うえの・さゆき/北海道旭川にある「上野ファーム」のガーデナー。大学卒業後、アパレル会社に勤務し、園芸を学ぶため退社して渡英。2001年から実家である「上野ファーム」で庭づくりを始め、旭川ではいち早くオープンガーデンをスタート。2008年に放送されたTVドラマの舞台となった富良野の「風のガーデン」や「大雪 森のガーデン」の植栽デザインのほか、全国で講演会・トークショーなども行う。二男の母。
上野砂由紀 -ガーデナー-
うえの・さゆき/北海道旭川にある「上野ファーム」のガーデナー。大学卒業後、アパレル会社に勤務し、園芸を学ぶため退社して渡英。2001年から実家である「上野ファーム」で庭づくりを始め、旭川ではいち早くオープンガーデンをスタート。2008年に放送されたTVドラマの舞台となった富良野の「風のガーデン」や「大雪 森のガーデン」の植栽デザインのほか、全国で講演会・トークショーなども行う。二男の母。
上野砂由紀 -ガーデナー-の記事
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おすすめ植物(その他)
【上野砂由紀さんが選ぶ】マストバイ宿根草‘神8’かわいい!新鮮!コスパ優秀!
花束のように咲き誇る「クランべ・マリティマ」 クランべ・マリティマ(Crambe maritima)/宿根草/ 草丈40~50cm/開花:春 真っ白な小花が集まって、まるでブーケのように咲きます。花が咲く前からマットなグリーンの葉が美しく、乾燥にもとても強い植物です。水はけのよい乾燥気味の環境を好むため、ロックガーデンなどにも向いています。 クランべ・マリティマは、同じく乾燥を好むアリウムとの相性もばっちり。 美しい大きな葉も特徴的なので、広がることも想定して、ほかの植物との隙間をあけて植栽することをおすすめします。花後のタネは、直径5mmほど。タネが枯れ色になる前の緑色の間に切って乾かすと、とても可愛いドライフラワーになります。 無数の粒が房状になって、何とも可愛い! クランべ・マリティマの種子。 花後のまん丸なタネ姿もとても魅力的。ドライにすると白っぽくなり、フラワーアレンジなどの装飾としても使えてお得な宿根草です。 新鮮な風景が簡単に作れる「アリウム・ニグルム」 アリウム・ニグルム(Allium Nigrum)/宿根草/ 草丈40~50cm/開花:初夏 ホワイトにうっすらとグリーンが混じるエレガントな白いアリウムです。まん丸になるアリウムとは違い、ドーム形で控えめな印象。どんな花とも組み合わせやすく、秋に球根を既存の宿根草の隙間に植え付けるだけで、新鮮な風景を簡単に作ることができます。紫色のアリウムに少し飽きてきた方におすすめの品種です。 サルビア・カラドンナ、ルピナス、ヘスペリスなどの直線的な植物と組み合わせることで、アリウム・ニグルムのドーム形の花の存在感が際立ちます。 大人カラー&コンパクトで組み合わせやすい「モナルダ ‘ビートゥルー’」 モナルダ ‘ビートゥルー’(Monarda 'Bee-True')/宿根草/ 草丈30~40cm/開花:初夏 落ち着いた赤紫の花と黒い茎が、庭の雰囲気を大人っぽくまとめてくれます。通常のタイプよりもコンパクトなので、背の高いモナルダが苦手な方にもおすすめです。このモナルダ ‘ビートゥルー’なら、手前のほうに配置しても奥が隠れず、これまで組み合わせが難しかった植物とのコラボが楽しめちゃいます。 明るい色のエキナセアとアリウムの引き締めカラーとしても効果的。 色変(いろへん)が楽しめる! 新品種「エキナセア‘プリティー・パラソル’」 エキナセア‘プリティー・パラソル’(Echinacea purpurea 'Pretty Parasols')/宿根草/ 草丈70~90cm/開花:夏 まるで傘のように花びらが下がって咲く、新品種のエキナセアです。見た目はシンプルですが、咲き始めは花びらが白く、咲き進むにつれてピンクのグラデーションが入ります。さらに日が経つと、どんどん花色が変化していきます。 花色が変わることで、1株でも2種類の花を楽しんでいるような、お得な気分になれるのも魅力。一重咲きなので、自然風な植栽にも合わせやすいです。 最近人気の味変ならぬ色変(色が変化する)が楽しめる新しい品種です。 巨大輪の青花が夏を涼しく彩る「ストケシア‘メガ・メルズ’」 ストケシア‘メガ・メルズ’(Stokesia laevis ' Mega Mels ')/宿根草/ 草丈40~60cm/開花:夏 透き通るような青紫の花色が夏の庭を涼しげに彩ります。なによりもびっくりするのは直径10cmを超える巨大輪。花が大きいので、どこに植えても目立つ存在に。数株まとめて植えると、コーナーが華やぎます。 ストケシア‘メガ・メルズ’は、花後すぐに切り戻すことで二番花も楽しめます。左奥に咲くのは、前出のモナルダ ‘ビートゥルー’。中央奥のピンク花は、コンパクトタイプのエキナセア。ストケシア‘メガ・メルズ’の花が大きいので、エキナセアと合わせても引けをとりません。 純白の雨粒が降りそそぐように開花「タリクトラム‘スプレンダイド・ホワイト’」 タリクトラム‘スプレンダイド・ホワイト’(Thalictrum 'Splendide White')/宿根草/ 草丈約150cm/開花:夏 上野ファームでも、咲き始めると「あの花は何ですか!」と人々が驚き、毎年大人気となる大型のカラマツソウです。さまざまな品種がある中でも、この品種はとても花つきがよく、真っ白な雨粒のような花が庭に降りそそぐように咲き、ロマンチックな風景になります。 ホワイトガーデンで白いユリと合わせて。茎が細く折れやすいので、添え木などで支えてあげると雨風に負けずに育てることができます。 ほかの花にはない特徴をもって咲くため、開花が始まり存在感が増すと、何度も名前を聞かれます。花後すぐに、草丈の半分ほどを切り戻すと、また花を楽しむことができるのも嬉しい性質です。 同じ種類で、藤色の花が咲くタリクトラム‘スプレンダイド’(Thalictrum 'Splendide')も、ホワイト同様に人気があります。 美しい藤色のカスミソウのように咲くタリクトラム‘スプレンダイド’。 過酷な夏も花盛り「アリウム‘メデゥーサズ・ヘア’」 アリウム‘メデゥーサズ・ヘア’(Allium 'Medusa's Hair')/宿根草/ 草丈40〜65cm/開花:晩夏〜初秋 最近よく見かけるようになった非球根性のアリウムで、過酷な暑さと乾燥が続く夏のガーデンの救世主です。乾燥にも非常に強く、真夏に咲く紫系の花が少ないなか、このアリウムの登場で真夏の植栽デザインの幅が大きく広がりました。 現在は同じ性質を継ぐ多くの品種が出てきていますが、アリウム‘メデゥーサズ・ヘア’は、その中でも遅咲きで、晩夏から初秋まで咲き続けます。開花前から美しいマットグリーンの葉は、名前の通りメデューサの髪のようにうねり、オーナメンタルグラスと合わせても自然風な雰囲気になります。 アリウム‘メデゥーサズ・ヘア’と咲き競う黄色の花は、ルドベキア‘リトルスージー’。引き立て合って、よいコンビネーション。 庭シーズンのフィナーレを白花で盛り上げる「クジャクアスターホワイト」 クジャクアスターホワイト 別名:シロクジャク(Symphyotrichum pilosum Hyb.)/宿根草/ 草丈80〜120cm/開花:秋 昔からある馴染み深い品種なのですが、ナチュラリスティックな庭が増えてきた今、この野生的な咲き方はとても魅力的。ぜひ再注目してほしい品種としてセレクトしました。現在はアスター属ではなく、「シンフィオトリクム」として扱われていますが、純白の小花が1株でも見事なボリュームで咲きます。 開花が遅いので、フィナーレを迎える秋の庭を再度盛り上げてくれる貴重な存在です。素朴な花はどんな植物とも合わせやすく、オーナメンタルグラスと混植しても美しいです。 カラマグロスティス・ブラキトリカの穂から透かして見る、白花がなんとも美しい。この季節だからこそのコラボレーションを、ぜひあなたの庭でも再現してください。
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ストーリー
「花のまち」としてブランド力を上げる北海道恵庭市で開催中「ガーデンフェスタ北海道2022」
第39回全国都市緑化フェア「ガーデンフェスタ北海道2022」開催中 緑の大切さを認識し、緑がもたらす豊かな暮らしのある街づくりをすすめるための普及啓発事業として建設省(現・国土交通省)が提唱し、1983年(昭和58年)から全国各地で場所を変えて行われている花と緑の祭典、全国都市緑化フェア。今年は、北海道恵庭市が舞台となり、6月25日(土)から7月24日(日)まで開催されます。 フェア開催地の北海道恵庭市は、新千歳空港からJRで13分とアクセスがよく、都市機能と田園環境が共存する住みやすい街として住民に愛されています。また、個人の庭を一般に公開するオープンガーデンが盛んで「ガーデニングのまち」としても全国に知られています。ガーデニングに親しみが深い恵庭市で開催されることから、「ガーデンフェスタ北海道2022」は、メイン会場の「はなふる」と、その近隣地域「恵み野」もまちなか会場に。見学場所が幅広く用意されている花と緑の一大イベントです。 メイン会場は、フェアに先駆けてオープンした花の拠点「はなふる」です。ここは、もともと国道沿いで車でのアクセスもよく、年間の来訪者が約100万人を超える人気の施設「道と川の駅 花ロードえにわ」がありました。しかし、旅行者がもっと気軽に花と触れ合うことができる公共的な場所に変えようと整備が行われ、敷地を大幅に拡大して、2020年11月に新しい花のスポットが誕生したのです。 「はなふる」誕生までの整備監修は、「大雪森のガーデン」や「十勝千年の森」を手がけた実績のある高野ランドスケーププランニングの村田周一さんが担当。「訪れた人々には、四季折々の花や樹木の美しさを観賞するだけでなく、遊びながら自然の豊かさや変化を全身で感じてもらいたい」という願いが込められ、完成後も適切な管理がされて美しさを保つ、未来のガーデンを目指しています。 未来に残る庭を目指す7つのテーマガーデン 約9.4haの広大な土地に誕生した花の拠点「はなふる」には、「道と川の駅 花ロードえにわ」などの施設やホテルに加え、異なったコンセプトをもつ7つのガーデンが誕生しました。デザインしたのは、北海道で今活躍する12人のガーデナー。訪れた人が誰でも自由にプロの庭に触れることができる贅沢な試みです。それぞれのガーデンに込められたメッセージをご紹介します。 グラベルガーデン ガーデンデザイン:上野砂由紀(上野ファーム) テーマ:発見の庭 グラベルとは砂利のことで、ピートモスをブレンドした砂利を使い、ローメンテナンスながらも美しく健やかに植物が咲き継ぐ可能性を探る庭です。土を使わないことで、雑草が繁茂するのを抑制できるというメリットがあります。また、砂利をブレンドした土壌環境で育つのは乾燥に強い植物で、雨が少なくても育つというのも特徴です。土壌環境や地域の気候に合わせて選ぶため植物は限られますが、条件をクリアするために試行錯誤を重ねれば庭は維持できることを伝えています。 上野さんが長年庭を作り続けている旭川でも、去年の夏は雨が降らず、例年通りにはいかないという経験もありました。こういった近年の想像を超える気候変動に合わせて、いろいろなことを考えながら植物を育てていかなくてはならないと上野さん。 環境に合わせた植物を正しく選ぶことで、どんな場所でも花を楽しみ、庭づくりができるという可能性を発見するガーデンです。こぼれ種から育つものも大切にしながら、植物自身の力で変化していく庭の様子も季節の巡りの中で感じることでしょう。庭づくりをする人にとって、この庭が新しい発見の場になることを願っています。 大きなカステラが焼けるお庭 ガーデンデザイン:柏倉一統(キノ花園計画) 佐藤未季(未季庭園設計事務所) テーマ:楽しいピクニックとゆっくり本が読める庭 このガーデンは、ダイニングテーブルやライブラリー、小さな芝生の広場、小さな果樹園、木立と草原というエリアに分かれています。シートを広げてピクニックを楽しんだり、寝そべって本を読んだり、大切な人たちとパーティーをしたり、ゆったりと一人の時間を楽しんだり、ヨガをしたり、楽器を演奏したり、駆けっこしたり、ベリーの収穫を楽しんだり。ガーデンで過ごすスタイルは、じつにさまざま。思い思いに過ごしてほしいという想いを込めて設計・デザインされました。 ダイニングテーブルの周りには、差し込む光を意識した、家でも取り入れやすい身近なサイズの細やかな植栽を。並木の花壇の植栽は、わくわくして駆け出したくなるようなガーデンになっています。 この庭をデザインした2人の根幹にあるのは、「ヘルス&ハピネス、人々の健康と幸せの空間」。みんなの笑い声や歌が響き合う、新しい人とのつながりや新しい発見が生まれる気持ちのよい場所であるようにと願う庭です。 えこりん村 キッチンガーデン ガーデンデザイン:前野貴子・後藤司(アレフ 銀河庭園チーム) テーマ:おいしさが実る庭 野菜、果樹、ハーブを観て楽しめるようにとデザインされたキッチンガーデンです。色鮮やかで珍しい野菜や、可愛らしくて美味しい実をつける果樹、古来より薬用や染料として利用されてきたハーブなど、数々の植物が植えられています。見た目の美しさや心地よさだけではなく、野菜が成長していく過程や発見など「見る・知る・楽しい」がたくさん詰まった庭です。 ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」を全国に展開するアレフが恵庭市で公開している、エコロジーをテーマにしたえこりん村で。食べられる野菜や果樹が育つ庭だからこそ、何よりも「安全・安心」にこだわり、農薬を一切使わない栽培管理スタイルを、この庭でも徹底して実践。 土づくりもSDGsに配慮。レストランから出る生ゴミと、えこりん村で飼育する動物たちのフンや敷き藁、それらを原料にして製造された「オリジナルの完熟堆肥」を使用。環境もエコもテーマにしたキッチンガーデンを提案しています。 プレイグラウンド ガーデンデザイン:新谷みどり・笹川慎太郎(十勝千年の森) テーマ:自然の中の日常を楽しむ 「私たちの日常は植物と共にある」。このプレイグラウンドは、そんな誰かの大切な一日のための場所であることを心にとめ、デザインされています。 地形や水辺、植生のもとある自然を生かしつつ、所々に石を配置。新たな植生が育まれることで、遊びたくなる空間を目指しています。 白樺の芽吹きと緑陰を愛でて歩くウッドランドと、緩やかに起伏する地形に駆け上って日向ぼっこをしたくなるグラスランド。敷地に接する河川、漁川(いざりがわ)へと蛇行する小川に誘われて、小さな池のほとりで飛び石を行くストリーム。 それぞれのエリアをつなぐのは、そこかしこに息づく植物たちと人の時間です。春のスミレとスモモの花、夏のノハナショウブやアヤメ、秋のサラサドウダンの紅葉、そして冬の白樺と雪……というようにこの場所の風景は日々変化します。季節の移ろいを感じながら、この場所でそれぞれの時間を楽しく遊んでほしいと願われた自然体の庭です。 虹色の鳥 ガーデンデザイン:土谷美紀(サンガーデン) テーマ:花と風の丘 「はなふる」の敷地北側にある小高い丘の麓付近で、とても日当たりのよい場所に虹色の鳥があります。恵庭市で多くの苗を生産するナーセリー「サンガーデン」の土谷さんが提案するのは、花数を多く取り入れた“にぎやかな花壇”。空の上から花畑を見下ろすハチドリが、楽しそうにホバリングしているような形もこの庭の特徴です。花のまち恵庭を作ってきた先人が空から見守っているようで、今もそれを繋げている人々や未来の恵庭に、いつも虹色の花が咲いていますようにという感謝を込めて。 春から秋まで長く色を楽しめるようにと、一年草・宿根草・球根・グラスが色ごとに組み合わされています。西日に輝く、黄・橙・桃・茜・紫・碧……。四季折々に変化する植物がじっくり楽しめる花壇です。 ミチノモリ ガーデンデザイン:北村真弓・高林初・田辺沙知(イコロの森) テーマ:四季の移ろいを楽しむ森のさんぽ道 季節によってさまざまな表情を魅せる森をテーマにしたエリアです。雪に覆われる北海道の長い冬までも楽しむことを意識して、カラーステムを多く取り入れています。木々が葉を落とし、モノクロの景色に変わる季節には、幹や枝が赤や黄色、緑のカラフルなグラデーションを見せます。しんとした雪景色の中でその魅力が発揮されて、訪れる人に新しい発見を届けられたらとデザインされました。 長い冬をたくましく生き抜いた先には、春の訪れを告げるスノードロップなどの小さな花が日差しを目いっぱい浴びて林床を飾ります。夏には樹木の枝葉が作る緑陰と、きらきらと風にそよぐグラスの穂、秋には紅葉や黄葉、草紅葉が秋色に燃え上がり、四季折々の表情を魅せます。日々の忙しい生活から離れ、森の息づかいや植物の力強さを感じてもらいたい…10年後、20年後と、皆さんと一緒に成長していく森の庭がつくられました。 暮らしを育む庭 ガーデンデザイン:恵庭市フラワーマスター協議会 テーマ:みんなのいこいの花畑 「住まいと暮らし」に密着した庭の楽しみ方を、恵庭に暮らす市民の知識と経験により提案するガーデンです。これまで恵庭市民に親しまれ、たくさんの人をつないできた「いこいの花畑」。そこから移植された多くの植物が、引き続き開花しています。訪れた人が「うちの庭でもやってみたい」と思えるポイントをコンパクトに詰め込んだ、庭づくりのきっかけや植え方のヒントが見つかるガーデンです。 ガーデナーが庭を通じて今伝えたい、それぞれ異なるテーマが反映された7つの最新の庭を巡ると、じつにさまざまな表現方法があると気付かされます。 イベント終了後も花の拠点として生きる公園 これまで全国緑化フェア開催のために作られた庭は、多くがフェア期間に限定されたものでした。しかし近年は、フェア後も維持管理され、観光ガーデンや公共庭園として地元に愛される憩いの場所となるケースが増えています。 この花の拠点「はなふる」も、一部の花壇やコンテストガーデン以外は、「ガーデンフェスタ北海道2022」期間終了後も残り、地元の人々が花に触れられる場所として、この先も育まれていきます。 庭は形になったら終わりではなく、維持管理が無理なく続けられることも大切なポイントです。花の拠点「はなふる」は、デザイン設計の段階で、将来の管理の労力を軽減することを意識してつくられました。日頃、庭に親しむ質の高いボランティアが地元にいることや、「はなふる」全体の植物管理をするヘッドガーデナーが早い段階から決まっていたこと、地域の植物を熟知するプロの存在なども、美しいガーデンが維持されている理由です。 また、7つのガーデンには公共の庭ではあまり使われない植物も多く取り入れられています。それは、維持管理を委ねても大丈夫という安心感があったから。「植物のメンテナンスの仕組みがあると知っていたからこそ、新しいテーマの庭づくりにチャレンジできた」とデザインを担当した上野砂由紀さんは話します。 一人の市民から始まった恵庭市の「花のまちづくり」 「子供たちが誇れるようなふるさとを残したい」との思いで、1990年に「恵み野花づくり愛好会」を設立したのは、「花のまちづくり」の仕掛け人、恵庭市在住の内倉真裕美さんです。その始まりは、毎年フラワーガーデニングコンテストを開催したことから。個人の庭が徐々に素敵になってくると、次は個人からまち並みへと範囲が拡大して本格的に「花のまちづくり」がスタート。そうして30年かけて恵庭市は現在のような「ガーデニングのまち」になりました。 今回のフェアで内倉さんは、まちなか案内のほか、コンテナガーデンのコンテストや出展庭園にも参加。SDGsをテーマにした「みんなのお庭」は、恵庭市長賞の金賞を受賞しました。また、「はなふる」敷地内にある7つの庭の一つ「暮らしを育む庭」では、市民参加の講習会の講師も務めるなど、両会場をつなぐキーパーソンでもあります。 今では全国各地で行われているオープンガーデンですが、じつは現在「ガーデンフェスタ北海道2022」が行われている恵庭市が発祥の地。1996年に公開庭園の場所を示した「花マップ」を作り、個人の庭を公開したのが、日本におけるオープンガーデンの始まりでした。いち早く花と緑に取り組み、積極的に推進している地域なのです。 メイン会場の近隣地域では、公道が花で飾られていたり、点在する庭愛好家によるオープンガーデンが開催されたりと、市民参加の花のおもてなしも「ガーデンフェスタ北海道2022」の見どころです。フェア期間中は、地域住民の有志35人がシフトを組み、「恵み野まちなか案内」として旅行者をガイド。オープンガーデンやまちなかの花の見どころを紹介しながらメイン会場まで連れて行ってくれます。「恵み野まちなか案内」さんたちは、JR恵み野駅で花マップを配布したり、除草作業なども行い、市民一丸となっておもてなしに取り組んでいます。 「恵み野花マップ&恵庭遊マップ2022」PDFダウンロード これまでオープンガーデンを訪問する機会がなかった不慣れな旅行者でも、安心して地元の愛好家の方と交流ができるうえ、新しい庭デザインの提案を幅広く見学できる第39回全国都市緑化北海道フェア「ガーデンフェスタ北海道2022」。2023年は宮城県仙台市、2024年は神奈川県川崎市での開催が予定されています。地域ごとに特色のある花と緑の祭典、お見逃しなく。 Information 第39回全国都市緑化北海道フェア「ガーデンフェスタ北海道2022」 提唱/国土交通省 主催/北海道、恵庭市、公益財団法人都市緑化機構 開催期間:2022年6月25日(土)〜7月24日(日) メイン会場:入場無料 北海道恵庭市南島松828-3 花の拠点 https://garden-festa2022.jp
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ガーデン&ショップ
上野ファームの庭便り「新しいシーズンに向けて振り返る2020年人気のシーン」
北海道の大地に咲く草花の美 上野ファームでは、毎年いろいろな植栽デザインや新しい植物に挑戦しています。 コロナ禍で、ガーデンを見ていただくことがとても難しかった2020年でしたが、ガーデンの花たちは、変わらずに成長を続け、いつも以上の美しさと感動を与えてくれました。ガーデンで人気のあったシーンやSNSなどで支持の多かった美しい瞬間を、注目植物とともにご紹介します。 <春> カナダケシ、球根花 まだ新緑も広がらない早春の季節から咲き始める純白の八重咲きカナダケシ(サンギナリア)は、年々花数が増えて、早春の庭では特に目立つ存在になってきました。 まるでコートにくるまっているかのような咲き始めの姿も、お客様から大人気でした。 白樺の林の中で咲くチューリップも色数を増やして、2020年の春はとてもポップな場所となりました。残念ながらコロナ禍での休業要請の時期と重なり、見てくださる方はほとんどいませんでしたが、この風景のおかげで、私自身の気持ちはとても明るくなりました。 2021年は昨年とは少し色の比率を変え、新しい品種も秋にたくさん植えたので、春が待ち遠しいです。 チューリップが終わると寂しくなるミラーボーダーに、遅咲きのチューリップと同じころに咲き出すアリウム‘パープルセンセーション’を入れると、とてもいい雰囲気になりました。SNSでも大人気のシーンです。 開花期を細かく分析して重ねていく手法を取るデザインは、植物の成長と季節を待たなくてはならず、すぐには結果が出ないのですが、その分、素敵な風景が出現した時の嬉しさは格別です。アリウム‘パープルセンセーション’は、発色がよくて早咲きなので、インパクトのある風景を作れます。 2020年6月上旬の景色です。毎年、ノームの庭に少しずつ増やしていたアリウムですが、この年ようやく思い通りのボリュームを出すことに成功! 手前の黄金葉の植物は、西洋ニワトコ。 <初夏> エレムルス、シレネ、西洋オダマキ アリウムの開花が終わると、迫力をだすのが、エレムルス、特にこの白(品種不明)は、この場所がとても気に入っているようで、他のエレムルスよりも生育がよく、大迫力。植えてから3年が経ち、年々穂数が増えて、庭でも主役級となり、ちょっと自慢です。 エレムルスの白は、他の色よりも根塊が大きく、草丈も上野ファームでは150cmを超えるほどになります。 さまざまな植物と混ざり合うような植栽も、2020年はたくさん増やしました。黄金葉に鮮やかなピンクの花が、庭でとても目立っていたシレネは、紫花のサルビアとの相性も素晴らしく、これからもいろんな場所で使ってみたいと思っています。 ちょっとパンチが欲しいときや変化が欲しいときに、シレネを一株入れると面白くなります。 ここ数年、いろいろと集めているのが、西洋オダマキ(アキレギア)です。昔からある植物ですが、改めて咲かせてみると、じつはファンが多いことが分かりました。 シンプルな品種でも、まとめて咲かせたり、または混植させることで、今までのイメージとは違う雰囲気を出すことができます。 咲くと必ず何の花? と聞かれるのは、アキレギアの「ウィンキーシリーズ」‘ダブルブルーホワイト’。よく見ると芸術的な花びらですね。 開花期が長くてシンプルな美しさがあるアキレギア‘クリスタル’も、お気に入りの品種です。 植栽の中に、ちらりと西洋オダマキを入れることで、初夏の庭がより一層華やかになるので、ピンポイントでよく使います。旭川では6月上旬に咲く宿根草はまだ少ないので、ジギタリスなどと合わせて、西洋オダマキはこの時期、とても重宝します。 一年草のミックスフラワーにも挑戦 2020年は、畑の一角にラインを描くように一年草のばら播きにも挑戦しました。宿根草が多い上野ファームですが、一年草の風景も新鮮でした。 カルフォルニアポピー、コーンフラワー、ムシトリナデシコなどなど、定番の一年草ですが、ミックスフラワーの魅力は種子のブレンドによって変化が出せること。ただいま研究中です。 <盛夏> アリウム、ホリホック、タリクトラム 最近話題の真夏に咲くアリウムも数年前から挑戦していますが、猛暑が厳しかった2020年も元気に咲いていました。3年目の株は驚くほど増えて、耐寒性と耐暑性を併せ持つ優秀な夏植物ということを実感。球根というよりも、大きめの花が咲くチャイブのような感じで、根でよく増えます。 上写真左は、アリウム‘サマービューティー’。真夏でも表情は涼し気です。 右は、アリウム‘ミレニアム’。同じく乾燥が好きなセダムとも合わせやすく、草丈30~40cmなので、ガーデンでも扱いやすい花です。 3m近くまで大きく育ったホリホックは、まるで森のように天高く伸びて、上野ファームの夏の風物詩にもなっています。交配してこぼれダネで増えたものも多く、雨風で傷む不安はあるものの、どうしても夏には咲かせたい植物の一つです。 華やかな八重咲き品種もよくありますが、上野ファームでは、毎年シンプルな一重のものが欲しい! という要望が続出です。懐かしい気持ちと、夏らしさを感じる花は、昔からある品種であっても、決して古臭くはなく、大切にデザインに入れていきたいと思っています。 咲き出した日から、毎日のように名前を聞かれたのが、タリクトラム‘スプレンダイド・ホワイト’です。愛らしい粒状の白い花は、決して派手ではありませんが、ガーデンのあちこちで開花して人気でした。タリクトラムの中でも、この品種は花数が抜群に多く、早めに切り戻すことで二番花も楽しめます。茎が弱いので、枝などで添木をするとよいでしょう。 同種で薄紫のタリクトラム‘スプレンダイド’もあります。 <秋> オーナメンタルグラス 秋になると花数は減ってきますが、近年日本でも注目されているナチュラリスティックプランティングのブームもあってか、オーナメンタルグラスの美しさや魅力を理解してくれる方が年々増えてきたように感じます。決して目立つ存在ではないのですが、他の植物を引き立て、秋にさらに美しさを増します。 葉先がボルドーカラーに染まるパニカム‘シェナンドア’は魅力的なオーナメンタルグラスで、素敵なシーンをガーデンで増産中です! 上野ファームでは夏の終わり頃から咲くサマーヒヤシンス(ガルトニア)は、本来は春に植える球根植物です。数年試してみて、旭川でも越冬することも分かり、これから使い道が増えそうな新しい仲間です。 純白の釣り鐘状の花が、ダークリーフのアスターを背景にとても目立っていました。まだまだ、いろいろな組み合わせが楽しめそうなので、増やしていく予定です。 ●『上野ファームの庭便り「秋こそ美しい! 表現広がるオーナメンタルグラス」』 上野ファーム2021インフォメーション こうして2020年を終え、今ガーデンは例年通り銀世界ですが、また再び花咲く季節に向けて準備中です。 2021年は、カフェがリニューアルして、すべての食べ物がテイクアウト可能になり、ガーデンでもピクニックのように飲食が楽しめるようになりました。ガーデンの植物から元気をチャージして、心地よい庭時間を楽しんでください。 【2023年ガーデン公開期間】 4月21日~10月15日予定(期間中無休) 開園時間/10:00~17:00 入園料/大人1,000円 中学生500円 小学生以下無料 年間パスポート1,200円 ※感染拡大防止のため予告なく営業内容が変更になる場合があります、あらかじめご了承ください。
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地域の取り組み
北国のガーデン案内「北海道ガーデン街道は活動10周年!」〜後編〜
個性的なガーデンが集まる「北海道ガーデン街道」 北海道には、たくさんの観光庭園や花の名所がありますが、中でも、上野ファームも活動に参加している"十勝~富良野~大雪を結ぶ全長250キロの花の道「北海道ガーデン街道」"は2019年、ついに活動10周年を迎えます。 バラや宿根草が生き生きと育つ豊かな植生や広大な風景、昆虫や動物たちとも触れ合えるスポットや、多彩なガーデンデザインのバリエーション……。年々魅力が増す8つのガーデンのうち、前回は「大雪 森のガーデン」、「風のガーデン」、「十勝千年の森」、「十勝ヒルズ」の4つのガーデンをご案内しましたが、今回はさらに「真鍋庭園」、「紫竹ガーデン」、「六花の森」、「上野ファーム」の4つのガーデンをご案内したいと思います。 Garden5 「真鍋庭園」 北海道ガーデン街道の庭の歴史の中で、もっとも古くから庭づくりをしているのが「真鍋庭園」です。日本初のコニファーガーデンとして始まり、今では広大な敷地25,000坪の中に日本庭園、西洋風庭園、風景式庭園があります。真鍋さんは樹木の生産でもとても有名な方で、このガーデンはそういった樹木の見本園として公開されています。私が初めて伺ったときに、とにかく驚いたのは、今まで見たこともない樹木がこんなにも多種あるということでした。花よりも樹木のほうが多く、木の面白さを改めて感じさせてくれる庭園です。「真鍋庭園」で見た美しい樹木は、上野ファームの庭の木を選ぶ時にもとても参考にさせてもらい、アドバイスもいただいています。木のことなら何でも「真鍋庭園」です! 木の葉の色や形の変化で、ここまで美しい風景をつくり出せることに、とにかく感動! 歩いていると、途中エゾリスに出会えるのも嬉しいところです。犬と一緒に入園できるので、毎朝散歩に来る人も多いそう。こんな森の中を毎日歩けたら、本当に幸せですね。 左右対称に葉の色が違う樹木を配置した、とても斬新なデザインのガーデンもあります。まだ秋でもないのに紅葉したように美しい樹木多く、カラーリーフで楽しむ木の選び方の参考にもなります。もちろん低木もたくさん扱っているので、広い庭から狭い庭まで、たくさんのヒントがここにはあります。 美しい紅葉シーズンの9月、10月もオススメです。こんなに見事な紅葉を見られる場所はなかなかありません。葉の色も形もさまざまで、紅葉した葉を集めるだけでも楽しいです。 ガーデン=花というイメージもあるかと思いますが、庭の骨格ともなる樹木は庭づくりの重要な存在です。そのすべてが分かる「真鍋庭園」で、木の魅力を発見してみてはいかがでしょう。 Garden6 「紫竹ガーデン」 北海道の観光ガーデンのパイオニア的存在が、「紫竹ガーデン」です。北海道を花畑にしたいという紫竹昭葉さんの思いが詰まった、チャーミングなガーデンです。チューリップのシーズンも人気が高く、いつも世界中からお客様がやってきます。紫竹ガーデンを訪れるお客様は皆さん、花を見るだけでなく、この庭をつくりあげた紫竹昭葉さんに会いにやってきます。花よりも会いたい人がいるガーデンは、ここだけではないかと思います。皆さんは尊敬の気持ちを込めて「紫竹のおばあちゃん」と呼んでいるんですよ。18,000坪のガーデンには2,500品種の花たちが植えられていて、まるで壮大な野原のような美しさです。「一日中、花と遊んでいたい」と話している紫竹さんの思いが、この庭いっぱいに溢れている気がします。 どこまでもつづく宿根草ボーダー。ガーデン全体が花で遊ぶような雰囲気で、華やかに、伸びやかに、自由に植栽されています。紫竹さんに会うために海外から訪れるファンもたくさん。「言葉も違うお客様とどうやってコミュニケーション取るのですか?」と尋ねたところ、「歌を歌うの!」と教えてくれました。たとえ言葉が分からなくても、その国で親しまれている国の歌をワンフレーズ歌えば、すぐに仲良くなれると。素晴らしいおもてなしの心ですよね。紫竹さんの生き方は、そのまま庭づくりにも表れ、本当にいろんなことを教えられます。 紫竹ガーデンで今大人気なのが、ボリュームいっぱいの朝食! 写真は秋のメニューです。ランチやスイーツを楽しめる時間帯も人気なのですが、何よりも魅力なのが、紫竹さんと一緒にいただく朝ご飯。北海道を感じるボリュームいっぱいの朝ご飯からガーデン散策がスタートするなんて素敵ですね。 Garden7 「六花の森」 全国的にも知られている北海道を代表するお菓子屋さん「六花亭」が手がける、美しい北国の野草の庭が、幕別町にある「六花の森」です。六花亭といえば、特徴ある植物が描かれた包装紙を思い浮かべる方も多いと思います。あの包装紙に描かれているのは、十勝六花と呼ばれる十勝を代表する野草たちです。その植物たちをいっぱいに植えている山野草の森は、美しい小川が流れ、エゾリュウキンカやオオバナノエンレイソウ、ハマナシ(ハマナス)などが群生しています。 自然風な庭の雰囲気も素敵ですが、もちろん六花亭のお菓子も買えますし、その包装紙を手掛けた山岳画家、坂本直行氏の絵を一面に展示したギャラリーなどもあり、花のファンだけでなく、アートもあわせて楽しめるガーデンです。植物を愛し、十勝を愛し、自然を愛する六花亭ならではの素晴らしいこの森に点在するギャラリーは、クロアチアの古民家を移築した、こだわりのある建物。 秋になるとリンドウが咲き始めて、静かなガーデンはさらに味わい深くなっていきます。北海道の代表的なお菓子をお土産に、北国ならではの野草の庭を、ぜひ楽しんでください。 Garden8 「上野ファーム」 最後は私がガーデナーを務める「上野ファーム」をご紹介します。「上野ファーム」も昨年たくさんの植物の入れ替えをしたので、今年はまた今までにない雰囲気の場面をご覧いただけます。宿根草は同じ場所で、同じ季節に咲く植物ですが、その年の気候や雨量などによっても変化して、毎年同じ庭になることはありません。季節が移るにつれ、魔法のように雰囲気を変えるデザインを日々心掛けて、毎年植え替えをしたり、新しい植物の栽培にも挑戦しています。 7月になると背丈を超えるくらい迫力ある植物たちが、庭を彩ります。2mを超すアンジェリカやエゾクガイソウ、フィリペンデュラ……。足元で咲く小さな花から、見上げるような大きな植物まで。植物を見ることが楽しいと思っていただけるよう、いつも個性ある植物を選んでいます。 上野ファームの四季のガーデンの魅力は、こちらでもご紹介しています。 以上、「北海道ガーデン街道」の8つのガーデンのうち、4つをご案内しました。北海道地域は、本当に素晴らしい庭園がたくさんあります。こんなにも庭が集中している地域は珍しいと思います。観光庭園や個人の美しいオープンガーデン、また自然の花たち、すべての植物たちが、魅力ある北海道をつくっています。北海道の庭めぐり、ぜひ、たくさんの方にお越しいただきたいと思います。 10周年記念のスペシャル企画開催 2019年の「北海道ガーデン街道」は、活動10周年を記念して、今までにないスペシャル企画がスタートしています。ガーデン街道の4つのガーデンがお得に回れるチケットをご購入いただくと、オリジナルのワイルドフラワーのタネをプレゼント! さらにそのタネ袋を関係施設、ガーデンで見せると、何といろんなプレゼントや割引が受けられるという、"特典付き種袋”です。 さらに、北海道ガーデン街道の8つのガーデンをすべて回ってスタンプを集めると、10周年特別記念クリアファイルを最後に訪れたガーデンでプレゼントしています。 10年の歩みの中で、私たちガーデナーもより素晴らしいガーデンになるよう、切磋琢磨してきました。スタート時とはさらに雰囲気を変えて、どのガーデンも素晴らしい仕上がりの10年目。昨年2018年は、台風の直撃や震災などもあり、北海道全体が肩を落とす年となりましたが、これからがベストシーズンの北海道に、ぜひ遊びにいらしてください。花たちと一緒にお待ちしております‼
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ストーリー
北国のガーデン案内「北海道ガーデン街道は活動10周年!」〜前編〜
2019年、北国にも春がやってきた! 今年の旭川は雪解けが遅く心配でしたが、5月下旬には驚くほどの速さでチューリップが満開となりました。6月上旬にはアリウムの白やカンボクの木などが爽やかに咲き揃い、北国にも本格的なガーデンシーズンがやってきました。上野ファームの植物たちも、びっくりするような勢いで伸び始め、ガーデンの花たちが次々と開花を始めています。 ご存じのように、北海道には、たくさんの観光庭園や花の名所があります。中でも、上野ファームも活動に参加している"十勝~富良野~大雪を結ぶ全長250キロの花の道「北海道ガーデン街道」"は2019年、ついに活動10周年を迎えます。アッという間の10年でした。 北海道の花の魅力やガーデン観光を盛り上げたい気持ちで、民間のガーデンが個々に集まり、協議会として立ち上げた取り組みを、たくさんの方に知っていただくまで、かなりの時間がかかりました。もちろんまだまだ知らない方もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、これからシーズンを迎える北海道ガーデン街道の8つの庭から、まず4つをご紹介します。 ※後編はこちら。 Garden1 「大雪 森のガーデン」 スキージャンプの原田選手や高梨選手の出身地でもある上川町の素晴らしいロケーションにあるガーデンです。森の中の花の楽園をイメージした「森の花園」エリアは、私も植栽デザインに協力させていただきました。上野ファームよりも、さらに標高が高い位置にある庭なので、平野部とは少し開花期が違っていて、とても新鮮に見ることができます。 雪解けも一番遅いガーデンですが、寒暖差がはっきりしているためなのか、花の発色の美しさはガーデン街道一といっても過言ではありません。 目の前に大雪山が見える場所なので、北国ならではの高山植物のエリアなどもあります。本格的な登山をしなくても、珍しい高山植物を楽しめるのも魅力です。 庭を一歩出ると、美しい山々を見渡す素晴らしいロケーション。この周辺はCMの撮影でもよく利用されているんですよ。 花園エリアを抜けてさらに森の奥へと進むと、美しいグリーンが迎えてくれるのが「森の迎賓館」エリア。ここでは、野草や冷涼な気候でしか咲かせることのできない幻の青いケシを見ることができます。今年は森の迎賓館の奥に、新しく子どもたちが遊べるエリア「遊びの森」がオープンしました。自然の中で、子どもたちも一緒にガーデンを楽しむことができます。 雄大な山を目の前にした「大雪 森のガーデン」には、おしゃれなカフェやレストラン、宿泊コテージもあるので、ぜひのんびり滞在をオススメします。 Garden2 「風のガーデン」 同名のテレビドラマの舞台となった「風のガーデン」は、今年で11年目を迎えます。私がこの庭のデザインを脚本家の倉本聰先生から依頼されたのが2006年のこと。約2年をかけてたくさん悩みながら、壁にぶつかりながら、北海道に合う新しい庭のスタイルをつくりたいとデザインしたのが、この「風のガーデン」です。ドラマからかなりの月日が経ちましたが、今もドラマのファンの皆さんから愛されて、庭としても成熟し、新しい取り組みを始めています。 ドラマを撮影した小屋や部屋はそのままの状態で残り、公開されています。新富良野プリンスホテルの敷地内にあるので、滞在しながらゆっくりとガーデンを楽しめます。 最初は、365品種の植物から始めたガーデンですが、その後、庭の雰囲気は壊さずに植物はどんどん新しい品種を取り入れています。毎年同じ表情はないくらい、ガーデナーが日々工夫を凝らして、新しい風をこの庭に運んでいます。 ドラマの後から、さらに新しいテーマでつくった庭が「薔薇の庭」です。 一般的なローズガーデンではなく、「風のガーデン」でしか表現できないバラの庭をつくり出したくて、ここには素朴で力強い原種系を多く取り入れました。バラが持つ本来の力、ワイルドな雰囲気を楽しんでいただいています。また、このドラマをきっかけに生まれた特別なバラ、登場人物の名前をつけた「ルイの涙」と「岳の夢」というバラが、この庭には植えられています。まるでバラの森のような野生味あふれる「薔薇の庭」では、ワイルドローズならではの秋のローズヒップの季節も必見です。 今、新たに取り組んでいるのが「野の花の散歩道」です。ガーデンという考え方から少し離れて、「風のガーデン」の世界観をもっと広げていくためにつくった新エリアです。ここはあえてガーデナーがあまり手を入れずに、野の花を自由に成長させています。増えたり、増えすぎて消えてしまったりと、植物は毎年のように力関係が変わり、カオスとなり変化し続けるので、とても面白い野原になります。昔歩いた懐かしい散歩道を思い出すような、自然な雰囲気を大切にしています。 ノラニンジンやリンドウ、北海道でよく見かける道端の草花たちも、ここでは主役。どの庭とも違う新しい取り組みです。 Garden3 「十勝千年の森」 これぞ北海道スケールと驚く、ダイナックな自然と、日本でもいち早くナチュラリステックプランティングを実践している庭が、「十勝千年の森」です。世界でも活躍するガーデンデザイナー、ダン・ピアソン氏と高野ランドスケーププランニングによる設計は2002年から始まり、壮大なスケールで北海道を表現した素晴らしい空間に成長しています。 単純な花と構築物で構成されたガーデンというイメージを超え、今までにない感情が湧き起こる場所です。 今、世界中のデザイナーが注目している"ナチュラリスティックプランティング”をいち早く庭で表現しているメドウガーデン。季節の変化やグラスの美しさは、ため息が出るような空間です。一度だけでは本当の意味での素晴らしさが伝わらないので、何度も季節を変えて訪ねていただきたいガーデンです。 十勝千年の森は、イギリスのガーデンデザイナーズ協会が主催する大賞を受賞したガーデンで、「21世紀で最良のガーデンデザイン」として高く評価されました。現在、世界中から注目されているガーデンです。ヘッドガーデナーを務める新谷みどりさんは、若手ガーデナー憧れの存在でもあり、ガーデナーの育成にもとても力を入れている方です。私も彼女に会うたびに、これからのガーデンについて話が盛り上がり、いつもエネルギーをもらっている存在です。どのガーデンもそうですが、素晴らしいガーデナーがいるからこそ、素晴らしい庭が存在すると常々思っています。 心落ちつく森を抜けて、メドウガーデンで風を感じ、キッチンガーデンや可愛いヤギたちに出合うこともできます。ここで作られたヤギのチーズも名物です! ガーデン以外にもアクティビティも充実しています。「アースガーデン」を駆け抜けるセグウェイ体験は毎日大人気ですよ。 美しいローズガーデンもキッチンガーデンとあわせて見ることができます。おしゃれなキッチンガーデンは私も大好きです。 Garden4 「十勝ヒルズ」 季節によってさまざまな表情を見せてくれる「十勝ヒルズ」は、十勝でもとても有名な豆を扱う会社が運営している、食と農をテーマにしたガーデンです。美しい花木が庭のいたるところに植えられていて、トンボがたくさん集まる池もあります。子どもたちには、虫取り網やカゴの貸し出しもしているので、私の子どもたちもこの庭でのトンボ取りをとても楽しみにしているほど。動物たちも見ることができて、家族みんなで行ってもワクワクがいっぱいのガーデンです。 「スカイミラー」は空を映し出したような、ブルー系の花が特徴のエリアです。シンボルの白樺も爽やかで、北海道らしい風景をつくり出しています。 驚くほどのトンボの種類が見られる「トンボ池」は、子どもたちも大興奮の場所です。 今年の異常な雪の少なさと寒さで、十勝地方のバラも大きな被害を受けてしまい大変だったようですが、十勝ヒルズにも、とてもよく手入れされたローズガーデンがあります。厳しい北海道の冬を越すには本当に苦労が多く、その時の気候によって栽培がとても難しいものですが、丹精込めて手入れをすると必ず応えてくれるバラたち。香りをテーマにした、さまざまな芳香バラがここに集まっています。 可愛いキッチンガーデンもあり、家庭菜園の参考にもなります、そして、何よりもオススメなのが、ここでしかいただけない食事! 花より団子ではありませんが、「ファームレストラン ヴィーズ」のコースランチは、十勝野菜や豆をふんだんに使ったもので、農業の盛んな十勝の豊富な食材を美しいコースで楽しめます。美しい花を見て、美味しい食事を堪能できる、素敵なガーデンです。 以上、「北海道ガーデン街道」の8つのガーデンのうち、4つをご案内しました。北海道地域は、本当に素晴らしい庭園がたくさんあります。こんなにも庭が集中している地域は珍しいと思います。観光庭園や個人の美しいオープンガーデン、また自然の花たち、すべての植物たちが、魅力ある北海道をつくっています。北海道の庭めぐり、ぜひ、たくさんの方にお越しいただきたいと思います。 10周年記念のスペシャル企画開催 2019年の「北海道ガーデン街道」は、活動10周年を記念して、今までにないスペシャル企画がスタートしています。ガーデン街道の4つのガーデンがお得に回れるチケットをご購入いただくと、オリジナルのワイルドフラワーのタネをプレゼント! さらにそのタネ袋を関係施設、ガーデンで見せると、何といろんなプレゼントや割引が受けられるという、"特典付き種袋”です。 さらに、北海道ガーデン街道の8つのガーデンをすべて回ってスタンプを集めると、10周年特別記念クリアファイルを最後に訪れたガーデンでプレゼントしています。 10年の歩みの中で、私たちガーデナーもより素晴らしいガーデンになるよう、切磋琢磨してきました。スタート時とはさらに雰囲気を変えて、どのガーデンも素晴らしい仕上がりの10年目。昨年2018年は、台風の直撃や震災などもあり、北海道全体が肩を落とす年となりましたが、これからがベストシーズンの北海道に、ぜひ遊びにいらしてください。花たちと一緒にお待ちしております‼
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ガーデンエッセイ
上野ファームの庭便り「庭の人気者! 動物たちの庭での過ごし方」
花咲くガーデンで過ごす動物たち 春から秋まで、さまざまな花が咲く上野ファーム。庭には花や植物が欠かせない存在ですが、庭と一緒に「上野ファーム」のちょっとした名物となっているのが、動物たちがいる風景です。 私が本格的に植物に触れるようになって、十数年が経ちましたが、動物との付き合いはもっともっと長く、自分の周りに生き物がいなかったことは、記憶の中では一度もありません。小さな頃から動物が家の周りにいるのが当たり前の環境で育ち、犬や猫も含めてさまざまな動物と出合ってきました。 昔の農家では、鶏を放し飼いしている家も多くあり、上野ファームもかなり前から鶏を飼っていたようです。現在もその流れのまま、鶏がガーデンの中を自由気ままに歩き回っています。美しい花ももちろん魅力的ではありますが、生き物がいるガーデンは、とても絵になります。今回は、上野ファームで撮影した、庭の動物たちの写真をご紹介します。 上野ファームにいる動物たちをご紹介 現在、上野ファームにいる動物は鳥類が多く、チャボ(小さめの鶏)、ガチョウ、アイガモ、七面鳥がいます。親が卵を産んで温めることも多いですが、難しい場合は、卵から孵卵器で孵化させた鳥たちもたくさんいます。鳥たちは、天気の良い日は毎日外に出かけて、庭やお客様が入れないバックヤードなどで過ごしています。ガーデンの隙間に入って、大好きなミミズや虫を捕まえたり、体をきれいにするためなのか、庭に穴を掘って土浴びをしている姿もよく見かけます。 ガーデンで土を耕すと必ず駆け寄ってくるのは鶏たち。お目当ては、土の中に棲んでいる元気なミミズ。スコップで土を掘り返すと必ずミミズは出てくるのですが、鶏たちは賢くて、スコップの掘る音を記憶しているので、その音が聞こえると、どんな遠くからでも足早にやって来ます。 ガーデンを熟知する動物たちの行動 動物たちは、もしかすると人間以上に植物の変化に気づき、ガーデンを熟知しているのかもしれません。鳥が自由に歩いていると、植物を傷めませんか? など、いろいろなご質問をいただきます。でも、今までそれほど驚くような悪さはしていないように思います。 鶏の目線を毎日観察しながらいつも思うことは、その時きれいな場所を動物たちは一番分かっているのかもしれないということです。気が付くと、きれいな場所で遊んでいたり、ゆっくり休んだりしている姿をよく見かけます。もしかすると、人間と同じように動物も庭を楽しんでいるのかもしれません。 チャボやアイガモのいるガーデン風景 羽が美しく、普通の鶏よりも小さなチャボは、おとなしい性格もあってガーデンでも人気者です。 動物もお花見をするんだ〜と思った一枚。フジザクラの下で、花を見上げながらまったく動かなかったチャボ。 花を眺めながらガーデンを散策する様子。 動かない仲間がいる!? と思ったかどうか。思わずクスッと笑いを誘うワンシーン。 グリーンのトンネルを気持ちよさそうにくぐるチャボたち。 寄せ植えについて話し合っているような七面鳥。 天気の良いある日、裏の山を登るアイガモとガチョウの行進。15歳くらいになるガチョウのモルテンは、みんなのリーダー的存在で、いつも威張っているよう。 突然の雨に、寄せ植えの下で雨宿りしている鶏たち。まるで人間のようです。 上野ファームの庭の歴史と重なる動物たちとの記憶 鶏やアヒルをたくさんご紹介してきましたが、ウサギを庭で放し飼いにしていた時代もあります。その頃は、とても仲の良いミニウサギの夫婦、ひとみちゃんとマンサクが、毎日仲睦まじい姿をガーデンで見せつけてくれました。夜になるとキツネに狙われる恐れがあるため、鶏と一緒に鶏小屋へ入るという、とても利口な夫婦でした。日中は、他の動物たちと一緒に庭に出て、好きな草を食べていました。今はもう天国へいってしまいましたが、ガーデンを訪れる人をいつも温かな気持ちにしてくれたことを思い出します。 たくさんの木々に囲まれた上野ファームには、野生動物もやってきます。野鳥もさまざまな種類を確認することができます。野ネズミもたくさんいるので、それを目当てにやってくるキタキツネが閉園後の静かなガーデンを散策していることもよくあります。庭のオニグルミを目当てに、エゾリスが通ってきていた時もあり、毎日クルミを取りに来る姿を見るのがとても楽しかったです。 このように、上野ファームの庭にはいつも楽しい動物たちがいました。植物だけでなく、彼らがいるからこそ物語があり、たくさんの素晴らしいシーンが生まれてきたのだと思います。植物からもいつも感じていることですが、生命の逞しさや動物たちの生きる知恵からは、たくさん学ぶものがあります。きっとこれからも、楽しいことや大切なことを彼らは教えてくれることでしょう。 「上野ファーム」の2019年度ガーデン公開期間は、4月20日~10月14日まで。 *動物はいつも庭にいるわけではありません。危害は加えませんので、見かけたときは追いかけたり、餌をあげたりせずに、あたたかく見守ってください。 併せて読みたい ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア ・上野ファームの庭便り「ガーデンはインスタ映えの宝庫! 写真で振り返る庭の四季」 ・カメラマンが訪ねた感動の花の庭。北海道 上野ファーム
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ストーリー
上野ファームの庭便り「ガーデンはインスタ映えの宝庫! 写真で振り返る庭の四季」
美しく記録を残すガーデン写真 ガーデナーにとって、庭の記録はとても大切です。数千種類の植物を扱うようになると、頭では覚えきれなくなってきます。そんな時役に立つのは、やはり写真です。どんなに頭で記憶しようと努力しても、あいまいにしか覚えていないこともたくさん。いつ、どんな時、どんな色の、どんな形の花がそこで咲いていたか。過去の写真を振り返れば一目瞭然で分かります。 数年分の記録写真があれば、庭の変化も手に取るように分かります。これから雪に閉ざされる北海道の長い冬の間は、蓄積した写真データを見返す絶好のチャンスです。上野ファームの1年間の記録写真は、1万枚を超えることもよくあります。私の場合は、すべての季節の写真を見ながら、今年の反省点や改善箇所、新しい植栽デザインなどを振り返り、来シーズンの計画を念入りに立てていきます。 写真はただ記録のためにではなく、例えば、「このシーンがポストカードになるとしたら」などと想像しながら、最高の瞬間や美しいアングルを切り取る意識でシャッターを切っています。こうした姿勢で残している記録は、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSでも大活躍するので、やはり写真映えすることがとても重要です。 また、最高に美しいガーデンの瞬間を写真で残せるのは、ガーデナーだけ。一番いい光や、絶好の開花タイミングを選んで撮影できる環境にいるガーデナーは常に、写真のうまい下手にかかわらず、カメラを構えた瞬間は写真家であるべきだと思っています。 インスタ投稿でも人気の手法 同じ種類の植物全部盛り写真 植える植物の種類が増えてくると、自分の庭でどれくらいの種類が咲いているのか把握しきれない時があります。そんな時に便利なのは「同じ種類の植物全部盛り」の写真です。 花の部分だけを切り取って、1カ所に集めて撮るだけの簡単な方法ですが、集めるだけでいとも簡単に華やかな写真が撮影できます。どんな色合いでも組み合わせでも、花を集めるだけで絵になってしまうのは写真ならではのマジックです。フラワーアレンジのように、高さや組み合わせを気にすることもなく、アングルを気にする必要もなくて、真上から撮るだけでOK。写真が苦手な方も、きっとこれなら気軽に挑戦できると思います。 全部盛り写真のバリエーション 咲き方に特徴があるような花は、咲き方でグループにして撮ると、さらに分かりやすい資料になります。クリスマスローズの場合は、シングル、セミダブル、八重咲きをグループにしてみることで、それぞれの個性の比較写真としても、とても便利。自分だけの花カタログになります。 そんなにたくさん同じ種類の花がない場合は、その季節に庭で咲いていた花全部を並べてみるのもオススメです。こうして写真を撮っておけば、その時期にどんな花が咲いていたかがたった一枚の写真ですぐに分かります。 早春の花だけを集めてみると、優しい色の花がいっぱいあるということが、この写真を見てよく分かります。 芝生をキャンバスに 絵を描くように並べるのもオススメ 花の大きさなどが揃っている植物のグループは、一枚の絵を描くように、並べてみるのもアイデアです。すらりとした草姿が美しいスイセンは、茎がついたまま、そこにすべての種類が咲いているように並べると、どの花もくっきりと形が伝わる写真に(下写真)。並べて観察すると、似たような品種でも微妙な花びらのつき方の違いや、大きさや色の違いがよく分かります。額に飾れるような、とても可愛い写真になりました。 バラやクレマチスなど、表情や色が豊富な花のグループは、色別に分けても素敵です。カラーバリエーションがよく分かり、組み合わせを考える時にもイマジネーションが湧きやすくなります。さらにインスタグラムで紹介することを意識して、私の場合は正方形に収まるような並べ方も合わせて撮影しています。 素敵な写真が撮れたら、いろんな方に見てほしいなと思うのは誰もが思うことではないでしょうか、“インスタ映え”もこの方法なら、簡単に可愛く撮影できます。 同じ花を集めるだけでなく、その時期に咲いている同系色の植物だけを集めてグラデーションをつくる方法もオススメです。淡い色から濃い色へ並べるだけなので、それほど難しくなく、でもとても素敵に撮影ができます。この撮影方法は、色の組み合わせを考える訓練にもなるので、植栽デザインにも生かせます。 庭の植物選びにも重宝する 全部盛り記録写真 一輪の花それぞれがもつ特徴や美しさをしっかりと自分で把握しておくと、一瞬で忘れそうな名前も覚えることができました。私にとって、この撮影方法は、とても理にかなっていたため、ここ数年、品種が増えるたびに、こうして“全部盛り”写真を撮りためています。植物を選ぶ時、自分好みで、ついつい似たような品種を選んでしまうので、まだ育てたことがない新しいコレクションを増やすための参考としても、この撮影方法はとても重宝しています。 流れるようなしっぽが特徴の西洋オダマキは、正面の顔だけでなく、かわいい横向きもしっかり撮影。庭に育っている状態ではなかなか撮影できないアングルも、芝生の上に並べると思い通りに撮れます。 開花中の花は撮影後も 水鉢に浮かべて眺める 切った花は、せっかくなので撮影後も観賞したいものです。そんな時便利なのが「水鉢」。水を張ることができる器や鉢などがあると、撮影後もしばらく花を浮かべて楽しめます。全部盛り写真を撮るようになってから、素敵な水鉢を探すようになりました。 オススメの撮影場所は芝生の上 夏に大きな花を咲かせるホリホックとヘメロカリスも、並べて撮ると、咲いている状況では気がつかない、一輪一輪の表情と個性が見えてきます。 こうして、小さな花から立体感がある花まで、いろいろな花をいろいろな場所で撮影してきました。その結果分かったのが、ほどよく伸びた芝生の上が撮影にベストだということ。植物が転がらずにほどよく固定され、並べやすいことを発見。 花だけでなく葉も木の実も インスタ映え写真になります 庭に花が少なるくなると、さびしい印象になりますが、花以外でも、タネや、葉、木の実などを並べてもとても素敵です。並べてみると美しいなぁ〜と思えるような、魅力的なものを探そうと思う気持ちを持つことは、新たな庭の魅力の発見につながることもあります。常に「美しいものを組み合わせたい」という感覚は、庭づくりにおいてもとても大切なものだと、このような写真を撮っているとよく思います。 西洋ニワトコやホウの実、ローズヒップなど、実が美しい秋も撮影したくなる素材はいっぱいあります。葉っぱと実をセットにして、生きた植物図鑑のような撮り方もオススメです。後から実だけを見ても、同じような形だと判別がつかなくなることもありますが、特徴的な葉が添えてあれば図鑑でも調べやすくなります。 このように、花や葉、実を集めて撮る楽しい“全部盛り”写真。ただ撮るだけでなく、SNS映えなど美しさを意識して、楽しみがら自分の庭の魅力のすべてを一枚の写真に収めてみてください。庭の大切な記録が、美しい記憶として、いつまでも残ると思います。 併せて読みたい ・上野ファームの庭便り「北国だからこそつくれる超簡単“雪あかり”」 ・花好きさんの旅案内 シンガポール「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」 ・芝生の庭をつくろう!実は簡単、芝生の張り方&お手入れ
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ガーデンエッセイ
上野ファームの庭便り「年々グレードアップするハロウィンディスプレイ」
恒例行事となったハロウィン飾り 秋になるとだんだん庭の花も少なくなってきますが、紅葉が始まり、鮮やかなアスターやシュウメイギクなどが開花を始め、上野ファームには秋ならではの美しい風景が広がります。秋のガーデンの魅力と合わせて毎年、取り組んでいるのが、“秋のカボチャディスプレイ”です。一番初めはシンプルにカボチャを並べることから始まりましたが、近年のハロウィンの盛り上がりも手伝って、一緒に写真を撮っても楽しい飾りつけに進化させてきました。今回は上野ファームの楽しいハロウィンディスプレイをご紹介します。 ハロウィン飾りの始まり 最初にカボチャを飾り始めたのは2009年くらいのこと。海外でよく見かけるカボチャをハロウィンに飾って楽しむことを庭でも真似してみたくて、まずは、ハロウィン用のカボチャのタネを買って苗をつくりました。裏の畑に植えてみたところ、びっくりするくらいたくさんのカボチャが実って、嬉しくなってカフェの前に並べたのが最初でした。 大きなカボチャはスタッフ皆でくり抜いて、面白い顔のジャック・オー・ランタンをつくりました。カフェに来るお客様がとても喜んでくれたのを覚えています。以降、秋の上野ファームの名物としてカボチャの飾りは毎年趣向をこらしながらグレードアップしてきました。 さらにボリュームを増やすために2010年は育てるカボチャを増やして、いっぱい並べました。日が落ちるのが早くなる秋は、ロウソクを灯したランタンが大活躍。ランタンをつくる時も楽しいのですが、飾る時も飾った後も、また楽しいハロウィンディスプレイは、皆の気持ちをウキウキとさせてくれました。 飾り方に工夫し、記念撮影のスポットに ハロウィンディスプレイをスタートしてから、たくさんの方が自然とその場所で記念写真を撮るようになりました。そこで楽しい秋の思い出のワンシーンとして、一緒に記念撮影できるようなディスプレイにも挑戦し始めました。上野ファームの秋の庭を楽しい写真で持って帰っていただくことで、帰宅後も思い出していただけることを願って。 一人では寂しいので、次の年は夫婦に挟まれるようにしてみました。ハロウィンディスプレイは、表情などもいろいろと研究しながら、可愛くなりすぎず、怖くなりすぎないようにつくるのが上野ファーム流です。数年続けると「毎年楽しみにしている!」と、声をかけてくださるお客様が多くなり、そう言ってもらえるのがとても嬉しくて、「来年はどんなものにしようかなぁ?」と、いろいろと考えるようになりました。カボチャは、くり抜くことで腐るのが早くなってしまうことも分かってきたので、一部のカボチャはくり抜かずに、ペンやシールで顔をつくるようにしたら、10月31日のハロウィンの当日までキレイな状態のカボチャを飾ることができるようになりました。 カボチャの種類も数も増量し、もっと賑やかに! 始めた頃は、カフェの前だけのディスプレイでしたが、ガーデン内にもディスプレイをする場所を増やし、いろいろな場所で楽しくカボチャと記念撮影ができるようにしました。カボチャにもいろいろな種類があるので、栽培品種をさらに増やして、かわいいオモチャカボチャや、カボチャ以外にもツルクビヒョウタンなど、デザインがより楽しめるように、多品種育てるようになりました。 年々大家族に!カボチャファミリーの登場 ただ並べるだけでなく、カボチャの人生にもストーリーがあったらきっと楽しいだろうなと思うようになり、大人のカボチャ人間だけでなく、子どもや叔父さんもいる設定でつくった2016年、仲睦まじいカボチャファミリーが勢揃いしました。さらに昨年はかわいい赤ちゃんも誕生して、カボチャ人間づくりにも、楽しいこだわりができてきました。 生まれたばかりの可愛いカボチャ赤ちゃんも大人気。まるで、今にも動きそうなリアルなカボチャの親子が完成しました。 2018年は「カボチャのティーパーティー」がテーマ パーティーに招待してもらえるのは2名様だけ。美しい秋の実やカボチャづくしのおもてなしです。その他にも、個性豊かなキャラクターを揃えて、秋のガーデン散策を楽しみながら、たくさんのお客様が愉快なカボチャたちと記念撮影していました。 北国では残念ながら、ハロウィンの日が近くなると雪が降ることが多く、雪に埋もれて、雪だるまのようになることも多いのですが、それもまた北国ならではのハロウィンです。お客様に喜んでいただけるコーナーにしようと始めたハロウィンの飾りつけですが、作る自分たちが実は一番楽しんでいるのではないかと思います。小さなディスプレイコーナーでも、カボチャを少し飾るだけでなぜかウキウキします。ハロウィンに限らず、秋の収穫を楽しむ気持ちで、ぜひみなさんも楽しいアイデアで秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。 【2018年秋冬の「上野ファーム」営業時間のご案内】 ガーデンの公開は、10月14日で終了しましたが、ハロウィン飾りは10月31日までカフェ前でご覧いただけます。 ガーデン公開終了後は、通年営業している「NAYA café」のみ営業 営業時間:11:00〜17:00(月曜定休) あわせて読みたい ・上野ファームの庭便り「秋の庭で春をつくる」 ・編集部厳選・国内名ガーデン案内「北海道・上野ファーム」の四季 ・「ファンケル 銀座スクエア」にカラフルで楽しいハロウィンガーデンが登場!
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ガーデン&ショップ
上野ファームの庭便り「秋の庭で春をつくる」
積雪前に植えつける秋の大切な大仕事、球根計画 秋になると、上野ファームの庭仕事は一年で最も忙しくなります。それは来春のための球根をしっかりと計画して植えつけなくてはならないからです。秋に植える球根によって理想のデザインをし、どれだけ作業を進めるかで、春のガーデンの美しさが変わるといっても過言ではありません。これから立ち枯れた冬に向かう気候の中で、頭の中のイメージを“春いっぱい”にして想像を膨らませながら球根計画を考えます。北海道はどの地域よりも積雪が早いため、球根の植栽はいつも急ぎ足です。雪が積もってしまうと植える予定の場所も見えなくなってしまうのです。積雪が早い年は、雪をかき分けながら必死で植えたこともあります。 昔とは違う! 個性豊かな球根たち チューリップの世界はどんどん広がっています。昔の赤、白、黄色のイメージとは全く異なり、個性的な形や色が多くなって、選べる種類がぐんと増えました。今注目の開花が楽しみなチューリップたちをご紹介しましょう。 黒い羽のようにシックで大人なチューリップ‘ブラック・パーロット’。 かわいいリップを引いたような‘キャンディ・コーナー’。コンパクトなサイズは寄せ植えにも向いています。 開花が進むにつれて、変身を続ける不思議系チューリップ‘ハーバーライト’。 枝分かれしてブーケのように咲くチューリップ‘アントワネット’。咲き進むにつれてピンクの縁取りが現れる変化咲き。 宿根草の間に球根を植えつける上野ファームの栽培スタイル 上野ファームの球根デザインは、ほとんどが宿根草と宿根草の間に植えるスタイルです。植物が茂っている時期はなかなかこの作業ができないので、上野ファームのガーデンの閉園後が球根を本格的に植え始めるタイミングになります。冬には地上部が枯れる宿根草を根元からきれいに刈り取って、株と株の間を分かりやすくしてから取り掛かります。色のバランス、草丈、個数、開花期のバランスなど、球根の位置はとても重要なので、すべて自分で一球一球ていねいに配置をしていきます。その作業は透明な絵の具で絵を描くような感覚で、チューリップやスイセン、アリウムなどが開花したときのイメージを、すべて頭の中で想像しながら配置を考えていきます。 同時期に成長を始める宿根草とのバランスもとても大切です。頭を使う作業ではありますが、イメージ通りの風景が春に広がる瞬間は、何度経験してもとても嬉しいものです。秋の球根選びや植えつけ作業は大変ではありますが、この嬉しさと楽しさがあるからこそ、上野ファームの庭にとって欠かすことのできない秋の庭仕事なのです。多くの宿根草は開花まで時間のかかるものが多いのですが、球根は、秋に植えれば、春に必ず結果を出して応えてくれる点も球根の魅力の一つだと思います。 翌年の初夏に咲いたアリウムの花たち。この風景を秋の植えつけ時に具体的にイメージできるかが大切。想像力をフルに働かせて秋の球根を植えていきます。 流れるように芝の中にムスカリの球根を一つひとつ丁寧に植え付けていきます。3色が混じり合うように配置していることは、この時、パッと見には分かりません。 春の開花シーズンになると、秋に描いた絵が庭に浮かび上がります。ブルーを中心に水色と白をチラチラと混ぜ合わせて、川のように流れるムスカリ。植える大変さはあるけれど、この瞬間があるからこそ、球根栽培は楽しい。 球根の開花リレーで、春の庭に変化をつくる 宿根草に開花期があるように、春に咲くというイメージしかない球根にも、開花期がしっかりとあるのをご存じですか? チューリップも早咲き、中生咲き、晩生咲きと大きく3つのシーズンに分けることができます。それは時間が進むにつれて色の組み合わせやグラデーションの色を増やすなどの開花期の時間差がつくり出すデザインとしても楽しむことができます。 前出の写真から10日後には、中生咲き、晩生咲きのチューリップが開花を始め、華やかにイメージチェンジ! 開花期を絶妙に計算することで、表情がどんどん変わる春の球根ガーデンに。 原種系チューリップや小球根たちは、早春から咲き始めますが、開花期がそれほど長くはありません。その後、さらに開花をつなげるような球根があれば、春の球根バトンリレーを長い期間楽しむことができます。 晩生咲きのチューリップを意識して植えることで、後半になって伸びてくる宿根草の葉や花と重なって、とても素敵な春のガーデンになります。 レースのような花が咲く宿根草のコンロンソウや球根花のシラーが揃って伸びてくる5月下旬は、早春の宿根草とチューリップの競演が見られる貴重な季節。 開花期の異なる球根を数種類混植して、ガラリとイメージを変えるのも楽しいものです。白樺林には、スイセンと合わせてチューリップもたくさん植えているので、清楚なスイセンが終わりかけた頃、ポップなカラーのチューリップが咲き始めて、一気に雰囲気が変わります。その後、隙間からムスカリやフリチラリアなどが開花を続けます。 球根というとチューリップやスイセンがすぐに頭に浮かぶ方も多いと思いますが、秋植え球根は、ムスカリやフリチラリア、アリウム、カマッシアなど、さまざまな種類があります。それぞれの特徴や色、草丈などを考えながら、地面にポンポンと配置して植え込むだけ! 秋の球根植えほど楽しい作業はありません。地面に描いた球根がまるで魔法のように春に開花を始めて、華やかな景色をつくってくれます。球根類には驚くほどの種類がありますが、品種を選ぶのも楽しい作業です。 上野ファームのムスカリ。ムスカリだけでもさまざまな色のバリエーションがあり、毎年少しずつ増やしながらコレクションする楽しみも広がります。 中でもお気に入りは、ムスカリ‘マウントレディ’。まるで小さな富士山みたいです。 自然風な植栽にも活躍するカマッシア。 チューリップが終わる頃、アリウム‘パープルセンセーション’と同じくらいの時期に開花するので、一緒に植栽すると涼し気な色合いの球根コーナーになります。 球根の植え時となる秋はガーデンシーズンも終盤で、ちょっと庭仕事にくたびれかけている時期ですが、春の素敵なガーデンをイメージして、もうひと頑張り! 地面に描いた球根が、ときめくような春を連れて来てくれます。球根は忘れた頃に届く自分へのプレゼントのようなもの。ぜひ、いろんな球根にチャレンジしてみてください。
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上野ファームの庭便り「秋こそ美しい! 表現広がるオーナメンタルグラス」
庭で発揮するオーナメンタルグラスの魅力 「オーナメンタルグラス」という言葉も、少しずつ聞く機会が増えてきたように思いますが、まだまだあまり知られていないようです。葉や穂の美しさなどを含めて装飾的にも美しいグラス類(草)の総称をオーナメンタルグラスと呼び、上野ファームでもガーデン全体にたくさんの種類を植えています。美しい花を咲かせる植物とはまた違い、オーナメンタルグラスの美しさは、葉と穂にあります。 秋になるとたくさんの穂があがり、オーナメンタルグラスはさらに美しさを増してきます。秋風とともにしなやかに揺れる穂の動きも、庭デザインの一部としてとても魅力的なのです。シンプルながら、庭に新鮮な動きを与えてくれるグラスは、一見ナチュラルな庭に合いそうなイメージですが、都会のコンクリート建築などともとても相性のよい植物。固い素材と対照的なやわらかさとシンプルさが、モダンなデザインとしても魅力的な表現を可能にしてくれます。 ガーデンにグラスを入れるだけで、表現の幅はどんどん広がります。シンプルに風に揺れることを意識してデザインしたり、葉や穂の色でグラデーションをつくることもできます。植物の引き立て役としても優秀で、背景にオーナメンタルグラスがあるだけで、手前の花やシードヘッドの輪郭がくっきりと浮かび上がるため、ほかの植物を最大限に魅力的に見せてくれます。 例えば、背景にグラスがあることで手前のエリンジウムのシルエットがはっきりと分かるように。お互いの魅力を引き立て合うことも可能です。 タネだけになった植物のシードヘッドも、グラスと合わせることで、まるでモダンアートのように美しいシーンをつくり出せます。 穂が風で踊るように揺れる姿は、ガーデンに動きと感動を与えてくれます。表情豊かなオーナメンタルグラスは秋が見頃です。 上野ファームで秋の庭を盛り上げるグラス類をご紹介 ・ミスカンサス&カラマグロスティス 葉は似たようなものが多いですが、穂は多彩な表情を持っています。左はミスカンサス、右はふわふわの穂がシッポのようなカラマグロスティス。 ・斑入りフウチソウ 斑入りの葉が春から秋まで美しく茂り続ける、斑入りフウチソウ。 ・ワイルドオーツ まるで小判がいっぱいぶら下がっているような雰囲気が愛らしいワイルドオーツ。 ・パニカム‘シェナンドア’ 小さなビーズのような赤い穂と葉先がワインレッドになるのが魅力のパニカム‘シェナンドア’。 ・モリニア‘バリエガータ’ 涼しげな斑入りの葉から、明るい黄色の茎が放射線を描く、モリニア‘バリエガータ’。 草花との組み合わせや植え方で多彩な表情に グラスと花を混ぜ合わせるように植えると、野原のようなメドウガーデンに。シンプルに植えるとモダンなアートのようにも表現が可能です。場所の雰囲気、合わせる草花によって、本当に多彩な表現ができるのがオーナメンタルグラスです。 まるで雲のように細かな穂が出るデスチャンプシアと、トリカブトやアキレアなどを混ぜ合わせて野原のような自然な庭に。 札幌の商業施設屋上で植栽デザインを担当した「そらのガーデン」でも、オーナメンタルグラスは大活躍。葉の微妙な色の変化をグラデーションのように組み合わせて、屋上という厳しい環境にも耐えています。ビルの間ならではの強風さえも、穂が美しく揺れるというデザインの味方になっているグラスガーデン。西日が当たる時間は、穂が光で透けて輝いて見えて別世界のようです。 カラマグロスティス・ブラキトリカ一種だけを使って、生け垣のようにシンプルに仕切りをつけるとモダンな雰囲気に。コンクリートの塀や板塀などでは表現できない柔らかさが出ます。 デザインを担当した子どもたちのためのキッズガーデン「くるみなの庭」では、草むらをくぐり抜けるようなワクワク感を楽しんでもらおうと、さまざまな種類のオーナメンタルグラスを使ってグラス迷路をつくりました。グラスが成長するつれ、難易度も変化していきます。かくれんぼもできる人気コーナーに。 まだまだ使い方や魅力は知られていないオーナメンタルグラスですが、栽培も簡単で管理もしやすく乾燥に強い品種が多いので、いろんなシーンで気軽にデザインに取り入れていくことができると思います。デザインの新しい可能性が広がる魅力的なオーナメンタルグラス、ぜひあなたの庭でも挑戦してみてはいかがでしょうか。