗が乾燥気味になっていることがあります。特に輸送時間を要する輸入苗はその傾向が強く、また同時に植物検疫に対応するために輸入苗は根を強く洗浄しているため、国産苗に比べると根が傷んでいることがあります。その状態から回復させるために、植え付け前に活力剤を30〜60分程度吸水させます。この作業によって植え付け後の活着が良好になり、特に輸入苗は劇的にその効果が現れます。 ここでは活力剤として『バイオゴールドバイタル』(発売元:タクト)を使用しました。なお使用した後の活力剤は、植え込み後の水やりに再利用しましょう。 【ロング・ポット苗】の植え付け準備 ロング・ポット苗は植えつける際に、仮植えの用土を無理のない範囲で落とします。白い根がびっしりと張り、土を落とすと根が切れる場合は無理せずにそのまま植え込みます。水を張ったバケツなどに根鉢を入れて軽くゆすると、ピートモスなどは落ちることもあります。なお裸苗と同様に活力剤を吸水させると活着がよりよくなります(写真の事例では、根が伸び始めであったため、周囲のピートモスが自然にポロポロと落ちました)。 【裸苗とロング・ポット苗】植え付けの5つの手順 植え付けるバラの苗(品種:ラディアント・パフューム)、用土、元肥、鉢(7号)、土入れ、割り箸などの棒を揃えたら、植え込みスタートです。 1 鉢底石を入れる 排水性を高めるために底が見えなくなる程度、鉢底石を入れます。鉢底石は軽石やパーライト、硬質赤玉土(大粒)などを用います。多数の小さな穴があいているプラスチック鉢やスリット鉢では鉢底網は必要ありません。 2 植え込み用土の準備 バラ専用用土に元肥を混ぜて、植え込み用土を準備します(輸入苗は国産苗に比べて根が傷んでいることが多いので、植え付けの際はなるべく肥料分の少ない用土を用い、元肥を入れないほうが活着はよくなります)。 今回は、天然素材をブレンドし、有効菌も豊富な培養土『バイオゴールドの土』に、天然有機肥料の『クラシック元肥』をブレンドしました。(両資材ともに販売元:タクト) 3 苗を据える 枝の広がりのバランスがよいように鉢の中央に苗を据えたら(根が長い場合は切らずに巻き込むように入れます)、株を押さえながら2で準備した用土を周囲に入れていきます。 4 土を詰める ある程度土が入ったら、根と根の間にも土が入るように軽く割り箸や棒などで用土をつつきます。ウォーター・スペース(灌水の際に水が溜められる)を残すため、鉢の縁から3〜5cmほど下まで土を入れたら完了です。 5 水やり 活力剤を入れた水をたっぷり与えます(鉢底から水が流れ出るまで)。 植え付け後の置き場所 関東以西の平地では、植えつけが終わったら寒風にさらされない陽だまりになる場所(建物の南面など)に鉢を置きます。寒冷地では、苗や土が凍結しない程度の場所で越冬させます。風除室や玄関、納屋など最低温度が0〜5℃程度を維持できる場所が適しており、リビングのような暖かい場所は避けます。 バラの株元が寂しいならば、草花を一緒に植えることも可能です。ミントやススキなど、バラよりも旺盛に生育する植物は適しませんが、ビオラやアリッサム、宿根ネメシアなどの草花や、ヒューケラやワイヤープランツ、ヘデラなどのリーフ類など、バラとの生育のバランスを取りやすいものは可能です。バラの季節まで美しい状態を維持できる植物であれば、開花期には草花との混植風の鉢を楽しめます。また、下草が植えてあることで水のやり忘れの防止にも役立ちます。
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宿根草・多年草
バラに似合う草花選び4つのポイント&おすすめ28種
バラに似合う草花選びの大切なポイントは4つ バラが咲くナチュラルな庭を目指す場合、一緒に咲かせる草花を選ぶときの基本的なポイントは4つあるとバラの専門家、河合伸志さんが解説してくれました。では、大切な4つのポイントをご紹介しましょう。 バラの草花選びポイント1 1つめは、バラと合わせるのであれば、バラの好む環境で生育できる植物を選ぶこと(これは絶対にはずしてはいけないポイントです)。肥料分の少ない土地や日陰地、湿地などを好む植物は、バラが栽培できない場所で上手に活用しましょう。 バラの草花選びポイント2 2つめは、バラと喧嘩しない花を選ぶこと。例えば開花期が重なる大輪のシャクヤクや大輪のダリアなどは、バラと主役を奪い合ってしまうのでNGです(小輪など控えめなバラと組み合わせるのであればこれらもOKです)。 バラの草花選びポイント3 3つめは、草花をバラの脇役としたいのならば、バラと開花期が重なるものを選びます。例えば、アグロステンマやヤグルマギクなどの一年草やサルビア・ネモローサ‘カラドンナ’などの宿根草がオススメです。主張のあまり強くない小花や線の細い穂状花はバラに違和感なく合わせられます。 バラの草花選びポイント4 4つめは、可能であればバラの花が終わっても長期間楽しめるカラーリーフや長期咲きの宿根草を選ぶことです。例えば、アメリカテマリシモツケ‘ディアボロ’は晩秋まで銅葉が茂り、背景となって華やかなバラの色を引き立て、さらに最後に紅葉で楽しませてくれます。日本の野草、アラリア(ウド)‘サン・キング’やシュキンハギの明るいライムグリーンの葉も株元を明るくしてくれてオススメです。長期咲きの植物としては、バラの足元で4月中旬から11月まで咲き続けるエリゲロン・カルビンスキアヌスや宿根バーベナ、バラの開花期から11月まで咲くゲラニウム‘アズール・ラッシュ’などは、バラに彩りを添えるだけでなく、バラの開花期の合間も埋めてくれて大変に重宝します。 派手になりがちな赤系のバラと優しいパステルカラーのバラが混ざり咲き、庭全体が調和して見えるのは、カラーリーフや小花が咲く下草が間をつないでいるおかげです。写真右側のシックな銅葉は、スモーク・ツリー(ケムリノキ)。その奥にある明るい黄緑色の葉を茂らせているのは、シュキンハギ。手前右側のグラスの穂(ラグラス・オバタス)は庭に優しさをプラスしています。 暖色系の花が咲く下草 左から、シレネ‘ピンクピルエット’(宿根草/草丈30〜50㎝)、アグロステンマ(一年草/草丈80〜100㎝)、シレネ・ディオイカ(宿根草/草丈約30〜50㎝)、カレンジュラ‘ブロンズ・ビューティ’(一年草/草丈約30㎝)、シレネ・ディオイカ(宿根草/草丈約30〜50㎝) 寒色系の花が咲く草花 左から、サルビア・ファリナセア(一年草扱い(暖地では宿根する)/草丈約30〜40㎝)、サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’ (宿根草/草丈約30〜50㎝)、リナム(ペレニアル・フラックス)‘ブルー・ドレス’(宿根草(暖地では一年草扱い)/草丈約30〜50㎝)、ヤグルマギク‘ダブル・ブルー’(一年草/草丈約60〜80㎝)、ラベンダー‘エイボンビュー’ (低木/樹高約20〜50㎝)、カンパニュラ・メジウム‘チャイム・パープル’(一年草/草丈約60〜80㎝)、リナリア・プルプレア(宿根リナリア)(宿根草/草丈約50㎝) ダークなトーンの草花 左から、セリンセ・マヨール(一年草/草丈約30〜50㎝)、ヤグルマギク‘ブラック・ボール’ (一年草/草丈約60〜80㎝)、アメリカテマリシモツケ‘ディアボロ’ (中低木/樹高約100〜200㎝)、ペンステモン‘ハスカー・レッド・ストレイン’ (宿根草/草丈40〜50㎝)、ニシキシダ‘アースラズ・レッド’(宿根草/草丈約20~30㎝)、セイヨウニワトコ‘ブラック・レース’ (中木/樹高約150〜300㎝) 明るいトーンの下草 左から、エリゲロン・カルビンスキアヌス(宿根草/草丈約15㎝)、アグロステンマ・ギダゴ‘オーシャン・パール’ (一年草/草丈約80〜100㎝)、シロタエギク(ダスティー・ミラー)(宿根草/草丈約20~40cm)、ミヤコワスレ(白花)(宿根草/草丈約20〜30㎝)、ニゲラ(一年草/草丈約20〜40㎝)、ツリー・ジャーマンダー(低木/樹高約30〜80㎝)、ラグラス・オバタス(一年草/草丈70㎝)、ヒナゲシ‘ブライダル・シルク’(一年草/草丈約70〜100㎝)、ギボウシ‘ハルシオン’(宿根草/草丈約30〜40㎝)、右上はアラリア(ウド)‘サン・キング’ (宿根草/草丈約30〜60㎝)
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樹木
「秋バラ」が美しい季節! バラ園に咲く秋バラの特徴&魅力をバラの専門家が解説
春とは違った魅力をまとう「秋バラ」 「横浜イングリッシュガーデン」に咲く秋バラ。写真/桜野良充 夏が終わり、秋風が吹く頃から咲き始めるバラを、総称して「秋バラ」と呼びます。各地のバラ園などでは、今、秋バラが次々と咲いて見頃を迎えています(秋バラの見頃は、地域やバラ園の管理方針によって異なります。関東地方以西の平地では、おおむね10月中旬~11月中旬が最も美しい花を咲かせます)。バラの種類には、初夏に一度開花する「一季咲き」と、春以降も不規則に繰り返して咲く「返り咲き」や規則的に開花する「四季咲き」がありますが、秋にも再び花が咲くのは、「四季咲き」の品種が中心です。そして、一斉に美しく咲くように、夏剪定を行いながら、株を健全に育てているからこそ、美しい秋バラの風景を楽しむことができるのです。 「横浜イングリッシュガーデン」に咲く秋バラ(品種は‘禅’)。写真/桜野良充 春に比べると、秋は花数が少なくなる品種もありますが、春とは違った魅力をまとっているのも秋バラの特徴です。日毎に気温が下がっていくことで花がゆっくりと開くので、春よりも観賞期間が長くなります。また、秋になると昼夜の気温差があるため、多くの品種は春の花よりも、色が濃く咲きます。そして、開花するまでに多くの時間を要する分、花弁が十分に成長し、カップ咲きなどはより深いカップになって、全体がふっくらした印象になるのも秋バラの特徴です。 左は春、右は秋に開花した ‘真宙(まそら)’。樹高約1.5mの半直立性。写真/河合伸志 例えば、上写真のバラは、右も左も同じ ‘真宙(まそら)’という品種です。細くしなやかな枝の先に、アプリコット色の整ったカップ咲きの花をうつむいて咲かせ、花にはフルーティーな強い香りがあります。秋はよりピンク色に傾き、香りも濃厚に。このように、春の花と比較して違いや魅力を知ることができるのも、秋ならではの楽しみです。 秋バラを咲かせるためには品種選びが大切 今年、「横浜イングリッシュガーデン」で開花した早咲きの秋バラ。写真左から時計回りに、‘テス・オブ・ザ・ダーヴァービルズ’、‘メルヘンツァウバー’、‘ドリーム・ウィーバー’、‘スキャボロー・フェアー’、‘ウィリアム・シェークスピア2000’、‘ホリデー・アイランド・ピオニー’、‘ザ・ポエッツ・ワイフ’。写真/3and garden 秋バラを美しく咲かせるには、初夏の開花後からの管理がポイントになります。しばしば起こりうることですが、病害虫により葉を落としてしまった場合、バラは光合成ができなくなるため株の力がなくなり、秋バラが咲かなくなってしまいます。生育期に雨が多く病害が発生しやすい日本では、最高の秋バラを咲かせることはプロにとっても決して容易なことではなく、見事な秋バラを咲かせているバラ園は、数多くのバラ園の中でもほんの一握りといっていいかもしれません。 「横浜イングリッシュガーデン」に咲く秋バラ(品種は‘禅’)。写真/桜野良充 上記のようなことだと、初心者には秋バラを咲かせることは難しいようにも思えますが、近年は病害に悩まされにくい耐病性の強い品種が登場しているので、以前に比べると秋バラのハードルはだいぶ下がっています。そう、秋バラを咲かせるための品種選びのコツは、耐病性の強い品種を選ぶことです。写真では印象が異なることがあるので、秋に咲いている姿を各地のバラ園で確認し、実際の花を見て選ぶのがおすすめです。以下からは、「横浜イングリッシュガーデン」で秋によく咲く品種や、春とは違った魅力がある花をセレクトしてご紹介します。 秋でも花つきがよい品種 7種 サザン・ホープSouthern Hope 淡いサーモン・ピンクのやや波状弁の平咲きで、花付き・花もちがとてもよく、初夏から秋にかけて次々開花し、年間を通して花数が多いです。株はコンパクトで、花壇や鉢植えに最適な品種です。 四季咲き F 花径/約7cm作出年/未定 作出国/日本樹高約1m 木立ち性 アイスバーグIceberg 白の丸弁平咲きで、花付きと花もちがとてもよい品種です。晩秋になるとうっすらと淡いピンクを帯びて、より一層魅力的な花になります。軽いティーの香りがあります。適切な管理をすれば、夏から秋も春と変わらない花数が楽しめます。 四季咲き F 花径/約7cm作出年/1953年 作出国/ドイツ樹高約1.2m 木立ち性 ブラッシング・アイスバーグBlushing Iceberg ‘アイスバーグ’の花色が異なる枝変わり種。白地に淡いピンクが絣状に入るハンド・ペイント・タイプの色彩で、季節によってピンクの濃淡が変化、秋はくっきりと絣模様が現れます。 丸弁平咲きで、軽いティーの香りがあります。花もち・花付きがよく、春~秋まで花数が変化しません。 四季咲き F 花径/約7cm作出年/2012年 作出国/日本樹高約1.2m 木立ち性 ニュー・ウェーヴNew Wave 薄紫色からライラック色の波状弁の平咲きで、優雅に波打つ花弁が魅力的です。初夏から秋まで花付きがよく、強いブルー・ローズの香りがあります。やや細い枝をたわませながら花が咲きます。 四季咲き HT 花径/約10cm作出年/2000年 作出国/日本樹高約1.2m 半直立性 カーディナルKardinal やや桃色を含む鮮明な緋赤色の剣弁高芯咲き。早咲きで、開花サイクルが短く、初夏から秋まで花付きがとてもよい品種です。切り花品種として一世を風靡した品種ですが、ガーデン・ローズとしてもとても優秀です。株はコンパクトで、花壇や鉢植えに最適です。 四季咲き HT 花径/約10cm作出年/1985年 作出国/ドイツ樹高約1m 半直立性 スカボロー・フェアScarborough Fair 淡いピンクの中小輪の浅いカップ咲きで、秋はカップの深みが増し、コロコロとした印象になります。花付きがとてもよく、成株では常に花がどこかで咲いています。中程度のティーの香りがあります。完全な四季咲き性で、枝は細くてよく分枝し、しなやかで、こんもりとしたコンパクトな株に生育します。花壇や鉢植えに最適な品種で、耐病性にも優れます。 四季咲き S 花径/約6cm作出年/2003年 作出国/イギリス樹高約1m 木立ち性 ボレロBolero 淡ピンクを帯びた白のカップ咲きからロゼット咲きです。秋はより一層花弁にピンクの色が乗ります。花付きがよく、初夏以降も繰り返し咲きます。花もちも比較的よく、フルーティーな強い香りがあります。株はコンパクトで、花壇や鉢植えに最適な品種です。耐病性に優れています。 四季咲き F 花径/約7cm作出年/2004年 作出国/フランス樹高約1m 木立ち性 春よりも秋に魅力的な花を咲かせる品種 7種 禅Zen 茶色で外弁に紫色のボカシが入る花は、秋は茶色一色に近くなります。早咲きで、開花サイクルが短い品種です。花付きがよく、花もちも比較的よいほうです。香りは中程度のティー系。株はコンパクトにまとまりよく生育し、花壇や鉢植えに適しています。 四季咲き F 花径/約8cm作出年/2005年 作出国/日本樹高約1m 半直立性 アイズ・フォー・ユーEyes for You ライラック色の花弁に赤桃色のブロッチが入ります。秋のような気温が低い時期はブロッチが濃く大きく入り、ベースの花色も濃くなります。花付きがよく、スパイス系の中程度から強めの香りがあります。株はコンパクトにまとまりよく生育し、花壇や鉢植えに最適です。耐病性にも優れています。 四季咲き F 花径/約7cm作出年/2009年 作出国/イギリス樹高約0.8m 半横張り性 ベルベティ・トワイライトVelvety Twilight 波状弁の花は、春はロゼット咲きですが、秋はカップ咲きになります。濃赤紫の花色は気温が低い時ほど黒味が増します。中大輪の花で、花付きは中程度。花には、ダマスク系の強い香りがあります。株はコンパクトでまとまりよく生育します。 四季咲き F 花径/7〜8cm作出年/2010年 作出国/日本樹高約1m 半直立性 クー・ドゥ・クールCoup de Coeur 紫がかったニュアンスのある淡桃色の花弁に、赤紫のブロッチが入り、秋は花色が濃くなります。早咲きで、開花サイクルが短く、花付きがとてもよい品種です。株はコンパクトで、まとまりよく生育し、花壇や鉢に最適です。美しいうえに耐病性がとても強いです。 四季咲き F 花径/約7cm作出年/2020年 作出国/日本樹高約1m 木立ち性 アール・ヌーヴォーArt Nouveau 赤い花弁に黄色の筋が入る個性的な色彩は、スティブル・ストライプと呼ばれています。中小輪の花で、高温期は小さいものの秋の花は見応えのあるサイズになります。花付きがよく、比較的コンパクトな株になります。 四季咲き F 花径/約5cm作出年/2009年 作出国/イギリス樹高約1m 半直立性 アルチーナAlcina 花色は深みのある黒赤色で、秋はより一層濃くなります。弁先が尖った半剣弁咲きで、独特な花形です。花付きがよく、ダマスク系の強い香りがあります。枝が細くしなやかで、うつむきかげんに咲き、ティー・ローズの印象です。 四季咲き HT 花径/約8cm作出年/2019年 作出国/日本樹高約1m 木立ち性 アルパイン・サンセットAlpine Sunset ボリュームのある大輪花で、アプリコットやピンク、黄色が複雑に混ざり合う魅力的な花色です。春は波状弁の平咲きですが、秋は抱えるような印象になり、ふっくらとした花形になります。強いフルーティーな香りがあります。半直立性のコンパクトな株で、夏の暑さに弱く、やや育てにくい品種です。 四季咲き HT 花径/約14cm作出年/1973年 作出国/イギリス樹高約1m 木立ち性 多彩な秋バラが咲き競う「横浜イングリッシュガーデン」 秋バラの魅力を教えてくださったバラの専門家、河合伸志さんがスーパーバイザーを務める神奈川県横浜市の「横浜イングリッシュガーデン」には、約2,200品種 2,800株のバラがコレクションされ、毎年、秋バラが美しく咲くと人気のお出かけスポットです。 「横浜イングリッシュガーデン」の秋のガーデンの様子(2022年10月)。 早咲き種は、10月中旬から咲き始め、次々と花開くバラやコスモス、グラス類、コリウスのカラーリーフが秋の景色を彩っています。現在、美しく咲く秋バラの品種についてインスタグラムなどのSNSにて品種解説を添えた投稿も実施中。これらの花の品種解説も併せてチェックしながら、本物の秋バラが咲くガーデンへ出かけてみませんか? 「横浜イングリッシュガーデン」に咲く秋バラとコスモス。写真/桜野良充
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育て方
四季咲きバラの夏剪定のタイミング到来! 【樹高が高くなる】四季咲きバラ編
四季咲き性のバラの夏剪定とは バラ(薔薇)の夏剪定とは、文字通り晩夏に行う剪定のこと。四季咲き性のバラは秋にも開花しますが、順調に生育した株は、品種によっては夏の終わりには樹高が高くなりすぎたり、株姿が乱れたりしている場合があり、8月下旬~9月上旬頃に夏剪定を行うことで、より美しい咲き姿に整えたり、開花を調整することができます。夏の剪定は日本だけで行われているもので、バラの生育期間が短い欧米では、さほど株が大きくなりすぎることもないので、この作業を行うことはありません。 四季咲き性のバラの夏剪定の目的は主に以下の3つです。 樹高が高すぎる株や株姿が乱れたものなどを、コンパクトにまとまりよく仕立て直すこと 晩夏になると、1株内で、花が咲き終わった枝や伸び始めた新芽など、枝ごとの生育ステージが異なります。これらを一度リセットし、株内での開花を揃えること バラ園などでは、秋のバラ祭りなどに合わせて、花の咲く時期をコントロールして、早咲きも遅咲きも一緒に咲かせること(バラ祭りを開催しない一般家庭には当てはまりにくい) ここで押さえておきたいポイントが、四季咲きのバラは夏剪定をしなくても秋バラを咲かせるということ。株姿を整えたり、咲く時期を揃えたりということを気にしなければ、夏剪定は、決して必須の作業ではありません。個人でバラを栽培している場合は特に、花が一斉に咲くよりも、時期をずらして少しずつ咲いてくれたほうがよい時もあります。 また、剪定は株にハサミを入れ、葉の数を減らしてしまうので、どうしてもバラに負担がかかります。切りすぎるくらいなら、剪定をしないほうがバラにとってはずっとプラス。特に、病害虫などの被害に遭って、葉の数を減らしているような調子の悪い株の場合は、夏剪定は大きなダメージになりかねません。自分の育てている品種や、株の状況、咲かせたい理想像に合わせて、夏剪定を行うかを決めましょう。 夏剪定によって花期をある程度コントロールできるのは、気温によって開花時期が決まる完全な四季咲き性のブッシュ・ローズ(木立性バラ)です。シュラブ・ローズ(半つる性のバラ)にも四季咲きとされているものがありますが、気温以外の日長などの要因にも左右されやすく、開花時期を思うようにコントロールするのは難しいといえます。また一部のシュラブ・ローズは、そもそも秋に咲かないものもあるので、秋バラを咲かせる目的での夏剪定は必要ありません。 今回は、樹高が高くなる、高性種で四季咲きのブッシュ・ローズを剪定する方法を解説します。 コンパクトに生育する四季咲きのブッシュ・ローズの剪定方法は、『 四季咲きバラの夏剪定を解説 コンパクトに生育するバラ編』で解説します。 樹高が高くなるブッシュ・ローズ(木立ち性バラ)の夏剪定 背が高くなる高性品種のバラの場合、夏剪定の主な目的は2つ。夏の間に伸びた枝を切って生育をコンパクトに抑え、花を観賞しやすい位置で咲かせるためと、株内での開花を揃えるためです。 ここでは ‘パパ・メイアン’を例に、背が高くなるバラの夏剪定の方法を解説します。 夏剪定前のワンポイント! 夏剪定をする際には、剪定の7~10日前に、追肥として速効性の肥料を施しておきましょう。肥料が不足していると、剪定をした後に順調に新芽が吹かず、結果として花が咲かないこともあります。肥料は袋に表示されている既定の量を与えます。ここでは、住友化学園芸の「マイローズばらの肥料」を使用しました。 バラの夏剪定の方法 まず、剪定するバラの枝を確認し、剪定する位置を確認します。順調に生育したバラの場合、一番花、二番花、三番花…と、繰り返し花を咲かせていて、晩夏には概ね三番花(3段目)が咲き終わった状態から4段目の芽が伸び始めた状態になっています。 樹高が高いバラの切る位置は、2段目、つまり二番花をつけた枝の真ん中から上部を基本とします。しかし、バラの生育状況に応じて剪定位置を調整する必要があり、黒星病などの病害で下葉が少ないようであれば、葉を多く残すために2段目より上方で切るようにします。樹高が高いバラは、より強く枝を切ることで高さを低くできるため、ついつい切り過ぎてしまいがちですが、そうすることによって葉の枚数が減ると、株は光合成の能力が落ちるため、結果として剪定後に芽吹かなかったり花が咲かなくなってしまうことがあります。剪定可能な下限は、2段目の真ん中だと考えてください。なお、高い場所から見下ろしてバラを観賞したいなど特殊な事例の場合は、3~4段目で切った方が株へのダメージが少なく、その後の花も多く楽しむことができます。 樹高が高くなりやすいバラ、品種例 ここで剪定を行った‘パパ・メイアン’のほかにも、よく枝が伸長し、樹高が高くなりやすいブッシュ・ローズがあります。以下に背が高くなりやすい品種の例を紹介します。 ‘スイート・アフトン’ 淡い桃色の丸弁高芯咲き品種。フルーティーな香りがあり、花つきがよい。極めて背が高い品種の一つで、夏剪定をしても秋には樹高2m近くにまで生育する。 ‘アストリット・グレーフィン・フォン・ハルデンベルグ’ 深い赤紫色の花はロゼット咲きで、ボリュームのある花姿。ダマスク系の強い香りがある。ややシュラブの性質を持ち合わせているのか、秋には樹高が2m近くにまでなる。 ‘ザ・マッカートニー・ローズ’ 歌手のポール・マッカートニー氏に捧げられたバラで、ローズピンクの花弁が半剣弁平咲きになり、花つきがよい。黒星病に強く、初心者でも育てやすい品種だが、株は大ぶりで強い横張りのため、夏剪定で株姿を整えるとよい。 ‘クリスチャン・ディオール’ 老舗ブランドの名を冠したバラで、かつての赤バラの代表品種。長く伸びた花茎の先に、明るい赤色の花を咲かせる。花弁数が多く、ボリュームのある花姿の剣弁高芯咲き。夏剪定で強く切り過ぎると、力を失いよい花が咲かないことがある。 ‘クイーン・エリザベス’ 丸弁のピンク色の中輪花を多数咲かせる。殿堂入りをした銘花で、性質は強健で、悪条件にも耐えて生き残る。初心者でも育てやすく、各所で手入れをあまりされていない状態でも生き残っている。 ‘ブルー・ムーン’ 美しいラベンダー色で、強いブルー・ローズの香りがある。枝はトゲが少なく高く伸びる。もともと芽吹きが悪い性質があり、さらに黒星病で葉を落としやすいので、夏剪定をする場合は葉数を維持するように、慎重に作業をしたほうがよい。 高性種のバラを栽培している場合、必要に応じて夏剪定を行うことで、樹高を抑えて株姿を整え、背が高くなりすぎるのを防ぐことができます。株の状態に合わせて夏剪定を取り入れましょう。